(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181979
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】パワーステアリングシステムの開口部に蓋を取り付ける方法及びそのような蓋
(51)【国際特許分類】
B62D 5/04 20060101AFI20231218BHJP
【FI】
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023087457
(22)【出願日】2023-05-29
(31)【優先権主張番号】2205702
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュリヨン アルノー
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB19
3D333CB21
3D333CC14
3D333CD04
3D333CD05
3D333CD09
3D333CD21
3D333CD28
3D333CD31
3D333CD37
3D333CD38
3D333CD44
3D333CE03
3D333CE06
(57)【要約】
【課題】密閉された方法で、ケースに形成された開口部を閉じる。
【解決手段】ケースの開口部(20a)と、この開口部を閉鎖するように構成された蓋(30)と、蓋及びケースの一方の第1内壁(21)に形成された第1環状溝(32)内に配置されたOリングシール(40)とを備えており、蓋及びケースの他方の第2内壁(31)は、前記第1環状溝に対向し且つ前記第2内壁に形成された第2環状溝(22)内でシールがより変形していない初期形状を回復しようとする蓋の閉鎖位置に至るまでシールを漸次圧縮する円錐台形状部(24)を有する、パワーステアリングケース(20)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーステアリングのケース(20,50)に設けられた開口部に蓋(30,60)を取り付けるための方法であって、
前記蓋及び前記ケースの一方の第1内壁(31,51)に形成された第1環状溝(32,52)内に配置されたOリングシール(40)を、前記蓋及び前記ケースの他方の第2内壁(21,61)の円錐台形状部(24,64)に接触させるように、前記蓋を前記ケースの開口部に挿入する工程と、
前記Oリングシール(40)が前記円錐台形状部(24,64)を超え、前記第1環状溝に対向し、前記第2内壁に形成された第2環状溝(22,62)においてより変形していない形状に回復する傾向がある、前記ケースの開口部上の前記蓋の閉鎖位置に達するまで、徐々に圧縮されるように、前記蓋に圧力を加える工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記蓋(30)に前記第1内壁(31)が形成され、且つ、前記ケース(20)に前記第2内壁(21)が形成され、又は、
前記ケース(50)に前記第1内壁(51)が形成され、且つ、前記蓋(60)に前記第2内壁(61)が形成されている、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記蓋(30,60)が前記閉鎖位置にあるときには、
前記蓋の周縁リム(33,63)が、前記ケース(20,50)の開口部の環状縁部(23,53)に当接し、及び/又は、
前記蓋(30)の前記第1内壁(31)が、前記ケースの前記円錐台形状部(24)に当接し、及び/又は、
前記蓋(30,60)の前記第2内壁(61)の一端(36,66)が、前記ケースの前記内壁(21,51)により形成される環状ショルダに当接している、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記蓋(30,60)の閉鎖位置において、前記第1及び第2環状溝(22,32,52,62)内の前記Oリングシール(40)が弾性変形を維持する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記Oリングシール(40)が、前記ケース(20,50)の内側と外側との間の35kPaの圧力差に抗して前記蓋(30,60)を前記閉鎖位置に保持するように寸法決めされた断面を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
パワーステアリングのケース(20,50)の開口部と、
前記開口部を閉鎖するように構成された蓋(30,60)と、
前記蓋及びケースの一方の第1内壁(31,51)に形成された第1環状溝(32,52)に配置されたOリングシール(40)とを備えており、
前記蓋及びケースの他方の第2内壁(21,61)は、前記第1環状溝に対向し、前記第2内壁に形成された第2環状溝(22,62)において前記Oリングシール(40)がより変形していない初期形状に戻ろうとする蓋の閉鎖位置に至るまで、前記Oリングシール(40)を徐々に圧縮する円錐台形状部(24,64)を有する、
パワーステアリングのケース(20,50)。
【請求項7】
前記蓋(30)に前記第1内壁(31)が形成され、且つ、前記ケース(20)に前記第2内壁(21)が形成され、又は、
前記ケース(50)に前記第1内壁(51)が形成され、且つ、前記蓋(60)に前記第2内壁(61)が形成されている、
請求項6に記載のケース。
【請求項8】
前記蓋(30,60)は、前記蓋が前記閉鎖位置にあるときに、前記ケース(20,50)の前記開口部の縁部(23,53)に当接するように構成される周辺リム(33,63)を備える、
請求項6又は7に記載のケース。
【請求項9】
前記第1環状溝(32,52)が前記第2環状溝(22,62)よりも深い、
請求項6から8のいずれか1項に記載のケース。
【請求項10】
前記第1環状溝(32,52)及び前記第2環状溝(22,62)は、前記第1環状溝内に前記Oリングシール(40)の70%以上75%以下が、且つ、前記第2環状溝内に前記Oリングシール(40)の30以下25%以上がそれぞれ収容するように成形される、
請求項6から9のいずれか1項に記載のケース。
【請求項11】
前記Oリングシール(40)が、前記ケース(20,50)の内側と外側との間の35kPaの圧力差にもかかわらず、前記蓋(30,60)を前記閉鎖位置に保持するように寸法決めされた断面を有する、
請求項6から請求項10のいずれか1項に記載のケース。
【請求項12】
前記円錐台形状部(24,64)が、前記ケース(20,50)の前記開口部内の、前記蓋の挿入方向に対して15°以上30°以下で構成されるフレア角度を有する、
請求項6~11のいずれか1項に記載のケース。
【請求項13】
前記ケース(20,50)に形成された前記環状溝(22,52)が、0.3mm以上0.8mm以下の距離によって、前記ケースの内側に向かってオフセットされる、
請求項6から12のいずれか1項に記載のケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステアリングシステムのケースの分野に関し、より具体的には、ケース、ケース上の蓋に関連するアセンブリ、及びケース上に蓋を取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、ステアリングコラムを駆動するハンドルを備えたステアリングシステムを含む。ステアリングコラムは、車両の2つの操舵輪を連結する横軸に沿って延在するラックを備えるステアリングボックスに連結されている。ラックは、ハンドルの回転を通して車両の操舵輪を旋回させることを可能にする。
【0003】
また、パワーステアリングシステムは、運転者がハンドルに与えた力に応じて補助力をラックに加える補助装置を含む。これにより、運転者がハンドルを回転させるのに要する力を軽減することができる。
【0004】
公知の電気的補助装置は、モータに固定されたケース、ウォームギヤ、及びウォームギヤによって駆動され、ラックに噛み合うピニオンに連結されたシャフトに取り付けられたウォームホイールを備えた減速機に連結された電気モータを含む。
【0005】
このようなケースは、一般に、減速機の要素の全て又は一部の導入及び組立を可能にするために、ケースの外壁を通過するアクセス用開口部を区切る1つ又はそれ以上の取付座を備える。アクセス用開口部は、ケース内への砂利、埃のような液体又は異物の侵入を防ぐために、一般的にシール、例えば環状体形シールを備えた蓋によって閉じられなければならず、それにより減速機の正しい作動を保証しなければならない。
【0006】
公知の解決方法によれば、蓋は、蓋が有するクリップによってケースに取り付けられている。クリップは、開口部の内面周縁において、ケースに機械加工された溝に嵌合する。このような蓋を使用すると、溝内へのクリップの正しい挿入を視覚的に制御することができない、という欠点がある。これにより、蓋の正しい挿入及び適切な保持を確認することができない。さらに、蓋にクリップが存在することは、破損の追加的リスクを伴い、製造コストの増加につながる追加的製造作業を必要とする。
【0007】
公知の解決方法によれば、蓋は、蓋の取付突起部に係合するネジと、ケース上に配置されたボス部内に形成された穴とによってケースに取り付けられる。また、この解決方法は、追加部品、すなわち、ネジを必要とし、ケースにボス部を形成し、蓋の外周に穴加工された突起部を必要とするので、満足のいくものではない。取付突起部もスペースの問題を引き起こす可能性があり、パワーステアリングシステムで使用可能なスペースと互換性がない場合がある。さらに、ネジによる取付箇所を2箇所に制限すると、高温で蓋が変形することがある。また、この解決法は、蓋をケースに締め込むために追加の製造作業を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、蓋をケースに取り付けるための作業を簡単にし、この目的のために必要な部品の数を減らすことは、密閉された方法で、ケースに形成された開口部を閉じるために望ましい。また、これらの部品の製造及び機械加工を簡素化するためには、蓋によるケースの閉鎖の気密性を確保しつつ、蓋及びケースの形状の簡素化を図ることが望ましい。また、コスト上の理由から、蓋を最も低コストのプラスチック材料から作ることが望ましい場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態は、パワーステアリングケースに形成された開口部に蓋を取り付けるための方法に関し、本方法は、蓋及びケースの一方の第1内壁に形成された第1環状溝内に配置されたOリングシールが、蓋及びケースの他方の第2内壁の円錐台形状部に接触するまで、ケースの開口部内に蓋を挿入するステップと、円錐台形状部上にOリングシールを徐々に圧縮されるように通過させ、Oリングシールが、第1環状溝とは反対側で第2内壁に形成された第2環状溝内で、より変形していない形状に戻ろうとする、ケースの開口部上の蓋の閉鎖位置に達するまで、蓋に圧力を加えるステップとを含む。
【0010】
これらの構成のおかげで、シールの弾力性は、蓋をケースにクリップ留めするために使用される。したがって、蓋及びケースに追加の要素、例えばクリップ、突起部及びネジ穴付ボス部を形成する必要性が回避され、ケースを閉じる操作が簡素化され、その一方で、ケースの閉鎖の緊密性が確保される。
【0011】
1つの実施形態によれば、蓋に第1内壁が形成され、ケースに第2内壁が形成されているか、又は、ケースに第1内壁が形成され、蓋に第2内壁が形成されている。
【0012】
したがって、前記シールは、必要に応じて、ケース内又は蓋上に配置することができる。
【0013】
1つの実施形態によれば、蓋が閉鎖位置にある場合、蓋の周縁リムは、ケースの開口部の環状縁部に当接し、及び/又は、蓋の内壁は、ケースの円錐台形状部に当接し、及び/又は、蓋の内壁の一端は、ケースの内壁によって形成された環状ショルダに当接している。
【0014】
当接部を設けることにより、蓋が閉鎖位置を越えてケース内に押し込まれることを防止する。
【0015】
1つの実施形態によれば、第1及び第2環状溝内のシールは、蓋の閉鎖位置において、弾性変形されて保持される。
【0016】
この構成は、蓋の、一定圧力の排出に対する耐性を維持することはもちろん、ケースの閉鎖の良好な密閉を確保することを可能にする。
【0017】
1つの実施形態によれば、シールは、ケースの内部と外部との間の35kPaの圧力差に抗して、蓋を閉鎖位置に保持するように寸法決めされた断面を有する。
【0018】
したがって、ケースの開口部上の蓋を保持するための耐圧性は、シールの断面寸法、したがって、シールを収納するための溝の断面寸法の調節によって調整することができる。
【0019】
また、実施形態は、パワーステアリングケースに関し、ケースの開口部と、この開口部を閉鎖するように構成された蓋と、蓋及びケースの一方の第1内壁に形成された第1環状溝に配置されたOリングシールとを備え、蓋及びケースの他方の第2内壁は、シールが第1環状溝に対向して第2内壁に形成された第2環状溝において、再びより変形していない初期形状を取り戻す傾向がある、閉鎖位置に到達するまで、シールを徐々に圧縮するように構成された円錐台形状部を有する。
【0020】
1つの実施形態によれば、蓋に第1内壁が形成され、ケースに第2内壁が形成されているか、又は、ケースに第1内壁が形成され、蓋に第2内壁が形成されている。
【0021】
1つの実施形態によれば、蓋は、蓋が閉鎖位置にあるときに、ケースの開口部の縁部に当接するように構成される周辺リムを備える。
【0022】
1つの実施形態によれば、第1環状溝は、第2環状溝よりも深い。
【0023】
1つの実施形態によれば、第1環状溝及び第2環状溝は、第1環状溝におけるシールの70%以上75%以下、及び、第2環状溝におけるシールの30以下25%以上をそれぞれ収容するように成形される。
【0024】
これらの比率は、蓋上のシールの十分な保持を確実にすることを可能にし、特に、ケース上の蓋の挿入及び取り外し動作の間に、蓋又はケース内のシールの十分な保持を確実にすることを可能にする。
【0025】
1つの実施形態によれば、シールは、ケースの内部と外部との間の35kPaの圧力差にもかかわらず、蓋を閉鎖位置に保持するように寸法決めされた断面を有する。
【0026】
1つの実施形態によれば、円錐台形状部は、ケースの開口部への蓋の挿入方向に対して15°以上30°以下のフレア角度を有する。
【0027】
円錐台形状部のこれらの傾斜値は、シールが、裂けたり損傷したりするのを防止するために、十分に漸進的に圧縮され得ることを可能にする。
【0028】
1つの実施形態によれば、ケース内に形成された溝は、0.3mm以上0.8mm以下の距離だけケースの内側に向かってオフセットされる。
【0029】
この構成により、ケース上の蓋の、一定の閉鎖圧力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明は、以下の説明を通して、添付の図を参照してよりよく理解されるであろう。ここで、同一の参照符号は、構造的及び/又は機能的に同一又は類似の要素に対応する。
【
図1】自動車用パワーステアリングシステムの一部を示す斜視図である。
【
図2】従来の、パワーステアリング装置のケース及び蓋の一部の斜視図である。
【
図4】1つの実施形態による、蓋によって閉じられたパワーステアリングシステムのケースの斜視図である。
【
図5】1つの実施形態による、ケース上の蓋の正面図である。
【
図6】1つの実施形態による、ケース上の蓋の断面図である。
【
図7A】1つの実施形態による、ケース開口部上の閉鎖位置における、蓋の縁部のより詳細な断面図である。
【
図7B】1つの実施形態による、ケース開口部上の閉鎖位置の前の位置における、縁部のより詳細な断面図である。
【
図8A】別の実施形態による、ケース開口部上の閉鎖位置における、蓋の縁部のより詳細な断面図である。
【
図8B】別の実施形態による、ケース開口部上の閉鎖位置の前の位置における、蓋の縁部のより詳細な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、デュアルピニオン式オンラック型パワーステアリングシステム1を表し、このシステムは、一端側がハンドルに連結され、他端側がラック3に第1ピニオンによって連結されたステアリングシャフト2と、ケース5に収容された減速機を介してラック3に連結されると共に、第2ピニオンを介してラック3に連結されたアシストモータ4とを備える。ケース5は、特に、ケース5内に収容されたウォームスクリューを備えたウォームホイールにアクセス可能にする蓋6によって閉じられる。
【0032】
図2及び
図3は、蓋6及び蓋が係合されたケース5の一部を表す。円形形状の蓋6は、蓋6の周縁部に形成された突起部8に係合するネジ9によってケース5に取り付けられる。ネジ9は、ケース5に形成されたボス部7に設けた穴部に締め込まれる。
図3において、蓋6は、ケース5に形成された相補形状の開口部5a内に係合するように設けられた円筒部6aを備えている。蓋の円筒部6aには、封止の密閉性を確保するOリングシール10を受容するための環状溝6bが、ケース5の円筒部6aと開口部5aとの間に設けられている。
【0033】
このケース閉鎖型は、必要部品の数と、機械加工及び製造作業の両面で、簡素化することが望ましい。
【0034】
そこで、
図4から
図6に、ケース20の開口部20aを塞いでいる蓋30を表す。ケース20は、ウォームスクリューとウォームホイールとを有する減速機を収容することができ、そして、モータに連結するためのインターフェース11を含む。この用途では、蓋30は減速機のウォームホイールにアクセスするための開口部を閉じる。
【0035】
図7A及び
図7Bは、1つの実施形態にかかる、ケース開口部20a上の閉鎖位置及び閉鎖位置よりも前の位置における、それぞれ蓋の縁部を表す。
図6、
図7A及び
図7Bは、特にケース20と、円形の縁部23に隣接する実質的に円筒形の内壁21を有するケース開口部20aとを示す。蓋30は、ケース20の内壁21の形状と相補的な形状を有する円筒壁31を備える。この蓋30は、ケース開口部20aを塞いでいるときにケース開口部20aの縁部23に支持されるように設けられた周縁リム33を備えている。
【0036】
1つの実施形態によれば、ケース20の内壁21及び蓋30の円筒壁31は、それぞれ、蓋30が閉鎖位置にあるときに互いに対向するように配置される、環状溝22,32を備える。前記溝22,32は、Oリングシール40を受け入れるように形作られている。
【0037】
1つの実施形態によれば、ケース20の内壁21は、縁部23と溝22との間に、縁部23に向かって広がった円錐台形状部24を有する。これにより、ケース20における開口部20aは、円錐台形状部24と溝22との間がより狭くなっている断面を有する。円錐台形状部24は、シール40が円錐台形状部24に当接するまで、蓋30を難なくケース20に導入できるような形状である。蓋30の閉鎖当接部には、シール40が弾性変形して(
図7B)円錐台形状部24の小径端部25を横切り、シール40がその初期未変形形状に戻る傾向となるケース20の溝22に至る(
図7A)まで、シール40を付勢するために蓋30に圧力を作用させることによって、リム33が縁部23に接触するときに到達することができる。したがって、蓋30がその閉鎖位置に到達する直前に、シール40は最大変形に到達し、その後、溝22,32内で、より変形の少ない形態に戻る。このようにして、蓋30は、閉鎖位置で、ケース20上にクリップ留めされる。
【0038】
これらの構成のおかげで、蓋30は、密閉された状態でケース20を閉じることができ、蓋にある突起部及びケースにあるネジ穴付ボス部に関連するクリップ又はネジのような追加の閉鎖要素を必要とすることなく、その閉鎖位置にしっかりと保持することができる。
【0039】
1つの実施形態によれば、溝22は、間隙を吸収し、蓋30がケースの開口部20aに押し付けられ、次いで、蓋のリム33が開口部の縁部23に当接することを確実にするために、例えば0.3mm以上0.8mm以下の距離だけ、溝32に対してケース20の内側に向かってわずかにオフセットされ得る。したがって、閉鎖位置では、円錐台形状部24の、小径端部25が、シール40をわずかに圧縮する。
【0040】
蓋30によって実行される閉鎖の密閉性を確実にするために、シール40は、溝22,32内で圧縮されたままである。
【0041】
1つの実施形態によれば、シール40は、蓋30がケース20に係合されたときに、蓋30に予め取り付けることができる。この目的のために、溝32は、溝22よりも深くすることができる。
【0042】
1つの実施形態によれば、それぞれ、70%以上75%以下のシール40が蓋の溝32に収容され、30%以下25%以上のシール40がケースの溝22に収容される。したがって、シール40は、溝32内に保持することができ、溝32から引きちぎられたり損傷したりすることなく、円錐台形状部24の小径端部25を横切って溝22に到達することができる。さらに、ケース20の内部と外部との間の35kPaの圧力差で、内部圧力が外圧よりも大きくなるような場合でも、蓋30が閉鎖位置に留まることができるように、シール40の断面寸法を定めることができる。また、溝22内に収容されるシール40の割合を増加させることによって、ケース20からの排出圧力に対する蓋30の耐性を増加させることができる。
【0043】
例示的な実施形態によれば、ケースの円錐台形状部24のフレア角度(ケースへの蓋の挿入方向に関連する)は、15°以上30°以下で構成される。このようにして、シール40は、溝32から引きちぎられたり損傷したりするのを回避するのに十分なように、漸進的に圧縮することができる。
【0044】
例示的な1つの実施形態によれば、蓋30は、外向きにドーム状になっている(
図6)。
【0045】
例示的な1つの実施形態によれば、蓋30の外面は、縁部33から中心及び蓋の方向に延びる半径方向リブ35を有する(
図4及び
図5)。これらのリブにより、蓋を補強することができる。
【0046】
様々な例示的な実施形態によれば、蓋30は、円形(
図4、
図5)、オーバル形、長円形、卵形、又は楕円形を有する。
【0047】
様々な例によれば、蓋30は、金属又はプラスチックから成形又は機械加工によって作られる。使用するプラスチック材料は、ポリプロピレンでもよい。
【0048】
溝22,32の断面は、対向する溝22,32によって区切られた容積がシール40の熱的及び化学的変形及び膨張を吸収するのに十分であるならば、長方形形状のような種々の形状とすることができる。
【0049】
図8A及び
図8Bは、1つの実施形態にかかる、ケース50の開口部50a上の閉鎖位置、及び閉鎖位置の前のそれぞれにおける、蓋60の縁部及びケース50の一部を表す。この実施形態において、蓋60及びケース50は、円錐台形状部64がケースの内壁によって形成されるのではなく、蓋60の内壁61によって、この内壁61に形成された溝62と蓋60の内壁の下縁66との間に形成される点で、特に
図7A及び
図7Bに表されたものとは異なる。これにより、ケース50における開口部50aは、Oリングシール40が挿入される環状溝52を備えた略円筒形状となっている。円錐台形状部64は、円錐台形状部64がシール40に当接するまで、蓋60を難なくケース50に導入できるように成形される。この実施形態では、蓋60はまた、蓋60のための閉鎖当接部をケースの縁部53と共に形成する、リム63を備えてもよい。この閉鎖当接部は、シール40が、その初期未変形形状(
図8A)を有する傾向がある、蓋60の溝62に到達するまで、弾性変形する(
図8B)ことによって、円錐台形状部64の、より大きな直径の端部65を強制的に横切るようにシール40に圧力を加えることによって、上述したように到達させることができる。したがって、蓋60がその閉鎖位置に到達する直前に、シール40が最大変形に到達し、そして、溝52,62内で、変形が少ない形態に戻る。このようにして、蓋60はまた、閉鎖位置で、ケース50上にクリップ留めされる。蓋60の挿入時に、特に溝52内で密封が維持されることを確実にするために、溝52は溝62よりも深くすることができる。さらに、溝52は、より狭い部分、例えば、シールを保持するためのダブテール(鳩尾)状部を有する断面を備えることができる。
【0050】
また、溝52は、溝62に対して、例えば、0.3mm以上0.8mm以下の距離だけ、ケースの内側に向かってわずかにオフセットされ、間隙を吸収し、蓋がケース開口部50aに対して押さえ付けられ、次いで、蓋のリム63が、開口部の縁53に対して当接されることを確実にする。したがって、閉鎖位置では、円錐台形状部64の小径端部65が、シール40をわずかに圧縮する。
【0051】
蓋によって実行される閉鎖部の密閉を確実にするために、シール40は、溝52,62内で圧縮されたままである。
【0052】
1つの実施形態によれば、それぞれ、70%以上75%以下のシールがケースの溝52に収容され、30%以下25%以上のシールが蓋の溝62に収容される。したがって、シール40は、溝52内に保持することができ、その結果、円錐台形状部64の小径端部65は、シール40が溝52から引きちぎられたり損傷したりすることなく、シール40を横切ることができる。さらに、内部圧力が外圧よりも大きく、ケース50の内部と外部との間の圧力差が35kPaあるにもかかわらず、蓋60が閉鎖位置に留まることができるように、シール40の断面寸法を決めることができる。また、溝62内に収容されるシール40の割合を増加させることによって、ケース50からの排出圧力に対する蓋60の耐性を増加させることができる。
【0053】
例示的な実施形態によれば、蓋60の円錐台形状部64の(ケースへの蓋の挿入方向に対する)フレア角度は、15°以上30°以下で構成される。したがって、シール40は、溝52から引きちぎられたり損傷したりするのを回避するのに十分なように、漸進的に圧縮されることができる。
【0054】
本発明が種々の実施及び様々な用途の対象であることは、当業者には明らかであろう。特に、本発明は、自動車用パワーステアリングシステムの減速機を収容するケースに限定されるものではなく、より一般的には、蓋によって密閉されて閉鎖される開口部を有するパワーステアリングケースに適用することができる。
【0055】
ケースの開口部及び蓋30,60は、必ずしも円形又は楕円形の形状ではなく、シールを用いて密閉性を確保することを可能にする可能性のある他の任意の丸まった形状を有してもよい。ケースの開口部の輪郭に合わせてシールを成形することができる。
【0056】
蓋30,60のリム33,63によって形成される当接部は省略することができる。実際に、蓋30の内壁31は、ケースの円錐台形状部24の形状に適合するように成形することができ、蓋が閉鎖位置にあるときに円錐台形状部24に当接する。また、ケース20,50の内壁21,51に形成された環状ショルダ26,56によって、当接を行うことができ、この当接部は、蓋30,60がケースの開口部上の閉鎖位置にあるときに、蓋30,60の内壁31,61の一端36,66と協働するように配置される。
【外国語明細書】