(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181981
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電子部品仮固定用粘接着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20231218BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20231218BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20231218BHJP
C09D 109/06 20060101ALI20231218BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231218BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J201/00
C09D4/02
C09D109/06
C09D7/61
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091813
(22)【出願日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】P 2022095262
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022095264
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 周作
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直輝
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 雄一郎
【テーマコード(参考)】
4J004
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AB01
4J004CA06
4J004CE01
4J004FA08
4J038CA042
4J038CC042
4J038FA111
4J038HA026
4J038NA17
4J038PB09
4J040DF001
4J040JB09
4J040NA20
(57)【要約】
【課題】光熱変換機能を有する電子部品仮固定用粘接着シートであって、耐熱性に優れる電子部品仮固定用粘接着シートを提供すること。
【解決手段】本発明の実施携帯による電子部品固定用粘接着シートは、光熱変換層を備える電子部品固定用粘接着シートであって、該電子部品固定用粘接着シートの波長1032nmの光の透過率が、60%以下であり、該電子部品固定用粘接着シートの波長355nmの光の透過率が、60%以下であり、該光熱変換層が、カーボンブラックを含み、該光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度が、300℃以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光熱変換層を備える電子部品固定用粘接着シートであって、
該電子部品固定用粘接着シートの波長1032nmの光の透過率が、60%以下であり、
該電子部品固定用粘接着シートの波長355nmの光の透過率が、60%以下であり、
該光熱変換層が、カーボンブラックを含み、
該光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度が、300℃以上である、
電子部品固定用粘接着シート。
【請求項2】
前記光熱変換層が、硬化型樹脂組成物から構成される、請求項1に記載の電子部品固定用粘接着シート。
【請求項3】
前記光熱変換層が、光重合開始剤を含む、請求項2に記載の電子部品固定用粘接着シート。
【請求項4】
前記硬化型樹脂組成物が、ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項3に記載の電子部品固定用粘接着シート。
【請求項5】
前記光熱変換層が、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む、請求項1に記載の電子部品固定用粘接着シート。
【請求項6】
基材をさらに備え、
該基材の少なくとも片側に、前記光熱変換層が配置される、
請求項1に記載の電子部品固定用粘接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品仮固定用粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの特性向上の為、半導体パッケージングなどの領域を中心に半導体チップや封止後の樹脂基板を硬質な支持基板に固定して、高温プロセスを実施するトレンドが加速している。例えば、黒色樹脂で封止された半導体パッケージ上に回路を形成する為のRDL形成プロセスなどにおいて、ガラスなどの光透過性基板に被加工体を平坦に仮固定し、被加工体上にRDL形成した後で硬質基板を分離する方法が検討されている。このような用途では、光熱変換材料としてカーボンブラック粉体を含有する液状接着剤が広く使用されている。光熱変換材料を用いる技術においては、光透過性基板上に当該光熱変換材料を塗工して光熱変換層を形成して、加工時には被加工体を強固に固定し、剥離時には所定波長のレーザー光照射により、光熱変換層がその光を吸収し熱に変換して熱分解することで、被加工体と光透過性基板とを簡単に分離(レーザーデボンド)することができる。しかしながら、光熱変換材料としての上記液状接着剤はカーボンブラック粉体やフィラーを添加したものが多く、経時で分散液の沈降現象が生じる為、製造時の材料管理が難しいという課題がある。このような課題を解決する方法として、カーボンブラックを含有する材料をフィルム化した汎用の黒印刷基材などを用いて両面テープ化する技術が検討されているが、黒印刷層の耐熱性・耐薬液特性が悪く、半導体用途には適用できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4565804号
【特許文献2】特許第4405246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、光熱変換機能を有する電子部品仮固定用粘接着シートであって、耐熱性に優れる電子部品仮固定用粘接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施携帯による電子部品固定用粘接着シートは、光熱変換層を備える電子部品固定用粘接着シートであって、該電子部品固定用粘接着シートの波長1032nmの光の透過率が、60%以下であり、該電子部品固定用粘接着シートの波長355nmの光の透過率が、60%以下であり、該光熱変換層が、カーボンブラックを含み、該光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度が、300℃以上である。
[2]上記[1]に記載の電子部品固定用粘接着シートにおいて、上記光熱変換層が、硬化型樹脂組成物から構成されていてもよい。
[3]上記[2]に記載の電子部品固定用粘接着シートにおいて、上記光熱変換層が、光重合開始剤を含んでいてもよい。
[4]上記[3]に記載の電子部品固定用粘接着シートにおいて、上記硬化型樹脂組成物が、ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
[5]上記[1]に記載の電子部品固定用粘接着シートにおいて、上記光熱変換層が、スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでいてもよい。
[6]上記[1]から[5]いずれにかに記載の電子部品固定用粘接着シートは、基材をさらに備え、該基材の少なくとも片側に、上記光熱変換層が配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光熱変換機能を有する電子部品仮固定用粘接着シートであって、耐熱性に優れる電子部品仮固定用粘接着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による電子部品仮固定用粘接着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.電子部品仮固定用粘接着シートの概要
図1は、本発明の1つの実施形態による電子部品仮固定用粘接着シートの概略断面図である。電子部品仮固定用粘接着シート110は、光熱変換層10を備える。電子部品用粘接着シート110’は、
図1(b)に示すように、基材20をさらに備えていてもよい。1つの実施形態においては、基材20の少なくとも片側に、光熱変換層10が配置される。1つの実施形態においては、電子部品用粘接着シート110’’は、粘着剤層30をさらに備える。例えば、光熱変換層10と、基材20と、粘着剤層30とがこの順に配置される。基材20は省略されていてもよい。また、図示していないが、電子部品固定用粘接着シートは、必要に応じて、任意の適切なその他の層を備えていてもよい。なお、本明細書において、「粘接着シート」は、粘接着シートおよび接着シートを含む概念である。以下、電子部品固定用粘接着シートを単に粘接着シートと言うこともある。
【0009】
上記光熱変換層は、所定の波長の光を吸収し、当該光を熱に変換する層である。光熱変換層の発熱により、光熱変換層自体が分解するか、あるいは、光熱変換層に隣接する層が熱分解することとなる。その結果、電子部品仮固定用粘接着シートは、剥離性を示す。1つの実施形態においては、光熱変換層は、所定の波長の光を吸収する前においては粘着性または接着性を有し、所定の波長の光を吸収することにより、光熱変換層の表面形状が変化して、剥離性を示す。また、光熱変換層の発熱により、粘接着シートを構成するいずれかの層が熱分解してガスが発生し、その結果、粘接着シートの表面形状が変化して、剥離性が発現してもよい。なお、本明細書において「熱分解」とは、250℃以上(好ましくは300℃以上)の加熱により、5%以上の重量減が生じ得ることを意味する。
【0010】
上記光熱変換層は、カーボンブラックを含む。光熱変換層においては、カーボンブラックが所定波長の光を吸収することにより、上記の光熱変換作用が発現する。カーボンブラックを含む光熱変換層は、フィルム状で粘接着シートに適用でき、液状の光熱変換材料を用いるよりも、材料管理が容易となる点で有利である。また、耐熱性および耐薬液性に優れるような構成とし得る点でも有利である。
【0011】
上記粘接着シートの波長1032nmの光の透過率は、60%以下である。このような範囲であれば、好ましく光熱変換作用を発現する粘接着シートを得ることができる。粘接着シートの波長1032nmの光の透過率は、好ましくは55%以下であり、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下である。このような範囲であれば、IRレーザー光による剥離性に優れる粘接着シートを得ることができる。1つの実施形態においては、粘接着シートの波長1032nmの光の透過率は、10%以上である。別の実施形態においては、粘接着シートの波長1032nmの光の透過率は、0%~5%、0%~2%または0%である。
【0012】
上記粘接着シートの波長355nmの光の透過率は、60%以下である。このような範囲であれば、好ましく光熱変換作用を発現する粘接着シートを得ることができる。粘接着シートの波長355nmの光の透過率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。このような範囲であれば、UVレーザー光による剥離性に優れる粘接着シートを得ることができる。1つの実施形態においては、粘接着シートの波長1032nmの光の透過率は、10%以上である。別の実施形態においては、粘接着シートの波長355nmの光の透過率は、0%~5%、0%~2%または0%である。
【0013】
本発明によれば、カーボンブラックを含む光熱変換層を形成して、波長1032nmの光の透過率が60%以下であり、かつ、波長355nmの光の透過率が60%以下であるように構成することにより、赤外線、紫外線いずれの光によっても、剥離性を生じさせることができ、照射する光の選択の幅が広い電子部品仮固定用粘接着シートを得ることができる。
【0014】
上記光熱変換層に波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の該光熱変換層の5%重量減少温度は、300℃以上である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる光熱変換層を得ることができる。5%重量減少温度とは、評価対象となるサンプルを昇温させた際の当該サンプルの重量が、昇温前のサンプルの乾燥重量に対して、5重量%減少した時点での温度を意味する。5%重量減少温度は、示差熱分析装置を用いて、昇温温度10℃/分、窒素雰囲気下、流量25ml/分の測定条件で測定される。サンプルの乾燥重量とは、サンプル中の水分を排除した重量を意味する。以下、本明細書において、光熱変換層に波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の5%重量減少温度を単に、「紫外線照射後5%重量減少温度」ということもある。
【0015】
光熱変換層をPETに貼着した際の上記粘接着シートの23℃における初期(常態)粘着力は、好ましくは0.2N/20mm~10N/20mmであり、より好ましくは3N/20mm~8N/20mmである。このような範囲であれば、支持体上での位置ずれ等なく、仮固定用途に好適な粘接着シートを得ることができる。初期粘着力は光吸収による剥離性発現前の粘着力である。粘着力は、JIS Z 0237:2000に準じて測定される。具体的には、2kgのローラーを1往復により光熱変換層をガラス板(算術平均表面粗さRa:10±8nm)に貼着した後、剥離角度180°、剥離速度(引張速度)300mm/minの条件で、粘接着シートを引きはがして測定される。
【0016】
光熱変換層をガラス板に貼着した際の上記粘接着シートの23℃における初期(常態)粘着力は、好ましくは0.20N/20mm~10N/20mmであり、より好ましくは1N/20mm~7N/20mmであり、さらに好ましくは2N/20mm~5N/20mmである。このような範囲であれば、支持体上での位置ずれ等なく、仮固定用途に好適な粘接着シートを得ることができる。
【0017】
1つの実施形態においては、光熱変換層をガラス板に貼着し、波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の23℃における紫外線照射後粘着力は、好ましくは0.01N/20mm~3N/20mmであり、より好ましくは0.04N/20mm~2N/20mmである。このような範囲であれば、剥離性に優れる粘接着シートを得ることができる。上記紫外線照射は、例えば、ガラス板から行われ得る。
【0018】
上記電子部品仮固定用粘接着シートの厚みは、好ましくは10μm~500μmであり、より好ましくは20μm~400μmである。
【0019】
1つの実施形態において、上記粘接着シートは、一方側(光熱変換層側)を支持体(例えば、キャリアガラス)に貼着し、他方側に電子部品(例えば、半導体ウエハ等の半導体部品)を配置して用いられる。本発明においては、本発明の粘接着シートを用いれば、光熱変換層の上記作用により、電子部品の支持体からの離間を容易に行うことができる。また、光熱変換層側に電子部品を配置して、当該電子部品の固定、剥離を行ってもよい。
【0020】
B.光熱変換層
1つの実施形態においては、光熱変換層は、熱が付与されて熱分解し、ガスを発生させ得る層である。付与される熱は、光熱変換層の発熱によるものであってもよく、粘接着シートを構成する光熱変換層とは別の層(例えば、基材)の発熱によるものであってもよい。なお、本明細書においては、「紫外線照射後」の特性を規定することがあるが、このような規定により、光熱変換層が紫外線照射により特性変化するか否かは特定されないことに留意されたい。光熱変換層は、紫外線照射により特性変化(例えば、硬化)する層であってもよく、紫外線照射によっても特性が変化しない層であってもよい。
【0021】
1つの実施形態においては、光熱変換層は近赤外線吸収可能な層である。より詳細には、上記光熱変換層の波長1032nmの光の透過率は、好ましくは60%以下であり、より好ましくは55%以下であり、より好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは40%以下であり、特に好ましくは30%以下である。このような範囲であれば、IRレーザー光を好ましく吸収して発熱しやすい光熱変換層を形成することができる。1つの実施形態においては、光熱変換層の波長1032nmの光の透過率は、5%以上である。
【0022】
1つの実施形態においては、光熱変換層は紫外線吸収可能な層である。1つの実施形態においては、光熱変換層の波長355nmの光の透過率は、好ましくは60%以下であり、より好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下であり、さらに好ましくは40%以下である。1つの実施形態においては、光熱変換層の波長355nmの光の透過率は、1%以上である。
【0023】
上記光熱変換層の厚みは、好ましくは1μm~100μmであり、より好ましくは2μm~50μmであり、さらに好ましくは3μm~30μmであり、特に好ましくは5μm~20μmである。
【0024】
上記光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度は、上記のとおり、300℃以上である。上記光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度は、好ましくは310℃~400℃であり、さらに好ましくは320℃~380℃であり、特に好ましくは330℃~370℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる粘接着シートを得ることができる。また、一般的にRDL形成プロセスは250℃以下の温度で実施されるため、紫外線照射後5%重量減少温度が上記範囲にあれば、RDL形成プロセス中の光熱変換層からのアウトガスが少なくなり、電子部品への影響を軽減して安定的なプロセスを実現できるようになる。
【0025】
上記光熱変換層に波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の該光熱変換層のナノインデンテーション法による弾性率(紫外線照射後弾性率ともいう)は、好ましくは1MPa以上であり、より好ましくは50MPa~5GPaであり、さらに好ましくは200MPa~3GPaである。このような範囲であれば、レーザー光照射時、光熱変換層の形状変化が好ましく生じ、優れた剥離性が発現し得る。1つの実施形態においては、光熱変換層のナノインデンテーション法による紫外線照射後弾性率は、200MPa以上(好ましくは300MPa以上、より好ましくは500MPa以上)とされる。このような範囲であれば、耐熱性および耐薬液性に特に優れる光熱変換層を形成することができる。ナノインデンテーション法による弾性率とは、圧子を試料に押し込んだときの、圧子への負荷荷重と押し込み深さとを負荷時、除荷時にわたり連続的に測定し、得られた負荷荷重-押し込み深さ曲線から求められる弾性率をいう。ナノインデンテーション法による弾性率は、ダイヤモンド製のBerkovich型(三角錐型)探針を測定対象層面に垂直に押し当てることで得られる変位-荷重ヒステリシス曲線を、測定装置付帯のソフトウェア(triboscan)で数値処理することで得られる。本明細書において、ナノインデンテーション法による弾性率とは、ナノインデンター(Hysitron Inc社製Triboindenter TI-950)を用いて、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約100nmの測定条件で、測定された弾性率である。なお、光熱変換層の紫外線照射後弾性率は、当該層に含まれる材料の種類、材料を構成するベースポリマーの構造、当該層に添加される添加剤の種類・量等により、調整することができる。
【0026】
上記光熱変換層に波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の該光熱変換層の引張弾性率は、好ましくは0.1MPa以上であり、より好ましくは5MPa~5GPaであり、さらに好ましくは20MPa~3GPaである。このような範囲であれば、レーザー光照射時、光熱変換層の形状変化が好ましく生じ、優れた剥離性が発現し得る。1つの実施形態においては、光熱変換層に波長365nmの光を、積算光量1380mJ/cm2で照射した後の該光熱変換層の引張弾性率は、20MPa以上(好ましくは30MPa以上、より好ましくは50MPa以上)とされる。引張弾性率の測定方法は後述する。
【0027】
上記のとおり、上記光熱変換層は、カーボンブラックを含む、代表的には、上記光熱変換層は、任意の適切な樹脂から形成され、当該樹脂中にカーボンブラックを含んで構成され得る。
【0028】
カーボンブラックの含有割合は、樹脂100重量部に対して、好ましくは1重量部~50重量部であり、より好ましくは3重量部~40重量部であり、さらに好ましくは5重量部~30重量部である。このような範囲であれば、好ましく光熱変換機能を発現し得、かつ、機械的強度に優れる光熱変換層を形成することができる。
【0029】
上記光熱変換層を構成する樹脂としては、任意の適切な樹脂を用いることができる。光熱変換層を構成する樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、アクリル系樹脂である。
【0030】
上記光熱変換層は、硬化型の樹脂組成物(硬化型粘着剤)から形成されていてもよく、感圧粘着剤から形成されていてもよい。感圧粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系粘着剤等が挙げられる。好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマーが用いられる。
【0031】
好ましくは、上記光熱変換層は、硬化型(例えば、活性エネルギー線硬化型または熱硬化型)樹脂組成物から構成され、より好ましくは、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物から構成され、より好ましくはアクリル系の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物から構成される。硬化型樹脂組成物の硬化物により形成された光熱変換層は、耐熱性に優れる点で有利である。1つの実施形態においては、硬化型樹脂組成物の硬化物として構成される光熱変換層は、重合開始剤を含む。当該重合開始剤は、例えば、光重合開始剤または熱重合開始剤である。好ましくは、硬化型樹脂組成物から構成された光熱変換層は、光重合開始剤を含む。上記近赤外線吸収剤は、硬化型樹脂組成物に含まれ得る。1つの実施形態においては、硬化型樹脂組成物は、ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを含む。ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを用いれば、耐熱性に優れる光熱変換層を形成することができる。
【0032】
1つの実施形態においては、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物として、母剤となるベースポリマー(あるいは、当該ベースポリマーを構成するモノマーまたはオリゴマー)と、活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)とを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)が用いられる。別の実施形態においては、ベースポリマーとして活性エネルギー線反応性ポリマーを含む活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A2)が用いられる。1つの実施形態においては、上記ベースポリマーは、光重合開始剤によって開裂し得る官能基を有する。該官能基としては、例えば、炭素―炭素二重結合を有する官能基が挙げられる。活性エネルギー線としては、例えば、ガンマ線、紫外線、可視光線、赤外線(熱線)、ラジオ波、アルファ線、ベータ線、電子線、プラズマ流、電離線、粒子線等が挙げられる。好ましくは、紫外線である。
【0033】
上記樹脂組成物(A1)において用いられるベースポリマーとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体ゴム、再生ゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレンゴム、ニトリルゴム(NBR)等のゴム系ポリマー;シリコーン系ポリマー;アクリル系ポリマー等が挙げられる。これらのポリマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも好ましくは、アクリル系ポリマーである。
【0034】
アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステルなどの(メタ)アクリル酸エステルの単重合体または共重合体;該(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合性モノマーとの共重合体等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。
【0035】
上記他の共重合性モノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有モノマー、酸無水物モノマー、ヒドロキシ基含有モノマー、グリシジル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、アクリルアミド、およびアクリロニトリルなどの官能基含有モノマー等が挙げられる。カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、およびクロトン酸が挙げられる。酸無水物モノマーとしては、例えば、無水マレイン酸および無水イタコン酸が挙げ られる。ヒドロキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、および(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび(メタ)アクリル酸メチルグリシジルが挙げられる。スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、および(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸が挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。アクリルアミドとしては、例えばN-アクリロイルモルホリンが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記共重合性モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)100重量部に対して、好ましくは60重量部以下であり、より好ましくは40重量部以下である。
【0036】
1つの実施形態においては、アクリル系ポリマーを構成するノマーとして、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が40℃以上となるアクリル系モノマーが用いられる。すなわち、上記アクリル系ポリマーは、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が40℃以上となるアクリル系モノマー由来の構成単位を含む。このようなアクリル系モノマーとしては、メタクリル酸メチル、タクリル酸グリシジル、メタクリル酸イソブチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプロピルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、イソボルニルアクリレート等が挙げられる。なかでも好ましくは、メタクリル酸メチルである。このようなモノマー由来の構成単位を含むアクリル系ポリマーを用いれば、レーザー光照射による分解物起因のベタツキを防止することができる。ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が40℃以上となるアクリル系モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)100重量部に対して、好ましくは30重量部~80重量部であり、より好ましくは40重量部~75重量部である。このような範囲であれば、上記効果が顕著となる。
【0037】
アクリル系ポリマーは、多官能性モノマー由来の構成単位を含み得る。多官能性モノマーを用いれば、耐熱性に優れる光熱変換層を形成することができる。多官能性モノマーとして、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート(すなわち、ポリグリシジル(メタ)アクリレート)、ポリエステル(メタ)アクリレート、およびウレタン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多官能性モノマー由来の構成単位を含む場合、上記多官能性モノマー由来の構成単位の含有割合は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)100重量部に対して、好ましくは30重量部以上であり、より好ましくは40重量部以上である。上記多官能性モノマー由来の構成単位の含有割合の上限は、ベースポリマー(アクリル系ポリマー)100重量部に対して、好ましくは400重量部以下であり、より好ましくは300重量部以下である。
【0038】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは1万~150万であり、より好ましくは2万~100万である。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0039】
上記樹脂組成物(A1)に用いられ得る上記活性エネルギー線反応性化合物としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の重合性炭素-炭素多重結合を有する官能基を有する光反応性のモノマーまたはオリゴマーが挙げられる。該光反応性のモノマーの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物;多官能ウレタン(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、メタクリロイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート等のモノマーを用いてもよい。光反応性のオリゴマーの具体例としては、上記モノマーの2~5量体等が挙げられる。光反応性のオリゴマーの分子量は、好ましくは100~3000である。
【0040】
1つの実施形態においては、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(A1)は、上記活性エネルギー線反応性化合物として、ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを含む。ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトール又はその重合物の水酸基の一部又はすべてを(メタ)アクリレートでエステル化することにより得ることができる。活性エネルギー線反応性化合物として、ペンタエリスリトール系多官能(メタ)アクリレートを用いれば、耐熱性に優れる光熱変換層を形成することができる。
【0041】
また、上記活性エネルギー線反応性化合物として、エポキシ化ブタジエン、グリシジルメタクリレート、アクリルアミド、ビニルシロキサン等のモノマー;または該モノマーから構成されるオリゴマーを用いてもよい。
【0042】
上記樹脂組成物(A1)において、活性エネルギー線反応性化合物の含有割合は、ベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.1重量部~500重量部であり、より好ましくは5重量部~300重量部であり、さらに好ましくは40重量部~200重量部である。
【0043】
上記樹脂組成物(A2)に含まれる活性エネルギー線反応性ポリマー(ベースポリマー)としては、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、アセチレン基等の炭素-炭素多重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。活性エネルギー線反応性ポリマーの具体例としては、多官能(メタ)アクリレートから構成されるポリマー(例えば、多官能性モノマー由来の構成単位を含むポリマー);光カチオン重合型ポリマー;ポリビニルシンナマート等のシンナモイル基含有ポリマー;ジアゾ化されたアミノノボラック樹脂;ポリアクリルアミド;等が挙げられる。
【0044】
1つの実施形態においては、上記アクリル系ポリマーの側鎖、主鎖および/または主鎖末端に、活性エネルギー線重合性の炭素-炭素多重結合が導入されて構成された活性エネルギー線反応性ポリマーが用いられる。アクリル系ポリマーへの放射線重合性の炭素-炭素二重結合の導入手法としては、例えば、所定の官能基(第1の官能基)を有するモノマーを含む原料モノマーを共重合させてアクリル系ポリマーを得た後、第1の官能基との間で反応を生じて結合しうる所定の官能基(第2の官能基)と放射線重合性炭素-炭素二重結合とを有する化合物を、炭素-炭素二重結合の放射線重合性を維持したままアクリル系ポリマーに対して縮合反応または付加反応させる方法が、挙げられる。
【0045】
第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基とエポキシ基、エポキシ基とカルボキシ基、カルボキシ基とアジリジル基、アジリジル基とカルボキシ基、ヒドロキシ基とイソシアネート基、イソシアネート基とヒドロキシ基が挙げられる。これら組み合わせのうち、反応追跡の容易さの観点からは、ヒドロキシ基とイソシアネート基の組み合わせや、イソシアネート基とヒドロキシ基の組み合わせが、好ましい。また、反応性の高いイソシアネート基を有するポリマーを作製するのは技術的難易度が高いところ、アクリル系ポリマーの作製または入手のしやすさの観点からは、アクリル系ポリマー側の上記第1の官能基がヒドロキシ基であり且つ上記第2の官能基がイソシアネート基である場合が、より好ましい。この場合、放射線重合性炭素-炭素二重結合と第2の官能基たるイソシアネート基とを併有するイソシアネート化合物としては、例えば、メタクリロイルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、およびm-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネートが挙げられる。また、第1の官能基を有するアクリル系ポリマーとしては、上記のヒドロキシ基含有モノマー由来の構成単位を含むものが好ましく、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルや、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルなどのエーテル系化合物由来の構成単位を含むものも好ましい。
【0046】
上記樹脂組成物(A2)は、上記活性エネルギー線反応性化合物(モノマーまたはオリゴマー)をさらに含んでいてもよい。
【0047】
1つの実施形態においては、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、重合開始剤を含む。重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤が用いられ得、好ましくは、光重合開始剤である。
【0048】
光重合開始剤としては、任意の適切な開始剤を用いることができる。光重合開始剤としては、例えば、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1等のアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1―プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナート等が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、任意の適切な量に設定され得る。
【0049】
1つの実施形態においては、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、光増感剤を含み得る。
【0050】
好ましくは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、架橋剤を含む。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等が挙げられる。
【0051】
上記架橋剤の含有割合は、樹脂組成物のベースポリマー100重量部に対して、好ましくは0.01重量部~20重量部である。
【0052】
1つの実施形態においては、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられる。エポキシ系架橋剤を用いれば、紫外線照射後5%重量減少温度が高い光熱変換層を形成することができる。上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3-ビス(N,N-グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1600」)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト1500NP」)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト40E」)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学社製、商品名「エポライト70P」)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールE-400」)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(日本油脂社製、商品名「エピオールP-200」)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-611」)、グリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-314」)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、商品名「デナコール EX-512」)、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o-フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール-S-ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂等が挙げられる。エポキシ系架橋剤の含有量は、所望とする特性に応じて、任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.01重量部~10重量部であり、より好ましくは0.05重量部~7重量部である。
【0053】
1つの実施形態においては、イソシアネート系架橋剤が好ましく用いられる。上記イソシアネート系架橋剤の具体例としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環族イソシアネート類;2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類;トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートL」)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHX」)等のイソシアネート付加物;等が挙げられる。好ましくは、イソシアネート基を3個以上有する架橋剤が用いられる。イソシアネート系架橋剤の含有量は、所望とする特性に応じて任意の適切な量に設定され得、ベースポリマー100重量部に対して、代表的には0.1重量部~20重量部であり、より好ましくは0.5重量部~10重量部である。
【0054】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、必要に応じて、任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、例えば、活性エネルギー線重合促進剤、ラジカル捕捉剤、粘着付与剤、可塑剤(例えば、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸エステル系可塑剤等)、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0055】
C.基材
上記基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。該樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリメチルペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、セルロース系樹脂、アイオノマー樹脂等が挙げられる。
【0056】
1つの実施形態においては、上記基材は、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂またはポリエーテルエーテルケトン系樹脂から構成される。なかでも好ましくはポリイミド系樹脂である。これらの樹脂はUV吸収性を有し、当該樹脂を用いれば、剥離操作時のレーザー種選択の幅が広がる。
【0057】
上記基材の厚みは、好ましくは2μm~300μmであり、より好ましくは2μm~100μmであり、さらに好ましくは2μm~50μmである。
【0058】
1つの実施形態においては、基材の波長1032nmの光の透過率は、60%~95%であり、好ましくは70%~90%である。
【0059】
1つの実施形態においては、基材の波長355nmの光の透過率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは0%~20%である。
【0060】
上記基材の200℃における引張弾性率は、好ましくは5MPa~2GPaであり、より好ましくは10MPa~1.8GPaであり、さらに好ましくは500MPa~1.8GPaであり、特に好ましくは1GPa~1.5GPaである。このような範囲であれば、レーザー光照射により光熱変換層が熱分解して発生したガスが、基材により好ましくバリアされ、光熱変換層表面の形状変化に起因する剥離性が好ましく発現する。引張弾性率は、動的粘弾性測定装置を用いて測定され得る。具体的な測定方法は、後述する。
【0061】
上記基材の紫外線照射後5%重量減少温度は、好ましくは300℃以上であり、より好ましくは350℃~650℃であり、さらに好ましくは380℃~600℃であり、特に好ましくは400℃~590℃である。このような範囲であれば、耐熱性に優れる粘接着シートを得ることができる。また、一般的にRDL形成プロセスは250℃以下の温度で実施されるため、紫外線照射後5%重量減少温度が上記範囲であれば、RDL形成プロセス中の基材からのアウトガスが少なくなり、電子部品への影響を軽減して安定的なプロセスを実現できるようになる。
【0062】
D.粘着剤層
上記粘着剤層は、任意の適切な粘着剤を含む。例えば、感圧粘着剤または硬化型粘着剤を含む。硬化型粘着剤として、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてもよい。
【0063】
上記粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、スチレン系熱可塑性エラストマー、エステル系粘着剤等が挙げられる。1つの実施形態においては、アクリル系粘着剤が用いられる。以下、アクリル系粘着剤の例を説明する。
【0064】
(ベースポリマー)
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種または2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマー(ホモポリマーまたはコポリマー)をベースポリマーとするアクリル系粘着剤等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが挙げられる。なかでも、炭素数が4~18の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ得る。アクリル系ポリマー中、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの構成単位の含有割合は、アクリル系ポリマー100重量部に対して、好ましくは70重量部~100重量部であり、より好ましくは75重量部~99.9重量部であり、さらに好ましくは、80重量部~99.9重量部である。
【0065】
上記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性、架橋性等の改質、粘着剤層の寸法安定性向上等を目的として、必要に応じて、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他のモノマー由来の構成単位を含んでいてもよい。このようなモノマーとして、例えば、下記のモノマーが挙げられる。
カルボキシ基含有モノマー:例えばアクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸およびその無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等);
水酸基含有モノマー:例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ビニルアルコール、アリルアルコール等の不飽和アルコール類;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のエーテル系化合物;
アミノ基含有モノマー:例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート;
エポキシ基含有モノマー:例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル;
シアノ基含有モノマー:例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル;
ケト基含有モノマー:例えばジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリレート、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、アリルアセトアセテート、ビニルアセトアセテート;
窒素原子含有環を有するモノマー:例えばN-ビニル-2-ピロリドン、N-メチルビニルピロリドン、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、N-(メタ)アクリロイルモルホリン;
アルコキシシリル基含有モノマー:例えば3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン;
イソシアネート基含有モノマー:(メタ)アクリロイルイソシアネート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、m-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート。
これらのモノマーは、単独で、または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは60万~160万であり、より好ましくは80万~150万である。このような範囲であれば、耐熱性に優れて、高温化での寸法安定性に優れ、かつ、加熱によるアウトガス発生が抑制された粘着剤層を形成することができる。重量平均分子量は、GPC(溶媒:THF)により測定され得る。
【0067】
(添加剤)
上記アクリル系粘着剤は、必要に応じて、任意の適切な添加剤を含み得る。該添加剤としては、例えば、架橋剤、架橋触媒、粘着付与剤、可塑剤、顔料、染料、充填剤、老化防止剤、導電材、帯電防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、剥離調整剤、軟化剤、界面活性剤、難燃剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0068】
上記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤の他、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。なかでも好ましくは、エポキシ系架橋剤またはイソシアネート系架橋剤である。
【0069】
1つの実施形態においては、粘着剤層に含まれる粘着剤として、耐熱粘着剤が用いられる。本明細書において、耐熱粘着剤とは、260℃の環境下で、所定の粘着力を有する粘着剤を意味する。耐熱粘着剤は、260℃の環境下で、糊残りなく使用し得ることが好ましい。好ましくは、耐熱粘着剤は、ベースポリマーとして、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等を含む。
【0070】
粘着剤層の厚みは、好ましくは5μm~100μmであり、より好ましくは10μm~50μmである。
【0071】
上記粘着剤層の波長1032nmの光の透過率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。波長1032nmの光の透過率の上限は、例えば、97%(好ましくは98%)である。
【0072】
上記粘着剤層の波長355nmの光の透過率は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。波長355nmの光の透過率の上限は、例えば、97%(好ましくは98%)である。
【0073】
E.電子部品仮固定用粘接着シートの製造方法
上記電子部品仮固定用粘接着シートは、任意の適切な方法により製造することができる。上記電子部品仮固定用粘接着シートの製造方法は、例えば、光熱変換層形成用組成物を準備する工程(A)と、支持体に光熱変換層形成用組成物を塗工する工程(B)と、光熱変換層形成用組成物の塗工層を硬化させる工程(C)とを含む。上記支持体は、粘接着シートを構成する基材であってもよい。
【0074】
光熱変換層形成用組成物は、カーボンブラックを含む。1つの実施形態においては、光熱変換層形成用組成物は、上記カーボンブラックを含む上記硬化型樹脂組成物(好ましくは、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物)であり得る。
【0075】
光熱変換層形成用組成物の塗工方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。光熱変換層形成用組成物の塗工方法としては、例えば、バーコーター塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が上げられる。
【0076】
光熱変換層形成用組成物が活性エネルギー線反応性化合物を含む場合、工程(C)において、光熱変換層形成用組成物の塗工層には、紫外線等の活性エネルギー線が照射される。当該照射条件は、光熱変換層形成用組成物の組成に応じて、任意の適切な条件とされ得る。
【0077】
光熱変換層形成用組成物が熱硬化性である場合、工程(C)において、加熱処理が行われる。加熱条件は、光熱変換層形成用組成物の組成に応じて、任意の適切な条件とされ得る。
【実施例0078】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における評価方法は以下のとおりである。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。
【0079】
[評価]
(1)引張弾性率
動的粘弾性測定装置(TA Instrument社製、商品名「RSA-3」)を用い、下記の条件にて、弾性率を測定した。基材については、200℃における引張弾性率を測定した。光熱変換層については、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)を1回照射した後の、25℃における弾性率を測定した。
測定周波数:1Hz
歪み:0.05%
チャック間距離:20mm
サンプル幅:10mm
0℃から250℃まで5℃/minの昇温速度
(2)光熱変換層のナノインデンテーション法よる紫外線照射後弾性率
実施例及び比較例で得られた粘接着シートに、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)を光熱変換層側から1回照射した後の光熱変換層を評価サンプルとした。
当該サンプルについて、ナノインデンター(Hysitron Inc社製Triboindenter TI-950)を用い、所定温度(25℃)における単一押し込み法により、押し込み速度約500nm/sec、引き抜き速度約500nm/sec、押し込み深さ約100nmの測定条件で弾性率を測定した。
(3)基材、光熱変換層の紫外線照射後5%重量減少温度
実施例及び比較例で得られた粘接着シートに、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)を光熱変換層側から1回照射した後の基材および光熱変換層を評価サンプルとした。
示差熱分析装置(TA Instruments社製、商品名「Discovery TGA」)を用い、昇温温度:10℃/min、N2雰囲気下、流量:25ml/minとし、所定サンプルの重量が昇温前のサンプルの乾燥重量に対して5%減少する温度を測定した。サンプルの乾燥重量とは、サンプル中の水分を排除した重量を意味する。
具体的には、上記評価サンプル約0.01gを上記分析装置にセットし、20℃から110℃まで上記昇温速度で一旦昇温し、110℃から20℃まで10℃/minの降温速度で降温することで含有する水分の影響を取り除き、乾燥重量を得た。再度20℃から500℃まで上記昇温速度で昇温しながら評価サンプルの重量減少を測定した。得られたデータから、重量減少が5%となる温度を抽出した。
(4)基材、光熱変換層、粘接着シートの光透過率
分光光度計(商品名「UV-VIS紫外可視分光光度計 SolidSpec3700」、島津製作所社製)にセットして、入射光が各サンプルに垂直に入射するようにして、300nm~2500nmの波長領域の光透過率を測定した。得られた透過スペクトルの355nm、および1032nmの波長における透過率を抽出した。
(5)粘着剤層側粘着力
粘接着シートの光熱変換層側をステンレス板に貼り付け固定し、粘着剤層をポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS10」、厚み:25μm)に貼着して、粘着剤層側の対PET#25粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°、測定温度:23℃)により、測定した。
(6)対ガラス初期(常態)粘着力(光熱変換層側)
粘接着シートの光熱変換層側をガラスに貼着して、当該粘接着シートの光熱変換層側の対ガラス初期粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°、測定温度:23℃)により、測定した。上記ガラスおよび下記評価(7)におけるガラスとして、松浪硝子製スライドグラス、品番S200423(水縁磨65mm×165mm×1.3mmT)の非スズ面を使用した。非スズ面は、UVランプによるUV照射にて発色のない面として把握した。
(7)対ガラス紫外線照射後粘着力(光熱変換層側)
粘接着シートの光熱変換層側をガラスに貼着し、紫外線照射装置(日東精機製、商品名「UM-810」)を用いて、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)をガラス側から光熱変換層側全面に照射した。その後、対ガラス紫外線照射後粘着力を、JIS Z 0237:2000に準じた方法(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復、引張速度:300mm/min、剥離角度180°、測定温度:23℃)により、測定した。
(8)レーザーデボンド性評価
・IRレーザーによるレーザーデボンド性評価
粘接着シートの粘着剤層(厚み:10μm)を、半導体ウエハなどの被加工体を模した幅50mm、長さ70mm、厚さ0.12mmtの薄ガラス(松浪硝子製カバーグラス、長方形No.1、商品名「C050701」)にハンドローラーで貼り付けし、薄ガラスのサイズに合わせて粘接着シートをカットし、その後、光熱変換層を支持体(光透過性支持基板を模した幅52mm、長さ76mm、厚さ1.0mmtの厚ガラス(松浪硝子製大型スライドグラス 標準大型白縁磨No.2、商品名「S9112」))にハンドローラーで積層した。その後、積層体をオートクレーブに入れて加温脱泡(40℃、5kgf、10分間)し、積層体中に噛み込む気泡を除去し、さらに紫外線照射装置(日東精機製、商品名「UM-810」)を用いて、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)を厚ガラス側から光熱変換層全面に照射して積層体サンプルを作製した。
作製した積層体サンプルに対し、支持体側からレーザー光を照射し、レーザーデボンド性評価を実施した。具体的には、波長1032nm、ビーム径約200μmφのレーザーを用いて、縦横約60μmピッチの間隔になるように5.6W出力、周波数25kHzでパルススキャンした。レーザー光を積層体サンプルに照射した後、デボンド性を下記の基準により評価した。
レーザーデボンド性の評価は、薄ガラスと厚ガラスのデボンド作業において、カッター刃で積層体サンプルの外周部の1箇所を浮かせると簡易にデボンドできる水準をデボンド作業性合格(〇)、カッター刃で外周部を全て浮かせてようやくデボンドできる水準を△、カッター刃を外周部に差し込んでもデボンドできない、薄ガラス(被加工体)が割れてしまう水準を不合格(×)、とした。
・UVレーザーによるレーザーデボンド性評価
上記「IRレーザーによるレーザーデボンド性評価」と同様にして、積層体サンプルを得た。
作製した積層体サンプルに対し、支持体側からレーザー光を照射し、レーザーデボンド性評価を実施した。具体的には、波長355nm、ビーム径約100μmφのレーザーを用いて、縦横約60μmピッチの間隔になるように3.0W出力、周波数25kHzでパルススキャンした。
(9)耐薬液性
粘接着シートの光熱変換層側を支持体(光透過性支持基板を模した幅52mm、長さ76mm、厚さ1.0mmtの厚ガラス(松浪硝子製大型スライドグラス 標準大型白縁磨No.2、商品名「S9112」))にハンドローラーで貼着し、紫外線照射装置(日東精機製、商品名「UM-810」)を用いて、高圧水銀灯の紫外線(特定波長:365nm、積算光量:1380mJ/cm2)をガラス側から光熱変換層側全面に照射した。貼り付けたサンプルを、N-メチル―2-ピロリドン(岸田化学社製)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(東京化成工業社製)、ジメチルスルホキシド(東京化成工業社製)の3つの極性溶媒にそれぞれ浸漬し、その後、25℃で15分間放置した後にサンプルを取り出し、各種極性溶媒を拭き取り、サンプルの外観を観察した。浸漬後の外観に変化がない水準を耐薬液性合格(○)、浸漬後に光熱変換層の脱色や、膨潤、剥がれなどの変化が見られた水準を耐薬液性不合格(×)とした。
【0080】
[製造例1]光熱変換層形成用組成物A
酢酸エチル中に、2-エチルヘキシルアクリレート30重量部と、メチルアクリレート70重量部と、アクリル酸10重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.2重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系ポリマー(ポリマーA)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーAの酢酸エチル溶液(ポリマーA:100重量部)と、活性エネルギー線硬化性オリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「紫光UV-1700B」)200重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)0.3重量部と、重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部と、カーボンブラック(大日精化工業社製、商品名「DYMIC SZ 7740ブラック」)30重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物Aを調製した。光熱変換層形成用組成物Aの組成を表1に示す。
【0081】
【0082】
[製造例2~4]光熱変換層形成用組成物B~D
活性エネルギー線硬化性オリゴマー、エポキシ系架橋剤、重合開始剤およびカーボンブラックの配合量を表1に記載のとおりとしたこと以外は、製造例1と同様にして、光熱変換層形成用組成物B~Eを調整した。
【0083】
[製造例5]光熱変換層形成用組成物E
トルエン中に、ブチルアクリレート50重量部と、エチルアクリレート50重量部と、アクリル酸5重量部と、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1重量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)0.3重量部と、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル0.1重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系ポリマー(ポリマーB)のトルエン溶液を得た。
ポリマーBの酢酸エチル溶液(ポリマーB:100重量部)と、活性エネルギー線硬化性オリゴマー(日本合成化学工業社製、商品名「紫光UV-1700B」)30重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)1重量部と、重合開始剤(BASF社製、商品名「Omnirad127D」)1.5重量部と、カーボンブラック(大日精化工業社製、商品名「DYMIC SZ 7740ブラック」)15重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物Eを調製した。光熱変換層形成用組成物Eの組成を表1に示す。
【0084】
[製造例6]光熱変換層形成用組成物F
マレイン酸変性スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体(SEBS:スチレン部位/エチレン・ブチレン部位(重量比)=30/70、酸価:10(mg-CH3ONa/g)、旭化成ケミカルズ社製、商品名「タフテックM1913」)100重量部と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)3重量部と、カーボンブラック(大日精化工業社製、商品名「DYMIC SZ 7740ブラック」)5重量部と、溶媒としてのトルエンとを混合して、光熱変換層形成用組成物Fを調製した。光熱変換層形成用組成物Fの組成を表1に示す。
【0085】
[製造例7]光熱変換層形成用組成物G
ポリマーBの酢酸エチル溶液(ポリマーB:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)5重量部と、カーボンブラック(大日精化工業社製、商品名「DYMIC SZ 7740ブラック」)5重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物Gを調製した。光熱変換層形成用組成物Gの組成を表1に示す。
【0086】
[製造例8]光熱変換層形成用組成物H
ポリマーBの酢酸エチル溶液(ポリマーB:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」)1重量部と、カーボンブラック(大日精化工業社製、商品名「DYMIC SZ 7740ブラック」)5重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物Hを調製した。光熱変換層形成用組成物Hの組成を表1に示す。
【0087】
[製造例9]樹脂層形成用組成物i
カーボンブラックを添加しなかったこと以外は、製造例2と同様にして、樹脂層形成用組成物iを調製した。
【0088】
[製造例10]粘着剤Aの調製
酢酸エチル中に、2-エチルヘキシルアクリレート95重量部と、アクリル酸5重量部と、重合開始剤として過酸化ベンゾイル0.15重量部とを加えた後、70℃に加熱してアクリル系ポリマー(ポリマーC)の酢酸エチル溶液を得た。
ポリマーCの酢酸エチル溶液(ポリマーC:100重量部)と、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学社製、商品名「TETRAD-C」)2重量部とを混合して粘着剤Aを調製した。
【0089】
[実施例1]
シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:75μm)に、製造例1で得た光熱変換層形成用組成物Aを、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に光熱変換層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせた。このようにして、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルムに挟まれた粘接着シート(光熱変換層)を得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0090】
[実施例2]
製造例10で得た粘着剤Aを、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)の片側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリイミドフィルム上に粘着剤層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせ、積層体(粘着剤層/基材(ポリイミドフィルム))を得た。用いた基材の特性を表2に示す。
基材の粘着剤層とは反対側の面に、製造例1で得た光熱変換層形成用組成物Aを、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリイミドフィルム上に光熱変換層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせ、粘接着シート(粘着剤層/基材/光熱変換層)を得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0091】
【0092】
[実施例3~5、7~10;比較例1]
光熱変換層形成用組成物Aに代えて、表3に示す光熱変換層形成用組成物または樹脂層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、粘接着シートを得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0093】
[実施例6]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)に代えて、PETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS27」、厚み:38μm)を用いたこと以外は、実施例2と同様にして粘接着シートを得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0094】
[比較例2]
ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、商品名「カプトン100H」厚み:25μm)に代えて、PETフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS27」、厚み:38μm)を用いたこと以外は、比較例1と同様にして粘接着シートを得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0095】
[比較例3]
カーボンブラックによる黒色印刷インクNB300(大日精化社製)100重量部と、イソシアネート系硬化剤(大日精化社製、商品名「ラミックBバードナー」)5重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物C3を調製した。なお、NB300にはバインダー樹脂としてポリウレタン系酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマーが含まれており、IRによってウレタンと考えられる強度ピークを確認した。
光熱変換層形成用組成物C3を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS105」、厚み:25μm)の片側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが0.2μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、その後、乾燥して、積層体C3(光熱変換層/基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム))を得た。
製造例10で得た粘着剤Aを、積層体C3の基材側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着剤層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせ、積層体(粘着剤層/基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)/光熱変換層)を得た。
積層体の粘着剤層とは反対側の面に、製造例9で得た樹脂層形成用組成物iを、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが10μmとなるように塗布し、その後、乾燥して、該ポリエチレンテレフタレートフィルム上に樹脂層を形成し、シリコーン離型剤処理面付きポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「セラピール」厚み:38μm)をロール間でラミネートして貼り合わせ、粘接着シート(粘着剤層/基材/光熱変換層/樹脂層)を得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0096】
[比較例4]
カーボンブラックによる黒色印刷インクCVL-PR(DIC社製)100重量部と、イソシアネート系硬化剤(DIC社製、商品名「CVLハードナーNo.10」)4重量部とを混合して光熱変換層形成用組成物C4を調製した。なお、CVL-PRにはバインダー樹脂としてポリウレタン系酢酸ビニル-塩化ビニルコポリマーが含まれており、IRによってウレタンと考えられる強度ピークを確認した。
光熱変換層形成用組成物C4を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東レ社製、商品名「ルミラーS105」、厚み:25μm)の片側に、溶剤揮発(乾燥)後の厚みが3μmとなるようにグラビアコーターで塗布し、その後、乾燥して、積層体C4(光熱変換層/基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム))を得た。
積層体C3に代えて、積層体C4を用いたこと以外は、比較例3と同様にして粘接着シートを得た。得られた粘接着シートを上記評価に供した。結果を表3に示す。
【0097】