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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181988
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】電力ケーブルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/26 20060101AFI20231218BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20231218BHJP
【FI】
H01B13/26 Z
H01B13/00 541
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023095270
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】22178699
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519099829
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アントニシュキ, ヨルン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的支持層を膨張させ、機械的支持層が金属性遮水層を支持する電力ケーブルを製造する方法及び電力ケーブルを提供する。
【解決手段】電力ケーブル1の製造方法は、導体5を設けることと、導体の周りに配置された内側の半導電性層9、半導電性層の周りに配置された絶縁層11及び絶縁層の周りに配置された外側の半導電性層13を含む絶縁システム7を設けることと、外側の半導電性層の周りに弾性の機械的支持層15を設けることと、機械的支持層を、圧縮要素によって放射状に圧縮することと、機械的支持層の外側に放射状に配置された金属性シートの反対側の縁部を長手方向に溶接して、放射状に圧縮された状態での機械的支持層から、放射状に間隔を空けた金属性遮水層17を形成することと、機械的支持層を圧縮することから圧縮要素を解放することと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルを製造する方法であって、
a)導体(5)を設けることと、
b)前記導体(5)の周りに配置された内側の半導電性層(9)、前記内側の半導電性層(9)の周りに配置された絶縁層(11)、および、前記絶縁層(11)の周りに配置された外側の半導電性層(13)を含む絶縁システム(7)を設けることと、
c)前記外側の半導電性層(13)の周りに弾性の機械的支持層(15)を設けることと、
d)前記機械的支持層を、圧縮要素(16)によって放射状に圧縮することと、
e)前記機械的支持層の外側に放射状に配置された金属性シートの反対側の縁部を長手方向に溶接して、放射状に圧縮された状態での前記機械的支持層から、放射状に間隔を空けた金属性遮水層(17)を形成することと、
f)前記機械的支持層(15)を圧縮することから前記圧縮要素(16)を解放することによって、前記機械的支持層(15)を膨張させ、前記機械的支持層(15)が前記金属性遮水層(17)を支持できるようにすることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記圧縮要素(16)が、前記機械的支持層(15)の外側に放射状に巻きつけられたコードまたはテープである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧縮要素(16)が、ポリマー材料を含むか、またはポリマー材料から構成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリマー材料が、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ノーメックス(登録商標)、パラアラミド、および二軸延伸ポリエチレンテレフタレートのうちの1つである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ステップf)が、溶融するように前記圧縮要素(16)を加熱することを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップf)が、前記圧縮要素(16)を分解することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧縮要素が、セルロース系繊維またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などの生分解性材料を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記機械的支持層(15)が、ポリマー発泡体またはポリマーフィルム層を含み、前記ポリマーフィルム層の間にはガス入り気泡がもたらされる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記機械的支持層(15)が、押出し成形層であるか、または前記絶縁システム(7)の周りに巻きつけられたテープの形である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記金属性遮水層(17)が、銅、アルミニウム、またはステンレス鋼を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記電力ケーブル(1)が、海底電力ケーブルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記機械的支持層(15)が半導電性であり、前記外側の半導電性層(13)と前記金属性遮水層(17)との間の電気接続をもたらす、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記金属性遮水層(17)が滑らかである、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得られる、電力ケーブル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、導体を電気的に絶縁する電気絶縁体を備える。この絶縁体に湿気が浸入するのを防ぐためには、一般に、金属性の放射状遮水壁が必要となる。
【0003】
従来、使用される金属は鉛であり、鉛は、柔らかく、加工可能で、押出し成形可能な金属である。鉛の防湿シールドは、水の浸入に対して安全な壁を実現するが、欠点がいくつかある。たとえば、高電圧ケーブルとともに使用するための鉛の防湿シールドは、必要となるシースの厚さがかなり厚くなる。この結果、非常に重いケーブルになる。さらに、鉛は、人体にも環境にも危険な有毒物質である。
【0004】
たとえば、EP2312591、EP3438993、およびEP3786982に開示されているように、長手方向の継ぎ目を溶接することによって連結される銅製金属シースの形での遮水壁を電力ケーブルに設けることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP2312591
【特許文献2】EP3438993
【特許文献2】EP3786982
【発明の概要】
【0006】
溶接する前に、電気絶縁体の周りに金属シートを巻きつけてもよい。金属シートの反対側の縁部は、すぐ下の層を損傷しないように、その層から半径方向に約1~7mmの距離で長手方向に溶接され、このようにして金属シースを形成する。
【0007】
溶接が実行された後、金属シースは、ローラを使用して、すぐ下の層と金属シースの間の距離を縮める、直径縮小プロセスにかけられてもよい。しかし、銅など、具体的な用途に使用可能なたいていの金属は、鉛よりも硬く、加工しやすさに劣る。金属のタイプおよび金属材料の厚さによっては、ローラによって印加されなければならないはずの力に起因して、直径縮小を実行することが非常に困難になり、または不可能になることすらある。さらに、特に金属材料が薄い場合、直径縮小を実行することによって、金属材料が座屈する危険性が大きくなる。
【0008】
本開示の一般的な目的は、従来技術の問題を解決するか、または少なくとも軽減する電力ケーブルを提供することである。
【0009】
したがって、本開示の第1の態様によれば、電力ケーブルを製造する方法であって、a)導体を設けることと、b)この導体の周りに配置された内側の半導電性層、この内側の半導電性層の周りに配置された絶縁層、および、この絶縁層の周りに配置された外側の半導電性層を含む絶縁システムを設けることと、c)この外側の半導電性層の周りに弾性の機械的支持層を設けることと、d)この機械的支持層を、圧縮要素によって放射状に圧縮することと、e)機械的支持層の外側に放射状に配置された金属性シートの反対側の縁部を長手方向に溶接して、放射状に圧縮された状態での機械的支持層から、放射状に間隔を空けた金属性遮水層を形成することと、f)機械的支持層を圧縮することから圧縮要素を解放することによって、機械的支持層を膨張させ、機械的支持層が金属性遮水層を支持できるようにすることとを含む、方法が提供される。
【0010】
金属性遮水層上の機械的支持層によって実現する支持は、直接的なものでも、または間接的なものでもよい。
【0011】
機械的支持層は、金属性遮水層の内周全体にわたって、この金属性遮水層を支持する。
【0012】
機械的支持層は、膨張した後に、金属性遮水層と外側の半導電性層との間の放射状の空間の大部分またはすべてを埋めてもよい。これにより、金属性遮水シースの直径を縮小する必要性がなくなるか、または直径縮小の必要量が少なくとも減少する場合がある。しかし、一例によれば、機械的支持層の内側に放射状に、機械的支持層と外側の半導電性層との間に、かつ/または、機械的支持層の外側に放射状に、機械的支持層と金属性遮水層の間に、膨張テープの層が設けられてもよい。
【0013】
機械的支持層の弾性に起因して、この機械的支持層は、電力ケーブルの動作中に導体を流れる電流の大きさが変動するのに応答して、絶縁システムが熱的に伸縮するにつれて、外側の半導電性層と金属性遮水層の間での放射状の隙間/空間を埋めるように動的に伸縮することができる。したがって、電力ケーブルの動作中には、導体および絶縁システムの心出しを含め、電力ケーブルの機械的特性を維持することができる。
【0014】
機械的支持層はさらに、長手方向の水浸入を防ぐ。
【0015】
電力ケーブルは、中電圧電力ケーブルでもよく、または高電圧電力ケーブルでもよい。本明細書においては、中電圧とは、1kV~72.5kVの範囲の電圧を意味する。本明細書においては、高電圧とは、72.5kVを超える電圧を意味する。
【0016】
電力ケーブルは、直流(DC)電力ケーブルでもよく、または交流(AC)電力ケーブルでもよい。AC電力ケーブルは、単相または多相のAC電力ケーブルでもよい。DC電力ケーブルは、単相、2相、または3相以上のDC電力のコアまたは極を含んでもよい。
【0017】
一実施形態によれば、圧縮要素は、機械的支持層の外側に放射状に巻きつけられたコードまたはテープである。
【0018】
一実施形態によれば、この圧縮要素は、ポリマー材料を含むか、またはポリマー材料から構成される。
【0019】
一実施形態によれば、このポリマー材料は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ノーメックス(nomex)(登録商標)、パラアラミド、および二軸延伸ポリエチレンテレフタレートのうちの1つである。
【0020】
一実施形態によれば、ステップf)は、溶融するように圧縮要素を加熱することを必要とする。したがって、加熱することによって、意図的に膨張を引き起こすことができる。
【0021】
一実施形態によれば、ステップf)は、圧縮要素の分解を伴う。したがって、膨張は、圧縮要素の分解の自然なプロセスの結果となり得る。
【0022】
一実施形態によれば、圧縮要素は、セルロース系繊維またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などの生分解性材料を含む。
【0023】
一実施形態によれば、機械的支持層は、ポリマー発泡体またはポリマーフィルム層を含み、これらポリマーフィルム層の間にはガス入り気泡がもたらされる。
【0024】
ポリマーフィルム層は、たとえば、低密度ポリエチレン(LDPE)を含んでもよい。
【0025】
このガスは、たとえば空気でもよい。
【0026】
ポリマー発泡体は、たとえば、エチレン酢酸ビニール(EVA)発泡体、低密度ポリエチレン(LDPE)、またはポリスチレン発泡体を含むか、またはこれらから構成されてもよい。
【0027】
一実施形態によれば、機械的支持層は、押出し成形層であるか、または絶縁システムの周りに巻きつけられたテープの形である。
【0028】
一実施形態によれば、金属性遮水層は、銅、アルミニウム、またはステンレス鋼を含む。
【0029】
一実施形態によれば、電力ケーブルは、海底電力ケーブルである。
【0030】
一実施形態によれば、機械的支持層は、半導電性であり、外側の半導電性層と金属性遮水層との間の電気接続をもたらす。
【0031】
一実施形態によれば、金属性遮水層は、滑らかであり、すなわち波形ではない。
【0032】
本開示の第2の態様によれば、第1の態様の方法によって得ることのできる電力ケーブルが提供される。
【0033】
一般に、特許請求の範囲で使用されるあらゆる用語は、本明細書において別段の定めが明示的にない限り、技術分野でのその通常の意味に従って解釈すべきである。「a/an/the(要素、機器、構成要素、手段など)」へのあらゆる言及は、別段の記載が明示的にない限り、こうした要素、機器、構成要素、手段などのうち少なくとも1つの場合に言及するものとして率直に解釈すべきである。
【0034】
次に、添付図面を参照しながら、一例として発明概念の具体的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】電力ケーブルの一例の断面図を概略的に示す図である。
図2a】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2b】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2c】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2d】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図3図1での電力ケーブルなど、電力ケーブルを製造する方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、例示している実施形態が示してある添付図面を参照して、以下に発明概念をさらに完全に説明する。しかし、この発明概念は、数多くの様々な形態で実施してもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈すべきではなく、むしろ、本開示が完璧かつ完全なものになり、本発明概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、これらの実施形態が一例として提供される。同様の番号は、この説明の全体を通して同様の要素を指す。
【0037】
図1には、電力ケーブル1の一例の断面図が概略的に示してある。
【0038】
電力ケーブル1は、電力コア3aを備える。
【0039】
この電力コア3aは、導体5を備える。導体5は、たとえば、単線、撚り線、または素線絶縁のタイプでもよい。導体5は、金属から作られる。導体5は、たとえば、銅またはアルミニウムを含んでもよい。
【0040】
電力コア3aは、絶縁システム7を備える。
【0041】
この絶縁システム7は、導体5の周りに配置された内側の半導電性層9を備える。内側の半導電性層9は、たとえば、カーボンブラックなどの半導電性成分と混合して半導電性ポリマーまたは半導電性紙を形成する、架橋ポリエチレン(XLPE)、ポリプロピレン(PP)、PPランダム共重合体、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、またはエチレンプロピレンゴム(EPR)を基にする熱可塑性エラストマー(TPE)を含んでもよい。半導電性ポリマーは、押出し成形されてもよい。
【0042】
絶縁システム7は、絶縁層11を備える。絶縁層11は、内側の半導電性層9の周りに配置される。絶縁層11は、内側の半導電性層9と直に接触してもよい。絶縁層11は、たとえば、XLPE、PP、PPランダム共重合体、EPDMゴム、もしくはEPRを基にする熱可塑性エラストマー(TPE)、または紙を含んでもよい。断熱層11は、押出し成形されてもよい。
【0043】
絶縁システム7は、絶縁層11の周りに配置された外側の半導電性層13を備える。この外側の半導電性層13は、絶縁層11と直に接触してもよい。この外側の半導電性層13は、たとえば、カーボンブラックなどの半導電性成分と混合して半導電性ポリマーまたは半導電性紙を形成する、XLPE、PP、PPランダム共重合体、EPDMゴム、またはEPRを基にする熱可塑性エラストマー(TPE)を含んでもよい。半導電性ポリマーは、押出し成形されてもよい。
【0044】
絶縁システム7は、3重押出し成形の絶縁システムでもよい。
【0045】
電力コア3は、外側の半導電性層13外側に放射状に配置された、弾性の機械的支持層15を備える。
【0046】
一例によれば、この機械的支持層15は、半導電性でもよい。
【0047】
機械的支持層15は、たとえば、ポリマー発泡体またはポリマーフィルムの層を含むか、またはこれらから構成されてもよく、これらポリマーフィルム層の間にガス入り気泡がもたらされる。
【0048】
機械的支持層15が、ポリマー発泡体を含むか、またはポリマー発泡体から構成され、また半導電性である場合、ポリマー発泡体を形成するポリマー材料は、カーボンブラックなどの半導電性成分と混合されて、半導電性ポリマー発泡体を形成してもよい。
【0049】
機械的支持層15が、各ポリマーフィルム層の間にガス入り気泡がもたらされたポリマーフィルム層を含むか、またはこのポリマーフィルム層から構成される場合、このポリマーフィルム層を形成するポリマー材料は、カーボンブラックなどの半導電性成分と混合されて、半導電性ポリマーフィルム層を形成してもよい。
【0050】
電力ケーブル1の製造中、コードまたはテープなどの圧縮要素が、機械的支持層15の周りに設けられる。この圧縮要素は、機械的支持層15を放射状に圧縮するように配置される。電力ケーブル1の製造中、製造の後期段階での圧縮要素が、圧縮されることから機械的支持層15を解放する。したがって、機械的支持層15は、放射状に膨張する。機械的支持層15が膨張した後、この機械的支持層15の周りに圧縮要素の痕跡が残る場合がある。これらの痕跡は、完成した電力ケーブル1の製品において見つかる場合がある。
【0051】
電力コア3aは、金属性遮水層17を備える。金属性遮水層17は、機械的支持層15と同心状に、かつその周りに配置される。
【0052】
機械的支持層15は、外側の半導電性層13と金属性遮水層17の間に配置される。
【0053】
機械的支持層15は、金属性遮水層17を機械的に支持する。
【0054】
機械的支持層15は、たとえば押出し成形層でもよく、または絶縁システム7の周りに巻きつけられたテープの形でもよい。
【0055】
金属性遮水層15は、金属シースを備えてもよい。この金属は、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、またはステンレス鋼でもよい。
【0056】
電力コア3aは、金属性遮水層17と同心状に、かつその周りに配置されたポリマー層19を備える。このポリマー層19は、たとえば、XLPE、PP、EPDM、またはEPRを含んでもよい。
【0057】
ポリマー層19は、半導電性でもよい。
【0058】
一例によれば、ポリマー層19は、接着剤によって金属性遮水層17に接合されてもよい。ポリマー層19が半導電性の場合、この接着剤は半導電性である。
【0059】
ポリマー層19は、ポリマージャケットでもよい。
【0060】
ポリマー層19は、金属性遮水層17の外面と直接接触していてもよい。
【0061】
ポリマー層19は、金属性遮水層17上に押出し成形されてもよい。
【0062】
電力ケーブル1は、ポリマー層19の外側に放射状に配置された外装層21を備えてもよい。
【0063】
外装層21は、ポリマー層19の周りにらせん状に配置された複数の外装ワイヤ23を備える。外装層21は、亜鉛めっき炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、銅、もしくはアルミニウムなどの金属から作られる外装ワイヤ23、および/またはジャケット内のアラミド繊維などの合成材料から作られる外装ワイヤ23を備えてもよい。
【0064】
外装ワイヤ23の少なくとも一部が金属で作られている場合、外装層21はビチューメンに覆われてもよい。
【0065】
図2a~2dには、電力ケーブル1を製造するための例示的な製造ステップが示してある。
【0066】
図2aの例では、機械的支持層15が、外側の半導電性層13の周りに設けられる。
【0067】
この段階では、金属性遮水層17は、機械的支持層15の周りにまだ配置されていない。
【0068】
機械的支持層15は、たとえば、絶縁システム7の周りに巻きつけられるテープの形でもよく、または絶縁システム7上に押出し成形されてもよい。テープの外装縁部は、たとえば、接着剤によって互いに接合されてもよい。
【0069】
図2aにはさらに、圧縮要素16が機械的支持層15の周りに設けられている様子が示してある。この圧縮要素16は、機械的支持層15を放射状に圧縮する。
【0070】
圧縮要素16は、たとえば、機械的支持層15の周りにらせん状にしっかりと巻きつけられて、機械的支持層15をほぼ放射状に圧縮するテープまたはコードでもよい。
【0071】
圧縮された機械的支持層15と圧縮要素16とを組み合わせた放射状の厚さは、非圧縮状態での機械的支持層15の放射状方向の寸法よりも実質的に小さいことが好ましい。圧縮された機械的支持層15と圧縮要素16とを組み合わせた放射状の厚さは、たとえば、非圧縮状態での機械的支持層15の放射状方向の寸法の半分より小さくてもよい。
【0072】
圧縮要素16は、たとえば、融点が100~400℃の範囲にあるポリマー材料を含んでもよく、またはそのポリマー材料から構成されてもよい。適切なポリマー材料の例は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、ノーメックス(登録商標)、パラアラミド、および二軸延伸ポリエチレンテレフタレートである。
【0073】
別の例によれば、圧縮要素16は、セルロース系繊維、ポリヒドロキシアルカノエート、またはBioska(登録商標)材料などの生分解性材料を含むか、またはその生分解性材料から構成される。
【0074】
図2bには、圧縮要素16によって依然として圧縮されている機械的支持層15の周りに、金属性遮水層17が形成されたときの様子が示してある。
【0075】
この金属性遮水層17は、圧縮要素16から半径方向の距離だけ離れた位置で、圧縮要素16の周りに金属性シートを巻きつけることによって作られた。金属性遮水層17の反対側の縁部は、長手方向に溶接されて、溶接シーム17aを形成した。
【0076】
図2cには、図2bにおいて得られた構造体が熱処理を受けているときの様子が示してある。これにより、圧縮要素16が溶解し、分解することになる。したがって、機械的支持層15は、その自然に膨張した状態にまで膨張してもよい。
【0077】
熱処理の代わりに、圧縮要素16は、適切な生分解性材料から作られる場合には、自然に分解することがある。この場合、機械的支持層15を膨張させるための、加熱などの外部誘因は必要ない場合がある。
【0078】
図2dには、熱処理が完了したときの様子が示してある。機械的支持層15は、この例では、金属性遮水層17の内面と直接接触している。
【0079】
一変形形態によれば、金属性遮水層17は、機械的支持層15が金属性遮水層17の内面と確実に直接接触するように、熱処理の前後に直径縮小を受けてもよい。
【0080】
図3は、電力ケーブル1を製造する方法の流れ図である。
【0081】
ステップa)では、導体5が設けられる。
【0082】
ステップb)では、導体5の周りに絶縁システム7が設けられる。たとえば、3重押出し成形プロセスまたはテープ巻きつけプロセスにおいて、絶縁システム7を導体5の周りに設けてもよい。
【0083】
ステップc)では、絶縁システム7の外側の半導電性層13の周りに機械的支持層15を設ける。
【0084】
機械的支持層15は、ステップc)において、絶縁システム7上に押出し成形されてもよく、またはテープの形で絶縁システム7の周りに折り畳まれるか、もしくは巻きつけられてもよい。
【0085】
ステップd)では、機械的支持層15は、圧縮要素16によって放射状に圧縮される。圧縮要素16は、たとえば、機械的支持層15の周りに巻きつけられて、この機械的支持層15を圧縮してもよい。
【0086】
ステップe)では、金属性シートの反対側の縁部を長手方向に溶接して、圧縮要素16の周りに金属性遮水層17を形成する。
【0087】
ステップf)では、機械的支持層15を圧縮することから圧縮要素16を解放することによって、機械的支持層15が放射状に膨張する。
【0088】
ステップf)は、たとえば、金属性遮水層17を、たとえば誘導加熱または加熱素子によって加熱することを必要とする場合がある。したがって、圧縮要素16は、軟化または溶融するように加熱される。これにより、圧縮要素16は、金属性遮水層17を放射状に支持するように、放射状に膨張する。
【0089】
圧縮要素16が、生分解性材料を含むか、または生分解性材料から構成される場合、圧縮要素16は、時間とともに分解することになり、機械的支持層15が、金属性遮水層17を放射状に支持するように、放射状に膨張できるようになる。好ましくは電力ケーブル1が依然として工場内にあるときに圧縮要素16が迅速に分解するように、この生分解性材料を選択すべきである。
【0090】
いくつかの例を参照しながら、主として発明概念をこれまで説明してきた。しかし、当業者には容易に理解されるように、これまでに開示したもの以外の他の実施形態も、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明概念の範囲内で等しく実現可能である。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
【外国語明細書】