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特開2023-181989マイクロニードル注射製剤およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023181989
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】マイクロニードル注射製剤およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/69 20170101AFI20231218BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231218BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231218BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20231218BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231218BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231218BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20231218BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20231218BHJP
【FI】
A61K47/69
A61K31/7105 ZNA
A61P37/04
A61P43/00 105
A61K9/10
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/34
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/04
A61K47/22
A61K9/00
A61K47/12
C12N15/11 Z
C12N15/88 Z
【審査請求】有
【請求項の数】31
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095470
(22)【出願日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】202210661776.2
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210994917.2
(32)【優先日】2022-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210897045.8
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202310592050.2
(32)【優先日】2023-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523220684
【氏名又は名称】上海臻上医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Zcapsule Pharmaceuticals Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Suite 502, 1043 Halei Road, The China (Shanghai) Pilot Free Trade Zone (SHFTZ), Shanghai 201203, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】劉 偉為
(72)【発明者】
【氏名】王 路凡
(72)【発明者】
【氏名】郭 智峰
(72)【発明者】
【氏名】毛 俊松
(72)【発明者】
【氏名】高 晨陽
(72)【発明者】
【氏名】田 遠瑞
(72)【発明者】
【氏名】顧 臻
(72)【発明者】
【氏名】劉 暁曦
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076AA99
4C076BB16
4C076BB31
4C076CC06
4C076CC26
4C076DD25Z
4C076DD26Z
4C076DD38Z
4C076DD41Z
4C076DD48
4C076DD50Z
4C076DD60Z
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076FF16
4C076FF61
4C076FF63
4C076FF67
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA21
4C086MA63
4C086MA66
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA06
4C086NA10
4C086ZB09
4C086ZB21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】マイクロニードル注射mRNA製剤およびその使用を提供する。
【解決手段】マイクロニードルによってmRNAを注射する製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液には対応するタンパク質をコードするためのmRNAおよび緩衝液が含まれる。緩衝液のpHを改良することにより、脂質ナノ粒子の担持容量を大幅に向上させ、製剤の添加剤の使用量を低下させ、マイクロニードル注射量もより少なくなり、毒性・副作用がより少なくなり、治療効果がより高くなる。また、マイクロニードルによる注射はmRNA製剤の有効発現レベルを向上させ、肝臓における発現レベルを低下させ、体内におけるmRNA製剤の発現時間を延長させ、生体内における低用量mRNA製剤の高抗体価を実現できる。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質ナノ粒子が含まれ、水相溶液が脂質ナノ粒子に包み込まれ、または脂質ナノ粒子には水相溶液が含まれ、前記水相溶液には疾病の治療・予防物質をコード化するためのmRNAが含まれ、前記水相溶液のpHが4.5~6.8であることを特徴とするマイクロニードル注射製剤。
【請求項2】
前記水相溶液には緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.0であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記緩衝液のpHが5.0~5.5、若しくは5.5、若しくは4.5、若しくは6.0であることを特徴とする請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記緩衝液は水、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、バルビツール酸塩緩衝液、TE緩衝液、PBS緩衝液のうち1つ又は複数であることを特徴とする請求項2又は3に記載の製剤。
【請求項5】
前記Tris緩衝液にはアミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物及び水が含まれ、前記酢酸塩緩衝液は酢酸ナトリウム緩衝液を含み、前記酢酸ナトリウム緩衝液には酢酸ナトリウム、氷酢酸及び水が含まれることを特徴とする請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記脂質ナノ粒子はさらに脂質を含み、前記脂質はイオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質及びPEG化された脂質を含むことを特徴とする請求項1-5のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項7】
前記イオン化可能な脂質はC12-200、MC3、DLinDMA、DLin-MC3-DMA、DLinkC2DMA、cKK-E12、ICE、HGT5000、HGT5001、OF-02、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMA、DMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、DLin-K-XTC2-DMA、SM-102、ALC-0315、HGT4003及びJK-102-CAのうち1つまたは複数であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記リン脂質はセラミド、脳リン脂質、セレブロシド、ジアシルグリセロール、DPPG、DSPE、DSPC、DPPC、DOPE、DOPC、DPPE、DMPE、DOPG、POPE、POPC、SOPE、スフィンゴミエリンのうち1つまたは複数であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項9】
前記PEG化された脂質はDMG-PEG1000、DMG-PEG1300、DMG-PEG1500、DMG-PEG1800、DMG-PEG2000、DMG-PEG2200、DMG-PEG2500、DMG-PEG2700、DMG-PEG3000、DMG-PEG3200、DMG-PEG3500、DMG-PEG3700、DMG-PEG4000、DMG-PEG4200、DMG-PEG4500、DMG-PEG4700、DMG-PEG5000、ALC-0159、M-DTDAM-2000、C8-PEG、DOGPEG、セラミドPEG及びDSPE-PEGのうち1つ又は複数であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項10】
前記イオン化可能な脂質:コレステロール:リン脂質:PEG化された脂質の質量比が(9~10):(3~4):(2~3):1であることを特徴とする請求項6に記載の製剤。
【請求項11】
前記疾病の治療・予防物質の有効成分はタンパク質、ポリペプチド、または抗体若しくは抗体フラグメント、または抗原若しくは抗原フラグメントを含むことを特徴とする請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
前記疾病の治療・予防物質の有効成分はmRNAワクチンまたは二重特異性抗体であることを特徴とする請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における製剤の使用であって、
前記製剤には水相溶液及び脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液にはコード化して疾病を治療・予防するmRNAが含まれ、前記水相溶液のpHが4.5~6.8であることを特徴とする大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における製剤の使用。
【請求項14】
前記水相溶液には緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.0ことを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記緩衝液のpHが5.0~5.5、若しくは5.5、若しくは4.5、若しくは6.0であることを特徴とする請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記緩衝液は水、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、バルビツール酸塩緩衝液、TE緩衝液、PBS緩衝液のうち1つ又は複数であることを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記Tris緩衝液にはアミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物及び水が含まれ、前記酢酸塩緩衝液は酢酸ナトリウム緩衝液を含み、前記酢酸ナトリウム緩衝液には酢酸ナトリウム、氷酢酸及び水が含まれることを特徴とする請求項16に記載の使用。
【請求項18】
前記脂質溶液が有機溶液である、請求項13に記載の使用。
【請求項19】
大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における水相溶液pHの使用であって、
前記製剤には前記水相溶液及び脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液にはコード化して疾病を治療・予防するmRNAが含まれ、前記水相溶液のpHが4.5~6.8であることを特徴とする大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における水相溶液pHの使用。
【請求項20】
前記水相溶液のpHが4.5~6.0であることを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記水相溶液には緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.0ことを特徴とする請求項19に記載の使用。
【請求項22】
前記緩衝液のpHが5.0~5.5、若しくは5.5、若しくは4.5、若しくは6.0であることを特徴とする請求項21に記載の使用。
【請求項23】
前記緩衝液は水、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、バルビツール酸塩緩衝液、TE緩衝液、PBS緩衝液のうち1つ又は複数であることを特徴とする請求項22に記載の使用。
【請求項24】
前記Tris緩衝液にはアミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物及び水が含まれ、前記酢酸塩緩衝液は酢酸ナトリウム緩衝液を含み、前記酢酸ナトリウム緩衝液には酢酸ナトリウム、氷酢酸及び水が含まれることを特徴とする請求項23に記載の使用。
【請求項25】
大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における脂質溶液中の脂質含有量の使用であって、
前記製剤には水相溶液及び脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液にはコード化して疾病を治療・予防するmRNAが含まれ、前記水相溶液のpHが4.5~6.8であることを特徴とする大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における脂質溶液中の脂質含有量の使用。
【請求項26】
脂質溶液中の脂質含有量が8~20mg/mLである、請求項25に記載の使用。
【請求項27】
脂質溶液中の脂質含有量が15.44mg/mLである、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記水相溶液には緩衝液が含まれ、
前記緩衝液のpHが5.0~5.5、若しくは5.5、若しくは4.5、若しくは6.0であることを特徴とする請求項25に記載の使用。
【請求項29】
前記緩衝液は水、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、バルビツール酸塩緩衝液、TE緩衝液、PBS緩衝液のうち1つ又は複数であることを特徴とする請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記Tris緩衝液にはアミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物及び水が含まれ、前記酢酸塩緩衝液は酢酸ナトリウム緩衝液を含み、前記酢酸ナトリウム緩衝液には酢酸ナトリウム、氷酢酸及び水が含まれることを特徴とする請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記製剤が請求項1-12のいずれか1項に記載の製剤である、mRNA製剤の注射器の製造におけるマイクロニードルの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
本出願は、2022年6月13日に出願された出願番号2022106617762の中国特許出願の優先権を主張する。2022109949172、2022年8月18日に提出。2022108970458、2022年7月28日に提出。2023105920502、2023年5月24日に提出されました。本出願の要約、説明、特許請求の範囲、および本出願の説明の図面は、その全体が本出願によって使用される。
【0002】
本発明はバイオテクノロジー分野に属し、具体的には、マイクロニードル皮下注射製剤に関し、特に、大担持容量マイクロニードル注射mRNA製剤およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
裸のmRNAが直接体内に入ると分解されるため、どのようにmRNAを効果的に細胞内に送り、効率的且つ安全なmRNA送達を実現し、それによってタンパク質の翻訳・合成を完成することは、mRNA薬物の薬効の保証である。脂質ナノ粒子(LNP)とは、薬物を内包させることによって形成される小胞を指し、RNAをリボヌクレアーゼによる分解から保護し、細胞内に特異的に取り込まれ、細胞質に入ると、直ちに内包体から放出し、それによって送達されるmRNAを標的タンパク質に効果的に発現させるため、対応する薬物の送達キャリアとして用いられ、今では成熟した新型製剤の一種になる。従来の単層リポソーム(Liposomes)や脂質小胞(Vesicles)などに比べ、ナノ脂質粒子はより複雑なミクロ構造を有し、脂質ナノ粒子は主にコレステロール、リン脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、脂質などから構成され、薬理学的に不活性で毒性が少ないと認められ、一定の自己アジュバント効果もあると考えられ、脂質ナノ粒子送達システムは総合的な優位性を有する;しかし、従来の脂質ナノ粒子薬物送達システムには、標的選択性の欠如、血液循環時間の短さおよびインビボ不安定などの明らかな限界もある。いくつかの研究によると、場合によっては、脂質ナノ粒子は完全に免疫不活性ではなく、脂質ナノ粒子成分は非天然化合物であり、例えばポリエチレングリコール修飾脂質、特定の場合では人体に対して潜在的な刺激性または毒性があり、例えば、特定の場合では、深刻な副作用などの問題と隠れた危険を引き起こす可能性がある。
【0004】
従来の脂質ナノ粒子注射製剤は通常、静脈内、筋肉内または皮下注射によって注射され、静脈内注射にはいくつかの克服しがたい問題があり、例えば、作用するには一定の注射量が必要であり、血管損傷を引き起こす可能性があり、注射剤は血管内膜炎症や他の部位組織の炎症を引き起こす可能性があり、患者に痛みを与え、医療従事者に注射を完成させる必要があり、使用に不便さがあり、体内における核酸の発現レベルが低いなど。また、従来の脂質ナノ粒子は一般的に筋肉内、皮下注射を行い、薬の利用率が低く、薬が効くまでの時間が長いなどの限界がある。
【0005】
マイクロニードル投与は新型局所経皮投与技術であり、貼付剤の利便性と皮下注射の有効性を組み合わせ、他の投与方法の不足を回避し、神経に触らず、安全、無痛、高効率浸透など多くの利点がある。マイクロニードル製品は通常、長さが一般的に1 mmを超えない複数のマイクロニードルを含み、前記マイクロニードルは皮膚の角質層においてマイクロチャネルを形成させ、皮膚の角質層のバリアを突破し、薬物の浸透を促進し、それによって角質層における薬物の蓄積量を減少させ、表皮、真皮および皮下組織に到達する薬物の用量を増加させる。そのため、マイクロニードル製品は低分子、高分子薬物の経皮吸収を促進することに広く用いられ、広い応用の見通しがある。また、マイクロニードル製品の使用は極めて便利であり、専門的な訓練を必要とせず、患者は自分で投与することができ、意外なニードル刺傷のリスクが低く、意外な傷害を引き起こす可能性が低く、使用後の処理も容易である。
従来のmRNA製剤は一般的に筋肉内または静脈内注射を行い、免疫効果は理想的でなく、それに肝臓の負担を増やし、毒性がある。
【0006】
また、従来のmRNA製剤の担持容量が比較的低く、且つ静脈内注射の投与方法をとるため、製剤の用量が高く、患者に毒性・副作用を与える潜在的リスクが高い問題がある。従来の方法で製造される大容量mRNA製剤を注射する場合、生体内で治療効果を達成するために必要な量が比較的高く(1回あたりの注射量が50μLを超える)、マイクロニードル投与を行うことが困難である(マイクロニードル投与の場合、薬物の用量がmg以下であり、且つ投与容量が50μLを超えない)。
【0007】
そのため、臨床の必要性を満たすために、マイクロニードルによるmRNA製剤の注射を実現するためには、担持容量がより高く、用量および毒性・副作用がより低く、治療効果がより高いmRNAマイクロニードル注射製剤を見つける必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の従来の多くの問題を解決するために、本発明はマイクロニードル注射mRNA製剤およびその使用を提供し、当該製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液には対応するタンパク質をコードするためのmRNAおよび緩衝液が含まれる。緩衝液のpHを改良することにより、脂質ナノ粒子の担持容量を大幅に向上させ、製剤の添加剤の使用量を低下させ、マイクロニードル注射量もより少なくなり、毒性・副作用がより少なくなり、治療効果がより高くなることを見つめる。また、マイクロニードルによる注射は筋肉内におけるmRNA製剤の有効発現レベルを向上させ、肝臓における発現レベルを低下させ、体内におけるmRNA製剤の発現時間を延長させ、生体内における低用量mRNA製剤の高抗体価を実現できることを見つける。本発明はmRNA製剤のマイクロニードル経皮投与を確実に実現し、マイクロニードル皮下注射製剤は安定性が非常に高く、長期保存ができ、細胞レベル測定により非常に高い免疫効果があることがわかり、マイクロニードル注射により免疫系再構築の免疫不全マウス腫瘍モデルに投与し、顕著な腫瘍抑制効果が認められ、且つ毒性降下・効果向上の潜在的な応用見通しを有する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本発明は大担持容量マイクロニードル注射mRNA製剤を提供し、前記製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させる。そのうち、水相溶液には疾病治療・予防物質をコードするためのmRNAがおよび緩衝液が含まれる、前記緩衝液のpHが4.5~6.8である。あるいは、本発明は製剤を提供し、当該製剤には脂質ナノ粒子が含まれ、前記ナノ粒子には水相溶液が含まれ、あるいは水相溶液は脂質ナノ粒子に包み込まれ、前記水相溶には疾病治療・予防物質をコードするためのmRNAが含まれ、前記水相溶液のpHが4.5~6.8である。
【0010】
本発明による「マイクロニードル」は、一般的な注射器とは異なり、本発明のマイクロニードルは針が短く、若しくは薬物の用量が低いことを示し、例えばマイクロ流路、1-999ミクロン内径の流路を用いて、あるいは用量はマイクロリットルまたはマイクログラムを単位とし、例えば1-10マイクログラム、もしくは0.1-200マイクロリットル。あるいはマイクロニードル注射を行う場合、マイクロリットルレベルのマイクロチャネルによってヒトの浅い組織・部位に徐々に注射し、例えば皮下、皮内若しくは筋肉組織など。
【0011】
そこで、本発明はマイクロニードルによる皮下注射方法を提供し、特にマイクロニードル注射製剤には脂質に包み込まれて疾病治療物質をコードするmRNAが含まれ、例えば疾病治療・予防物質mRNA。このような投与方法により、肝臓における発現レベルを著しく低下させることができ、顕著な減毒増効の効果がある。一態様では、本発明はmRNA製剤の注射部位における発現レベルを向上させ、肝臓など他の無関係臓器における発現レベルを低下させる方法を提供し、前記方法はマイクロニードル注射を行い、前記mRNA製剤は脂質ナノ粒子に包み込まれる。一態様では、本発明は体内におけるmRNA製剤の発現時間を延長させる方法を提供し、前記方法はマイクロニードル注射を含み、そのうち、前記mRNA製剤は脂質ナノ粒子に包み込まれる。一態様では、本発明は低用量mRNA製剤の抗体価を向上させる方法を提供し、前記方法はマイクロニードル注射を含み、前記mRNA製剤は脂質ナノ粒子に包み込まれる。前記注射は皮下注射である。前記mRNA製剤は水溶液の形であり、前記水溶液は脂質ナノ粒子に包み込まれ、あるいは脂質ナノ粒子には疾病治療・予防物質をコードするmRNAが含まれる。いくつかの態様では、水相溶液のpHは4.5~6.8である。
【0012】
研究開発チームは前期の研究により、筋肉内注射およびその他の注射方法に比べ、マイクロニードル注射で到達した真皮には抗原提示細胞が豊富に含まれ、この免疫細胞は免疫反応を開始する上で極めて重要であり、免疫反応過程において効果を発揮することが分かり、従ってマイクロニードルによって免疫系抗腫瘍薬物を送達することは治療効果向上の潜在力を有し、しかも主に真皮の免疫効果を向上させ、肝臓および脾臓における発現レベルを向上させず、筋肉内注射に比べ、肝臓における発現レベルを低下させることができ、生体においてウイルスに対する強固な防御を提供し、臓器に対してより安全であり、顕著な減毒増効の効果を有し、それによって局所投与を実現し、その他の臓器および組織に対する薬物の潜在的毒性を軽減させる。
【0013】
マイクロニードルは本当に無痛投与を実現することができが、マイクロニードル皮下注射は小用量投与であり、皮内組織構造の特定の制限(図1)のため、1回あたりの投与量が非常に少なく、有効薬物濃度の向上に対して客観的ニーズがあり、非常に投与量が限られ、例えば、マウスモデルに対する投与量が200μLを超えてはならず、好ましくは50μL以下であり、1回あたりの投与量が比較的高い製剤は経皮吸収効率が低く、注射部位を腫脹させ、投与が困難になることもある。
【0014】
二重特異性抗体は2種の特異性抗原結合部位を含む人工抗体であり、標的細胞と機能分子(細胞)の間に橋を架け、誘導性のある免疫反応を励起することができ、遺伝子工学抗体の一種であり、今は抗体工学分野のホットスポットとなり、腫瘍の免疫治療において広い応用見通しを有する。T細胞を介する二重特異性抗体は、殺傷性のあるT細胞を腫瘍細胞に集め、標的依存性のあるポリクローナルT細胞の活性化を誘導し、サイトカインおよびパーフォリンとグランザイムを放出し、最終的に腫瘍細胞の分解をもたらし、免疫治療薬である。様々な二重特異性抗体(BsAb、bispecific antibody)の構造は、絶えざる開発・革新により、異なる2つの抗体の一本鎖scFv(single chain Fv)を直列するものを含む。今では、最も成功した二重特異性抗体はblinatumomabであり、これはCD19XCD3 bi-(scFv)2であり、T細胞を活性化してリンパ腫細胞に集めることができ、急性リンパ性細胞白血病の治療に使用することが承認された。しかし、現在、ほとんどの二重特異性抗体は発現・製造上の課題に直面し、例えば、収率が低く、長期保存の安定性が低く、時間が経つにつれて凝集しやすく、さまざまな不純物が生成するなど。そのため、新しい二重特異性抗体医薬品の製造工程の開発、製造、テスト、臨床材料の開発には通常数年かかる。また、このような治療効果の良い二重特異性抗体blinatumomabは、患者の血清中の半減期が2時間未満であり、輸液ポンプによる持続投与が必要であり、投与方法が極めて不便であり、患者のコンプライアンスが低下する。また、このような免疫治療系二重特異性抗体が治療用途に用いられる場合、患者はサイトカインストームのリスク、およびその他の毒性・副作用に直面する。そのため、mRNAが患者体内において二重特異性抗体をコードすることによって二重特異性抗体自体の製造における問題を解決し、それに自体が免疫増強効果を有するマイクロニードル皮内投与方法を組み合わせ、皮膚内の大量の抗原送達細胞により免疫治療効果を向上させ、それによって用量を低下させると同時に免疫効果を向上させる目的を達成し、さらに免疫治療薬による毒性・副作用を軽減させることが望まれる。
【0015】
従来のmRNA製剤(例えばmRNAワクチン、二重特異性抗体mRNA製剤など)の担持容量が比較的低いため、生体内において治療効果を達成するために必要な用量が比較的高く(マイクロニードル投与の場合、用量がミリグラム(mg)レベルにコントロールされる必要がある)、マイクロニードル投与を行うことが困難であり、それに製剤の用量が高く、患者に毒性・副作用を与える潜在的リスクが高く、担持容量が低いため、多くの高分子添加剤が体内に持ち込まれ、副作用リスクが高いなど。そのため、担持容量がより高く、用量および毒性・副作用がより低く、治療効果がより高く、予防・治療効果を有するマイクロニードル注射mRNA製剤を開発する必要があり、例えばマイクロニードル注射新型コロナウイルスmRNAワクチン製剤またはマイクロニードル注射コーディング二重特異性抗体mRNA製剤、当該製剤はヒトまたは哺乳動物において抗体を産生させることができ、それによってウイルスによる感染を予防し、またはウイルス感染されたヒト若しくは哺乳動物を治療する。
本発明に係る脂質ナノ粒子は薬物送達キャリアであり、1種または複数種の異なる脂質から構成されるリポソームが含まれる。
【0016】
例えば、従来の新型コロナウイルスmRNA製剤またはコーディング二重特異性抗体mRNA製剤は、担持容量が比較的低いので、同じ用量の場合、必要な投与製剤の体積が大きくなり、マウスモデルに対する1回あたりの投与量50μLを超え、マイクロニードル投与過程において腫脹・血管外露出しやすく、マイクロニードル投与を行うことが困難であると同時に、担持容量が低いため、多くの高分子添加剤が体内に持ち込まれ、副作用リスクが高い。従って、mRNA製剤のマイクロニードル投与を実現するためには、mRNA製剤の担持容量を高める必要がある。
【0017】
また、マイクロニードル投与製剤の低担持容量はマイクロニードルの治療効果に直接影響し、若し単位体積当たりの薬物含有量を高めれば、担持容量を高めるだけでなく、マイクロニードル投与の治療効果も大幅に高める。
【0018】
本発明はmRNA製剤の製造過程における水相溶液のpHを改良することにより、マイクロニードル皮下注射製剤中の脂質ナノ粒子のmRNA担持容量を顕著に向上させ(あるいはmRNAの品質を顕著に向上させ)、同じ添加剤の使用量の下で、単位体積当たりのmRNA担持容量を向上させることにより、同じ用量の投与製剤の体積を効果的に減少させ、マイクロニードル皮内投与を実現し、且つ著しい疾病治療効果を得ることができ、それと同時に体内に持ち込まれる高分子添加剤量を減らし、ある程度添加剤による副作用を軽減させ、例えば、PEGなどの成分がその他の臓器や組織などに対する免疫刺激を軽減する。
【0019】
いくつかの態様において、本発明は従来のトリメチルアミン、トリエチルアミン塩酸塩などの成分が含まれる水相溶液に比べ、本発明が提供するアミノブタントリオールおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩が含まれる水相溶液は注射製剤の担持容量を著しく向上させ、それによってマイクロニードル投与を確実に実現し、それと同時に、当該製剤は非常に高い安定性を有し、長期保存ができ、mRNAなどの薬物の含有量が安定し、良好な臨床使用条件がある。
【0020】
本発明により、脂質ナノ粒子中の水相溶液の適切なpHを維持することにより、マイクロニードル皮下注射注射に用いるmRNA製剤の担持容量を著しく向上させることが明らかとなり、若し水相溶液のpHを4.5~6.8などの酸性範囲内に調節すれば、リポソームに担持されるmRNA含有量を顕著に向上させ、特定のpH条件下で、即ちpH5.0~5.5の場合最適を達成することができる。その理由は、製造過程において、酸性環境下では、イオン化可能な脂質を正に帯電させ、同じ条件では、より多くの核酸分子(例えばmRNAなど、自身の電荷を負に帯電させる)を吸着することができ、この最適は水相溶液がpH5.0~5.5の場合現れ、pH7.4またはpH4.0など条件下での緩衝液に比べ、pH4.5~6.8の場合、核酸分子をより効果的に担持することができ、比較的安定的且つ使用可能な製剤を達成することができ、そのため、担持容量がより高い。さらに好ましくは、前記緩衝液のpHは4.5~6.0である。
【0021】
ここで「担持容量」とは、実質的に脂質粒子に包み込まれる有効な薬物の数量または質量を指し、例えば、本発明の場合、1個当たりの脂質粒子に包み込まれるmRNAの重量若しくは数量の増加を指し、適切なpHの場合、単位体積当たりの脂質ナノ粒子中のmRNA含有量若しくは有効物質含有量、つまり単位体積当たりの脂質ナノ粒子中の有効薬物含有量を指し、薬物の有効濃度に相当し、ここでの薬物はmRNAであってもよい。もちろん、mRNA自体に限らず、水相溶液中のその他の補助製剤も含み、これらの補助製剤はmRNAの活性、安定性を向上させることができる。同じ体積の脂質粒子に包み込まれるmRNAの重量若しくは数量を指し、水相溶液のpHが変化すると、同じ体積の脂質粒子に包み込まれるmRNAの重量若しくは数量を増加させることができる。
【0022】
緩衝液のpHが4.5~6.8の範囲に対して、緩衝液のpHが4.5~6.0の場合、マイクロニードル皮下注射mRNA製剤の担持容量がさらに向上し、そのため、好ましくは、緩衝液のpHが4.5~6.0である。
いくつかの態様では、前記緩衝液のpHが5.0~5.5、若しくは5.5、若しくは4.5、若しくは6.0である。
【0023】
本発明は大量の実験により、緩衝液のpHを調節し、7.4から4.5~6.0に調節することにより、脂質ナノ粒子中のmRNA担持容量を最大限に高めることができることがわかった。その原因は、製造過程において、酸性環境下で、イオン化可能な脂質を正に帯電させ、同じ条件では、より多くの核酸分子(例えばmRNAなど、自身の電荷を負に帯電させる)を吸着することができる。一方、本システムにおいて、水相溶液がpH5.5の場合、製造する過程において、有機相中のイオン化可能な脂質により多くの正電荷を帯電させ、同じ条件では、より多くの核酸分子を吸着し、且つ核酸分子をより緊密に包み込み、比較的安定した製剤を達成することができる。異なる緩衝液は最適なpH値で最高の薬物担持量を有するが、複数種の緩衝液の場合、この範囲内にあることが最適であり、担持容量を顕著に高めることができることが分かった。
【0024】
ここでの「水相溶液」は水または含水緩衝液であり、さらに、前記緩衝液は水、Tris緩衝液、酢酸塩緩衝液、リン酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、炭酸塩緩衝液、バルビツール酸塩緩衝液、TE緩衝液、PBS緩衝液のうち1種または複数種である。
いくつかの態様では、前記酢酸塩緩衝液は酢酸ナトリウム緩衝液、酢酸アンモニウム緩衝液、酢酸リチウム緩衝液を含む。
【0025】
さらに、前記Tris緩衝液にはアミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、氷酢酸、酢酸ナトリウム三水和物および水が含まれる。前記酢酸ナトリウム緩衝液には酢酸ナトリウム、氷酢酸および水が含まれる。
【0026】
研究により、いかなる緩衝液系の場合でも、pHを4.5~6.8の範囲内に調節すれば、マイクロニードル皮下注射に用いられるmRNA製剤の担持容量を著しく向上させることができ、緩衝液系として水を用いても、そのpHを4.5 ~ 6.8の範囲内に調節すれば、その他のpH範囲に比べ、mRNA製剤の担持容量を著しく向上させることが分かった。つまり、緩衝液pHの変化は、脂質ナノ粒子中のmRNAの担持容量若しくは含有量に直接影響を与え、この傾向が顕著であり、且つ緩衝液系のあり方の影響を受けない。
【0027】
本発明の説明と文脈によると、脂質ナノ粒子を製造する過程において、mRNAが含まれる水相溶液と脂質溶液(有機溶液)を用いてマイクロ流路チップによりナノ粒子を形成させるが、水相溶液のpHが最終的に形成される脂質ナノ粒子の担持容量に顕著な影響を与えることがわかった。本発明の真髄によれば、ナノ粒子を製造する過程において、水相溶液のpHが4.5-6.8の間にあれば、担持容量を顕著に高めることができる。一般的に当業者には容易に想到されるように、脂質ナノ粒子が包み込むのは水相溶液であり、水相溶液には疾病治療活性物質をコードするmRNAが含まれるため、脂質粒子に包み込まれる水相溶液のpHも実質的に4.5-6.8の間にある。
【0028】
本発明の精神または真髄によると、脂質ナノ粒子中の水相溶液のpHは4.5~6.8の間にある。粒子を製造する場合、性質の異なる2種の溶液(水相溶液のpHは4.5~6.8の間にあり、mRNAが含まれ、脂質が含まれる溶液)を用いて製造設備によって形成させ、担持容量を向上させ、形成した最終製品では、脂質粒子中の水相溶液のpHも4.5~6.8の間にあることが分かった。もちろん、実際に投与または注射する際、ヒトの血液若しくは組織のpHに近いpHの溶液を調製して注射することができ、例えばpHが7.0程度、この注射溶液にも本発明の脂質ナノ粒子が含まれ、脂質ナノ粒子に含まれるmRNAの水相溶液のpHは依然として4.5~6.8の間にある。これも一般的に本発明の当業者には容易に理解される。
【0029】
「疾病治療・予防活性物質」は、如何なるタンパク質、ポリペプチド断片、抗原または抗原断片、抗体または抗体断片であってもよい。これらの物質は本発明の定義されるmRNAによってコードされることができる。ここでの治療とは主に上記の活性物質により何らかの疾病の症状を軽減させまたは疾病を治癒することを指し、例えば腫瘍またはガンである。疾病予防とは、ある疾病の発生を防止することを指し、例えばワクチン製剤、健康なヒトにワクチンを注射してある疾病の発生を防止し、例えば伝染性疾病、ウイルス性風邪など、事前にワクチンを注射してある疾病の発生を防止することができ、ワクチン製剤は抗原若しくは抗原片段をコードするmRNAを用いてもよい。
【0030】
脂質の溶媒は一般的には有機溶媒であり、例えば無水エタノールであり、水相と有機相は相互に溶解する可能性があるが、微粒子製造過程においては、チップ製造により、油中水のような形を形成させるため、水相溶液の粒子内のpHは水相溶液自体のpHであり、水相のpHに実質的に影響を与えない。
【0031】
従って、異なる緩衝液系を用いて最後に得られる製剤は担持容量に違いがある可能性があり、ある緩衝液系を用いてより高い担持容量の脂質ナノ粒子を得ることができる。しかし、同じ緩衝液系に対して、そのpHの変化は担持容量に直接影響を与え、従って、より高い担持容量を有するマイクロニードル皮下注射mRNA製剤を製造するためには、如何なる緩衝液系を用いても、そのpHを4.5 ~ 6.8の範囲内に調節する必要があり、好ましくは4.5~6.0の範囲内である。
【0032】
また、異なる液系については、最高担持容量を達成するために必要なpHに違いがある可能性があるが、最適な範囲は基本的に4.5~6.8の範囲内であり、これは従来の脂質ナノ粒子のpH4.0またはpH7.4とは明らかに異なる。
いくつかの態様では、前記緩衝液系はTris緩衝液である。
いくつかの態様では、前記Tris緩衝液のpHは5.5である。
【0033】
いくつかの態様では、前記Tris緩衝液中のアミノブタントリオール:リス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩:氷酢酸:酢酸ナトリウム三水和物:水の質量比は99.2:377.6:13.76:64:160000である。
さらに、前記脂質溶液中の脂質含有量は8~20mg/mLである。
【0034】
研究により、脂質ナノ粒子中の脂質成分については、いかなる脂質成分を用いても、緩衝液のpHを4.5~6.8の範囲内に調節すれば、マイクロニードル皮下注射mRNA製剤の担持容量を著しく向上させることが分かった。つまり、緩衝液pHの変化は、脂質ナノ粒子中のmRNA担持容量に直接影響を与え、この傾向が顕著であり、且つ脂質ナノ粒子中の脂質成分の影響を受けない。
さらに、前記脂質はイオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質およびPEG化された脂質を含む。
【0035】
また、本発明は大量の研究により、製剤中の脂質含有量を調整することにより、リポソームの担持容量を著しく高めることが分かった。前記脂質にはコレステロール、イオン化可能な脂質、リン脂質およびPEG化された脂質が含まれ、複合リポソームである;脂質含有量の向上とは、コレステロール、イオン化可能な脂質、リン脂質およびPEG化された脂質の4つの成分の含有量を同時に向上させることを指し、脂質溶液中の脂質含有量を最初の7.72mg/mLから8~20mg/mLに向上させ、好ましくは15.44mg/mLに向上させ、それによって脂質製剤系の担持容量を29.39μg/mL程度から少なくとも157.75μg/mL程度まで向上させる。
【0036】
さらに、前記イオン化可能な脂質はC12-200、MC3、DLinDMA、DLin-MC3-DMA、DLinkC2DMA、cKK-E12、ICE、HGT5000、HGT5001、OF-02、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMA、DMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、DLin-K-XTC2-DMA、SM-102、ALC-0315、HGT4003およびJK-102-CAのうち1種または複数種である。
【0037】
さらに、前記リン脂質はセラミド、脳リン脂質、セレブロシド、ジアシルグリセロール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル- sn -グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジミリストイル- sn -グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-(1-グリセリン)ナトリウム(DOPG)、1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロール-3-ホスホエタノールアミン(POPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロー3-ホスファチジルコリン(POPC)、1-ステアリル-2-オレイル-ホスホエタノールアミン(SOPE)、スフィンゴミエリンのうち1種または複数種である。
【0038】
さらに、前記PEG化された脂質はDMG-PEG1000、DMG-PEG1300、DMG-PEG1500、DMG-PEG1800、DMG-PEG2000、DMG-PEG2200、DMG-PEG2500、DMG-PEG2700、DMG-PEG3000、DMG-PEG3200、DMG-PEG3500、DMG-PEG3700、DMG-PEG4000、DMG-PEG4200、DMG-PEG4500、DMG-PEG4700、DMG-PEG5000、ALC-0159、M-DTDAM-2000、C8-PEG、DOGPEG、セラミドPEGおよびDSPE-PEGのうち1種または複数種である。
さらに、前記脂質溶液中の脂質含有量は8~20mg/mlである。
さらに、前記イオン化可能な脂質:コレステロール:リン脂質:PEG化された脂質の質量比は(9~10):(3~4):(2~3):1である。
【0039】
いくつかの態様では、前記イオン化可能な脂質はSM-102SM-102(ヘプタデカン-9-イル-8-(((2-ヒドロキシエチル)(6-オキソ-6-((ウンデカノキシ)ヘキシル)アミノ)オクタン酸エステル)である;リン脂質はDSPC(1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)である;PEG化された脂質はDMG-PEG(1,2-ジメチルスチレン-rac-グリセロール-3-メトキシポリエチレングリコール-2000)であり、そのPEG分子量範囲は1000~5000Daであってもよい。
【0040】
いくつかの態様では、前記PEG化された脂質はDMG-PEG2000である;前記SM-102:コレステロール:DSPC:DMG-PEG2000の質量比は141.36:59.26:31.44:14.97である。
さらに、前記疾病治療物質は核酸、タンパク質、無機塩のうち1種または複数種である。
【0041】
研究により、脂質ナノ粒子に包み込まれる疾病治療物質については、如何なる疾病を治療する物質であってもよく、どんな物質であっても、pHを適切な範囲内に調節すれば、脂質ナノ粒子中の担持容量を著しく向上させることができることが分かった。
さらに、前記疾病治療物質はmRNAワクチンまたは二重特異性抗体である。
【0042】
研究により、脂質ナノ粒子中のmRNAについては、どんなmRNAを用いても、緩衝液のpHを4.5~6.8の範囲内に調節すれば、マイクロニードル皮下注射mRNA製剤の担持容量を著しく向上させることができることがわかった。つまり、緩衝液pHの変化は、脂質ナノ粒子中のmRNA担持容量に直接影響を与え、この傾向が顕著であり、且つナノ粒子中のmRNAの種類の影響を受けない。
いくつかの態様では、前記mRNAは新型コロナウイルスをコードするmRNAである。
いくつかの態様では、前記mRNAは新型コロナウイルスのSタンパク質をコードするmRNAである。
【0043】
いくつかの態様では、新型コロナウイルスのSタンパク質をコードするmRNAはS protein-mRNA(新型コロナウイルスのSタンパク質を発現させる配列)であり、阿法納生物技術有限公司から購入され、Lot:2011092101である。
いくつかの態様では、前記二重特異性抗体をコードするmRNAはSEQ ID NO:1に示される配列を有する。
【0044】
一形態では、本発明は大担持容量マイクロニードル注射製剤の製造における製剤の使用を提供し、前記製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液には抗原をコードするmRNAおよび緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.8である。
さらに、前記緩衝液のpHは4.5~6.0である。
【0045】
もう一つの形態では、本発明は大担持容量のマイクロニードル注射製剤の製造における緩衝液のpHの使用を提供し、前記製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液には抗原をコードするmRNAおよび緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.8である。
【0046】
本発明は研究により、水相溶液中の緩衝液のpHはマイクロニードル皮下注射mRNAコーディング二重特異性抗体製剤の担持容量に直接影響を与え、適切なpHに調節することにより、脂質ナノ粒子中の担持容量を著しく向上させることができることがわかった。
さらに、前記緩衝液のpHは4.5~6.0である。
【0047】
本発明は大量の実験により、緩衝液のpHを調節し、元の4.0または7.4から4.5~6.8に調節することにより、好ましいpHが4.5~6.0、リポソームの担持容量をさらに大幅に向上させることが分かった。
【0048】
もう一つの形態では、本発明は大担持容量マイクロニードル注射製剤の製造における脂質溶液中の脂質含有量の使用を提供し、前記製剤には水相溶液および脂質溶液が含まれ、脂質溶液は水相溶液を包み込むことによって脂質ナノ粒子を形成させ、水相溶液には抗原をコードするmRNAおよび緩衝液が含まれ、前記緩衝液のpHが4.5~6.8であり、前記脂質溶液中の脂質含有量は10~20mg/mLである。
さらに、前記緩衝液のpHは4.5~6.0である。
さらに、前記脂質はイオン化可能な脂質、コレステロール、リン脂質およびPEG化された脂質を含み、脂質溶液中の脂質含有量は8~2mg/mlである。
【0049】
もう一つの形態では、本発明は投与方法を提供し、前記方法にはマイクロニードルによって脂質ナノ粒子を注射投与し、前記ナノ粒子には水相溶液が含まれ、前記水相溶液には疾病治療・予防有効物質をコードするmRNAが含まれる。
さらに、前記注射は皮下注射である。
さらに、前記水相溶液のpHは4.5-6.8である。
さらに、前記水相溶液のpHは4.5~6.0である。
【0050】
もう一つの形態では、本発明は皮下注射mRNAコーディング薬物用注射器の製造におけるマイクロニードルの使用を提供し、前記製剤が上記大担持容量マイクロニードル注射製剤であることを特徴とする。
【0051】
本発明は大量の研究により、マイクロニードルによってmRNAワクチン、mRNAコーディング二重特異性抗体、またはFluc-mRNAを注射することにより、用量が低くなるだけでなく、体内における発現レベルが高くなり、mRNAコーディング薬物はより高い治療効果を有することがわかり。
【0052】
研究開発チームの研究によると、筋肉内注射およびその他の注射方法に比べ、マイクロニードル注射で到達した真皮には抗原提示細胞が豊富に含まれ、この免疫細胞は免疫反応を開始する上で極めて重要であり、免疫反応過程において効果を発揮することができ、従ってマイクロニードルによって免疫系抗腫瘍薬物を送達することは治療効果向上の潜在力を有する。
さらに、前記マイクロニードルの注射方法は週に1回であり、少なくとも3回注射する。
いくつかの態様では、マウスに対する注射量は3.6マイクログラムで、注射体積が0.2ミリリットル未満である。
いくつかの態様では、ヒトに対する注射量は、臨床試験成績に基づいてさらに確認することができる。
【0053】
もう一つの形態では、本発明はmRNA製剤の注射部位における発現レベルを向上させ、肝臓における発現レベルを低下させるmRNA製剤用注射器の製造におけるマイクロニードルの使用を提供する。
【0054】
本発明は研究により、マイクロニードルによってmRNA製剤を注射する場合、mRNAは主に注射部位の皮内、皮膚と筋肉内に集中して発現し、肝臓と脾臓における発現が比較的低いことがわかった。mRNA製剤を筋肉内注射する場合、mRNAは主に肝臓と脾臓において発現する。
【0055】
いくつかの態様では、マイクロニードルによって新型コロナウイルスmRNAワクチンを注射することは、用量が低くなるだけでなく、より高い免疫効果を得ることができる。
本発明が提供するマイクロニードル注射mRNA製剤はマイクロ流路ナノ薬物製造システムによって製造される。
【0056】
当該方法によって製造されるマイクロニードル注射mRNA製剤は良好なナノ薬物特性を有し、製造されるナノ担体の粒子径、粒子径分布、製剤安定性などの基本性能データによると、極めて高度なパラメータコントロールを実現し、優れた薬物送達キャリアのミクロ構造の特徴を有する;細胞生物学レベル上での機能検証において、極めて優れた生体適合性、高度な核酸カプセル化性能、優れた遺伝子トランスフェクション効率を示し、安全かつ効果的にmRNA機能遺伝子のカプセル化、送達および発現を実現し、強大な生物薬学潜在力および商業開発の将来性を示した;マイクロニードルによる投与は、マウス体内における発現効果が優れ、従来のテール静脈内、筋肉内注射に比べ、発現時間を顕著に延長させ、且つ筋肉における発現レベルを向上させ、肝臓における発現レベルを低下させ、潜在的な減毒増効応用の見通しを有する。
もう一つの形態では、本発明は体内におけるmRNA製剤の発現時間を延長させるmRNA製剤用注射器の製造におけるマイクロニードルの使用を提供する。
【0057】
もう一つの形態では、本発明は生体内における低用量mRNA製剤の抗体価を向上させるmRNA製剤用注射器の製造におけるマイクロニードルの使用を提供する。
【0058】
本発明は研究により、マイクロニードルによってmRNA製剤を注射することは、筋肉内または静脈内注射に比べ、注射量がより少なくなるが、免疫効果がより高くなり、しかも皮膚と筋肉におけるmRNAの発現時間を著しく延長させることができることがわかった。
【0059】
動物実験により、マイクロニードルによる投与方法は、非常に低いmRNA用量で注射しても、高用量mRNA製剤と同等の抗体価を達成できることがわかり、例えば注射量がわずか1.2μgの場合、10μgと同等の効果を達成することができる。
【発明の効果】
【0060】
本発明は以下の有益な効果を有する:
【0061】
(1)大担持容量mRNA製剤を製造することにより、mRNA製剤のマイクロニードル皮下注射投与を実現し、mRNAワクチン、二重特異性抗体mRNAのマイクロニードル皮下注射投与を実現する;
【0062】
(2)マイクロニードル皮下注射mRNA製剤中の緩衝液のpHを調節し、元の4.0または7.4から4.5~6.8に調節することにより、好ましいpHが4.5~6.0で、脂質ナノ粒子の担持容量を顕著に向上させる;
【0063】
(3)マイクロニードル皮下注射mRNA9製剤中のコレステロール、イオン化可能な脂質、リン脂質およびPEG化された脂質の含有量を向上させることにより、その担持容量を顕著に向上させる;
【0064】
(4)マイクロニードル皮下注射mRNAワクチンの担持容量を29.39μg/mL程度から157.75μg/mL程度まで向上させる。マイクロニードル皮下注射mRNAコーディング二重特異性抗体薬物製剤の担持容量を45μg/mL程度から102.9μg/mLに向上させる;
【0065】
(5)製造されるナノ担体の粒子径、粒子径分布、製剤安定性などの基本性能データによると、極めて高度なパラメータ制御を実現し、優れた薬物送達キャリアのミクロ構造の特徴を有する;
(6)非常に高い安定性を有し、2年以上保存でき、その中に含まれるmRNAは分解しない;
【0066】
(7)mRNAワクチンのマイクロニードルによる注射は、注射部位における発現レベルを向上させ、肝臓における発現レベルを低下させ、且つ対応する抗体を刺激して発現時間を延長させる使用を見つけた;
【0067】
(8)細胞生物学レベル上での機能検証において、極めて優れた生体適合性、高度な核酸カプセル化性能、優れた遺伝子トランスフェクション効率を示し、安全かつ効果的にmRNA機能遺伝子のカプセル化、送達および発現を実現し、強大な生物薬学潜在力および商業開発の将来性を示した;
【0068】
(9)マイクロニードル投与によるマウス体内の発現効果が高く、低用量mRNAワクチンで高抗体価を実現し、注射量がわずか1.2μgの場合、10μgと同等の効果を達成することができるため、ワクチンの臨床用量を低下させて安全性を高める可能性を提供する。
【0069】
(10)細胞レベル測定により、非常に高い二重特異性抗体効果があることがわかり、免疫不全マウスにマイクロニードル注射することにより、顕著な腫瘍抑制効果を発揮することができる。
発明の詳細な説明
定義
【0070】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語の意義は、本発明が属する技術分野の一般的な当業者が一般的に理解するものと同じである。以下の参考文献により、本発明で使用される多くの用語の一般的な定義を本分野の当業者に提供する。生物化学・分子生物学用語集(Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology)、(第2版) J. Stenesh(編纂)、Wiley-Interscience(1989);微生物学・分子生物学用語集(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)(第3版)、P. SingletonおよびD. Sainsbury (編纂)、Wiley-Interscience(2007);チェンバーズ科学技術用語集(Chambers Dictionary of Science and Technology)(第2版)、P. Walker (編纂)、Chambers (2007);遺伝学用語(Glossary of Genetics)(第5版)、R. Riegerなど(編纂)、Springer-Verlag (1991);およびハーパーコリンズ生物学用語集(The HarperCollins Dictionary of Biology)、W.G. Hale および J.P. Margham、(編纂)、HarperCollins (1991)。
【0071】
本明細書に記載されたものと類似または等価な任意の方法および組成物は、本発明の実践または検証に使用されることができるが、本明細書では、好ましい方法および組成物について説明する。本発明の目的のために、以下の用語は、明確かつ参照の便宜上定義される。長期にわたる特許法の慣例によれば、本明細書および特許請求の範囲において数量表示なしのポインティングを使用する場合、「1つまたは複数」を表す。用語「約」および「程度」が本明細書で使用される場合、互換性があり、一般的には、所与の数値の周囲の数値の範囲、および記述された数値の範囲内のすべての数値を指すと理解されるべきである。また、本明細書におけるすべての数値範囲は、その範囲内の各整数を含むと理解されるべきである。
核酸
【0072】
「核酸」とは、如何なるオリゴヌクレオチド鎖にドーピングされることができる化合物および/または物質を指す。本明細書において使用される例示的な核酸はDNA、メッセンジャーRNAを含むRNA(mRNA)、そのハイブリダイゼーション、RNAi誘導剤、RNAi剤、siRNA、shRNA、miRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、触媒DNA、三重ラセン形成RNA、アプタマー、ベクターなどを含むがこれに限定されず、本明細書において詳細に説明する。
【0073】
「デオキシリボ核酸」、「DNA」または「DNA分子」とは、2本鎖(ポリヌクレオチド)からなる分子を指し、それぞれの鎖はモノマー単位のヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、1つのヌクレオチドの糖と次のヌクレオチドのリン酸基との共有結合によって鎖中で互いに結合し、交互の糖-リン酸基骨格を生成する。2本の分離されるポリヌクレオチド鎖の窒素含有塩基は水素結合と結合して二本鎖DNAを製造する。
【0074】
「リボ核酸」、「RNA」または「RNA分子」とは、少なくとも2つの塩基-グリコシル-リン酸基を組み合わせてストリングされた鎖を指す。一実施例において、用語はヌクレオチドからなる化合物を含み、そのうち、糖の部分はリボースである。もう一つの実施例において、末端は、主鎖が改質されたRNAおよびRNA誘導体を含む。もう一つの実施例において、RNAはtRNA(転移RNA)、snRNA(小核RNA)、rRNA(リボソームRNARNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、短い干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)およびヌクレアーゼの形で存在してもよい。siRNAおよびmiRNAの使用については既に説明した(Caudy A Aら, Genes & Devel 1 6: 2491-96 および引用の参考文献)。また、これらのRNAは一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖の撚り合わせであってもよい。もう一つの実施例において、用語は、他のタイプの主鎖を含むが、同じ塩基を有する人工核酸である。もう一つの実施例において、人造核酸は PNA(ペプチド核酸)である。PNAはペプチド主鎖とヌクレオチド塩基を含み、他の実施例において、DNAとRNA分子と結合することができる。もう一つの実施例において、ヌクレオチドは改質オキセタンである。もう一つの実施例において、1つ以上のホスホジエステル結合をチオリン酸基結合に置換することによってヌクレオチドを改質させる。もう一つの実施例において、改質核酸は当技術分野でよく知られている天然核酸のリン酸基主鎖の他の任意の変異体を含む。本技術分野の一般的な当業者はチオリン酸基核酸およびPNAの使用に精通し、その説明は、例えば、Neilsen P E、CurrOpin Struct Biol 9:353-57; [0280] and Raz N Ket al BiochemBiophys Res Commun. 297:1075-84である。核酸の製造および使用は本技術分野の当業者に一般的に知られており、その説明は、 Molecular Cloning,(2001), Sambrook and Russell,eds. And Methods in Enzymology: Methods for molecular cloningineukaryoticcells(2003)Purchio and G. C. Fareedである。それぞれの核酸誘導体は、本発明の個別の実施例を表す。
【0075】
本明細書で使用される場合、「核酸」とはポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)およびプリン若しくはピリミジン塩基または修飾されたプリン若しくはピリミジン塩基(無塩基部位を含む)のN-グリコシドである他のポリヌクレオチドのうち1種または複数種を指す。「核酸」は、本明細書において使用される場合、リボヌクレオシドまたはデオキシリボヌクレオシドの共有結合ポリマーも含み、前記共有結合は、通常、サブユニット間のリン酸ジエステル結合によって結合されるが、場合によっては、チオリン酸エステル、メチルホスホン酸エステルなどによって結合される。「核酸」は一本鎖と二本鎖DNAおよび一本鎖と二本鎖RNAを含む。例示的な核酸としては、gDNA;hnRNA;mRNA;rRNA、tRNA、マイクロRNA(miRNA)、短い干渉RNA(siRNA)、核小体低分子RNA(snoRNA)、小核RNA(snRNA)および時系列RNA(stRNA)など、およびその任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
修飾されたヌクレオチド
【0076】
いくつかの態様では、前記mRNAは修飾されたヌクレオチドを含み、そのうち修飾されたヌクレオチドは以下の1種または複数種である。2-アミノアデノシン、2-チオチオシド、イノシン、ピロリジン、3-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、C-5プロピニル-シチジン、C-5プロピニル-ウリジン、2-アミノアデノシン、C 5-ブロモウリジン、C 5-フルオロウリジン、C 5-ヨードウリジン、C 5-プロピニル-ウリジン、C 5-プロピニル-シチジン、C 5-メチルシチジン、2-アミノアデノシン、7-脱窒アデノシン、7-脱窒グアニル、8-オキソアデノシン、8-オキソグアニル、O(6)-メチルグアニン、偽ウリジン、N-1-メチル-偽ウリジン、2-チオウリジンと2-チオシチジン;メチル化塩基;挿入された塩基;2’-フルオロリボース、リボース、2’-デオキシリボース、アラビノース、およびヘキソ糖;チオリン酸基と5′-N-ホスファイトアミド結合、およびPCT/CN2020/074825、PCT/CN2020/106696に記載の改質ヌクレオチドを修飾する。
mRNA
【0077】
本発明のmRNAは、少なくとも2種のヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは天然に存在するヌクレオチドであってもよいし、修飾ヌクレオチドであってもよい。ある実施例において、RNA分子は少なくとも約5種から約5,000種までのヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は少なくとも約5種のヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は多くとも約5,000種のヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約5種から約20種までのヌクレオチド、約5種から約40種までのヌクレオチド、約5種から約60種までのヌクレオチド、約5種から約80種までのヌクレオチド、約5種から約100種までのヌクレオチド、約5種から約200種までのヌクレオチド、約5種から約500種までのヌクレオチド、約5種から約1,000種までのヌクレオチド、約5種から約2,000種までのヌクレオチド、約5種から約5,000種までのヌクレオチド、約20種から約40種までのヌクレオチド、約20種から約60種までのヌクレオチド、約20種から約80種までのヌクレオチド、約20種から約100種までのヌクレオチド、約20種から約200種までのヌクレオチド、約20種から約500種までのヌクレオチド、約20種から約1,000種までのヌクレオチド、約20種から約2,000種までのヌクレオチド、約20種から約5,000種までのヌクレオチド、約40種から約60種までのヌクレオチド、約40種から約80種までのヌクレオチド、約40種から約100種までのヌクレオチド、約40種から約200種までのヌクレオチド、約40種から約500種までのヌクレオチド、約40種から約1,000種までのヌクレオチド、約40種から約2000種までのヌクレオチド、約40種から約5,000種までのヌクレオチド、約60種から約80種までのヌクレオチド、約60種から約100種までのヌクレオチド、約60種から約200種までのヌクレオチド、約60種から約500種までのヌクレオチド、約60種から約1,000種までのヌクレオチド、約60種から約2,000種までのヌクレオチド、約60種から約5,000種までのヌクレオチド、約80種から約100種までのヌクレオチド、約80種から約200種までのヌクレオチド、約80種から約500種までのヌクレオチド、約80種から約1,000種までのヌクレオチド、約80種から約2,000種までのヌクレオチド、約80種から約5,000種までのヌクレオチド、約100種から約200種までのヌクレオチド、約100種から約500種までのヌクレオチド、約100種から約1,000種までのヌクレオチド、約100種から約2000種までのヌクレオチド、約100種から約5,000種までのヌクレオチド、約200種から約500種までのヌクレオチド、約200種から約1,000種までのヌクレオチド、約200種から約2000種までのヌクレオチド、約200種から約5000種までのヌクレオチド、約500種から約1,000種までのヌクレオチド、約500種から約2000種までのヌクレオチド、約500種から約5,000種までのヌクレオチド、約1,000種から約2000種までのヌクレオチド、約1,000種から約5,000種までのヌクレオチドまたは約2000種から約5,000種までのヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約5種のヌクレオチド、約20種のヌクレオチド、約40種のヌクレオチド、約60種のヌクレオチド、約80種のヌクレオチド、約100種のヌクレオチド、約200種のヌクレオチド、約500種のヌクレオチド、約1,000種のヌクレオチド、約2000種のヌクレオチドまたは約5000種のヌクレオチドを含む。
【0078】
mRNAは、少なくとも1種の本明細書に記載の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ある実施例において、RNA分子は約1種から約100種までの修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は少なくとも約1種の修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は多くとも約100種の修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約1種から約2種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約3種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約4種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約5種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約10種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約1種から約100種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約3種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約4種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約5種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約10種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約2種から約100種までの修飾ヌクレオチド、約3種から約4種までの修飾ヌクレオチド、約3種から約5種までの修飾ヌクレオチド、約3種から約10種までの修飾ヌクレオチド、約3種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約3種から約100種までの修飾ヌクレオチド、約4種から約5種までの修飾ヌクレオチド、約4種から約10種までの修飾ヌクレオチド、約4種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約4種から約100種までの修飾ヌクレオチド、約5種から約10種までの修飾ヌクレオチド、約5種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約5種から約100種までの修飾ヌクレオチド、約10種から約20種までの修飾ヌクレオチド、約10種から約100種までの修飾ヌクレオチドあるいは約20種から約100種までの修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約1種の修飾ヌクレオチド、約2種の修飾ヌクレオチド、約3種の修飾ヌクレオチド、約4種の修飾ヌクレオチド、約5種の修飾ヌクレオチド、約10種の修飾ヌクレオチド、約20種の修飾ヌクレオチドあるいは約100種の修飾ヌクレオチドを含む。
【0079】
mRNAは少なくとも0.1%修飾ヌクレオチドを含んでもよい。修飾ヌクレオチドの質量分率は、修飾ヌクレオチドの質量/ヌクレオチドの総質量*100%によって計算される。ある実施例において、RNA分子は約0.1%から約100%までの修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は少なくとも約0.1%修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は多くとも約100%修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約0.1%から約0.2%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約0.5%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約1%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約2%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約5%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約0.1%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約0.5%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約1%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約2%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約5%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約0.2%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約1%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約2%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約5%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約0.5%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約2%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約5%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約1%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約2%から約5%までの修飾ヌクレオチド、約2%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約2%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約2%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約2%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約5%から約10%までの修飾ヌクレオチド、約5%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約5%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約5%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約10%から約20%までの修飾ヌクレオチド、約10%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約10%から約100%までの修飾ヌクレオチド、約20%から約50%までの修飾ヌクレオチド、約20%から約100までの%修飾ヌクレオチドあるいは約50%から約100%までの修飾ヌクレオチドを含む。ある実施例において、RNA分子は約0.1%の修飾ヌクレオチド、約0.2%の修飾ヌクレオチド、約0.5%の修飾ヌクレオチド、約1%の修飾ヌクレオチド、約2%の修飾ヌクレオチド、約5%の修飾ヌクレオチド、約10%の修飾ヌクレオチド、約20%の修飾ヌクレオチド、約50%の修飾ヌクレオチド、または約100%の修飾ヌクレオチドを含む。
【0080】
反応に使用されるヌクレオチド、例えばリボヌクレオチド(例えば、組み合わせられたATP、GTP、CTPおよびUTP)の総濃度は0.5mMから約500mMまでの間にある。ある実施例において、ヌクレオチドの総濃度は約0.5mMから約500mMまでである。ある実施例において、ヌクレオチドの総濃度は少なくとも約0.5mMである。ある実施例において、ヌクレオチドの総濃度は多くとも約500mMである。ある実施例において、ヌクレオチドの総濃度は約0.5mMから約1mMまで、約0.5mMから約5mMまで、約0.5mMから約10mMまで、約0.5mMから約50mMまで、約0.5mMから約100mMまで、約0.5mMから約200mMまで、約0.5mMから約300mMまで、約0.5mMから約500mMまで、約1mMから約5mMまで、約1mMから約10mMまで、約1mMから約50mMまで、約1mMから約100mMまで、約1mMから約200mMまで、約1mMから約300mMまで、約1mMから約500mMまで、約5mMから約10mMまで、約5mMから約50mMまで、約5mMから約100mMまで、約5mMから約200mMまで、約5mMから約300mMまで、約5mMから約500mMまで、約10mMから約50mMまで、約10mMから約100mMまで、約10mMから約200mMまで、約10mMから約300mMまで、約10mMから約500mMまで、約50mMから約100mMまで、約50mMから約200mMまで、約50mMから約300mMまで、約50mMから約500mMまで、約100mMから約200mMまで、約100mMから約300mMまで、約100mMから約500mMまで、約200mMから約300mMまで、約200mMから約500mMまでまたは約300mMから約500mMまでである。ある実施例において、ヌクレオチドの総濃度は約0.5mM、約1mM、約5mM、約10mM、約50mM、約100mM、約200mM、約300mMまたは約500mMである。
合成後処理
【0081】
mRNA合成後、5’キャップおよび/または3’テールを付加してもよい。キャップの存在により、ほとんどの真核細胞で発見されたヌクレアーゼに対する耐性を提供することができる。「テール」の存在により、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護し、および/またはタンパク質の発現レベルを調節することができる。
【0082】
次のように5’キャップを付加してもよい。第一、RNARNA末端ホスファターゼは5’ヌクレオチドから1つの末端リン酸基を除去し、2つの末端リン酸基を残す。その後、グアニル酸転移酵素を介してグアノシン三リン酸(GTP)を末端リン酸基に付加し、5,5,5三リン酸結合を生成する;次いで、メチル化転移酵素によってグアニンの7-窒素をメチル化する。キャップ構造の具体例としては、m7G(5’)ppp(5’(A、G(5’)ppp(5’)A およびG(5’)ppp(5’)Gが挙げられるが、これらに限定されない。より多くのキャップ構造は、既に公開されている米国出願No.US 2016/0032356 に記載されており、アシュクルハイク(Ashiqul Haque)ら、「嚢胞性線維症マウスモデルにおける化学修飾hCFTR mRNAの肺機能の回復」(ChemicallymodifiedhCFTR mRNAs recuperate lung function in a mouse model of cysticfibrosis)、科学レポート(Scientific Reports)(2018)8:16776、およびコア(Kore)ら、「5′-エンドキャップ類似体の最新進展:合成と生物学分岐」(Recent Developments in 5’-Terminal Cap Analogs:Synthesisand Biological Ramifications)有機化学ミニ読み物(Mini-Reviews in Organic Chemistry)2008、5、179-192は、参照によって本願に組み込まれる。
【0083】
テール構造はポリ(A)および/またはポリ(C)テールを含んでもよい。mRNAの3’末端(例えば、3’末端の10、20、30、40、50、60、70、80、90または100種のヌクレオチド)におけるポリ-Aテールは少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のアデノシンヌクレオチドを含んでもよい。mRNA の3’末端(例えば、3’末端の10、20、30、40、50、60、70、80、90または100種のヌクレオチド)におけるポリ-Aテールは少なくとも50%、55%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%のシトシンヌクレオチドを含んでもよい。
【0084】
本明細書に記載されているように、5’キャップおよび/または3’テールを付加することは、インビトロ合成において生成される無効転写物を検出することに役立ち、キャップおよび/またはテールが付加されない場合、早期に中止されるmRNA転写物のサイズは小さすぎて検出できない可能性がある。そのため、ある実施例において、mRNAの純度(例えば、mRNA中に存在する無効転写物のレベル)を測定するために、5’キャップおよび/または3’テールを合成mRNAに付加する。ある実施例において、本明細書で説明されるように、mRNAを精製する前に、5’キャップおよび/または3’テールを合成mRNAに付加する。その他の実施例において、本明細書で説明されるように、mRNAを精製した後に、5’キャップおよび/または3’テールを合成mRNAに付加する。
【0085】
上記の方法に加えて、キャップ付加あるいはテール付加のステップは、体内においてDNAからRNAへ転写する過程において行われ、これらの方法はすべて当業者が自由に選択することができる。
【0086】
本発明に従って合成されたmRNAはさらなる精製を必要とせずに使用することができる。特に、短鎖共重合体を除去する必要なく、本発明に従って合成されたmRNAを使用することができる。ある実施例において、本発明に従って合成されたmRNAをさらに精製する。本発明によれば、様々な方法によって合成mRNAを精製することができる。例えば、遠心分離、ろ過および/またはクロマトグラフィーによってmRNAを精製することができる。ある実施例において、合成されたmRNAはエタノール沈殿若しくはろ過若しくはクロマトグラフィー、またはゲル精製若しくはその他任意の適切な方法によって精製されることができる。ある実施例において、HPLCによってmRNAを精製する。ある実施例において、標準フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液によってmRNAを精製し、ことは当業者に周知されている。ある実施例において、タンジェントフローろ過によってmRNAを精製することができる。適切な精製方法は、US 2016/0040154、US 2015/0376220、2018年2月27日に提出されたPCT出願PCT/US18/19954、名称「メッセンジャーRNAを精製する方法」および于2018年2月27日に提出された「メッセンジャーRNAを精製する方法」と題されたPCT出願PCT/US18/19978に記載された方法を含み、これらすべての方法は参照によって本願に組み込まれ、且つ本発明を実施するために使用されることができる。
【0087】
ある実施例において、mRNAはキャップ付加およびテール付加の前に精製される。ある実施例において、キャップ付加およびテール付加の後にmRNAを精製する。ある実施例において、キャップ付加およびテール付加の前におよび後にmRNAを精製する。ある実施例において、遠心分離により、キャップ付加およびテール付加の前に若しくは後にまたは前におよび後にmRNAを精製する。ある実施例において、ろ過によってキャップ付加およびテール付加の前に若しくは後にまたは前におよび後にmRNAを精製する。ある実施例において、タンジェントフローろ過(TFF)またはクロマトグラフィーによってキャップ付加およびテール付加の前に若しくは後にまたは前におよび後にmRNAを精製する。
【0088】
いくつかの態様では、テール付加は転写に伴って同時に完了するため、テール付加およびキャップ付加のステップが完了した後に精製することができ、精製する方法は前記のとおりである。そのため、いくつかの態様では、精製するステップはテール付加の後に行われる。もちろん、mRNAはキャップ付加の前に精製されてもよい。もちろん、転写の後に精製されてもよい。当技術分野で使用可能な任意の方法によってmRNAの長さまたは無効転写物を検出・定量することができる。ある実施例において、ウエスタンブロッティング、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー、蛍光、ゲル電気泳動、HPLC、銀染色、スペクトル、紫外分光(UV)若しくはUPLCまたはそれらの組み合わせによって合成されたmRNA分子を検出する。本技術分野において一般的に知られているその他の検出方法は本発明に含まれる。ある実施例において、UV吸収分光を用いてキャピラリ電気泳動分離によって合成されたmRNA 分子を検出する。ある実施例において、ゲル電気泳動の前に、mRNAはグリオキサール染料によって改質される。ある実施例において、合成されたmRNAはキャップ付加またはテール付加の前に特性化される。ある実施例において、合成されたmRNAはキャップ付加およびテール付加の後に特性化される。
【0089】
ある実施例において、本発明に従って製造されるmRNAにはほとんど短鎖共重合体または無効転写物がない。特に、キャピラリ電気泳動またはグリオキサールゲル電気泳動により、本発明に従って製造されるmRNAは検出不可能なレベルの短鎖共重合体または無効転写物を含む。本明細書で使用する場合、「短鎖共重合体」または「無効転写物」とは、長さ未満の任意の転写物を指す。ある実施例において、「短鎖共重合体」または「無効転写物」の長さはヌクレオチドの100未満、90未満、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20または10未満である。ある実施例において、5’-キャップおよび/または3’-ポリAテールを付加した後に短鎖共重合体を検出または定量する。
UTR配列
【0090】
3’-非翻訳領域(3’-UTR):「3’-UTR」とは、通常、リーディングフレームの3’(即ち「下流」)に位置し、且つタンパク質に翻訳されない人工核酸分子の一部を指す。通常、3’-UTR は、mRNAのタンパク質コード領域(リーディングフレーム(ORF)またはコード配列(CDS))とポリアデニル酸配列の間にあるmRNAの一部である。本発明の場合において、3’-UTRとは、ポリアデニル酸配列など、テンプレートにおいてコードされず、RNAが転写されるが、成熟化プロセスにおいて転写後に付加される要素を更に含んでもよい。mRNAの3’-UTRは、アミノ酸配列に翻訳されない。 3′UTR配列は、一般的に遺伝子発現プロセスにおいてそれぞれのmRNAに転写される遺伝子によってコードされている。ゲノム配列は、まず、任意のイントロンを含む未成熟mRNAに転写される。未成熟mRNAは、その後、成熟化プロセスにおいて成熟mRNAに更にプロセシングされる。この成熟化プロセスは、5′キャップ付加、未成熟mRNAをスプライシングすることによる任意のイントロンおよび3′末端の修飾の除去(例えば、未成熟mRNAの3′末端のポリアデニル化および任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる切断など)というステップを含む。本発明の範囲内において、3′-UTRは、タンパク質コード領域の終止コドン、好ましくはタンパク質コード領域の終止コドンに隣接する3′末端とmRNAのポリアデニル酸配列の間に位置するものに対応する。「対応する」とは、3′-UTR配列が3′-UTR配列を定義するために用いられるmRNA 配列などにおけるRNA配列であってもよく、またはこのRNA配列に対応するDNA配列であってもよいことを意味する。本発明の範囲内において、「遺伝子の3′-UTR」とは、この遺伝子に由来する成熟mRNAの 3′-UTRに対応する配列であり、前記成熟mRNAは、遺伝子の転写および未成熟mRNAの成熟化によって得られるmRNAである。「遺伝子の3′-UTR」とは、3′-UTRのDNA配列およびRNA配列(センス鎖およびアンチセンス鎖の両方、並びに成熟および未成熟の両方)を含む。好ましくは、3′UTR は、20、30、40または50個のヌクレオチドを超える長さを有する。3′-非翻訳領域(3′UTR):3′UTRは、典型的にはmRNAの一部であり、mRNAのタンパク質コード領域(即ち、リーディングフレーム)とポリアデニル酸配列の間に位置する。mRNAの3′UTRは、アミノ酸配列に翻訳されない。本発明の範囲内において、3′UTRは、タンパク質コード領域の終止コドンの3′末端、好ましくはタンパク質コード領域の終止コドンに隣接する3′末端に位置し、且つポリアデニル酸配列の5′側、好ましくはポリアデニル酸配列に隣接する5′側のヌクレオチドへ延長する成熟mRNA配列に対応する。「対応する」とは、3′UTR配列が3′UTR配列を定義するために用いられるmRNA配列などにおけるRNA配列であってもよく、またはこのRNA配列に対応するDNA配列であってもよいことを意味する。本発明の範囲内において、「アルブミン遺伝子の3′UTR」などの「遺伝子の3′UTR」とは、この遺伝子に由来する成熟mRNAに対応する3′UTRの配列であり、前記成熟mRNAは、遺伝子の転写および未成熟mRNAの成熟化によって得られるmRNAである。「遺伝子の3′UTR」とは、3′UTRのDNA配列およびRNA配列を含む。
【0091】
5’-非翻訳領域(5’-UTR):通常、「5’-UTR」とは、リーディングフレームの5’(即ち“上流”)にい位置し、且つタンパク質に翻訳されない人工核酸分子の一部を指す。5’-UTRは、一般的にはメッセンジャーRNA(mRNA)の特定の部分であると理解され、前記メッセンジャーRNAは、mRNAのリーディングフレームの5’に位置する。通常、5’-UTRは、転写開始部位で開始し、リーディングフレームの開始コドンの前の1ヌクレオチドで終わる。好ましくは、前記5’-UTRは、20個、30個、40個、または50個のヌクレオチドを超える長さを有する。5’-UTRは、制御要素とも呼ばれる、遺伝子発現を制御するための要素を含むことができる。前記制御元素は、例えば、リボソーム結合部位であり得る。5’-UTRは、転写後修飾され、例えば、5’-キャップの付加によって修飾されてもよい。mRNAの5’-UTRは、アミノ酸配列に翻訳されない。5’-UTR配列は、一般的には遺伝子発現プロセスにおいてそれぞれのmRNAに転写される遺伝子によってコードされている。ゲノム配列は、まず、任意のイントロンを含む未成熟mRNAに転写される。次いで、未成熟mRNAは、成熟化プロセスにおいて成熟mRNAに更にプロセシングされる。この成熟化プロセスは、5′キャップ付加、未成熟mRNAをスプライシングすることによる任意のイントロンおよび3′末端の修飾の除去(例えば、未成熟mRNAの3′末端のポリアデニル化および任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼによる切断など)というステップを含む。本発明の範囲内において、5′-UTRは、開始コドンと5’-キャップとの間に位置する成熟mRNA配列に対応する。好ましくは、5′-UTRは、5′キャップの3′側に位置するヌクレオチドから、より好ましくは5′キャップに隣接する3′側に位置するヌクレオチドから、タンパク質コード領域の開始コドンの5′側に位置するヌクレオチドに、好ましくはタンパク質コード領域の開始コドンに隣接する5′側に位置するヌクレオチドへ延長する配列に対応する。成熟mRNAの5′キャップに隣接する3′側のヌクレオチドは、典型的には転写開始部位に対応する。「対応する」とは、5′-UTR配列が、5′-UTR配列を定義するために用いられるmRNA配列におけるRNA配列であってもよく、またはこのRNA配列に対応するDNA配列であってもいことを意味する。本発明の範囲内において、「遺伝子の5′-UTR」とは、この遺伝子に由来する成熟mRNAに対応する5′-UTRに対応する配列であり、前記成熟mRNAは、遺伝子の転写および未成熟mRNAの成熟化によって得られるmRNAである。「遺伝子の5′-UTR」とは、5′-UTRのDNA配列およびRNA配列(センス鎖およびアンチセンス鎖、並びに成熟および未成熟の両方)を含む。
【0092】
mRNA安定化の代替案として、天然に存在する真核生物mRNA分子は、特徴的な安定化要素を含有することが見出されている。例えば、それらは、その5’末端(5’-UTR)および/またはその3’末端(3’-UTR)に、いわゆる非翻訳領域(UTR)、並びに5’キャップ構造または3’-ポリアデニル酸テールなどの他の構造的特徴を含み得る。5’-UTRおよび3’-UTRは、両方とも典型的にゲノムDNAから転写されるため、未成熟(premature)mRNA要素である。5’キャップおよび3’-ポリアデニル酸テール(ポリアデニル酸テールまたはポリアデニル酸配列とも呼ばれる)などの成熟mRNAの特有の構造的特徴は、一般的にはmRNAプロセシングにおいて転写された(未成熟)mRNAに付加される。
【0093】
3’-ポリアデニル酸テールは、典型的には、転写されたmRNAの3’末端に付加される単調なアデノシンヌクレオチド配列である。それは、多くとも約400個のアデノシンヌクレオチドを含み得る。このような3’-ポリアデニル酸テールの長さは、個々のmRNAの安定性にとって重要な要素となり得ることが見出された。また、α-グロブリンmRNAの3’UTRは、公知のα-グロブリンmRNAの安定性にとって重要な因子となり得ることが示された(Rodgersら、Regulatedα-globin mRNA decay is a cytoplasmiceventproceeding through 3’-to-5’exosome-dependent decapping、RNA、8、第1526-1537ページ、2002)。α-グロビンmRNAの3’UTRは、その存在がmRNAのインビトロ安定性に関連している特定の核タンパク質-複合体(α-複合体)の形成に関与していることが明らかである(Wangら、An mRNA stability complex functions with poly(A)-binding protein to stabilize mRNA in vitro、Molecular and Cellular biology、第19巻、第7期、1999年7月、第4552-4560ページ)。リボソームタンパク質mRNAにおけるUTRについて、リボソームタンパク質mRNAの5’-UTRは、mRNAの成長関連翻訳を制御すると同時に、この調整のストリンジェンシーは、リボソームタンパク質mRNAの各々の3’-UTRによって付与されるという興味深い調節機能が更に示されている(Leddaら、Effect of the 3’-UTR length on the translationalregulation of 5’-terminal oligopyrimidine mRNAs、Gene、第344巻、2005、p.213-220)。このメカニズムは、通常は一定の方法で転写されるリボソームタンパク質の特異的発現を促進するため、リボソームタンパク質S9またはリボソームタンパク質L32などの幾つかのリボソームタンパク質mRNAは、ハウスキーピング遺伝子と呼ばれる(Janovick-Guretzkyら、Housekeeping Gene Expression in Bovine Liver is Affected by PhysiologicalState、Feed Intake、and Dietary Treatment、J.Dairy Sci.、Vol.90、2007、p.2246-2252)。従って、リボソームタンパク質の成長関連発現パターンは、主に翻訳レベルの調節に起因するものである。
【0094】
「3’-UTR要素」とは、3’-UTRに由来する、または3’-UTRの変異体もしくは断片に由来する核酸配列を含む核酸配列、或いは3’-UTRに由来する、または3’-UTRの変異体もしくは断片に由来する核酸配列からなる核酸配列を指す。「3’-UTR要素」は、好ましくは人工核酸配列、例えば人工mRNAの3’-UTRに含まれる核酸配列を指す。従って、本発明において、好ましくは、3’-UTR要素は、mRNA、好ましくは人工mRNAの3’-UTRによって含まれてもよく、または3’-UTR要素は、それぞれの転写テンプレートの3’-UTRによって含まれてもよい。好ましくは、3’-UTR要素は、mRNAの3’-UTR、好ましくは人工mRNA、例えば遺伝子操作されたベクター構築物を転写することによって得られるmRNAの3’-UTRに対応する核酸配列である。好ましくは、本発明における3’-UTR要素は、3’-UTRとして機能するか、または3’-UTRの機能を実行するヌクレオチド配列をコードする。
【0095】
従って、「5’-UTR要素」とは、5’-UTRまたは5’-UTRの変異体もしくは断片に由来する核酸配列を含む核酸配列、或いは5’-UTRまたは5’-UTRの変異体もしくは断片に由来する核酸配列からなる核酸配列を指す。「5’-UTR要素」は、好ましくは、例えば人工mRNAの5’-UTRに含まれる核酸配列などの人工核酸配列を指す。従って、本発明において、好ましくは、5’-UTR要素は、mRNA、好ましくは人工mRNAの5’-UTRによって含まれてもよく、または5’-UTR要素は、それぞれの転写テンプレートの5’-UTRによって含まれてもよい。好ましくは、5’-UTR要素は、mRNAの5’-UTR、好ましくは人工mRNA、遺伝子操作されたベクター構築物を転写することによって得られるmRNAの5’-UTRに対応する核酸配列である。好ましくは、本発明における5’-UTR要素は、5’-UTRとして機能するか、または5’-UTRの機能を実行するヌクレオチド配列をコードする。
【0096】
本発明による人工核酸分子における3’-UTR要素および/または5’-UTR要素は、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長および/または増加させる。従って、本発明による人工核酸分子は、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる3’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる3’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる3’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長および増加させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる5’-UTR要素、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる5’-UTR要素、または前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる3’-UTR要素および前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加・延長させる5’-UTR要素という1つまたは複数の機能的な3’-UTR要素および/または5’-UTR要素を特に含むことができる。好ましくは、本発明による人工核酸分子は、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長させる3’-UTR要素および/または前記人工核酸分子からのタンパク質産生を増加させる5’-UTR要素を含む。好ましくは、本発明による人工核酸分子は、少なくとも1つの3’-UTR要素と少なくとも1つの5’-UTR要素と、即ち、前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長および/または増加させ、安定なmRNAに由来する少なくとも1つの3’-UTR要素と前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長および/または増加させ、安定なmRNAに由来する少なくとも1つの5’-UTR要素とを含む。「前記人工核酸分子からのタンパク質産生を延長および/または増加させる」とは、通常、3’-UTRおよび/または5’-UTRを欠くか、または参照3’-UTRおよび/または参照5’-UTR(例えば、天然にORFと組み合わせて存在する3’-UTRおよび/または5’-UTR)を含む個々の参照核酸から産生されるタンパク質の量と比べ、個々の3’-UTR要素および/または5’-UTR要素を有する本発明の人工核酸分子から産生されるタンパク質の量を指す。特に、本発明による人工核酸分子の少なくとも1つの3’-UTR要素および/または5’-UTR要素は、3’-UTRおよび/または5’-UTRを欠くか、または天然にORFと組み合わせて存在する3’-および/または5’-UTRなどの参照3’-UTRおよび/または5’-UTRを含む個々の核酸と比べ、本発明による人工核酸分子からの、例えば、本発明によるmRNAからのタンパク質産生を延長させる。特に、本発明による人工核酸分子の少なくとも1つの3’-UTR要素および/または5’-UTR要素は、3’-UTRおよび/または5’-UTRを欠くか、または天然にORFと組み合わせて存在する3’-および/または5’-UTRなどの参照3’-UTRおよび/または5’-UTRを含む個々の核酸と比べ、本発明による人工核酸分子からの、例えば、本発明によるmRNAからのタンパク質産生、特にタンパク質発現および/または総タンパク質産生を増加させる。好ましくは、本発明による人工核酸分子の前記少なくとも1つの3’-UTR要素および/または前記少なくとも1つの5’-UTR要素は、3’-UTRおよび/または5’-UTRを欠くか、または天然にORFと組み合わせて存在する3’-UTRおよび/または5’-UTRなどの参照3’-UTRおよび/または参照5’-UTRを含む個々の核酸の翻訳効率と比べ、核酸の翻訳効率に負の影響を及ぼさない。さらにより好ましくは、翻訳効率は、その天然の状況における個々のORFによりコードされるタンパク質の翻訳効率と比べ、3’-UTRおよび/または5’-UTRによって増強される。本文で使用される「個々の核酸分子」または「参照核酸分子」とは、異なる3’-UTRおよび/または5’-UTRを除いて、参照核酸分子が3’-UTR要素および/または5’-UTR要素を含む本発明の人工核酸分子に相当する、好ましくは同一であるものを意味する。
医薬組成物
【0097】
本願は、化合物、タンパク質(抗原、抗体、抗体断片、融合タンパク質、ペプチド鎖、アミノ酸配列など)、修飾ヌクレオシド、修飾ヌクレオチド、または本願により提供される修飾核酸を含む医薬組成物を更に開示する。
【0098】
いくつかの実施例において、本発明の医薬組成物は、例えば非経口、経口、粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内、頭蓋内、膣内または腫瘍内などの当業者に知られている任意の方法によって被験者に投与することができる。
【0099】
医薬組成物は、液体製剤の静脈内、動脈内または筋肉内注射によって投与することができる。好適な液体製剤としては、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油などを含む。いくつかの実施例において、医薬組成物は、静脈内投与されるため、静脈内投与に適した形に製剤化される。いくつかの実施例において、医薬組成物は、動脈内投与されるため、動脈内投与に適した形に製剤化される。いくつかの実施例において、医薬組成物は、筋肉内投与されるため、筋肉内投与に適した形に製剤化される。医薬組成物は、リポソームなどの小胞を用いて投与することができる(Langer, Science 249:1527-1533(1990);Treat ら、in Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-BeresteinandFidler(eds.),Liss, New York, 第353-365 ページ目 (1989); Lopez-Berestein, ibid., 第317-327ページ目; generallyibid)。
【0100】
医薬組成物は、経口投与することができるため、経口投与に適した形、即ち、固体または液体製剤に製剤化することができる。適切な固体経口製剤としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、丸剤などを含み得る。適切な液体経口製剤は、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョン、油を含み得る。
【0101】
医薬組成物は、皮膚に局所投与することができるため、局所投与に適した形に製剤化することができる。適切な局所製剤としては、ゲル、軟膏、クリーム剤、ローション剤、ドロップ剤を含み得る。局所投与について、組成物またはその生理学的に許容される誘導体を調製し、薬学的担体の存在下または非存在下で溶液、懸濁液またはエマルジョンとして生理学的に許容される希釈剤に使用することができる。医薬組成物は、例えば直腸坐剤または尿道坐剤などの坐剤として投与することができる。いくつかの実施例において、医薬組成物は、ペレットの皮下埋め込みよって投与される。いくつかの実施例において、ペレットは、一定期間にわたって薬物の制御放出を提供する。医薬組成物は、本願で用いられるように、任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、希釈剤または他の液体担体、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤などを含み、所望の特定の剤形に適している薬学的に許容される賦形剤を追加的に含み得る。レミントンの《薬学の科学と実践》、第21版、A.R.Gennaro(Lippincott, Williams & Wilkins, Baltimore, Md., 2006;参照による本文に引用)には、医薬組成物を調製するための様々な賦形剤およびその調製のための既知の技術を開示している。
【0102】
いくつかの実施例において、薬学的に許容される賦形剤の純度は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%である。いくつかの実施例において、賦形剤は、ヒトの使用および獣医学的使用のために承認されている。いくつかの実施例において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認されている。いくつかの実施例において、医薬品グレードである。いくつかの実施例において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方および/または国際薬局方の基準を満たす。
【0103】
液体製剤のための薬学的に許容される担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、エマルジョンまたは油であってもよい。非水性溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルであってもよい。水性担体は、水、アルコール/水溶液、エマルジョンまたは懸濁液、生理食塩水および緩衝媒体を含み得る。油の例としては、石油、動物、植物または合成由来の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油および魚肝油であってもよい。
【0104】
非経口投与のための担体(皮下、静脈内、動脈内または筋肉内注射用)は、塩化ナトリウム溶液、リンゲルグルコース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル液および固定油を含んでもよい。静脈内投与の担体には、液体および栄養補給剤、例えばリンゲルグルコース系電解質補給剤などの電解質補給剤が含まれる。例としては、界面活性剤および他の薬学的に許容されるアジュバントの添加の有無にかかわらず、水および油などの無菌液体であってもよい。通常、水、生理食塩水、デキストロース水溶液および関連糖溶液、並びにプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、特に注射可能な溶液に対して、好ましい液体担体である。油の例としては、石油、動物、植物または合成由来の油、例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油および魚肝油であってもよい。
【0105】
医薬組成物は、結合剤(例えば、アラビアガム、コーンスターチ、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、シリカ、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム)、様々なpHおよびイオン強度の緩衝剤(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸基)、表面への吸収を防止するためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、洗浄剤(例えば、ツイーン20、ツイーン80、プルロニックF68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ドデシル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えば、グリセリン、ポリエチレングリコールグリセリン)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例えば、アスパルテーム、クエン酸)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、p-ヒドロキシ安息香酸エステル)、潤滑剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム)、流動助剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例えば、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例えば、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ドデシル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、塗料および成膜剤(例えば、エチルセルロース、アクリレート、ポリメタクリレート)およびアジュバントを更に含んでもよい。
【0106】
本願により提供される医薬組成物は、制御放出組成物、即ち、化合物が投与後の一定期間にわたって放出される組成物であってもよい。制御放出または持続放出組成物は、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中の製剤を含み得る。いくつかの実施例において、医薬組成物は、即時放出組成物、即ち、化合物全体が投与直後に放出される組成物であってもよい。
送達キャリア
【0107】
本発明による製剤に含まれるmRNAは、例えば抗体、または抗原、または抗体断片または抗原断片などのタンパク質を生体内で生成するために、任意の方法を利用して調製および送達することができる。いくつかの実施例において、mRNAは、ナノ粒子などのトランスファキャリアにカプセル化される。それに加え、このようなカプセル化の目的の1つは、核酸を分解する、および/または核酸の迅速な排出を引き起こす系または受容体を含有し得る酵素または化学物質の環境の影響から核酸を保護し、細胞取り込みおよび対応する配列の発現を促進することである。従って、いくつかの実施例において、適切な送達キャリアは、mRNAを含む安定性を向上させ、および/または標的細胞もしくは組織へのmRNAの送達を促進することができる。いくつかの実施例において、ナノ粒子は、例えばリポソームまたはポリマーベースのナノ粒子などの脂質ベースのナノ粒子が挙げられる。いくつかの実施例において、キャリアを送達するためのナノ粒子は、約1~1000nmの粒径を有することができる。ナノ粒子は、少なくとも0.001μg、0.01μg、0.1μg、1μg、10μg、100μg、1mg、10mg、100mg、1g以上のmRNAを含むことができる。
【0108】
当然のことながら、このようなナノ粒子は、コアシェル構造を有する粒子であってもよく、核酸とポリマーを混合してコアを形成した後、コア構造の外にリポソームを被覆し、本発明のミキサーによって完成することもできる。まず、ミキサーによって核酸およびポリマーを微粒子構造に形成させ、次いで、ミキサーによって微粒子および脂質成分を微粒子構造に形成させることができる。このようないわゆるコアシェル構造、例えば特許出願番号201880001680.5における全てのコアの材料およびシェルの材料は、いずれも本発明のミキサーを用いて形成することができ、当該特許のコアを構成する材料およびシェルを形成する材料の全ては、いずれも本発明の具体的な実施形態である。
【0109】
いくつかの実施例において、トランスファキャリアは、リポソーム小胞、または標的細胞および組織への核酸の移行を促進する他の手段である。適切なトランスファキャリアとしては、リポソーム、ナノリポソーム、セラミド含有ナノリポソーム、タンパク質リポソーム、ナノ粒子、リン酸カルシウム-ケイ酸塩ナノ粒子、リン酸カルシウムナノ粒子、シリカナノ粒子、ナノ結晶粒子、半導体ナノ粒子、ポリ(D-アルギニン)、ナノデンドリマー、アミロイド送達系、ミセル、乳剤、小胞、プラスミド、ウイルス、リン酸三カルシウム系ヌクレオチド、アプタマー、ペプチドおよび他のベクタータグを含むがこれらに限定されない。適切なトランスファキャリアとして、バイオイオンカプセルおよび他のウイルスキャプシドタンパク質アセンブリを使用することも考慮される(Hum. Gene Ther. 2008 September;19(9):887-95)。
【0110】
脂質ナノ粒子は、1種以上のイオン化可能な脂質、1種以上の非イオン化脂質、1種以上のステロール系脂質、および/または1種以上のPEG修飾脂質を含み得る。リポソームは、3種またはそれ以上の異なる脂質成分を含むことができ、脂質の1種の異なる成分は、ステロール系脂質である。いくつかの実施例において、ステロール系脂質は、イミダゾールコレステロールエステルまたは「ICE」脂質(参照により本明細書に組み込まれるWO2011/068810を参照)である。いくつかの実施例において、ステロール系脂質は、脂質ナノ粒子(例えば、リポソーム)中の全脂質の70%以下(例えば、65%および60%以下)を構成することができる。適切な脂質の例としては、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン)、スフィンゴ脂質、セレブロシドおよびガングリオシドを含んでもよい。
【0111】
イオン化可能な脂質の非限定的な例としては、C12-200、MC3、DLinDMA、DLin-MC3-DMA、DLinkC2DMA、cKK-E12、ICE(イミダゾリル)、HGT5000、HGT5001、OF-02、DODAC、DDAB、DMRIE、DOSPA、DOGS、DODAP、DODMAおよびDMDMA、DODAC、DLenDMA、DMRIE、CLinDMA、CpLinDMA、DMOBA、DOcarbDAP、DLinDAP、DLincarbDAP、DLinCDAP、KLin-K-DMA、 DLin-K-XTC2-DMA 、SM-102、ALC-0315、HGT4003およびJK-102-CAなど、またはそれらの組み合わせを含んでもい(これらに限定されない)。
【0112】
非イオン化脂質の非限定的な例としては、セラミド、セファリン、セレブロシド、ジアシルグリセロール、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホリルグリセロールナトリウム塩(DPPG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DSPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPPC)、1,2- ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスファチジルコリン(DOPC)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、および1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-(1’-rac-グリセリン)(DOPG)、1-パルミトイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(POPC)、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、スフィンゴミエリン、またはそれらの組み合わせを含んでもよい(これらに限定されない)。
【0113】
いくつかの実施例において、PEG改質脂質は、長さC6~C20のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した、長さ1000~5000DaのPEGを有するポリ(エチレン)グリコール鎖であってもい。PEG改質脂質の非限定的な例としては、DMG-PEG1000、DMG-PEG1300、DMG-PEG1500、DMG-PEG1800、DMG-PEG2000、DMG-PEG2200、DMG-PEG2500、DMG-PEG2700、DMG-PEG3000、DMG-PEG3200、DMG-PEG3500、DMG-PEG3700、DMG-PEG4000、DMG-PEG4200、DMG-PEG4500、DMG-PEG4700、DMG-PEG5000、ALC-0159、M-DTDAM-2000、C8-PEG、DOGPEG、セラミドPEGおよびDSPE-PEG、またはそれらの組み合わせを含んでもよい(これらに限定されない)。
【0114】
トランスファキャリアとしてポリマーを単独で使用するかまたは他のトランスファキャリアと組み合わせて使用することも考えられる。好適なポリマーとしては、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキルシアノアクリレート、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、グルカン、アルブミン、ゼラチン、アルギン酸塩、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリンおよびポリエチレンイミンを含んでもよい。ポリマー系ナノ粒子は、例えば分枝PEIなどのポリエチレンイミン(PEI)を含んでもよい。
【0115】
キャリアのコアシェル構造は、別の具体的な実施形態でもある。いくつかの形態において、前記ワクチン製剤は、前述した核酸を含み、当該核酸は、コロナウイルスの抗原または抗原断片を翻訳・発現することができ、このような核酸は、自体が生体適合性脂質二重層シェル内にカプセル化される複数の多量体複合体またはタンパク質核粒子内に含まれる。いくつかの形態において、前記多量体複合体またはタンパク質核粒子は、少なくとも第1の正に荷電したポリマーまたはタンパク質を含む。前記第1の生体適合性脂質二重層シェルは、前記複数の多量体複合体またはタンパク質核粒子に対する1つまたは複数の哺乳動物抗原提示細胞のマクロピノサイトーシス作用を促進する。いくつかの形態において、このワクチン剤は、前記生体適合性脂質二重層内にカプセル化される、CpG、ポリ(I:C)、ミョウバンおよびそれらの任意の組み合わせから選択されるアジュバントを更に含む。いくつかの形態において、ワクチン製剤は、例えばIL-12p70タンパク質、FLT3リガンド、またはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO-1)阻害剤など、前記生体適合性脂質二重層の間にカプセル化される免疫調節化合物を更に含む。いくつかの形態において、前記インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO-1)阻害剤は、GDC-0919、INCB24360、またはそれらの組み合わせである。いくつかの形態において、前記正に荷電したポリマーまたはタンパク質は、プロタミン、ポリエチレンイミン、ポリ(β-アミノエステル)またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの形態において、前記生体適合性脂質二重層は、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(EDOPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)のうち1種または複数種、およびそれらの組み合わせを含む。いくつかの形態において、前記生体適合性脂質二重層は、(a)約30%~約70%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(EDOPC)、(b)約70%~約30%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、または(c)約0.5%~約5%の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)を含む。いくつかの形態において、前記生体適合性脂質二重層は、(a)約45%~約55%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(EDOPC)、(b)約55%~約45%の1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、および(c)約1%~約2%の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)を含む。
マイクロニードル
【0116】
本発明におけるいわゆる「マイクロニードル」は、一般的には、マイクロエレクトロニクス製造技術またはマイクロキャスティングなどの技術により、シリコン、金属、高分子有機物または他の材料で製造される長さが数百ミクロンから数ミリメートルまでの細かい針である。それは、皮膚の角質層を効果的に穿刺することができ、皮膚表面に微小通路を形成させることにより、薬物が皮膚の指定深さに到達可能であり、血液に吸収されて作用し、経皮パッチと皮下注射の二重放出薬物の特性を統合するマイクロニードル経皮投与システムである。マイクロニードルの主な投与方法は、貼付ニードル、ディップニードル、コーティングマイクロニードル、薬物カプセル化マイクロニードルおよびマイクロニードル注射などがあり、バイオアベイラビリティが高く、損傷性がなく、用量が制御可能であり、安定的で、痛感がないという利点を有する。主にタンパク質、核酸、ワクチンなどの高分子物質の経皮吸収に用いられ、また、美容業界においても幅広い用途があり、マイクロニードルにより形成された微小通路により、皮下腺から出る汗をより良好に体外に排出し、毛穴詰まりおよび油性皮膚を緩和することができ、なお、乳剤、ゲル、ローションなどの皮膚用品の吸収量を増加し、有効成分の利用率を高めることができる。
【0117】
マイクロニードルは、これまでに痛みがなく低侵襲であり、使用しやすく、偶発的な針刺しのリスクが低いなどの利点と広い市場の将来性により、国際製薬会社、学術機関から求められている。マイクロ加工技術の発展、中国の医薬品研究への投資割合の向上に伴い、マイクロニードル投与システムの関連研究および応用も増加しており、中国のマイクロニードル投与業界の発展をある程度促進している。
【0118】
マイクロニードルは、長さが10~2000μmで、幅が10~50μmの針と定義されることができ、投与の意義を有する装置は、マイクロニードルアレイであり、即ち、多くのマイクロニードルは、投与担体にアレイ状に配列される。マイクロニードルの長さは、数百ミクロンから数ミリメートルまで様々であり、それは、痛覚神経に触れることなく皮膚の角質層を通過し、皮膚の表面に投与通路を形成させ、薬物が皮膚の指定深さに到達すると共に、皮下の毛細血管網に入って吸収され、痛感および皮膚損傷を引き起すことなく薬物の浸透を促進することができる。従って、マイクロニードルは、薬物の投与効率の向上および患者のコンプライアンスの改善に寄与する。
【0119】
理論的にはマイクロニードルの長さは15~20μmだけでヒト皮膚の角質層を穿刺することができるが、皮膚が良好な弾性および伸縮性を有し、且つ異なる年齢のヒトおよび異なる皮膚部位の皮膚角質層の厚さの差が比較的大きいため、マイクロニードルが異なるタイプの皮膚を効果的に穿刺し、効果的な経皮投与を実現することができることを保証するために、マイクロニードルの長さは、20μmよりもはるかに長いが、一般的には1mm未満である。マイクロニードルの材料も、当初の金属製マイクロニードルから、可溶性材料から作製された溶解性マイクロニードルへと発展しつつある。
【0120】
マイクロニードルの最も重要な利点は、それが高分子を角質層に浸透させることができ、注射投与と比べてほとんど侵襲性がなく、痛感がなく、皮下投与に相当し、患者に受け入れられやすいことである。なお、マイクロニードル投与により、薬物の用量は、比較的安定しており、制御可能である。マイクロニードルパッチの使用感は、一片のバンドエイドを顔に貼付したような感じで、患者に違和感を与えない。従って、マイクロニードルは、革命的な新規剤形および新規投与方法とも呼ばれる。外用薬、化粧品、生物製剤、一部の化学薬品などは、いずれもマイクロニードルパッチ化することができ、市場空間は非常に広がっている。
【0121】
マイクロニードル経皮投与は、広く応用され、小分子、生物製剤、ワクチン、細胞内DNA/RNAなどの経皮送達に用いることができ、ワクチン、糖尿病、皮膚疾患、美容医療は、マイクロニードルの現段階における主な研究方向である。
【0122】
1990年代のマイクロナノ加工技術の発展に伴い、マイクロニードルの薬学分野における応用が徐々に可能になっており、金属製マイクロニードル(主な材料は、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル、パラジウムなどである)、シリコンおよびシリカマイクロニードル、ガラス製マイクロニードル、ポリマーマイクロニードルなどのタイプが次々に開発されている。実際の応用において、マイクロニードルは、中心にマイクロチャネルがあるか否かによって中実マイクロニードルと中空マイクロニードルに分けることができる。中実マイクロニードルは、投与方法の違いによって溶解性薬物担持マイクロニードル、不溶性薬物コーティングマイクロニードル、組織前処理マイクロニードルに分けることができる。また、生物学的マイクロニードルと人工マイクロニードル、面外マイクロニードルと面内マイクロニードルなどに更に分けることができる。
【0123】
中空マイクロニードルは、マイクロマシニング技術を用いて作製された長さ1mm未満の中空針先であり、経皮投与を実現するために液体ワクチン製剤を針先を介して皮膚に注射するために用いられる。最初に使用されている中空マイクロニードルは、McAllisterらが1980年代にシリコンで作製された長さ約150μmのマイクロニードルである。
【0124】
中実マイクロニードルは、ワクチンの経皮投与の応用において主に「poke and patch」および「coat and poke」という2つの方法がある。最初の中実マイクロニードルは、チタン、シリコン、ステンレス鋼、ガラスなどの材料で作製されたが、使用過程においてマイクロニードルが折れて皮膚に残るリスクがあり、これらの材料は、いずれも皮膚において無毒物質に分解することができない。そのため、その後の研究において、PLGA、PGA、PLAなどの材料分解できるが水に溶けにくい高分子ポリマー材料を使用して経皮投与に適することが可能な中実マイクロニードルを製造する。中実マイクロニードルの形状は、主にピラミッド形または円錐形であり、マイクロニードルの長さは、150~1000ミクロンの間である。
【0125】
poke and patchは、中実マイクロニードルが経皮投与に最初に応用される使用方法であり、簡単に言えば、マイクロニードルを皮膚を前処理した後に取り出し、その後、製剤中の薬物がマイクロニードルによる前処理後に残された皮膚上の針穴によって拡散して皮膚に浸透して薬物の経皮投与を完成させるように、薬物を含有するゲルパッチまたは液体製剤をマイクロニードルの前処理領域に塗布する。投与量を正確に制御できないという欠点がある。
【0126】
coat and pokeは、ワクチンを含有する塗布液を用い、ワクチンをマイクロニードルアレイの針先表面に塗布して作製された塗布針であり、塗布針が皮膚に作用した後、針先表面に担持された薬物は、迅速に溶解して皮膚内に放出する。poke and patch法に比べ、coat and poke法は、経皮投与プロセスにおける投与量を比較的正確に制御することができ、且つ使用がより簡単で、投与時間も数分間に短縮される。しかし、針先の担持容量がマイクロニードルの形状およびマイクロニードルアレイにおけるマイクロニードルの数の影響を受けやすいという欠点がある。
【0127】
poke and release(自己溶解性マイクロニードル)は、水溶性材料を基質として作製された、マイクロニードル本体のみにワクチンを含有するマイクロニードルパッチを指し、担持容量を向上させながら、材料に応じてマイクロニードルを迅速投与または徐放投与方法として設計することができる。現在、一般的に使用される水溶性高分子材料は、主にCMC、PVP、PVA/PVP混合材料、絹タンパク質、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸ナトリウムおよび多糖などの材料がある。
【0128】
自己溶解性マイクロニードルとは、中実マイクロニードルの基底部とその先端の溶解性針状構造を組み合わせて構成されるマイクロニードルであり、可溶性または生分解性基質で構成され、このようなマイクロニードルの基質は、皮膚に挿入された後に溶解することができ、良好な生体適合性を有する。通常、このタイプのマイクロニードルアレイは、糖、炭水化物または合成ポリマーで構成され、インスリン、低分子量ヘパリン、オボアルブミン、アデノウイルスベクター、ワクチン抗原、光増感剤および前駆体などの物質を担持するために用いることができる。自己溶解性マイクロニードルは、以下の利点を有する:使い捨によって感染性疾患の伝播を回避することができ、可溶性部分に担持された薬物が経皮的に受動的に吸収されず、基底部は、中実マイクロニードルとして更に投与するために使用することができ、tmaxおよび持続時間がいずれも従来の皮下注射法より優れ、自己溶解性マイクロニードルは、更に薬物徐放作用を有し、治療ニーズに応じて異なる分解速度の自己溶解性マイクロニードルを製造することができる。
【0129】
ハイドロゲルマイクロニードルは、膨潤材料および薬物貯蔵層から構成される。ハイドロゲルマイクロニードルアレイにおける膨潤材料および薬物貯蔵層は、膨潤したマイクロプロジェクションによって間質液を吸収して薬物の溶解を解消することができ、この点で自己溶解性マイクロニードルと異なるため、それを単独で1つのカテゴリに分類する。ハイドロゲルマイクロニードルは、2種類の薬物担持方法を有する。1つは、マイクロニードルの基底部に薬物を担持し、針体が皮膚に刺入した後にハイドロゲルが細胞間液を吸収して膨張し、ゲル通路を形成し、基底部の薬物がゲル通路を介して人体に浸透し、浸透速度がハイドロゲルの架橋密度によって決定されることであり、もう1つは、ハイドロゲルマイクロニードルの基底部および針体がいずれも薬物とポリマーを混合して製造され、皮膚に刺した後に体液が浸透し、針体が膨潤し、薬物が放出することである。ハイドロゲルマイクロニードルの製造時にその材料に分解物の残留問題がないため、大量生産が可能である。本発明により提供されるマイクロニードル注射製剤は、任意のマイクロニードルに適用される。
二重特異性抗体
【0130】
二重特異性抗体(Bispecific Antibody, BsAb)は、2つのエピトープを同時に標的とすることができ、治療効果および安全性においてモノクローナル抗体薬物と比べて一定の利点を有し、潜在力を有する新世代の免疫治療薬であると考えられる。
【0131】
BsAbは、自然界に存在せず、人工的に構築された抗体であり、その形は、Fcの存在の有無によってIgG-likeと非IgG-likeの2種類に分けることができる。IgG-likeという形は、分子量が大きく、Fc領域を有し、Fc媒介性エフェクター機能を果たすことができ、半減期が非IgG-likeの形よりも長く、純度、溶解度および安定性がより高い。非IgG-likeの形を有する二重抗体は、主により多くの抗原結合能を発揮し、Fc領域がないため、その循環動態が比較的に低いが、より良好な組織透過能力、低い免疫原性、低い自然免疫系の非特異的活性化を有する。
【0132】
腫瘍治療におけるBsAbsの最初の応用は、T細胞を腫瘍細胞にリダイレクトし、腫瘍表面関連抗原(TAA)を同定することによってT細胞の死滅を媒介し、即ち、免疫細胞結合の役割を果たす。代表的なBiTE(Bispecific T-cell engagers)は、2014年にAmgenによって市販承認されたCD3×CD19二重抗体-Blinatumomabであり、適応症は、急性リンパ性白血病(ALL)である。しかし、Fc領域がなく、その血清半減期が比較的短いため、治療的血清レベルを達成するために持続的に静脈内投与する必要がある。Blinatumomabの発売は、一連のCD3二重抗体の研究開発を推進し、他端のTAA標的は、血液腫瘍に関連するCD19、CD20、BCMA、CD33、CD123およびCLEC12Aなど、固形腫瘍に関連するCLDN18.2、CEA、EpCAM、HER2、PSMA、pCadherin、GPC3、GPA33などを含む。
【0133】
本発明により提供されるmRNAがコードする二重特異性抗体は、CD3×EpCAM-mRNA(即ち、ZSL303-mRNA-1)であり、マイクロニードル注射製剤ZSL303-mRNA-1-LNPを調製し、細胞レベル検出により非常に高い発現効果を有し、マイクロニードルによって免疫系が再構築された免疫不全マウス腫瘍モデルに注射すると、顕著な腫瘍抑制効果を発揮することができる。
【0134】
本文に記載のものと類似または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験に使用することができるが、以下では、適切な方法および材料が記載される。本文で言及される全ての刊行物、特許出願、特許および他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。本文で引用される参考文献は、特許請求される先行技術と見なされない。なお、材料、方法および実施例は、単に例示的なものであるが、これらに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0135】
図1】マイクロニードル皮内投与のイメージ図である。
図2】実施例1におけるRibogreenキットによるカプセル化率測定プロセスの96ウェルブラックプレートのサンプル注入法のイメージ図である。
図3】実施例2における担持容量の異なるmRNA-LNP細胞をトランスフェクションした後の蛍光イメージング図であり、そのうち、左上がcontrol、右上がpH7.0のEGFP-mRNA-LNP、左下がpH6.5のEGFP-mRNA-LNP、右下がpH5.5のEGFP-mRNA-LNPである。
図4】実施例2における担持容量の異なるmRNA-LNP細胞をトランスフェクションした後の蛍光発現レベル分析のイメージ図である。
図5】実施例4におけるLNPの異なる細胞レベル発現効果の比較イメージ図である。
図6A】実施例5における異なる投与方法によるマウスのFluc-mRNA発現状況のBLTイメージング図である。
図6B】実施例5における異なる投与方法によるマウスのFluc-mRNA発現状況のBLTイメージング図である。
図6C】実施例5における異なる投与方法によるマウスのFluc-mRNA発現状況のBLTイメージング図である。
図7】実施例5における異なる投与方法によるマウス体内注射部位の光信号強度分析のイメージ図である。
図8】実施例5における異なる投与方法による肝臓の光信号の強度分析のイメージ図である。
図9】実施例5における異なる用量による注射部位および肝臓のFluc-mRNAの光強度変化のイメージ図であり、そのうち、上左図が異なる用量による注射部位のFluc-mRNAの光強度の変化、上右図が異なる用量による肝臓のFluc-mRNAの光強度の変化、下図が異なる用量によるFluc-mRNAの光強度変化の合計である。
図10】実施例5における異なる投与方法による注射部位、肝臓の光信号の強度変化のイメージ図であり、そのうち、上左図が異なる投与方法による注射部位のFluc-mRNA発現量の比較、上右図が異なる投与方法による肝臓のFluc-mRNA発現量の比較、下図が異なる投与方法によるFluc-mRNA総発現量の比較である。
図11】実施例5における異なる投与方法による注射部位、肝臓の48h後の光信号強度分析のイメージ図であり、そのうち、上左図が48h後の注射部位のFluc-mRNA発現量の比較、上右図が48h後の肝臓のFluc-mRNA発現量の比較、下図が48h後のFluc-mRNA総発現量の比較である。
図12】実施例5における異なる投与方法によるマウス体内異なる部位のBLTイメージング図である。
図13】実施例5における異なる投与方法によるマウス体内異なる部位の蛍光強度分析イメージ図である。
図14】実施例6におけるマウスへの投与および血液サンプル収集のフローチャートである。
図15】実施例6におけるマウス血清中の新型コロナウイルスSタンパク質の発現量測定イメージ図である。
図16】実施例6におけるマウス血清中のSARS-CoV-2 S Protein抗体価の測定イメージ図である。
図17】実施例6におけるマウス血清中のSARS-CoV-2 S Protein抗体価の測定イメージ図である。
図18】実施例7におけるLipo2kおよびLipoMAXの2種のトランスフェクション試薬によるZSL303-mRNA-1(CD3×EPCAM-mRNA)の24hおよび36hの発現イメージ図である。
図19】実施例8におけるマウス血漿中の二重特異性抗体CD3×EpCAMの濃度分布図である。
図20】実施例9におけるZSL303-mRNA-1-LNP投与の動物実験スキーム図である。
図21】実施例9における2群投与後PBMCヒト化マウスのHCT-15異種移植腫瘍の体積変化図である。
図22】実施例9における3回マイクロニードル投与後の腫瘍抑制効果イメージ図である。
図23】実施例9におけるマウス腫瘍実体のイメージング図である。
図24】実施例9における2群投与後23日目のマウスの腫瘍重量比較図である。
図25】実施例9における3回投与後マウス血清中の二重特異性抗体の濃度分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0136】
以下では、図面および実施例を参照しながら本発明を更に詳しく説明し、なお、下記の実施例は、本発明がどのように実現されるかを例示し、または本発明の理解を容易にすることを目的とし、単に限られた方法で本発明の実験プロセスおよび効果について例を挙げて説明するが、本発明に対していかなる制限もなく、本発明の範囲は、特許請求の範囲内に限定される。
以下の実施例において使用された実験試薬、消耗品および実験器具は以下の通りである。
【0137】
実験試薬および消耗品:無水エタノール(Sigma-Aldrich、E7023-500mL)、コレステロール(Sigma-Aldrich、C8667-5G)、DSPC(Avanti、SKU:850365P-1g)、イオン化可能な脂質SM-102(朗旭生物、Batch No:20210401)、DMG-PEG2000(朗旭生物、Batch No:20200601)、水(Invitrogen、REF:750023)、酢酸ナトリウム三水和物(Sigma-Aldrich、32318-500G-R)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩(Roche、REF:10812846001)、アミノブタントリオール(Sigma-Aldrich、76687-100G)、氷酢酸(MACKLIN、A801295-500mL)、S protein-mRNA(合肥阿法納生物技術有限公司;Cat:S_mRNA_2P_01;Lot:2011092101)、限外濾過遠心管15mL 10K(MilLipore、REF:UFC901096)、Ribogreenキット(Invitrogen、REF:R11490)、Fluc-mRNA(Hongene Biotech、FLUCmRNA(N1-Me-pseudo U);Lot:FLUCMPH1B;Fluc-mRNAと略称され、既に発売されており、購入した配列には、UTR配列、プロモーターなどが既に含まれ、送達後にインビトロ細胞レベルおよび生体内で発現することができる)、HEK 293T細胞(COBIOER)、ZSL303-mRNA-1(Novoprotein、Lot:20211129)
【0138】
実験器具:マイクロ流体ナノ薬物調製システム(邁安納、型番:INano L)、高速凍結遠心分離機(Thermo Scientific、型番:Sorvall ST 16R)、超微量分光光度計(Thermo Scientific、型番:Nanodrop One)、レーザー粒度計(丹東百特計器、型番:BT-90 +)、精密天秤(Sartorius、型番:SQP Quintix124-1CN)、pHメーター(METTLER TOLEDO、型番:S210)、マイクロニードル注射ヘッド(銘安康、マルチニードルCC-XW-04)、1mlの注射器(Corder、0.45*16mm RWLB)、フローサイトメーター(アジレント)、細胞計数プレート(WATSON)
実施例1 マイクロニードル注射mRNA製剤の調製および測定
一、マイクロニードル注射用新型コロナウイルスmRNAワクチンの調製
【0139】
本実施例において使用される新型コロナウイルスmRNAは、S protein-mRNA(新型コロナウイルスを発現するSタンパク質の配列)であり、合肥阿法納生物技術有限公司(Cat:S_mRNA_2P_01;Lot:2011092101)から購入し、既に発売されており、購入した配列にはUTR配列、プロモーターなどが含まれ、送達後にインビトロ細胞レベルおよび生体内で発現することができる。
本実施例により提供されるマイクロニードル注射用新型コロナウイルスmRNAワクチンの調製方法は、以下のステップを含む。
1、水相溶液および脂質溶液の調製
水相溶液および脂質溶液を調製し、そのうち、4X水相溶液および脂質溶液母液の調製は、表1に記載の方法に従って行われる。
【0140】
表1、4X水相溶液および脂質溶液母液の調製
調製方法は以下の通りである。
【0141】
(1)水相溶液の調製:アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物および酢酸をそれぞれ精密に秤量すると共に、水で原液に溶解した後に使用に備え、使用時に水で1X溶液に希釈して使用し、pHメーターにより、希釈後の水相溶液のpHが7.4であると測定され、その後、氷酢酸でpHを5.5に調節し、適量のS protein-mRNA(S protein-mRNAは溶液であり、その原液のpHは約6であり、且つ小さい体積のS protein-mRNA原液を取り、全体のpHに対する変化が小さく、ほとんど無視できる)を取って1Xの水相溶液を加えて200μg/mLの水相mRNA溶液に希釈する。ここで、最終的な水相溶液のpHが5.5であるか、または実質的に5.5であり、核酸の希釈によるpHの微妙な変化は、無視できることを理解されたい。
【0142】
(2)脂質溶液の調製:4種の脂質を精密に秤量すると共に、それぞれ表1に示される4mLの無水エタノールを加えて溶解して貯蔵して使用に備え、LNPを調製する時に1:1:1:1の割合で吸引し、均一に混合して最終濃度が15.44mg/mLの脂質溶液に調製される。
2、マイクロ流体ナノ薬物調製システムによる新型コロナウイルスmRNAワクチンS protein-mRNA-LNPの調製
【0143】
(1)水相mRNA溶液:有機相脂質溶液=3:1の割合、12mL/minの流量、4mLの調製体積、0.3mLの初期廃液、0.05mLの最終廃液のパラメータに従い、マイクロ流体ナノ薬物調製システムによってS protein-mRNA-LNPを調製する。
【0144】
(2)調製したLNPを直ちにpH7.4の1Xの水相溶液で20倍希釈し、限外濾過遠心管によって遠心濃縮し(遠心条件が2500g、4℃、10min)、限外濾過遠心管の上部体積が初期調製したLNPの体積に近づくまで、限外濾過遠心管の下部溶液を廃棄する。この場合、エタノール濃度を更に低下させるために、更に10倍体積の1X水相溶液を追加して限外濾過遠心分離を継続し、最終的には限外濾過遠心分離によって得られたサンプルは、最終的なS protein-mRNA-LNPサンプルであり、その体積は、初期調製したLNPの体積に近づくべきであり、4℃で保存して使用に備える。
二、マイクロニードル注射用mRNAをコードする二重特異性抗体薬物試薬の調製
【0145】
本実施例により提供されるマイクロニードル注射用mRNAをコードする二重特異性抗体薬物試薬ZSL303-mRNA-1-LNPの調製方法は、以下のステップを含む。
1、ZSL303-mRNA-1の合成
【0146】
本実施例において用いられる二重特異性抗体ZSL303-mRNA-1-LNP(二重特異性抗体を発現する核酸CD3×EpCAM-mRNAは、配列番号1に示される配列を有する)は、novoprotein社に依頼して合成され、具体的な合成方法は以下の通りである。BsaI制限エンドヌクレアーゼを用いてプラスミドテンプレートを線形化し、37℃の条件下で3時間反応させ、線形化プラスミドを主として保留するためにプラスミド線形化生成物を回収して精製し、mRNA IVT反応系を調製し、精製されたプラスミド線形化生成物をmRNA IVT反応系と混合し、37℃の条件下で3時間反応させ、反応終了後、DNaseIを加え、37℃の条件下で20分間反応させ、反応終了後、転写生成物を精製して余分な酵素およびIVT反応の原料を除去し、精製された転写生成物に酵素的キャップ付加を行い、37℃の条件下で1時間反応させ、反応終了後、LiCl法でキャップ付加生成物を精製し、最終的に精製生成物に対して従来の定量検出および純度測定を行う。
2、水相溶液および脂質溶液の調製
【0147】
水相溶液および脂質溶液を調製し、そのうち、4X水相溶液および脂質溶液母液の調製は、以上の表1に記載の方法に従って行われ、調製方法は以下の通りである。
【0148】
(1)水相溶液の調製:アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物および酢酸をそれぞれ精密に秤量すると共に、水で原液に溶解した後に使用に備え、使用時に水で1X溶液に希釈して使用し、適量のZSL303-mRNA-1を取って1X水相溶液を加えて0.15mg/mLの水相mRNA溶液に希釈し、3.8mL調製する。氷酢酸で水相溶液のpHを5.5に調節する。
【0149】
(2)脂質溶液の調製:4種類の脂質を精密に秤量し、それぞれ表1に示される無水エタノールを加えて溶解して貯蔵して使用に備え、LNPを調製する時に1:1:1:1の割合で吸引し、均一に混合して最終的な脂質溶液に調製することができる。
3、マイクロ流体ナノ薬物調製システムによるZSL303-mRNA-1-LNPの調製
【0150】
(1)水相mRNA溶液:有機相脂質溶液=3:1の割合、12mL/minの流量、5mLの調製体積、0.3mLの初期廃液、0.05mLの最終廃液のパラメータに従い、マイクロ流体ナノ薬物調製システムによってZSL303-mRNA-1-LNPを調製する。
【0151】
(2)調製したLNPを直ちに1X水相溶液で20倍希釈し、限外濾過遠心管によって遠心濃縮し(遠心条件が2500g、4℃、10min)、限外濾過遠心管の上部体積が初期調製したLNPの体積に近づくまで、限外濾過遠心管の下部溶液を廃棄する。この場合、エタノール濃度を更に低下させるために、10倍体積の1X水相溶液を追加して限外濾過遠心分離を継続し、最終的には限外濾過遠心分離によって得られたサンプルは、最終的なZSL303-mRNA-1-LNPサンプルであり、その体積は、初期調製したLNPの体積に近いべきであり、4℃で保存して使用に備える。
三、測定・解析
【0152】
ステップ1と2に従ってS protein-mRNA-LNP、ZSL303-mRNA-1-LNPサンプルを調製し、それぞれ3回の調製実験を行い、1週間おきに1回の調製を行い、それぞれその粒度、PDI(分散性係数)、カプセル化率および担持容量を測定する。
(1)粒度およびPDIの測定。
【0153】
粒度計によって調製されたS protein-mRNA-LNP、ZSL303-mRNA-1-LNPサンプルに対して粒度およびPDIの測定を行い、粒度の測定方法は、1mLのサンプルをサンプルセルに入れ、対応するサンプルをサンプルセルに分散させ、波長671nmのレーザによってサンプルに照射し、APD光検出器によって90°の角度でサンプル粒子のブラウン運動による散乱光強度の経時的変化を検出し、更に相関器によって自己相関演算を行ってサンプルの自己相関曲線が得られ、数学的方法を組み合わせることで粒子の拡散係数を得ることができ、更にStockes-Einstein式を使用してサンプルの粒度分布結果、即ち流体力学直径DHおよびその分布を得ることである。粒子分布情報は、システムによってPDIとして計算され、測定により、S protein-mRNA-LNPの平均粒度は213.5nmであり、PDIは0.15であり、ZSL303-mRNA-1-LNPの平均粒度は125.5nmであり、PDIは0.265である。
(2)Ribogreenキットによりカプセル化率の測定を行い、担持容量を計算する。
カプセル化率の測定方法は、以下の通りである。
【0154】
a. 無菌の酵素フリー水で20XのTE bufferを希釈して適量の1XTE bufferを調製する。例えば、10MLの20XのTE bufferと190mLの無菌の酵素フリー水を十分に均一に混合する。
【0155】
b. Triton bufferを調製し、例えば、100mLのTE bufferに2mLのTriton X-100を加え、15min撹拌して均一に混合する。
【0156】
c. 96ウェルブラックプレートを取り、第1の列にそれぞれ15μLのサンプルおよび1ウェルのPBSを加え、総体積が250μLになるまで1XのTE bufferを追加する。
【0157】
d. 図2に示すように96ウェルブラックプレートにサンプルを加え、そのうち、B、C列は、50μLの1XのTE bufferと50μLのA列のサンプル希釈液であり、D、E列は、50μLのTriton bufferと50μLのA列のサンプル希釈液である。
【0158】
e. 表2に従って標準曲線溶液を調製し、それぞれ96ウェルブラックプレートに加え、そのうち、RNA標準品をS protein-mRNA母液で20μg/mLに希釈して標準曲線のRNA原液とする。
【0159】
表2、標準曲線溶液の調製
【0160】
f. 全てのサンプルウェルに発色液を加えた後、マイクロプレートリーダーで蛍光測定を行う。標準曲線に基づいて計算してカプセル化率の結果を得る。
その後、カプセル化率の計算式(カプセル化された薬物と投入された総薬物との比)に基づいて計算してカプセル化率データを得る。
【0161】
カプセル化されていない薬物(S protein-mRNA)量および薬物(S protein-mRNA)総量に基づき、担持容量を計算し、担持容量を計算することは単位体積の脂質ナノ粒子におけるmRNA薬物の含有量を指す。
担持容量=(総薬物量-(効果的にカプセル化されていない)遊離薬物量)/体積
【0162】
そのうち、体積は、マイクロ流体ナノ薬物調製システムにより調製した脂質ナノ粒子の初期体積であり、初期調製した脂質ナノ粒子は、更に1X水相溶液で20倍希釈し、その中のエタノール濃度を低下させるために限外濾過遠心管によって遠心濃縮する必要があるが、遠心濃縮後に最終的に得られたサンプルは、依然として脂質ナノ粒子の初期体積を保持し、そのため、担持容量の計算には、脂質ナノ粒子の初期体積を用いる。担持容量を測定する時に希釈したサンプルを用いると、対応する希釈倍数を乗算する必要がある。
【0163】
測定および計算により、本実施例で調製したS protein-mRNA-LNPサンプルの平均カプセル化率は83.5%であり、担持容量は157.75μg/mLである。
本実施例で調製したZSL303-mRNA-1-LNPサンプルの平均カプセル化率は95.5%であり、担持容量は102.9μg/mLである。
【0164】
3回のS protein-mRNA-LNP、ZSL303-mRNA-1-LNPの調製実験結果は、比較的安定しており、粒度・性状が一致し、カプセル化率および担持容量が安定している。
実施例2調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液pHの影響
一、複数種の緩衝液の場合、調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液pHの影響
1、Tris緩衝液系を用いる場合、調製されるFluc-mRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液pHの影響
【0165】
実施例1により提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製し、そのうち、水相溶液は、Tris緩衝液系を用いる。アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量すると共に、水に溶解して使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。pHメーターにより、希釈後の水相溶液のpHが7.4であると測定され、その後、氷酢酸でpHを調節してpH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0の水相溶液を調製する。
【0166】
観察および測定を容易にするために、その中のS protein-mRNAをFluc-mRNA(Hongene Biotech、FLUCmRNA(N1-Me-pseudo U);Lot:FLUCMPH1B、Fluc-mRNAと略称され、既に発売されており、購入した配列には、UTR配列、プロモーターなどが既に含まれ、送達後にインビトロ細胞レベルおよび生体内で発現することができる)に交換し、蛍光によって細胞発現における担持容量の異なるFluc-mRNA-LNPの差異をより直観的に特徴付けることができる。
【0167】
それぞれpHの異なる水相溶液でFluc-mRNA母液を200μg/mLの濃度に希釈し、調製したFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1により提供される方法に従って測定を行い、結果を表3に示す。
【0168】
【0169】
複数回の繰り返し実験を行い、pHの異なるTris緩衝液を用いてFluc-mRNAを調製した結果は、いずれも基本的に一致し、粒径の微妙な変化のみであり、試験機器に関連する可能性があり、カプセル化率および担持容量は、基本的に一致する。
【0170】
表3から分かるように、pHの異なるTris緩衝液で調製したFluc-mRNA-LNPの粒度結果の差が大きく、担持容量が完全に異なり、本実施例は、Fluc-mRNAを用いるために、pH7.0または7.4の場合担持容量が特に低く、pH4.0~pH5.5の場合カプセル化率の差が大きくないが、担持容量が顕著に向上する傾向があり、測定によりpH5.5で総mRNAの担持容量が最も高く(134.72μg/mL)、即ち単位体積のLNPにより多くのmRNAが含まれ、且つ安定性が良好である。水相溶液の適切なpH値を維持することにより、Fluc-mRNAの担持容量を顕著に向上させることもでき、pHを4.5~6.8などの酸性範囲内に調節すると、リポソームに担持されたFluc-mRNA含有量を顕著に向上させることができ、且つ特定のpH条件下、即ちpH5.5で最適となることが分かる。その原因は、調製時、酸性環境でイオン化可能な脂質が負電荷を帯びることができ、同等の条件下でより多くの核酸分子(例えばmRNAなど、それ自体が負電荷を帯びる)を吸着することができ、且つこのような最適が水相溶液がpH5.5である場合に具現化され、pH7.4またはpH4などの条件下での緩衝液と比べ、pH4.5~6.5の場合、核酸分子をより効果的に担持することができ、好ましくはpH4.5~5.5であり、より好ましくはpH5.0~5.5であり、最も好ましくはpH5.5であり、相対的に安定した使用可能な製剤を達成するため、担持容量がより高くなる。
【0171】
なお、本実施例は、Fluc-mRNAを用いた場合、他のmRNAと比べてpH7.0または7.4での担持容量が特に低いことも見出した。
2、酢酸ナトリウム緩衝液系を用いる場合、調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液pHの影響
【0172】
実施例1により提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製し、そのうち、水相溶液は、酢酸ナトリウム緩衝液系を使用し、具体的な調製方法は以下の通りである。酢酸ナトリウム三水和物を精密に秤量し、水に溶解し、氷酢酸でpH を調節してpH4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0の水相溶液を調製する。それぞれpHの異なる水相溶液でFluc-mRNA母液を200μg/mLの濃度に希釈し、調製したFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1により提供される方法に従って測定され、結果を表4に示す。
【0173】
表4、Fluc-mRNA-LNPの調製に対するpHの異なる酢酸ナトリウム緩衝液の影響
【0174】
複数回の繰り返し実験を行い、PHの異なる酢酸ナトリウム緩衝液を用いてFluc-mRNAを調製した結果は、いずれも基本的に一致し、粒径の微妙な変化のみであり、試験機器に関連する可能性があり、カプセル化率および担持容量は、基本的に一致する。
【0175】
表4から分かるように、緩衝液系は異なるが、緩衝液のpHは、調製したFluc-mRNA-LNPの担持容量の変化傾向に対して一貫した影響がある。pHの異なる酢酸ナトリウム緩衝液で調製したFluc-mRNA-LNPは、粒度結果には一定の差異があり、担持容量が完全に異なり、pH4.5~pH5.5の場合カプセル化率の差が大きくないが、担持容量が顕著に向上する傾向があり、好ましくはpH5.0~5.5であり、最も好ましくはpH5.5であり、この場合、測定された総mRNAの担持容量が最も高く(117.66μg/mL)、即ち単位体積のLNPにはより多くのmRNAが含まれ、且つ安定性が良好である。水相溶液の適切なpH値を維持することにより、確実にFluc-mRNAの担持容量を顕著に向上させることができ、この傾向は、具体的な緩衝液成分の変化によって変化しないことが分かる。
3、PBS緩衝液系を用いる場合、調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液pHの影響
【0176】
実施例1により提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製し、そのうち、水相溶液は、PBS緩衝液系を使用し、具体的な調製方法は以下の通りである。市販されているPBS(Biosharp, Cat:BL302A)を取り、氷酢酸でpHを調節してpH4.0、5.5、6.5、7.0のPBS水相溶液を調製する。それぞれpHの異なるPBS水相溶液でFluc-mRNA母液を200μg/mLの濃度に希釈し、調製したFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1により提供される方法に従って測定され、結果を表5に示す。
【0177】
表5、Fluc-mRNA-LNPの調製に対するpHの異なるPBS緩衝液の影響
【0178】
表5から分かるように、緩衝液系は異なるが、緩衝液のpHは、調製したFluc-mRNA-LNPの担持容量の変化傾向に対して一貫した影響がある。pHの異なるPBS緩衝液用いて調製されるFluc-mRNA-LNPは、粒度結果には一定の差異があり、担持容量が完全に異なり、pH4.0~pH5.5の場合カプセル化率の差が大きくないが、担持容量が顕著に向上する傾向があり、最も好ましくはpH5.5であり、この場合測定された総mRNAの担持容量が最も高く(130.41μg/mL)、即ち単位体積のLNPにはより多くのmRNAが含まれ、且つ安定性が良好である。水相溶液の適切なpH値を維持することにより、確実にFluc-mRNAの担持容量を顕著に向上させることができ、この傾向は、具体的な緩衝液成分の変化によって変化しないことが分かる。
二、様々なリポソーム製剤の製法によるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
1、JK-102-CA、DMG-mPEG2000、Chol、DSPC脂質を使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0179】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液として、トリス(Tris)緩衝液系が用いられる。アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解して使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液のpHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、氷酢酸でpHを調節し、pH4.0、pH5.5、pH6.0の水相溶液を調製する。脂質溶液については、表6に示されるイオン化可能な脂質JK-102-CA、PEG脂質DMG-mPEG2000、および他の2種の脂質成分であるChol、DSPCを有機相としてFluc-mRNA-LNPを調製する。Fluc-mRNA母液をそれぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈し、調製されたFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を実施例1で提供される方法に従って測定し、結果を表6に示す。
【0180】
表6、特定の脂質製剤の製法によるFluc-mRNA-LNPの調製に対するpHの異なる緩衝液の影響
【0181】
表6から分かるように、脂質製剤の製法を変更した場合でも、緩衝液のpHは、調製されたFluc-mRNA-LNPの担持容量を変化させる傾向が依然として存在し、pH5.5~pH6.0の緩衝液の条件下で、Fluc-mRNA-LNPの担持容量を大幅に増加させることができる。好ましくは、pHが5.5であり、この場合、総mRNA担持容量は、最も高く(106.77μg/mL)と測定され、つまり、単位体積当たりのLNPには、より多くのmRNAが含まれ、安定性も非常に優れる。水相溶液の適切なpH値を維持すれば、確かに、Fluc-mRNAの担持容量を大幅に増加させることができることがわかり、この傾向は、具体的な脂質製剤の成分の変更によって変化しない。
2、SM102、M-DTDAM-2000、Chol、DSPC脂質を使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0182】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液として、トリス(Tris)緩衝液系が用いられる。アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解し使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液のpHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、氷酢酸でpHを調節し、pH4.0、pH5.5、pH6.0の水相溶液を調製する。脂質溶液については、表7Aに示されるイオン化可能な脂質SM102、PEG脂質M-DTDAM-2000、および他の2種の脂質成分であるChol、DSPCを有機相としてFluc-mRNA-LNPを調製する。Fluc-mRNA母液をそれぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈し、調製されたFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を実施例1で提供される方法に従って測定し、結果を表7Aに示す。
【0183】
表7A、特定の脂質製剤の製法によるFluc-mRNA-LNPに対するpHの異なる緩衝液の影響
【0184】
表7Aから分かるように、脂質製剤の製法を変更した場合でも、緩衝液のpHは、調製されたFluc-mRNA-LNPの担持容量を変化させる傾向が依然として存在し、pH4.5pH5.5の緩衝液の条件下で、Fluc-mRNA-LNPの担持容量がより多く、つまり、単位体積当たりのLNPには、より多くのmRNAが含まれ、安定性が優れる。水相溶液の適切なpH値を維持すれば、確かに、Fluc-mRNAの担持容量を大幅に増加させることができ、この傾向は、具体的な脂質製剤の成分の変更によって変化しない。
3、JK-102-CA、M-DTDAM-2000、Chol、DSPC脂質を使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0185】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液として、トリス(Tris)緩衝液系が用いられる。アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解し使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液のpHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、pHを氷酢酸で調整し、pH4.0、pH5.5、pH6.0の水相溶液を調製する。脂質溶液については、表7Bに示されるイオン化可能な脂質JK-102-CA、PEG脂質M-DTDAM-2000、および他の2種の脂質成分であるChol、DSPCを有機相としてFluc-mRNA-LNPを調製する。Fluc-mRNA母液をそれぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈し、調製されたFluc-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を実施例1で提供される方法に従って測定し、結果を表7Bに示す。
【0186】
表7B 特定の脂質製剤の製法によるFluc-mRNA-LNPに対するpHの異なる緩衝液の影響
【0187】
表7Bから分かるように、脂質製剤の製法を変更した場合でも、緩衝液のpHは、調製されたFluc-mRNA-LNPの担持容量を変化させる傾向が依然として存在し、pH5.5pH~pH6.0の緩衝液の条件下で、Fluc-mRNA-LNPの担持容量を大幅に増加させることができ、pH5.5とpH6.0の場合、担持容量は非常に近く、この場合、総mRNA担持容量はより高く測定され、つまり、単位体積あたりのLNPには、より多くのmRNAが含まれ、安定性も優れる。水相溶液の適切なpH値を維持すれば、確かに、Fluc-mRNAの担持容量を大幅に増加させることがことができ、この傾向は、具体的な脂質製剤の成分の変更によって変化しない。
三、様々なmRNA製剤の製法によるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
1、S protein-mRNAを使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0188】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液の調製には、アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解し使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液のpHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、氷酢酸でpHを調節し、pH4.0およびpH5.5の水相溶液を調製する。S protein-mRNA母液をそれぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈する。具体的な調製法をを表8に示し、ブランクLNP(S protein-mRNAなし)を対照とし、調製されたS protein-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を実施例1で提供される方法に従って測定し、結果を表8に示す。
【0189】
表8、S protein-mRNA-LNPの調製におけるpHの異なる緩衝液の影響
【0190】
実験を繰り返し、pHの異なる緩衝液で調製されたS protein-mRNA-LNPの結果は、テスト器具に関連する可能性のある粒径のわずかな変化を除いて、基本的に一致し、カプセル化率および担持容量も基本的に一致する。
【0191】
表8から分かるように、pHの異なる緩衝液を使用して調製されるS protein-mRNA-LNPの粒度結果は、大きく異なり、担持容量も完全に異なり、pH4.0でのカプセル化率およびpH5.5でのカプセル化率が少し異なるが、pH5.5での総mRNA担持容量は非常に高く(157.75μg/mL)測定され、つまり、単位体積当たりのLNPには、より多くのmRNAが含まれ、安定性も非常に優れる。水相溶液の適切なpH値を維持すれば、新型コロナウイルスmRNAワクチンの担持容量も大幅に増加させることもでき、pHを4~6などの酸性範囲内に調節すると、リポソームに担持されたS protein-mRNA-LNPの含有量を大幅に増加させ、特定のpH条件で、即ちpH5.5で最適になる。その理由は、調製時に酸性環境下で、イオン化可能な脂質が正に帯電することができ、同じ条件下でより多くの核酸分子(mRNAなど、それ自体が負に帯電している)を吸着できるためと考えられ、且つ水相溶液のpHが5.5で最適になり、pH7.4またはpH4などの条件下での緩衝液と比較して、pH5.5の場合、核酸分子をより効果的に担持し、比較的安定で使用可能な製剤を得ることができ、したがって、担持容量がより高い。これにより、この新型コロナウイルスmRNAワクチンは、マイクロニードル注射に使用でき、マイクロニードル注射時50マイクロリットルを超えない投与量を満たし、投与量がより少なく、毒性・副作用がより小さく、免疫効果がより優れており、特にマイクロニードル投与に適している。
2、ZSL303-mRNAを使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0192】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液の調製には、アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解し使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液は、pHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、氷酢酸でpHを調節し、pH4.0とpH5.5の水相溶液を調製する。
【0193】
ZSL303-mRNA-1母液を5μl取り、超微量分光光度計Nanodropで濃度を測定したところ、2186μg/mLであり、購入時の値とほぼ同じである。この濃度で後続のmRNAの希釈調製を行う。それぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈する。具体的な調製法を表9に示す。
【0194】
表9、pHの異なる緩衝液調製法
【0195】
実験結果と分析:調製されたZSL303-mRNA-1-LNPに関連する粒度、PDI、カプセル化率、担持容量の測定結果を表9に示す。粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1で提供される方法に従って測定される。測定結果を表10に示す。
【0196】
表10、調製されたZSL303-mRNA-1-LNPに対するpHの異なる緩衝液の影響
【0197】
表10から分かるように、pHの異なるmRNA水相溶液を使用して調製されるZSL303-mRNA-1-LNPの粒度は大きく異なり、カプセル化率も完全に異なり、pH4.0でのカプセル化率とpH5.5でのカプセル化率が少し異なるが、pH5.5での総mRNA担持容量は非常に高く(102.9μg/mL)測定され、安定性もより優れ、投与量がより少なく、毒性・副作用がより小さく、治療効果がより高く、マイクロニードル投与により適している。
【0198】
水相溶液の適切なpH値を維持すれば、マイクロニードル皮内注射用コーディング二重特異性抗体mRNAの担持容量を大幅に増加させることができ、pHを4~6などの酸性範囲内に調節すれば、リポソームに担持される二重特異性抗体mRNA含有量を大幅に増加させ、特定のpH条件下で、即ちpH5.5で最適になる。その理由は、調製時に酸性環境下で、イオン化可能な脂質が正に帯電することができ、同じ条件下でより多くの核酸分子(mRNAなど、それ自体が負に帯電している)を吸着できるためと考えられ、且つ水相溶液のpHが5.5で最適になり、pH7.4またはpH4の緩衝液と比較して、pH5.5の場合、核酸分子をより緊密に包み、比較的安定で使用可能な製剤を得ることができ、したがって、担持容量がより高い。
3、EGFP-mRNAを使用して調製されるmRNA-LNPの担持容量に対する緩衝液のpHの影響
【0199】
実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製する。水相溶液として、トリス(Tris)緩衝液系が用いられる。アミノブタントリオール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩酸塩、酢酸ナトリウム三水和物の3種の塩および氷酢酸をそれぞれ精密に秤量し、水に溶解し使用に備え、使用前に水で1Xの溶液に希釈する。希釈後の水相溶液のpHはpHメーターにより7.4と測定され、その後、氷酢酸でpHを調節し、pH4.0、pH4.5、pH5.5、pH6.5、pH7.0の水相溶液を調製する。その中のmRNAは、EGFP-mRNA(阿法納生物技術有限公司から購入され、型番mRNA-22-220605)に置き換えられており、市場で販売されており、購入した配列には、すでにUTR配列、プロモーターなどが含まれており、送達後に生体外の細胞レベルと生体内で発現することができる)、担持容量の異なるEGFP-mRNA-LNPの細胞発現の違いを蛍光によってより直観的に特徴付けることができる。EGFP-mRNA母液をそれぞれpHの異なる水溶液で200μg/mLの濃度に希釈し、調製されたEGFP-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を分析し、粒度、PDI、カプセル化率、担持容量を実施例1で提供される方法に従って測定し、結果を表11に示す。
【0200】
表11、EGFP-mRNA-LNPの調製におけるpHの異なる緩衝液の影響
【0201】
表11から分かるように、EGFP-mRNAを使用する場合、緩衝液のpHは、調製されたEGFP-mRNA-LNPの担持容量を変化させる傾向が依然として存在し、pH4.5~pH5.5の緩衝液の条件下で、EGFP-mRNA-LNPの担持容量を大幅に増加させることができ、pH5.5が好ましく、この場合、総mRNA担持容量は、より高く測定された、つまり、単位体積あたりのLNPには、より多くのmRNAが含まれ、安定性も優れる。水相溶液の適切なpH値を維持すれば、確かに、EGFP-mRNAの担持容量を大幅に増加させることができ、この傾向は、封入したmRNA薬物の変更によって変化しない。
四、担持容量の異なるEGFP-mRNA-LNPの細胞発現の違い
【0202】
pH5.5、pH6.5、pH7.0のトリス(Tris)緩衝液で調製されたEGFP-mRNA-LNP、およびmRNAが含まれないブランクLNPを対照(control)とし、HEK-293Tの細胞トランスフェクションを行う。pHの異なるTris mRNA水相溶液で調製された、担持容量の異なるmRNA-LNPの細胞発現の違いを、EGFP蛍光発現の強度(蛍光顕微鏡およびフローサイトメーター)によって比較した結果を図3に示し、左上がcontrolであり、右上がpH7.0のEGFP-mRNA-LNPであり、左下がpH6.5のEGFP-mRNA-LNPであり、右下がpH5.5のEGFP-mRNA-LNPである。蛍光発現レベルの分析を図4に示す。
【0203】
図3および図4の細胞トランスフェクション後の蛍光イメージングおよびフローサイトメーターの結果から、pH5.5のmRNA Tris水相溶液系で調製されたEGFP-mRNA-LNPは、カプセル化量がより高いため、それに応じてその蛍光発現も高いことがわかる。対応する他の2群のEGFP-mRNA-LNPは、EGFP-mRNAのカプセル化量の違いによってEGFP-mRNA蛍光発現がわずかに低下する。その蛍光発現強度に大きな違いがあり、実際の担持容量を増加させることで生物学的効果を改善できることが十分に証明されている。
実施例3、調製されたmRNA-LNPに対する脂質溶液中の脂質含有量の影響
一、mRNA-LNPの調製における脂質溶液中の脂質含有量の影響
【0204】
本実施例では、実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製することより、S protein-mRNA-LNPが調製され、水相溶液がpH5.5であり、脂質溶液母液は、表12および表13の方法に従ってそれぞれ調製される。
【0205】
表12、低脂質含有量マイクロニードル注射製剤の製法
【0206】
表13、高脂質含有量のマイクロニードル注射製剤の製法
【0207】
調製された脂質含有量の異なるS protein-mRNA-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量をそれぞれ測定することにより、調製されたS protein-mRNA-LNPに対する異なる脂質含有量の影響を調査した。粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1で提供される方法に従って測定される。測定結果を表14に示す。
【0208】
表14、 S protein-mRNA-LNPの調製における異なる脂質含有量の影響
【0209】
表14から分かるように、脂質溶液中の脂質含有量が増加すると、S protein-mRNA-LNPの担持容量を大幅に増加させることができるため、新型コロナウイルスmRNAワクチン中の添加剤の使用量がより少なくなり、毒性・副作用がより小さく、より少ない投与量だけでより優れた免疫効果を達成することができ、同時に安定性も非常に優れているため、マイクロニードルによる薬物投与により適している。
二、ZSL303-mRNA-1-LNPの調製における脂質溶液中の脂質含有量の影響
【0210】
本実施例では、実施例1で提供される方法に従って水相溶液および脂質溶液を調製することより、ZSL303-mRNA-1-LNPが調製され、ここで、今回の脂質溶液母液は、表15および表16の方法に従ってそれぞれ調製される。
【0211】
表15、低脂質含有量のマイクロニードル注射製剤の製法
【0212】
【0213】
調製された脂質含有量の異なるZSL303-mRNA-1-LNPの粒度、PDI、カプセル化率、担持容量をそれぞれ測定することにより、調製されたZSL303-mRNA-1-LNPに対する異なる脂質含有量の影響を調査した。粒度、PDI、カプセル化率、担持容量は、実施例1で提供される方法に従って測定される。測定結果を表17に示す。
【0214】
表17、ZSL303-mRNA-1-LNPの調製における異なる脂質含有量の影響
【0215】
表17から分かるように、脂質溶液中の脂質含有量が増加すると、ZSL303-mRNA-1-LNPの担持容量を大幅に増加させることができ、用量がより少なくなり、毒性・副作用がより小さく、治療効果がより高く、同時に、安定性も非常に優れているため、マイクロニードルによる薬物投与により適している。
実施例4 Fluc-mRNA-LNPの細胞レベルでの発現効果
【0216】
96ウェルプレートにおいて、HEK293T細胞(COBIOER)に対してトランスフェクション実験を行い、培地(Culture Medium):DMEM+10%FBSにし、実施例1で提供される方法に従ってLNPを調製し、観察と測定を容易にするために、その中のS protein-mRNAをFluc-mRNA(Hogene Biotech、FLUCmRNA(N1-Me-pseudo U)、Lot:FLUCMPH1B、Fluc-mRNAと略称し、すでに市販され、購入した配列には、すでにUTR配列、プロモーターなどが含まれており、送達後に生体外の細胞レベルと生体内で発現することができる)に置き換えることにより、mRNAの細胞レベルでの発現効果を蛍光によってより直観的に特徴付けることができる。
【0217】
調製されたFluc-mRNA-LNP系に対して細胞トランスフェクション実験を行い、同時にPBSをブランク対照とする。封入されていないFluc-mRNAを陰性対照とし、また、Lipofectamine(登録商標)2000 Reagent(invitrogen#11668-027、Lipoと略称)を使用してトランスフェクトを行ってFluc-mRNAを陽性対照とし、使用される96ウェルプレート(96Well Opaque Assay Plate、Jingan Biology、J09601)でHEK293T 細胞を培養し、細胞密度2*10細胞/ウェルでプレートに接種し、プレートに24時間接種した後、細胞密度が60~70%になる時にトランスフェクションに用いられ、細胞内のトランスフェクトされたmRNAの量が0.1μg/ウェルであり、48時間トランスフェクトした後、蛍光基質作動液(D-Luciferin、Sodium Salt D-フルオレセインナトリウム塩、翌聖生物科技(上海)股フン有限公司、40901ES01)を加え、37℃で5~10分間インキュベートした後、プレートを読み取り、分析し、結果を図5に示す。
【0218】
図5から分かるように、リポソームが封入されていないFluc-mRNAを使用して細胞トランスフェクションを行う場合、Fluc-mRNAの発現が困難になるが、リポソームが封入されたリポソームを使用する場合、細胞レベルでの発現を大幅に増加させることができ、ここで、Lipofectamine2000の蛍光測定値は、約2800GLUであり、調製されたFluc-mRNA-LNPの蛍光測定値は、約6500GLUであり、Lipofectamine2000と比較して2倍以上増加し、その主な理由は、Lipofectamine2000の水相溶液のpHが適切ではなく、脂質含有量が低く、担持容量が低いためであり、トランスフェクション薬物の用量が一致する(トランスフェクション薬物の用量が一致することは、薬物の体積が一致することでなく、薬物中のmRNA含有量が一致し、両者が等しい用量のFluc-mRNAであることを意味している)場合でも、添加剤が多いため、高い発見効果を達成することも困難であるが、本実施例で調製されたFluc-mRNA-LNPの担持容量がより高く、添加剤含有量が少なく、かつより安定し、トランスフェクション薬物の同じ用量で、より多くの細胞レベルでの発現を励起し、より優れた送達および発現効果を達成し、生物学的機能を効率的に実現することができる。
実施例5 Fluc-mRNA-LNPの動物レベルでの発現効果
【0219】
本実施例では、実施例1で提供される方法に従ってLNPを調製し、観察と測定を容易にするために、その中のS protein-mRNAをFluc-mRNA(Hogene Biotech、FLUCmRNA(N1-Me-pseudo U)、Lot:FLUCMPH1B、Fluc-mRNAと略称し、すでに市販され、購入した配列には、すでにUTR配列、プロモーターなどが含まれており、送達後に生体外の細胞レベルと生体内で発現することができる)に置き換えることにより、mRNAの動物レベルでの発現効果を蛍光によってより直観的に特徴付けることができる。
【0220】
この実施例では、動物レベルで、異なる投与方法でのFluc-mRNA-LNPの発現レベルおよび組織分布を観察した。具体的な実験デザインを表18に示し、小動物イメージング(マルチモード動物ライブイメージャ、広州博路騰生物科技有限公司)により、尾静脈投与、筋肉内投与、皮下投与、従来の皮内投与、3針マイクロニードル投与の5つの異なる投与方法、Flucの発現レベルおよび持続時間の違いを比較した。
【0221】
表18、異なる投与方法
【0222】
SPFグレード、6~8週齢、雌、30匹のBalb/cマウスを使用し、体重に応じて、実験に必要な群にランダムに分け、群ごとに3匹のマウスがあり、その後、1回投与した。注射時刻を0hとし、最後のイメージング時間が終了した後、後続の観察期間を暫定的に1週間設け、詳細は未定であり、Fluc-mRNAの実際の濃度は、71.92μg/mlである。(10μg/mouseの場合、実際の注射量が140μL/注射であり、3.6μg/mouseの場合、実際の注射量が50μLである)。G9は、LNPが封入されていない裸のFluc-mRNAである。小動物のイメージングは、6時間投与した後に開始し、イメージング方法は、次のとおりであり、イメージングする前に、マウスに対して脱毛を行った。
【0223】
イメージング結果を図6に示し、イメージング結果から見ると、Fluc-mRNA-LNPが注射された後、全ての投与方法で信号が現れ、Fluc-mRNA-LNPの核酸薬物送達システムが優れた性能を備えていることが証明され、それと同時に、Fluc-mRNA-LNPは、主にマウスの注射部位と肝臓で発現されるが、他の具体的な内臓にも少量の発現があり、これは、組織分布の結果から分析する必要がある。本実施例では、マウスの注射部位と肝臓の光信号強度をそれぞれ分析し、注射部位、肝臓とマイクロニードルによる投与量の関係、および異なる注射方法と総発現レベルの関係を調査した。
1、異なる投与方法による注射部位の光信号強度の分析
【0224】
異なる投与方法による注射部位の光信号強度の分析結果を図7に示し、具体的な強度データを表19に示し、図7および表19から分かるように、全ての注射方法による注射部位のFlucの発現が時間の経過とともに低下し、MN(マイクロニードル)群は、他の群と比較して、連続発現時間が最も長く、96hの時点でも比較的高い発現レベルと測定され、G5およびG6群は、6hの時点で信号が最も強いが、その後急速に低くなり、6hの後、各時点でのMN群の信号は、他の群の信号よりも強く、120hの時点でも5.42E+07の信号量がある。G9群におけるMNの注射量が3.6μgに減少したが、高い発現レベルが依然として長期間持続する。マイクロニードル注射により、注射部位でのmRNA発現を増加させることができ、同時に発現時間も延長させることもできることがわかる。
【0225】
表19、異なる投与方法によるマウスの注射部位の信号強度の分析結果
【0226】
2、異なる投与方法での肝臓内の光信号強度の分析
異なる投与方法での肝臓内の光信号強度の分析結果を図8に示し、具体的な強度データを表20に示す。
【0227】
表20、異なる投与方法によるマウスの肝臓の信号強度の分析結果
【0228】
図8および表20から分かるように、他の群と比較して、IV群(尾静脈注射)群とIM群(筋肉内注射)が肝臓でより速く発現し、発現レベルが最も高く、IV群の信号は、6hの後に速く減少し始め、IM群の信号は、12hの後に速く減少し始め、MN群の肝臓での発現がIV群およびIM群よりも著しく低く、SC群(皮下注射)とID(皮内注射)群と比較して、最初の24hまたは48hで、MN群の肝臓での発現は、依然として低く、その後、時間が経過するにつれて発現は、徐々に減少し、MN群とSC(皮下注射)群またはID(皮内注射)群で差が大きくなくまたは少し上昇した、その理由は、マイクロニードルによりmRNAの発現時間を延長できるためであると考えられ、総発現強度は、SC(皮下注射)群およびID(皮内注射)群よりも依然として低い。mRNAのマイクロニードル注射により肝臓での発現を低下させることができることがわかる。
3、注射部位、肝臓とマイクロニードル投与量の関係の影響
【0229】
マイクロニードルを使用して、10μg、3.6μgのFluc-mRNAをそれぞれ注射し、異なる投与量での注射部位と肝臓におけるFluc-mRNAの光の強度の変化を調べ、その結果を図9に示し、図9の左上図は、異なる投与量での肝臓におけるFluc-mRNAの光の強度の変化を示し、右上図は、Fluc-mRNAの総光強度の変化を示し、下図は、異なる投与量でのFluc-mRNAの総光強度の変化を示す。
【0230】
図9から分かるように、全体的な発現レベルから見ると、2つの群は、明らかな投与量依存的傾向を示し、ここで、注射部位の光信号強度は、明らかな投与量依存傾向を示すが、肝臓部位では、24hの前に、明らかな投与量依存傾向も示し、その後の信号が全て減少傾向を示すことがわかり、マイクロニードルで投与すると、注射部ではより明らかな投与量反応が見られ、高発現の持続時間が長く、肝臓部位での発現レベルが低いため、投与量がすこし高くなっても肝臓での発現も速く低下することがわかり、したがって、マイクロニードルで投与すると、mRNAの発現は、主に注射部位に集中し、皮膚、筋肉での発現レベルを向上させることができるが、肝臓での発現を低下させることができる。
4、異なる投与方法と注射部位、肝臓および総発現レベルとの関係の分析
【0231】
SC(皮下注射)、ID(皮内注射)、MN(マイクロニードル注射)によって注射する場合、10μgのFluc-mRNA-LNPを注射し、注射回数が1回であり、異なる投与方法での注射部位、肝臓の光信号強度、および総発現レベルの分析結果を図10に示し、図10の左上図は、異なる投与方法での注射部位のFluc-mRNAの発現量の比較であり、右上図は、異なる投与方法での肝臓のFluc-mRNAの発現量の比較であり、下図は、異なる投与方法でのFluc-mRNAの総発現量の比較である。
【0232】
図10から分かるように、MN(マイクロニードル注射)群の総発現レベルおよび注射部位の発現レベルは、12hの後にSC群およびID群よりも著しく高く、MN群の減少傾向は、他の2つの群よりも緩やかであり、より長い時間持続することができるが、肝臓部位では、MN群は、12hの後に発現レベルが急速に減少し、SC群およびID群よりも著しく低く、強い下降傾向を示し、これにより、肝臓部位の発現レベルを大幅に減少させ、注射部位の発現レベルを増加させることができる。
5、48時間後の異なる投与方法と注射部位、肝臓および総発現レベルとの関係の分析
【0233】
異なる投与方法を総合的に調べた場合、48hの後の注射部位、肝臓の光信号強度、および総発現レベルの分析結果を図11に示し、図11の左上図は、48hの後の注射部位のFluc-mRNAの発現量の比較であり、右上図は、48hの後の肝臓のFluc-mRNAの発現量の比較であり、下図は、48hの後のFluc-mRNAの発現状況の総発現量の比較である。
【0234】
図11から分かるように、注射部位の発現レベルおよび総発現レベルから見ると、48hの後のMN群の発現レベルが他の群よりも著しく高く、さらには3.6μgの注射量の場合(G8群)、他の投与方法での発現レベルに達することができ、発現時間を大幅に延長させることができるが、肝臓部位では、MN群の48hの後の発現レベルが低く、低下速度が最も速い。
6、異なる投与方法でのマウスの異なる部位におけるFluc-mRNAの分布状況の分析
【0235】
動物レベルでは、本実施例において表21に示す4つの異なる投与方法が用いられ、投与してから6h、24hを経過した後、マウスを解剖することで内臓のFlucの発現強度を観察した。BLTイメージング結果を図12に示し、マウスの様々な部位の具体的な強度分析の結果を図13に示す。
【0236】
表21、実験スキーム
【0237】
図13から分かるように、6hの時点で、MN群およびSC群のFluc mRNAの発現は、主に注射部位に分布し、特にMN群は、皮膚および筋肉の両方で発現されるが、IM群は、主に肝臓と脾臓に分布し、24hの時点で、MN群は、肝臓で発現したが、信号は、IM群およびSC群よりも弱いが、皮膚と筋肉での信号は、依然として高く、MN>SC>IMである。マイクロニードルで投与した後、主に皮膚と筋肉での発現が促進され、肝臓での発現が減少し、これにより、明らかな減毒増効の効果がある。
実施例6、S protein-mRNA-LNPの動物レベルでの発現効果
【0238】
本実施例でSPFグレード、6~8週齢、雌、60匹のBalb/cマウスを使用し、体重に応じて、6つの群にランダムに分け、群ごとに6匹のマウスがあり、表22に示す実験スキームに従って、Day0に投与を開始した。
【0239】
表22、実験スキーム
【0240】
投与前後のDay-7、Day7、Day14、Day21、Day28に眼窩血液を採取した。血清採取プロセスが次のとおりである。実験デザインに従って、全ての群のマウスが耳標の順序に従って選択され、各群の6匹のマウスが6つの時点で血清採取のために選択され、それぞれから血液サンプルが採取される。6つの時点は、初回投与前の7日、初回投与後の1日、初回投与後の7日、2回目投与時、2回目投与後の7日、2回目投与後の14日である(プロセスを図14に示す)。血液サンプルを眼窩から採取し、室温で30分間静置した後、3000rpmで20分間遠心分離して血清サンプルを採取し、採取した血清をその後の検査のために-80℃で保存した。採血体積は、約100μLであり、マウスの血清中の抗Sタンパク質の抗体量を測定することでmRNAワクチンの体液性免疫効果を評価する。
【0241】
毎回採血した後に血清中のsars-cov-2 S Protein抗体価の測定を行い、Day1で新型コロナウイルスのSタンパク質発現の測定を行うとともに、この測定方法に必要な試薬をAcro(北京百普賽斯生物科技股フン有限公司)から購入した。
【0242】
SARS-CoV-2 S Protein抗体価の測定方法は次のとおりである。1、1×Washing Bufferの調製には、50mLの10×Washing Bufferを取り、超純水/脱イオン水で希釈し、正確に500mLとし、Positive Control作動液とNegative Control作動液を調製し、抗体価測定のためにサンプルの希釈を行う。2、希釈した測定待ちサンプル、Positive Control作動液、Negative Controlまたは参照製品作動液を100μL対応するプレートウェルに加え、ブランク対照に対して、ウェルに100μLのDilution Bufferを加える。3、インキュベートには、プレートをプレートシールフィルムでシールし、37℃の恒温のインキュベーターに入れ、1.0hインキュベートする。5、HRP酵素マーカーを加える。6、発色には、各ウェルに100μLのSubstrate Solutionを加え、プレートをプレートシールフィルムでシールし、37℃の恒温のインキュベーターに入れ、暗所で20分間インキュベートする。各ウェルに7、50μLのStop Solutionを加え、均一に混合するまでELIASプレートを軽く振る。8、マイクロプレートリーダーを使用して、450nmおよび630nmの位置の各ウェルの波長の光吸収スペクトルを測定する。
【0243】
S タンパク質の測定方法は次のとおりである。1、SARS-CoV-2 Spike ProteinをDilution Bufferで2倍勾配希釈し、希釈範囲が0.195~12.5ng/mLである。2、100μLの希釈したサンプルと100μLの調製した標準曲線を対応するプレートウェルに加える。100μLのDilution Bufferをブランクコントロールウェルに加える。プレートをプレートシールフィルムでシールし、軽く振って均一に混合し、37℃で置いて1.0hインキュベートする。3、50mLの10×Washing Bufferを取り、超純水/脱イオン水で希釈し、正確に500mLとする。ウェル内の液体を捨て、ELISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、1×Washing Bufferでプレートを洗浄し、300μL/ウェルで30秒間浸し、LISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、次回の洗浄を行い、プレートを合計3回洗浄する。4、Biotin-Anti-SARS-CoV-2 Spike Protein AntibodyをDilution Bufferで0.5μg/mLに希釈し、各ウェルに100μL加え、プレートをプレートシールフィルムでシールし、37℃で1.0hインキュベートし、使用に備える。5、ウェル内の液体を捨て、ELISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、1×Washing Bufferで洗浄し、300μL/ウェルで30秒間浸し、LISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、次回の洗浄を行い、合計3回洗浄する。6、Streptavidin-HRPをDilution Bufferで0.1μg/mLに希釈し、各ウェルに100μL加え、プレートをプレートシールフィルムでシールし、37℃で1.0hインキュベートし、使用に備える。7、ウェル内の液体を捨て、ELISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、1×Washing Bufferでプレートを洗浄し、300μL/ウェルで30秒間浸し、ELISAプレートを軽くたたいて乾燥させ、次回の洗浄を行い、合計3回洗浄する。8、各ウェルに100μLのSubstrate Solutionを加え、プレートをプレートシールフィルムでシールし、37℃に置き、暗所で20分間インキュベートする。9、各ウェルに50μLのStop Solutionを加え、均一に混合するまでELISAプレートを軽く振り、10、450nmおよび630nmの位置の各ウェルの波長の光吸収スペクトルをマイクロプレートリーダーで測定し、終了後3分間以内に読み取る。
【0244】
血清中の新型コロナウイルスSタンパク質の発現レベルの測定結果を図15(左から右はG1~G8)に示し、SARS-CoV-2 S Protein抗体価の測定結果を図16および図17に示す。
【0245】
図15から分かるように、S protein-mRNA-LNPを24h注射すると、血清中にSタンパク質を測定でき、G4&G5&G6は、ブランク群と比較して著しく違いがあり、ID&IM発現レベルは、約125ng/mlであり、MNは、約100ng/mlであり、G6&G7&G8に用量効果関係があり、用量依存性があり、この測定は、血清中のタンパク質の発現のために行われ、MNは注射部位でより多く発現し、血液に侵入する能力が強くないので、発現レベルは、他の群に比べて低いが、その抗体価は低くない(図16)。
【0246】
図16図17から分かるように、IM(筋肉内注射)、ID(皮内注射)およびMN(マイクロニードル注射)を用いた場合、S protein-mRNA-LNPの抗体価は、Day7に約105であるが、Day14に大幅に低下せず、2回目のブースター注射により、Day21およびDay28に一定の増加が見られ、安定した状態を保っており、また、マイクロニードル注射に対して3つの投与量が設定されるが、抗体価には統計的な差が示されず、マイクロニードル注射の投与量がわずか1.2μgである場合、3つの投与方法での10μgの注射と同じ効果を達成でき、これにより、安全性を高めるために臨床現場でワクチンの投与量を減らす可能性が得られ、さらに、マイクロニードル注射には、低投与量を使用して同じ抗体抗体価を達成できることが示され、低投与量のワクチンの使用をサポートし、さらにワクチンの安全性を高める可能性がある。
実施例7細胞レベルでの二重特異性抗体mRNAタンパク質の発現
【0247】
本実施例では、実施例1で調製した高担持容量のZSL303-mRNA-1-LNPを使用し、293T細胞の発現レベルを測定した。EpCAM(Acro Biosystems#EPM-H5254)を抗原とし、Anti-His-HRP(Genscript#A00612)を二次抗体として使用し、QELISA方法を使用して293T発現上澄液中に発現産物の有無を検出し、Lipofectamine(登録商標)2000 Reagent(invitrogen#11668-027、以下でLipo2kと略称)とLipofectamine(登録商標)MessengerMAXTM Reagent(invitrogen#LMRNA008、以下でLipoMAXと略称)の2つのトランスフェクション試薬でのZSL303-mRNA-1-LNPの発現状況を測定する。実験プロセスは、次のとおりである。
【0248】
1、HEK293T(ヒト胎児腎臓細胞)、Cμlture Medium:DMEM+10%FBSを使用する。
2、24ウェルプレートで培養し、細胞密度が2X10であり、プレートに24h接種した後にトランスフェクションに使用する。
3、表3に示すトランスフェクション条件をそれぞれ使用してトランスフェクトし、トランスフェクトした後の抗体発現結果を表23に示す。
【0249】
表23、トランスフェクト条件
【0250】
表23から分かるように、全てのトランスフェクション条件下で、ZSL303-mRNA-1が発現された。細胞レベルでは、ZSL303-mRNA-1が良好な発現効果を示し、二重特異性抗体が細胞上澄液に分泌されることが確認された。
【0251】
ZSL303-mRNA-1含有量が3μgであり、mRNA:トランスフェクション試薬の体積が1:4である群を使用すれば、発現効果は、全ての群で最も低く、その理由は、トランスフェクション試薬の割合がより多く、同じ量での細胞毒性がより大きいためである。
【0252】
トランスフェクション試薬に関わらず、ZSL303-mRNA-1含有量が2μgであり、mRNA:トランスフェクション試薬の体積が1:2である群を使用すると、発現効果は、全ての群で最も高く、4μlのトランスフェクション試薬で、すでに約2μgのmRNAを飽和させることができると推測され、したがって、トランスフェクション効果は高く、効率も高い。したがって、トランスフェクトした後により高く発現することができるために、ZSL303-mRNA-1含有量が2μgであり、mRNA:トランスフェクション試薬との比率が1:2であり、トランスフェクション試薬の体積が4μlである群が好ましい。
Lipo2kおよびLipoMAXの2つのトランスフェクション試薬の24hおよび36hでの発現を比較した結果を、図18と表24に示す。
【0253】
表24 ELISAによる細胞上澄液中のZSL303-mRNA-1の発現結果の測定
【0254】
図18および表24から分かるように、異なるトランスフェクション試薬が使用され、上澄液が異なる時点で収集され、ELISAによって上澄液を定量した後、36h使用前に発現された抗体濃度は、最も高く、Lipo2Kトランスフェクション試薬を使用してトランスフェクトされたサンプルの発現レベルが最も高い。
実施例8 ZSL303-mRNA-1-LNPのマウス血漿における発現
【0255】
本実施例では、QELISA法を使用し、実施例1で提供されるZSL303-mRNA-1-LNPのマウス血漿における発現レベルを測定した。EpCAMを抗原とし、Anti-His-HRPを二次抗体として使用し、異なる時間条件で抽出されたマウス血漿における薬物の発現および蓄積量を測定し、発現および蓄積量に基づいてより良い組み合わせ条件を推測した。具体的な実験プロセスは次のとおりである。
【0256】
1、サンプルの収集には、Day15に投与(ZSL303-mRNA-1-LNP、5μg/mouse)後の1h、6h、12h、24h、48hおよび72hの時点で、尾の切り取りにより動物から血液を採取し、採取した血液の量は、約40μL/mouseであり、EDTA-K2で抗凝固処理を行い、氷の上に置いた。抗凝固処理した全血を2~8℃で、8000rpmで10分間遠心分離し、上部血漿20μLを収集して-80℃で保存する。2、抗原コーティング試薬(SangonBiotech#BBI E661004-0100)および96ウェルThermoFisher NUNC ELISA測定プレートを使用し、抗原EpCAM(Acro Biosystems#EPM-H5254)を0.5μg/mLの濃度でコーティングし、4℃で冷蔵庫に12時間置く。3、上記のコーティングされたELISAプレートを取り出し、1xPBST(0.5%Tween20含有)溶液で1回洗浄する。4、上記ELISAプレートのシールには、室温に平衡化したブロッキング溶液(2%BSA(Vetec V900933-100G)を含むPBS溶液)を使用し、各ウェルに200μl加え、完了した後にプレートシールフィルム(SangonBiotech#BBI F600418-0001)で全てのプレートウェルを覆い、室温で1時間インキュベートする。5、上記ブロッキング溶液を使用し、各時点で得られたマウス血漿を希釈し、96ウェル希釈プレート(Beyotime#FPT021)に配置する。6、CD3xEpCAM二重特異性抗体を上記のブロッキング溶液で希釈し、上記の96ウェル希釈プレートに置く。7、上記のブロッキング溶液でシールされたELISAプレートを取り出し、上記1xPBST溶液を使用し、プレートを3回洗浄する。8、上記のステップ5およびステップ6で希釈されたマウス血漿および陽性基準物質を加え、各ウェルに100μl加え、完了した後に全てプレートのウェルを上記プレートシールフィルムで覆い、室温で2時間インキュベートする。9、上記ブロッキング溶液を使用し、この実施例における二次抗体(THETM His Tag Antibody [HRP]、mAb、Mouse、Genscript-A00612)を1:2500の比率で希釈する。10、上記の2時間インキュベートした後のELISAプレートを取り出し、上記1xPBST溶液を使用してプレートを3回洗浄する。11、上記ステップ8で希釈した二次抗体溶液を加え、各ウェルに100μl加え、完了した後に全てのプレートウェルを上記プレートシールフィルムで覆い、室温で1時間インキュベートする。12、上記の1時間インキュベートした後のELISAプレートを取り出し、上記1xPBST溶液を使用してプレートを6回洗浄する。13、室温に平衡化したTMB単一成分発色液(Solarbio#PR1200)を各ウェルに100μlずつ加え、完了した後、室温、暗所で8分間インキュベートする。14、上記反応を終了するために、ELISA反応停止液(SangonBiotech#BBI E661006-0200)を各ウェルに100μl加える。15、直ちにマイクロプレートリーダー(Molecμlar Devices SpextraMax(登録商標)iD3)を使用し、ソフトウェア(Molecμlar Devices SoftMax Pro 7.1)で波長450nm の励起光下でのOD値を読み取る。16、ソフトウェア(GraphPad Software Prism 8)を使用し、得られたOD値を記録・分析し、グラフを描画する(図19を参照)。
【0257】
図19から、12時間、24時間、48時間の時点で、マウス血漿中の二重特異性抗体CD3×EpCAMの濃度が徐々にピークに達するかピークを超え、48時間の時点で約150ng/mLの最高値に達し、時間の経過とともに徐々に低下する。
実施例9免疫再構成動物モデルにおける抗腫瘍効果
【0258】
本実施例では、ヒト結腸癌HCT-15細胞PBMCヒト化マウス異種移植片腫瘍モデルを使用し、試験物質(実施例1で調製したZSL303-mRNA-1-LNP)を別に投与した場合の抗腫瘍活性を評価した。本実施例では、合計16匹接種し、群ごとに12匹があり、群に分けた直後に投与し、マイクロニードル投与を週1回行い、3回連続投与し、合計2つの群に分け、第1群は、PBSのマイクロニードル注射を3回受け(ブランク対照)、第2群は、マイクロニードル投与((MN、QW3)を3回受けたものである。投与群に対して最後の投与後(Day15)にPKサンプリングを実行し、Day23に全ての動物を殺し、腫瘍の重量を量り、写真撮影し、記録した後に実験を終了する。
【0259】
実験動物につては、雌、8~10週齢のOGマウスであり、体重が18-20gであり、偏差が平均重量の約±20%であり、接種動物の数が16匹であり、群内の動物の数が12匹であり、動物供給源は、生産許可番号SCXK(北京)2021-0006、動物資格証明書110011220100517757の北京維通利華実験動物技術有限公司である。
細胞株:ヒト結腸癌細胞株HCT-15は、中国科学院典型培養物保蔵委員会の細胞バンクから購入された。
【0260】
培地がRPMI-1640培地であり、DMEM培地およびウシ胎児血清(FBS)の両方は、GIBCO社(Grand Island、NY、USA)から購入され、マトリゲル(Matrigel)は、CORNING社(Corning、NY、USA)から購入された。hPBMCは、Source ID:DZ20976、Lot#:A10Z976076の浙江邁順生物科学技術有限公司から購入された。
【0261】
モデルの確立には、HCT-15細胞を、10%FBSを含むRPMI-1640培地で培養し、5%CO2を含む37℃の飽和湿度のインキュベーター内で維持した。対数増殖期のHCT-15細胞を収集し、50%マトリゲルを含むRPMI-1640基礎培地に再懸濁し、細胞濃度を2×107/mLに調整した。無菌条件下で、2×106/0.1mL/mouseの接種濃度で、マウスの右背中の皮下に細胞懸濁液0.1mLを接種した。
【0262】
腫瘍細胞接種の2日後、液体窒素中で凍結保存したhPBMCを蘇生し、10%HIFBS(FBS、56℃×30min)が含まれるDMEM培地で培養し、5%CO2を含む37℃のインキュベーターで6hインキュベートする。インキュベートした後のhPBMCを収集し、PBS緩衝液に再懸濁し、細胞濃度を2.5×107/mLに調整した。無菌条件下で、5×106/0.2mL/mouseの注射濃度で、0.2mlの細胞懸濁液をマウスの腹腔内に注射した。
【0263】
群分けおよび投与には、平均腫瘍体積が100~120mm3に達すると、各群の腫瘍体積の差が平均値の10%未満になるように、腫瘍体積に応じて動物をランダムに群に分ける。
【0264】
群に分ける日をDay0として記録し、動物の体重に応じて投与を開始した。投与期間にわたって、個別の動物の体重がDay0と比較して15%以上減少した場合(BWL≧15%)、薬物の投与を中止し、動物の体重が回復する(BWL<15%)まで投与を再開する。
【0265】
秤量および観察には、実験期間にわたって、動物の体重と腫瘍体積を週に2回測定した。腫瘍の長さと厚さは、デジタルノギスで測定され、腫瘍の体積は、長さと幅の測定値から推定された。
【0266】
実験期間にわたって動物の臨床症状を1日1回観察および記録し、動物の死亡時間も記録した。臨床観察には、動物の一般的な健康状態、体重減少、異常行動、および他の薬物に関連する副作用が含まれる。
【0267】
サンプルの収集には、Day15に投与した後の1h、6h、12h、24h、48hおよび72hの時点で、尾の切り取りにより動物から血液を採取し、採取した血液の量は、約40μL/mouseであり、EDTA-K2で抗凝固処理を行い、氷の上に置いた。抗凝固処理した全血を2~8℃、8000rpmで10分間遠心分離し、上部血漿20μLを収集し、-80℃で保存した。
【0268】
実験の終点の説明には、動物福祉関連規定に従って、実験期間に個別の実験動物が以下の条件のいずれかを満たす場合、この動物は、実験群から除外され、安楽死させる:1、動物の体重がDay0と比較して20%以上減少する(BWL≧20%)。2、動物に失明、麻痺など重篤な副作用が発生する。3、腫瘍体積が2000mm3を超える。4、腫瘍の表面に開放性潰瘍が形成される。
【0269】
個別の動物は、動物福祉の終点に到着と、最終の体重測定後にCO2で安楽死された。同じ群の残りの動物については、動物福祉終点または実験終点に達するまで投与および観察が続けられる。
【0270】
実験サイクルは23日間に設定され、実験終点の最後の体重測定の後、残りの動物をCO2で安楽死させ、腫瘍を秤量し、写真撮影を行い、記録した後に実験を終了する。
【0271】
評価指標については、腫瘍体積(Tumor Volume、TV)の計算式は、1/2a×b2であり、aおよびbは、それぞれ腫瘍の長さと厚さの測定値であり、腫瘍成長抑制率(%TGITV)の計算式は、(1-TVT/TVC)×100%であり、TVCは、陰性対照群の平均腫瘍体積であり、TVTは、治療群の平均腫瘍体積であり、相対腫瘍体積(Relative Tumor Volume、RTV)の計算式は、Vt/V0であり、V0は、群に分ける時の腫瘍体積であり、Vtは、毎回測定する時の腫瘍体積であり、相対腫瘍増殖率(%T/CRTV)の計算式はTRTV/CRTV×100%であり、TRTVは、治療群RTVであり、CRTV は、陰性対照群のRTVであり、腫瘍抑制率(%TGITW)の計算式は、%TGITW=(1-TWT/TWC)×100%であり、TWCは、陰性対照群の平均腫瘍重量であり、TWTは、治療群の平均腫瘍重量であり、動物の体重変化率(%BWC)の計算式は、(BWt-BW0)/BW0×100%であり、ここで、BWtは、毎回測定する時の動物の体重であり、BW0は、群分けする時の動物の体重である。
【0272】
統計分析には、この研究で、実験データは、全てMean±SEMで表される。時点をX軸とし、腫瘍体積(mm3)をY軸として腫瘍成長曲線を描き、時点をX軸とし、動物の体重(g)をY軸として動物の体重変化曲線を描く。群間の比較には、両側t-検定を使用し、P<0.05を有意な差とみなし、P<0.01を極めて有意な差とみなした(Microsoft Excel 2007、Redmond、WA、USA)。
【0273】
実験スキームであるZSL303-mRNA-1-LNP投与動物実験スキームは、図20に示すように、まず対数増殖期のHCT-15細胞を収集し、腫瘍細胞をマウスの右背中の皮下に接種し、実際の接種量が2×106/0.1mL/mouseである。腫瘍細胞を接種してから2日間に5×106/0.2mL/mouseの注射濃度で0.2mLhPBMC細胞懸濁液をマウスの腹腔内に注射した。本実施例では、合計16匹接種し、12匹ずつ群に分け、群に分けた後に直ちに投与し、Test Article 1(即ちCD3×EpCAM-mRNA二重特異性抗体群)を週1回マイクロニードルで投与し、3回連続投与した(MN、QW×3)。Test Article 1投与群に対して最後の投与後(Day15)、血漿中の二重特異性抗体薬物の濃度を測定するために、血液サンプルが採取され、Day23に全ての動物を殺し、腫瘍の体重を量り、写真を撮影し、記録した後に実験を終了させる。
抗腫瘍活性の評価は以下のとおりである。
【0274】
本実施例では、免疫不全マウスのPBMC再構成モデルを使用し、CD3×EpCAM-mRNA-LNPの動物レベルでの腫瘍抑制効果を測定する。具体的な結果を図21~25に示し、ここで、2つの方法で投与した後のPBMCヒト化マウスにおけるHCT-15異種移植片腫瘍の腫瘍体積の変化曲線を図21に示し、3回のマイクロニードル投与の抗腫瘍効果を図22に示し、マウス腫瘍実体イメージング結果を図23に示し、2つの方法で投与した後の23日間のマウスの腫瘍重量の比較を図24に示し、3回投与後のマウス血清中の二重特異性抗体濃度の測定結果を図25に示す。
【0275】
実験の結果から、LNPとマイクロニードル注射を組み合わせる方法で、週1回、合計3回投与すると、Day9の前に1回投与した場合、弱い腫瘍抑制効果があるが、2回目の投与後、腫瘍の成長が顕著に抑制され、腫瘍が成長しなくなり、3回目の投与後、腫瘍抑制効果が顕著となり、TGI(Tumor Growth Inhibition、腫瘍成長抑制)は、80にも達した。実験終点としてのDay23に腫瘍を取り、写真を撮り、重量を量るが、これは、図21のデータと完全に一致している。同時に、マウス血清中の二重特異性抗体の濃度を測定するために、Day15にマウス血清の収集を開始し(図25)、2回投与後のDay15に、マウス血清中の二重特異性抗体濃度は、約50ng/mLであり、12hから48hであり、平均142ng/mLで維持され、48h以降は少し低下するが、約100ng/mlで維持され、この結果は、当社が調製したLNPとマイクロニードル注射を併用することにより、血中薬物濃度が長期間維持され、顕著な腫瘍抑制効果を発揮することを示している。
【0276】
本実施例では、本発明で提供されるmRNA薬物送達用マイクロニードルと組み合わせた製剤の経皮注射用プラットフォームの有効性をさらに検証した。当社が合成した二重特異性抗体mRNAは、当社が合成したmRNAの優れた発現性能を細胞レベルで確認しただけでなく、動物レベルでも顕著な腫瘍抑制効果を示した。次に、プロジェクトの実現可能性と、それが生体外で発現および精製した二重特異性抗体の有効性よりも優れているかどうかをさらに検証し、この2点が検証できれば、生体外での発現および精製が難しく収率が低いが効果が著しい二重特異性抗体薬物のための効果的な解決策を提供する。
【0277】
本明細書で言及される全ての特許および刊行物は、これらが当該技術分野において開示されている技術であり、本発明が使用可能であることを示している。ここで引用される全ての特許および刊行物は、各刊行物が具体的かつ個別に参照されている場合と同様に、参考文献にリストされる。本明細書に記載される本発明は、いかなる要素または複数の要素がなく、1つの限定または複数の限定が存在しない状態で実現されてもよく、ここでこのような限定は本明細書で特に述べられていない。例えば、本明細書の各実施例における「含む」、「本質的に......からなる」および「......からなる」とは、両方のうちの一方以外の2つの用語で置き換えることができ。ここでいう「1つ」とは、単に「1つ」という意味であり、1つだけ含まれることを排除するものではなく、2つ以上含まれることを意味することもできる。ここで使用される用語および表現方法は、説明のためのものであり、限定されるものではなく、本明細書に記載されるこれらの用語および解釈がいかなる同等の特徴を排除することを示すいかなる意図がないが、本発明および特許請求の範囲内で任意の適切な変更または修正を行うことができることが理解できる。本発明に記載される実施例は、幾つかの好ましい実施例および特徴であり、当業者であれば、本発明に記載された精神に従って幾つかの変更および修正を行うことができ、これらの変更および修正は、本発明の範囲、独立請求項および添付の請求項の範囲に属するとみなされる。
【0278】
配列 SEQ ID NO:1
ZSL303-mRNA-1:
CTCAACACAACATATACAAAACAAACGAATCTCAAGCAATCAAGCATTCTACTTCTATTGCAGCAATTTAAATCATTTCTTTTAAAGCAAAAGCAATTTTCTGAAAATTTTCACCATTTACGAACGATAGCATGGGCTGGTCCTGCATCATCTTGTTCTTGGTGGCTACTGCCACTGGAGTACACAGCGAGATTGTCCTTACACAGTCACCAGGCACCCTTTCCTTGTCTCCTGGGGAACGAGCCACCCTCAGTTGTCGGTCAAGCAAGAATCTGCTGCATTCCAATGGGATCACATACCTGTATTGGTACCAGCAGAAGCCTGGACAGGCACCCAGACTGCTCATCTACCAGATGTCCAATCTGGCCTCAGGCATTCCTGACAGGTTTTCCGGCAGCGGGTCTGGCACCGATTTCACCCTGACCATATCCAGGCTCGAACCAGAGGATTTTGCCGTGTATTACTGCGCACAGAATCTGGAGATTCCCCGCACTTTTGGCCAAGGGACTAAACTGGAGATCAAGCGGGGAGGAGGCGGCTCTGGAGGTGGCGGCAGTGGTGGAGGCGGGTCTGGCGGTGGCGGATCTGGAGGTGGTGGGAGCCAGGTCCAGCTTGTTCAGTCAGGCGCAGAGGTGAAGAAACCCGGAGCTAGCGTGAAAGTCTCCTGCAAAGCGTCAGGGTACACCTTCACCAACTATGGGATGAACTGGGTACGTCAAGCCCCAGGGCAAAGACTCGAATGGATGGGTTGGATCAACACGTACACAGGGGAACCGACTTATGGCGAGGACTTCAAGGGGAGAGTGACCATAACACTGGACACATCCGCTAGCACAGCGTATATGGAGCTGAGCAGTCTGAGGAGCGAAGATACGGCTGTTTACTATTGTGCCCGCTTTGGTAACTACGTGGACTATTGGGGTCAGGGAACTCTGGTGACGGTTTCTAGCAGTGGCGGCGGAGGATCCCAGGTGCAGCTGCAGCAGTCTGGCGCTGAGCTGGCTAGACCTGGCGCCTCCGTGAAGATGTCCTGCAAGACCTCCGGCTACACCTTCACCCGGTACACCATGCACTGGGTCAAGCAGAGGCCTGGACAGGGCCTGGAATGGATCGGCTACATCAACCCCTCCCGGGGCTACACCAACTACAACCAGAAGTTCAAGGACAAGGCCACCCTGACAACCGACAAGTCCTCCTCCACCGCCTACATGCAGCTGTCCTCCCTGACCTCCGAGGACTCCGCCGTGTACTACTGCGCCCGGTACTACGACGACCACTACTCCCTGGACTACTGGGGCCAGGGCACCACACTGACAGTGTCTAGCGGAGGCGGAGGATCTGGTGGTGGCGGATCTGGCGGCGGTGGAAGTGGCGGAGGTGGTAGCCAGATCGTGCTGACCCAGTCTCCCGCCATCATGTCTGCTAGCCCTGGCGAGAAAGTGACAATGACCTGCCGGGCCTCCTCCTCCGTGTCCTACATGAACTGGTATCAGCAGAAGTCCGGCACCTCCCCCAAGCGGTGGATCTACGACACCTCCAAGGTGGCCTCTGGCGTGCCCTACAGATTCTCCGGCTCTGGCTCTGGCACCTCCTACAGCCTGACCATCTCCAGCATGGAAGCCGAGGATGCCGCCACCTACTACTGCCAGCAGTGGTCCTCCAACCCCCTGACCTTTGGCGCTGGCACCAAGCTGGAACTGAAGGGCGGCTCTCACCACCACCATCACCACTGATGAGCTGCAGAATTCGTCGACGGATCCGATCTGGTACTGCATGCACGCAATGCTAGCTGCCCCTTTCCCGTCCTGGGTACCCCGAGTCTCCCCCGACCTCGGGTCCCAGGTATGCTCCCACCTCCACCTGCCCCACTCACCACCTCTGCTAGTTCCAGACACCTCCCAAGCACGCAGCAATGCAGCTCAAAACGCTTAGCCTAGCCACACCCCCACGGGAAACAGCAGTGATTAACCTTTAGCAATAAACGAAAGTTTAACTAAGCTATACTAACCCCAGGGTTGGTCAATTTCGTGCCAGCCACACCCTCGAGCTAGCAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGCATATGACTAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図25
【配列表】
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