(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182007
(43)【公開日】2023-12-25
(54)【発明の名称】不織布及び不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/485 20120101AFI20231218BHJP
D04H 1/49 20120101ALI20231218BHJP
D04H 1/425 20120101ALI20231218BHJP
【FI】
D04H1/485
D04H1/49
D04H1/425
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023179585
(22)【出願日】2023-10-18
(62)【分割の表示】P 2019569638の分割
【原出願日】2019-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2018018501
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】519354108
【氏名又は名称】大和紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】京塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】森田 遼
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AA12
4L047AA14
4L047AA21
4L047AA27
4L047AA28
4L047AB02
4L047AB09
4L047BA01
4L047BA04
4L047BA09
4L047BA24
4L047BB05
4L047BB06
4L047BB09
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】不織布の風合いの柔らかさと毛羽の抑制を両立させた、例えば吸収性物品等の人の肌に直接触れる用途に使用できる、セルロース系繊維を含む不織布及びその不織布の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2であるか、又は前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、不織布である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2である、
不織布。
【請求項2】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、
不織布。
【請求項3】
前記セルロース系繊維が25~75質量%含まれる、請求項1または2のいずれかに記載の不織布。
【請求項4】
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含む、不織布の製造方法。
【請求項5】
前記接着工程と前記交絡工程との間に冷却工程を含む、請求項4に記載の不織布の製造方法。
【請求項6】
前記交絡工程が、水流交絡処理を含む、請求項4または5に記載の不織布の製造方法。
【請求項7】
前記接着工程が熱風加工処理を含み、前記水流交絡工程において、熱風を吹き付けた側から先に柱状水流を噴射することを含む、請求項6に記載の不織布の製造方法。
【請求項8】
前記水流交絡処理の後に乾燥工程を含み、前記乾燥工程の温度が、接着性繊維の接着成分の軟化または溶融する温度よりも10℃以上低い温度であることを含む、請求項6または7に記載の不織布の製造方法。
【請求項9】
前記水流交絡処理の後に乾燥工程を含み、
前記接着性繊維は、接着成分の融点または軟化点が異なる二以上の接着性繊維を含み、
融点または軟化点がより高い接着成分の融点または軟化点T1(℃)と、融点または軟化点がより低い接着成分の融点または軟化点T2(℃)と、乾燥処理の温度T(℃)とが、T2≦T<T1の関係を満たす、請求項6または7に記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布及び不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不織布は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、及びパンティライナー等の吸収性物品に使用される。セルロース系繊維は、吸湿性に優れ、植物に由来する再生可能な繊維なので、自然環境負荷の低減の観点から、セルロース系繊維を含む不織布は、興味が持たれる。
セルロース系繊維を含む不織布は、毛羽の抑制が不十分であるため、例えば水流交絡を行った不織布、及び熱融着性繊維の熱融着により構成繊維同士を接着させた不織布等が用いられている。
しかし、前者は風合いが硬く、後者は依然として毛羽の抑制が十分でないという問題がある。
従って、セルロース系繊維を含む不織布は、人の肌に直接触れる用途ではなく、毛羽の抑制及び風合いの柔らかさ等が重要でない、人の肌に直接触れない、吸収性物品等の吸収体等に使用されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、不織布の風合いの柔らかさと毛羽の抑制を両立させた、例えば吸収性物品等の人の肌に直接触れる用途に使用できる、セルロース系繊維を含む不織布及びその不織布の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、セルロース系繊維と接着性繊維の両方を含む不織布について、接着性繊維よって繊維同士が接着した箇所と、繊維同士が交絡した箇所を含み、更に不織布の特定の物性を調整することで、毛羽の抑制と風合いの柔らかさの少なくとも一つを改良することができ、好ましくは両方を改良することができることを見いだして、本発明を完成させるに至った。
更に、本発明者等は、セルロース系繊維と接着性繊維の両方を含む不織布を製造する際に、予め繊維同士を接着させた上で繊維同士を交絡させることにより、風合いの柔らかさと毛羽の抑制を両立させた不織布を得られることを見いだして、本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、一の要旨において、
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2であるか、又は前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、不織布を提供する。
本発明の形態の不織布は、例えば、吸収性物品等の人の肌に直接触れる用途に使用することができる。
【0007】
また、本発明は、別の要旨において、
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含む、不織布の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の不織布は、上述のような特徴を有するので、毛羽立ちの抑制及び風合いの柔らかさを共に有し、例えば吸収性物品等の人の肌に直接触れる用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例31の不織布を縦方向に切断した切断面のSEM画像を示す。倍率は60倍である。
【
図2】
図2は、比較例50の不織布を横方向に切断した切断面のSEM画像を示す。倍率は25倍である。
【
図3】
図3は、実施例31の不織布を横方向に切断した切断面のSEM画像を示す。倍率は100倍である。
【
図4】
図4は、実施例31の不織布の表面のSEM画像を示す。倍率は100倍である。
【
図5】
図5は、実施例31の不織布の裏面のSEM画像を示す。倍率は100倍である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の形態の不織布は、
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
(i)前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2であるか、又は
(ii)前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、
不織布である。
本発明の形態の不織布は、吸収性物品等の人の肌に直接触れる皮膚接触用製品の用途(例えば、吸収性物品用トップシート及びバックシート、化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆材(例えば、フェイスマスク、角質ケアシート、及びデコルテシート等)、温湿布及び冷湿布をはじめとする各種パップ材の基布、対人用拭き取り材(例えば、クレンジングシート、制汗シート、及び除菌シート等)等)に使用することができる。
【0011】
(セルロース系繊維)
本発明の形態の不織布において、「セルロース系繊維」とは、繊維素繊維とも呼ばれ、一般的に、セルロースを原料とする繊維をいう。
セルロース系繊維は、例えば、綿(コットン)、麻、亜麻(リネン)、ラミー、ジュート、バナナ、竹、ケナフ、月桃、ヘンプ及びカポック等の植物に由来する天然繊維;ビスコース法で得られるレーヨン及びポリノジックレーヨン、銅アンモニア法で得られるキュプラ、及び溶剤紡糸法で得られるテンセル(登録商標)及びリヨセル(登録商標)等の再生繊維;溶融紡糸法で得られるセルロース繊維;及びアセテート繊維等の半合成繊維を含み、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0012】
セルロース系繊維の、繊度は、0.6~5.6dtexであることが好ましく、1.0~4.4dtexであることがより好ましく、1.4~3.3dtexであることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊度が、上述の範囲内である場合、繊度が小さすぎないことで不織布の強力がより好適となるため、また繊度が大きすぎないことで不織布の風合いがより好適となるため好ましい。また、セルロース系繊維の繊度が上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となり、不織布の交絡性が低すぎないことで不織布の強力や毛羽がより好適となり、また、不織布の交絡性が高すぎないことで不織布の風合いがより好適となるため好ましい。
【0013】
セルロース系繊維の、繊維径は、5~25μmであることが好ましく、8~20μmであることがより好ましく、10~17μmであることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊維径が、上述の範囲内である場合、繊度が小さすぎないことで不織布の強力がより好適となるため、また繊度が大きすぎないことで不織布の風合いがより好適となるため好ましい。また、セルロース系繊維の繊度が上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となり、不織布の交絡性が低すぎないことで不織布の強力や毛羽がより好適となり、また、不織布の交絡性が高すぎないことで不織布の風合いがより好適となるため好ましい。
【0014】
セルロース系繊維の、繊維長は、25~100mmであることが好ましく、30~70mmであることがより好ましく、35~60mmであることが更により好ましい。
セルロース系繊維の繊維長が、上述の範囲内である場合、繊維の交絡性が好適となるので、好ましい。特に本開示の不織布は、一度接着性繊維により構成繊維同士を接着させてから交絡処理を行うことで製造することができるので、繊維長が大きすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、毛羽の抑制を十分に行える程度に繊維がより好適に交絡され得、好ましい。また、繊維長が小さすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、不織布の風合いを十分に柔らかくできる程度に、繊維がより好適に交絡され得、好ましい。
【0015】
セルロース系繊維の、繊維の断面(横断面、又は繊維の長さ方向と垂直方向の断面)は、円形であっても非円形であってもよく、非円形の形状として、楕円形、Y形、X形、井形、多葉形、多角形、星形、菊花形等が挙げられる。繊維の断面が円形である場合、接着性繊維と接着する面積が比較的小さいいため、不織布の風合いの柔らかさがより良好になり得る。繊維の断面が非円形である場合、接着性繊維と接着する面積が比較的大きいため、不織布の毛羽立ちの抑制がより良好になり得、又は不織布の強力がより高くなり得る。
【0016】
セルロース系繊維として、再生繊維や半合成繊維などの化学繊維であることが好ましい。化学繊維は、繊度及び/又は繊維径及び繊維長のばらつきをより低減することができ、不織布の交絡度合いをより調整しやすいためより好ましい。またレーヨン及び溶剤紡糸セルロース繊維等は、繊維自体が有する湿潤時の柔らかさや強度のバランスがよく、不織布として好適な風合いの柔らかさ及び強度を得ることがより容易であり好ましい。また溶剤紡糸セルロース繊維は単繊維強力が比較的高いため、不織布の毛羽立ちの抑制や不織布の強力の高さがより良好になる点で好ましい。
セルロース系繊維は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0017】
セルロース系繊維は表面処理をして、その表面の親水性又は疎水性の程度を変えてもよい。一般的には、油剤(界面活性剤)を用いて、セルロース系繊維の表面の親水性又は疎水性の程度を変えることができる。その親水性又は疎水性の程度は、例えば、繊維の沈降速度等の値を用いて評価することができる。セルロース系繊維の表面は、親水性でも疎水性でもよい。繊維の沈降速度(又は沈降時間(sec))の値は、例えば、30秒以下であってよく、より好ましくは20秒以下であってよく、さらに好ましくは10秒以下であってよい。セルロース系繊維の沈降速度(又は沈降時間)が小さい場合、セルロース系繊維の交絡性が比較的よくなり、不織布の毛羽立ちの抑制がより良好になり得、又は不織布の強力がより大きくなり得る。
【0018】
繊維の沈降速度は、下記の方法で測定することができる。
沈降速度を測定する繊維を17g採取する。採取した繊維を(パラレルカード機を用いて)開繊し、カードウェブとする。カードウェブを5g秤量し、銅線(太さ0.55mm)製の籠(直径5cm、高さ8cmの円筒形 籠本体の質量3g)に充填する。
次に、恒温水槽を用意し、恒温水槽内に水道水を入れ、25℃になるよう設定する。水温が25℃になったら、恒温水槽の撹拌を止めて沈降速度の測定を開始する。上記の手順で繊維を充填した籠を水面上1cmの位置から静かに落下させ、水面に籠が落ちると同時にストップウォッチをスタートさせる。徐々に繊維が含水し、高さ8cmの籠が完全に水面下に沈むと同時にストップウォッチを停止させる。籠が水面に落下したときから籠が水面下に沈むまでの時間を沈降速度とし、2回測定した平均値をその繊維の沈降速度とする。
【0019】
上記沈降速度の測定において、5分以上籠が水面下に沈まない場合、繊維が撥水性であるとする。セルロース系繊維が撥水性である場合、不織布を液体と接触させる用途において好ましい場合がある。例えば、吸収性物品用のトップシート及びセカンドシートにおいて、液体をシート中に保持しすぎずに吸収体に液体を移動させやすいため、セルロース系繊維が撥水性であることが好ましい場合がある。また不織布が積層構造を有する場合、撥水性であるセルロース系繊維を含む層と、撥水性ではないセルロース系繊維を含む層を有する積層不織布を用いると、吸収性物品用シートや化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆材の用途において、不織布は液体を好適に移動または保持し得る。
【0020】
(接着性繊維)
本発明の形態の不織布において、「接着性繊維」とは、接着処理(例えば、熱接着処理、電子線照射、および超音波溶着(超音波ウェルダー)等)により接着性を示し、繊維同士を接着させて、接着箇所を形成することができる繊維をいい、本開示が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
【0021】
接着性繊維は、例えば、熱可塑性樹脂からなる合成繊維を含む。
熱可塑性樹脂は、本発明が目的とする不織布を得られる限り特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートおよびその共重合体等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等を含む)、ポリブテン-1、プロピレンを主たる成分とするプロピレン共重合体(プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1-エチレン共重合体を含む)、エチレン-アクリル酸共重合体、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン12およびナイロン66等のポリアミド系樹脂;アクリル系樹脂;ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等のエンジニアリングプラスチック、並びにそれらのエラストマー等を例示でき、これらから任意に選択することができる。
【0022】
接着性繊維の接着成分は、オレフィンと、不飽和カルボン酸またはその誘導体との共重合体であることが、セルロース系繊維との接着性が良好になるという観点で好ましい。不飽和カルボン酸として、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸等が挙げられ、またその誘導体として、不飽和カルボン酸の無水物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類、または同様なアクリル酸エステル等、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ブテンカルボン酸エステル類、アリルグリシジルエーテル、3,4-エポキシブテン、5,6-エポキシ-1-ヘキセン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド等が挙げられる。特にオレフィンがエチレンであり、不飽和カルボン酸またはその誘導体がアクリル酸であるエチレン-アクリル酸共重合体であることが好ましい。
【0023】
合成繊維は、上記から選択される一または複数の熱可塑性樹脂から成る単一繊維であってよく、あるいは二以上の成分(「セクション」ともいえる)からなる複合繊維であってよい。複合繊維において、各成分は、一つの熱可塑性樹脂からなっていてよく、あるいは二以上の熱可塑性樹脂が混合されたものであってよい。複合繊維は、例えば、芯鞘型複合繊維、海島型複合繊維、またはサイドバイサイド型複合繊維であってよい。芯鞘型複合繊維は、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致しない偏心芯鞘型複合繊維であってよく、繊維断面において芯成分の中心と鞘成分の中心が一致する同心芯鞘型複合繊維であってよい。
【0024】
単一繊維であるか複合繊維であるかにかかわらず、合成繊維は異型断面を有していてよい。芯鞘型複合繊維および海島型複合繊維の場合、その繊維断面において、芯成分および/または島成分は異型断面を有していてよい。
合成繊維が異型断面を有する場合、その断面は、楕円形、多角形、星形、または複数の凸部が基部で接合した形状(例えば、クローバー形状)であってよい。
本実施形態においては、合成繊維として、二以上の合成繊維を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
合成繊維が、複合繊維である場合、融点のより低い熱可塑性樹脂が繊維表面の一部を構成するように、二以上の成分を配置してよい。低融点の熱可塑性樹脂(低融点成分)は不織布を生産する工程で熱が加わったときに溶融または軟化して、接着成分となる。低融点成分は、繊維同士の接着または他の部材への接着に寄与し、接着箇所を形成し得る。
合成繊維が、複合繊維である場合、低融点成分が、繊維断面において、繊維の周面の長さに対して50%以上の長さで露出していることが好ましく、60%以上の長さで露出していることがより好ましく、80%以上の長さで露出していることがさらに好ましく、繊維の周面全体にわたって露出していることが特に好ましい。
【0026】
本発明の形態の不織布は、予め繊維同士を接着させた後、繊維同士を交絡させることで製造することができる。従って、接着性繊維の低融点成分が繊維断面において繊維周面に露出している部分が少なすぎないことで接着可能となる領域がより適度に存在し、繊維同士の接着箇所の数がより適度となり、繊維同士の接着箇所の接着強力がより適度となり、接着性繊維による接着をより十分にし得る。そのため不織布の毛羽の抑制及び不織布の強力をより好適なものとし得る。さらに、その後の交絡において、繊維同士の接着が解消される程度がより適度となり、より不織布の毛羽の抑制及び不織布の強力をより十分にし得る。特に本実施形態の不織布はセルロース系繊維を含み、セルロース系繊維と接着性繊維との接着性は高くなく、繊維同士の接着箇所の解消がより促進されるため、不織布の毛羽及び強力に対してより影響が大きくなり得る。
【0027】
複合繊維を構成する熱可塑性樹脂の組み合わせは、例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン/ポリエチレンテレフタレート、およびプロピレン共重合体/ポリエチレンテレフタレート等のポリオレフィン系樹脂とポリエステル系樹脂との組み合わせ(ポリオレフィン系樹脂/ポリエステル系樹脂)、ならびにポリエチレン/ポリプロピレン、プロピレン共重合体/ポリプロピレン、エチレン-アクリル酸共重合体/ポリプロピレン等の二種類のポリオレフィン系樹脂の組み合わせ(ポリオレフィン系樹脂/ポリオレフィン系樹脂)、および融点の異なる二種類のポリエステル系樹脂の組み合わせ(ポリエステル系樹脂/ポリエステル系樹脂)を含む。
【0028】
なお、単一繊維または複合繊維の構成成分として例示した熱可塑性樹脂は、具体的に示された熱可塑性樹脂を50質量%以上含む限りにおいて他の成分を含んでよい。例えば、ポリエチレン/ポリエチレンテレフタレートの組み合わせにおいて、「ポリエチレン」はポリエチレンを50質量%以上含んでいれば、他の熱可塑性樹脂および添加剤等を含んでいてよい。このことは以下の例示においてもあてはまる。
【0029】
接着性繊維が、融点のより低い熱可塑性樹脂が鞘部を構成する芯鞘型複合繊維である場合、芯/鞘の組み合わせは、例えば、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート/プロピレン共重合体、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエステル(例えば、イソフタル酸を共重合したポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン/エチレン-アクリル酸共重合体を含む。鞘がポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、もしくは直鎖状低密度ポリエチレン)または共重合ポリエステルである芯鞘型複合繊維は、前記鞘を構成する熱可塑性樹脂の融点以上の温度で熱処理することで鞘が溶融又は軟化して、繊維同士を接着して、接着箇所を形成する性質を有する。
【0030】
接着性繊維が芯鞘型複合繊維である場合、芯と鞘の複合比(体積比、芯/鞘)は、例えば80/20~20/80であってよく、特に60/40~40/60であってよい。
鞘の割合が少なすぎないことで、繊維同士の接着がより十分となり、毛羽の抑制がより好適となる、または不織布の強力がより好適となり得る。また、交絡時の接着箇所の剥離がより適度となり、さらに毛羽の抑制がより好適となる、または不織布の強力がより好適となり得る。鞘の割合が多すぎないことで、繊維形状を保つ芯成分の割合がより十分となって、不織布の強力がより好適となり得る。
【0031】
接着性繊維は、二以上の繊維を含み、それらの繊維の接着成分の融点が相互に異なってよい。例えば接着性繊維が2つの繊維を含み、それら繊維の接着成分の融点の差が10℃以上40℃以下であってよく、、さらには15℃以上30℃以下であってよい。
【0032】
接着性繊維の繊度は、1.0~7.8dtexであることが好ましく、1.4~6.7dtexであることがより好ましく、2.2~4.5dtexであることが更により好ましい。
接着性繊維の繊度が、上述の範囲内である場合、不織布の強力がより向上し、かつ不織布の風合いがより柔らかくなり好ましい。
【0033】
接着性繊維の繊維径は、10~33μmであることが好ましく、12~30μmであることがより好ましく、15~25μmであることが更により好ましい。
接着性繊維の繊維径が、上述の範囲内である場合、不織布の強力がより向上し、かつ不織布の風合いより柔らかくなり好ましい。
【0034】
接着性繊維の、繊維長は、25~100mmであることが好ましく、30~70mmであることがより好ましく、35~60mmであることが更により好ましい。
接着性繊維の繊維長が、上述の範囲内である場合、繊維の交絡性がより好適となるので、好ましい。特に本開示の不織布は、一度接着性繊維により構成繊維同士を接着させた後、交絡処理を行うことで製造することができる。従って、繊維長が大きすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、毛羽のより十分に抑制できる程度に繊維の交絡性をより好適にし得る。また繊維長が小さすぎないことで一つの繊維における接着箇所がより適度な数となり、不織布の風合いをより十分に柔らかくできる程度に繊維の交絡性をより好適なものとし得る。
【0035】
接着性繊維は立体捲縮を有することが好ましい。本明細書で、「立体捲縮」という用語は、捲縮の山(または山頂部)が鋭角である機械捲縮と区別されるために用いられる。立体捲縮は、例えば、山部が湾曲した捲縮(波形状捲縮)、山部が螺旋状に湾曲した捲縮(螺旋状捲縮)、波形状捲縮と螺旋状捲縮とが混在した捲縮、機械捲縮の鋭角の捲縮と波形状捲縮および螺旋状捲縮の少なくとも一つとが混在した捲縮をいう。接着性繊維は機械捲縮を有してもよい。
接着性繊維が複合繊維である場合、顕在捲縮性複合繊維でもよい。「顕在捲縮性複合繊維」とは、繊維の段階で立体捲縮を発現している繊維を指す。顕在捲縮性複合繊維は、繊維の収縮を伴う熱処理により立体捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維とは異なる。
【0036】
接着性繊維が偏心芯鞘型複合繊維である場合、偏心率は5~50%であることが好ましく、7~30%であることがより好ましい。ここでいう偏心率とは、次式で定義される。
(式)偏心率(%)=(単繊維の中心と芯成分の中心との間の距離)×100/(単繊維半径)
接着性繊維が、立体捲縮を有する場合、後述する不織布の接着交点指数A、不織布の厚さ減少率、不織布の単位厚さ当たりの剛軟度、不織布の厚さ比、不織布の厚さ方向において3等分したときの真ん中における繊維接着点の角度などについて、特定の範囲内の値を示す不織布を、より容易に得ることができ、より好ましい。
接着性繊維は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明の形態の不織布は、セルロース系繊維と接着性繊維との混率(セルロース系繊維:接着性繊維)(質量比)は、10:90~90:10であることが好ましく、25:75~75:25であることがより好ましく、35:65~65:35であることが更により好ましい。
セルロース系繊維と接着性繊維との混率(セルロース系繊維:接着性繊維)(質量比)が、上記の範囲内である場合、不織布の風合いの柔らかさと毛羽の抑制の両方ともより向上し得、好ましい。
また、セルロース系繊維が適度に含まれると、セルロース系繊維による効果をより容易に得ることができる。
また、セルロース系繊維が適度に含まれると、繊維同士の交絡をより容易に行うことができ、後述する不織布の接着交点指数A、不織布の厚さ減少率、不織布の単位厚さ当たりの剛軟度、不織布の厚さ比、不織布の厚さ方向において3等分したときの真ん中における繊維接着点の角度などについて、特定の範囲の値を示す不織布を、より容易に得ることができ、好ましい。
また、接着性繊維が適度に含まれると、不織布の毛羽の抑制及び不織布の風合いの柔らかさが共により向上し好ましい。
本発明の形態の不織布は、接着性繊維が35質量%以上であると、不織布製造における搬送等において、不織布または中間体の繊維ウェブが破断されること、必要以上に伸長されること、等を防止しやすくなるため好ましい。
【0038】
本実施形態の不織布には、セルロース系繊維および接着性繊維以外の繊維(以下、「他の繊維」)が含まれていてよい。他の繊維は、例えば、セルロース系繊維でない天然繊維(例えば羊毛、シルク等)、接着性繊維ではない合成繊維(例えば、接着性繊維の接着成分を溶融させるときに溶融または軟化せず、接着性を示さない合成繊維等)であり、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。
他の繊維は、35質量%以下の割合で含まれてよく、特に25質量%以下、より特には10質量%以下の割合で含まれてよく、本発明が目的とする不織布を得られる限り、特に制限されることはない。本実施形態の不織布は、他の繊維は含まれない不織布、即ち、セルロース系繊維と接着性繊維とからなる不織布であってよい。
【0039】
本実施形態の不織布において、繊維同士は接着性繊維により接着されている。即ち、本発明の形態の不織布は、接着箇所を含む。これにより、不織布の強度および毛羽の抑制が両方とも確保されて、取扱い性が向上する。接着性繊維による接着は、接着性繊維の一部が、溶融もしくは軟化して、または変質して接着性を示し、それと交差または接触する繊維を固定することにより達成され得る。繊維同士の接着は、具体的には、接着性繊維と接着性繊維との接着、接着性繊維とセルロース系繊維との接着のことをいい、他の繊維がさらに含まれる場合には、加えて接着性繊維と他の繊維との接着のことをいう。接着は、熱を加えて接着性繊維の一部を溶融または軟化させる熱接着によるものであってよく、あるいは、電子線等の照射または超音波溶着によるものであってよい。
【0040】
本実施形態の不織布において、繊維同士は交絡されている。即ち、本発明の形態の不織布は、交絡箇所を含む。これにより、不織布の強度および毛羽の抑制が両方とも確保されて、取扱い性が向上する。繊維同士の交絡は、不織布を物質の流れに付すなどして、繊維同士を絡ませることにより達成され得る。繊維同士の交絡とは、具体的には、接着性繊維と接着性繊維との交絡、接着性繊維とセルロース系繊維との交絡、セルロース系繊維とセルロース系繊維との交絡をいい、他の繊維がさらに含まれる場合には、加えて接着性繊維と他の繊維との交絡、セルロース系繊維と他の繊維との交絡、他の繊維と他の繊維との交絡をいう。交絡は、ニードルパンチ法によるものでも流体流によるものでもよく、流体流としては、水流、気流、水蒸気流などによるものでもよい。本実施形態の不織布においては、セルロース系繊維を交絡させるために水流又は水蒸気流によるものが好ましい。
【0041】
本実施形態の不織布は、10~150g/m2の目付を有することが好ましく、15~80g/m2の目付を有することがより好ましく、20~60g/m2の目付を有することが更により好ましく、25~50g/m2の目付を有することが特に好ましい。目付が小さすぎないことで、不織布の風合いの柔らかさ及び毛羽の抑制の両方ともより向上し好ましい。また目付が小さすぎないことで、不織布全体で交絡がより適度に進行し、後述する不織布の接着交点指数A、不織布の厚さ減少率、不織布の単位厚さ当たりの剛軟度、不織布の厚さ比、不織布の厚さ方向において3等分したときの真ん中における繊維接着点の角度などについて、特定の範囲の値を示す不織布をより容易に得ることができる。目付が大きすぎないことで、不織布の強力及び毛羽の抑制がより向上し得る。
【0042】
本実施形態の不織布は全体として、乾燥時において、例えば、0.0100~0.100g/cm3の繊維密度を有してよく、0.0125~0.0600g/cm3の繊維密度を有することが好ましく、0.0180~0.0400g/cm3の繊維密度を有することがより好ましい。不織布全体の繊維密度は、目付と厚さ(40Paの荷重を加えて測定される厚さ)から求めることができる。
【0043】
本実施形態の不織布は、その厚さ方向に沿って切断した断面を観察したときに、少なくとも一方の面(即ち、表面又は裏面)の繊維密度が内部の繊維密度より、高いことが好ましい。本実施形態において、表面と裏面の両方共において繊維密度が、内部の繊維密度より高いことがより好ましい。少なくとも一方の表面の繊維密度が、内部の繊維密度より高い場合、不織布の風合いの柔らかさと毛羽の抑制の両方ともより向上し得るので、より好ましい。不織布の内部の繊維密度と表面の繊維密度に差があるか否かは、不織布を厚さ方向に沿って切断した断面を、電子顕微鏡(倍率50倍程度)で観察することにより調べることができる。より具体的には、電子顕微鏡で観察したときに、繊維がより密に集合している部分は繊維密度がより高い領域であり、繊維がより疎らに集合している部分は繊維密度がより低い領域であるといえる。
【0044】
繊維密度の高低は、例えば、不織布の厚さ方向に沿って切断した断面において、電子顕微鏡(倍率50倍程度)で一定面積あたりの切断されている繊維の断面数を数えることにより確認できる。より具体的には、不織布の断面を厚さ方向に沿って五等分したときの上側および下側の五分の一の部分を「不織布の表面」(それぞれ「上側表面」(上面)および「下側表面」(下面))とし、不織布の断面を厚さ方向に沿って五等分したときの上側の五分の一の部分および下側の五分の一を除いた五分の三の部分を「不織布の内部」としたときに、不織布の内部における繊維の断面数に対する不織布の表面における繊維の断面数の比が1.05以上であると、不織布表面において繊維密度が内部よりも高いとみなすことができる。
【0045】
本実施形態の不織布は、接着性繊維による接着箇所が解消された接着剥離痕が接着性繊維に形成されていることが好ましい。接着剥離痕は主に接着処理の後の交絡処理によって形成され得る。接着剥離痕では、通常の接着性繊維の繊維表面と比較して、接着成分(例えば、芯鞘型複合繊維であれば鞘成分)が薄く存在することとなる。この接着剥離痕によって繊維が屈曲しやすくなり、不織布の風合いの柔らかさが向上し得るので、接着剥離痕が適宜含まれることが好ましい。接着剥離痕は電子顕微鏡を用いて不織布の表面や断面を観察することにより確認できる。
【0046】
本実施形態の不織布は、不織布の一方の面に他の不織布を積層してもよいが、少なくとも一方の面が露出している形態であることが好ましい。不織布の両方の面が露出している形態であることがより好ましい。なお、本実施形態の不織布は単層構造でも良いが、積層構造として、例えば、各層においてセルロース系繊維と接着性繊維の混率を変えたもの等としても良い。本実施形態の不織布は、単層構造であると、不織布の両方の面において、毛羽立ちの抑制及び風合いの柔らかさを共に有することができるため好ましい。また、不織布が単層構造であると、交絡度合いが弱いことによる層間剥離や不織布強力の低下を抑制でき、また、交絡度合いが強いことによる風合いの柔らかさの低減を抑制できるため好ましい。本実施形態の不織布は、不織布の風合いの柔らかさと毛羽の抑制の両方とも良好であるため、本実施形態の不織布を露出させて使用される用途、例えば、吸収性物品用トップシート及びバックシート、化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆材(例えば、フェイスマスク、角質ケアシート、及びデコルテシート等)、温湿布及び冷湿布をはじめとする各種パップ材の基布、対人用拭き取り材(例えば、クレンジングシート、制汗シート、及び除菌シート等)、使い捨ての衣料等に好適に使用することができる。
【0047】
本実施形態の不織布は、積層構造を有する場合、各層が相互に異なる性能を持ち得るので好ましい、例えば一方の層で不織布の風合いを良好にし、もう一方の層で毛羽立ちの抑制を良好にし得る。層ごとに、親水性の度合いを変えることができる。少なくとも2つの層において接着性繊維を含み、層ごとに接着成分の融点が異なる接着性繊維を含むことができる。
【0048】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2であることが好ましい。接着交点指数Aの上限は、55個/mm2であることがより好ましく、50個/mm2であることが更により好ましく、45個/mm2であることが特に好ましい。接着交点指数Aの下限は、3個/mm2であることがより好ましく、5個/mm2であることが更により好ましい。
本発明の形態の不織布は、不織布の接着交点指数Aが上述の範囲内である場合、不織布の風合いがより好適となり、好ましい。
【0049】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布の厚さ減少率が30~45%であることが好ましく、32~43%であることがより好ましく、34~41%であることが更により好ましい。
本発明の形態の不織布は、不織布の厚さ減少率が上述の範囲内である場合、不織布の風合いがより好適となり、好ましい。
【0050】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布の単位厚さ当たりの剛軟度が、10~85g/mmであることが好ましく、20~70g/mmであることがより好ましく、30~60g/mmであることが更により好ましく、35~55g/mmであることが特に好ましい。
本発明の形態の不織布は、不織布の単位厚さ当たりの剛軟度が上述の範囲内である場合、不織布の風合いがより好適となり、好ましい。
【0051】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布の厚さ比が、例えば0.25~0.69であり、0.25~0.67であることが好ましく、0.35~0.65であることがより好ましく、0.40~0.60であることが更により好ましい。
本発明の形態の不織布は、不織布の厚さ比が上述の範囲内である場合、不織布の風合いの柔らかさがより好適となり、好ましい。また不織布の厚さ比は、不織布を構成する繊維について、不織布の厚さ方向に対して平行な方向(不織布の面に対してより垂直な方向)に配向している繊維の割合を示唆する指標である。厚さ比が小さいほど、不織布の厚さ方向に対してより平行な方向に配向している繊維の割合が高いことを示している。
【0052】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する不織布を厚さ方向に3等分したときの、不織布の真ん中における繊維接着点の角度が30~90度であることが好ましく、35~60度であることがより好ましく、40~50度であることが更により好ましい。
本発明の形態の不織布は、不織布の真ん中における繊維接着点の角度が上述の範囲内である場合、不織布の風合いの柔らかさがより好適となり、好ましい。
【0053】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する破断強力について、MD方向の破断強力が10~100Nであることが好ましく、15~70Nであることがより好ましく、CD方向の破断強力が1~25Nであることが好ましく、2~12Nであることがより好ましい。本発明の形態の不織布は、不織布の強力が上述の範囲内である場合、取扱い性がより向上し、好ましい。
【0054】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する保水率が、800~2500%であることが好ましく、1000~2000%であることがより好ましく、1100~1800%であることが更により好ましく、1250~1650%であることが特に好ましい。本発明の形態の不織布は、不織布の保水率が上述の範囲内である場合、好適な液体含浸性または液体保持性となり、好ましい。
また、本発明の形態の不織布は、不織布の単位厚さ当たりの保水率(保水率/厚さ)が1500~3000%であることが好ましく、1700~2800%であることがより好ましく、1900~2600%であることが更により好ましい。このときの不織布の厚さは
後述する1.96kPaの荷重を加えて得た厚さである。本発明の形態の不織布は、不織布の保水率が上述の範囲内である場合、好適な液体含浸性または液体保持性となり、好ましい。
【0055】
本発明の形態の不織布は、以下の実施例で説明する動摩擦力の変動係数CVが、例えば0.081以下であり、0.070以下であることが好ましく、0.060以下であることがより好ましく、0.055以下であることが更により好ましい。動摩擦力の変動係数CVの好ましい下限は0.00である。本発明の形態の不織布は、動摩擦力の変動係数CVが上述の範囲内である場合、不織布の表面がより滑らかとなり、好ましい。
【0056】
本発明の不織布の製造方法は、セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含む。
【0057】
(不織布の製造方法)
本実施形態の不織布は、セルロース系繊維と、接着性繊維と、含まれる場合には他の繊維とを混合して、繊維ウェブを作製し、繊維同士を接着性繊維で接着させて接着箇所が設けられ、繊維同士を交絡させて交絡箇所が設けられることによって製造できる。
繊維ウェブは、公知の方法で作製することができる。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブ、クロスウェブ、セミランダムウェブおよびランダムウェブ等のカードウェブ、エアレイウェブ、湿式抄紙ウェブのようないずれの形態であってもよい。繊維ウェブの形態は、パラレルウェブであると不織布の表面がより滑らかとなるため好ましい。
【0058】
積層不織布の場合、例えば、二つの繊維ウェブを作製し、この二つの繊維ウェブを積層して一つのウェブを得た後、繊維同士を接着性繊維で接着させて接着箇所が設けられ、繊維同士を交絡させて交絡箇所が設けられることによって製造できる。尚、繊維ウェブ全体として、セルロース系繊維と接着性繊維とを含めばよい。
【0059】
繊維ウェブは、接着処理(又は接着工程)に付される。接着処理は、例えば熱処理(熱接着処理)であってよい。熱処理によれば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が熱処理の際、加熱によって溶融または軟化し、繊維ウェブを構成する繊維同士を接着させることができる。熱処理は、例えば、熱風を吹き付ける熱風加工処理、熱ロール加工(例えば、熱エンボスロール加工)、または赤外線を使用した熱処理であってよいが、不織布の風合いを良好とするため熱風加工処理が好ましい。熱風加工処理は、所定の温度の熱風を繊維ウェブに吹き付ける装置、例えば、熱風貫通式熱処理機、および熱風吹き付け式熱処理機を用いて実施してよい。
【0060】
接着処理が熱風加工処理である場合、熱風を複数回吹き付けることが好ましい。また熱風を複数回吹き付ける場合、最初の熱風の温度よりも2回目の熱風の温度が高いことが好ましい。セルロース系繊維と接着性繊維との接着性は、接着性繊維同士の接着性よりも高くないため、セルロース系繊維と接着性繊維との接着性をより高めるために、熱風を複数回吹き付けることが有効である。
【0061】
接着処理が熱風加工処理である場合、熱風の風速は、毛羽立ちの抑制および風合いの柔らかさを良好にする観点で、0.1~3.0m/minであることが好ましく、0.2~2.5m/minであることがより好ましく、0.3~2.0m/minであることがさらに好ましい。
【0062】
熱処理の温度は、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分(熱接着成分)が軟化または溶融する温度としてよく、例えば、当該成分の融点以上の温度としてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分が高密度ポリエチレンである場合に、熱風加工を実施するときには、130℃~150℃の温度の熱風を吹き付けてよい。例えば、接着性繊維を構成する樹脂成分のうち最も融点の低い成分がエチレン-アクリル酸共重合体である場合、熱風加工を実施するときに、90℃~140℃の温度の熱風を吹き付けてよく、特には95~130℃の温度の熱風を吹き付けてよく、より特には100~120℃の熱風を吹き付けてよい。また、熱処理の温度は、毛羽立ちの抑制および風合いの柔らかさを良好にする観点で、熱接着成分の融点または軟化点よりも0℃以上5℃以下高い温度とすることが好ましく、1℃以上4℃以下高い温度とすることがより好ましく、2℃以上3℃以下高い温度とすることがさらに好ましい。
【0063】
接着処理は、電子線等の照射、または超音波溶着によるものであってよい。これらの接着処理によっても、接着性繊維を構成する樹脂成分で繊維同士を接着させることができる。
【0064】
接着処理に付された後で、かつ、交絡処理に付される前である繊維ウェブは、例えば破断強力がMD方向において1.0N/5cm以上であると、接着が十分であり、毛羽の抑制が良好である本開示の不織布を得やすくなるため好ましい。破断強力がMD方向において2.0N/5cm以上であるとより好ましく、3.0N/5cm以上であるとさらに好ましい。また、接着処理に付された後で、かつ、交絡処理に付される前である繊維ウェブは、例えば実施例に記載された方法により得られる剛軟度が100g以下であると、風合いの柔らかさが良好である本開示の不織布を得やすくなるため好ましい。剛軟度が80g以下であるとより好ましく、60g以下であるとさらに好ましい。
【0065】
繊維ウェブは、更に交絡処理(又は交絡工程)に付される。交絡処理として、例えば、水流交絡処理及び水蒸気流交絡処理等を例示することができ、これらのいずれかを含むことが好ましい。前記交絡工程が、水流交絡処理を含むことが好ましい。これらの交絡処理によれば、セルロース系繊維による交絡が行いやすく、所望の物性を有する不織布を得ることができる。
【0066】
本発明の実施形態の製造方法は、接着処理(又は接着工程)と交絡処理(又は交絡工程)との間に冷却処理(又は冷却工程)を含むことが好ましい。つまり、接着処理に付された後で、かつ、交絡処理に付される前までに、繊維ウェブは冷却処理(又は冷却工程)に付されることが好ましい。冷却工程は、空冷または水冷等が挙げられる。接着処理に付された後の繊維ウェブが、十分に冷却されていない場合、接着性繊維の接着成分が軟化した状態であり得る。その状態で繊維ウェブが交絡処理に付されると、接着箇所が剥離しやすくなり得、不織布の毛羽立ちの抑制が不十分となり得る。
【0067】
水流交絡処理は、支持体に繊維ウェブを載せて、柱状水流を噴射することにより実施することができる。支持体は、不織布表面を平坦し、かつ凹凸を有しないものとするならば、1つあたりの開孔面積が0.2mm2を超える開孔を有さず、また、突起またはパターンが形成されていない支持体を用いるとよい。例えば、支持体は、80メッシュ以上、100メッシュ以下の平織の支持体を用いるとよい。
【0068】
水流交絡処理は、例えば、孔径0.05mm以上、0.5mm以下のオリフィスが0.3mm以上、1.5mm以下の間隔で設けられたノズルから、水圧1MPa以上、15MPa以下の水流を、繊維ウェブの表面及び裏面の各々に、1~5回ずつ噴射することにより実施することができる。水圧は、好ましくは、1MPa以上、10MPa以下であり、より好ましくは、1MPa以上、7MPa以下である。
【0069】
水流交絡処理の際に使用される支持体は、板状またはロール状の支持体であってよく、ロール状の支持体であることが好ましい。支持体がロール状であると、繊維ウェブが湾曲し、繊維ウェブの厚さ方向(又は通常湾曲したウェブの外側方向)において繊維密度がより小さくなる。柱状水流を外側から噴射すると、柱状水流による交絡が比較的進みやすくなる。本実施形態の不織布は、繊維ウェブが接着処理、交絡処理の順に付されることが好ましく、繊維ウェブが接着処理の後で、交絡処理に付される場合、繊維ウェブが接着箇所を含むことで比較的交絡が進みにくいため、より交絡が進みやすい状態で水流交絡処理を行うことが好ましい。
【0070】
接着処理が熱風加工処理である場合、水流交絡処理は、熱風加工処理において熱風を吹き付けた側から先に柱状水流を噴射することを含むことが好ましく、更に、反対側から柱状水流を噴射することを含むことが好ましい。熱風加工処理において熱風を吹き付けた側は反対側(一般的に支持体に接触している側)よりも繊維密度が小さくなる傾向があり、柱状水流による交絡が比較的進みやすい。水流交絡処理による不織布の強力や毛羽立ちの抑制の程度は、最初の交絡処理における交絡度合いに左右される割合が大きいため、比較的交絡が進みやすい、繊維ウェブの繊維密度が比較的小さい側から柱状水流を噴射して行うことが好ましい。
【0071】
交絡処理が水流交絡処理である場合、繊維ウェブは交絡処理の後に乾燥処理(乾燥工程)に付されることが好ましい。乾燥処理は熱風を吹き付ける熱風加工処理等により行うことができる。乾燥処理の温度は、接着性繊維の接着成分(熱接着成分)の軟化または溶融する温度よりも低い温度であることが好ましい。乾燥処理の温度は、熱接着成分の融点または軟化点よりも10℃以上低い温度とすることが好ましく、15℃以上低い温度とすることがより好ましく、20℃以下低い温度とすることがさらに好ましい。交絡処理の後に再度接着性成分を軟化または溶融させないと、不織布の嵩がへたりにくくなり、不織布の風合いが硬くなり難い。
【0072】
接着性繊維を二以上含み、それぞれの接着性繊維の熱接着成分の融点または軟化点が異なる場合、融点または軟化点がより高い熱接着成分の融点または軟化点をT1(℃)、融点または軟化点がより低い熱接着成分の融点または軟化点をT2(℃)、乾燥処理の温度をT(℃)として、T1、T2、TはT2≦T<T1の関係を満たすことが好ましい。特にT≦T1+10としてよく、より特にはT≦T1+15としてよく、さらにより特にはT≦T1+20としてよい。不織布が接着性繊維を二以上含み、積層構造を有し、少なくとも2層において層ごとに接着性繊維の熱接着成分の融点または軟化点が異なる場合、乾燥処理の温度をT2≦T<T1とすることにより、融点または軟化点がT1である接着性繊維を含む層において不織布の風合いを良好にし、融点または軟化点がT2である接着性繊維を含む層において不織布の強力や毛羽立ちの抑制を良好にすることができる。
【0073】
繊維ウェブは、接着処理、交絡処理の順に付されることが好ましい。熱接着処理、交絡処理の順に付される場合、繊維の交絡が適度に進み、より好適な風合いの柔らかさを得られるため好ましい。交絡処理は、接着処理の後に連続して付されることが好ましい。接着処理に付された繊維ウェブを例えば一旦ロール状に巻き取った後に交絡処理に付す場合、巻き圧により風合いの柔らかさが低減されやすくなることや、巻き出しの際の繊維ウェブ同士の摩擦により毛羽立ちが起こりやすくなることがある。
【0074】
熱接着処理において、接着性繊維の低融点成分が溶融するように加熱することが好ましく、低融点成分のみが溶融するように加熱することがより好ましい。低融点成分の適切な溶融によって、より適切な大きさで、より適切な数の接着箇所が形成されて、不織布の風合いの柔らかさがより向上し得る。
熱処理温度を調節することによって、低融点成分による熱接着の程度(例えば、接着箇所の大きさ及び数等)を変化させることもできる。熱接着の程度を調節することで、不織布の強度、毛羽の抑制、及び風合いの柔らかさ等を更に向上することができ、また、交絡の程度を調節することもできる。
【0075】
本発明の形態の不織布は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁パッド、及びパンティライナー等の吸収性物品、対人または対物用の拭き取り材、化粧料を含浸させたフェイスマスク等の皮膚被覆材、ガーゼ、使い捨ての衣料等に使用することができる。更に、全体的な性質のバランスに優れ、人の肌等に直接触れる用途、例えば、吸収性物品用トップシート及びバックシート、化粧料等の液体を含浸させた液体含浸皮膚被覆材(例えば、フェイスマスク、角質ケアシート、及びデコルテシート等)、温湿布及び冷湿布をはじめとする各種パップ材の基布、対人用拭き取り材(例えば、クレンジングシート、制汗シート、及び除菌シート等)等に使用することができる。
【実施例0076】
以下に本発明を実施例及び比較例を用いて説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0077】
実施例及び比較例の不織布を製造するために使用した繊維を以下に示す。
繊維1(セルロース系繊維):繊度1.7dtex、繊維長40mmの溶剤紡糸セルロース繊維(レンツィング社製のリヨセル(商品名))。沈降速度は4秒である。
繊維2(接着性繊維):ポリエチレンテレフタレートが芯であり、高密度ポリエチレン(融点:約133℃)が鞘である、繊度2.6dtex、繊維長51mm、偏心率25%の立体捲縮を有する偏心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(SH)V(商品名))。
繊維3(接着性繊維):ポリプロピレン(融点160℃)が芯であり、エチレン-アクリル酸共重合体(アクリル酸8.5~10質量%)(融点95℃)が鞘である、繊度3.3dtex、繊維長51mmの機械捲縮を有する同心芯鞘型複合繊維(ダイワボウポリテック(株)製のNBF(A)(商品名))。
繊維4(セルロース系繊維):繊度1.0~5.0dtex(平均2.5dtex)、繊維長10~60mmのコットン(丸三産業(株)製のMSD(商品名))。沈降速度は10秒である。
繊維5(セルロース系繊維):繊度1.7dtex、繊維長40mmの撥水性レーヨン。沈降速度は5分以上沈まない。
【0078】
<実施例11~13の不織布の製造>
繊維1と繊維2を2:8(質量比)の混率で用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブを製造した。この繊維ウェブの目付は、約35g/m2であった。
この繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱した。繊維2の鞘成分により繊維同士を、熱接着(接着処理)したエアスルー不織布を得た。熱接着(接着処理)の後、エアスルー不織布を室温20℃の空冷による冷却処理を行った。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネット上に、上述のエアスルー不織布を載置した。エアスルー不織布を速度4m/minで進行させながら、エアスルー不織布の表面に対して、水供給器を用いて、水圧2.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。エアスルー不織布の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、エアスルー不織布の裏面に対して、同様に水供給器を用いて、柱状水流を噴射した。以上のようにして繊維同士を水流交絡(交絡処理)した。交絡処理の後に80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて乾燥処理を行って、実施例11の不織布(単層)を得た。
表面及び裏面(両面)に、各々3.0MPaの水圧の柱状水流を噴射した以外は、実施例11と同様の方法を用いて、実施例12の不織布を得た。
表面及び裏面に、各々3.5MPaの水圧の柱状水流を噴射した以外は、実施例11と同様の方法を用いて、実施例13の不織布を得た。
【0079】
<実施例21~23の不織布の製造>
繊維1と繊維2を4:6の混率で用いた以外は、実施例11と同様の方法を用いて、実施例21の不織布を得た。
表面及び裏面に、各々3.0MPaの水圧の柱状水流を噴射した以外は、実施例21と同様の方法を用いて、実施例22の不織布を得た。
表面及び裏面に、各々3.5MPaの水圧の柱状水流を噴射した以外は、実施例21と同様の方法を用いて、実施例23の不織布を得た。
【0080】
<実施例31~33の不織布の製造>
繊維1と繊維2を6:4の混率で用いた以外は、実施例21~23と同様の方法を用いて、各々実施例31~33の不織布を得た。
<実施例41~43の不織布の製造>
繊維1と繊維2を8:2の混率で用いた以外は、実施例21~23と同様の方法を用いて、各々実施例41~43の不織布を得た。
【0081】
<比較例50の不織布の製造>
繊維1と繊維2を6:4の混率で用い、水流を用いる処理及び乾燥処理を行わなかった以外は、実施例11と同様の方法を用いて、比較例50の不織布を得た。
<比較例61~62の不織布の製造>
繊維1と繊維2を6:4の混率で用い、熱処理(接着処理)及び冷却処理を行わなかった以外は、実施例11と同様の方法を用いて、比較例61の不織布を得た。
表面及び裏面に、各々3.0MPaの水圧の水流を用いた以外は、比較例61と同様の方法を用いて、比較例62の不織布を得た。
【0082】
<比較例71~72の不織布の製造>
繊維1と繊維2を6:4の混率で用いて繊維ウェブを製造した。
繊維ウェブの表面及び裏面に、各々2.0MPaの水圧の柱状水流を噴射した後、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間熱処理した以外は、実施例11と同様の方法を用いて、比較例71の不織布を得た。
表面及び裏面に、各々3.0MPaの水圧の柱状水流を噴射した以外は、比較例71と同様の方法を用いて、比較例72の不織布を得た。
【0083】
<実施例81の不織布の製造>
繊維1と繊維2を6:4(質量比)で準備して、その各々の繊維のみを用いて、パラレルカード機を使用して、各々の繊維ウェブを製造した。この2つの繊維ウェブの目付の合計は、約35g/m2であった。
この2つの繊維ウェブを重ねて積層した繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱した。繊維2の鞘成分により繊維同士を、熱接着(接着処理)したエアスルー不織布を得た。なお熱風は繊維1を含む繊維ウェブの側から当てた。熱接着(接着処理)の後、室温20℃の空冷によるエアスルー不織布の冷却処理を行った。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネット上に、上述のエアスルー不織布を載置した。エアスルー不織布を速度4m/minで進行させながら、エアスルー不織布の表面(繊維1を含む層の側)に対して、水供給器を用いて、水圧3.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。エアスルー不織布の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、エアスルー不織布の裏面に対して、同様に水供給器を用いて、柱状水流を噴射した。以上のようにして繊維同士を水流交絡(交絡処理)した。交絡処理の後に80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて乾燥処理を行って、実施例81の不織布(積層)を得た。
【0084】
<実施例82の不織布の製造>
繊維1と繊維2を7:3(質量比)の混率で用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブAを製造した。この繊維ウェブAの目付は、約17.5g/m2であった。次に繊維1と繊維2を5:5(質量比)の混率で用い、パラレルカード機を使用して、繊維ウェブBを製造した。この繊維ウェブBの目付は、約17.5g/m2であった。
この2つの繊維ウェブを重ねて積層した繊維ウェブを、熱風貫通式熱処理機を用いて135℃で約5秒間加熱した。繊維2の鞘成分により繊維同士を、熱接着(接着処理)したエアスルー不織布を得た。なお熱風は繊維ウェブAの側から当てた。熱接着(接着処理)の後、室温20℃の空冷によるエアスルー不織布の冷却処理を行った。
経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネット上に、上述のエアスルー不織布を載置した。エアスルー不織布を速度4m/minで進行させながら、エアスルー不織布の表面(繊維ウェブAの側)に対して、水供給器を用いて、水圧2.0MPaの柱状水流を噴射した。水供給器のノズルは、孔径0.12mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられていた。エアスルー不織布の表面とオリフィスとの距離は15mmであった。その後、エアスルー不織布の裏面に対して、同様に水供給器を用いて、柱状水流を噴射した。以上のようにして繊維同士を水流交絡(交絡処理)した。交絡処理の後に80℃に設定した熱風貫通式熱処理機を用いて乾燥処理を行って、実施例82の不織布(積層)を得た。実施例82の不織布全体において、繊維1と繊維2の混率は6:4(質量比)であった。
【0085】
<実施例83の不織布の製造>
熱風を繊維ウェブBの側から当てたこと、柱状水流を繊維ウェブBの側から先に噴射したこと以外は、実施例82と同様の方法を用いて、実施例83の不織布を得た。
【0086】
<実施例84~86の不織布の製造>
繊維1と繊維2の代わりに、繊維1と繊維3、繊維4と繊維2、繊維5と繊維2を、各々6:4の混率で用いた以外は、実施例31と同様の方法を用いて、各々実施例84~86の不織布(単層)を得た。
【0087】
不織布の評価は、下記のように行った。
<不織布の構造>
不織布の構造は、不織布を縦方向(より具体的には、不織布を処理した熱処理機及び水流処理機のベルトコンベアの進行方向と平行方向)に切断して、その切断面を走査電子顕微鏡(SEM、倍率:60倍)で観察して求めた。結果を表1~2に示した。
実施例31の不織布のSEM画像を、
図1に示した。実施例31の不織布は、不織布の内部の繊維の数が、表面及び裏面の繊維の数より少ない、即ち、密/疎/密の構造を有することがわかる。
比較例50の不織布のSEM画像(倍率:25倍)を、
図2に示す。比較例50の不織布は、不織布の内部の繊維の数と、表面及び裏面の繊維の数が、実質的に差がなく、密/疎/密の構造を有さないことがわかる。
【0088】
<接着点角度測定>
撮影されたSEM画像について、不織布を厚さ方向に3等分したときの不織布の表面及び裏面近傍と真ん中付近(内部)について、接着点を形成する二つの繊維のみかけのなす角を調べた。少なくとも4箇所のみかけのなす角を調べてその平均値を求めた。結果は、表1~2に記載した。なお熱風貫通式熱処理機により加工を行った実施例及び比較例については、熱風を当てた側を表面とし、その反対側の面を裏面とした。
【0089】
<接着交点指数A>
不織布の表面および裏面を走査電子顕微鏡(SEM、加速電圧:10.0kV、倍率:100倍)で観察した。撮影されたSEM画像について、面積当たりの繊維の接着交点の数を数えた。不織布の表面および裏面についてそれぞれ3枚ずつ、合計で6枚のSEM画像について繊維の接着交点の数を数え、その平均値を繊維の接着交点数I(単位:個/mm
2)とした。
実施例および比較例の不織布を構成する非接着性繊維(繊維1)と接着性繊維(繊維2)の繊度(dtex)と不織布中の混率(質量%)から、接着交点割合P(0≦P≦1)を下記の式に従って求めた。
【数1】
式中、
α
iは、i番目の非接着性繊維の混率(質量%)を表し、
x
iは、i番目の非接着性繊維の繊度(dtex)を表し、
β
jは、j番目の接着性繊維の混率(質量%)を表し、
y
jは、j番目の接着性繊維の繊度(dtex)を表す。
接着交点数Iと接着交点割合Pとから、接着交点指数A(単位:個/mm
2)を下記の式に従って求めた。
接着交点指数A=I/(P
2)
【0090】
尚、2層構造の場合、表面又は裏面の接着交点割合Pは、表面又は裏面の混綿状態に則して、各々計算する。接着交点指数Aの計算は、表面3つ、裏面3つの平均値であることに変わりはない。実施例81の場合、繊維1の面の接着交点指数Aは0である(I=0)。繊維2の面の接着交点指数Aは28である(P=1)。平均すると実施例81の接着交点指数Aは14となる。
【0091】
<不織布の厚さと密度>
厚み測定機((株)大栄科学精器製作所製のTHICKNESS GAUGE モデル CR-60A(商品名))を用い、不織布に1.96kPaの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定した。
又は、CCDレーザー変位計(アンプユニット型式:LK-2100、センサヘッド型式:LK-080、株式会社キーエンス製)を用い、不織布に40Paの荷重を加えた状態で、不織布の厚さを測定した。結果を表1~2に示した。
不織布の密度は、不織布の目付と、40Paの荷重を加えて得た不織布の厚さに基づいて算出した。
また、1.96kPaの荷重を加えて得た厚さと、40Paの荷重を加えて得た厚さとの比(1.96kPaの荷重を加えて得た厚さ/40Paの荷重を加えて得た厚さ)を、「厚さ比」と定義する。
【0092】
<不織布の厚さ減少率>
不織布の試料片について、上述した方法と同様にして40Paの荷重を加えた状態の不織布の厚さ(初期厚さ)を測定した。次に、同じ試料片に1.63kPaの荷重を加えた状態で3日間放置した後、1.63kPaの荷重を除いて再度上述した方法と同様にして40Paの荷重を加えた状態の不織布の厚さ(最終厚さ)を測定した。厚さ減少率(%)を下記の式に従って求めた。
厚さ減少率(%)=[(初期厚さ-最終厚さ)/初期厚さ]×100
【0093】
<剛軟度>
不織布の剛軟度は、JIS L 1096:2010 8.21.5 E法(ハンドルオメータ法)に準じて測定した。具体的には、次の手順で測定した。
縦:20cm、横:20cmの試験片を試料台の上に、試験片の測定方向がスロット(隙間幅10mm)と直角になるように置いた。
次に、試料台の表面から8mmまで下がるように調整されたペネトレータのブレードを下降させ、試験片を押圧した。押圧したとき、いずれか一方の辺から6.7cm(試験片の幅の1/3)の位置で、縦方向及び横方向それぞれ表裏異なる個所について、押圧に対する抵抗値を読み取った。抵抗値として、マイクロアンメータの示す最高値を読み取った。4辺の最高値の合計値を求めて、合計値の3回の平均値を算出して、当該試料の剛軟度(g)とした。
また、上記剛軟度を、厚さ(1.96kPaの荷重を加えて得た値)で除した値を、単位厚さ当たりの剛軟度(剛軟度/厚さ(g/mm))と定義した。
【0094】
<強伸度>
強伸度は、JIS L 1096:2010 8.14.1 A法(ストリップ法)に準じて測定した。定速緊張形引張試験機を用いて、試料片(不織布)の幅5cm、つかみ間隔10cm、引張速度30±2cm/分の条件で、引張試験を行った。切断時の荷重値(破断強力)、破断伸度、10%伸長時応力、20%伸長時応力ならびに30%伸長時応力を測定した。引張試験は、不織布の縦方向(MD方向)および横方向(CD方向)を引張方向として実施した。評価結果は、いずれも3点の試料について測定した値の平均で示した。
【0095】
<最大摩擦力及び動摩擦力>
最大摩擦力及び動摩擦力は、静・動摩擦測定機(トライボマスターTL201Ts、株式会社トリニティラボ製)を用いて測定した。試料片として5cm×10cmの不織布を用意した。なお、試料片は、不織布のMD方向が長辺となるものとCD方向が長辺となるものをそれぞれ用意した。測定器の接触端子には触覚接触子(株式会社トリニティラボ製)を使用した。試料片を測定機に固定し、試料片の表面に対して接触端子を荷重30g、速度10mm/sec、距離30mmで往復2回移動させ評価した。なお、熱風貫通式熱処理機により加工を行った実施例及び比較例については、熱風を当てた面と反対の面に対して接触端子を接触させて測定した。2往復目の数値を読み取り、往の数値と復の数値との平均値を、1つの試料片の最大摩擦力(gf)及び動摩擦力(gf)とした。MD方向を長辺とした試験片について3回、CD方向を長辺とした試験片について3回測定を行い、合計6回の測定値の平均値を、各実施例及び比較例の最大摩擦力Fs(gf)及び動摩擦力Fk(gf)とした。
また、測定の際に得られた動摩擦力の標準偏差σ(gf)と、上述した動摩擦力の平均値Fkとから、下記の式に従って、動摩擦力の変動係数CVを求めた。
動摩擦力の変動係数CV=σ/Fk
【0096】
<保水率>
不織布をMD方向×CD方向=100mm×100mmに切断して、不織布の質量を測定した。その後、不織布を試験用蒸留水(蒸留水1リットルに対して食器用洗剤(ジョイすっきりオレンジの香り(界面活性剤33%入)、プロクター・アンド・ギャンブル社製)を2滴添加したもの)に2分間浸した。試験用蒸留水を含浸させた不織布の三隅を洗濯ばさみで挟んで吊した。10分経過後に、(水を含む)不織布の質量を測定した。下記の式に従って、不織布の保水率を算出した。
保水率(%)=[(M2-M1)/M1]×100
M1:試験用蒸留水に浸す前の不織布の質量(g)
M2:試験用蒸留水に浸した不織布を、10分間吊した後の不織布の質量(g)
【0097】
<毛羽評価>
円盤(直径70mm、350g)の表面を、厚さ0.5mmのウレタンフォームで覆った。その円盤を回転軸から円盤中心が20mmずれた位置で回転軸に取り付けた。下にウレタンフォームを敷いた不織布を台上に固定した。上記の円盤を不織布上に載せ、回転軸を回転させて円盤を不織布上で周動させた。周動は時計回りに2回、反時計回りに2回行った。この時の周動速度は1周動あたり約3秒であった。周動後の不織布について、毛羽状態を以下の判断基準で評価した。3~5は、毛羽が抑制されていると考えられる。
5:非常に良い(毛羽無し)
4:良い(毛羽は極めて少ない)
3:普通(毛羽は気にならない程度ある)
2:悪い(毛羽は気になる程度ある)
1:非常に悪い(毛羽が多い)
【0098】
<毛羽評価2>
マーチンデール毛羽試験機(James Heal社製、商品名「Martindale Abrasion and Pilling Tester No.1309」)を用いて摩擦テスト(Abrasion Test)により評価した。
実施例、比較例の不織布について2枚のサンプル(直径140mm及び直径38mmを1枚ずつ)を用意した。摩擦テーブル(Abrading Table)に直径140mmのフェルトを設置し、SM25摩擦布(SM25 Abrasice Cloth)上に直径140mmのサンプルを積層してクランピングリング(Clamp Ring)でサンプルを固定した。次にサンプルホルダー(Sample Holder)に直径38mmのサンプルと直径38mmのポリウレタンを設置した。測定条件は、サンプルホルダーにローディングウェイト(Loading Weight)を設置せずに、サンプルホルダーをテーブル(Abrading Tables)に設置した。摩擦回数を8回転とし、モーションを60.5mmリサージュに設定して摩擦テストを行った。なお熱風貫通式熱処理機により加工を行った実施例及び比較例については、熱風を当てた側と反対側の面同士が接触するように摩擦テストを行った。測定終了後、サンプルホルダー側の不織布を観察し、毛羽状態を以下の二つの判断基準(測定後の不織布を真上から見た時の状態(表面状態)と測定後の不織布を真横から見た時の状態(毛羽立ち具合))の合計(10点満点)で評価した。合計6点以上が、毛羽が抑制されていると考えられる。各実施例または比較例につき、3回ずつ評価試験を行い、3回の点数の平均値を各実施例または比較例の毛羽評価とした。
表面状態
5:非常に良い(表面の乱れが無い)
4:良い(表面の乱れは極めて少ない)
3:普通(表面の乱れは少なく、気にならない)
2:悪い(表面の乱れが気になる程度ある)
1:非常に悪い(表面に穴が開いている)
毛羽立ち具合
5:非常に良い(毛羽立ちは無い)
4:良い(毛羽立ちは極めて少ない)
3:普通(毛羽立ちは気にならない程度ある)
2:悪い(毛羽立ちが気になる程度ある)
1:非常に悪い(毛羽立ちが多い)
尚、毛羽については、<毛羽評価>と<毛羽評価2>の2つの評価方法があるが、<毛羽評価>について3以上であれば合格であり、<毛羽評価2>について合計で6以上であれば合格である。更に、<毛羽評価>と<毛羽評価2>のいずれかが合格であれば、毛羽については、合格と考えられる。<毛羽評価>と<毛羽評価2>の両方が合格であれば、毛羽について、より好ましい。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
実施例11~43及び81~86の不織布は、いずれも、セルロース系繊維と接着性繊維とを含み、前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含む。更に、実施例11~43及び81~86の不織布は、いずれも、(i)前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2である、および/または(ii)前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、という、特徴を有する。
【0103】
実施例11~43及び81~86の不織布は、接着箇所と交絡箇所の両方を含むので、毛羽の抑制が良好である。
更に、実施例11~43及び81~86の不織布は、上述の(i)及び(ii)のいずれかが、上述の特定の値を示すので、風合いが柔らかく、良好である。
従って、実施例11~43及び81~86の不織布は、毛羽の抑制及び風合いが良好であるという優れた性質を示す。
【0104】
これに対し、比較例50~72の不織布は、毛羽の抑制及び風合いが決して良好ではない。例えば、比較例50~62は、接着箇所又は交絡箇所のいずれか片方しか有さない。そのため、毛羽の抑制が不十分である。比較例71~72は、接着箇所及び交絡箇所の両方を有するので、毛羽の抑制が良好であるが、(i)及び(ii)のいずれかが、上述の特定の値を示さないので、風合いが硬く、不十分である。
【0105】
不織布の単位厚さ当たりの剛軟度について確認すると、実施例11~43及び81~86の不織布と比べて、比較例71および比較例72の不織布の値が大きく、実施例の不織布の方が風合いについて柔らかく、良好である。
【0106】
不織布の厚さ比について、混率が同じ実施例31~33と、比較例71~72とを確認すると、実施例の不織布に比べて比較例の不織布の値が大きく、実施例の不織布の方が風合いについて柔らかく、良好である。また、混率が同じ実施例31~33と、比較例50とを比べると、実施例の不織布に比べて比較例の不織布の値が小さく、実施例の不織布の方がへたりにくいものである。
【0107】
不織布の厚さ方向において3等分したときの真ん中における繊維接着点の角度について、混率が同じ実施例31と、比較例50および比較例71とを確認すると、実施例31の不織布に比べて比較例71の不織布の値が小さく、実施例の不織布の方が風合いについて柔らかく、良好である。また実施例31の不織布に比べて比較例50の不織布の値が大きく、実施例の不織布の方がへたりにくいものである。また接着性繊維として機械捲縮の繊維を使用した実施例84は角度の値が小さかったため、接着性繊維は立体捲縮を有する方が風合いをより柔らかくすることができると考えられる。
【0108】
不織布の動摩擦力の変動係数について、水圧が同じ実施例11、21、31及び41と、比較例71とを確認すると、実施例の不織布が比較例の不織布に比べて値が小さく、実施例の不織布の方が不織布の表面が滑らかである。また水圧が同じ実施例12、22、32及び42と、比較例72とについても同様に実施例の不織布の方が不織布の表面が滑らかである。交絡工程の前に接着工程を行うことで繊維の交絡が適度となり不織布の表面を滑らかにすることができると推察される。特に実施例および比較例は繊維ウェブをパラレルカード機により製造したため、繊維がMD方向に比較的配向しており、交絡工程の前に接着工程を行うことで、繊維配向が比較的維持され、不織布の表面がより滑らかになったと推察される。
【0109】
実施例31の不織布について、不織布を横方向(より具体的には、不織布を処理した熱処理機及び水流処理機のベルトコンベアの進行方向と直交方向)に切断して、その切断面を走査電子顕微鏡(SEM、倍率:100倍)で観察した。
図3は、不織布を厚さ方向に3等分したときの不織布の真ん中付近(内部)を拡大した切断部であり、実施例31の不織布は、不織布の内部において、接着性繊維による接着箇所が解消された接着剥離痕が接着性繊維に形成されていることがわかる。
実施例31の不織布について、不織布の表面および裏面を走査電子顕微鏡(SEM、倍率:100倍)で観察した。
図4は、不織布の表面を観察したものであり、実施例31の不織布は、不織布の表面において、接着性繊維による接着箇所が解消された接着剥離痕が接着性繊維に形成されていることがわかる。また、
図5は、不織布の裏面を観察したものであり、実施例31の不織布は、不織布の裏面において、接着性繊維による接着箇所が解消された接着剥離痕が接着性繊維に形成されていることがわかる。
【0110】
セルロース系繊維が異なる実施例31と実施例85とを比較すると、リヨセルを使用した実施例31がコットンを使用した実施例85よりも破断強力が高く、MD方向の10%、20%、30%伸長時応力が高かった。また毛羽評価も実施例31が高かった。リヨセルは繊度及び繊維長のばらつきが極めて小さく、不織布強力や毛羽が比較的良好になったと推測される。
【0111】
またセルロース系繊維が異なる実施例31と実施例86とを比較すると、リヨセルを使用した実施例31が撥水性を有するレーヨンを使用した実施例86よりも破断強力が高く、10%、20%、30%伸長時応力が高かった。また毛羽評価も実施例31が高かった。沈降速度が4秒程度であるリヨセルは撥水性を有するレーヨンと比べ柱状水流による交絡が比較的強くなるため、不織布強力や毛羽が比較的良好になったと推測される。一方、実施例86は実施例31よりも最大摩擦力及び動摩擦力が低く、不織布表面の滑り性が比較的良好であった。
【0112】
接着性繊維の鞘成分が異なる実施例31と実施例84とを比較すると、実施例84はMD方向の10%、20%、30%伸長時応力がいずれも高かった。エチレン-アクリル酸共重合体のようなセルロース系繊維との接着性が高い樹脂を鞘成分に用いることで不織布の強力が向上すると推測される。
【0113】
積層構造の中で、不織布の製造方法が少し異なる実施例82と実施例83とを比較すると、実施例83の方が毛羽の評価が良かった。熱風を当てた方の層は反対側の層(支持体に接触している層)よりも繊維密度が小さくなる傾向であり、柱状水流による交絡が比較的進む。一方で反対側の層は比較的交絡が進みにくいため、反対側の層においてセルロース系繊維の含有量が多い方が交絡が比較的強く行われ、毛羽立ちにくくなると推測される。
【0114】
本開示は、以下の態様を含む。
(態様1)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布の接着交点指数Aが1~60個/mm2である、
不織布。
(態様2)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布であって、
前記接着性繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との接着箇所を含み、
前記セルロース系繊維とセルロース系繊維及び/又は接着性繊維との交絡箇所を含み、
前記不織布の厚さ減少率が30~45%である、
不織布。
(態様3)
前記セルロース系繊維が25~75質量%含まれる、態様1または2のいずれかに記載の不織布。
(態様4)
セルロース系繊維と接着性繊維とを含む不織布の製造方法であって、前記接着性繊維により繊維同士を接着させる接着工程と、前記接着工程の後に繊維同士を交絡させる交絡工程とを含む、不織布の製造方法。
(態様5)
前記接着工程と前記交絡工程との間に冷却工程を含む、態様4に記載の不織布の製造方法。
(態様6)
前記交絡工程が、水流交絡処理を含む、態様4または5に記載の不織布の製造方法。
(態様7)
前記接着工程が熱風加工処理を含み、前記水流交絡工程において、熱風を吹き付けた側から先に柱状水流を噴射することを含む、態様6に記載の不織布の製造方法。
(態様8)
前記水流交絡処理の後に乾燥工程を含み、前記乾燥工程の温度が、接着性繊維の接着成分の軟化または溶融する温度よりも10℃以上低い温度であることを含む、態様6または7に記載の不織布の製造方法。
(態様9)
前記水流交絡処理の後に乾燥工程を含み、
前記接着性繊維は、接着成分の融点または軟化点が異なる二以上の接着性繊維を含み、
融点または軟化点がより高い熱接着成分の融点または軟化点T1(℃)と、融点または軟化点がより低い熱接着成分の融点または軟化点T2(℃)と、乾燥処理の温度T(℃)とが、T2≦T<T1の関係を満たす、態様6または7に記載の不織布の製造方法。
本開示の不織布は、毛羽の抑制が不十分である及び風合いが硬い等の問題の少なくとも一つを緩和し、好ましくは解決し、例えば吸収性物品等の人の肌に直接触れる用途に使用することができる。
関連出願
尚、本出願は、2018年2月5日に日本国でされた出願番号2018-018501に基づいて、パリ条約第4条に基づく優先権を主張する。この基礎出願の内容は、参照することによって、本明細書に組み込まれる。