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特開2023-182011炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182011
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20231219BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231219BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01L29/78 652N
H01L29/78 652T
H01L29/06 301M
H01L29/06 301V
H01L29/78 653A
H01L29/78 652K
H01L29/78 652M
H01L29/78 658G
H01L21/78 Q
H01L21/78 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020185849
(22)【出願日】2020-11-06
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】堀井 拓
【テーマコード(参考)】
5F063
【Fターム(参考)】
5F063AA04
5F063AA06
5F063BA07
5F063BB01
5F063BB12
5F063CB02
5F063CB08
5F063CB24
5F063DD42
5F063DD46
5F063DD51
5F063DD64
5F063DF02
5F063EE21
(57)【要約】
【課題】端面を経由して表面と裏面との間を流れるリーク電流を低減できる炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、前記第1主面と前記第2主面とをつなぐ端面を有し、前記端面は、前記第2主面との境界から連続し、前記第2主面に対して傾斜した傾斜面を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、
前記炭化珪素基板は、前記第1主面と前記第2主面とをつなぐ端面を有し、
前記端面は、前記第2主面との境界から連続し、前記第2主面に対して傾斜した傾斜面を含む炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記炭化珪素基板は、
前記第2主面を含む炭化珪素単結晶基板と、
前記第1主面を含む炭化珪素エピタキシャル層と、
を有する請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記第2主面側ほど広がるように傾斜している請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記第1主面側ほど広がるように傾斜している請求項1または請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記傾斜面と前記第2主面とのなす角度は、50°以上65°以下である請求項3または請求項4に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項6】
前記傾斜面は、{0-33-8}面を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項7】
前記傾斜面の一辺100nmの正方形領域内における表面粗さはRMSで1.0nm以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項8】
前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記第2主面は、少なくとも1つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項9】
第1主面と、前記第1主面と反対側の第3主面とを有し、前記第1主面にダイシングラインを備えた炭化珪素ウェハを準備する工程と、
前記ダイシングラインに対してハロゲンガスを含む雰囲気で熱エッチングを行って前記ダイシングラインに溝を形成する工程と、
前記炭化珪素ウェハを前記第3主面から薄化して前記炭化珪素ウェハを個片化する工程と、
を有する炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記炭化珪素ウェハを個片化する工程は、前記炭化珪素ウェハを前記第3主面側から研削する工程を有する請求項9に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記炭化珪素ウェハを準備する工程は、前記第3主面を含む炭化珪素単結晶基板の上に、前記第1主面を含む炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を有する請求項9または請求項10に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記ダイシングラインに対して熱エッチングを行う工程は、前記第1主面の一部を覆う被覆部と、前記第1主面の残部を露出する開口部とを備えたエッチングマスクを前記第1主面の上に形成する工程を有し、
前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記被覆部は、少なくとも1つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有する請求項9から請求項11のいずれか1項に記載の炭化珪素半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体Siウェハの表面からスクライブラインに対し異方性エッチングを行って段差を形成し、その後に半導体Siウェハの裏面全体に対して段差まで等方性エッチングを行う半導体Siウェハのチップ化方法が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-32486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法に準じて炭化珪素半導体装置を製造すると、端面を経由して表面と裏面との間をリーク電流が流れるおそれがある。
【0005】
本開示は、端面を経由して表面と裏面との間を流れるリーク電流を低減できる炭化珪素半導体装置及び炭化珪素半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、前記第1主面と前記第2主面とをつなぐ端面を有し、前記端面は、前記第2主面との境界から連続し、前記第2主面に対して傾斜した傾斜面を含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、端面を経由して表面と裏面との間を流れるリーク電流を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す平面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す断面図である。
図3図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれるトランジスタを示す断面図である。
図4図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図(その1)である。
図6図6は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図(その2)である。
図7図7は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図(その3)である。
図8図8は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
図9図9は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
図10図10は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
図11図11は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
図12図12は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
図13図13は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
図14図14は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
図15図15は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
図16図16は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
図17図17は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
図18図18は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
図19図19は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
図20図20は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
図21図21は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その14)である。
図22図22は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その15)である。
図23図23は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その16)である。
図24図24は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その17)である。
図25図25は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その18)である。
図26図26は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図(その19)である。
図27図27は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す平面図である。
図28図28は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図(その1)である。
図29図29は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図(その2)である。
図30図30は、第1実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。本明細書中の結晶学的記載においては、個別方位を[]、集合方位を<>、個別面を()、集合面を{}でそれぞれ示している。また結晶学上の指数が負であることは、通常、"-"(バー)を数字の上に付すことによって表現されるが、本明細書中では数字の前に負の符号を付している。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第2主面とを有する炭化珪素基板を備え、前記炭化珪素基板は、前記第1主面と前記第2主面とをつなぐ端面を有し、前記端面は、前記第2主面との境界から連続し、前記第2主面に対して傾斜した傾斜面を含む。
【0012】
炭化珪素はシリコンと比較して高い耐圧を得ることができるため、炭化珪素半導体装置はシリコン系半導体装置よりも薄くできる。その一方で、薄い炭化珪素半導体装置では2つの主面の間の距離が短く、2つの主面の間でリーク電流が流れるおそれがある。これに対し、本開示の一態様に係る炭化珪素半導体装置では、端面に傾斜面が含まれているため、端面が第1主面、第2主面に垂直になっている場合よりもリーク電流が流れる経路を長くできる。従って、端面を経路として第1主面と第2主面との間を流れるリーク電流を低減できる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記炭化珪素基板は、前記第2主面を含む炭化珪素単結晶基板と、前記第1主面を含む炭化珪素エピタキシャル層と、を有してもよい。この場合、炭化珪素エピタキシャル層の結晶性が良好であり、優れた特性を得やすい。
【0014】
〔3〕 〔1〕又は〔2〕において、前記傾斜面は、前記第2主面側ほど広がるように傾斜していてもよい。この場合、第2主面がはんだを用いて導電層等に接続されると、はんだが傾斜面にせり上がりやすく、良好な接合強度を得やすい。また、トランスファモールドにより炭化珪素半導体装置を封止する場合に、端面の近傍から気泡を排出させやすく、気泡の残留に伴う実装不良を抑制しやすい。
【0015】
〔4〕 〔1〕又は〔2〕において、前記傾斜面は、前記第1主面側ほど広がるように傾斜していてもよい。この場合も、リーク電流の低減及び放熱性の向上の効果が得られる。
【0016】
〔5〕 〔3〕又は〔4〕において、前記傾斜面と前記第2主面とのなす角度は、50°以上65°以下であってもよい。この場合、傾斜面に良好な結晶性を得やすい。
【0017】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記傾斜面は、{0-33-8}面を含んでもよい。この場合、傾斜面に良好な結晶性を得やすい。
【0018】
〔7〕 〔1〕~〔6〕において、前記傾斜面の一辺100nmの正方形領域内における表面粗さはRMSで1.0nm以下であってもよい。この場合、チッピングを抑制しやすい。
【0019】
〔8〕 〔1〕~〔7〕において、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記第2主面は、少なくとも1つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有してもよい。この場合、平面形状における隅部での応力集中を緩和しやすい。
【0020】
〔9〕 本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置の製造方法は、第1主面と、前記第1主面と反対側の第3主面とを有し、前記第1主面にダイシングラインを備えた炭化珪素ウェハを準備する工程と、前記ダイシングラインに対してハロゲンガスを含む雰囲気で熱エッチングを行って前記ダイシングラインに溝を形成する工程と、前記炭化珪素ウェハを前記第3主面から薄化して前記炭化珪素ウェハを個片化する工程と、を有する。
【0021】
本開示の他の一態様に係る炭化珪素半導体装置の製造方法によれば、請求項1に記載の傾斜面を容易に形成できる。
【0022】
〔10〕 〔9〕において、前記炭化珪素ウェハを個片化する工程は、前記炭化珪素ウェハを前記第3主面側から研削する工程を有してもよい。この場合、溝の形成後に研削が行われるため、炭化珪素ウェハにかかる圧力を分散しやすい。
【0023】
〔11〕 〔9〕又は〔10〕において、前記炭化珪素ウェハを準備する工程は、前記第3主面を含む炭化珪素単結晶基板の上に、前記第1主面を含む炭化珪素エピタキシャル層を形成する工程を有してもよい。この場合、炭化珪素エピタキシャル層の結晶性が良好であり、優れた特性を得やすい。
【0024】
〔12〕 〔9〕~〔11〕において、前記ダイシングラインに対して熱エッチングを行う工程は、前記第1主面の一部を覆う被覆部と、前記第1主面の残部を露出する開口部とを備えたエッチングマスクを前記第1主面の上に形成する工程を有し、前記第1主面に垂直な方向から平面視したときに、前記被覆部は、少なくとも1つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有してもよい。この場合、平面形状における隅部での応力集中を緩和しやすい。
【0025】
[第1実施形態]
本開示の第1実施形態は、トランジスタを含む炭化珪素半導体装置に関する。図1は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す平面図である。図2は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す断面図である。図3は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれるトランジスタを示す断面図である。図2は、図1中のII-II線に沿った断面図に相当する。
【0026】
図1及び図2に示されるように、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100は炭化珪素基板10を含み、炭化珪素基板10は、炭化珪素単結晶基板50と、炭化珪素単結晶基板50上にある炭化珪素エピタキシャル層40とを含む。炭化珪素基板10は、第1主面1と、第1主面1と反対側の第2主面2とを有する。炭化珪素エピタキシャル層40は第1主面1を構成し、炭化珪素単結晶基板50は第2主面2を構成する。炭化珪素単結晶基板50及び炭化珪素エピタキシャル層40は、例えばポリタイプ4Hの六方晶炭化珪素から構成されている。炭化珪素単結晶基板50は、例えば窒素(N)などのn型不純物を含みn型(第1導電型)を有する。炭化珪素基板10に半導体素子が形成されている。例えば、第1主面1と第2主面2との間の距離L1、すなわち炭化珪素基板10の厚さは、50μm以上200μm以下程度である。
【0027】
第1主面1は、{0001}面または{0001}面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。好ましくは、第1主面1は、(000-1)面または(000-1)面がオフ方向に8°以下のオフ角だけ傾斜した面である。オフ方向は、例えば<11-20>方向であってもよいし、<1-100>方向であってもよい。オフ角は、例えば1°以上であってもよいし、2°以上であってもよい。オフ角は、6°以下であってもよいし、4°以下であってもよい。
【0028】
図1に示されるように、例えば、炭化珪素基板10は矩形状の平面形状を有する。すなわち、炭化珪素基板10の平面形状は、第1方向に平行に延びる2辺と、第1方向に垂直な第2方向に延びる2辺とを備える。図2に示されるように、炭化珪素基板10は、これら4辺に相当する位置のそれぞれに第1主面1と第2主面2とをつなぐ端面20を有する。端面20は、第2主面2との境界から連続し、第2主面2に対して傾斜した傾斜面21を有する。本実施形態では、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1主面1の輪郭が第2主面2の輪郭の内側にある。傾斜面21は、第2主面2側ほど広がるように傾斜している。すなわち、傾斜面21は、第1主面1に近づくほど、第1主面1の内側に入るように傾斜している。傾斜面21と第2主面2とのなす角度θ1は、例えば50°以上65°以下である。角度θ1は、例えば55°以上であってもよい。角度θ1は、例えば60°以下であってもよい。傾斜面21は、好ましくは、{0-33-8}面を有する。角度θ1が50°以上65°以下であると、傾斜面21に良好な結晶性を得やすい。
【0029】
4つの傾斜面21の間で角度θ1が共通していなくてもよい。例えば、第1方向に平行な辺に相当する位置に設けられた2つの傾斜面21が{0-33-8}面を有し、第2方向に平行な辺に相当する位置に設けられた2つの傾斜面21が{0-33-8}面とは異なる結晶面を有してもよい。傾斜面21が{0-33-8}面を有していると、傾斜面21に良好な結晶面を得やすい。
【0030】
端面20が、第1主面1との境界から連続する面23と、傾斜面21と面23とをつなぐ面22とを有してもよい。例えば、面23は、第1主面1に対して実質的な垂直であってもよく、面22は、第1主面1及び第2主面2に実質的に平行であってもよい。例えば、第1主面1と面22との間の距離L2は、0.5μm以上1.0μm以下程度であり、距離L1と比べると極めて小さい。
【0031】
本実施形態では、炭化珪素基板10に半導体素子の一例としてMOSFETが形成されている。図3に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層40は、ドリフト領域11と、ボディ領域12と、ソース領域13と、コンタクト領域18とを主に有する。
【0032】
ドリフト領域11は、例えば窒素またはリン(P)などのn型不純物が添加されていることでn型を有する。ドリフト領域11へのn型不純物の添加は、イオン注入によってではなく、ドリフト領域11のエピタキシャル成長時の不純物添加によって行われていることが好ましい。
【0033】
ボディ領域12はドリフト領域11上に設けられている。ボディ領域12は、例えばアルミニウム(Al)などのp型不純物が添加されていることでp型(第2導電型)を有する。
【0034】
ソース領域13は、ボディ領域12によってドリフト領域11から隔てられるようにボディ領域12上に設けられている。ソース領域13は、例えば窒素またはリンなどのn型不純物が添加されていることでn型を有する。ソース領域13は、第1主面1を構成している。
【0035】
コンタクト領域18は、例えばアルミニウムなどのp型不純物が添加されていることでp型を有する。コンタクト領域18は、第1主面1を構成する。コンタクト領域18は、ソース領域13を貫通し、ボディ領域12に接する。
【0036】
第1主面1には、複数のゲートトレンチ5が設けられている。ゲートトレンチ5は、例えば第1主面1に平行な第1方向に延びており、複数のゲートトレンチ5が第2方向に並んでいる。ゲートトレンチ5は、ドリフト領域11からなる底面4を有する。ゲートトレンチ5は、コンタクト領域18、ソース領域13及びボディ領域12を貫通して底面4に連なる側面3を有する。底面4は、例えば第2主面2と平行な平面である。底面4を含む平面に対する側面3の角度は、例えば50°以上65°以下である。この角度は、例えば55°以上であってもよい。この角度は、例えば60°以下であってもよい。側面3は、好ましくは、{0-33-8}面を有する。{0-33-8}面は、優れた移動度が得られる結晶面である。
【0037】
側面3及び底面4に接するゲート絶縁膜81が設けられている。ゲート絶縁膜81は、例えば酸化膜である。ゲート絶縁膜81は、例えば二酸化珪素を含む材料により構成されている。ゲート絶縁膜81は、底面4においてドリフト領域11と接する。ゲート絶縁膜81は、側面3においてソース領域13、ボディ領域12及びドリフト領域11の各々と接している。ゲート絶縁膜81は、第1主面1においてソース領域13と接していてもよい。
【0038】
ゲート絶縁膜81上にゲート電極82が設けられている。ゲート電極82は、例えば導電性不純物を含むポリシリコン(ポリSi)から構成されている。ゲート電極82は、ゲートトレンチ5の内部に配置されている。
【0039】
ゲート電極82及びゲート絶縁膜81に接する層間絶縁膜83が設けられている。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成されている。層間絶縁膜83は、ゲート電極82とソース電極60とを電気的に絶縁している。
【0040】
層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81には、第2方向に一定の間隔でコンタクトホール90が形成されている。コンタクトホール90は、第2方向で隣り合うコンタクトホール90の間にゲートトレンチ5が位置するように設けられている。コンタクトホール90は、第1方向に延びる。コンタクトホール90を通じて、ソース領域13及びコンタクト領域18が層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出している。
【0041】
第1主面1に接するソース電極60が設けられている。ソース電極60は、コンタクトホール90内に設けられたコンタクト電極61と、ソース配線62とを有する。コンタクト電極61は、第1主面1において、ソース領域13及びコンタクト領域18に接している。コンタクト電極61は、例えばニッケルシリサイド(NiSi)を含む材料から構成されている。コンタクト電極61が、チタン(Ti)と、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。コンタクト電極61は、ソース領域13及びコンタクト領域18とオーミック接合している。ソース配線62は、例えばAlを含む材料から構成されている。
【0042】
ソース配線62の上面を覆うパッシベーション膜85が設けられている。パッシベーション膜85は、ソース配線62と接している。パッシベーション膜85は、例えばポリイミドを含む材料から構成されている。
【0043】
第2主面2に接するドレイン電極70が設けられている。ドレイン電極70は、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50と接している。ドレイン電極70は、ドリフト領域11と電気的に接続されている。ドレイン電極70は、例えばNiSiを含む材料から構成されている。ドレイン電極70がTiと、Alと、Siとを含む材料から構成されていてもよい。ドレイン電極70は、炭化珪素単結晶基板50とオーミック接合している。
【0044】
本実施形態では、端面20に傾斜面21が含まれているため、端面20が第1主面1及び第2主面2に垂直になっている場合よりもリーク電流が流れる経路を長くできる。従って、端面20を経路として第1主面1と第2主面2との間を流れるリーク電流を低減できる。また、端面20が第1主面1及び第2主面2に垂直になっている場合よりも端面20の面積が大きくなるため、放熱性を向上できる。
【0045】
また、炭化珪素基板10が、第2主面2を含む炭化珪素単結晶基板50と、第1主面1を含む炭化珪素エピタキシャル層40とを有する。つまり、炭化珪素基板10は、いわゆるエピタキシャル基板である。このため、炭化珪素エピタキシャル層の結晶性が良好であり、優れた特性を得やすい。
【0046】
また、傾斜面21が第2主面2側ほど広がるように傾斜している。このため、絶縁基板の表面に形成された導電層等にはんだを介してドレイン電極70が接続される場合、溶融したはんだが傾斜面21にせり上がりやすく、ドレイン電極70と導電層等との間に良好な接合強度を得やすい。また、トランスファモールドにより炭化珪素半導体装置100を封止する場合に、端面20の近傍から気泡を排出させやすく、気泡の残留に伴う実装不良を抑制しやすい。
【0047】
傾斜面21の表面粗さは一辺100nmの正方形領域において算出するような微視的な範囲においてRMSで1.0nm以下であることが好ましく、0.8nm以下であることがより好ましい。炭化珪素半導体装置100におけるチッピングの抑制のためである。このような微視的な表面粗さは、例えば原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて測定することができる。
【0048】
傾斜面21は{0-33-8}面を有していることが好ましいが、{0-33-8}面とは異なる炭化珪素の特定の結晶面を有してもよい。ここで、{0-33-8}面を有しているとは、傾斜面21の加工精度などを考慮して実質的に面方位が{0-33-8}とみなせるオフ角の範囲に傾斜面21の面方位が含まれていることを意味する。この場合のオフ角の範囲は、例えば{0-33-8}に対してオフ角が±2°の範囲である。
【0049】
例えば、傾斜面21のオフ方位と<01-10>方向とのなす角は5°以下となっていてもよい。これによりオフ方位がほぼ<01-10>方向となり、その結果、傾斜面21の面方位が{0-33-8}面に近くなる。傾斜面21の、<01-10>方向における{0-33-8}面に対するオフ角は-3°以上5°以下であってもよい。
【0050】
「<01-10>方向における{0-33-8}面に対するオフ角」とは、<01-10>方向及び<0001>方向を含む平面への傾斜面21の法線の正射影と、{0-33-8}面の法線とのなす角度である。当該角度の符号は、上記正射影が<01-10>方向に対して平行に近づく場合が正であり、上記正射影が<0001>方向に対して平行に近づく場合が負である。
【0051】
なお、ゲートトレンチ5が垂直トレンチであってもよい。つまり、底面4を含む平面に対する側面3の角度が90°であってもよい。また、ゲートトレンチ5を含まないトランジスタが炭化珪素基板10に形成されていてもよい。また、炭化珪素基板10に形成される半導体素子はMOSFET等のトランジスタに限定されず、ショットキーバリアダイオード等の他の半導体素子が炭化珪素基板10に形成されていてもよい。
【0052】
次に、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100の製造方法について説明する。図4は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。図5図7は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図である。図8図26は、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す断面図である。図17図26は、図3に示す断面の変化を示す。
【0053】
まず、工程S1において、図8及び図17に示されるように、炭化珪素単結晶基板50が準備される。例えば昇華法によって製造された炭化珪素インゴット(図示せず)がスライスされることにより、炭化珪素単結晶基板50が準備される。炭化珪素単結晶基板50上にバッファ層(図示せず)が形成されてもよい。バッファ層は、例えば原料ガスとしてシラン(SiH)とプロパン(C)との混合ガスを用い、キャリアガスとして例えば水素(H)を用いた化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法により形成することができる。バッファ層のエピタキシャル成長の際に、例えば窒素などのn型不純物がバッファ層に導入されてもよい。
【0054】
次に、炭化珪素単結晶基板50上に炭化珪素エピタキシャル層40が形成される。例えば原料ガスとしてシランとプロパンとの混合ガスを用い、キャリアガスとして例えば水素を用いたCVD法により、炭化珪素単結晶基板50上に炭化珪素エピタキシャル層40が形成される。炭化珪素エピタキシャル層40の際、例えば窒素などのn型不純物が炭化珪素エピタキシャル層40に導入される。炭化珪素エピタキシャル層40は、n型の導電型を有する。このようにして、炭化珪素単結晶基板50及び炭化珪素エピタキシャル層40を備えた炭化珪素ウェハ51が準備される。炭化珪素ウェハ51は、第1主面1と、第1主面1とは反対側の第3主面55とを有する。例えば、第1主面1と第3主面55との間の距離L3、すなわち炭化珪素ウェハ51の厚さは、炭化珪素半導体装置100の厚さよりも大きく、例えば350μm以上500μm以下程度である。
【0055】
次に、工程S2において、第1主面1にマーカ91が形成される。マーカ91の形成では、まず、図5に示されるように、炭化珪素ウェハ51の第1主面1に、炭化珪素半導体装置100を形成する予定のチップ領域52と、隣り合うチップ領域52とを分離するダイシングライン53とが設定される。例えば、ダイシングライン53は、第1方向及び第2方向に延びる。次いで、図8に示されるように、例えばフォトレジストをエッチングマスクとして用い、炭化珪素エピタキシャル層40のエッチングが行われる。エッチングの方法としては、例えば反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)、特に誘導結合プラズマ(Inductive Coupled Plasma:ICP)RIEを用いることができる。具体的には、例えば反応ガスとしてSFまたはSFとOとの混合ガスを用いたICP-RIEを用いることができる。例えば、マーカ91の幅は10μm程度であり、深さは距離L2と等しく、0.5μm以上1.0μm以下程度である。
【0056】
次に、工程S3において、図18に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層40へのイオン注入が行われる。例えば、イオン注入により、ボディ領域12、ソース領域13及びコンタクト領域18が形成される。炭化珪素エピタキシャル層40の残部がドリフト領域11として機能する。ボディ領域12又はコンタクト領域18を形成するためのイオン注入においては、例えばアルミニウム(Al)などのp型不純物がイオン注入される。ソース領域13を形成するためのイオン注入においては、例えばリン(P)などのn型不純物がイオン注入される。
【0057】
次に、工程S4において、図9に示されるように、炭化珪素エピタキシャル層40の表面の熱酸化を行うことにより、炭化珪素エピタキシャル層40の表面に絶縁膜92を形成する。絶縁膜92は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。
【0058】
次に、工程S5において、図6及び図10に示されるように、絶縁膜92にマーカ91の底面を部分的に露出する開口部92Xを形成する。開口部92Xの形成では、例えばフォトレジストをエッチングマスクとして用いた絶縁膜92のドライエッチングを行う。絶縁膜92から、第1主面1の一部を覆う被覆部92Yと、第1主面1の残部を露出する開口部92Xとを備えたエッチングマスク92Zが形成される。被覆部92Yは、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、長方形状の平面形状を有する。
【0059】
次に、工程S6において、図6及び図11に示されるように、エッチングマスク92Zを用いて、平面視でマーカ91の内側に、ダイシング溝95が形成される。ダイシング溝95の形成では、まず、開口部92Xにおいて、ICP-RIE等のRIEにより炭化珪素ウェハ51の一部がエッチングにより除去される。具体的には、例えば反応ガスとしてSFまたはSFとOとの混合ガスを用いたICP-RIEを用いることができる。このようなエッチングにより、側面が第1主面1に対してほぼ垂直な内面を有する凹部を形成することができる。次いで、エッチングマスク92Zを用いて、炭化珪素ウェハ51に対して、凹部の内面において熱エッチングが行われる。熱エッチングは、例えば、少なくとも1種類以上のハロゲン原子を有するハロゲン系の反応性ガスを含む雰囲気中で、炭化珪素ウェハ51を加熱することによって行い得る。少なくとも1種類以上のハロゲン原子は、塩素(Cl)原子及びフッ素(F)原子の少なくともいずれかを含む。この雰囲気は、例えば、Cl、BCL、SF、またはCFである。例えば、塩素ガスと酸素ガスとの混合ガスを反応ガスとして用い、熱処理温度を、例えば700℃以上1000℃以下として、熱エッチングが行われる。なお、反応ガスは、塩素ガスと酸素ガスとに加えてキャリアガスを含んでいてもよい。キャリアガスとしては、例えば窒素(N)ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。そして、上述のように熱処理温度を700℃以上1000℃以下とした場合、SiCのエッチング速度は例えば約70μm/時になる。エッチングマスクとして用いられる二酸化珪素を含む材料から構成される絶縁膜92は、炭化珪素に対する選択比が極めて大きいため、炭化珪素のエッチング中に実質的にエッチングされない。
【0060】
上記の熱エッチングにより炭化珪素ウェハ51に、側面93と、底面94とを有するダイシング溝95が形成される。ダイシング溝95の形成の際、炭化珪素ウェハ51は、開口部92Xからサイドエッチングされるようにエッチングされる。また、熱エッチングの際、エッチング速度の最も遅い結晶面である{0-33-8}面がダイシング溝95の側面93として自己形成される。例えば、ダイシング溝95の底面94とマーカ91の底面との間の距離L4は、例えば50μm以上200μm以下程度である。第1主面1とダイシング溝95の底面94と間の距離は、距離L2と距離L4との和に等しく、製造しようとする炭化珪素半導体装置100における第1主面1と第2主面2との間の距離L2よりも大きくする。
【0061】
次に、工程S7において、図12に示されるように、エッチングマスク92Zが第1主面1から除去される。
【0062】
次に、工程S8において、イオン注入により添加された不純物を活性化するための活性化熱処理が行われる。この熱処理の温度は、好ましくは1500℃以上1900℃以下であり、例えば1700℃程度である。熱処理の時間は、例えば30分程度である。熱処理の雰囲気は、好ましくは不活性ガス雰囲気であり、例えばAr雰囲気である。
【0063】
次に、工程S9において、図19に示されるように、炭化珪素ウェハ51にゲートトレンチ5が形成される。ゲートトレンチ5は、ダイシング溝95と同様に、開口部が形成された二酸化珪素を含む材料から構成される絶縁膜をエッチングマスクとした、RIE及び熱エッチングにより形成できる。熱エッチングの際、{0-33-8}面が側面3として自己形成される。
【0064】
次に、工程S10において、図20に示されるように、ゲート絶縁膜81が形成される。例えば炭化珪素ウェハ51を熱酸化することにより、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11と、コンタクト領域18とに接するゲート絶縁膜81が形成される。具体的には、炭化珪素ウェハ51が、酸素を含む雰囲気中において、例えば1300℃以上1400℃以下の温度で加熱される。これにより、第1主面1と、側面3及び底面4に接するゲート絶縁膜81が形成される。なお、ゲート絶縁膜81が熱酸化により形成された場合、厳密には、炭化珪素ウェハ51の一部がゲート絶縁膜81に取り込まれる。このため、以降の処理では、熱酸化後のゲート絶縁膜81と炭化珪素ウェハ51との間の界面に第1主面1、側面3及び底面4が若干移動したものとする。
【0065】
次に、一酸化窒素(NO)ガス雰囲気中において炭化珪素ウェハ51に対して熱処理(NOアニール)が行われてもよい。NOアニールにおいて、炭化珪素ウェハ51が、例えば1100℃以上1400℃以下の条件下で1時間程度保持される。これにより、ゲート絶縁膜81とボディ領域12との界面領域に窒素原子が導入される。その結果、界面領域における界面準位の形成が抑制されることで、チャネル移動度を向上させることができる。
【0066】
次に、工程S11において、図21に示されるように、ゲート電極82が形成される。ゲート電極82は、ゲート絶縁膜81上に形成される。ゲート電極82は、例えば減圧CVD(Low Pressure - Chemical Vapor Deposition:LP-CVD)法により形成される。ゲート電極82は、ソース領域13と、ボディ領域12と、ドリフト領域11との各々に対面するように形成される。
【0067】
次に、工程S12において、図22に示されるように、層間絶縁膜83が形成される。具体的には、ゲート電極82を覆い、かつゲート絶縁膜81と接するように層間絶縁膜83が形成される。層間絶縁膜83は、例えば、CVD法により形成される。層間絶縁膜83は、例えば二酸化珪素を含む材料から構成される。層間絶縁膜83の一部は、ゲートトレンチ5の内部に形成されてもよい。
【0068】
次に、工程S13において、図23に示されるように、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81のエッチングが行われることで、層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81にコンタクトホール90が形成される。この結果、ソース領域13及びコンタクト領域18が層間絶縁膜83及びゲート絶縁膜81から露出する。次に、第1主面1においてソース領域13及びコンタクト領域18に接するコンタクト電極61用の金属膜(図示せず)が形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばスパッタリング法により形成される。コンタクト電極61用の金属膜は、例えばNiを含む材料から構成される。次に、合金化アニールが実施される。コンタクト電極61用の金属膜が、例えば900℃以上1100℃以下の温度で5分程度保持される。これにより、コンタクト電極61用の金属膜の少なくとも一部が、炭化珪素ウェハ51が含む珪素と反応してシリサイド化する。これにより、ソース領域13及びコンタクト領域18とオーミック接合するコンタクト電極61が形成される。コンタクト電極61が、Tiと、Alと、Siとを含む材料から構成されてもよい。
【0069】
次に、工程S14において、図24に示されるように、ソース配線62が形成される。具体的には、コンタクト電極61及び層間絶縁膜83を覆うソース配線62が形成される。ソース配線62は、例えばスパッタリング法による成膜及びRIEにより形成される。ソース配線62は、例えばアルミニウムを含む材料から構成される。このようにして、コンタクト電極61とソース配線62とを有するソース電極60が形成される。
【0070】
次に、工程S15において、図25に示されるように、パッシベーション膜85が形成される。具体的には、ソース配線62を覆うパッシベーション膜85が形成される。パッシベーション膜85は、例えばポリイミドを含む材料から構成される。パッシベーション膜85は、例えば塗布法により形成される。パッシベーション膜85をプラズマCVD法により形成してもよい。
【0071】
次に、工程S16において、図13に示されるように、パッシベーション膜85の上に接着テープ96が貼り付けられる。なお、図13図16では、炭化珪素ウェハ51の第1主面1の上に形成されているパッシベーション膜85等の図示を省略してある。
【0072】
次に、工程S17において、炭化珪素ウェハ51のバックグラインドが行われる。具体的には、炭化珪素ウェハ51が第3主面55側から研削により薄化される。炭化珪素ウェハ51の研磨は、炭化珪素ウェハ51の厚さが、炭化珪素半導体装置100における第1主面1と第2主面2との間の距離L2に等しくなるまで行う。第1主面1とダイシング溝95の底面94と間の距離が第1主面1と第2主面2との間の距離L2よりも大きいため、第3主面55の研磨の結果、図7及び図14に示されるように、炭化珪素ウェハ51がチップ領域52毎に個片化される。この結果、チップ領域52毎に、第1主面1と第2主面2とを備えた炭化珪素基板10が形成される。
【0073】
次に、工程S18において、図15及び図26に示されるように、第2主面2において炭化珪素単結晶基板50に接するドレイン電極70が形成される。このようにして、各チップ領域52に炭化珪素半導体装置100が形成される。ダイシング溝95の側面3が傾斜面21となり、マーカ91の側面が面23となり、マーカ91の底面が面22となる。
【0074】
次に、工程S19において、図16に示されるように、接着テープ96が炭化珪素半導体装置100から剥離される。
【0075】
このようにして、第1実施形態に係る炭化珪素半導体装置100が完成する。
【0076】
この製造方法では、ダイシングライン53に対してハロゲンガスを含む雰囲気で熱エッチングを行ってダイシングライン53にダイシング溝95を形成し、炭化珪素ウェハ51を第3主面55側から薄化して炭化珪素ウェハ51を個片化している。このため、ダイシング溝95の側面93を第3主面55に対して傾斜した傾斜面とすることができ、この傾斜面が傾斜面21となる。従って、傾斜面21を備えた端面20を容易に形成できる。
【0077】
また、傾斜面21が熱エッチングにより形成されるため、傾斜面21及びその近傍には機械的なダメージが生じにくく、チッピング等の欠陥が生じにくい。従って、炭化珪素半導体装置100の機械的強度が高く、信頼性を向上できる。例えば、傾斜面21の表面粗さを、一辺100nmの正方形領域において算出するような微視的な範囲においてRMSで1.0nm以下としやすい。
【0078】
また、第3主面55側からの研削の進行に伴って炭化珪素ウェハ51がチップ領域52毎に個片化される。このため、バックグラインドの後にダイサー等を用いてウェハを個片化する場合と比較して、炭化珪素基板10に作用する圧力を分散でき、機械加工時の割れを低減できる。
【0079】
なお、熱エッチングは、傾斜面21が{0-33-8}面となる前に停止してもよい。つまり、傾斜面21が{0-33-8}面となっていなくてもよい。
【0080】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、主に外形の点で第1実施形態と相違する。図27は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す平面図である。
【0081】
図27に示されるように、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200では、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第2主面2が、4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有する。第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1主面1が、4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有してもよい。
【0082】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0083】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第2実施形態では、第2主面2が4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有するため、第2主面2の近傍において4隅でのチッピングをより抑制できる。更に、第1主面1が4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有すれば、第1主面1の近傍において4隅でのチッピングをより抑制できる。また、4隅における応力の集中を緩和し、応力集中に伴うクラックを抑制できる。また、トランスファモールドにより炭化珪素半導体装置100を封止する場合に、端面20の近傍から気泡をより排出させやすく、気泡の残留に伴う実装不良をより抑制しやすい。
【0084】
次に、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200の製造方法について説明する。図28図29は、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置の製造方法を示す平面図である。
【0085】
まず、第1実施形態と同様にして、炭化珪素ウェハ51の準備(工程S1)から絶縁膜92の形成(工程S4)までの処理が行われる。次いで、図28に示されるように、絶縁膜92にマーカ91の底面を部分的に露出する開口部292Xを形成する。開口部292Xの形成では、例えばフォトレジストをエッチングマスクとして用いた絶縁膜292のドライエッチングを行う。絶縁膜92から、第1主面1の一部を覆う被覆部292Yと、第1主面1の残部を露出する開口部292Xとを備えたエッチングマスク292Zが形成される。被覆部292Yは、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有する。
【0086】
次に、エッチングマスク292Zを用いて、平面視でマーカ91の内側に、ダイシング溝295が形成される。ダイシング溝295は、ダイシング溝95と同様に、エッチングマスク292Zとした、RIE及び熱エッチングにより形成できる。次に、エッチングマスク292Zが第1主面1から除去される。
【0087】
その後、第1実施形態と同様に、活性化熱処理(工程S8)から接着テープ96の剥離(工程S19)までの処理が行われる。
【0088】
このようにして、第2実施形態に係る炭化珪素半導体装置200が完成する。
【0089】
この製造方法によっても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状を有する被覆部292Yを含むエッチングマスク292Zを用いた熱エッチングを経てダイシング溝295が形成されるため、第2主面2の平面形状を、容易に4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状とすることができる。また、第1主面1の平面形状を、容易に4つの角が丸まった角丸長方形状の平面形状とすることもできる。
【0090】
なお、4隅のすべてが角丸形状となっている必要はなく、1隅だけでも角丸形状となっていれば、当該隅において上記の効果が得られる。
【0091】
[変形例]
次に、第1実施形態の変形例について説明する。変形例は、主に外形の点で第1実施形態と相違する。図30は、第1実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置に含まれる炭化珪素基板の概要を示す断面図である。
【0092】
図30に示されるように、第1実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置100Aでは、第1主面1に垂直な方向から平面視したときに、第1主面1の輪郭が第2主面2の輪郭の外側にある。傾斜面21は、第1主面1側ほど広がるように傾斜している。すなわち、傾斜面21は、第2主面2に近づくほど、第2主面2の内側に入るように傾斜している。傾斜面21と第2主面2とのなす角度θ2は、例えば50°以上65°以下である。角度θ2は、例えば55°以上であってもよい。角度θ2は、例えば60°以下であってもよい。傾斜面21は、好ましくは、{0-33-8}面を有する。
【0093】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0094】
第1実施形態の変形例に係る炭化珪素半導体装置100Aによっても、第1実施形態と同様に、端面20を経路として第1主面1と第2主面2との間を流れるリーク電流を低減でき、放熱性を向上できる。
【0095】
第2実施形態の変形例として、第1実施形態の変形例と同様に、傾斜面21が第1主面1側ほど広がるように傾斜していてもよい。
【0096】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 第1主面
2 第2主面
3 側面
4 底面
5 ゲートトレンチ
10 炭化珪素基板
11 ドリフト領域
12 ボディ領域
13 ソース領域
18 コンタクト領域
20 端面
21 傾斜面
22、23 面
40 炭化珪素エピタキシャル層
50 炭化珪素単結晶基板
51 炭化珪素ウェハ
52 チップ領域
53 ダイシングライン
55 第3主面
60 ソース電極
61 コンタクト電極
62 ソース配線
70 ドレイン電極
81 ゲート絶縁膜
82 ゲート電極
83 層間絶縁膜
84 ゲートパッド
85 パッシベーション膜
90 コンタクトホール
91 マーカ
92、292 絶縁膜
92X、292X 開口部
92Y、292Y 被覆部
92Z、292Z エッチングマスク
93 側面
94 底面
95、295 ダイシング溝
96 接着テープ
100、100A、200 炭化珪素半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30