(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182029
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】レーザクラッド加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/70 20140101AFI20231219BHJP
B23K 26/342 20140101ALI20231219BHJP
【FI】
B23K26/70
B23K26/342
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095402
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒川 大喜
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA32
4E168CB03
4E168FB03
4E168FC04
4E168JB04
(57)【要約】
【課題】バルブシートの肉盛形状や溶着率などの品質の低下を抑制することができるレーザクラッド加工方法を提供すること。
【解決手段】レーザクラッド加工方法であって、レーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方にレーザ発振器11およびノズル12と連結された受け板機構16を配置し、ノズル12から照射されるレーザの照射位置および金属粉末の供給位置の移動に合わせて受け板機構16を加工方向の前方に移動させることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザクラッド加工方法であって、
レーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方に受け板を配置し、
レーザ照射位置の移動に合わせて前記受け板を前記加工方向の前方に移動させることを特徴とするレーザクラッド加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザクラッド加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドのバルブシートに金属粉末を供給しながらレーザビームを照射し、金属粉末を溶融固化させて肉盛ビード、いわゆるクラッドを形成するレーザクラッド加工方法が開示されている(特許文献1参照)。シリンダヘッドのバルブシートは、バルブが繰り返し当接するとともに、高温に晒される。そのため、軽量化等の観点からシリンダヘッドをアルミニウムやアルミニウム合金で形成したものは、摩耗や溶損の発生を抑えるため、バルブシートにクラッドを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のレーザクラッド加工方法においては、加工時にキャリアガスで加工点に供給される金属粉末と、溶けた金属の粒、いわゆるスパッタとが加工点の周辺に飛散することがある。飛散した金属粉末やスパッタは、加工点付近を不活性化するシールドガスにより加工点の溶融池に取り込まれず加工方向の前方に押し出される。
【0005】
シールドガスにより押し出された金属粉末やスパッタのうち加工方向の前方に位置するものや、肉盛ビードが重ね合わさるオーバーラップ部分の1層目の肉盛ビードの上に位置するものが加工中の溶融池に取り込まれることがある。このような金属粉末やスパッタが溶融池に取り込まれると局所的な粉量過多となり未溶着不良が発生することがある。
【0006】
また、シールドガスにより押し出されないスパッタが加工点周辺に飛散しクラッド加工前のバルブシート溝底面および肉盛ビードがオーバーラップする範囲の1層目の肉盛ビード上に付着することがある。
【0007】
その結果、スパッタ自体や、スパッタに引っ掛かる金属粉末の溜まりや、シールドガス流の乱れによる金属粉末の供給位置の乱れなどにより、適正に加工することができず、バルブシートの肉盛形状や溶着率などの品質が低下するおそれがあるという問題がある。
【0008】
なお、シールドガスは、加工点付近を不活性化するために吐出されており、金属粉末やスパッタを除去するために流速を高め、吐出方向を変えることができないので、シールドガスにより金属粉末やスパッタを除去することができない。他方、金属粉末やスパッタを除去するために油や水を使用すると、加工時にピンホール不良が発生するおそれがある。
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、バルブシートの肉盛形状や溶着率などの品質の低下を抑制することができるレーザクラッド加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレーザクラッド加工方法は、レーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方に受け板を配置し、レーザ照射位置の移動に合わせて前記受け板を前記加工方向の前方に移動させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るレーザクラッド加工方法においては、受け板がレーザ照射位置の移動に合わせて加工方向の前方に移動するので、レーザクラッド加工の際、受け板はレーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方に位置する。加工時に加工点の前方に飛散した金属粉末やスパッタ、肉盛ビードがオーバーラップする範囲の1層目の肉盛ビード上に飛散した金属粉末やスパッタは、加工点よりも加工方向の前方に位置する受け板で受け止められて加工の際の溶融池に取り込まれることが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るレーザクラッド加工方法によれば、バルブシートの肉盛形状や溶着率などの品質の低下を抑制することができるレーザクラッド加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置の構成図。
【
図2】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置の受け板機構とバルブシートを模式的に表したバルブシートの模式図。
【
図3】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置のノズルの断面図。
【
図4】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置の図であり、
図4(a)は、バルブシートを側面から見た模式図を示し、
図4(b)は、バルブシートを前面から見た模式図を示す。
【
図5】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工方法の図で、バルブシートにクラッドを形成する方法を模式的に表したバルブシートの模式図。
【
図6】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置の図であり、
図6(a)は、受け板で金属粉末やスパッタを受け止める模式図を示し、
図6(b)は、受け板が回動する構造の受け板機構の模式図を示し、
図6(c)は、受け板がしなる構造の受け板機構の模式図を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工方法の模式図であり、
図7(a)は、加工方向における受け板の前方にスパッタが飛散した状態を示し、
図7(b)は、加工方向における受け板の前方に飛散したスパッタが脱落した状態を示す。
【
図8】本発明の実施形態に係るレーザクラッド加工装置の模式図であり、
図8(a)は、受け板と連結アームの連結部が回動する構造を示し、
図8(b)は、連結アームの中間部分が回動する構造を示し、
図8(c)は、レーザ発振器と連結アームの連結部が回動する構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係るレーザクラッド加工方法を適用した実施形態に係るレーザクラッド加工方法について図面を参照して説明する。レーザクラッド加工方法は、レーザクラッド加工装置10によって行われる。レーザクラッド加工装置10は、
図1に示すレーザ発振器11と、ノズル12と、回転機構13と、シリンダヘッド保持機構14と、供給機構15と、
図2に示す受け板機構16と、図示しない制御装置とを含んで構成されている。
【0015】
レーザクラッド加工装置10は、シリンダヘッドのバルブシートにレーザを照射しながら金属粉末を溶融固化させてバルブシートの溝に円環状にクラッドを形成するように構成されている。一般にシリンダヘッドは軽量化のためアルミニウムやアルミニウム合金で形成されているが、バルブシートへのクラッドの形成により、バルブシートの機械的強度が向上する。なお、受け板機構16は、本発明に係るレーザクラッド加工方法における受け板に対応する。
【0016】
レーザ発振器11は、レーザ光源を備え、
図1に示すように、シリンダヘッド保持機構14に保持されたシリンダヘッドを構成するバルブシートの鉛直方向の上方に配置されており、レーザ光源からレーザを出力するように構成されている。
図2に示すように、レーザ光源から出力されたレーザは、ノズル12を介してバルブシート上の加工点を照射する。
【0017】
ノズル12は、
図3に示すように、供給路形成部21を備えている。ノズル12は、供給路形成部21でレーザ発振器11に装着され、レーザ発振器11と一体化されており、レーザ発振器11とともに移動するように構成されている。供給路形成部21は、金属粉末供給路31と、シールドガス供給路32とを形成し、加工点に照射されるレーザの周囲から金属粉末を吐出する二重管構造を有している。
【0018】
レーザ発振器11から出力されたレーザは、バルブシート上の加工点を照射するように構成されている。
【0019】
シールドガス供給路32を介してシールドガスが加工点である溶融池方向に供給される。金属粉末供給路31を介して金属粉末および金属粉末を搬送するキャリアガスがバルブシート上の加工点に向けて供給される。ノズル12の金属粉末供給路31から吐出される金属粉末は、回転するレーザと同軸で吐出され、かつレーザの照射範囲よりも広い範囲に吐出される。シリンダヘッドのバルブシートに直接照射されるレーザの反射光により周囲の構成要素が破損するおそれがあるが、金属粉末がレーザの照射範囲よりも広い範囲に吐出されると、金属粉末により反射光を遮ることで構成要素の破損が防止される。
【0020】
加工点に供給された金属粉末は、レーザの照射により溶融し溶融池が形成される。ノズル12から、金属粉末の吐出およびレーザの照射を継続しながら、
図2および
図4(a)に示す加工方向にノズル12を移動させることにより、溶融池が加工方向に進行し、
図4(a)に示すバルブシート溝底および
図4(b)に示すバルブシート溝壁にクラッドが形成される。
【0021】
回転機構13は、
図1に示すように、レーザ発振器11およびノズル12を鉛直方向に傾斜して保持し、レーザ発振器11およびノズル12を矢印aで示す鉛直軸線周りに回転させるように構成されている。レーザ発振器11およびノズル12が鉛直軸線周りに回転することにより、ノズル12からの金属粉末の供給位置およびレーザの照射位置を鉛直軸線周りに移動させることができる。
【0022】
バルブシートのレーザクラッド加工は、回転機構13により
図1に示す矢印a方向にノズル12を移動させることにより行う。具体的には、ノズル12から吐出させる金属粉末の供給位置およびノズル12から照射されるレーザの照射位置を、
図5に示すように、バルブシートの鉛直軸線周りで円環状に時計回りに移動させることにより行われる。なお、照射位置の移動方向は反時計回りでもよい。
【0023】
クラッドの形成は、まず、
図5の丸印で示したスタート位置である始端部から金属粉末の供給およびレーザの照射を開始して溶融池を形成しながら行う。
図2に示すように、ノズル12を加工方向に移動させ、溶融池を形成しながら
図5の始端部を通過させ、さらに加工方向にエンド位置である終端部まで移動させる。その結果、始端部から終端部までの範囲にクラッドのオーバーラップ部が形成され、始端部から終端部以外の範囲にオーバーラップ部のない一般部が形成される。オーバーラップ部は、溶融池により形成される肉盛ビードを同じ形の同心円上に重ね合わせることで形成される。
【0024】
シリンダヘッド保持機構14は、
図1に示すように、シリンダヘッドを傾斜して保持するとともに、バルブシートの中心軸線が鉛直方向になるようにシリンダヘッドを矢印b、cの方向に二次元的に移動させるように構成されている。
【0025】
供給機構15は、
図1に示すように、フィーダ41と、粉末配管42と、シールドガス供給路43とを有しており、フィーダ41には金属粉末が貯留されている。
【0026】
粉末配管42は、
図1および
図3に示すように、ノズル12の金属粉末供給路31に接続され、シールドガス供給路43は、ノズル12のシールドガス供給路32に接続されている。供給機構15は、フィーダ41に貯留されている金属粉末をキャリアガスにより粉末配管42を通してノズル12に供給し、シールドガス供給路43を通してシールドガスをノズル12に供給するように構成されている。
【0027】
受け板機構16は、
図2に示すように、受け板51と、連結アーム52とを有しており、レーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方に配置されている。受け板機構16はクラッド加工時に飛散した金属粉末やスパッタを受け板51で受け止めて、バルブシートの溝底面への付着を防ぐ機能を有している。また、受け板機構16は、飛散した金属粉末やスパッタがオーバーラップ部の肉盛ビード1層目の先端に引っ掛かり、加工中の溶融池に取り込まれて局所的な粉量過多が生じることを防止し、クラッドのオーバーラップ部が未溶着不良となることを防止する機能を有している。
【0028】
受け板51は、連結アーム52を介して、一体化されたレーザ発振器11およびノズル12、または図示しないレーザ発振器11の取付ベースに連結されている。受け板51は、レーザ発振器11およびノズル12の回転とともに同軸で同期して回転するように構成されている。
【0029】
受け板51は、
図2および
図6(a)に示すように、表面が比較的に平坦な略方形の板材で形成されており、加工中に飛散した金属粉末やスパッタを表面で受け止めるように構成されている。受け板51は、金属材料などの高い耐熱性と耐摩耗性のある材料からなる。受け板51は、
図6(b)に示すように、クラッドの加工方向における先端部分で連結アーム52と回動可能に連結されており、連結部分を中心として持ち上がるように回動する。
【0030】
受け板51は、回動することにより、クラッド加工の加工点がバルブシートを1周し、受け板51が肉盛ビードのオーバーラップ部分に差し掛かったところで、受け板51が1層目の肉盛ビードの先端に引っ掛かることが防止される。
【0031】
受け板51は、
図7(a)に示すように、肉盛ビードの1層目上を通過する際に、先端部分または裏側部分が肉盛ビードの表面部分に当接して肉盛ビード上を摺動するように配置されている。受け板51を、肉盛ビード上を摺動するように配置すると、1層目の肉盛ビード上に付着したスパッタを、受け板51が摺動して1層目の肉盛ビードを通過する際に、
図7(b)に示すように、受け板51の先端部分または裏側部分がスパッタと接触し、スパッタを肉盛ビード上から脱落させることができる。
【0032】
受け板51は、
図4(a)に示すように、受け板51における加工方向の後端と溶融池の先端との距離が、適度に近い距離で配置されることが好ましい。この距離が近すぎると受け板51と溶融池とが接触するおそれがあり、距離が遠すぎると、飛散した金属粉末やスパッタの受け止めが不十分となるおそれがある。
【0033】
また、受け板51は、
図4(a)および
図4(b)に示すように加工方向の後端の裏側部分がバルブシート溝の底面および壁面に当接するか最小限の隙間となっていることが好ましい。この隙間が大きいと、飛散した金属粉末やスパッタが受け板51の裏側部分に侵入するおそれがあり効果的に表面で受け止めることができないおそれがある。なお、隙間が生じても一定程度、飛散した金属粉末やスパッタを受け止めることができるので、当接することは必須の条件ではない。
【0034】
また、加工方向に直交する受け板51の幅は、肉盛ビードの幅よりも広いことが好ましいが、肉盛ビードの幅よりも狭い場合でも一定程度の効果が得られるので、幅は、肉盛ビードの幅よりも狭くてもよい。また、受け板51の裏側部分の形状は、肉盛ビードの1層目の表面に対してなるべく広い面積で接触する形状であることが好ましい。例えば、肉盛ビードの表面形状と同様の形状であることが好ましい。
【0035】
受け板51は、クラッドの加工方向における先端部分で連結アーム52と回動可能に連結されているが、回動可能な連結以外の連結方法により連結されていてもよい。例えば、
図6(c)に示すように、受け板51が、連結アーム52の受け板連結部52cで回動不能に固定された構造であってもよい。この構造の場合、受け板51が柔軟性のある材料で形成され、受け板51が1層目の肉盛ビードを通過する際に、しなるようにしてもよい。また、受け板51および連結アーム52の全体もしくは一部を柔軟性のある材料で形成し、受け板51および連結アーム52の全体もしくは一部がしなるようにしてもよい。
【0036】
連結アーム52は、高い剛性を有する材料で形成さており、受け板51および連結アーム52が、レーザ発振器11およびノズル12の回転とともに同軸で同期して回転するように構成されている。連結アーム52は、受け板51と連結される受け板連結部52aと、レーザ発振器11と連結されるレーザ発振器連結部52bとを有している。
【0037】
連結アーム52は、
図6(b)および
図8(a)に示すように、受け板連結部52aが回動する構造で構成されているが、これ以外の構造で構成されていてもよい。例えば、
図8(b)に示すように、受け板連結部52aおよびレーザ発振器連結部52bが回動不能に固定され、受け板連結部52aおよびレーザ発振器連結部52bの中間に位置する中間連結部52dが回動可能に構成されていてもよい。また、
図8(c)に示すように、レーザ発振器連結部52bのみが回動可能に連結された構造で構成してもよい。さらに、回動可能な連結部は複数個所に設けられていてもよい。
【0038】
制御装置は、例えば、演算処理を行う中央処理装置および制御プログラムを格納したメモリを備えている。制御装置は、レーザ発振器11、回転機構13、シリンダヘッド保持機構14、供給機構15と接続されており、レーザ発振器11からのレーザの出力、回転機構13の回転速度、シリンダヘッド保持機構14の移動、供給機構15の金属粉末、シールドガスやキャリアガスの供給など各構成要素の動作や処理を行うように構成されている。
【0039】
実施形態に係るレーザクラッド加工方法の効果について説明する。
実施形態に係るレーザクラッド加工方法は、レーザクラッド加工装置10により加工し、レーザクラッド加工装置10は、レーザクラッド加工の加工点よりも加工方向の前方に配置された受け板51を備え、レーザ照射位置の移動に合わせて受け板51が加工方向の前方に移動するように構成されている。
【0040】
この構成により、実施形態に係るレーザクラッド加工方法においては、受け板51がレーザ照射位置の移動にとともに加工方向の前方に移動するので、バルブシートへのレーザクラッド加工の際、受け板51はレーザクラッド加工の加工点よりも常に加工方向の前方に位置する。その結果、加工時に加工点の前方に飛散した金属粉末やスパッタ、肉盛ビードがオーバーラップする範囲の1層目の肉盛ビード上に飛散した金属粉末やスパッタは、加工点よりも加工方向の前方に位置する受け板51で受け止められて加工の際の溶融池に取り込まれることが防止されるという効果が得られる。
【0041】
その結果、従来の問題点が解消される。即ち、シールドガスがノズル12のセンターから供給される場合、加工の際に飛散した金属粉末やスパッタなどの軽い異物は、加工点付近を不活性化するシールドガスにより加工点の溶融池に取り込まれず加工方向の前方に押し出される。そして、シールドガスにより押し出された金属粉末やスパッタのうち加工方向の前方に位置するものや、肉盛ビードが重ね合わさるオーバーラップ部分の1層目の肉盛ビードの上に位置するものが加工中の溶融池に取り込まれると局所的な粉量過多となり未溶着不良が発生することがあるという問題が解消されるという効果が得られる。
【0042】
また、加工点周辺に飛散しクラッド加工前のバルブシート溝底面および肉盛ビードがオーバーラップする範囲の1層目の肉盛ビード上に付着したスパッタを、受け板51先端部や裏面部分で接触することにより肉盛ビード上から脱落させることができるという効果が得られる。
【0043】
また、実施形態に係るレーザクラッド加工装置10においては、受け板機構16が、レーザ発振器11およびノズル12の回転とともに同軸で同期して回転するように構成されているので、同軸で加工点と同期する動作を、現行の回転機構などのレーザクラッド加工装置の構成を大幅に変更することなく実現することができる。即ち、新たに動力を発生させる動力機構や、回転機構の回転と同期させる同期機構などの付加機構を設ける必要がなく同軸で加工点と同期する動作をさせることができるという効果が得られる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0045】
10・・・レーザクラッド加工装置、11・・・レーザ発振器、12・・・ノズル、13・・・回転機構、14・・・シリンダヘッド保持機構、15・・・供給機構、16・・・受け板機構(受け板)、21・・・供給路形成部、31・・・金属粉末供給路、32・・・シールドガス供給路、41・・・フィーダ、42・・・粉末配管、43・・・シールドガス供給路、51・・・受け板、52・・・連結アーム、52a、52c・・・受け板連結部、52b・・・レーザ発振器連結部、52d・・・中間連結部