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特開2023-182032施工図投影システム、施工図投影方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182032
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】施工図投影システム、施工図投影方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/74 20060101AFI20231219BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231219BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H04N5/74 D
G09G5/00 510B
G09G5/00 X
G09G5/00 550C
G09G5/00 550H
G03B21/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095405
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】竹内 圭二
【テーマコード(参考)】
2K203
5C058
5C182
【Fターム(参考)】
2K203FA76
2K203GB35
2K203KA29
2K203KA56
2K203MA23
5C058BA27
5C058EA02
5C182AA04
5C182AB02
5C182AC03
5C182BA14
5C182BC22
5C182BC25
5C182BC26
5C182CA21
5C182CC24
5C182DA70
(57)【要約】
【課題】建設現場において、施工図の映像を、より高い精度で表示させる。
【解決手段】施工図投影システム1は、データ記憶部に記憶されたテストパターンTのデータに基づいて投影面Fに投影されたテストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する撮影装置3と、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する検出部と、位置ずれ補正量に基づき、データ取得部で取得された施工図のデータを補正するデータ補正部と、を備え、投影装置5は、データ補正部で補正された施工図のデータに基づき、施工図の映像を投影面Fに投影して表示させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影面に投影すべきテストパターンのデータが記憶されたデータ記憶部と、
前記投影面に投影すべき施工図のデータを取得するデータ取得部と、
入力されるデータに基づく映像を前記投影面に投影する投影装置と、
前記データ記憶部に記憶された前記テストパターンのデータに基づいて、前記投影装置により前記投影面に投影された前記テストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する撮影装置と、
複数枚の前記画像の各々における前記テストパターンの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する検出部と、
前記位置ずれ補正量に基づき、前記データ取得部で取得された前記施工図のデータを補正するデータ補正部と、を備え、
前記投影装置は、補正された前記施工図のデータに基づき、前記施工図の映像を前記投影面に投影して表示させる
施工図投影システム。
【請求項2】
投影面にテストパターンを投影する工程と、
前記投影面に投影された前記テストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する工程と、
複数枚の前記画像の各々における前記テストパターンの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する工程と、
前記位置ずれ補正量に基づき、施工図のデータを補正する工程と、
補正された前記施工図のデータに基づき、前記施工図の映像を前記投影面に投影して表示させる工程と、を含む
施工図投影方法。
【請求項3】
前記位置ずれ補正量が、定められた閾値以下であるか否かを判定する工程をさらに含み、
前記位置ずれ補正量が、前記閾値より大きい場合、前記位置ずれ補正量に基づいて前記テストパターンを補正し、補正された前記テストパターンを投影する工程、前記画像を取得する工程、及び前記位置ずれ補正量を算出する工程を繰り返し、
前記位置ずれ補正量が、前記閾値以下であった場合、前記施工図のデータを補正する工程を実行する
請求項2に記載の施工図投影方法。
【請求項4】
前記閾値は、2mmである
請求項3に記載の施工図投影方法。
【請求項5】
前記投影面に、前記投影面に沿った面内で互いに直交する第一方向、及び第二方向に延びる基準線を表示する工程と、
前記第一方向、及び前記第二方向の各々における寸法の基準となる基準尺を、前記第一方向、及び前記第二方向の各々に沿って配置する工程と、を備え、
前記テストパターンを投影する工程では、
前記投影面に投影する前記テストパターンを、前記第一方向、及び前記第二方向に延びる基準線を基準として位置合わせするとともに、
前記テストパターンの大きさを、前記基準尺に基づいて調整する
請求項2又は3に記載の施工図投影方法。
【請求項6】
前記投影面上に表示された前記映像に基づいて、墨出し作業を行う工程、をさらに含む
請求項2又は3に記載の施工図投影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工図投影システム、施工図投影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場においては、様々な工程で墨出し作業が行われている。墨出し作業は、施工図に基づいて、建設現場で様々な部材の位置や加工を施すべき位置を示すために行われる。墨出し作業の効率化を図るため、建設現場で、施工図の映像を、施工中の構造物に実寸で投影することが検討されている。これにより、施工図の映像を構造物に実寸で投影した状態で、投影された施工図上の線に沿って、墨出し作業をダイレクトに行うことができる。
例えば特許文献1には、空間内に設置され、その空間の設計データの少なくとも一部を構造物に実寸で投影する投影装置についての構成が開示されている。
しかしながら、設計データに基づく施工図の映像を実寸で投影する構造物の表面は、平滑面であるとは限らない。例えば、構造物のコンクリート製の床の表面には、上下方向に数mmの不陸があることが多い。このように凹凸がある構造物の床の表面に施工図情報を実寸で投影すると、施工図上の線が、凹凸に倣って歪んだ状態で表示され、墨出し作業を正確に行うことが困難となってしまう。
【0003】
プロジェクションマッピングと称される、投影面に画映像や映像を投影する技術においては、複数のプロジェクタから投影した複数の画像や映像のつなぎ目を合わせる目的、傾斜した面に投影した画像や映像(の輪郭)を補正する目的で、様々な補正技術が開発されている。
例えば特許文献2には、投影面にテスト画像を投影し、投影面の3次元形状を測定し、計測された3次元形状データに基づいて、ユーザーの視点から見たときに、幾何学的な画像歪みが低減された状態とするように、テスト画像に対して補正処理、回転処理等を実行する投影システムについての構成が開示されている。
特許文献2に開示されたような投影システムでは、左眼視点と右眼視点とを含む平面に対して傾斜した平面を投影面とし、ユーザーの視点から見たときに幾何学的な画像歪みが低減された状態となるように画像を投影するものである。したがって、このような構成の技術を適用したとしても、凹凸のある構造物の表面に施工図の映像を照射した場合に、凹凸による施工図の映像の歪みを解消することはできない。
また、特許文献1、2に開示されるような構成において、施工図の映像を投影しようとすると、投影される映像には、投影装置の光学系の歪みや誤差が含まれる。建設現場においては、墨出し作業を、例えば誤差2mm以内といった高い精度で実施することが望まれる。このため、施工図を、より高い精度で投影することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-96243号公報
【特許文献2】特開2017-130732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、建設現場において、施工図の映像を、より高い精度で表示させることが可能な、施工図投影システム、施工図投影方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
すなわち、本発明の施工図投影システムは、投影面に投影すべきテストパターンのデータが記憶されたデータ記憶部と、前記投影面に投影すべき施工図のデータを取得するデータ取得部と、入力されるデータに基づく映像を前記投影面に投影する投影装置と、前記データ記憶部に記憶された前記テストパターンのデータに基づいて、前記投影装置により前記投影面に投影された前記テストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する撮影装置と、複数枚の前記画像の各々における前記テストパターンの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する検出部と、前記位置ずれ補正量に基づき、前記データ取得部で取得された前記施工図のデータを補正するデータ補正部と、を備え、前記投影装置は、補正された前記施工図のデータに基づき、前記施工図の映像を前記投影面に投影して表示させることを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、投影面に投影されたテストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影し、複数枚の画像を取得する。投影装置で投影面に投影するテストパターンには、投影装置の光学系の歪みや、投影面の不陸の影響が含まれている。一方、撮影装置の光学系で撮影する画像には、撮影装置の光学系の歪みの影響が含まれている。これにより、複数の位置で、撮影装置によってテストパターンを撮影すると、撮影される画像の各々は、投影装置の光学系の歪みや投影面の不陸の影響と、それぞれの位置における撮影装置の光学系の歪みの影響とが含まれる。これらの影響により、複数の画像間で、テストパターンの各部の位置に差異が生じることになる。
これら複数枚の画像の各々におけるテストパターンの位置ずれ量に基づいて、位置ずれ補正量を算出することにより、テストパターン全域における補正精度を高めることができる。これにより、精度が高められた位置ずれ補正量によって施工図のデータを補正したうえで、施工図の映像を前記投影面に投影して表示させることで、投影面上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。
【0008】
本発明の施工図投影方法は、投影面にテストパターンを投影する工程と、前記投影面に投影された前記テストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する工程と、複数枚の前記画像の各々における前記テストパターンの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する工程と、前記位置ずれ補正量に基づき、施工図のデータを補正する工程と、補正された前記施工図のデータに基づき、前記施工図の映像を前記投影面に投影して表示させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、投影面に投影されたテストパターンを、互いに異なる複数の位置から撮影し、複数枚の画像を取得する。投影装置で投影面に投影するテストパターンには、投影装置の光学系の歪みや、投影面の不陸の影響が含まれている。一方、撮影装置の光学系で撮影する画像には、撮影装置の光学系の歪みの影響が含まれている。これにより、複数の位置で、撮影装置によってテストパターンを撮影すると、撮影される画像の各々は、投影装置の光学系の歪みや投影面の不陸の影響と、それぞれの位置における撮影装置の光学系の歪みの影響とが含まれ、複数の画像間で、テストパターンの各部の位置に差異が生じることになる。
これら複数枚の画像の各々におけるテストパターンの位置ずれ量に基づいて、位置ずれ補正量を算出することにより、テストパターン全域における補正精度を高めることができる。これにより、精度が高められた位置ずれ補正量によって施工図のデータを補正したうえで、施工図の映像を前記投影面に投影して表示させることで、投影面上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。
【0010】
本発明の一態様においては、本発明の施工図投影方法は、前記位置ずれ補正量が、定められた閾値以下であるか否かを判定する工程をさらに含み、前記位置ずれ補正量が、前記閾値より大きい場合、前記位置ずれ補正量に基づいて前記テストパターンを補正し、補正された前記テストパターンを投影する工程、前記画像を取得する工程、及び前記位置ずれ補正量を算出する工程を繰り返し、前記位置ずれ補正量が、前記閾値以下であった場合、前記施工図のデータを補正する工程を実行する。
【0011】
このような構成によれば、投影面に投影されたテストパターンの位置ずれ量が、閾値以下となるまで、テストパターンを異なる位置から撮影した複数枚の画像に基づいて、位置ずれ補正量を算出し、テストパターンを補正することを繰り返す。これにより、テストパターンによる補正精度をより一層高めることができ、投影面上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。
【0012】
本発明の一態様においては、本発明の施工図投影方法は、前記閾値は、2mmである。
【0013】
このような構成によれば、位置ずれ補正量が2mm以下となるようにすることによって、投影面上に表示される施工図の映像を、2mm以下の高い精度で表示させることができる。
【0014】
本発明の一態様においては、本発明の施工図投影方法は、前記投影面に、前記投影面に沿った面内で互いに直交する第一方向、及び第二方向に延びる基準線を表示する工程と、前記第一方向、及び前記第二方向の各々における寸法の基準となる基準尺を、前記第一方向、及び前記第二方向の各々に沿って配置する工程と、を備え、前記テストパターンを投影する工程では、前記投影面に投影する前記テストパターンを、前記第一方向、及び前記第二方向に延びる基準線を基準として位置合わせするとともに、前記テストパターンの大きさを、前記基準尺に基づいて調整する。
【0015】
このような構成によれば、テストパターンを第一方向、及び第二方向に延びる基準線を基準として位置合わせすることで、投影面上に表示される施工図の向きを合わせることができる。さらに、テストパターンの大きさを、前記基準尺に基づいて調整することで、投影面上に、テストパターン、及び施工図の全体を、原寸通りに合わせて投影することができる。
【0016】
本発明の一態様においては、本発明の施工図投影方法は、前記投影面上に表示された前記映像に基づいて、墨出し作業を行う工程、をさらに含む。
【0017】
このような構成によれば、投影装置の光学系の歪みや床面の不陸を踏まえて補正された施工図の映像を投影面上に表示することで、墨出し作業を正確に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建設現場において、施工図の映像を、より高い精度で表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る施工図投影システムで施工図を投影するときの構成を示す図である。
図2】上記施工図投影システムでテストパターンを投影するときの構成を示す図である。
図3】上記施工図投影システムでテストパターンを撮影する撮影装置の構成を示す平面図である。
図4】上記撮影装置の構成を示す側面図である。
図5】上記施工図投影システムの機能構成を示すブロック図である。
図6】本実施形態における施工図投影方法の流れを示すフローチャートである。
図7】上記施工図投影方法における、基準線を表示する工程、及び基準尺を配置する工程を示す図である。
図8】上記施工図投影方法においてテストパターンを撮影した画像における、単位パターンの位置ずれの例を示す図である。
図9】本実施形態の変形例における施工図投影方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明による施工図投影システム、施工図投影方法を実施するための形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る施工図投影システムで施工図を投影するときの構成を示す図である。図2は、上記施工図投影システムでテストパターンを投影するときの構成を示す図である。
図1図2に示すように、施工図投影システム1は、システム本体2と、撮影装置3と、投影装置5と、を主に備えている。図1に示すように、施工図投影システム1は、建築現場で用いられるもので、建築現場で施工される建築構造物の床等の投影面Fに、当該建築構造物の施工図に基づく映像Mを実寸大で投影して表示させる。図2に示すように、施工図投影システム1では、施工図の映像Mを投影するに先立ち、投影面FにテストパターンTを投影して表示させる。施工図投影システム1は、投影面Fに表示されたテストパターンTの位置ずれ量を検出する。施工図投影システム1は、検出された位置ずれ量に基づいて施工図のデータを補正し、補正された施工図の映像Mを、投影面Fに投影して表示させる。
【0021】
投影装置5は、システム本体2から出力されるデータに基づく映像を、投影面Fに投影する。図2に示すように、投影装置5は、システム本体2から出力されるデータに基づき、テストパターンTを投影面Fに投影する。また、図1に示すように、投影装置5は、システム本体2から出力されるデータに基づき、施工図の映像Mを投影面Fに投影する。
投影装置5は、例えば2軸のセンサ(図示無し)が備えられている。投影装置5は、センサで振動やわずかな変位を感知すると、その姿勢を制御する。
投影装置5は、例えば、投影面F上の投影範囲Aに、テストパターンT、施工図の映像Mを投影する。投影範囲Aは、投影面Fに沿った第一方向D1における長さが10m、投影面Fに沿った面内で第一方向D1に直交する第二方向D2における長さが7mといった大きさに設定される。
投影装置5は、投影面F上において、テストパターンT、及び施工図の映像Mが投影される投影範囲Aの外部に配置される。投影装置5は、投影面F上で、投影範囲Aの外側に配置される。投影装置5は、投影面F上に設置された基台51上に支持されている。投影装置5は、斜め上方から投影面Fに向かって映像を投影する。このような投影装置5としては、例えば、市販のプロジェクタを用いることができる。
【0022】
図3は、上記施工図投影システムでテストパターンを撮影する撮影装置の構成を示す平面図である。図4は、上記撮影装置の構成を示す側面図である。
図3図4に示すように、撮影装置3は、投影面Fに投影されたテストパターンTを撮影するカメラである。撮影装置3は、投影装置5で投影する映像のピクセル数(解像度)と同等以上のピクセル数を有しているのが好ましい。
撮影装置3は、テストパターンTが投影される投影面F上の投影範囲Aを、上方から撮影する。このため、撮影装置3は、投影面F上で、投影範囲Aの外側に配置されるスタンド31によって支持されている。スタンド31は、投影範囲Aの外側で、投影面F上に設置されたスタンド脚32と、スタンド脚32から上方に延びる支柱33と、支柱33に対してブラケット35を介して支持されたアーム34と、を備えている。ブラケット35は、上下方向に延びる筒状で、その内側に支柱33が挿入されている。ブラケット35は、支柱33に沿って上下方向に移動可能に設けられている。ブラケット35は、支柱33に対し、投影面Fと平行な水平面内で回動可能に設けられている。これにより、アーム34は、支柱33周りに水平面内で旋回可能に設けられている。撮影装置3は、アーム34の先端に支持されている。
このような撮影装置3では、アーム34を支柱33周りに回動させることで、投影面F上に投影されるテストパターンTを、互いに異なる複数の位置で撮影できる。また、撮影装置3は、スタンド脚32の位置を、投影面F上で複数個所に移動させることで、投影面F上に投影されるテストパターンTを、さらに多くの位置で撮影できる。このようにして、撮影装置3は、投影範囲Aの上方で、互いに異なる複数の位置からテストパターンTを撮影することで、複数枚のテストパターンTの画像を取得する。
【0023】
図5は、上記施工図投影システムの機能構成を示すブロック図である。システム本体2は、パーソナルコンピュータ等のコンピュータ装置からなる。システム本体2は、予め設定されたコンピュータプログラムに基づいた処理をコンピュータ装置が実行することで、以下に示すような構成を機能的に備えている。図5に示すように、システム本体2は、データ記憶部21と、データ取得部22と、検出部23と、データ補正部25と、データ出力部26と、を機能的に備えている。
【0024】
データ記憶部21は、投影面Fに投影すべきテストパターンTのデータが記憶されている。テストパターンTは、撮影装置3で投影面F上に投影したテストパターンTを撮影することで得られる画像を、画像処理によって処理した場合、投影面F上の複数の点の位置(位置座標)を認識できるように形成されている。テストパターンTは、いかなる構成のものであってもよいが、本実施形態において、テストパターンTは、図2に示されるように、例えば、全体として長方形状で、投影面Fに沿った第一方向D1と、投影面Fに沿った面内で第一方向D1に直交する第二方向D2とに、それぞれ、矩形状(正方形状)の単位パターンTpを複数配列されて形成されている。このようなテストパターンTは、いわゆる市松模様状(チェッカーフラッグ状)のパターンを形成している。テストパターンTは、第一方向D1に延びる線と第二方向D2に延びる線とによる格子状の線であってもよいが、第一方向D1、第二方向D2のそれぞれにおいて、互いに隣り合う単位パターンTp同士の境界部分が、画像処理によって容易に認識できるよう、コントラストが異なる色によって着色されているのが好ましい。
【0025】
図5に示されるように、データ記憶部21は、システム本体2で所定の処理を行うに際して必要な各種のデータを記憶する。例えば、データ記憶部21は、撮影装置3で撮影した複数枚の画像のデータを記憶する。また、データ記憶部21は、後述するデータ取得部22で取得される施工図のデータを記憶する。
なお、データ記憶部21において、テストパターンTのデータを記憶する機能は、投影装置5に備えられていてもよい。
【0026】
データ取得部22は、外部のデータサーバ等から、インターネット、公衆電話通信網等の通信ネットワークを用いたデータ通信、又は可搬性を有したメモリを介して、建築構造物の施工図の図面データを取得する。データ取得部22は、外部から取得した施工図の図面データをデータ記憶部21に一時的に記憶させる。
また、データ取得部22は、撮影装置3で撮影した画像のデータを、撮影装置3から、LANケーブル等の通信ケーブル、Wi-Fi、ブルートゥース(登録商標)等の通信ネットワークを介して取得する。
【0027】
検出部23は、撮影装置3で撮影した複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量を検出する。検出部23は、撮影装置3で撮影した複数枚の画像を画像処理することで、テストパターンTの複数の点の位置ずれ量を検出する。本実施形態では、検出部23は、例えば、画像処理により、矩形状の単位パターンTpの角部Tcの位置の位置ずれ量を検出する。検出部23は、検出された複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量に基づき、施工図のデータを補正する際に用いる、位置ずれ補正量を算出する。
【0028】
データ補正部25は、検出されたテストパターンTの位置ずれ量に基づき、投影装置5で投影する施工図の映像のデータを補正し、補正図面データを生成する。データ補正部25は、生成した補正図面データを、データ記憶部21に記憶させる。
データ出力部26は、データ記憶部21に記憶されたテストパターンTのデータを、投影装置5に出力する。データ出力部26は、データ記憶部21に記憶された補正図面データを投影装置5に出力する。
【0029】
次に、上記したような施工図投影システム1を用いた施工図投影方法について説明する。
図6は、本実施形態における施工図投影方法の流れを示すフローチャートである。
この図6に示すように、本実施形態における施工図投影方法は、基準線を表示する工程S11と、基準尺を配置する工程S12と、テストパターンTを投影する工程S13と、画像を取得する工程S14と、位置ずれ補正量を算出する工程S15と、施工図のデータを補正する工程S17と、施工図の映像を投影面Fに投影する工程S18と、墨出し作業を行う工程S20と、を含んでいる。
【0030】
図7は、上記施工図投影方法における、基準線を表示する工程、及び基準尺を配置する工程を示す図である。
基準線を表示する工程S11では、図7に示されるように、第一方向D1に延びる基準線L1と、第一方向D1に直交する第二方向D2に延びる基準線L2とを、投影面Fに表示する。基準線L1と基準線L2との交点Lcは、施工図の映像を投影すべき投影範囲Aに予め設定された基準位置とする。基準線L1、基準線L2を投影面Fに表示するには、例えばレーザー墨出し器50を用いることができる。レーザー墨出し器50は、四方に向かって、例えば緑色のレーザー光(いわゆるグリーンレーザー)を照射する。このようなレーザー墨出し器50を基準線L1と基準線L2との交点Lcに置き、投影面Fに沿った面内で、基準線L1と基準線L2に合わせてレーザー光を照射することで、投影面F上に基準線L1、L2が表示される。
なお、現場での工程の関係上、投影面Fとなる床面に、通り芯、返り芯等を示す墨出し線が既に描かれている場合、その墨出し線を、基準線L1、L2とすることもできる。
【0031】
基準尺を配置する工程S12では、第一方向D1、及び第二方向D2の各々に沿って、基準尺60A、60Bを配置する。基準尺60A、60Bの各々は、実際の長さ寸法の基準となるもので、標準尺、基準スケール等と称されることもある。基準尺60Aは、第一方向D1における長さ寸法の基準を示すよう、例えば基準線L1に沿って配置する。基準尺60Bは、第二方向D2における長さ寸法の基準を示すよう、例えば基準線L2に沿って配置する。
【0032】
テストパターンTを投影する工程S13では、図2に示すように、投影装置5により、投影面Fの投影範囲Aに、テストパターンTを投影する。これには、システム本体2により、データ記憶部21に記憶されたテストパターンTのデータを、投影装置5に出力する。投影装置5では、基準線L1と基準線L2との交点Lcを基準とし、全体として矩形状をなすテストパターンTの長辺方向が第一方向D1(基準線L1)に沿い、テストパターンTの短辺方向が第二方向D2(基準線L2)に沿うように、テストパターンTを投影面Fに投影する。
投影装置5から投影面Fに投影されるテストパターンTには、投影装置5の光学系による歪み、投影面Fの不陸等が影響する。このため、テストパターンTの各部(例えば、矩形状の単位パターンTpの角部Tc)の、投影面F上における位置には、位置ずれが生じている。
【0033】
画像を取得する工程S14では、図3図4に示すように、投影面Fに投影されたテストパターンTを、撮影装置3により、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する。本実施形態では、撮影装置3により、投影面F上に投影されたテストパターンTを、テストパターンTの上方から撮影する。撮影装置3は、投影範囲Aの外側にスタンド31を配置した状態で、アーム34を支柱33周りに回動させることで、上方から見て、支柱33周りの周方向の複数位置に撮影装置3(カメラ)を順次移動させ、それぞれの位置で、テストパターンTの撮影を行う。なお、テストパターンTの大きさ、投影面F上にスタンド31を配置するのに障害となる柱や壁等の存在等により、スタンド31を投影範囲Aの外側で、複数の位置に移動させ、それぞれの位置でテストパターンTの撮影を行ってもよい。
また、テストパターンTを複数の位置で撮影するため、撮影装置3を、投影面Fと平行な面内で移動させるための機構については、上記のようにアーム34を支柱33周りに回動させる構成に限らず、適宜他の構成を採用してもよい。
【0034】
画像を取得する工程S14では、このようにして、互いに異なる複数の位置からテストパターンTを撮影することで、複数枚のテストパターンTの画像を取得する。取得される複数枚の画像には、撮影装置3の光学系の歪みの影響が含まれている。撮影装置3の光学系では、その光学中心に対し、外周側において、光学系の歪みの影響が大きくなる。このため、異なる複数の位置に撮影装置3を移動させて撮影を行うと、それぞれの位置で撮影されるテストパターンTの画像では、それぞれの位置における撮影装置3の光学系の光学中心付近を通して撮影する領域の像と、光学系の外周部を通して撮影される領域の像とでは、光学系の歪みの影響が異なる。特に、撮影装置3で、テストパターンTのより広い範囲を撮影するため、光学系に魚眼レンズを用いると、光学系の光学中心に対し、外周部における像の歪みが大きくなる。
このため、複数の位置で、撮影装置3によってテストパターンTを撮影すると、撮影される画像の各々は、投影装置5の光学系の歪みや投影面Fの不陸の影響に加えて、それぞれの位置における撮影装置3の光学系の歪みの影響が含まれる。その結果、工程S14で取得される複数の画像間で、テストパターンTの各部の位置に差異が生じることになる。
【0035】
位置ずれ補正量を算出する工程S15では、検出部23により、複数枚の画像を正斜変換してオルソ画像を得る。また、正斜変換以外でも、撮影装置3、投影装置5に係る光学系のパラメータで予め既知のものがあれば、このとき画像を補正変換してもよい。検出部23は、変換された複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量を検出する。検出部23では、撮影装置3で撮影された画像の各々を画像処理することで、テストパターンTにおける複数の点の位置ずれ量を検出する。本実施形態では、検出部23は、例えば、画像処理により、矩形状の単位パターンTpの角部Tcの位置の位置ずれ量を検出する。
【0036】
これには、まず、検出部23では、工程S14で取得される画像の各々に、テストパターンTとともに写っている、基準線L1、L2と、基準尺60A、60Bとを画像処理により認識する。検出部23では、基準線L1と基準線L2との交点Lcを認識することで、画像におけるテストパターンTの基準位置を認識する。
次いで、検出部23では、画像上における基準尺60A、60Bで表示される基準寸法の長さと、実際の基準尺60A、60Bで表示される基準寸法の長さ(既知)とに基づき、画像上に表示されたテストパターンTの倍率を取得する。
次いで、検出部23では、撮影された画像中におけるテストパターンTについて、第一方向D1における長さをS1、第二方向D2における実際の長さをS2とした場合、テストパターンTの外周部の長さと、テストパターンTの縦横比(S1/S2)を、テストパターンTのデータ通りの長さ、縦横比に合わせる。
【0037】
図8は、テストパターンを撮影した画像における、単位パターンの位置ずれの例を示す図である。
次いで、検出部23では、画像処理により、テストパターンTの各単位パターンTpの各角部Tcの画像上における位置を認識する。ここで、図8に示されるように、画像上における基準線L1と基準線L2との交点Lcを原点(0、0)とした場合、各角部Tcの画像上における位置は、原点(0、0)からの第一方向D1における距離X、第二方向D2における距離Yを画像処理によって認識(推定)することで、座標(X、Y)によって表すことができる。例えば、テストパターンTの各単位パターンTpの四つの角部Tca~Tcdのうち、最も交点Lcに近い角部Tcaを座標(Xa、Ya)、角部Tcaに対して第一方向D1で隣り合う角部Tcbを座標(Xb、Yb)、角部Tcaに対して第二方向D2で隣り合う角部Tccを座標(Xc、Yc)、角部Tcaに対して対角状に位置する角部Tcdを座標(Xd、Yd)として、各位置を認識する。
一方、各単位パターンTpの第一方向D1における辺の長さPs1、第二方向D2における辺の長さPs2が、データに基づいて既知である。このため、各単位パターンTpの四つの角部Tca~Tcdのデータ通りの正しい位置は、原点(0、0)と、各単位パターンTpの第一方向D1における辺の長さPs1、第二方向D2における辺の長さPs2とに基づいて定まる。
これにより、複数枚の画像の各々において、撮影されたテストパターンTの複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)の位置ずれ量を算出することができる。
【0038】
位置ずれ補正量を算出する工程S15では、工程S14において複数の位置で撮影されたテストパターンTの画像の各々において、テストパターンTの複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)の位置ずれ量を算出する。
ここで、この工程S15は、工程S14で、複数の位置におけるテストパターンTの撮影を行い、複数枚の画像を取得した後に行ってもよいが、工程S14で、1つの位置でテストパターンTの撮影を1枚行う毎に工程S15に移行してもよい。この場合、工程S14と、工程S15とを、テストパターンTを撮影する位置の数だけ、繰り返し実行する。
【0039】
位置ずれ補正量を算出する工程S15では、さらに、上記のようにして検出された、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量に基づき、位置ずれ補正量を算出する。この工程S15では、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTにおける、複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)の位置ずれ量を、例えば平均化することで、位置ずれ補正量を算出する。なお、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量に基づく、位置ずれ補正量の算出は、平均化以外の統計的な処理によって行うようにしてもよい。また、位置ずれ補正量の算出は、複数枚の画像における撮影装置3の撮像中心からの距離によって、平均化の重み付けを行ってもよいし、撮影装置3の撮像中心から定められた範囲のみを、位置ずれ補正量の算出に使用しても良い。ここで撮影装置3の撮影中心とは、撮影された画像において、テストパターンTを撮影したときの画像上の撮影装置3の位置をいう。
【0040】
施工図のデータを補正する工程S17では、データ補正部25により、投影装置5で投影する施工図の映像のデータを補正し、補正図面データを生成する。これには、データ取得部22により、データ記憶部21に記憶された施工図のデータを取得する。データ補正部25は、工程S15で算出された位置ずれ補正量に基づき、データ取得部22で取得された施工図のデータを補正する。具体的には、施工図上の各部の位置を、位置ずれ補正量に基づいて補正する。施工図のデータの補正は、施工図のデータのピクセル毎に行うのが好ましい。本実施形態では、位置ずれ補正量は、テストパターンTの複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)における、位置ずれ量の平均値である。データ補正部25では、施工図上において、テストパターンTの複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)と対応する位置のピクセルについては、位置ずれ補正量に応じた補正を行う。データ補正部25では、施工図上において、テストパターンTの複数の点(複数の単位パターンTpの角部Tcの位置)からずれた位置のピクセルについては、そのピクセルの周囲のテストパターンTの複数の点における位置ずれ補正量を、適宜手法で補間して補正を行うようにしてもよい。
【0041】
施工図の映像を投影面Fに投影して表示させる工程S18では、図1に示すように、工程S17で生成した補正図面データに基づく施工図の映像Mを、データ出力部26により、投影装置5で出力させる。
これにより、補正された施工図のデータに基づいた、施工図の映像Mが、投影面Fに投影して表示される。これにより、投影装置5の光学系の歪み、投影面Fの不陸等があっても、補正図面の映像Mは、施工図に基づいた正しい位置に表示される。
【0042】
墨出し作業を行う工程S20では、投影面F上に表示された映像Mに基づいて、作業員が墨出し作業を行う。
【0043】
上述したような施工図投影システム1は、投影面Fに投影すべきテストパターンTのデータが記憶されたデータ記憶部21と、投影面Fに投影すべき施工図のデータを取得するデータ取得部22と、入力されるデータに基づく映像を投影面Fに投影する投影装置5と、データ記憶部21に記憶されたテストパターンTのデータに基づいて、投影装置5によって投影面Fに投影されたテストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する撮影装置3と、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する検出部23と、位置ずれ補正量に基づき、データ取得部22で取得された施工図のデータを補正するデータ補正部25と、を備え、投影装置5は、データ補正部25で補正された施工図のデータに基づき、施工図の映像を投影面Fに投影して表示させる。
【0044】
また、上述したような施工図投影方法は、投影面FにテストパターンTを投影する工程S13と、投影面Fに投影されたテストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得する工程S14と、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する工程S15と、位置ずれ補正量に基づき、施工図のデータを補正する工程S17と、補正された施工図のデータに基づき、施工図の映像を投影面Fに投影して表示させる工程S18と、を含む。
【0045】
このような構成の施工図投影システム1、及び施工図投影方法では、投影面Fに投影されたテストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影し、複数枚の画像を取得する。投影装置5で投影面Fに投影するテストパターンTには、投影装置5の光学系の歪みや、投影面Fの不陸の影響が含まれている。一方、撮影装置3の光学系で撮影する画像には、撮影装置3の光学系の歪みの影響が含まれている。これにより、複数の位置で、撮影装置3によってテストパターンTを撮影すると、撮影される画像の各々は、投影装置5の光学系の歪みや投影面Fの不陸の影響と、それぞれの位置における撮影装置3の光学系の歪みの影響とが含まれ、複数の画像間で、テストパターンTの各部の位置に差異が生じることになる。
これら複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量に基づいて、位置ずれ補正量を算出することにより、テストパターンTの全域で、補正精度を高めることができる。これにより、精度が高められた位置ずれ補正量によって施工図のデータを補正したうえで、施工図の映像を投影面Fに投影して表示させることで、投影面F上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。したがって、建設現場において、施工図の映像を、より高い精度で表示させることが可能となる。
【0046】
また、施工図投影方法は、投影面Fに、投影面Fに沿った面内で互いに直交する第一方向D1、及び第二方向D2に延びる基準線を表示する工程S11と、第一方向D1、及び第二方向D2の各々における寸法の基準となる基準尺を、第一方向D1、及び第二方向D2の各々に沿って配置する工程S12と、を備え、テストパターンTを投影する工程S13では、投影面Fに投影するテストパターンTを、第一方向D1、及び第二方向D2に延びる基準線を基準として位置合わせするとともに、テストパターンTの大きさを、基準尺に基づいて調整する。
このような構成によれば、テストパターンTを第一方向D1、及び第二方向D2に延びる基準線を基準として位置合わせすることで、投影面F上に表示される施工図の向きを合わせることができる。さらに、テストパターンTの大きさを、基準尺に基づいて調整することで、投影面F上に表示される施工図の大きさを、原寸通りに合わせることができる。
【0047】
また、施工図投影方法は、投影面F上に表示された映像に基づいて、墨出し作業を行う工程S20、をさらに含む。
このような構成によれば、投影装置5の光学系の歪みや床面の不陸を踏まえて補正された施工図の映像を投影面F上に表示することで、墨出し作業を正確に行うことが可能となる。
【0048】
(実施形態の変形例)
なお、本発明の施工図投影システム、施工図投影方法は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
例えば、上記実施形態では、工程S15で複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出し、工程S17で、位置ずれ補正量に基づき、施工図のデータを補正するようにしたが、これに限られない。例えば、工程S15で算出された位置ずれ補正量が、予め定めた閾値より大きい場合、補正精度を高めるために、以下のような処理を行ってもよい。
図9は、本実施形態の変形例における施工図投影方法の流れを示すフローチャートである。
図9に示されるように、この変形例における施工図投影方法では、上記実施形態と同様にして、位置ずれ補正量を算出する工程S15で、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量に基づき、位置ずれ補正量を算出する。続いて、算出された位置ずれ補正量が、定められた閾値以下であるか否かを判定する(工程S16)。ここで用いる閾値としては、例えば2mmであり、算出された位置ずれ補正量の絶対値が、2mm以下であるか否かを判定する。
【0049】
その結果、位置ずれ補正量が、閾値より大きい場合には、直前の工程S13で投影したテストパターンTを、算出された位置ずれ補正量に基づいて、補正する(工程S19)。さらに、工程S13に戻り、工程S19で補正されたテストパターンTを投影面Fに投影する。その後、工程S14で、補正されたテストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影することで、複数枚の画像を取得し、工程S15で、複数枚の画像の各々におけるテストパターンTの位置ずれ量から、位置ずれ補正量を算出する。このような処理を、工程S16において、位置ずれ補正量が閾値以下となるまで繰り返す。
工程S16で、位置ずれ補正量が、閾値以下となった場合、上記実施形態と同様、施工図のデータを補正する工程S17以降を実行する。
【0050】
このような構成によれば、テストパターンTの位置ずれ補正量が、閾値以下となるまで、位置ずれ補正量によってテストパターンTを補正することで、テストパターンTの精度を高めることができる。その結果、投影面F上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。
【0051】
(実施形態の他の変形例)
また、上記変形例において、工程S16における判定で、位置ずれ補正量が、閾値より大きい場合は、工程S19で、テストパターンTを構成する単位パターンTpの大きさを小さくするようにしてもよい。これにより、テストパターンTの実質的な解像度が高まり、より高い精度での位置ずれ補正を行うことができる。
この場合、工程S16では、位置ずれ補正量の閾値との比較に代えて、例えば、単位パターンTpの寸法が、定められた上限値以下であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0052】
このような構成によれば、テストパターンTの単位パターンTpの寸法が、定められた上限値以下となるまで、テストパターンTを補正することで、テストパターンTの解像度を高めることができる。その結果、投影面F上に施工図の映像を高い精度で表示させることが可能となる。
【0053】
上述の実施形態では、テストパターンTを、互いに異なる複数の位置から撮影し、複数枚の画像を取得して、位置ずれ補正量を算出したが、精度が許容されるならば、1箇所の位置からの撮影により、位置ずれ補正量の算出を行うことも可能である。
【0054】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 施工図投影システム M 施工図の映像
3 撮影装置 S11 基準線を表示する工程
5 投影装置 S12 基準尺を配置する工程
21 データ記憶部 S13 テストパターンを投影する工程
22 データ取得部 S14 画像を取得する工程
23 検出部 S15 位置ずれ補正量を算出する工程
25 データ補正部 S16 位置ずれ補正量が閾値以下であるか判定する工程
60A、60B 基準尺 S17 施工図のデータを補正する工程
D1 第一方向 S18 施工図の映像を投影する工程
D2 第二方向 S20 墨出し作業を行う工程
F 投影面 T テストパターン
L1、L2 基準線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9