(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182035
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】吸水性樹脂の分離方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20231219BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20231219BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20231219BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
B29B17/04
B01J20/26 D
B01J20/34 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095412
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨部 圭一郎
【テーマコード(参考)】
4F401
4G066
【Fターム(参考)】
4F401AA08
4F401AA17
4F401AA22
4F401AB10
4F401AC20
4F401AD04
4F401BA13
4F401CA03
4F401CA14
4F401CA25
4F401CA58
4G066AC01B
4G066AC12B
4G066AC17B
4G066CA43
4G066DA07
4G066EA05
4G066GA01
4G066GA25
(57)【要約】
【課題】吸収性物品を含む廃棄物から効率的に吸水性樹脂を分離する技術に関する。
【解決手段】本発明の一形態に係る吸水性樹脂の分離方法は、吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有する吸水した吸収性物品を含む被処理物から、前記吸水性樹脂を分離する方法である。前記吸水性樹脂の分離方法は、前記被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる乾燥ステップと、前記被処理物を、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上、前記吸水性樹脂の熱分解温度未満の温度で加熱する加熱ステップと、前記加熱ステップ後に、前記被処理物を攪拌し、かつ前記熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る粒状化ステップと、前記粒状体の粒度に基づいて前記吸水性樹脂を分離する分離ステップと、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有する吸水した吸収性物品を含む被処理物から、前記吸水性樹脂を分離する方法であって、
前記被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる乾燥ステップと、
前記被処理物を、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上、前記吸水性樹脂の熱分解温度未満の温度で加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップ後に、前記被処理物を攪拌し、かつ前記熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る粒状化ステップと、
前記粒状体の粒度に基づいて前記吸水性樹脂を分離する分離ステップと、を含む
吸水性樹脂の分離方法。
【請求項2】
前記分離ステップでは、前記吸水性樹脂を含み第1粒度を有する第1粒状体と、前記吸水性樹脂の含有率が前記第1粒状体よりも低く前記第1粒度よりも小さい第2粒度を有する第2粒状体とを分離する
請求項1に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項3】
前記粒状体の粒度分布が、前記第1粒度に対応する第1ピークと、前記第2粒度に対応する第2ピークと、を有する
請求項2に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項4】
前記乾燥ステップでは、前記吸収性物品を破砕することで前記吸水性樹脂を露出させる
請求項1から3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項5】
前記加熱ステップでは、前記被処理物の一部を炭化させる
請求項1から4のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項6】
前記被処理物には、セルロースが含まれる
請求項1から5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項7】
前記分離ステップでは、振動ふるいを用いる
請求項1から6のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項8】
前記分離ステップでは、目開き106μm以上のふるいを用いて前記吸水性樹脂を分離する
請求項1から7のいずれか一項に記載の吸水性樹脂の分離方法。
【請求項9】
吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有する吸水した吸収性物品を含む被処理物から、前記吸水性樹脂を含む吸水性樹脂含有粒状体を製造する方法であって、
前記被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる乾燥ステップと、
前記被処理物を、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上、前記吸水性樹脂の熱分解温度未満の温度で加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップ後に、前記被処理物を攪拌し、かつ前記熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る粒状化ステップと、
前記粒状体の粒度に基づいて、第1粒状体と、前記第1粒状体よりも粒度の低い第2粒状体と、を分離し、前記第1粒状体を吸水性樹脂含有粒状体として回収する回収ステップと、を含む
吸水性樹脂含有粒状体の製造方法。
【請求項10】
吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有し吸水した吸収性物品を含む被処理物から粒状体を製造する方法であって、
前記被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる乾燥ステップと、
前記被処理物の温度を、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上、前記吸水性樹脂の熱分解温度未満に保持する加熱ステップと、
前記加熱ステップ後に、前記被処理物を攪拌し、かつ前記熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る粒状化ステップと、
前記粒状体の粒度に基づいて、第1粒状体と、前記第1粒状体よりも粒度の低い第2粒状体と、を分離し、前記第2粒状体を回収する回収ステップと、を含む
粒状体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品のリサイクル技術に関する。
【背景技術】
【0002】
資源の有効活用、温室効果ガスの排出量削減などの観点から、紙おむつ及び生理用ナプキンなどの使用済み吸収性物品をリサイクルすることが望まれている。特許文献1には、使用済の高吸水性ポリマーから再生された高吸水性リサイクルポリマーを製造する方法であって、使用済みの高吸水性ポリマーを酸又は塩基を用いて脱水し、高吸水性ポリマーの粒子群を脱水後のポリマーに付着させて、さらにポリマーを乾燥させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、吸水性ポリマー以外にも、熱可塑性樹脂、セルロース等を含んでおり、これらが一体化された構成を有する。しかしながら、特許文献1には、使用済み吸収性物品から高吸水性ポリマーを取り出す手段については開示されていない。さらに、特許文献1に記載の方法では、大量の処理剤や大型の装置を要する可能性があり、より効率的な吸収性物品のリサイクル技術が望まれている。
【0005】
本発明の課題は、吸収性物品を含む廃棄物から効率的に吸水性樹脂を分離する技術に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る吸水性樹脂の分離方法は、吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有する吸水した吸収性物品を含む被処理物から、前記吸水性樹脂を分離する方法である。
前記吸水性樹脂の分離方法は、
前記被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる乾燥ステップと、
前記被処理物を、前記熱可塑性樹脂の軟化点以上、前記吸水性樹脂の熱分解温度未満の温度で加熱する加熱ステップと、
前記加熱ステップ後に、前記被処理物を攪拌し、かつ前記熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る粒状化ステップと、
前記粒状体の粒度に基づいて前記吸水性樹脂を分離する分離ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収性物品を含む廃棄物から効率的に吸水性樹脂を分離することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に利用可能な粒状化装置の概略構成図である。
【
図3】上記実施形態に係る吸水性樹脂の分離方法を示すフローチャートである。
【
図4】上記実施形態の変形例に係る吸水性樹脂含有粒状体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記実施形態の変形例に係る吸水性樹脂低含有粒状体(粒状体)の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本発明の実施形態の概略説明]
本発明の一実施形態に係る吸水性樹脂の分離方法は、吸水した吸収性物品を含む被処理物を粒状化して粒度の異なる粒状体を形成し、吸水性樹脂と熱可塑性樹脂等のその他の材料とを粒度によって分離するように構成される。これにより、本実施形態では、複数の部材が一体化された吸収性物品から、吸水性樹脂を効率よく分離することができ、吸水性樹脂のリサイクルが可能となる。さらに、本実施形態では、吸水性樹脂の含有率の低い粒状体を回収することもでき、この粒状体をリサイクル材として有効活用することもできる。したがって、本実施形態に係る分離方法は、使用済み吸収性物品を含む廃棄物のリサイクルの促進に寄与し、ひいては資源循環型社会の実現に寄与する。
【0010】
本実施形態において、吸収性物品とは、吸水性樹脂と熱可塑性樹脂とを有し、液体を吸収可能な物品を意味する。本実施形態に係る吸収性物品は、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、尿取りパッド、パンティライナー、ペット用トイレシート、簡易トイレ、ドリップシート、保冷剤、消臭剤から選択された1以上の物品を含む。なお、「ドリップシート」は、肉や魚等の食材の余分な水分(体液等)を吸収する吸水シートを意味する。本実施形態において、吸水した吸収性物品は、主に吸水性樹脂によって水分を吸収した吸収性物品を意味する。ここでいう水分は、尿や経血などの体液であってもよい。つまり、吸水した吸収性物品は、使用済みの吸収性物品であってもよい。
【0011】
使い捨ておむつ、生理用ナプキン等の体液の吸収に用いられる吸収性物品は、一般に、吸水性樹脂を含む吸収体と、吸収体の表裏を被覆するシート材と、を含み、各部材が接着剤等によって接合された構成を有する。当該シート材は、例えば、熱可塑性樹脂及び/又はセルロース等を含む。吸収体は、吸水性樹脂を含む吸収性コアを少なくとも含み、さらに吸収性コアを被覆するコアラップシートを含んでいてもよい。コアラップシートは、例えば、セルロース等の親水性材料からなる。また、吸収性コアは、吸水性樹脂の他、セルロースからなるパルプ等の親水性材料を含んでいてもよい。
【0012】
本実施形態において、吸水性樹脂は、吸水性を有する樹脂であり、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシル基又はその塩を有する高分子化合物の部分架橋体、多糖類の部分架橋体等から選択される1以上の吸水性樹脂を含む。カルボキシル基又はその塩を有する高分子化合物の部分架橋体は、ポリアクリル酸塩架橋体、ポリ(ビニルアルコール/アクリル酸塩)共重合体(架橋体)、澱粉-アクリル酸塩グラフト共重合体(架橋体)及びポリビニルアルコール-ポリ無水マレイン酸塩グラフト共重合体(架橋体)等を含む。多糖類の部分架橋体は、カルボキシメチルセルロース塩架橋体等を含む。
また、上記吸水性樹脂を構成する「塩」としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)、アンモニウム塩(第四級アンモニウム塩、第四級アルキルアンモニウム塩等)等から選択された1以上の塩を含む。
本発明の吸水性樹脂は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム又はポリアクリル酸ナトリウム架橋体から選択された1以上の吸水性樹脂を含む。
【0013】
本実施形態において、熱可塑性樹脂は、特定の種類に限定されず、例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレンなどが挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、例えば、吸収性物品におけるシート材や外装材等として用いられる。また、熱可塑性樹脂は、吸収性物品以外の被処理物にも含まれていてもよい。
【0014】
本実施形態に係る被処理物は、少なくとも吸水した吸収性物品を含んでおり、他の廃棄物、副材等を含んでいてもよい。当該他の廃棄物は、特に限定されず、例えば、使用済みの包装容器(食品容器やボトル等)や、海洋ゴミ、家庭や事業場などから出されたその他の廃棄物を含んでいてもよい。
【0015】
本実施形態において、被処理物には、セルロースが含まれることが好ましい。被処理物がセルロースを含むことで、後述するように、加熱ステップS2で被処理物の一部を炭化しやすくなる。セルロースは、吸収性物品に含まれていてもよいし、吸収性物品以外の被処理物に含まれていてもよい。
【0016】
本実施形態において、「粒状」とは破砕された被処理物の各砕片の形状を意味する。また、「粒状体」とは、相互に分離した複数の砕片の集合体を意味する。更に、「粒状化」とは、被処理物を粒状体とすることを意味する。本実施形態における粒状体の最大径は、取り扱い性の観点から、好ましくは5cm以下であり、より好ましくは1cm以下であり、更に好ましくは0.5cm以下である。
【0017】
本実施形態において、粒状体の粒度とは、粒状体のサイズの度合いを意味する。つまり、粒状体の粒度は、粒状体をサイズ毎に分離する際の基準となる。ここでいう粒状体のサイズは、各粒状体を球体と仮定した場合の直径に相当する粒径の範囲として定義されてもよいが、粒状体のサイズを分類できれば厳密に粒径で定義されなくてもよい。例えば粒状体の粒度は、ふるいの目開きや、分級機において設定された分級点などによって規定され得る。
【0018】
[粒状化装置の構成]
まず、本実施形態に係る分離方法に使用可能な処理装置の一例として、粒状化装置100について説明する。
図1は粒状化装置100を正面から示しており、
図2は粒状化装置100を側方から示している。粒状化装置100は、処理槽101を有する。処理槽101は、壁部101aと収容部101bとを有する。収容部101bは、粒状化装置100による粒状化処理の対象となる被処理物を収容可能であり、周囲を壁部101aによって囲まれた処理槽101の内部空間として構成される。
図1,2はそれぞれ、壁部101aを鉛直方向に破断した縦断面で示すことで、収容部101bの内部を示している。処理槽101では、被処理物の出し入れのための収容部101b内への外部からのアクセスが可能なように、壁部101aの一部が開閉可能に構成されている。
【0019】
また、粒状化装置100は、攪拌シャフト102を更に有する。攪拌シャフト102は、軸部102aと複数の羽根部102bとを有する。軸部102aは、水平方向側方に延びる回転軸Cを中心に回転可能な丸棒状の部材として構成される。軸部102aでは、両端部が収容部101bの側方において壁部101aによって支持され、壁部101aに支持された両端部間の部分が収容部101b内に位置する。複数の羽根部102bは、軸部102aにおける収容部101b内に位置する部分全体に実質的に偏りなく、長手方向に沿って間隔をあけて設けられている。また、各羽根部102bは、軸部102aの外周面から径方向の様々な方向に突出している。
【0020】
更に、粒状化装置100は、ヒータ103を有する。ヒータ103は、処理槽101の壁部101aの外側に取り付けられている。ヒータ103は、通電によって壁部101aを介して収容部101b内の温度を上昇させることが可能に構成されている。つまり、粒状化装置100では、ヒータ103によって収容部101bに収容された被処理物を加熱することができる。なお、ヒータ103における加熱方式や設置位置などの各構成は、処理槽101の構成や被処理物の性質などに応じて様々に決定可能である。
【0021】
加えて、粒状化装置100は、送風機構104を更に有する。送風機構104は、給気部104aと排気部104bとを有する。給気部104a及び排気部104bは、それぞれ処理槽101の壁部101aに設けられ、収容部101bを挟んで相互に側方に対向している。送風機構104は、給気部104aから収容部101b内に空気を供給し、排気部104bから処理槽101内の空気を排出することで、収容部101b内に送風を行うことが可能に構成されている。このため、粒状化装置100では、送風機構104によって被処理物の冷却時における温度の下降を促進することができる。なお、粒状化装置100において送風機構104による送風に用いる気体は、空気に限定されず、例えば、窒素などの不活性ガスなどであってもよい。
【0022】
以上のような構成により、粒状化装置100は、回転軸Cを中心として軸部102aを回転させることで、収容部101b内において複数の羽根部102bから加わる力と重力との相互作用によって被処理物を良好に攪拌することができる。したがって、粒状化装置100は、ヒータ103及び/又は送風機構104による温度制御と、攪拌処理とを組み合わせて行うことができ、後述する乾燥ステップS1、加熱ステップS2及び粒状化ステップS3を行うことができる。
【0023】
なお、粒状化装置100の構成は、上記に限定されず、様々に変更することができる。例えば、粒状化装置100では、軸部102aの回転軸Cが、水平方向に沿って延びていることは必須ではなく、水平面に対して傾いていてもよい。しかし、粒状化装置100において重力による攪拌作用を有効に得るためには、少なくとも軸部102aの回転軸Cが鉛直方向に対して傾いていることが必要であり、軸部102aの回転軸Cの水平面に対する角度が小さいことが好ましい。具体的に、粒状化装置100では、軸部102aの回転軸Cの水平面に対する角度が、30°以下であることが好ましい。
【0024】
[吸水性樹脂の分離方法]
図3に示すように、本実施形態に係る吸水性樹脂の分離方法では、乾燥ステップS1と、加熱ステップS2と、粒状化ステップS3と、分離ステップS4と、を含む。本実施形態では、乾燥ステップS1、加熱ステップS2、及び粒状化ステップS3に粒状化装置100を用いる例を挙げて説明する。この例では、まず、吸収性物品を含む被処理物を処理槽101の収容部101b内に収容し、乾燥ステップS1を行う。
【0025】
(乾燥ステップS1)
乾燥ステップS1では、被処理物を攪拌し、かつ乾燥させる。これにより、被処理物に含まれる水分が蒸発して被処理物が軽量化するとともに、攪拌によって被処理物が破砕される。本実施形態では、粒状化装置100のヒータ103によって収容部101b内の温度を調整しつつ、攪拌シャフト102を回転させ、処理槽101の収容部101b内に収容された被処理物を攪拌する。
【0026】
本ステップにおける乾燥温度は特に限定されないが、40℃以上であって、後述する熱可塑性樹脂の軟化点未満とすることができる。当該乾燥温度は、略一定に維持されていてもよいが、加熱ステップS2へ円滑に移行する観点から、連続的又は段階的に上昇するように設定されることが好ましい。昇温させる場合の昇温速度は0.001℃/分以上20℃/分以下であることが好ましい。
【0027】
仮に攪拌せずに乾燥させた場合、吸水性樹脂に保持されていた水分が外部に染み出す際に、吸水性樹脂とパルプやコアラップシート等の他の親水性の高い材料とが水分を介し結合しやすくなる。この状態で乾燥させた場合、吸水性樹脂と他の材料が固着して塊状になり、吸水性樹脂の分離が難しくなる。これに対し、本実施形態では、攪拌しながら乾燥することで、吸水性樹脂と他の材料との分離を促進しつつ、吸水性樹脂中の水分量を減少させることができる。
【0028】
また、上述のように、吸収性物品では、吸水性樹脂がパルプやシート材と一体化していることが多い。このため、本ステップでは、吸収性物品を破砕することで吸水性樹脂を露出させることが好ましい。これにより、吸水性樹脂の水分量をより効率よく減少させることができるとともに、吸水性樹脂と他の材料との分離をより促進させることができる。
【0029】
(加熱ステップS2)
続いて、加熱ステップS2では、被処理物を、熱可塑性樹脂の軟化点以上、吸水性樹脂の熱分解温度未満の温度で加熱する。これにより、熱可塑性樹脂は軟化して変形しやすくなる一方で、吸水性樹脂は熱分解せずに分子構造が維持される。したがって、吸水性樹脂に対し、熱可塑性樹脂の物性を大きく変化させることができる。本実施形態では、例えば、ヒータ103によって被処理物の温度が調整される。また本ステップにおいても、例えば攪拌シャフト102を回転させることにより、攪拌することが好ましい。これにより、被処理物を均質に加熱することができるとともに、被処理物を破砕しやすくなる。
【0030】
本実施形態において、「軟化点」とは、被処理物に含まれる熱可塑性樹脂が急速に軟化を開始する温度を意味する。被処理物に複数の熱可塑性樹脂が含まれる場合、「熱可塑性樹脂の軟化点」として、任意の熱可塑性樹脂の軟化点を選択することができるが、好ましくは、被処理物に含まれる最も軟化点の高い熱可塑性樹脂の軟化点を選択することができる。被処理物に含まれる熱可塑性樹脂の軟化点は、含まれる熱可塑性樹脂が特定できる場合、あらかじめ測定したビカット軟化温度を使用することができる。ビカット軟化温度はJIS K 7206:2016(ISO 306:2013)に準拠して測定することができる。また、被処理物に含まれる熱可塑性樹脂の軟化点は、含まれる熱可塑性樹脂が特定できていない場合、被処理物から樹脂を取り出し、ビカット軟化温度を測定することで、その値を用いることができる。例えば、ポリプロピレンの軟化温度は160~200℃であり、ポリエチレンテレフタレートの軟化温度は200~250℃である。
【0031】
本実施形態において、吸水性樹脂の「熱分解温度」とは、熱により分子鎖が切断され、低分子化する際の温度である。熱分解温度は、示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA)を用いて、大気雰囲気中において吸水性樹脂の試料を所定の昇温速度(5~10℃/min)で加熱した際に、試料の重量が5%減少する温度とする。例えば、本実施形態において、吸水性樹脂の熱分解温度は、450~500℃であり得る。架橋された構造を有し軟化点を持たない吸水性樹脂では、熱分解温度において大きな物性の変化が生じ得る。
【0032】
本ステップの加熱温度は、略一定に維持されていてもよく、熱可塑性樹脂の軟化点以上、吸水性樹脂の熱分解温度未満の範囲内で変化してもよい。具体的に、本ステップの最高温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、好ましくは450℃以下、より好ましくは350℃以下である。また、本ステップにおける上記最高温度の維持時間は、好ましくは60分以上、より好ましくは120分以上であり、好ましくは480分以下、より好ましくは300分以下である。
【0033】
なお、本ステップでは、被処理物の炭化が進行する温度条件で行うことで、被処理物の一部を炭化させてもよい。特に、被処理物がセルロースなどの易炭化性の成分を含む場合には、本ステップにおいて炭化物が生成されやすくなる。被処理物の一部を炭化させることにより、脆性の高い炭化物が生成され、次の粒状化ステップS3において細かい粒状体が形成されやすくなる。
【0034】
(粒状化ステップS3)
加熱ステップS2の後には、粒状化ステップS3が行われる。粒状化ステップS3では、被処理物を攪拌し、かつ熱可塑性樹脂の軟化点未満まで冷却することで、粒状体を得る。本ステップにより、被処理物の均質化、高密度化、及び軽量化が促進されるとともに、相互に分離した状態の粒状体を得ることができる。本実施形態の粒状化ステップS3では、例えば、ヒータ103による被処理物の加熱を停止する一方で、攪拌シャフト102によって被処理物の攪拌を行う。さらに、本実施形態の粒状化ステップS3では、送風機構104によって送風することが好ましい。これにより、収容部101bにおいて加熱された被処理物の温度を速やかに下降させることができる。但し、本ステップにおける送風機構104の使用は必須ではない。
【0035】
熱によって軟化した熱可塑性樹脂が冷却する過程では、降温に伴う硬化とシキソトロピー性による粘性の増大とが同時に進行する。本実施形態の粒状化ステップS3では、冷却に伴って攪拌が行われることで、シキソトロピー性によって熱可塑性樹脂の粘度を低い状態に維持しつつ、熱可塑性樹脂の硬化を進行させる。これにより、熱可塑性樹脂が塊状の大きな粒状体を形成することなく、細かく破砕されて粒度の小さい粒状体を形成することができる。また、加熱ステップS2において脆性の高い炭化物が生成された場合、本ステップの攪拌によって炭化物も細かく破砕され、粒度の小さい粒状体を形成し得る。
【0036】
一方で、熱分解されていない吸水性樹脂は、熱可塑性樹脂や炭化物よりも破砕されにくい。本ステップにおいて冷却されながら攪拌されることで、吸水性樹脂が他の粒状体と結合した塊状になることが抑制される。したがって、本ステップにより、吸水性樹脂が、他の粒状体よりもサイズの大きい粒状体を構成し得る。
【0037】
このように、本ステップでは、粒度の異なる粒状体が形成される。大きい粒度の粒状体は、吸水性樹脂を多く含み、小さな粒度の粒状体は、主に熱可塑性樹脂、炭化物等で構成される。これらの粒状体は、乾燥しており相互に分離しやすい形態を有する。したがって、これらの粒状体を粒度によって分離することで、吸水性樹脂を多く含む粒状体を容易に分離することが可能となる。
【0038】
(分離ステップS4)
続いて、分離ステップS4では、粒状体の粒度に基づいて吸水性樹脂を分離する。本実施形態における吸水性樹脂の分離は、吸水性樹脂のみで構成された粒状体を分離する態様に限定されず、均質に混合された分離前の粒状体よりも、分離後の第1粒状体における吸水性樹脂の含有率が高くなるように粒状体の一部を分離する態様を含む。
【0039】
本実施形態では、例えば、粒状化装置100の収容部101bから粒状体を取り出し、ふるい、分級機等の器具や装置を用いて粒状体を粒度によって分離する。分離方法としては乾式でも湿式でもよいが、乾燥状態の粒状体を取り扱うため、乾式であることが好ましい。本ステップでは、比較的単純な装置構成で自動的に吸水性樹脂を分離する観点から、振動ふるい機を用いることが好ましい。また、本ステップでは、粒状体を少なくとも2つの粒度に分離すればよいが、3以上の粒度に分離してもよい。
【0040】
本実施形態では、例えば、第1粒度を有する第1粒状体と、第1粒度よりも粒度の小さい第2粒度を有する第2粒状体と、を分離することができる。第1粒状体は、吸水性樹脂を含む吸水性樹脂含有粒状体として構成される。第2粒状体は、吸水性樹脂の含有量が第1粒状体よりも低く、吸水性樹脂以外の成分を主に含む吸水性樹脂低含有粒状体として構成される。第1粒状体における吸水性樹脂の含有率は、好ましくは31質量%以上、より好ましくは50質量%以上である。第2粒状体は、例えば、熱可塑性樹脂、炭化物等から選択された1又は複数の成分を含む。第2粒状体における吸水性樹脂の含有率は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
【0041】
本実施形態では、例えば、粒状化ステップS3を行った後の粒状体の粒度分布が、第1粒度に対応する第1ピークと、第2粒度に対応する第2ピークを有していることが好ましい。粒度分布におけるピークとは、粒径を横軸、頻度(%)を縦軸として粒度分布のグラフを作成した場合に、上に凸な山状となる部分のピークを意味する。複数の粒度分布のうち、ピークの高い順に2つ粒度を選択し粒度の大きい方を第1粒度とし、もう一方を第2粒度とする。また、「第1粒度が第1ピークに対応する」とは、第1粒度が第1ピークに対応する粒径を含むように設定されていることを意味する。「第2粒度が第2ピークに対応する」とは、第2粒度が第2ピークに対応する粒径を含むように設定されていることを意味する。粒度分布がこのように2つ以上の山を持つ形状となることで、吸水性樹脂を多く含む第1粒状体を、第2粒状体からより確実に分離することができる。
【0042】
また、第1粒度の粒径の下限値は、粒度分布のグラフに基づいて設定されてもよい。具体的に、第1粒度の粒径の下限値は、第1ピークに対応する粒径と、第2ピークに対応する粒径との間に設定されることが好ましく、さらに、第1ピーク及び第2ピーク間に位置する、粒度分布のグラフの下に凸な部分に対応する粒径に設定されることがより好ましい。なお、粒状体の粒度分布は、公知の粒度分布測定方法によって確認することができる。
【0043】
具体的に、第1粒度の粒径の下限値は、好ましくは106μm以上、より好ましくは150μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下である。例えば、本ステップでふるいを用いる場合、ふるいの目開きは、好ましくは106μm以上、より好ましくは150μm以上であり、好ましくは600μm以下、より好ましくは300μm以下である。ふるいを用いる場合は、粒状化ステップS3で得られた粒状体を上記目開きのふるいに通過させ、ふるい上に残った粒状体を第1粒状体、ふるいを通過した粒状体を第2粒状体とすることができる。
【0044】
[粒状体の製造方法]
本実施形態では、以上のような吸水性樹脂の分離方法を用いて、第1粒状体及び/又は第2粒状体を製造することができる。
図4に示すように、第1粒状体(吸水性樹脂含有粒状体)の製造方法は、上述の乾燥ステップS1、加熱ステップS2、及び粒状化ステップS3に加えて、第1粒状体の回収ステップS41を含む。回収ステップS41では、粒状体の粒度に基づいて、第1粒状体及び第2粒状体を分離し、第1粒状体を吸水性樹脂含有粒状体として回収する。つまり、上述の分離ステップS4で分離された第1粒状体を回収することで、第1粒状体を得ることができる。
【0045】
図5に示すように、第2粒状体(粒状体)の製造方法は、上述の乾燥ステップS1、加熱ステップS2、及び粒状化ステップS3に加えて、第2粒状体の回収ステップS42を含む。回収ステップS42では、粒状体の粒度に基づき、第1粒状体及び第2粒状体を分離し、第2粒状体を回収する。つまり、上述の分離ステップS4で分離された第2粒状体を回収することで、吸水性樹脂低含有粒状体としての第2粒状体を得ることができる。
【0046】
[本実施形態の作用効果]
本実施形態によれば、吸収性物品を含む被処理物に対し、上述の乾燥ステップS1、加熱ステップS2及び粒状化ステップS3を行うことで、被処理物を軽量で、かつ細かく分離した状態の粒状体として扱うことができる。また、加熱ステップS2における温度を熱可塑性樹脂の軟化点以上、吸水性樹脂の熱分解温度未満に設定することで、粒状化ステップS3において吸水性樹脂が細かく破砕されにくい物性となり、粒度の大きな第1粒状体を形成することができる。この結果、分離ステップS4において、粒度の違いに基づいて効率よく吸水性樹脂を分離することができる。
【0047】
被処理物から吸水性樹脂を多く含む第1粒状体を回収することで、吸水性樹脂を含む材料として第1粒状体を利用することができる。これにより、吸水性樹脂を再利用することができ、資源を有効活用することができる。また、新たな吸水性樹脂の製造に伴って排出される温室効果ガスを削減することができる。
【0048】
一方で、回収された第2粒状体は、例えば燃料や肥料などとして再利用することができる。また、第2粒状体が炭化物を含む場合は、これらの他、例えば、水の浄化処理剤、断熱材等の建材、吸着剤、解毒剤、消臭剤、使い捨てカイロの原料、活性炭等などとして有効利用することができる。第2粒状体は、高い均質性を有することに加えて、吸水性樹脂による膨潤や吸湿を抑制でき、取り扱い性に優れたリサイクル材となり得る。
【0049】
また、本実施形態では、乾式のプロセスによって吸水性樹脂を分離可能な粒状体を形成する。これにより本実施形態では、湿式のプロセスと比較して、被処理物の収容に必要な容積を低減することができ、装置の大型化を抑制できる。また、乾式のプロセスにより、排液等による水質汚染を防止することができる。さらに、本実施形態では、粒状化によって高密度化するため、処理後の収納に必要な容積も大幅に低減されるとともに、乾燥ステップS1及び加熱ステップS2の過程における水分の蒸発によって質量が低減される。これらにより、本実施形態で得られる被処理物の粒状体は、保管及び運搬が容易になり、取り扱い性に優れたリサイクル材となる。
【0050】
[本実施形態の追加説明]
乾燥ステップS1において、粒状化装置100に被処理物を収容する場合は、収容部101b内に収容する被処理物の量がある程度多いことが好ましい。具体的に、乾燥ステップS1開始時に収容部101b内に収容する被処理物の量は、粒状化ステップS3の終了時の収容部101b内における被処理物の粒状体の嵩が軸部102aを超えるように設定することが好ましい。収容部101b内における粒状体の嵩は、例えば、
図1,2に示すように、収容部101b内において粒状体を水平面に沿って平滑に均した表面の鉛直方向の高さLとして得られる。このように、破砕の進行によって被処理物の嵩が最も低くなった粒状化ステップS3の終了時の状態を基準として乾燥ステップS1開始時に収容部101b内に収容する被処理物の量を規定することで、乾燥ステップS1、加熱ステップS2及び粒状化ステップS3の全過程において軸部102aが攪拌中の被処理物中に埋まった状態に維持される。これにより、粒状化ステップS3において被処理物を効率的に攪拌することができる。なお、被処理物を効率的に攪拌する観点から、粒状化ステップS3の終了時の収容部101b内において、被処理物の粒状体の嵩が軸部102aの全体を超え、つまり軸部102aが被処理物の粒状体に完全に埋まっていることが好ましい。しかしながら、上記のように軸部102aが水平面に対して傾いている場合などには、粒状化ステップS3の終了時の収容部101b内において、被処理物の粒状体の嵩が軸部102aの少なくとも一部を超えていれば、被処理物を効率的に攪拌可能な効果が得られる。
【0051】
本実施形態に係る被処理物は、使用済み吸収性物品を含む廃棄物に限定されず、嵩増しのための副材を含んでいてもよい。これにより、収容部101b内の被処理物の量を十分に確保することができる。副材は、任意に選択可能である。例えば、セラミックスなどの耐熱性の高い硬質の材料で形成され、乾燥、加熱及び粒状化の過程で変化が生じない物体(例えば、アルミナボール、ジルコニアボール、窒化珪素ボール、炭化珪素ボール等のセラミックボールなど)を副材として用いることができる。このような副材は、粒状化ステップS3の後に収容部101b内に残したままとすることで繰り返し嵩増しのための副材として利用することができる。これ以外にも、吸収性物品以外の任意の物体(例えば、食品残渣や農業廃棄物などの廃棄物等)を副材として用いることができる。また、加熱ステップS2において被処理物を炭化させる場合には、例えば、炭化しやすいセルロースを主成分とする物体(例えば、木質ペレット、紙屑、選定枝等)や、既に炭化された炭化物(例えば、炭化燃料ペレット、活性炭等)を副材として用いることで、被処理物の炭化を促進させることができる。
【0052】
また、先行して行われた粒状化処理の粒状化ステップS3で得られた被処理物の粒状体を、その後に行われる粒状化処理の副材として用いることもできる。特に、複数回の粒状化処理を連続して行う場合には、前回の粒状化処理の粒状化ステップS3の後に被処理物の粒状体の少なくとも一部を収容部101b内に残したまま乾燥ステップS1で新たな被処理物を投入することで、前回の粒状化処理で得られた被処理物の粒状体を副材として用いることができる。これにより、乾燥ステップS1において新たに投入する被処理物の量にばらつきがある場合にも、新たに投入する廃棄物の量を逆算した分だけ収容部101bから被処理物の粒状体を回収しておくことで、収容部101b内の被処理物の量が一定に保たれる。これにより、安定した粒状化処理を繰り返し行うことが可能となる。
【0053】
更に、加熱ステップS2において被処理物の一部を炭化させる場合には、難炭化性の熱可塑性樹脂を構成する炭素を少しでも多く炭化物の一部として固定することが好ましい。これにより、熱可塑性樹脂を構成する炭素に由来する二酸化炭素の排出量を削減することができる。この観点から、被処理物として収容部101b内にリン酸及びリン酸塩の少なくとも一方を触媒として添加することが好ましい。リン酸及びリン酸塩は、熱可塑性樹脂から炭素以外の水素や水などが脱離する反応を促進させる作用を有する。このため、リン酸やリン酸塩を触媒として用いることで、加熱ステップS2の過程において廃棄物に含まれる熱可塑性樹脂からの水素や水などの脱離が進行し、熱可塑性樹脂が単体の炭素として炭化物の表面に一体として固定されやすくなる。被処理物に触媒として添加するリン酸塩は、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸カリウム、及びリン酸ナトリウムの少なくとも一種で構成することができる。リン酸アンモニウムとしては、リン酸2水素アンモニウム、リン酸水素2アンモニウム、及びリン酸3アンモニウムが挙げられる。リン酸カリウムとしては、リン酸2水素カリウム、リン酸水素2カリウム及びリン酸3カリウムが挙げられる。リン酸ナトリウムとしては、リン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム及びリン酸3ナトリウムが挙げられる。なお、リン酸及びリン酸塩は、加熱により縮合しポリリン酸及びポリリン酸塩に変化するが、ポリリン酸及びポリリン酸塩は加熱ステップS2で軟化するため、熱可塑性樹脂と同様に降温の過程において砕片同士を結合させる性質を持つ。しかし、本実施形態に係る粒状化ステップS3において攪拌することで、被処理物が相互に分離した砕片で構成される粒状体として維持される。
【0054】
また、被処理物が軟化点の異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を含む場合は、上述のように、加熱ステップS2の加熱温度は、任意の熱可塑性樹脂の軟化点を基準として設定され得る。このため、被処理物中に、加熱ステップS2の最高温度よりも高い軟化点を有する熱可塑性樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート等)が存在し得る。このような加熱ステップS2で軟化点に到達しない熱可塑性樹脂は、粒状化ステップS3後に、粒状体とならず繊維状又は紐状の物体を構成し得る。この繊維状又は紐状の熱可塑性樹脂は、粒状体との形状の差異に基づいて取り除くことができ、粒状体から容易に分離することができる。つまり、本実施形態においては、被処理物が軟化点の高い熱可塑性樹脂を含む場合であっても、分離ステップS4において粒度に基づく吸水性樹脂の分離が可能となる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例0056】
[実施例及び比較例]
本実施形態に係る吸水性樹脂の分離方法の実施例及び比較例について説明する。各実施例及び比較例では、実際の使用済み吸収性物品を想定した被処理物のサンプルを用意した。具体的に、各実施例1~4及び比較例1~5に係る被処理物サンプルは、15kgの未使用の紙おむつ(メリーズパンツLサイズ、花王株式会社製)に、7.5kgの水道水を吸水させたものとした。また、当該サンプルには、尿に含まれる栄養成分を再現し、かつ炭化を促進するため、0.6kgのリン酸2水素アンモニウムを添加した。
【0057】
実施例1~4の被処理物サンプルに対しては、上述の乾燥ステップS1、加熱ステップS2、粒状化ステップS3及び分離ステップS4の全てを含む工程を実施した。
一方で、比較例1~5の被処理物サンプルに対しては、表1に示すように、上述の乾燥ステップS1、加熱ステップS2、粒状化ステップS3又は分離ステップS4の少なくともいずれか1つを実施しなかった。具体的に、比較例1では、全てのステップを行わなかった。比較例2では、乾燥ステップS1及び加熱ステップS2を行ったが、粒状化ステップS3において攪拌を行わず、後述するように分離ステップS4も行わなかった。比較例3では、乾燥ステップS1、加熱ステップS2及び粒状化ステップS3を行ったが、分離ステップS4を行わなかった。比較例4、5では、いずれのステップも行わず、後述する湿式の分離処理を行った。
【0058】
実施例1~4及び比較例2,3では、乾燥ステップS1及び加熱ステップS2を連続して行った。これらのステップでは、20℃から200℃まで0.5℃/分で昇温させ、200℃で180分間維持した。これらのステップの間、被処理物の攪拌を連続して行った。実施例1~4及び比較例2,3の粒状化ステップS3では、送風しながら、200℃から30℃まで0.2℃/分で降温し、冷却した。このうち、実施例1~4及び比較例3では、冷却の間、被処理物の攪拌を行った。一方、比較例2では、冷却の間、被処理物の攪拌を行わなかった。
【0059】
比較例4、5では、被処理物サンプルからおむつ1枚を取り出し、5cm各に切断した。切断されたおむつを、濃度5%のCaCl水溶液中に投入し、撹拌した。静置後、浮遊物と沈殿物に分離を行った。浮遊物と沈殿物それぞれを、250メッシュのナイロンメッシュ袋に入れ、延伸脱水機で脱水しサンプルを得た。浮遊物のサンプルを比較例4、沈殿物のサンプルを比較例5とした。
【0060】
【0061】
[分離処理]
実施例1~4の粒状化ステップS3後の粒状体サンプルに対して、ふるいを用いて分離処理(分離ステップS4)を行った。実施例1及び3では、150μmの目開きのふるいを用いて分離処理を行った。実施例2及び4では、300μmの目開きのふるいを用いて分離処理を行った。実施例1及び2では、ふるい上に残った粒状体(残滓)を回収した。実施例3及び4では、ふるいを通過した粒状体を回収した。
【0062】
一方、比較例1のサンプルは、おむつそのものの形態を維持しており、吸水性樹脂を分離することはできなかった。また、比較例2のサンプルは、粒状化ステップS3における冷却中に攪拌を行っていないため、被処理物が塊状となっており、ふるいによる分離が実施できなかった。比較例3では、上述のように、ふるいによる分離処理を行わず、全ての粒状体を回収した。
【0063】
[発熱量の測定]
回収された各実施例及び比較例のサンプルの発熱量を測定した。その結果を、表1に示す。発熱量は、サンプルの水分含有率に影響を受ける。また、吸水性樹脂が多いと発熱量が低くなり、吸水性樹脂が少ないと発熱量が高くなる傾向があるため、発熱量は、サンプル中の吸水性樹脂の含有率にも影響を受ける。発熱量は、総発熱量としてJIS Z 7302-2に基づいて測定した。
【0064】
表1に示すように、粒度の大きい粒状体である実施例1及び2のサンプルの発熱量は、全ての粒状体を含む比較例3のサンプルと比較して、小さい値となった。この結果から、実施例1及び2のサンプルは、比較例3のサンプルよりも、吸水性樹脂を多く含むと考えられる。なお、粒状化された比較例3及び乾燥された比較例2のサンプルは、吸水された吸水性樹脂を含むおむつそのものである比較例1よりも水分含有量が低いため、発熱量が高くなった。
【0065】
また、表1に示すように、粒度の小さい粒状体である実施例3及び4のサンプルの発熱量は、比較例3、実施例1及び2のサンプルよりも高くなった。これは、実施例3及び4のサンプルが、比較例3、実施例1及び2のサンプルと比較して吸水性樹脂の含有量が少ないためであると考えられる。また、表1の結果から、実施例3及び4のサンプルは、実施例1及び2並びに比較例1~4のサンプルと比較して発熱量が高く、燃料に適していることがわかった。
【0066】
また、湿式分離した比較例4、5のサンプルの発熱量は、比較例1~3、実施例1~4のサンプルより小さくなった。これは、比較例4、5のサンプルが、比較例1~3、実施例1~4のサンプルと比較して水分含有量が高いためであると考えられる。なお比較例4のサンプルの発熱量は、比較例5のサンプルよりも高くなった。これは、比較例4のサンプルが、比較例5のサンプルと比較して吸水性樹脂の含有量が少ないためであると考えられる。
【0067】
[吸水性樹脂含有率の算出]
さらに、回収された各実施例及び比較例のサンプルに対して、吸水性樹脂の含有率を算出した。その結果を表1に示す。
吸水性樹脂の含有率は、以下のように算出された。まず、サンプルのナトリウムはすべて吸水性樹脂由来として、ナトリウム比率から吸水性樹脂の含有率を算出した。ナトリウム比率は、「廃棄物固形化燃料-第5部:金属含有量試験方法(JIS Z 7302-5:2002)」に基づき、IPC発光分析を用いて測定を行った。
【0068】
表1に示すように、実施例1及び2で回収されたサンプルでは、吸水性樹脂の含有率が50質量%以上であり、分離ステップS4を行っていない比較例2及び3のサンプルと比較して当該含有率が高くなった。一方、実施例3及び4で回収されたサンプルでは、吸水性樹脂の含有率が30%未満であり、当該含有率が他のサンプルと比較して低かった。これらの結果から、乾燥ステップS1、加熱ステップS2、及び粒状化ステップS3を行った後、目開き150μm及び300μmのふるいを用いて分離ステップS4を行うことで、吸水性樹脂の含有率が高い粒状体と、含有率が低い粒状体とを分離できることがわかった。