IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

特開2023-182037無人航空機および無人航空機制御方法
<>
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図1
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図2
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図3
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図4
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図5
  • 特開-無人航空機および無人航空機制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182037
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】無人航空機および無人航空機制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 39/02 20060101AFI20231219BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20231219BHJP
   B64D 45/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B64C39/02
B64D47/08
B64D45/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095414
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】松岡 賢司
(72)【発明者】
【氏名】尾川 英明
(72)【発明者】
【氏名】倉重 規夫
(57)【要約】
【課題】無人航空機が第1物体に対する作業を行う場合に、作業の影響を受けうる第2物体に対し、作業の影響を低減させる技術を提供する。
【解決手段】ドローン100は、所定の作業を行うべき第1物体の周囲を撮影する撮影部108を備える。ドローン100は、第1物体の周囲を撮影した画像に基づいて、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第1物体とは異なる第2物体が存在する場合、そのことを検出する。ドローン100は、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第2物体が存在することが検出された場合、第1物体に対する作業の実行を制限する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機が所定の作業を行うべき第1物体および前記第1物体の周囲を撮影する撮影部と、
前記第1物体の周囲を撮影した画像に基づいて、前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第1物体とは異なる第2物体の存在を検出する検出部と、
前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第2物体が存在することが検出された場合、前記第1物体に対する前記作業の実行を制限する動作制御部と、
を備える無人航空機。
【請求項2】
前記検出部は、前記第2物体の移動状態を検出し、前記第2物体の移動状態に基づいて、前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第2物体が存在するか否かを判断する、
請求項1に記載の無人航空機。
【請求項3】
前記動作制御部は、複数の前記第1物体に順次接近して前記第1物体に対する前記作業を順次実行し、
前記動作制御部は、前記作業の実行対象となる前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第2物体が存在することが検出された場合、前記作業の実行対象となる前記第1物体に対する前記作業を中断し、前記複数の前記第1物体のうち他の前記第1物体を前記作業の実行対象とし、前記作業を中断した前記第1物体に対しては、他の前記第1物体に対する前記作業が行われた後に前記作業の実行対象とする、
請求項1または2に記載の無人航空機。
【請求項4】
前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第2物体が存在することが検出された場合に、前記第2物体に対する警告を出力する警告部をさらに備える、
請求項1または2に記載の無人航空機。
【請求項5】
無人航空機により撮影された画像であって、前記無人航空機が所定の作業を行うべき第1物体および前記第1物体の周囲を撮影した画像を取得するステップと、
前記画像に基づいて、前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第1物体とは異なる第2物体の存在を検出するステップと、
前記第1物体に対する前記作業の影響を受ける位置に前記第2物体が存在することが検出された場合、前記無人航空機による前記第1物体に対する前記作業の実行を制限するステップと、
をコンピュータが実行する無人航空機制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機および無人航空機制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
敷地内で移動可能な移動体が、当該敷地内の植物を撮影した画像データと知識データベースとを用いて植物の剪定要否を判断する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、カメラを搭載した無人航空機が、果樹園での収穫や剪定を自律的に行う技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-62882号公報
【特許文献2】特表2019-532666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、ドローン等の無人航空機を用いて樹木などの剪定作業を行う場合に、その樹木の近傍に居る人等の安全性を向上させる技術を想到した。本発明の目的は、無人航空機が第1物体に対する作業を行う場合に、作業の影響を受けうる第2物体に対し、作業の影響を低減させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無人航空機は、無人航空機が所定の作業を行うべき第1物体および第1物体の周囲を撮影する撮影部と、第1物体の周囲を撮影した画像に基づいて、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第1物体とは異なる第2物体の存在を検出する検出部と、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第2物体が存在することが検出された場合、第1物体に対する作業の実行を制限する動作制御部とを備える。
【0006】
本発明の別の態様は、無人航空機制御方法である。この方法は、無人航空機により撮影された画像であって、無人航空機が所定の作業を行うべき第1物体および第1物体の周囲を撮影した画像を取得するステップと、画像に基づいて、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第1物体とは異なる第2物体の存在を検出するステップと、第1物体に対する作業の影響を受ける位置に第2物体が存在することが検出された場合、無人航空機による第1物体に対する作業の実行を制限するステップとをコンピュータが実行する。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現をシステム、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、無人航空機が第1物体に対する作業を行う場合に、作業の影響を受けうる第2物体に対し、作業の影響を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例のドローンの構成例を示す図である。
図2図2(a)、図2(b)、図2(c)は、ドローンの剪定部の構成例を示す図である。
図3】ドローンが動画像を用いて状態を検出する領域を示す図である。
図4】ドローンが備える機能ブロックを示すブロック図である。
図5】樹木の剪定における状況の例を示す図である。
図6】ドローンの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、実施例の概要を説明する。実施例では、ドローン100による作業(具体的には剪定作業)の対象となる第1物体を樹木とする。また、第1物体とは異なる第2物体であり、樹木に対するドローン100の作業の影響を受ける位置に存在しうる物体を以下「被影響物体」とも呼ぶ。被影響物体は、例えば、人物や、人物が乗車している自転車、自動車を含む。
【0011】
一般的に、高所での樹木の剪定は、脚立やはしご車などを使用して人が高所に移動して作業するため危険な作業である。また、剪定道具もチェーンソーや大きな鋏など大掛かりな物で工数もかかるため、剪定作業の周期は1年に1回もしくはそれ以上の長さになることが多い。ドローンに剪定装置を装備する場合、高所への移動に関する問題は無いが、大掛かりな剪定道具を装備させるのは安全面で問題が生じうる。そのため、実施例のシステムでは、ドローンが、小さな枝葉を切り落とす程度の小さな鋏やチェーンソーなどを装備し、1週間に1回から1か月に1回程度の短い周期で剪定することを想定している。
【0012】
従来技術は、ドローンにより剪定した樹木の枝葉が落ちる場所の状況を判断しておらず、剪定対象の樹木の近傍に存在する被影響物体(人物や自動車等)に対する影響を低減する必要があった。実施例では、複数の樹木を巡回しつつ各樹木の枝葉を自律的に剪定するドローンについて、剪定中に枝葉が落ちる下方の状況に基づいて、ドローンの動作を適切に制御する技術を提案する。
【0013】
具体的には、剪定済みの樹木の状態をドローンに予め記憶させる。そして、ドローンによる剪定作業は、樹木のメンテナンスという位置づけとし、ドローンは、公園など公共の場を定期的に巡回して剪定作業を実行する。定期巡回時、ドローンは、前部に装備した撮像装置により得られた画像をもとに剪定が必要な樹木を判断する。その際、ドローンは、下部に装備した撮像装置により得られた画像をもとに、下方向の状況(樹木の下に人が居るか等)を判断する。ドローンは、下方向の状況に応じて、剪定作業を行う、下方向へ警告を出す、または別の場所へ移動する等の動作を選択的に実行する。これにより、樹木の下に人物が存在する可能性のある公園などでのドローンによる樹木の剪定作業を安全に実施可能となる。
【0014】
図1は、実施例のドローン100の構成例を示す。ドローン100は、自律飛行可能な無人航空機である。ドローン100は、後述の情報処理装置130を格納する筐体102、複数(例えば4枚)のプロペラ104、剪定部106、撮影部108、スピーカ110を備える。
【0015】
剪定部106は、作業対象の物体に対する作業(実施例では枝葉の剪定)を実行する部材である。図2(a)、図2(b)、図2(c)は、ドローン100の剪定部106の構成例を示す。図2(a)に示すように、剪定部106は、アーム116上に配設された鋏112と安全装置114を含む。鋏112は、樹木の枝葉を切り落とすための部材である。安全装置114は、鋏カバーとも言える。図2(b)および図2(c)に示すように、安全装置114は、剪定作業の実行時以外は鋏112が外部に露出しないように、アーム116上をスライドして鋏112の周囲を覆う。剪定部106は、剪定作業によって加わる応力がドローン100の飛行に大きく影響しないように、小型のチェーンソーであってもよい。
【0016】
図1に戻り、撮影部108は、撮影部108aと撮影部108bを含む。撮影部108aと撮影部108bのそれぞれは撮像素子を含む、いわゆるカメラである。撮影部108aおよび撮影部108bは、例えば、撮影画角が120度以上の広画角のカメラであることが好ましい。撮影部108aは、ドローン100の進行方向を含む周囲の空間を撮影した動画像(以下「周囲撮影画像」とも呼ぶ。)を生成する。実施例では、撮影部108aは、ドローン100が剪定作業を行うべき樹木を撮影する。また、撮影部108aは、ドローン100の自律飛行を行うための画像を撮影する。このため、撮影部108aは、複数のカメラで構成されることが好ましい。撮影部108aは、例えば、ドローン100の筐体102に対して、水平方向における4方向を向いた複数のカメラで構成される。撮影部108bは、ドローン100の下方の空間を撮影し、ドローン100の下方の空間が映る動画像(以下「下方撮影画像」とも呼ぶ。)を生成する。実施例では、撮影部108bは、ドローン100が剪定作業を行うべき樹木の周囲を撮影し、特に当該樹木の下の空間を撮影する。
【0017】
図3は、ドローン100が動画像を用いて状態を検出する領域を示す。周囲検出領域122は、撮影部108aによる周囲撮影画像を用いて状態が検出される領域である。周囲検出領域122は、ドローン100の全周方向を示すが、便宜的に樹木120の方向のみを図示する。実施例では、周囲検出領域122の樹木120の状態(枝葉の生い茂り具合等)に基づいて、樹木120の剪定要否が判断される。下方検出領域124は、撮影部108bによる下方撮影画像を用いて状態が検出される領域である。実施例では、下方検出領域124における物体の存在等に基づいて、剪定の実行または中断が判断される。
【0018】
なお、周囲検出領域122は、図3に示す態様に限られない。ドローン100は、剪定候補となる樹木120の全体が見える、より遠方またはより上空の位置から、樹木120の状態を認識してもよい。また、下方検出領域124は、図3に示す態様に限られない。ドローン100は、剪定候補となる樹木120の下方全体が見える、より遠方またはより上空の位置から、樹木120の下方の状態を認識してもよい。
【0019】
図4は、ドローン100が備える機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0020】
既述したように、ドローン100の筐体102には、情報処理装置130が格納される。情報処理装置130は、例えば、プロセッサ、メインメモリ、ストレージ等を備えるコンピュータである。情報処理装置130は、経路記憶部132、樹木情報記憶部134、経路取得部136、撮影画像取得部138、動作制御部140、判断部142、検出部144、警告部146を備える。これらの各機能ブロックは、図示しない無線通信部を介して接続される、コントローラやサーバ等の制御機能を用いて、または協働して実現されてもよい。
【0021】
経路記憶部132は、予め定められた、複数の樹木を順次剪定する際のドローン100の移動経路(剪定経路とも言える)のデータを記憶する。移動経路のデータは、例えば、剪定対象の複数の樹木が植えられた公園においてドローン100が巡回すべき複数の位置(複数の樹木の位置とも言え、例えば緯度および経度)を時系列に並べたデータであってもよい。
【0022】
樹木情報記憶部134は、予め定められた、剪定対象の1つ以上の樹木に関するデータを含む剪定樹木リストを記憶する。剪定対象の1つ以上の樹木に関するデータは、剪定が実施される候補となる1つ以上の樹木に関するデータとも言える。また、樹木情報記憶部134は、剪定樹木リストに含まれる剪定対象の各樹木に関する、人手またはドローンにより剪定済の樹木の状態を示すデータ(以下「剪定済樹木データ」とも呼ぶ。)を記憶する。剪定済樹木データは、剪定済の樹木を撮影した画像データであってもよい。樹木情報記憶部134は、剪定対象の1つ以上の樹木それぞれの位置と対応付けて、各樹木に関する剪定済樹木データを記憶してもよい。
【0023】
経路取得部136は、経路記憶部132に記憶されたドローン100の移動経路のデータを取得し、動作制御部140に出力する。経路取得部136は、剪定対象となる複数の剪定樹木を選定するための移動経路を複数記憶し、剪定対象の樹木群の決定により、移動経路を選択的に動作制御部140に出力する。経路取得部136は、図示しないGNSS(Global Navigation Satellite System)等の測位手段によるドローン100の位置情報に基づき、剪定対象となる樹木群を特定し、特定した樹木群の剪定を行うための移動経路を動作制御部140に出力する。
【0024】
撮影画像取得部138は、撮影部108aおよび撮影部108bが撮影した動画像を取得する。撮影画像取得部138は、取得した動画像を、判断部142、検出部144、動作制御部140に出力する。
【0025】
動作制御部140は、ドローン100を飛行させるプロペラ104の駆動を制御する。また、動作制御部140は、樹木等の剪定を行う剪定部106の動作を制御する。動作制御部140は、移動経路データや、撮影部108aが撮影した動画像、図示しないジャイロセンサなどの他のセンサからの情報を用いて、ドローン100の自律飛行の制御を行う。また、動作制御部140は、後述する判断部142の判断および撮影部108bが撮影した動画像に基づき、剪定部106による剪定動作を制御する。
【0026】
判断部142は、樹木情報記憶部134に記憶されている剪定済樹木データと、撮影部108aが撮影した動画像に基づき、剪定対象となる樹木の剪定要否や、剪定を要する箇所の判断を行う。また、判断部142は、剪定樹木リストと、動作制御部140の動作履歴に基づき、剪定対象となる樹木群において、未剪定の樹木の有無、剪定の中断を行った樹木の有無などを判断する。
【0027】
検出部144は、撮影画像取得部138から取得した下方撮影画像に基づき、被影響物体を検出する。検出部144は、下方撮影画像に対して、被影響物体を予め機械学習させた検出モデルを用いて、被影響物体を検出する。一例として、検出部144は、人物を上方または斜め上方から撮影した画像を機械学習させた人物検出モデルを用いて、下方撮影画像から人物を検出する。
【0028】
警告部146は、警告動作を制御する。具体的には、警告部146は、樹木に対する剪定作業の影響を受ける位置に、人物等の被影響物体が存在することが検出部144によって検出された場合、被影響物体に対して、音声などの手段を用いた警告動作を行うよう制御する。
【0029】
経路取得部136、撮影画像取得部138、動作制御部140、判断部142、検出部144、警告部146の機能は、コンピュータプログラムに実装されてもよく、このコンピュータプログラムが、情報処理装置130のストレージにインストールされてもよい。情報処理装置130のプロセッサ(CPU等)は、このコンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0030】
図5は、樹木の剪定における状況の例を示す。図5は、道路の両側に、複数の樹木からなる樹木群が存在する領域を上方から見たように示す概念図である。破線で示す移動経路150は、予め定められたドローン100の移動経路(剪定経路)を示している。移動経路150は、剪定を行う樹木の位置を示す移動経路を概略的に示しており、実際には、樹木毎に周囲を旋回する移動が行われる。網掛けのない樹木160は、剪定済の樹木である。樹木162、樹木164、樹木166、樹木168は、未剪定の樹木であり、これから剪定が必要な樹木である。図5は、剪定のためにドローン100が接近した樹木162の下に人物170が存在している状況を示している。
【0031】
図6は、ドローン100の動作を示すフローチャートである。以下、図5図6を参照しつつ、ドローン100の動作、つまり情報処理装置130の処理例を説明する。
【0032】
経路取得部136は、経路記憶部132に記憶されたドローン100の移動経路データを取得し、取得した移動経路データを動作制御部140に渡す(ステップS10)。言い換えると、動作制御部140は、剪定ルートである移動経路データを取得する。また、動作制御部140は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の測位手段(不図示)により得られたドローン100の現在位置と、経路取得部136から入力された移動経路データとに基づいて、予め定められた移動経路に沿ってドローン100を飛行させるようプロペラ104の駆動を制御する。つまり、動作制御部140は、ドローンの飛行を開始させて、剪定ルートに基づいた飛行を行わせる。実施例では、動作制御部140は、移動経路上の複数の樹木に順次接近して、複数の樹木に対する剪定作業を順次実行する。
【0033】
判断部142は、樹木情報記憶部134に記憶された剪定樹木リストを参照し、剪定樹木リストに剪定対象候補の樹木が残っているか否かを判断する(ステップS12)。図5の例では、剪定樹木リストに当初8本分の樹木のデータが記録される。剪定樹木リストに剪定対象候補の樹木が残っていなければ(ステップS12のNo)、本図の処理を終了する。この場合、動作制御部140は、ドローン100の基地まで帰還するようプロペラ104の駆動を制御してもよい。
【0034】
剪定樹木リストに剪定対象候補の樹木が残っていれば(ステップS12のYes)、判断部142は、1つの剪定対象候補の樹木を目標樹木として選択する。判断部142は、樹木情報記憶部134に記憶された目標樹木の位置情報を動作制御部140に渡す。動作制御部140は、予め定められた移動経路に沿って目標樹木の近傍位置までドローン100を飛行させる。
【0035】
ドローン100が目標樹木の近傍位置に達した場合、判断部142は、撮影画像取得部138が取得した周囲撮影画像に基づき、現在の目標樹木の状態(例えば枝葉の生い茂りの状態)と、樹木情報記憶部134に記憶された剪定済樹木データが示す剪定済みの目標樹木の状態とを比較することにより、目標樹木に対する剪定要否を判断する(ステップS14)。例えば、判断部142は、周囲撮影画像が示す現在の目標樹木の状態と、剪定済樹木データが示す剪定済みの目標樹木の状態との乖離度合いが所定の閾値以上であれば、目標樹木に要剪定箇所があると判断してもよい。また、判断部142は、他の公知技術を用いて、目標樹木に要剪定箇所があるか否かを判断してもよい。
【0036】
目標樹木に対して、剪定を要さないと判断した場合(ステップS16のNo)、判断部142は、剪定樹木リストから目標樹木のデータを削除し(ステップS18)、ステップS12の判断処理に戻る。戻ったステップS12の処理では、剪定樹木リストに残っている剪定対象候補の樹木であり、すなわち、その時点まで剪定未完了の樹木を新たな目標樹木として選択する。
【0037】
目標樹木に対して、剪定を要すると判断した場合(ステップS16のYes)、検出部144は、樹木の周囲を撮影した動画像(実施例では撮影部108bにより撮影された下方撮影画像)に基づいて、人や自転車、自動車等の被影響物体が樹木の剪定作業の影響を受ける位置に存在するか否かを判断する(ステップS20)。例えば、検出部144は、公知の物体検出技術を用いて、取得された複数の下方撮影画像に映る被影響物体の位置と移動状態を検出してもよい。移動状態は、移動方向および移動速度を含んでもよい。
【0038】
検出部144が、目標樹木の周辺に被影響物体が存在していると判断しない場合(ステップS20のNo)、動作制御部140は、剪定部106(例えば鋏112)の動作を制御して、目標樹木に対する剪定作業を実行し、目標樹木に対する剪定作業が終了すると、目標樹木を選定樹木リストから削除する(ステップS22)。目標樹木に対する剪定作業が完了すると、ステップS12の判定に戻る。
【0039】
検出部144が、目標樹木の周辺に被影響物体が存在すると判断した場合(ステップS20のYes)、動作制御部140は、検出部144と連携して、目標樹木に対する剪定作業の実行を制限する。この制限は、例えば、一定時間の待機(一時待機)、剪定作業のスキップ(後回し)、剪定作業の中止のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0040】
また、ステップS22における、剪定作業の実行中であっても、検出部144が、剪定中の樹木の周辺に被影響物体が存在すると判断した場合、ステップS24に進めてもよい。
【0041】
実施例では、検出部144は、樹木の周囲を撮影した画像(撮影部108bによる下方撮影画像)に基づいて、下方撮影画像に映る被影響物体の移動状態(移動方向および移動速度)を検出する。被影響物体が移動中の場合(例えば移動速度が所定の閾値以上の場合)(ステップS24のYes)、しばらくすれば被影響物体は剪定作業の影響が及ぶ範囲の外に出ると考えられる。そのため、検出部144は、剪定作業の一時待機を動作制御部140に指示し、動作制御部140は、予め定められた時間(例えば10秒間)、剪定作業を未実行のまま待機する(ステップS26)。所定時間待機後、ステップS20の判定処理に戻る。
【0042】
被影響物体が移動中でない場合(例えば移動速度が所定の閾値未満であり、静止状態と見なせる場合)(ステップS24のNo)、ある程度の時間以上、被影響物体は剪定作業の影響が及ぶ範囲内に留まると考えられる。そのため、検出部144は、今回の目標樹木に関する処理をスキップして、次の目標樹木に関する処理を実行するよう判断部142および動作制御部140に指示する。
【0043】
判断部142は、剪定樹木リストに剪定対象候補の樹木が残っているか否かを判断する(ステップS28)。剪定対象候補の樹木が残っていれば(ステップS28のYes)、判断部142は、その樹木を新たな目標樹木として選択する。判断部142は、樹木情報記憶部134に記憶された新たな目標樹木の位置情報を動作制御部140に渡す。動作制御部140は、新たな目標樹木の近傍位置までドローン100を飛行させる。ドローン100が新たな目標樹木の近傍位置に達した場合、判断部142は、ステップS14と同様に、新たな目標樹木に要剪定箇所があればそのことを検出する(ステップS30)。以降、ステップS16の判定処理に戻る。
【0044】
このように、実施例のドローン100では、動作制御部140は、第1の樹木に対する剪定作業の影響を受ける位置に被影響物体が存在することが検出された場合、第1の樹木に対する剪定作業の実行を一旦中断し、第1の樹木とは異なる第2の樹木に対する剪定作業を先に実行する。ただし、第1の樹木のデータは剪定樹木リストから削除されないため、動作制御部140は、第2の樹木に対する剪定作業が終了すると、第1の樹木に再度接近する。この場合、判断部142は、第1の樹木に対する剪定作業の影響を受ける位置に被影響物体が存在するか否かを再度判断する。
【0045】
剪定樹木リストに候補となる樹木(言い換えれば新たな目標樹木の候補)が残っていなければ(ステップS28のNo)、判断部142は、その旨を動作制御部140に伝える、動作制御部140は、警告処理を実行するよう警告部146に指示する。警告部146は、動作制御部140の指示にしたがって、スピーカ110の動作を制御し、被影響物体に対する警告音声をスピーカ110から出力させる(ステップS32)。警告音声は、被影響物体に対して目標樹木から離れるよう促す内容であってもよい。例えば、警告音声は、「剪定作業のため枝葉が落ちてくることがあります。別の場所に移動して下さい。」であってもよい。なお、警告部146は、音声とは異なる手段(例えば光等)を用いて、被影響物体への警告を実行してもよい。警告部146によって、被影響物体への警告を行うことで、樹木の剪定作業の実行効率を高めることができる。
【0046】
図5の例では、樹木162の近傍位置に被影響物体である人物170が検知されるため、樹木162に対する剪定作業は一旦中断され、剪定樹木リストに残っている樹木164、樹木166、樹木168に対する剪定作業が先に実行される。樹木168の剪定が完了すると、ドローン100は、樹木162の位置に戻り、樹木162の近傍位置に被影響物体が存在するか否かを再度判断する。このとき、樹木162の近傍位置に依然として人物170が居る場合、今度は剪定樹木リストに他の樹木のデータが残っていないため、警告部146は、人物170に対する警告処理を実行する。変形例として、図5の例では、樹木162に対する剪定作業を一旦中断し、樹木164の剪定作業を完了した場合、樹木166に進むより先に樹木162に戻ってもよい。
【0047】
実施例のドローン100によると、樹木の下に人や自転車等の被影響物体が存在する可能性のある公園などで樹木の剪定作業を行う場合に、被影響物体に対する樹木の剪定作業の影響を低減させることができる。
【0048】
以上、本発明を、実施例をもとに説明した。実施例に記載の内容は例示であり、実施例の構成要素や処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0049】
第1変形例を説明する。上記実施例では言及していないが、ドローン100の検出部144は、図6のステップS24の判定処理において、被影響物体の移動方向を加味してもよい。例えば、検出部144は、被影響物体の移動方向が、剪定作業の影響を受けうる範囲の中から外に出て行く方向であり、かつ、移動速度が所定の閾値以上である場合、ステップS24のYesへ進み、一定時間の待機を選択してもよい。一方、被影響物体の移動方向が、剪定作業の影響を受けうる範囲の中から外に出て行く方向であり、かつ、移動速度が所定の閾値未満の場合、検出部144は、ステップS24のNoへ進み、新たな目標樹木の選択へ進んでもよい。
【0050】
また、検出部144は、被影響物体の移動方向が、剪定作業の影響を受けうる範囲の外から中に入ってくる方向である場合、被影響物体の移動速度にかかわらず、ステップS24のNoへ進み、新たな目標樹木の選択へ進んでもよい。この場合、剪定作業中に、剪定作業の影響を受けうる範囲の中に被影響物体が入ってくる可能性が高いからである。このため、被影響物体移動状態に基づいて、剪定作業の実行や制限を適応的に行うことができる。
【0051】
第2変形例を説明する。上記実施例では、検出部144は、目標樹木の周囲に存在する被影響物体を画像解析により検出した。変形例として、ドローン100は、撮影部108bとして遠赤外線(FIR:Far Infrared Rays)カメラを備えてもよい。検出部144は、FIRカメラにより検知された目標樹木の周囲の熱画像に基づいて、目標樹木の周囲に存在する被影響物体を検出してもよい。
【0052】
第3変形例を説明する。上記実施例のドローン100は、樹木の剪定作業を実行したが、変形例として、ドローン100は、作業対象の物体に対して剪定作業とは異なる作業を実行してもよい。剪定作業とは異なる作業は、例えば、果実等の収穫であってもよく、防虫剤の散布であってもよく、清掃作業であってもよい。この変形例によると、ドローン100を用いて作業対象の物体に対して剪定作業とは異なる様々な作業を実行する場合に、作業対象の物体の近傍に存在する被影響物体に対し、作業の影響を低減することができる。
【0053】
第4変形例を説明する。上記実施例においてドローン100の情報処理装置130が備えた機能のうち少なくとも一部の機能は、通信網(例えば第4世代または第5世代移動通信システム)を介してドローン100と接続される外部の情報処理装置(ここではサーバと呼ぶ。)に実装されてもよい。ドローン100は、移動通信システムを介してサーバとデータを送受信する通信部をさらに備えてもよい。これにより、サーバとドローン100との連携による剪定システムが実現されてもよい。
【0054】
第4変形例では、例えば、撮影画像取得部138、判断部142、検出部144の機能はサーバに実装されてもよい。ドローン100の動作制御部140は、サーバによる判断結果や検出結果、制御指示のデータを通信部を介して取得してもよい。ドローン100の動作制御部140は、サーバから取得したデータに基づいて、プロペラ104を回転させるモータや剪定部106の動作を制御することにより、ドローン100の移動や剪定作業を制御してもよい。第4変形例の剪定システムは、実施例のドローン100と同様の効果を奏する。
【0055】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0056】
100 ドローン、 108 撮影部、 130 情報処理装置、 138 撮影画像取得部、 140 動作制御部、 142 判断部、 144 検出部、 146 警告部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6