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特開2023-182042衛星利用メタシステム、衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182042
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】衛星利用メタシステム、衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/06 20230101AFI20231219BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20231219BHJP
   H04N 21/2668 20110101ALI20231219BHJP
   H04N 21/258 20110101ALI20231219BHJP
   B64G 1/10 20060101ALI20231219BHJP
   B64G 3/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G06Q30/06
G06Q50/10
H04N21/2668
H04N21/258
B64G1/10 600
B64G1/10 300
B64G3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095423
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平原 大地
【テーマコード(参考)】
5C164
5L049
【Fターム(参考)】
5C164FA07
5C164SA26S
5C164SC05P
5C164SC11P
5C164YA11
5L049BB54
5L049CC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】衛星サービスの利用を促進させることが可能な衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法を提供する。
【解決手段】衛星利用メタシステム210は、受注部212と、発注部213とを具備する。受注部212は、エンドユーザーから受領した観測パラメータを含む観測要求と、エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理する。発注部213は、エンドユーザーから受領した観測要求を一元化し、観測衛星群を運用する利用管理システム204に発注する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドユーザーから受領した観測パラメータを含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理する受注部と、
エンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測衛星群を運用する利用管理システムに発注する発注部と
を具備する衛星利用メタシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記利用管理システム、前記観測衛星群又は衛星クラウドに対して前記観測要求を供給し、観測衛星群が観測により生成した観測データを配信するデータ配信システム、前記観測衛星群又は前記衛星クラウドから前記観測データを取得するインターフェース部と、
前記利用管理システム、前記観測衛星群又は前記衛星クラウドが提供するサービスのうち、ブロックチェーン又はAPI(Application Programming Interface)が未対応のサービスに対して自動発注を提供する仲介部と
をさらに具備する衛星利用メタシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の衛星利用メタシステムであって、
エンドユーザーに前記観測データの取引所機能を提供する取引部
をさらに具備する衛星利用メタシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記取引部は、前記観測データをNFT(Non-Fungible Token)化する
衛星利用メタシステム。
【請求項5】
請求項2に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、エンドユーザー、前記観測要求及び前記観測データの対応関係を乱数化する
衛星利用メタシステム。
【請求項6】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、観測パラメータが近似する観測が実行されないように、前記観測要求を最適化する
衛星利用メタシステム。
【請求項7】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測要求の優先度を決定し、優先度が高い観測要求と観測パラメータが近似する、優先度が低い観測要求の観測が実行されないように、前記観測要求を最適化する
衛星利用メタシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、優先度が低い観測要求の観測が実行されないように、前記観測衛星群のリソースを消耗させる観測要求を生成する
衛星利用メタシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測衛星群のリソースを消耗させるように内部でオフチェーン処理を実施し、衛星クラウドに対してサイドチェーン処理を実施する
衛星利用メタシステム。
【請求項10】
請求項9に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、採算が合う範囲で観測要求を追加して前記オフチェーン及び前記サイドチェーンのボリュームを補間する
衛星利用メタシステム。
【請求項11】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測要求と観測パラメータが近似する観測により前記観測衛星群が生成した観測データを買い占める
衛星利用メタシステム。
【請求項12】
請求項11に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測要求に基づいて生成された観測データと前記買い占めた観測データをセットにして販売する
衛星利用メタシステム。
【請求項13】
請求項6に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測衛星群の軌道情報を解析する観測衛星ネットワーク解析部及び前記観測衛星群が観測により生成する観測データの価値をシミュレートする価値シミュレート部を備える
衛星利用メタシステム。
【請求項14】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記発注部は、前記観測衛星群と前記利用管理システムの間の通信を媒介する通信衛星を、前記衛星利用メタシステムによる通信を優先するように最適化する
衛星利用メタシステム。
【請求項15】
請求項1に記載の衛星利用メタシステムであって、
前記取引部は、所定の観測パラメータで任意の日時に観測の予約でき、前記観測衛星群によって生成された観測データ及び観測データの将来の取得権利をエンドユーザー間で売買できるように構成されている
衛星利用メタシステム。
【請求項16】
エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理し、
複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測衛星を運用する利用管理システムに発注する
衛星利用方法。
【請求項17】
エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理する受注部と、
複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測装置を運用する利用管理システムに発注する発注部と
を具備するセンサ利用メタシステム。
【請求項18】
エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理し、
複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測装置を運用する利用管理システムに発注する
センサ利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観測衛星又は観測装置の利用に係る衛星利用メタシステム、衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、民間小型衛星のメガコンステレーションやそれらを構築するための高度なロケットサービスなど、宇宙インフラ整備や手段については高度な同時打ち上げ能力を誇る技術性の高さがエンターテイメント性も強く、大いに盛り上がりを見せている。
【0003】
これに対し、それらが提供する衛星サービスへの関心という面では、サービス提供技術が発展途上であり、個別の窓口が乱立し、利用者は一部の研究者や公的組織が主体といった状況で伸びしろを残している状況といえる。例えば、特許文献1乃至3にはユーザーが衛星画像をリクエストすると、リクエスト内容に応じた衛星画像を衛星画像データベースから検索して配信する技術について記載されている。
【0004】
また、近年では、非代替性トークン(NFT:Non-Fungible Token)によるデジタルコンテンツの権利化や暗号化による観測要求等の秘匿性確保について、衛星通信や衛星リモートセンシングにおいても議論が加速し、新興国のキラーコンテンツとして整備が始まっている。ブロックチェーンとAPI(Application Programming Interface)化によりエンドユーザーが衛星への観測要求を自由にできる構想が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-073055号公報
【特許文献2】特開2002-112226号公報
【特許文献3】特開2001-307063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、衛星サービスの利用エンターテイメント性という点ではまだまだ未成熟といえる。そこには、公共機関や科学者が必要に応じて観測しているのが主体であり、その他は上記特許文献1乃至3に記載のように、公開データアーカイブから必要に応じて取得するような状況に過ぎないといえる一面がある。衛星サービスの利用を推進するためにはスクープ性の向上や高付加価値化が好ましいといえる。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、衛星サービスの利用を促進させることが可能な衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る衛星利用メタシステムは、受注部と、発注部とを具備する。
前記受注部は、エンドユーザーから受領した観測パラメータを含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理する。
前記発注部は、エンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測衛星群を運用する利用管理システムに発注する。
【0009】
前記衛星利用メタシステムは、前記利用管理システム、前記観測衛星群又は衛星クラウドに対して前記観測要求を供給し、観測衛星群が観測により生成した観測データを配信するデータ配信システム、前記観測衛星群又は前記衛星クラウドから前記観測データを取得するインターフェース部と、前記利用管理システム、前記観測衛星群又は前記衛星クラウドが提供するサービスのうち、ブロックチェーン又はAPI(Application Programming Interface)が未対応のサービスに対して自動発注を提供する仲介部とをさらに具備してもよい。
【0010】
前記衛星利用メタシステムは、エンドユーザーに前記観測データの取引所機能を提供する取引部をさらに具備してもよい。
【0011】
前記取引部は、前記観測データをNFT(Non-Fungible Token)化してもよい。
【0012】
前記発注部は、エンドユーザー、前記観測要求及び前記観測データの対応関係を乱数化してもよい。
【0013】
前記発注部は、観測パラメータが近似する観測が実行されないように、前記観測要求を最適化してもよい。
【0014】
前記発注部は、前記観測要求の優先度を決定し、優先度が高い観測要求と観測パラメータが近似する、優先度が低い観測要求の観測が実行されないように、前記観測要求を最適化してもよい。
【0015】
前記発注部は、優先度が低い観測要求の観測が実行されないように、前記観測衛星群のリソースを消耗させる観測要求を生成してもよい。
【0016】
前記発注部は、前記観測衛星群のリソースを消耗させるように内部でオフチェーン処理を実施し、衛星クラウドに対してサイドチェーン処理を実施してもよい。
【0017】
前記発注部は、採算が合う範囲で観測要求を追加して前記オフチェーン及び前記サイドチェーンのボリュームを補間してもよい。
【0018】
前記発注部は、前記観測要求と観測パラメータが近似する観測により前記観測衛星群が生成した観測データを買い占めてもよい。
【0019】
前記発注部は、前記観測要求に基づいて生成された観測データと前記買い占めた観測データをセットにして販売してもよい。
【0020】
前記発注部は、前記観測衛星群の軌道情報を解析する観測衛星ネットワーク解析部及び前記観測衛星群が観測により生成する観測データの価値をシミュレートする価値シミュレート部を備えてもよい。
【0021】
前記発注部は、前記観測衛星群と前記利用管理システムの間の通信を媒介する通信衛星を、前記衛星利用メタシステムによる通信を優先するように最適化してもよい。
【0022】
前記取引部は、所定の観測パラメータで任意の日時に観測の予約でき、前記観測衛星群によって生成された観測データ及び観測データの将来の取得権利をエンドユーザー間で売買できるように構成されていてもよい。
【0023】
本発明の一形態に係る衛星利用方法は、エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理し、複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測衛星を運用する利用管理システムに発注する。
【0024】
本発明の一形態に係るセンサ利用メタシステムは、エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理する受注部と、複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測装置を運用する利用管理システムに発注する発注部とを具備する。
【0025】
本発明の一形態に係るセンサ利用方法は、エンドユーザーから受領した観測パラメータ及び観測優先度を含む観測要求と、前記エンドユーザーを特定する情報である利用者情報を集約管理し、複数のエンドユーザーから受領した前記観測要求を一元化し、観測装置を運用する利用管理システムに発注する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、エンドユーザーから受領した観測要求を集約管理し、一元化することでスクープ性の向上及び高付加価値化を実現することができ、衛星サービスの利用を促進させることが可能な衛星利用方法、センサ利用メタシステム及びセンサ利用方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来の衛星利用方式の模式図である。
図2】本発明の実施形態に係る衛星利用メタシステムを用いた衛星利用方式の模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る衛星利用メタシステムの動作を示すチャートである。
図4】本発明の実施形態に係る衛星利用メタシステムの機能的構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施形態に係る衛星利用メタシステムが備える発注部の動作を示すチャートである。
図6】本発明の実施形態に係る衛星利用メタシステムのハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0029】
[従来の衛星利用方式]
まず、比較として、従来の衛星利用方式について説明する。図1は、従来の衛星利用方式の模式図である。同図に示す従来の衛星利用方式は、観測衛星群101、衛星クラウド102、通信衛星103、利用管理システム104、データ配信システム105及びエンドユーザー106によって構成されている。
【0030】
観測衛星群101は複数の観測衛星107からなる群であり、例えば、特定の法人が運用する一群の観測衛星や衛星コンステレーションを構成する一群の観測衛星である。衛星クラウド102は、観測衛星群101から構成され、仮想的に運用されるクラウドである。通信衛星103は、観測衛星群101と利用管理システム104の間の少なくとも一部の通信を媒介する。
【0031】
利用管理システム104は、観測衛星群101の運行及び観測を管理する。利用管理システム104は例えば、各国の各利用管理会社が運営するシステムである。利用管理システム104はエンドユーザー106から観測要求を受領すると、その観測要求を観測衛星群101に送信する。観測要求は観測地点、観測日時及び観測機器種類(撮影波長等)等の観測パラメータを含む。観測衛星群101は観測要求を受信すると、観測パラメータにしたがって観測を実行し、観測結果のデータである観測データを生成する。
【0032】
データ配信システム105は、観測衛星群101から観測データを取得し、エンドユーザー106へ配信する。データ配信システム105は例えば、各国のデータ配信管理会社が運営するシステムである。エンドユーザー106は、利用管理システム104を目的の観測衛星群101に合わせて選択し、個人情報や決済手段を用いて利用登録し、時には観測データの価格情報を得るために問い合わせを行いながら利用する。
【0033】
[本発明に係る衛星利用方式]
続いて、本発明に係る衛星利用方式について説明する。図2は、本発明に係る衛星利用方式の模式図である。同図に示す本発明の衛星利用方式は、観測衛星群201、衛星クラウド202、通信衛星203、利用管理システム204、データ配信システム205、エンドユーザー206及び衛星利用メタシステム210によって構成されている。
【0034】
観測衛星群201は複数の観測衛星207からなる群であり、例えば、特定の法人が運用する一群の観測衛星や衛星コンステレーションを構成する一群の観測衛星である。衛星クラウド202は、観測衛星群201から構成され、仮想的に運用されるクラウドである。観測衛星群201及び衛星クラウド202は、API(Application Programming Interface)及びNFT(Non-Fungible Token)の一方又は両方に対応しているものであってもよく、こられに非対応なものであってもよい。通信衛星203は、観測衛星群201と利用管理システム204の間の少なくとも一部の通信を媒介する。
【0035】
利用管理システム204は、観測衛星群201の運行及び観測を管理する。利用管理システム204は例えば、各国の各利用管理会社が運営するシステムである。利用管理システム204は衛星利用メタシステム210から最適化された観測要求を受領すると、観測要求を観測衛星群201に送信する。観測要求は観測地点、観測日時及び観測機器種類(撮影波長等)等の観測パラメータを含む。観測衛星群201は観測要求を受信すると、観測パラメータにしたがって観測を実行し、観測結果のデータである観測データを生成する。
【0036】
データ配信システム205は、観測衛星群201から観測データを取得し、衛星利用メタシステム210へ配信する。データ配信システム205は例えば、各国のデータ配信管理会社が運営するシステムである。エンドユーザー206は衛星利用メタシステム210を利用して観測要求を行い、観測データを取得する。
【0037】
図3は、本発明に係る衛星利用方式の動作チャートである。同図に示すようにエンドユーザー206から衛星利用メタシステム210に観測要求が供給されると、衛星利用メタシステム210は観測要求を最適化し、最適化観測要求を生成する。この詳細については後述する。衛星利用メタシステム210は最適化観測要求を利用管理システム204に供給し、利用管理システム204は最適化観測要求を観測衛星群201に供給する。なお、衛星利用メタシステム210は直接に、又は衛星クラウド202を介して最適化観測要求を観測衛星群201に供給してもよい。
【0038】
観測衛星群201において最適化観測要求に基づいて観測データが生成されると、データ配信システム205は観測衛星群201から観測データを取得し、衛星利用メタシステム210に供給する。なお衛星利用メタシステム210は直接に、又は衛星クラウド202を介して観測衛星群201から観測データを取得してもよい。衛星利用メタシステム210は観測データの取引機能を有し、エンドユーザー206は衛星利用メタシステム210に観測データ取得要求を行い、観測データを取得する。観測データの取得は売買によって行うことができ、観測要求を実行していないエンドユーザー206も所望の観測データを購入することが可能である。
【0039】
[衛星利用メタシステムについて]
衛星利用メタシステム210の構成について説明する。図4は衛星利用メタシステム210の構成を示すブロック図である。同図に示すように、衛星利用メタシステム210はインターフェース部211、受注部212、発注部213、仲介部214及び取引部215を備える。これらの構成はハードウェアとソフトウェアの協働により実現される機能的構成である。
【0040】
インターフェース部211は、利用管理システム204へ観測の注文を行い、利用管理システム204へ最適化観測要求を供給する。インターフェース部211は利用管理システム204へAPIやRPA(Robotic Process Automation)を利用して注文を自動化することができる。また、インターフェース部211は、観測衛星群201及び衛星クラウド202がAPI又はNFTに対応している場合、利用管理システム204の機能を代行し、直接に観測衛星群201又は衛星クラウド202へ注文を行い、これらへ最適化観測要求を供給することも可能である。以下、最適化観測要求の供給先である利用管理システム204、観測衛星群201及び衛星クラウド202を「利用管理システム204等」と表記する。
【0041】
さらにインターフェース部211は、データ配信システム205から観測データを取得する。また、インターフェース部211は、観測衛星群201及び衛星クラウド202がAPI又はNFTに対応している場合、データ配信システム205の機能を代行し、直接に観測衛星群201又は衛星クラウド202から観測データを取得することができる。以下、観測データの取得元であるデータ配信システム205、観測衛星群201及び衛星クラウド202を「データ配信システム205等」と表記する。
【0042】
受注部212は、エンドユーザー206から受領した観測要求と利用者情報を集約管理する。利用者情報は、エンドユーザー206の識別情報とそのエンドユーザー206が行った観測要求を関連付ける情報である。受注部212は、観測要求及び利用者情報を発注部213に供給する。さらに、受注部212は発注部213から取得した観測データを取引部215に供給する。
【0043】
発注部213は、複数のエンドユーザー206から受領した観測要求を一元化し、インターフェース部211を介して利用管理システム204等に観測要求を発注する。この際、発注部213は、観測要求と利用者情報の対応関係を乱数化し、外部からこの対応関係がわからないようにすることができる。特に発注部213は各処理毎に数段階で乱数化すると好適である。また、いずれの観測要求元も衛星利用メタシステム210の代表名義等で統一されてもよい。
【0044】
また、発注部213は、エンドユーザー206から受領した観測要求について、観測パラメータが近似する観測が可能な限り実行されないように、他の観測要求との組み合わせを最適化し、最適化観測要求を生成する。さらに発注部213はインターフェース部211を介してデータ配信システム205等から観測データを取得し、受注部212に供給する。
【0045】
仲介部214は、利用管理システム204等が提供するサービスのうち、ブロックチェーン又はAPIが未対応のサービスに対して自動発注を行い、最適化観測要求を利用管理システム204等に供給する。仲介部214は、例えばブラウザやアプリケーションサービスであればRPA等を用いて自動発注を行う。
【0046】
取引部215は、エンドユーザー206に取引所機能を提供する。取引部215は受注部212から取得した観測データを売買可能に構成され、エンドユーザー206から観測データ要求を需要すると観測データの取引を成立させ、観測データをエンドユーザー206に提供する。この際、取引部215は、観測データをNFT化することができる。さらに、取引部215は、所定の観測パラメータで任意の日時に観測の予約ができ、観測データの将来の取得権利をエンドユーザー206間で売買可能とする。観測データの将来の取得権利は、将来の特定の日時において特定の地点を観測して得られる観測データを取得する権利である。
【0047】
衛星利用メタシステム210は以上のような構成を有する。衛星利用メタシステム210は上記構成の全てを備えるものに限られず、少なくとも受注部212と発注部213を備えるものであればよい。
【0048】
[スクープ性の向上ついて]
発注部213は、上述のようにエンドユーザー206から受領した観測要求を最適化するが、以下のようにして観測要求を最適化し、観測のスクープ性を向上させることも可能である。発注部213は、図4に示すように、観測衛星207の軌道情報を解析する観測衛星ネットワーク解析部216と観測データの価値をシミュレートする価値シミュレート部217を備える。
【0049】
発注部213は、観測衛星ネットワーク解析部216による解析結果を利用して観測要求を生成し、エンドユーザー206から受領した観測要求の観測パラメータと近似する観測パラメータの観測を行う観測衛星群201のリソースを消耗させ、他の観測が実行されないようにすることができる。
【0050】
例えば、発注部213は、エンドユーザー206から受領した観測要求の観測パラメータが所定時刻、所定地点を所定の観測装置で観測するものである場合、同時刻から一定時間以内に同地点から一定範囲を、同一又は類似の観測装置で観測可能な観測衛星207を特定する。一定時間は例えば1時間であり、一定範囲は例えば半径10kmの範囲である。発注部213は、この特定した観測衛星207に同時刻に他の地点を観測するようにエンドユーザー206から受領した他の観測要求の割り当て、又は新たに観測要求を生成する。これにより、エンドユーザー206から受領した観測要求による観測以外の観測が実行されないようにすることができる。
【0051】
発注部213はこの処理を、観測衛星207のリソースを消耗させるように複数の観測要求を組み合わせる過程で、詳細をブロックチェーン上から秘匿するとともに手数料等の削減のために内部でオフチェーン処理を実施してもよい。また、複数の観測要求を分割再結合させることで全体を効率化するとともに観測要求のスクランブル化を向上させるように衛星クラウド202に対してサイドチェーン処理を実施してもよい。図5は発注部213の動作を示すチャートである。同図に示すように発注部213は、サイドチェーン及びオフチェーンを形成することで、エンドユーザー206から受領した観測要求群から最適化観測要求群を生成することができる。オフチェーン処理やサイドチェーン処理は、対象となる一つの観測衛星207に対してや利用管理システム204に対して実施してもよい。さらに発注部213は、採算が合う範囲で観測要求を追加してオフチェーン及びサイドチェーンのボリュームを補間することができる。
【0052】
これにより、エンドユーザー206から受領した観測要求による観測に類似した観測の実行が防止される。例えば、特定のエンドユーザー206の観測要求によって観測された観測データにスクープ性の高いものが含まれていた場合、他のエンドユーザー206が購入した観測データにそのクープ性の高いものが含まれることが防止される。このため、観測要求及び観測データのスクープ性を向上させることができる。
【0053】
発注部213は、エンドユーザー206から受領した複数の観測要求の観測パラメータが近似する場合、観測優先度に応じて観測要求を最適化することができる。観測優先度は、発注部213が決定する観測の優先度である。発注部213は、早期に購入された観測要求に高い観測優先度を付してもよく、高額で購入された観測要求に高い観測優先度を付してもよい。
【0054】
発注部213は、観測優先度に応じて観測要求を最適化し、観測優先度が高い観測要求による観測が実行され、観測優先度が低い観測要求による観測が実行されないようにすることができる。発注部213は、観測優先度が高い観測要求の観測パラメータから一定範囲内の観測パラメータの観測を行う観測衛星207のリソースを上述のように消耗させることができる。
【0055】
この場合も、観測優先度が高い観測要求による観測に類似した観測の実行が防止されるため、観測優先度が高い観測要求に基づく観測データのスクープ性が向上する。このため、観測優先度が高い観測要求の価値を向上させることが可能である。
【0056】
さらに、発注部213は、価値シミュレート部217によるシミュレート結果を利用して観測衛星群201から取得した観測データを買い占め、観測のスクープ性を向上させることも可能である。例えば、発注部213は、エンドユーザー206から受領した観測要求の観測パラメータが所定時刻、所定地点を所定の観測装置で観測するものである場合、同時刻から一定時間以内に同地点から一定範囲を、同一又は類似の観測装置で観測された観測データを特定する。一定時間は例えば1時間であり、一定範囲は例えば半径10kmの範囲である。発注部213は、この特定した観測データを買い占め、取引部215に供給されないようにすることができる。
【0057】
これにより、エンドユーザー206から受領した観測要求による観測に類似した観測に基づく観測データが取引部215に流通することを防止し、観測要求及び観測データのスクープ性を向上させることができる。
【0058】
なお、発注部213は、上記のように買い占めた観測データと、エンドユーザー206から受領した観測要求に基づく観測データをセットして取引部215に供給し、販売することも可能である。エンドユーザー206から受領した観測要求に基づく観測データに類似した観測データがセットとなるため、観測データの価値を向上させることができる。
【0059】
発注部213は、上述した観測衛星207のリソースの消耗と観測データの買い占めの一方を実行してもよく、両方を実行してもよい。発注部213をこのような構成とすることにより、観測要求及び観測データのスクープ性を向上させることができる。したがって、エンドユーザー206は取引部215においてスクープ性の高い観測要求や観測データを高額で販売することも可能となる。
【0060】
以上のように衛星利用メタシステム210によれば、スクープ性の高い観測要求を行ったエンドユーザー206が利益を得ることで衛星サービスの利用が加速する。エンドユーザー206は、自己の観測要求による観測で、「事故が防げた」「事件が発覚した」「きれいな写真が共感を得た」等となることを狙うようになり、真似をされることで各種イニシアチブを得られるように配慮する。その結果、衛星サービスの利用を促進させることが可能となる。
【0061】
[通信衛星について]
図2に示すように、観測衛星群201と衛星利用メタシステム210の通信には通信衛星203が利用される場合がある。この場合、発注部213は通信衛星203を最適化し、衛星利用メタシステム210による通信を優先するように最適化することができる。具体的には発注部213は、パブリッネットワーク内にVPN(Virtual Private Network)によるプライベートネットワークを形成するよう発注し、衛星利用メタシステム210による通信を当該プライベートネットワーク内で実行させる。これにより、通信の面からも観測要求及び観測データのスクープ性を向上させることが可能である。また、衛星通信の利用要求も最適化することで、パブリックネットワークを用いる独立した他観測要求を間接的に時間的またはエリア的に排除することでスクープ性等の価値を確保してもよい。
【0062】
[観測要求の具体例について]
衛星利用メタシステム210が対象とする観測要求の種類は特に限定されないが、以下に例を挙げる。例えば、プロダクト要求としては陸域、海域、大気、雪氷、人工電波等が上げられる。また、観測衛星207が備える観測機器の種類は、SAR(Synthetic Aperture Radar:合成開口レーダー)、光学センサ、放射計、マルチスペクトルセンサ、電波受信器等が挙げられる。
【0063】
処理レベルとしては、生データ、画像データ、各種補正済みデータ、物理量抽出、時空間統計、多データとの複合解析等が挙げられる。観測仕様としてはバンド(帯域、帯域幅、中心周波数、波長、波長幅、中心波長、通信規格があればチャネル)、分解能、感度、観測幅、偏波、入射角、干渉性、観測モード等が挙げられる。観測パラメータとしては、日時、観測エリア、軌道種類、軌道高度、軌道傾斜角、回帰日数、観測頻度等が挙げられる。
【0064】
ブランドとしては、代理店、サービス名、機関名、組織名、法人名、衛星名、センサ名等が挙げられる。データフォーマットとしてはCEOS(Committee on Earth Observation Satellites)、HDF(Hierarchical Data Format)、GeOTIFF(Geo Tagged Image File Format)、NMEA(National Marine Electronics Association)等が挙げられる。オプションとしては、スクープ性、レイテンシー等が挙げられる。
【0065】
[観測衛星以外の観測装置について]
本実施形態に係る衛星利用メタシステム210は、観測衛星群201の利用に関するものとしたが、本発明は観測衛星以外のセンサを備える観測装置に対しても適用可能であり、センサ利用メタシステムを実現することが可能である。
【0066】
[ハードウェア構成について]
本実施形態に係る衛星利用メタシステム210の機能的構成を実現することが可能なハードウェア構成について説明する。図6はこのハードウェア構成を示す模式図である。
【0067】
同図に示すように、衛星利用メタシステム210は、CPU(Central Processing Unit)1001及びGPU(Graphics Processing Unit)1002を内蔵している。CPU1001及びGPU1002にはバス1005を介して、入出力インターフェース1006が接続されている。バス1005には、ROM(Read Only Memory)1003およびRAM(Random Access Memory)1004が接続されている。
【0068】
入出力インターフェース1006には、ユーザーが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1007、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1008、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1009、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1010が接続されている。また、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどのリムーバブル記憶媒体1012に対してデータを読み書きするドライブ1011が接続されている。
【0069】
CPU1001は、ROM1003に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体1012ら読み出されて記憶部1009にインストールされ、記憶部1009からRAM1004にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1004にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。GPU1002はCPU1001による制御を受けて、画像描画に必要な計算処理を実行する。
【0070】
以上のように構成される衛星利用メタシステム210では、CPU1001が、例えば、記憶部1009に記憶されているプログラムを、入出力インターフェース1006及びバス1005を介して、RAM1004にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0071】
衛星利用メタシステム210が実行するプログラムは、例えば、パッケージメディア等としてのリムーバブル記憶媒体1012に記録して提供することができる。また、プログラムは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供することができる。
【0072】
衛星利用メタシステム210では、プログラムは、リムーバブル記憶媒体1012をドライブ1011に装着することにより、入出力インターフェース1006を介して、記憶部1009にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部1010で受信し、記憶部1009にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM1003や記憶部1009に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0073】
なお、衛星利用メタシステム210が実行するプログラムは、本開示で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。また、衛星利用メタシステム210のハードウェア構成はすべてが一つの装置に搭載されていなくてもよく、複数の装置によって衛星利用メタシステム210が構成されていてもよい。また衛星利用メタシステム210のハードウェア構成の一部又は全部はネットワークを介して接続されている複数の装置に搭載されていてもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
201…観測衛星群
202…衛星クラウド
203…通信衛星
204…利用管理システム
205…データ配信システム
206…エンドユーザー
207…観測衛星
210…衛星利用メタシステム
211…インターフェース部
212…受注部
213…発注部
214…仲介部
215…取引部
216…観測衛星ネットワーク解析部
217…価値シミュレート部
図1
図2
図3
図4
図5
図6