(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182043
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電磁波照射装置および電磁波照射方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095424
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩二
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA13
5F131AA22
5F131AA23
5F131BA53
5F131CA02
5F131CA06
5F131CA32
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA07
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB42
5F131EB46
5F131EC33
5F131EC34
5F131EC35
5F131EC65
5F131EC73
(57)【要約】
【課題】接着シートの外縁部の接着力を確実に低下させる。
【解決手段】電磁波照射装置EAは、接着シートASが貼付された被着体WKを支持する支持手段10と、被着体WKに貼付された接着シートASに電磁波EWを照射する照射手段20とを備え、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に気体NGを通過させ、当該接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にする外縁減圧手段30とをさらに備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着シートが貼付された被着体を支持する支持手段と、
前記被着体に貼付された前記接着シートに電磁波を照射する照射手段とを備え、
前記接着シートの外縁側方を通過後、当該接着シートから遠ざかる方向に気体を通過させ、当該接着シートの外縁雰囲気を減圧状態にする外縁減圧手段をさらに備えていることを特徴とする電磁波照射装置。
【請求項2】
接着シートが貼付された被着体を支持する支持工程と、
前記被着体に貼付された前記接着シートに電磁波を照射する照射工程とを実施し、
前記接着シートの外縁側方を通過後、当該接着シートから遠ざかる方向に気体を通過させ、当該接着シートの外縁雰囲気を減圧状態にする外縁減圧工程をさらに実施することを特徴とする電磁波照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波照射装置および電磁波照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被着体に貼付された接着シートに電磁波を照射する電磁波照射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された半導体ウエハマウント装置1(電磁波照射装置)では、ウエハW(被着体)に貼付された保護テープPT(接着シート)に紫外線(電磁波)を照射する際、接着シートの外縁部が大気に触れていると、大気中の酸素によって当該外縁部の接着力が低下しないという不都合を発生する。
【0005】
本発明の目的は、接着シートの外縁部の接着力を確実に低下させることができる電磁波照射装置および電磁波照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接着シートの外縁側方を通過後、当該接着シートから遠ざかる方向に気体を通過させ、当該接着シートの外縁雰囲気を減圧状態にするので、接着シートの外縁雰囲気の酸素濃度が低下する。従って、接着シートの外縁部の接着力を確実に低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(A)、(B)は、本発明の一実施形態に係る電磁波照射装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1(A)の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1(A)中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
電磁波照射装置EAは、接着シートASが貼付された被着体WKを支持する支持工程を実施する支持手段10と、被着体WKに貼付された接着シートASに電磁波EWを照射する照射工程を実施する照射手段20と、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に気体としての窒素ガスNGを通過させ、当該接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にする外縁減圧工程を実施する外縁減圧手段としての噴出手段30とを備え、外装手段40の内部に配置されている。
なお、本実施形態の接着シートASは、照射手段20が照射する電磁波EWに含まれる主電磁波としての紫外線によって接着力が低下する特性を有している。
【0011】
支持手段10は、外装手段40における筐体41の底面41Aに支持された下側テーブル11と、下側テーブル11の上面11Aに支持され、減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段(保持手段)12によって吸着保持が可能な支持面13Aを有する上側テーブル13とを備えている。
上側テーブル13は、支持面13Aに設けられた凹部13Bと、凹部13B内に配置され、上面が支持面13Aとされた多孔質部材13Cとを備え、配管12Aを介して多孔質部材13Cに減圧手段12が接続された構成となっている。
【0012】
照射手段20は、支持面13Aの上方で筐体41に支持された駆動機器としてのリニアモータ21と、リニアモータ21のスライダ21Aに支持されたカバー22と、カバー22の内部に収容され、電磁波EWを発光する電磁波発光手段としての高圧水銀ランプ23と、高圧水銀ランプ23が発光した電磁波EWを集光する反射板やレンズ等の集光手段24とを備えている。
【0013】
噴出手段30は、下側テーブル11の上面11Aに形成された環状の溝31内に配管32Aを介して連通し、図示しない窒素ガスタンクから窒素ガスNGを供給する加圧ポンプやタービン等の気体供給手段32と、溝31から上側テーブル13をその外縁側に向かう斜め上方に貫通して支持面13Aに開口し、接着シートASに向かって当該接着シートASの外縁から離れる方向に傾斜した気体噴出孔33とを備え、気体噴出孔33から窒素ガスNGを噴出することによって、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に窒素ガスNGを通過させ、接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にする構成となっている。
本実施形態の場合、気体噴出孔33は、複数設けられ、支持面13Aにおいて被着体WKが支持される被着体支持領域WRに沿って、相互に所定の間隔を空けて等間隔に配置されている(
図1(B)参照)。
【0014】
外装手段40は、開口部41Bを有する筐体41と、駆動機器としての直動モータ42の出力軸42Aに支持され、開口部41Bを開閉する開閉部材43とを備えている。
【0015】
以上の電磁波照射装置EAの動作を説明する。
先ず、
図1(A)中実線で示す初期位置に各部材が配置された電磁波照射装置EAに対し、当該電磁波照射装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の図示しない操作手段を介して、自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、
図1(A)に示すように、接着シートASが貼付された被着体WKを支持面13A上の所定の位置に載置すると、外装手段40が直動モータ42を駆動し、
図1(A)中二点鎖線で示すように、開閉部材43を下降させて開口部41Bを閉じる。
【0016】
その後、支持手段10が減圧手段12を駆動し、支持面13Aでの被着体WKの吸着保持を開始する。次に、噴出手段30が気体供給手段32を駆動し、気体噴出孔33から筐体41内に窒素ガスNGを噴出する。この際、気体噴出孔33から噴出した窒素ガスNGは、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に流れるため、接着シートASの外縁雰囲気が減圧状態になって当該外縁雰囲気の酸素濃度が低下する。そして、筐体41内の窒素ガスNGの濃度が所定の濃度になったことを濃度計や濃度センサ等の図示しない検知手段が検知すると、噴出手段30が気体噴出孔33から窒素ガスNGを噴出させつつ、照射手段20がリニアモータ21および高圧水銀ランプ23を駆動し、高圧水銀ランプ23を左右に往復移動させ、接着シートASに電磁波EWを照射する。これにより、電磁波EWに含まれる紫外線によって、接着シートASの接着力が低下する。
【0017】
次いで、高圧水銀ランプ23が初期位置に復帰すると、照射手段20がリニアモータ21および高圧水銀ランプ23の駆動を停止するとともに、噴出手段30が気体供給手段32の駆動を停止する。その後、支持手段10が減圧手段12の駆動を停止し、支持面13Aでの被着体WKの吸着保持を解除した後、外装手段40が直動モータ42を駆動し、開閉部材43を初期位置に復帰させて開口部41Bを開く。次に、使用者または図示しない搬送手段が、被着体WKから接着シートASを剥離する剥離工程等の次工程に被着体WKを搬送し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0018】
以上のような実施形態によれば、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に窒素ガスNGを通過させ、当該接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にするので、接着シートASの外縁雰囲気の酸素濃度が低下する。従って、接着シートASの外縁部の接着力を確実に低下させることができる。
【0019】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0020】
例えば、支持手段10は、下側テーブル11と上側テーブル13とが一体に形成されていてもよいし、多孔質部材13Cに代えてまたは併用して、支持面13Aの被着体支持領域WR内に形成された吸引孔や吸引用の溝で被着体WKを吸着保持する構成を採用してもよい。
【0021】
照射手段20は、側方や支持面13A側から接着シートASに電磁波EWを照射してもよいし、電磁波発光手段として、例えば、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよいし、電磁波発光手段を移動させずにまたは移動させつつ、支持手段10を移動させて接着シートASに電磁波EWを照射してもよいし、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、赤外線等を主電磁波として含む電磁波EWを照射してもよく、接着シートASの特性、特質、性質、材質、組成等に応じて接着シートASの接着力を低下させることができるものであれば、どのような電磁波EWを照射してもよい。
【0022】
噴出手段30は、気体供給手段32で気体としての大気を供給し、当該大気を気体噴出孔33から噴出してもよいし、支持面13Aの被着体支持領域WRに沿って複数の気体噴出孔33を等間隔に配置しなくてもよいし、被着体支持領域WRの全周にわたって気体噴出孔33を設けなくてもよいし、被着体WKから接着シートASを剥離するときの当該接着シートASの剥離開始部の位置に対応する被着体支持領域WRの周囲にのみ気体噴出孔33を設けてもよいし、気体噴出孔33が1つのみであってもよいし、支持手段10に一体に形成されてもよいし、支持手段10とは独立した別体の構成とされてもよく、気体噴出孔33に代えてまたは併用して、ノズルや配管などの気体噴出部材から気体を噴出してもよい。
外縁減圧手段は、気体を吸引することで、接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にしてもよく、噴出手段30に代えて、気体を吸引する吸引手段を採用してもよい。
吸引手段は、溝31内に配管32Aを介して連通する減圧ポンプや真空エジェクタ等の減圧手段と、溝31から上側テーブル13をその中央側に向かう斜め上方に貫通して支持面13Aに開口し、接着シートASに向かって当該接着シートASの外縁に近づく方向に傾斜した気体吸引孔とを備え、気体吸引孔で気体を吸引することによって、接着シートASの外縁側方を通過後、当該接着シートASから遠ざかる方向に気体を通過させ、当該接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にする構成となっている。
吸引手段は、支持面13Aの被着体支持領域WRに沿って複数の気体吸引孔を等間隔に配置してもよいし、等間隔に配置しなくてもよいし、被着体支持領域WRの全周にわたって気体吸引孔を設けてもよいし、被着体支持領域WRの全周にわたって気体吸引孔を設けなくてもよいし、被着体WKから接着シートASを剥離するときの当該接着シートASの剥離開始部の位置に対応する被着体支持領域WRの周囲にのみ気体吸引孔を設けてもよいし、気体吸引孔が1つのみであってもよいし、支持手段10に一体に形成されてもよいし、支持手段10とは独立した別体の構成とされてもよく、気体吸引孔に代えてまたは併用して、ノズルや配管などの気体吸引部材で気体を吸引してもよい。
気体噴出孔33や気体吸引孔の形状は、特に限定されず、その断面形状や開口形状が円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、複数の気体噴出孔33の一部または全部を互いに繋げた形状の孔または溝からなる気体噴出孔を採用してもよいし、複数の気体吸引孔の一部または全部を互いに繋げた形状の孔または溝からなる気体吸引孔を採用してもよい。
噴出手段30が噴出する気体や、吸引手段が吸引する気体は、例えば、冷風、温風、大気、窒素ガスやアルゴンガス等の単体ガス、混合ガス、接着シートASの外縁雰囲気等であってもよく、接着シートASの外縁雰囲気を減圧状態にして当該外縁雰囲気の酸素濃度を低下させることができれば、どのような気体を採用してもよい。
【0023】
外装手段40は、開閉部材43で開口部41Bを閉じなくてもよいし、筐体41内の窒素ガスNGの濃度が所定の濃度になるまで開閉部材43で開口部41Bを閉じておき、窒素ガスNGの濃度が所定の濃度になった後は、開閉部材43を上昇させて開口部41Bを部分的または全体的に開いてもよいし、本発明の電磁波照射装置EAに備わっていてもよいし、備わっていなくてもよい。
【0024】
接着シートASは、例えば、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、赤外線等の紫外線以外の主電磁波によって接着力が低下する特性を有するものでもよい。
【0025】
接着シートASおよび被着体WKの材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、接着シートASおよび被着体WKは、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、接着シートASは、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートASを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材と接着剤層とが積層された2層のもの、基材と接着剤層との間に1または複数の中間層が積層された3層または3層以上のもの、基材の上面に1または複数のカバー層が積層された3層または3層以上のもの、基材、中間層またはカバー層が剥離可能に設けられたもの、接着剤層のみからなる単層の両面接着シート、1または複数の中間層の両最外面に接着剤層が積層された両面接着シート等、どのようなものでもよい。さらに、被着体WKとしては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0026】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、支持手段は、接着シートが貼付された被着体を支持するものであればどんなものでもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0027】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0028】
EA…電磁波照射装置
10…支持手段
20…照射手段
30…噴出手段(外縁減圧手段)
AS…接着シート
NG…窒素ガス(気体)
EW…電磁波
WK…被着体