(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182066
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】バッテリーマネジメント装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20231219BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095450
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安川 功一
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】アナログ-デジタル変換を実施する時の無駄なエネルギー消費を抑えること。
【解決手段】アナログ-デジタル変換起動信号を受理すると、バッテリーパックを構成しているバッテリーセルのセル電圧をセル毎に計測し、この計測したセル毎のセル電圧をデジタル化して出力するセル電圧検出部と、前記セル電圧検出部から出力されるデジタル化されたセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能とを基にして、基本アナログ-デジタル変換周期を演算するマイクロコンピュータとを備え、前記マイクロコンピュータは、前記基本アナログ-デジタル変換周期を基準にして最終アナログ-デジタル変換周期を選択し、この選択された最終アナログ-デジタル変換周期と同じ間隔で前記アナログ-デジタル変換起動信号を前記セル電圧検出部に発行することを特徴とするバッテリーマネジメント装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ-デジタル変換起動信号を受理すると、バッテリーパックを構成しているバッテリーセルのセル電圧をセル毎に計測し、この計測したセル毎のセル電圧をデジタル化して出力するセル電圧検出部と、
前記セル電圧検出部から出力されるデジタル化されたセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能とを基にして、基本アナログ-デジタル変換周期を演算するマイクロコンピュータとを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記基本アナログ-デジタル変換周期を基準にして最終アナログ-デジタル変換周期を選択し、
この選択された最終アナログ-デジタル変換周期と同じ間隔で前記アナログ-デジタル変換起動信号を前記セル電圧検出部に発行することを特徴とするバッテリーマネジメント装置。
【請求項2】
前記マイクロコンピュータは、
前記セル電圧検出部から出力されるバッテリーセルのセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、セル電圧とセルの充電状態との対応を表すテーブルとから、バッテリーセルのセル毎のセル容量を推定し、
この推定されたバッテリーセルのセル容量と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能と、現在のセルの充電状態とに基づいて、前記基本アナログ-デジタル変換周期を前記バッテリーセルのセル毎に演算することを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項3】
前記マイクロコンピュータは、
バッテリーパックの充電電流と、セルの充電状態と、セル容量と、セル電圧を軸としたアナログ-デジタル変換部起動周期を表しているテーブルデータを参照することによって、基本アナログ-デジタル変換周期を算出することを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項4】
前記セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値よりも小さい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値よりも大きい場合には、前記マイクロコンピュータは、基本アナログ-デジタル変換周期を、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最大値でクリップし、このクリップされた基本アナログ-デジタル変換周期を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択することを特徴とする請求項2に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項5】
前記バッテリーパックに流れる充電電流の絶対値が規定値よりも大きい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記バッテリーパックに流れる充電電流の絶対値が規定値よりも小さい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期を、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最大値でクリップし、このクリップされた基本アナログ-デジタル変換周期を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択することを特徴とする請求項2に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項6】
前記マイクロコンピュータは、前記バッテリーパックに流れる充電電流を検出する電流検出センサの動作状態を検出する電流検出センサ故障検出部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項7】
前記電流検出センサ故障検出部が前記電流検出センサは正常に動作していると判断した場合、前記マイクロコンピュータは、演算されたセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記電流検出センサ故障検出部が前記電流検出センサは故障していると判断した場合、前記マイクロコンピュータは、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に設定することを特徴とする請求項6に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項8】
前記セル電圧検出部は、前記バッテリーマネジメント装置の内部に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項9】
前記セル電圧検出部は、前記バッテリーパックと一体化されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【請求項10】
前記セル電圧検出部と前記マイクロコンピュータは、車両に搭載されていることを特徴とする請求項1に記載のバッテリーマネジメント装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、バッテリーマネジメント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池は、家庭用または工業用の非常用電源、あるいは、電気自動車の駆動用電源として用いられるようになってきた。二次電池は、電池の起電圧と電気容量に制限があるため、一般的には、用途に応じて複数の電池を直列および並列に接続して使用される。このような構造の二次電池を、組電池、または、単に、バッテリーパックと言う。バッテリーパック(または、組電池)を構成する、単位となる二次電池は、バッテリーセルと呼ばれている。
【0003】
バッテリーパックを構成する複数のバッテリーセルには、製造時に個体差が発生するため、一部のバッテリーセルを新品の電池(バッテリーセル)に交換した場合には、バッテリーセルの間で容量にバラつきが生じる。バッテリーセルにこのような容量のバラつきが存在するため、バッテリーパックの充放電時には、特定のバッテリーセルに過放電または過充電が発生する。バッテリーセルがリチウムイオン二次電池である場合に、バッテリーパックに過放電、あるいは、過充電が発生すると、バッテリーパックに着火の可能性が生まれる。そこで、リチウムイオン二次電池を用いたバッテリーパックには、各バッテリーセルの充電状態を監視することを目的とした、バッテリーマネジメント装置が設けられている。
【0004】
バッテリーマネジメント装置は、各バッテリーセルに対して電圧のアナログ-デジタル変換機能を有する。このバッテリーマネジメント装置は、バッテリーパックの充電電流、バッテリーセルのセル電圧などから、セルの充電状態SOC(State of Charge)を算出する。さらに、バッテリーマネジメント装置では、全てのバッテリーセルに対してアナログ-デジタル変換を行い、バッテリーセルのセル電圧を、アナログ値から、デジタル値に変換している。バッテリーマネジメント装置は、マイクロコンピュータを内蔵し、このマイクロコンピュータでバッテリーパックの充電状態SOCの算出を行っている。
【0005】
バッテリーセルにおけるアナログ-デジタル変換周期の制御方法として、特許文献1に係る技術が知られている。ここでは、バッテリーパックの充電電流に基づいて、アナログ-デジタル変換を制御するクロック、言い換えれば、アナログ-デジタル変換周期を算出している。なお、バッテリーセルのセル容量の推定方法は、例えば、特許文献2に記載されている。一般的に、バッテリーセルの充電状態は、バッテリーセルの充電電流の大きさによって変化する。バッテリーセルにおいて、セルの充電状態とセル電圧との間には、単調増加する関係があるにしても、直線的な関係にあるわけではない。また、セルの充電状態とセル電圧との関係には、急峻な区間と緩やかな区間が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4561921号公報
【特許文献2】特開2012-181066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
セルの充電状態とセル電圧との関係が急峻に変化する区間では、バッテリーパックの充放電によって、セルの充電状態が僅かに変化したとしても、セル電圧が大きく変化する。一方、セルの充電状態とセル電圧との関係が緩やかに変化する区間では、バッテリーパックの充放電によってセルの充電状態に多少の変化があったとしても、セル電圧はほとんど変化しない。充放電によるセル電圧の変化がデジタル値の分解能以下である場合には、セル電圧の変動がデジタル値には反映されないことになる。この場合、バッテリーパックの充電電流がゼロではないとしても、セル電圧のアナログ-デジタル変換を行う必要性は低い。
【0008】
特許文献1に係る技術では、充電電流のみでアナログ-デジタル変換周期を決定している。このため、充放電によるセル電圧の変化がデジタル値の分解能以下の場合であっても、バッテリーマネジメント装置はアナログ-デジタル変換を実施する。アナログ-デジタル変換には電力消費を伴うため、バッテリーパックのセルの充電状態によっては、アナログ-デジタル変換による電力消費にムダが生じている。バッテリーセルのセル電圧は、一般的に、バッテリーセルにおけるセルの充電状態によって決まり、バッテリーセルにおけるセルの充電状態は、バッテリーパックの充電電流およびバッテリーセルのセル容量によって決まる。
【0009】
本願に係るバッテリーマネジメント装置は、バッテリーマネジメント装置における上記のような課題を解決するためになされたものである。すなわち、本願では、バッテリーセルのセル容量およびセルの充電状態を考慮して、セル電圧のアナログ-デジタル変換周期を算出することで、アナログ-デジタル変換に伴う電力消費のムダを抑制することができるバッテリーマネジメント装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に係るバッテリーマネジメント装置は、アナログ-デジタル変換起動信号を受理すると、バッテリーパックを構成しているバッテリーセルのセル電圧をセル毎に計測し、この計測したセル毎のセル電圧をデジタル化して出力するセル電圧検出部と、
前記セル電圧検出部から出力されるデジタル化されたセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能とを基にして、基本アナログ-デジタル変換周期を演算するマイクロコンピュータとを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記基本アナログ-デジタル変換周期を基準にして最終アナログ-デジタル変換周期を選択し、
この選択された最終アナログ-デジタル変換周期と同じ間隔で前記アナログ-デジタル変換起動信号を前記セル電圧検出部に発行することを特徴とするバッテリーマネジメント装置である。
【発明の効果】
【0011】
本願に係るバッテリーマネジメント装置によれば、バッテリーパックの充電電流に加えて、バッテリーセルのセル容量、および、セルの充電状態より、セル電圧測定における基本アナログ-デジタル変換周期を算出することが可能になる。その結果、本願に係るバッテリーマネジメント装置によれば、アナログ-デジタル変換に伴う電力消費のムダを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願の実施の形態に係る電気自動車の構成を説明する図である。
【
図2】バッテリーセルにおける、セルの充電状態とセル電圧との関係を表している図である。
【
図3】本願の実施の形態に係るバッテリーマネジメント装置の構成を説明する第1の図である。
【
図4】本願の実施の形態に係るマイクロコンピュータについて、その内部構成を説明する第1の図である。
【
図5】本願のバッテリーマネジメント装置で使用される式1から式6を示している図である。
【
図6】本願の実施の形態1に係るバッテリーマネジメント装置の動作を説明するフローチャートを示す第1の図である。
【
図7】本願の実施の形態1に係るバッテリーマネジメント装置の動作を説明するフローチャートを示す第2の図である。
【
図8】本願の実施の形態2に係るバッテリーマネジメント装置の動作を説明するフローチャートを示す図である。
【
図9】本願の実施の形態2に係るバッテリーセルにおける、2次元テーブルデータを表している図である。
【
図10】本願の実施の形態2に係るバッテリーセルにおける、3次元テーブルデータを表している図である。
【
図11】本願の実施の形態に係るマイクロコンピュータについて、その内部構成を説明する第2の図である。
【
図12】本願の実施の形態3に係るバッテリーマネジメント装置の動作を説明するフローチャートを示す第1の図である。
【
図13】本願の実施の形態3に係るバッテリーマネジメント装置の動作を説明するフローチャートを示す第2の図である。
【
図14】本願の実施の形態に係るバッテリーマネジメント装置の構成を説明する第2の図である。
【
図15】本願の実施の形態に係るバッテリーマネジメント装置において、マイクロコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、本願に係る電気自動車50の全体構成を表すものである。この電気自動車50の車体100には、電気自動車50の走行制御、並びに、充電制御を行う車両制御装置101と、車輪を駆動する駆動用モータ102と、駆動用モータ102を制御するインバータ103と、インバータ103へ電力を供給するバッテリーパック201と、バッテリーパック201を監視するバッテリーマネジメント装置105と、車体100の外部よりバッテリーパック201を充電するための充電器106と、バッテリーマネジメント装置105の内部、或いは、外部に設置される電流検出センサ203と、が備えられている。
【0014】
車両制御装置101は、電気自動車50の走行を開始するために、インバータ103へ駆動用モータ102の駆動要求を行う。インバータ103は、バッテリーパック201の電力を使用し、駆動用モータ102を駆動する。また、バッテリーパック201はバッテリーマネジメント装置105により監視され、バッテリーマネジメント装置105がバッテリー状態を車両制御装置101へ送ることにより、車両制御装置101はバッテリー状態に応じた走行制御を実現している。さらに、車両制御装置101は、車体100の外部からの充電要求により充電器106へ充電指示を行う。充電器106は、車両制御装置101からの充電要求によりバッテリーパック201への充電を制御する。電流検出センサ203は、バッテリーパック201に流れる充電電流を計測する。
【0015】
図2は、バッテリーパック201を構成するバッテリーセルにおける、セルの充電状態とセル電圧との関係を表している図である。バッテリーパック201には、例えば、リチウムイオン二次電池を用いた組電池が用いられる。バッテリーパック201のセル毎の充電状態は、バッテリーパックに流れる充電電流Iによって変化する。バッテリーセルにおいて、セルの充電状態[%]とセル電圧[V]は、単調増加する関係にあるが、直線的な関係にはない。また、セルの充電状態とセル電圧との関係において、区間aでは、セルの充電状態とセル電圧は急峻に変化し、区間bでは、セルの充電状態とセル電圧は緩やかに変化している。
【0016】
セルの充電状態[%]とセル電圧[V]との関係が急峻な区間aでは、バッテリーパック201の充放電によって、僅かなセルの充電状態の変化であっても、セル電圧が大きく変化する。一方、セルの充電状態[%]とセル電圧[V]との関係が緩やかな区間bでは、バッテリーパック201の充放電によってセルの充電状態に少なからず変化があったとしても、セル電圧はほとんど変化しない。区間の区別に係らず、充放電によるセル電圧の変化がデジタル値の分解能以下である場合は、セル電圧の変動がデジタル値に反映されない。この図は、セルの充電状態[%]とセル電圧[V]との関係を表すテーブルmap(V)として機能する。
【0017】
図3は、本実施の形態に係る、バッテリーパック201、電流検出センサ203、および、バッテリーマネジメント装置105の関係を表す構成図である。バッテリーパック201を構成する単位となる電池は、バッテリーセルと呼ばれている。バッテリーセル202の起電圧は、1つだけでは低いため、通常、複数個を直列に接続してバッテリーパック201を構成し、車両駆動に必要な電圧を得ている。ここではバッテリーパック201は、n個のバッテリーセル202_1~202_nを直列に接続したものから構成されている。
【0018】
すなわち、バッテリーパック201は、直列接続されたバッテリーセル202_1~202_nより形成されている。電流検出センサ203は、バッテリーパック201の充電電流Iを検出する。充電電流Iは、バッテリーパック201が充電状態のときに正の値、バッテリーパック201が放電状態のときに負の値を取る。バッテリーマネジメント装置105は、セル電圧検出部301と、マイクロコンピュータ401を備えている。セル電圧検出部301は、バッテリーセル202_1~202_nの端子間電圧をそれぞれ検出する。さらに、セル電圧検出部301は、アナログ-デジタル変換部302と、マルチプレクサ303を備えている。
【0019】
セル電圧検出部301のマルチプレクサ303は、直列接続されたバッテリーセル202_1~202_nと接続され、バッテリーセル202とアナログ-デジタル変換部302との接続切り替えを行う。アナログ-デジタル変換部302は、マイクロコンピュータ401が発行するアナログ-デジタル変換起動信号に基づいて、バッテリーセル202_1~202_nのセル電圧V1~Vnを、マルチプレクサ303を通じて計測する。計測値は、アナログ-デジタル変換部302でアナログ値からデジタル値に変換し、マイクロコンピュータ401のセル電圧格納部に出力される。
【0020】
図4は、本実施の形態に係る、マイクロコンピュータ401の構成を表している図である。マイクロコンピュータ401は、セル電圧格納部402と、充電電流格納部403と、セル容量推定部405と、充電状態算出部406と、アナログ-デジタル変換周期算出部407と、アナログ-デジタル変換周期選択部408と、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409とを備えている。セル電圧格納部402は、セル電圧検出部301(アナログ-デジタル変換部302)で、デジタル値に変換されたセル電圧を、バッテリーセルのセル毎に、RAM(Random Access Memory)へ格納する。電流検出センサ203はバッテリーパック201の充電電流Iを検出する。
【0021】
充電電流格納部403は、電流検出センサ203からの電流値を、RAM(Random Access Memory)へ格納する。セル容量推定部405は、m番目のバッテリーセル202_mのセル容量Cpmを推定し、推定したセル容量Cpmは内蔵するRAMに格納することができる。ここで符号mは、1からnの自然数を表す。充電状態算出部406は、バッテリーパック201のセル毎の充電率、すなわち、セル毎の充電状態SOC1~SOCnを算出する。アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TAD1~TADnを算出する。アナログ-デジタル変換周期選択部408は、複数の候補の中から、セル電圧の最終的なアナログ-デジタル変換周期を選択する。
【0022】
図5は、本願に係る式1~式6を表している。この図を適宜参照しながら、バッテリーマネジメント装置105の詳細な動作を説明する。はじめに、充電状態算出部406について説明する。充電電流の大きさをI[A]、バッテリーセル202_1~202_nのセル容量を、Cp1~Cpn[Ah]とすると、充電電流Iとセル容量Cpmより、バッテリーセルのセル毎の充電状態SOCmは、
図5に示されている式1にて表される。充電状態算出部406は、充電電流I、およびバッテリーセルのセル毎のセル容量Cpmを参照し、式1より、バッテリーセルのセル毎のセルの充電状態SOCmを算出する。
【0023】
次に、前記アナログ-デジタル変換周期算出部407について、セルの充電状態[%]とセル電圧[V]との関係を表すテーブルmap(V)を用いて、説明する。まず、バッテリーセルのセル電圧をV[V]とすると、セルの充電状態SOCmap[%]は、
図5に示されている式2で表される。次に、デジタル値であるバッテリーセルのセル電圧分解能をVfact[V]とする。セル電圧が充電によって現在のセル電圧V[V]からセル電圧分解能Vfact[V]だけ増加した際のセルの充電状態推定値SOCest[%]は、式2より式3で表される。
【0024】
次に、セル電圧が、充電によって、現在のセル電圧V[V]からセル電圧分解能Vfact[V]だけ増加した際に、セルの充電状態は、式1で算出した、現在のセルの充電状態SOCm[%]からセルの充電状態推定値SOCest[%]まで変化する。この変化に要する時間t[hr]は、式1より、式4で表される。よって、充電によってセル電圧V[V]からセル電圧分解能Vfact[V]だけ増加する時間T[hr]は、式3および式4より、式5で表される。同様に、セル電圧が、放電によって、現在のセル電圧V[V]からセル電圧分解能Vfact[V]だけ減少する時間T‘[hr]は、式6で表される。
【0025】
アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーパック201の充電電流I、バッテリーセルのセル毎のセル電圧Vm、およびバッテリーセルのセル毎のセルの充電状態SOCmを参照する。バッテリーパック201が充電中の場合には、即ち、充電電流I≧0Aである場合には、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、式5より、充電電流に対応した、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。一方、バッテリーパック201が放電中の場合には、即ち、充電電流I<0Aである場合には、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、式6より、放電電流に対応した、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0026】
次に、アナログ-デジタル変換周期選択部408の役割について説明する。ここで、バッテリーパック201が充電状態でもなく、かつ放電状態にもない場合、即ち、バッテリーパック201に流れる充電電流Iがゼロであるか、ゼロではないにしても、極めて小さい場合、を想定してみる。バッテリーパック201の充電電流Iがゼロに近づくと、式5および式6から解るように、演算される基本アナログ-デジタル変換周期TADmは、非常に大きな値をしめすため、基本アナログ-デジタル変換周期を得るためのアナログ-デジタル変換を行うことが困難になる。
【0027】
このような事態を防ぐために、充電電流Iの絶対値が、あらかじめ設定されている規定値よりも小さい場合、あるいは、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、あらかじめ設定されている、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期をアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxにクリップする。基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも小さい場合は、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期を選択する。
【0028】
セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合に、アナログ-デジタル変換周期選択部408がセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmをアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxでクリップすることで、充電電流Iがゼロである場合または充電電流Iが極めて小さい場合に、セル電圧のアナログ-デジタル変換が長時間行われないことを防ぐことができる。
【0029】
次に、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換起動信号出力部409の役割について説明する。アナログ-デジタル変換起動信号出力部409は、アナログ-デジタル変換周期選択部408で選択されたアナログ-デジタル変換周期TAD[hr]毎に、前記セル電圧検出部301のアナログ-デジタル変換部302に対し、アナログ-デジタル変換を起動する信号(アナログ-デジタル変換起動信号)を出力する。このようにして、バッテリーマネジメント装置105は、アナログ-デジタル変換時の電力消費を抑制することができる。
【0030】
次に、本願の実施の形態1に係るセル電圧AD変換制御をフローチャートに基づいて説明する。
図6は、バッテリーマネジメント装置105が実施する実施の形態を示すフローチャートである。本処理に係るセル電圧AD変換制御は、所定時間毎に実施される。この所定時間をtとすると、次回のセル電圧AD変換制御は、現在時刻t1から所定時間tだけ経過すると、マイクロコンピュータ401が自動的に開始する。
【0031】
マイクロコンピュータ401が、ステップS0で、セル電圧AD変換制御を開始すると、ステップS1で、マイクロコンピュータ401のセル電圧格納部402は、セル電圧検出部301(マルチプレクサ303およびアナログ-デジタル変換部302)より取得したセル電圧Vm[V]を、セル毎に、順次、RAMに格納する。次に、ステップS2にて、マイクロコンピュータ401の充電電流格納部403は、電流検出センサ203より取得したバッテリーパック201の充電電流Iを、RAMに格納する。
【0032】
次に、ステップS3にて、マイクロコンピュータ401のセル容量推定部405は、バッテリーセルのセル毎のセル容量Cpmを推定し、RAMへ格納する。セル容量の推定方法は、例えば、特許文献2に記載された方法を参照する。次に、ステップS4では、マイクロコンピュータ401の充電状態算出部406が、前記ステップS2でRAMに格納された充電電流Iと、前記ステップS3でRAMに格納されたバッテリーセルのセル毎のセル容量Cpmより、バッテリーセルのセル毎の充電状態SOCm(充電率)を演算する。
【0033】
次に、ステップS5では、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換周期算出部407は、充電電流Iが、ゼロ以上かどうかを判断する。充電電流Iが、ゼロ以上であれば、セル電圧AD変換制御はステップS6に進む。ステップS6では、前記ステップS1にて格納したセル毎のセル電圧Vmと、前記ステップS2で格納した充電電流Iと、前記ステップS4で演算したバッテリーセルのセル毎の充電状態SOCmより、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0034】
具体的には、バッテリーパック201が充電状態にある場合なので、即ち、充電電流Iがゼロ以上である場合なので、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、前述の式5に基づきバッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。また、ステップS5で充電電流Iが、ゼロより少なければ、セル電圧AD変換制御はステップS7に進む。ステップS7では、バッテリーパック201が放電状態にある場合なので、即ち、充電電流Iがゼロ未満である場合なので、前述の式6に基づき、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0035】
次に、ステップS8では、アナログ-デジタル変換周期選択部408が、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、あらかじめ設定されている、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きいかどうかを判断する。バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも小さい場合は、ステップS9に進み、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期を選択する。基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、ステップS10に進み、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期をアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxにクリップする。
【0036】
バッテリーパック201が充電状態でもなく、かつ放電状態にもない場合、即ち、充電電流Iがゼロであるか、ゼロではないにしても充電電流Iが極めて小さい場合、演算される基本アナログ-デジタル変換周期が非常に大きな値をしめし、アナログ-デジタル変換ができなくなる。このような事態を防ぐために、セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、バッテリーセルのアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、ステップS10で、アナログ-デジタル変換周期選択部408がセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmをアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxでクリップする。
【0037】
このことで、充電電流Iがゼロである場合または充電電流Iが極めて小さい場合に、セル電圧のアナログ-デジタル変換が長時間行われないことを防ぐことができる。なお、
図7の様に、ステップS8aで、ステップS8の代わりに、充電電流Iの絶対値が、あらかじめ設定されている規定値よりも小さいかどうかを判定してもよい。次に、ステップS11では、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換起動信号出力部409は、前記アナログ-デジタル変換周期選択部408がステップS9またはステップS10で選定した最終アナログ-デジタル変換周期Final(T
AD)で、アナログ-デジタル変換部302に対してアナログ-デジタル変換起動信号を、所定時間tの間、出力する。すなわち、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409は、選択された最終アナログ-デジタル変換周期と同じ間隔で、所定時間tの間、アナログ-デジタル変換起動信号をセル電圧検出部に発行する。
【0038】
なお、ステップS9でセル毎に基本アナログ-デジタル変換周期TADmを選択した場合、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期TADmのうち最小値を、すなわち、最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を、最終アナログ-デジタル変換周期Final(TAD)とする。ステップ11では、この最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を全セル統一の変換周期としてアナログ-デジタル変換起動信号出力部409より出力する。
【0039】
図に示すセル電圧AD変換制御のフローチャートは、マイクロコンピュータ401が実行する。アナログ-デジタル変換起動信号出力部409は、前回アナログ-デジタル変換起動信号を出力してから、最終アナログ-デジタル変換周期が経過した場合にアナログ-デジタル変換起動信号を、セル電圧検出部301に出力する。このようにして、本実施の形態に係るバッテリーマネジメント装置105は、アナログ-デジタル変換実施時の無駄なエネルギー消費を抑えることができる。
【0040】
実施の形態2.
実施の形態2における詳細説明を行う。ここでは、アナログ-デジタル変換実施時の無駄なエネルギー消費を抑えることができる、もう一つの実施の形態を
図8に示すフローチャートを用いて説明する。本実施の形態では、バッテリーマネジメント装置105は、セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期T
ADmを、式5、式6をテーブルデータとした、テーブル参照で求める。ここでステップS00は、実施の形態1におけるステップS0と同じであるため詳細説明は割愛する。
【0041】
次に、ステップS21は、実施の形態1におけるステップS1と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS22は、実施の形態1におけるステップS2と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS23は、実施の形態1におけるステップS3と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS24は、実施の形態1におけるステップS4と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS25は、実施の形態1におけるステップS5と同じであるため、詳細説明は割愛する。
【0042】
次に、ステップS26では、ステップS21にてRAMに格納した、セル毎のセル電圧Vmと、ステップS22でRAMに格納した充電電流Iと、ステップS24で算出したバッテリーセルのセル毎のセルの充電状態SOCmより、式5に基づく、セル電圧、充電電流、セルの充電状態とアナログ-デジタル変換周期の関係を表したテーブルデータを参照することにより、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0043】
次に、ステップS27では、ステップS21にてRAMに格納した、セル毎のセル電圧Vmと、ステップS22でRAMに格納した充電電流Iと、ステップS24で算出したバッテリーセルのセル毎のセルの充電状態SOCmより、式6に基づく、セル電圧、充電電流、セルの充電状態とアナログ-デジタル変換周期の関係を表したテーブルデータを参照することにより、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期T
ADmを算出する。なお、テーブルデータを示すテーブルは、式5、式6に基づき、充電電流I、セルの充電状態SOCm、セル容量Cpm、およびセル電圧Vに応じた、基本アナログ-デジタル変換周期が設定されたものである。本テーブルの詳細を
図9、および
図10に示す。
【0044】
まず、
図9は、(V+Vfact)とSOCmを軸とした、2次元テーブルデータである。(V+Vfact)とSOCmを入力キーとし二分探索法などを用いて、前述の式5または式6におけるmap(V+Vfact)とSOCmの差分であるSOC差分ΔSOC(x,y)をテーブル参照にて求める。ここで、xはセル電圧Vを、yは充電状態SOCmを指している。次に、
図10は、前述のSOC差分ΔSOCとセル容量Cpmと、充電電流Iを軸とした、3次元テーブルデータである。SOC差分ΔSOCとセル容量Cpmと、電流Iを入力キーとし二分探索法などを用いて、本テーブルを参照することで、基本アナログ-デジタル変換周期T
ADm(x,y,z)を求める。ここで、xはSOC差分ΔSOCを、yはセル容量Cpmを、zは電流Iを指している。
【0045】
次に、ステップS28は、実施の形態1におけるステップS8と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS29は、実施の形態1におけるステップS9と同じであるため、詳細説明は割愛する。次に、ステップS30は、実施の形態1におけるステップS10と同じであるため、詳細説明は割愛する。すなわち、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、あらかじめ定められているバッテリーセルのアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、アナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxにクリップする。
【0046】
このようにして、バッテリーマネジメント装置105は、アナログ-デジタル変換実施時の無駄なエネルギー消費を抑えることができる。なお、ステップS29でセル毎に基本アナログ-デジタル変換周期TADmを選択した場合、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期TADmのうち最小値を、すなわち、最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を、最終アナログ-デジタル変換周期Final(TAD)とする。ステップ31では、この最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を、全セル統一の変換周期としてアナログ-デジタル変換起動信号出力部409より出力する。
【0047】
実施の形態3.
図11は、実施の形態3に係る、マイクロコンピュータ401の構成を表している図である。マイクロコンピュータ401は、セル電圧格納部402と、充電電流格納部403と、電流検出センサ故障検出部404と、セル容量推定部405と、充電状態算出部406と、アナログ-デジタル変換周期算出部407と、アナログ-デジタル変換周期選択部408と、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409とを備えている。セル電圧格納部402は、セル電圧検出部301(アナログ-デジタル変換部302)で、デジタル値に変換されたセル電圧を、バッテリーセルのセル毎にRAM(Random Access Memory)に格納する。
【0048】
電流検出センサ203は、バッテリーパック201の充電電流Iを検出する。充電電流格納部403は、電流検出センサ203からの電流値を、RAM(Random Access Memory)へ格納する。電流検出センサ故障検出部404は、電流検出センサ203の動作状態を解析し、故障の有無を検出する。電流検出センサ故障検出部404は、電流検出センサ203の故障状況に応じて、電流検出センサ故障検出信号として、“電流検出センサ故障無し”と“電流検出センサ故障有り”のどちらかを、アナログ-デジタル変換周期選択部408へ出力する。
【0049】
なお、一般的に、電流検出センサ203の出力範囲は、0.5V~4.5Vとなっている。電流検出センサの出力が2.5Vのとき、充電電流Iを0.0Aとする。電流検出センサの出力が2.5V以上の場合、充電電流Iは正の値とし、電流検出センサの出力が2.5V未満の場合、充電電流Iは負の値とする。ここで、電流検出センサ203の出力が0.5V未満の場合には、電流検出センサが断線していると判定することができる。また、電流検出センサ203の出力が4.5Vを超過していれば、短絡異常と判定することができる。
【0050】
セル容量推定部405は、m番目のバッテリーセル202_mのセル容量Cpmを推定し、推定したセル容量Cpmは内蔵するRAMに格納することができる。ここで符号mは、1からnの自然数を表す。充電状態算出部406は、バッテリーパック201のセル毎の充電率、すなわち、セル毎の充電状態SOC1~SOCnを算出する。アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TAD1~TADnを算出する。アナログ-デジタル変換周期選択部408は、複数の候補の中から、セル電圧の最終的なアナログ-デジタル変換周期を選択する。
【0051】
次に、本実施の形態に係るアナログ-デジタル変換周期選択部408の役割について説明する。前記電流検出センサ故障検出部404から出力される電流検出センサ故障検出信号が“電流検出センサ故障無し”である場合は、前記バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADm[hr]のうち最小値、すなわち、最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、全セル統一のアナログ-デジタル変換周期(統一アナログ-デジタル変換周期)として採用する。すなわち、本実施の形態に係るバッテリーマネジメント装置105では、電流検出センサの状態が正常である場合には、基本アナログ-デジタル変換周期に代えて、全セルを、最小基本アナログ-デジタル変換周期[hr]でアナログ-デジタル変換する。
【0052】
一方、電流検出センサ故障検出信号が“電流検出センサ故障有り”である場合は、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、最も速いアナログ-デジタル変換周期であるアナログ-デジタル変換周期の最小値TADMin[hr]を、全セル統一のアナログ-デジタル変換周期[hr]として採用する。ここで、アナログ-デジタル変換周期の最小値TADMinとは、バッテリーマネジメント装置105に搭載されるマイクロコンピュータ401の演算処理周期(クロック周波数)である。電流検出センサ203が故障している時は、セル毎の充電状態SOCmが正しく算出できないため、基本アナログ-デジタル変換周期の算出もできなくなる。このため、フェイルセーフとして、マイクロコンピュータ401が最速周期でアナログ-デジタル変換するようにしている。
【0053】
次に、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換起動信号出力部409について説明する。アナログ-デジタル変換起動信号出力部409は、選択されたアナログ-デジタル変換周期TAD[hr]毎に、前記セル電圧検出部301のアナログ-デジタル変換部302に対し、アナログ-デジタル変換を起動する信号(アナログ-デジタル変換起動信号)を出力する。このようにして、バッテリーマネジメント装置105は、アナログ-デジタル変換時の電力消費を抑制することができる。
【0054】
次に、本願の実施の形態3に関わるセル電圧AD変換制御をフローチャートに基づいて説明する。
図12は、バッテリーマネジメント装置105が実施する実施の形態を示すフローチャートである。なお、この図では、ステップS0からステップS5は、実施の形態1と同様であり、図示を省略している。本処理に係るセル電圧AD変換制御は所定時間毎に実施される。この所定時間をtとすると、次回のセル電圧アナログ-デジタル変換制御は、現在時刻t1から所定時間tだけ経過すると、マイクロコンピュータ401が自動的に開始する。
【0055】
マイクロコンピュータ401が、ステップS0で、セル電圧AD変換制御を開始すると、ステップS1で、マイクロコンピュータ401のセル電圧格納部402は、セル電圧検出部301(マルチプレクサ303およびアナログ-デジタル変換部302)より取得したセル電圧Vm[V]を、セル毎に、順次、RAMに格納する。次に、ステップS2にて、マイクロコンピュータ401の充電電流格納部403は、電流検出センサ203より取得したバッテリーパック201の充電電流Iを、RAMに格納する。
【0056】
次に、ステップS3にて、マイクロコンピュータ401のセル容量推定部405は、バッテリーセルのセル毎のセル容量Cpmを推定し、RAMへ格納する。セル容量の推定方法は、例えば、特許文献2に記載された方法を参照する。次に、ステップS4では、マイクロコンピュータ401の充電状態算出部406が、前記ステップS2でRAMに格納された充電電流Iと、前記ステップS3でRAMに格納されたバッテリーセルのセル毎のセル容量Cpmより、バッテリーセルのセル毎の充電状態SOCm(充電率)を演算する。
【0057】
次に、ステップS5では、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換周期算出部407は、充電電流Iが、ゼロ以上かどうかを判断する。充電電流Iが、ゼロ以上であれば、セル電圧AD変換制御はステップS6に進む。ステップS6では、前記ステップS1にて格納したセル毎のセル電圧Vmと、前記ステップS2で格納した充電電流Iと、前記ステップS4で演算したバッテリーセルのセル毎の充電状態SOCmより、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0058】
具体的には、バッテリーパック201が充電状態にある場合なので、即ち、充電電流Iがゼロ以上である場合なので、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、前述の式5に基づきバッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。また、ステップS5で充電電流Iが、ゼロより少なければ、セル電圧AD変換制御はステップS7に進む。ステップS7では、バッテリーパック201が放電状態にある場合なので、即ち、充電電流Iがゼロ未満である場合なので、前述の式6に基づき、アナログ-デジタル変換周期算出部407は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmを算出する。
【0059】
次に、ステップS8では、アナログ-デジタル変換周期選択部408が、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、あらかじめ設定されている、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きいかどうかを判断する。バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、セル毎にあらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも小さい場合は、ステップS9に進み、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期を選択する。基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、ステップS10に進み、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、基本アナログ-デジタル変換周期をアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxにクリップする。
【0060】
バッテリーパック201が充電状態でもなく、かつ放電状態にもない場合、即ち、充電電流Iがゼロであるか、ゼロではないにしても充電電流Iが極めて小さい場合、演算される基本アナログ-デジタル変換周期が非常に大きな値をしめし、アナログ-デジタル変換ができなくなる。このような事態を防ぐために、セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmが、バッテリーセルのアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxよりも大きい場合は、ステップS10で、アナログ-デジタル変換周期選択部408がセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmをアナログ-デジタル変換周期の最大値TADMaxでクリップする。
【0061】
このことで、充電電流Iがゼロである場合または充電電流Iが極めて小さい場合に、セル電圧のアナログ-デジタル変換が長時間行われないことを防ぐことができる。なお、
図13の様に、ステップS8aでは、ステップS8の代わりに、充電電流Iの絶対値が、あらかじめ設定されている規定値よりも小さいかどうかを判定してもよい。
【0062】
次に、ステップS13では、マイクロコンピュータ401の電流検出センサ故障検出部404が、バッテリーパック201に接続された電流検出センサ203の動作状態が正常か、そうでないかを判断する。電流検出センサ故障検出部404は、バッテリーパック201に接続された電流検出センサ203が正常に動作していると判定した時は、「電流検出センサの状態=0:正常」をアナログ-デジタル変換周期選択部408に出力する。一方、電流検出センサ故障検出部404は、バッテリーパック201に接続された電流検出センサ203が故障していると判定した時は、「電流検出センサの状態=1:故障」をアナログ-デジタル変換周期選択部408に出力する。
【0063】
次に、前記ステップS9または前記ステップS10で算出したバッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmと、前記ステップS13で判定した電流検出センサ203の状態に基づき、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換周期選択部408は、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409に送信する最終アナログ-デジタル変換周期を選択する。具体的には、電流検出センサ故障検出部404からの電流検出センサ故障検出信号が“電流検出センサ故障無し”である場合、すなわち、電流検出センサ203が正常に動作していると判定した場合、ステップS14では、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、バッテリーセルのセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期TADmの最小値、すなわち、最小基本アナログ-デジタル変換周期Min(TADm)を、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409に送信するアナログ-デジタル変換周期とする。
【0064】
一方、電流検出センサ故障検出部404からの電流検出センサ故障検出信号が“電流検出センサ故障有り”である場合、ステップS15では、アナログ-デジタル変換周期選択部408は、アナログ-デジタル変換周期の最小値TADMinをこの時点でのアナログ-デジタル変換周期とする。ここで、アナログ-デジタル変換周期の最小値TADMinとは、バッテリーマネジメント装置105のマイクロコンピュータ401における、演算処理周期(クロック周波数)を指している。これは、電流検出センサ203が故障であるために正しくセルの充電状態を算出できない場合であっても、確実にセル電圧のアナログ-デジタル変換を行うことができるようにするためである。
【0065】
次に、ステップS11では、マイクロコンピュータ401のアナログ-デジタル変換起動信号出力部409が、前記アナログ-デジタル変換周期選択部408がステップS14またはステップS15で選定したアナログ-デジタル変換周期毎に、アナログ-デジタル変換部302に対してアナログ-デジタル変換起動信号を出力する。
【0066】
実施の形態4.
実施の形態4における詳細説明を行う。ここでは、バッテリーセル電圧検出部301とマイクロコンピュータ401は、離れた場所に設置されている。
図14は、本実施の形態に係る、バッテリーパック201、電流検出センサ203、および、バッテリーマネジメント装置105の関係を表す構成図である。バッテリーパック201を構成する単位となる電池は、バッテリーセルと呼ばれている。バッテリーセル202の起電圧は、1つだけでは低いため、通常、複数個を直列に接続してバッテリーパック201を構成し、車両駆動に必要な電圧を得ている。ここでは、バッテリーパック201は、セル電圧検出部301と、n個のバッテリーセル202_1~202_nを直列に接続したものから構成されている。
【0067】
すなわち、本実施の形態に係るバッテリーパック201は、バッテリーセル202_1~202_nに加えて、セル電圧検出部301を、内蔵しており、セル電圧検出部301は、バッテリーパック201と一体化されている。電流検出センサ203は、バッテリーパック201の充電電流Iを検出する。充電電流Iは、バッテリーパック201が充電状態のときに正の値、バッテリーパック201が放電状態のときに負の値を取る。バッテリーマネジメント装置105は、バッテリーセルに接続されたセル電圧検出部301と、マイクロコンピュータ401を備えている。セル電圧検出部301は、バッテリーセル202_1~202_nの端子間電圧をそれぞれ検出する。さらに、セル電圧検出部301は、アナログ-デジタル変換部302と、マルチプレクサ303を備えている。
【0068】
セル電圧検出部301のマルチプレクサ303は、直列接続されたバッテリーセル202_1~202_nが接続され、バッテリーセル202とアナログ-デジタル変換部302との接続切り替えを行う。アナログ-デジタル変換部302は、マイクロコンピュータ401が発行するアナログ-デジタル変換起動信号に基づいて、バッテリーセル202_1~202_nのセル電圧V1~Vnを、マルチプレクサ303を通じて計測する。計測値は、アナログ-デジタル変換部302でアナログ値からデジタル値に変換し、マイクロコンピュータ401のセル電圧格納部に出力される。
【0069】
本実施の形態は、セル電圧検出部301が、バッテリーパック201に内蔵される場合の実施例である。実施の形態1に係る
図3では、バッテリーマネジメント装置105が、セル電圧検出部301とマイクロコンピュータ401を内蔵している。すなわち、セル電圧検出部は、バッテリーマネジメント装置の内部に設置されています。この場合、バッテリーマネジメント装置105とバッテリーパック201の間を接続するハーネスの数は、バッテリーセルの数+1になる。そのため、バッテリーセルの数が多い程、バッテリーマネジメント装置とバッテリーパックを接続するハーネスの数も多くなる。
【0070】
また、バッテリーマネジメント装置105とバッテリーパック201の間の距離が長い程、ハーネスの接続総延長が長くなる。一方、本実施の形態に係る
図14では、セル電圧検出部301は、バッテリーパック201と一体化されており、バッテリーセル202の直近に、セル電圧検出部301が配置されている。マイクロコンピュータ401とバッテリーパック201の間を接続するハーネスの数は、バッテリーセルの数によらず、ネットワークハーネスの数のみとなり、ハーネスの本数を減らすことができる。また、バッテリーセルの数が増えても、セル電圧検出部301とバッテリーセル202の間の距離が近いため、ハーネスの総延長の増加を抑制することができる。
【0071】
なお、バッテリーマネジメント装置105のそれぞれの機能は、
図15に示すハードウェアによって実現される。同図は、本願の実施の形態に関わる、マイクロコンピュータ401の内部構成を示している。マイクロコンピュータ401は、プロセッサ500(中央処理装置)、メモリ501(記憶装置)、入出力デバイス502、ネットワーク503(データバス)などを備えている。
【0072】
すなわち、プロセッサ500と、プログラムおよびデータを蓄積するメモリ501(記憶装置)と、キーボード、センサなどの入出力デバイス502とをネットワーク503(データバス)によって接続し、プロセッサ500による制御によって、データの処理とデータの伝送を行っている。ここで、メモリ501(記憶装置)は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリー、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVD(Digital Versatile Disc)等が該当する。
【0073】
メモリ501(記憶装置)は、マイクロコンピュータ401の記憶装置(セル電圧格納部402、充電電流格納部403、セル容量推定部405のRAM、など)に該当する。入出力デバイス502(ユーザインタフェイス)は、ディスプレイ、キーボードなどであり、マイクロコンピュータ401における入力装置および表示装置に該当する。マイクロコンピュータ401における、セル電圧格納部402、充電電流格納部403、電流検出センサ故障検出部404、セル容量推定部405、充電状態算出部406、アナログ-デジタル変換周期算出部407、アナログ-デジタル変換周期選択部408、および、アナログ-デジタル変換起動信号出力部409の各機能は、プロセッサ500およびメモリ501により実現される。
【0074】
各機能の実行部は、専用のハードウェアであっても、メモリ501に格納されるプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit:中央処理装置)であってもよい。CPUは、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)ともいう。各機能の実行部がCPUの場合、マイクロコンピュータ401の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアとファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ501(記憶装置)に格納される。各機能の実行部は、メモリ501(記憶装置)に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各部の機能を実現する。
【0075】
従って、本願に係るバッテリーマネジメント装置は、バッテリーパックの充電電流および、セル電圧分解能に基づき、各セル電圧のアナログ-デジタル変換部の起動周期を算出する部を備え、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期毎に、各セル電圧のアナログ-デジタル変換を行うことを特徴とするバッテリーマネジメント装置である。また、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期を算出する部は、バッテリーパックの充電電流と、バッテリーセルにおけるセルの充電状態と、セル容量と、セル電圧と、セル電圧分解能より算出することを特徴とするものである。
【0076】
また、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期を算出する部は、バッテリーパックの充電電流と、バッテリーセルにおけるセルの充電状態と、セル容量と、セル電圧を軸としたアナログ-デジタル変換部起動周期を表すテーブルデータの参照によって算出することを特徴とするものであり、処理負荷を軽減できる効果を奏する。また、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期を算出する部は、アナログ-デジタル変換部の起動周期を最大値でクリップすることを特徴とするものであり、充電電流I=0Aであるときに、TADが無限大になってAD変換できなくなることを防ぐ効果を奏する。
【0077】
また、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期を算出する部は、アナログ-デジタル変換部の起動周期を最大値でクリップすることを特徴とするものであり、充電電流I=0Aであるときに、TADが無限大となってAD変換できなくなることを防ぐ効果が得られる。なお、電池が組電池である場合に、前記アナログ-デジタル変換部の起動周期算出部は、バッテリーセルのセル毎のアナログ-デジタル変換部の起動周期算出し、アナログ-デジタル変換部の起動周期の最小値を算出ことを特徴とするものである。セル毎にアナログ-デジタル変換周期を計測する処理、RAMが不要となり、ソフトウェアを簡素に構築できる、さらに、マイクロコンピュータリソース(RAM)の消費量を抑制できる効果を奏する。
【0078】
また、前記バッテリーマネジメント装置は、バッテリーパックの充電電流を検出する電流検出センサの故障検出部を備え、バッテリーパックの充電電流を検出する電流検出センサが故障である場合に、アナログ-デジタル変換部の起動周期を、最も速いアナログ-デジタル変換周期である周期とすることを特徴とするものである。電流検出センサ故障時はセルの充電状態が正しく算出できないため、TADの算出もできなくなる。フェイルセーフとして、最速でAD変換するようにすることを期待できる効果を奏する。
【0079】
また、バッテリーセル電圧検出部は、前記バッテリーマネジメント装置に内蔵することを特徴とするものである。また、前記バッテリーセル電圧検出部は、前記バッテリーマネジメント装置の外部に設置することを特徴とするものである。前記バッテリーマネジメント装置は車両に搭載された車両駆動用のものであることを特徴とするものである。
【0080】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。従って、例示されていない無数の変形例が、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0081】
以下、本願の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
アナログ-デジタル変換起動信号を受理すると、バッテリーパックを構成しているバッテリーセルのセル電圧をセル毎に計測し、この計測したセル毎のセル電圧をデジタル化して出力するセル電圧検出部と、
前記セル電圧検出部から出力されるデジタル化されたセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能とを基にして、基本アナログ-デジタル変換周期を演算するマイクロコンピュータとを備え、
前記マイクロコンピュータは、前記基本アナログ-デジタル変換周期を基準にして最終アナログ-デジタル変換周期を選択し、
この選択された最終アナログ-デジタル変換周期と同じ間隔で前記アナログ-デジタル変換起動信号を前記セル電圧検出部に発行することを特徴とするバッテリーマネジメント装置。
(付記2)
前記マイクロコンピュータは、
前記セル電圧検出部から出力されるバッテリーセルのセル毎のセル電圧と、前記バッテリーパックに流れる充電電流と、セル電圧とセルの充電状態との対応を表すテーブルとから、バッテリーセルのセル毎のセル容量を推定し、
この推定されたバッテリーセルのセル容量と、前記バッテリーセルのセル電圧分解能と、現在のセルの充電状態とに基づいて、前記基本アナログ-デジタル変換周期を前記バッテリーセルのセル毎に演算することを特徴とする付記1に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記3)
前記マイクロコンピュータは、
バッテリーパックの充電電流と、セルの充電状態と、セル容量と、セル電圧を軸としたアナログ-デジタル変換部起動周期を表しているテーブルデータを参照することによって、基本アナログ-デジタル変換周期を算出することを特徴とする付記1または付記2に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記4)
前記セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値よりも小さい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎の基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期がアナログ-デジタル変換周期の最大値よりも大きい場合には、前記マイクロコンピュータは、基本アナログ-デジタル変換周期を、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最大値でクリップし、このクリップされた基本アナログ-デジタル変換周期を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択することを特徴とする付記1から付記3に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記5)
前記バッテリーパックに流れる充電電流の絶対値が規定値よりも大きい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記バッテリーパックに流れる充電電流の絶対値が規定値よりも小さい場合には、前記マイクロコンピュータは、セル毎に演算される基本アナログ-デジタル変換周期を、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最大値でクリップし、このクリップされた基本アナログ-デジタル変換周期を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択することを特徴とする付記1から付記3に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記6)
前記マイクロコンピュータは、前記バッテリーパックに流れる充電電流を検出する電流検出センサの動作状態を検出する電流検出センサ故障検出部を備えていることを特徴とする付記1から付記5に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記7)
前記電流検出センサ故障検出部が前記電流検出センサは正常に動作していると判断した場合、前記マイクロコンピュータは、演算されたセル毎の基本アナログ-デジタル変換周期のうち最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に選択し、
前記電流検出センサ故障検出部が前記電流検出センサは故障していると判断した場合、前記マイクロコンピュータは、あらかじめ定められているアナログ-デジタル変換周期の最小値を、全セル統一の最終アナログ-デジタル変換周期に設定することを特徴とする付記6に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記8)
前記セル電圧検出部は、前記バッテリーマネジメント装置の内部に設置されていることを特徴とする付記1から付記7に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記9)
前記セル電圧検出部は、前記バッテリーパックと一体化されていることを特徴とする付記1から付記7に記載のバッテリーマネジメント装置。
(付記10)
前記セル電圧検出部と前記マイクロコンピュータは、車両に搭載されていることを特徴とする付記1から付記9に記載のバッテリーマネジメント装置。
【符号の説明】
【0082】
50 電気自動車、 100 車体、 101 車両制御装置、 102 駆動用モータ、 103 インバータ、 105 バッテリーマネジメント装置、 106 充電器、 201 バッテリーパック、 202 バッテリーセル、 203 電流検出センサ、 301 セル電圧検出部、 302 アナログ-デジタル変換部、 303 マルチプレクサ、 401 マイクロコンピュータ、 402 セル電圧格納部、 403 充電電流格納部、 404 電流検出センサ故障検出部、 405 セル容量推定部、 406 充電状態算出部、 407 アナログ-デジタル変換周期算出部、 408 アナログ-デジタル変換周期選択部、 409 アナログ-デジタル変換起動信号出力部