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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182078
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231219BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G08G1/16 D
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095473
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】富平 武信
【テーマコード(参考)】
3D344
5H181
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
5H181AA01
5H181CC04
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL04
5H181LL08
5H181LL14
(57)【要約】
【課題】より好適な運転支援を行うことができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用表示装置1は、車両100に搭載され、前記車両100の前部に設けられた表示面120に向けて、前記車両100の乗員に虚像Viとして視認させる画像Vを表示光DLとして出射する表示器10と、前記表示器10を制御する制御部20とを備え、前記制御部20は、前記車両100が直線状の車線Qを走行している状態で、前記画像VとしてガイドGを表示させ、前記車線Qを区画する区画線Rに沿って前記ガイドGを重畳表示させる処理を実行可能であり、かつ、前記車両100の状況に応じて設定された目標減速度f3に基づいて前記区画線Rに対する前記ガイドGの傾きを変更することを特徴とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の前部に設けられた表示面に向けて、前記車両の乗員に虚像として視認させる画像を表示光として出射する表示器と、
前記表示器を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記車両が直線状の車線を走行している状態で、前記画像としてガイドを表示させ、前記車線を区画する区画線に沿って前記ガイドを重畳表示させる処理を実行可能であり、かつ、前記車両の状況に応じて設定された目標減速度に基づいて前記区画線に対する前記ガイドの傾きを変更することを特徴とする、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記車両の実速度を検出可能なセンサと、
前記車両の前方に位置する車速制限対象地点を特定する前方監視部とを備え、
前記制御部は、前記前方監視部によって特定された前記車速制限対象地点までの前記車両の適正速度に対する、前記センサによって検出された前記実速度の超過速度に基づいて、前記目標減速度を設定する、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記目標減速度が大きいほど、前記区画線に対する前記ガイドの傾き量を大きくする、
請求項1または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記ガイドは、前記区画線の内側にそれぞれ表示され、消失点に向かって延在し、
前記消失点は、前記目標減速度が大きいほど、その位置が前記表示面において下側に移動する、
請求項3に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両のウインドシールドを通して、当該車両の運転者に見える景色に実際に存在しない物体を錯視画像を重畳表示可能なヘッドアップディスプレイ装置を備える車両用表示制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-197707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載の車両用表示制御装置は、景色に錯視画像が重畳表示されることで運転者が圧迫感を感じてしまう可能性があり、別の表示方法でより好適な運転支援を行うことが望まれている。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、より好適な運転支援を行うことができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用表示装置は、車両に搭載され、前記車両の前部に設けられた表示面に向けて、前記車両の乗員に虚像として視認させる画像を表示光として出射する表示器と、前記表示器を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記車両が直線状の車線を走行している状態で、前記画像としてガイドを表示させ、前記車線を区画する区画線に沿って前記ガイドを重畳表示させる処理を実行可能であり、かつ、前記車両の状況に応じて設定された目標減速度に基づいて前記区画線に対する前記ガイドの傾きを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置は、より好適な運転支援を行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る車両用表示装置の概略構成を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る車両用表示装置の制御部の概略構成を表すブロック図を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る車両用表示装置の制御部が設定する各地点を説明するための図である。
図4図4は、実施形態に係る車両用表示装置が表示面に表示するガイドを画像として出力するまでの処理を説明するための図である。
図5図5は、実施形態に係る車両用表示装置が表示面に画像として表示するガイドの表示方法を説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る車両用表示装置が表示面に画像として表示するガイドの表示方法を説明するための図である。
図7図7は、図5図6に示すガイドの傾き量を設定する方法を説明するための図である。
図8図8は、図5図6に示すガイドの傾き量を設定する方法を説明するための図である。
図9図9は、図5図6に示すガイドの傾き量を設定する方法を説明するための図である。
図10図10は、実施形態に係る車両用表示装置の制御部の制御の一例を示すフローチャート図である。
図11図11は、変形例に係る車両用表示装置が表示面に画像として表示するガイドの表示方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1に示す車両用表示装置1は、自動車等の車両100に適用され、当該車両100のダッシュボードに設けられたインストルメントパネル内に搭載されるヘッドアップディスプレイ装置である。
【0011】
本実施形態の車両用表示装置1は、表示器10と、制御部20と、センサ30と、前方監視部40とを備えている。車両用表示装置1は、車両100の前部に設けられた表示面120に向けて表示器10が出射した表示光DLをアイポイント(目視位置)EP側に向けて反射させることで、表示面120に映る画像VをアイポイントEPから視える景色と重なって視える虚像Viとして視認させることができるものである。また、車両用表示装置1は、虚像Viとして、車両100が走行している車線Q(図5図6を参照)を区画する区画線R(図5図6を参照)に沿って視えるガイドGを表示し、車両100の状況に応じて、区画線Rに対するガイドGの傾きを変更することで、車両100の減速を促すことができるものである。そのため、車両用表示装置1は、より好適な運転支援を行うことができる。
【0012】
車両用表示装置1に対するアイポイントEPは、車両100の乗員である運転者200の視点の位置であり、空間領域として予め想定される。また、表示器10が出射した表示光が反射する表示面120は、車両100の前部に設けられたウインドシールドWSによって構成されるものとして説明するが、当該表示面120の形態は特に限定されず、例えば、ウインドシールドWSよりも運転者200側に設けられた透明または半透明のパネル(例えば、コンバイナ)であってもよい。また、区画線R(図5図6を参照)は、車線Q(図5図6を参照)を区画する境界線(白線等)であり、車線Qに沿って描かれた実線、破線によって構成される。例えば、区画線Rは、車道外側線、車線境界線等である。また、車両用表示装置1において、電力供給、制御信号、各種情報等の授受のための各構成要素間の接続方式は、特に断りのない限り、電線や光ファイバ等の配索材を介した有線による接続(例えば、光ファイバを介した光通信等も含む)、無線通信、非接触給電等の無線による接続のいずれであってもよい。
【0013】
なお、車両用表示装置1の幅方向は、典型的には、当該車両用表示装置1が適用される車両100の車幅方向Yに相当する。また、車両用表示装置1の奥行方向は、典型的には、当該車両用表示装置1が適用される車両100の前後方向X(言い換えれば、車両100の進行方向)に相当する。また、車両用表示装置1の前面側は、車両100の運転席と対面する側であり、典型的には、当該運転席に座った運転者200によって視認される側に相当する。一方、車両用表示装置1の背面側とは、奥行方向において前面側とは反対側であり、典型的には、インストルメントパネルの内部に収容される側に相当する。
【0014】
また、以下の説明では、車両100の前後方向Xにおいて、車両100が前進する側を「前方」、車両100が後進する側を「後方」という場合がある。車両100の車幅方向Yにおいて、前後方向Xの前方に向かって左側を「左側」、前後方向Xの前方に向かって右側を「右側」という場合がある。車両100の高さ方向Zにおいて、鉛直方向上側を「上側」、鉛直方向下側を「下側」という場合がある。以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。以下、図1図10を参照して、車両用表示装置1の各構成について詳細に説明する。
【0015】
表示器10は、前後方向Xに対してウインドシールドWSとアイポイントEPとの間に位置し、ウインドシールドWSに虚像Viを投影することによって、車両100の状況を運転者200に認知させることができる部分である。図1に示すように、表示器10は、筐体11と、画像表示装置12と、ミラー13とを備えている。
【0016】
筐体11は、遮光性を有する材料で構成され、その内部に、画像表示装置12やミラー13を収容する部分である。筐体11の上壁は、開口部11aを有し、当該開口部11aは、画像表示装置12が出射した表示光DLを透過させることができる透明なカバー11bによって閉塞されている。
【0017】
画像表示装置12は、表示光DLをミラー13に向けて出射する部分である。画像表示装置12は、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)等のディスプレイや、ディスプレイに対して光を照射するバックライトを含んで構成され、ディスプレイの表示画面12aに画像Vを表示することができる。
【0018】
ミラー13は、画像表示装置12から出射される表示光DLをウインドシールドWSに向けて反射させる部分である。表示面120を構成するウインドシールドWSの反射面120aは、前後方向Xにおいて運転者200と対向して位置し、高さ方向Zの上側へ向かうに従って運転者200へ近づくように傾斜している。
【0019】
制御部20は、マイクロコンピュータとして構成され、表示器10を制御することができる部分である。制御部20は、車両100に搭載されている機器や、サーバー等から車両100の状況を取得することができる。また、制御部20は、取得した情報に基づいて画像Vを生成し、当該画像Vをディスプレイの表示画面12aに表示させることで、アイポイントEPから視える景色に虚像Viを重畳表示させる処理を実行することができる。なお、制御部20の詳しい構成については後述する。
【0020】
センサ30は、車両100に関する状態を検出することができるものである。ここでいうセンサ30とは、少なくとも車両100の走行中の速度(以下、実速度f1と称する)を検出可能な車速センサである。センサ30は、例えば、アウトプットシャフトの回転速度を検出したり、衛星測位システムを利用して車両100の現在位置を取得したりすることで、実速度f1等の車両100に関する情報を取得することができる。
【0021】
前方監視部40は、車両100の前方にある所定の車速制限対象地点Dの位置を特定することができるものである。ここでいう前方監視部40とは、車載カメラや通信機器を含んで構成される。前方監視部40は、例えば、車載カメラで車両100の前方を撮影したり、通信機器で路側機等のインフラ側から提供される情報を受信したりすることによって、道路情報や交通情報を取得することができる。そして、前方監視部40は、処理部を含んで構成されており、当該処理部によって、撮像した画像や取得した情報に基づいて、例えば、車両100の前方にある障害物の位置や、車両100の前方にある急カーブの位置を車速制限対象地点Dの位置として特定することができる。なお、前方監視部40は、車両100のGPS情報と、地図情報とに基づいて車両100の前方を監視し、車両100の前方にある所定の車速制限対象地点Dの位置を特定するものであってもよい。
【0022】
次に、図2図4を参照して、制御部20の機能について詳細に説明する。
【0023】
図2に示すように、制御部20は、機能概念的に、取得部21と、記憶部22と、判断部23と、生成部24と、出力部25とを含んで構成される。まずここでは、図2図3を参照して、制御部20の各部の概要を説明した後、図4を参照して、各部によって実行される処理の詳細について説明する。
【0024】
取得部21は、車両100の周辺の情報を取得し、車両100が走行する道路の道路情報や交通情報を取得する部分である。取得部21は、例えば、センサ30や前方監視部40等の機器から情報を取得したり、VICS(登録商標)(Vehicle Information and Communication System)や交通情報を管理するサーバーから情報を取得したりすることで、車速制限対象地点Dに関する情報を取得することができる。
【0025】
記憶部22は、メモリ等の記憶装置であり、制御部20での各種処理に必要な条件やデータ、制御部20で実行する各種プログラム等が格納される部分である。そのため、ディスプレイの表示画面12aに画像Vを表示させるプログラム等は、予め記憶部22に記憶されている。なお、記憶部22は、例えば、取得部21で取得された各種情報や、判断部23で算出された値や、当該値に基づいて生成された画像V等を一時的に記憶できるものであってもよく、これらの情報は、必要に応じて、判断部23、生成部24、出力部25等によって読み出されてもよい。
【0026】
判断部23は、取得部21が取得した情報から車両100の状況を判断し、記憶部32が記憶している画像データの調整量を演算する部分である。図2に示すように、判断部23は、速度算出部23aと、距離算出部23bと、設定部23cと、位置決定部23dと、演算部23eとを含んで構成される。
【0027】
速度算出部23aは、車速制限対象地点Dまでの適正速度f2を算出する部分である。速度算出部23aは、取得部21が取得した車速制限対象地点Dに関する情報に基づいて、車速制限対象地点Dを適正な速度で通過する、または、車速制限対象地点Dを適正な速度で停止するための車両100の適正速度f2を算出することができる。なお、適正速度f2は、車速制限対象地点Dの種類に応じて、予め決められた値に設定されていてもよい。
【0028】
距離算出部23bは、車速制限対象地点Dまでの距離を算出する部分である。距離算出部23bは、取得部21が取得した車両100の位置に関する情報や、車速制限対象地点Dの位置に関する情報に基づいて、車両100から車速制限対象地点Dまでの距離を算出することができる。
【0029】
設定部23cは、車両100の目標減速度f3を設定する部分である。設定部23cは、車両100の適正速度f2に対する実速度f1の超過速度から目標減速度f3を算出することができる。
【0030】
位置決定部23dは、ウインドシールドWSに表示された画像Vを変更する地点を決定する部分である。位置決定部23dは、距離算出部23bが算出した車速制限対象地点Dまでの距離や、設定部23cが設定した車両100の目標減速度f3に基づいて、車両100から車速制限対象地点Dまでの間に複数の地点を設定することができる。
【0031】
ここで、図3を参照して、位置決定部23dによって決定される各地点の一例について説明しておく。位置決定部23dは、例えば、図3に示すように、車速制限対象地点Dを地点dとして設定し、車両100と地点dとの間に、地点a、地点b、地点cの3つの地点を設定する。地点aは、運転者200に対して車両100の減速を促す地点であり、区画線Rに沿って重畳表示されるガイドGを含む画像VをウインドシールドWSに表示することで、運転者200に対する運転支援を開始する地点である。また、地点bは、車両100の適正速度f2に対する実速度f1の超過速度から画像Vを変更し、運転者200に対して車両100の減速を促す地点である。また、地点cは、地点dの直前であり、運転者200に対する運転支援を終了する地点である。このとき、地点a、地点b、地点cは、次の地点に設定される。まず、地点cは、地点dから、所定の距離(第1距離)離れた地点に設定される。ここでいう第1距離は、例えば、車速制限対象地点Dの種類等に応じて予め定められる値であり、当該車速制限対象地点Dの種類等に応じて異なる値が設定されてもよい。そして、地点bは、地点cから、所定の距離(第2距離)離れた地点に設定される。ここでいう第2距離は、車両100の目標速度(車両100が想定通りに減速を行った場合の速度)や、車速制限対象地点Dまでの距離に等に応じて算出された値である。そして、地点aは、地点bから、所定の距離(第3距離)離れた地点に設定される。ここでいう第3距離は、運転者200の反応時間(運転者200が画像Vを視認して車両100の減速を開始するまでの時間)に応じて算出された値である。なお、位置決定部23dが地点a、地点b、地点cの地点を設定する方法や、各地点の間隔(第1距離、第2距離、第3距離の長さ)等は特に限定されず、車両100の状況や、車両100が走行する道路の状況などにあわせて変更することができる。また、位置決定部23dが車両100と車速制限対象地点Dとの間に設定する中間地点の個数は、特に限定されない。
【0032】
図2に戻って説明を続ける。演算部23eは、画像Vとして表示されるガイドGの傾き量θを演算する部分である。演算部23eは、車両100の目標減速度f3に応じて、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを演算することができる。
【0033】
生成部24は、ディスプレイの表示画面12aに表示させる画像Vを生成する部分である。生成部24は、記憶部22が記憶している画像を調整する、すなわち、ガイドGの表示角度を調整することで、車両100の状況にあった画像Vを生成することができる。
【0034】
出力部35は、画像Vをディスプレイの表示画面12aに出力する部分である。出力部35は、生成部33が生成した画像Vをディスプレイの表示画面12aに出力することで、ウインドシールドWSに虚像Viを投影することができる。
【0035】
次に、図4を参照して、車両用表示装置1が画像Vを出力するまでの処理P1~P8について詳細に説明する。
【0036】
まず、取得部21は、センサ30を介して検出された車両100の実速度f1を取得する(処理P1)。また、前方監視部40は、車両100の前方の画像、道路情報、交通情報等、車両100の前方の状況に関する情報を取得し、車両100の前方の状況を確認する(処理P2)。そして、前方監視部40は、当該取得した情報に基づいて、車速制限対象地点Dを特定する(処理P3)。そして、距離算出部23bは、取得部21が取得した車両100の現在位置に関する情報と、前方監視部40が特定した車速制限対象地点Dの位置に関する情報に基づいて、車両100の現在位置から車速制限対象地点Dまでの距離を算出する(処理P4)。一方、速度算出部23aは、取得部21が取得した車両100の現在位置に関する情報と、前方監視部40が特定した車速制限対象地点Dの位置に関する情報に基づいて、車速制限対象地点Dまでの適正速度f2を算出する(処理P5)。そして、設定部23c、位置決定部23d、及び、演算部23eは、取得部21が取得した車両100の実速度f1、距離算出部23bが算出した車速制限対象地点Dまでの距離、速度算出部23aが算出した適正速度f2等に基づいて、ガイドGの表示のために必要な各種処理を行う(処理P6)。すなわち、設定部23cは、取得部21が取得した車両100の実速度f1と、速度算出部23aが算出した適正速度f2とに基づいて、車両100の適正速度f2に対する実速度f1の超過速度から目標減速度f3を算出する。位置決定部23dは、距離算出部23bが算出した車速制限対象地点Dまでの距離や、設定部23cが設定した車両100の目標減速度f3に基づいて、車両100から車速制限対象地点Dまでの間の地点a、地点b、地点cを設定する。演算部23eは、適正速度f2に対する実速度f1の超過速度から算出される目標減速度f3に応じて、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを演算する。そして、生成部24は、演算部23eが演算した値に基づいて、記憶部22が記憶している画像を調整する、すなわち、ガイドGの表示角度を調整することで、車両100の状況にあった画像Vを生成する(処理P7)。そして、出力部35は、車両100の状況に応じて生成部33が生成した画像Vをディスプレイの表示画面12aに出力する(処理P8)。
【0037】
[ガイドの表示方法]
次に、図5図6を参照して、ガイドGの表示方法について詳細に説明する。
【0038】
ガイドGは、車両100が直線状の車線Qを走行している状態で、ウインドシールドWSに画像Vとして表示されるものであり、車幅方向Yに沿って配置される一対の区画線Rの内側にそれぞれ表示されるものである。図5に示すように、一対のガイドGは、直線状のラインであり、画像Vに設定された消失点Sに向かって延在している。そのため、運転者200は、ウインドシールドWSに一対のガイドGが表示されると、アイポイントEPから前方に向かって収束して視える一対の区画線Rに沿ってガイドGが延在しているように錯視し、車両100が走行する車線Q上に位置する虚像ViとしてガイドGを認識する。
【0039】
また、ガイドGは、車両100の状況に応じて設定された目標減速度f3に基づいて、車線Qに対する傾きが変更される。より具体的に言えば、図5図6に示すように、ガイドGは、消失点Sの位置がウインドシールドWSにおいて下側に移動することで、車線Qに対するガイドGの傾き量θが大きくなる。また、ガイドGは、図7図9に示すように車両100が地点bから地点cまでを走行している間に目標減速度f3が変更されると、変更された目標減速度f3の大きさに応じて、車線Qに対するガイドGの傾きが変更される。
【0040】
例えば、前方監視部40やサーバーを介して車速制限対象地点Dが特定され、地点dの位置や状況が特定されると、車両100が地点aを通過する際に、ウインドシールドWSにガイドGが表示され、運転者200に対する運転支援が開始される。このとき、区画線Rに対するガイドGの傾き量θはゼロと演算される。そのため、ガイドGは、区画線Rに対して平行に延在しているように表示される。
【0041】
また、車両100が地点bを通過する際に、区画線Rに対するガイドGの傾き量θがゼロから所定の値に変更される。そのため、ガイドGは、区画線Rより内側(車線Qの中央側)に傾いているように表示され、運転者200は、ガイドGの傾きを視認することによって、車両100の減速が必要であることを認知する。このとき、区画線Rに対するガイドGの傾き量θは、算出された目標減速度f3の大きさに合わせた値に演算される。そのため、ガイドGは、目標減速度f3が大きいほど区画線Rに対して内側に傾いているように表示される。
【0042】
また、車両100が地点cを通過するまでの間に、車両100の実速度f1が逐次計測され、車両100の目標減速度f3に応じて区画線Rに対するガイドGの傾き量θが逐次変更される。そのため、運転者200は、区画線Rに対するガイドGの傾き量θの変化を視認し、車両100の状況の変化を把握することで、車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させることができる。
【0043】
[ガイドの傾き量を設定する方法]
次に、図7図9を参照して、ガイドGの傾き量θを設定する方法について詳細に説明する。図7は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少している場合にガイドGの傾き量θを設定する方法を示す図である。また、図8は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少せず、車両100の目標速度を下回って減少している場合にガイドGの傾き量θを設定する方法を示す図である。また、図9は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少せず、車両100の目標速度を上回って減少している場合にガイドGの傾き量θを設定する方法を示す図である。
【0044】
なお、各図の上段に記載された折れ線グラフの縦軸は、車両100の速度の大きさを示すものであり、左側の縦軸は車両100の実速度f1の大きさ、右側の縦軸は車両100の適正速度f2の大きさを示している。また、折れ線グラフの横軸は、車速制限対象地点Dまでの距離を示し、地点a、地点b、地点c、地点dの位置を示している。また、各図の下段に記載された模式図は、演算部23eによって演算されたガイドGの傾き量θを示すものであり、枠の中に書かれている一対のラインをガイドGとし、一対のラインが枠の縦辺に対して平行である場合は、区画線Rに対するガイドGの傾き量θがゼロであることを示し、枠の縦辺に対するラインの傾き量の大きさによって、区画線Rに対するガイドGの傾き量θの大きさを示すものとする。
【0045】
例えば、図7に示すように、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少している場合、車速制限対象地点Dまでの距離に対する減速量は一定の割合で推移する。そのため、車両100の目標減速度f3は、一定であり、区画線Rに対するガイドGの傾き量θは、車両100が地点bを通過する際に演算された値から変更されない。したがって、ガイドGは、車線Qに対して所定の角度を保ったまま傾いて表示される。
【0046】
一方、図8に示すように、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少せず、車両100の目標速度を下回って減少している、すなわち、車両100の実速度f1が車両100の目標速度を上回っている場合、車両100が車速制限対象地点Dに到達する前に車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させるためには、減速量を増加させる必要がある。そのため、車両100の目標減速度f3を増加させる必要があり、車線Qに対するガイドGの傾き量θを、車両100が地点bを通過する際に演算された値より大きくする必要がある。したがって、ガイドGは、区画線Rに対してより大きな角度で傾いて表示される。
【0047】
また、図9に示すように、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少せず、車両100の目標速度を上回って減少している、すなわち、車両100の実速度f1が車両100の目標速度を下回っている場合、車両100が車速制限対象地点Dに到達する前に車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させることが十分に可能である。そのため、車両100の目標減速度f3を減少させる必要があり、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを、車両100が地点bを通過する際に演算された値より小さくする必要がある。したがって、ガイドGは、区画線Rに対してより小さな角度で傾いて表示される。
【0048】
[制御部の動作]
次に、図10を参照して、制御部20の動作について詳細に説明する。
【0049】
まず、制御部20は、前方監視部40やサーバーを介して車速制限対象地点Dを特定する(ステップS11)。
【0050】
そして、制御部20は、車速制限対象地点Dの目標通過速度を算出する(ステップS12)。例えば、車速制限対象地点Dが急カーブである場合、制御部20は、車速制限対象地点Dを適正な速度で通過するための車両100の適正速度f2を算出する。また、車速制限対象地点Dが路上の障害物である場合、制御部20は、車速制限対象地点Dを適正な速度で停止するための車両100の適正速度f2を算出する。
【0051】
そして、制御部20は、車両100の目標減速度f3を算出する(ステップS13)。制御部20は、車両100の適正速度f2に対する実速度f1の超過速度から目標減速度f3を算出し、車速制限対象地点Dまでの距離や、目標減速度f3に基づいて、車両100から車速制限対象地点Dまでの間に位置する、地点a、地点b、地点cをそれぞれ設定する。
【0052】
そして、制御部20は、車両100が地点aを通過したか否かを判断する(ステップS14)。地点aは、ウインドシールドWSにガイドGを表示することで、運転者200に対する運転支援を開始する地点である。制御部20は、車両100が地点aを通過していないと判断する(ステップS14:No)と、車両100が地点aを通過するまで、ステップS14を繰り返す。
【0053】
そして、制御部20は、車両100が地点aを通過したと判断する(ステップS14:Yes)と、ウインドシールドWSにガイドGを表示する(ステップS15)。このとき、区画線Rに対するガイドGの傾き量θはゼロと演算され、ガイドGは、区画線Rに対して平行に延在しているように表示される。
【0054】
そして、制御部20は、車両100が地点bを通過したか否かを判断する(ステップS16)。地点bは、区画線Rに対するガイドGの傾き量θが変更されることで、運転者200に対して車両100の減速を促す地点である。制御部20は、車両100が地点bを通過していないと判断する(ステップS16:No)と、車両100が地点bを通過するまで、ステップS16を繰り返す。
【0055】
そして、制御部20は、車両100が地点bを通過したと判断する(ステップS16:Yes)と、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを再度演算し、車両100の減速度合に応じてガイドGの傾き量θを設定する(ステップS17)。
【0056】
そして、制御部20は、車両100が地点cを通過したか否かを判断する(ステップS18)。地点cは、地点dの直前に位置する地点である。制御部20は、車両100が地点cを通過していないと判断する(ステップS18:No)と、車両100の減速度合を確認し、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少しているか否かを判断する(ステップS19)。そして、制御部20は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少していないと判断する(ステップS19:No)と、車両100の目標減速度f3を再度算出する(ステップS20)。そして、制御部20は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少するまで、ステップS17~ステップS19を繰り返す。なお、制御部20は、車両100の実速度f1が車両100の目標速度に沿って減少していると判断する(ステップS19:Yes)と、車両100が地点cを通過するまで、ステップS18、ステップS19を繰り返す。
【0057】
そして、制御部20は、車両100が地点cを通過したと判断する(ステップS16:Yes)と、ガイドGを消すことで、ウインドシールドWSに対するガイドGの表示を終了する(ステップS21)。
【0058】
以上で説明した車両用表示装置1は、車両100に搭載され、車両100の前部に設けられた表示面としてのウインドシールドWSに向けて、車両100の乗員に虚像Viとして視認させる画像Vを表示光DLとして出射する表示器10と、表示器10を制御する制御部20とを備え、制御部20は、車両100が直線状の車線Qを走行している状態で、画像VとしてガイドGを表示させ、車線Qを区画する区画線Rに沿ってガイドGを重畳表示させる処理を実行可能であり、かつ、車両100の状況に応じて設定された目標減速度f3に基づいて区画線Rに対するガイドGの傾きを変更する。
【0059】
このような構成によれば、車両用表示装置1は、運転者200にガイドGを視認させることで、車両100の状況を把握させることができ、車両100が車速制限対象地点Dに到達する前に車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させることができる。したがって、運転者200に対してより好適な運転支援を行うことができる。
【0060】
さらに、以上で説明した車両用表示装置1は、車両100の実速度f1を検出可能なセンサ30と、車両100の前方に位置する車速制限対象地点Dを特定する前方監視部40とを備え、制御部20は、前方監視部40によって特定された車速制限対象地点Dまでの車両100の適正速度f2に対する、センサ30によって検出された実速度f1の超過速度に基づいて、目標減速度f3を設定する。このような構成によれば、走行中の車両100の状況に応じて目標減速度f3を設定し、その都度、区画線Rに対するガイドGの傾きを変更して表示することで、運転者200に車両100の減速度合を逐次把握させることができる。したがって、運転者200に対してより好適な運転支援を行うことができる。
【0061】
さらに、以上で説明した車両用表示装置1の制御部20は、目標減速度f3が大きいほど、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを大きくする。このような構成によれば、車両用表示装置1は、区画線Rに対するガイドGの傾き量θを運転者200に視認させることで、車両100の減速度合を把握させることができ、車両100が車速制限対象地点Dに到達する前に車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させることができる。したがって、運転者200に対してより好適な運転支援を行うことができる。
【0062】
さらに、以上で説明した車両用表示装置1が表示するガイドGは、区画線Rの内側にそれぞれ表示され、消失点Sに向かって延在し、消失点Sは、目標減速度f3が大きいほど、その位置が表示面としてのウインドシールドWSにおいて下側に移動する。このような構成によれば、このような構成によれば、ガイドGは、車両100の車幅方向沿って配置され、車両100が走行する道路に対して対称的に配置される。また、ガイドGの消失点Sを表示面の下側に移動させることで区画線Rに対するガイドGの傾き量θを大きく見せることができ、運転者200に車両100の減速度合を把握させることができる。したがって、運転者200に対してより好適な運転支援を行うことができる。
【0063】
[変形例]
次に、実施形態の変形例について説明する。ガイドGは、直線状のラインであるものとして説明したが、これに限定されない。
【0064】
変形例に係る車両用表示装置1Aは、車両100が直線状の車線Qを走行している状態で、ウインドシールドWSに一対のガイドGAを表示することができる。ガイドGAは、図11に示すように、複数の輝点によって構成されるものであり、各輝点を結んだ仮想線GLは、画像に設定された消失点SAに向かって延在している。そのため、運転者200は、ウインドシールドWSにガイドGAが表示されると、各輝点が、アイポイントEPから前方に向かって収束して視える一対の区画線Rに沿って延在しているように錯視し、車両100が走行する車線Q上に位置する虚像としてガイドGAを認識する。なお、仮想線GLは、実施形態で説明したガイドGと同様に、車両100の状況に応じて設定された目標減速度f3に基づいて、区画線Rに対する傾きが変更される。そのため、車両用表示装置1Aは、運転者200にガイドGAを視認させることで、車両100の状況を把握させることができ、車両100が車速制限対象地点Dに到達する前に車両100の実速度f1を適正速度f2まで減速させることができる。したがって、運転者200に対してより好適な運転支援を行うことができる。
【0065】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両用表示装置1、1Aは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0066】
例えば、車両の目標減速度を設定する方法は特に限定されない。
【0067】
また、車両の目標減速度の大きさに対するガイドの傾き量は特に限定されない。
【0068】
また、ガイドは、片側の車線のみに重畳表示されていてもよい。
【0069】
また、本実施形態に係る車両用表示装置は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1、1A 車両用表示装置
10 表示器
20 制御部
30 センサ
40 前方監視部
100 車両
120 表示面
DL 表示光
f1 車両の実速度
f2 車両の適正速度
f3 車両の目標減速度
G、GA ガイド
S、SA ガイドの消失点
Q 車線
R 区画線
V 画像
Vi 虚像
WS ウインドシールド
X 前後方向
Y 車幅方向
Z 高さ方向
θ ガイドの傾き量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11