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特開2023-182086三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182086
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20231219BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231219BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231219BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231219BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20231219BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20231219BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20231219BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20231219BHJP
   B22F 10/22 20210101ALN20231219BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y30/00
B33Y50/02
B33Y10/00
B29C64/118
B29C64/209
B22F12/53
B28B1/30
B22F10/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095489
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻原 正章
【テーマコード(参考)】
4F213
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AC04
4F213AR02
4F213AR07
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL67
4F213WL74
4F213WL85
4F213WL87
4F213WL96
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018AA03
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA10
4K018AA13
4K018AA14
4K018AA24
4K018AA33
4K018BA02
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA07
4K018BA08
4K018BA13
4K018BA17
(57)【要約】
【課題】三次元造形装置において、プランジャーを移動させるためのスペースの不足により所望のプランジャー操作を行えないことを抑制する。
【解決手段】三次元造形装置は、ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルとステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、流路の開口面積を変更することで吐出量を調整する吐出量調整部と、吐出量調整部とノズル開口との間の流路に接続された分岐流路と、分岐流路内を移動するプランジャーとを有する圧力調整部と、位置変更部、吐出量調整部及び圧力調整部を制御する制御部とを備える。制御部は、一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、プランジャーを移動させることで造形材料を分岐流路内に吸引する操作と吸引した造形材料を流路に送出する操作とを実行し、部分造形物の造形区間の開始端と終了端とでプランジャーの位置が一致するようにプランジャーの移動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、
前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、
前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、
前記位置変更部、前記吐出量調整部および前記圧力調整部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する吸引操作と、前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する送出操作と、を実行し、
前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーの移動を制御する、
三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記造形区間は、前記ノズルの前記ステージに対する相対移動速度が加速される1又は複数の加速区間と、前記相対移動速度が減速される1又は複数の減速区間と、を有し、
前記制御部は、各前記加速区間に対応する前記プランジャーの移動による変位の総和と、各前記減速区間に対応する前記プランジャーの移動による変位の総和とを制御することによって、前記造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置を一致させる、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、
前記相対移動速度が第1速度から第2速度へと加速される第1区間に対応して、前記吸引操作と前記送出操作とのいずれか一方を実行し、
前記相対移動速度が前記第2速度から前記第1速度へと減速される第2区間に対応して、前記第1区間に対応して前記吸引操作が実行される場合に前記送出操作を実行し、前記第1区間に対応して前記送出操作が実行される場合に前記吸引操作を実行し、
前記第1区間に対応する前記プランジャーの移動量と、前記第2区間に対応する前記プランジャーの移動量と、が一致するように、前記プランジャーの移動を制御する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記造形区間のうち、一定の移動速度での前記ステージに対する前記ノズルの相対的な移動を指示される指定区間において、
前記吐出量調整部によって前記流路を開口させた状態で、前記圧力調整部を制御せずに前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第1操作と、
前記吐出量調整部によって前記流路を開口させた状態で、前記圧力調整部を制御して前記送出操作を実行することで、前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第2操作と、
前記吐出量調整部によって前記流路を閉じた状態で、前記圧力調整部を制御して前記送出操作を実行することで、前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第3操作と、の少なくともいずれかを実行する、
三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記吐出量調整部を制御することによって、前記第2操作における前記開口面積を、前記第1操作における前記開口面積よりも小さくする、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1操作の前に、前記第2操作と前記第3操作との少なくともいずれか一方を実行する、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記吐出量を増加させる場合に、前記吐出量調整部を制御することによって、前記開口面積を段階的に大きくする操作を実行する、三次元造形装置。
【請求項8】
ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、
前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、
前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、
前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、を備える、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法であって、
一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する工程と、
前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する工程と、を備え、
前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーを移動させる、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形装置、および、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形装置に関して、特許文献1には、流路に設けられたバタフライバルブ、および、流路に接続されたシリンダーとその内部に配置されたプランジャーとを有する吸引機構を備える装置が開示されている。特許文献1の装置では、プランジャーを流路から遠ざかるように引くことで流路内の材料をシリンダー内へ吸引し、プランジャーを流路に近付くように押すことでシリンダー内の材料を流路へと押し出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-62566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のようにプランジャーを備える装置では、プランジャーの操作によりプランジャーの分岐流路内における位置が変化するため、プランジャーを移動させるためのスペースの不足により、すぐに所望のプランジャー操作を行えない場合があった。例えば、連続してプランジャーを引いた後に更にプランジャーを引く場合、いったん造形を中断し、プランジャーを押して材料を外部に排出する等して、シリンダー内でプランジャーを更に引くためのスペースを確保することを要した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、前記位置変更部、前記吐出量調整部および前記圧力調整部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する操作と、前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する操作と、を実行し、前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーの移動を制御する。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、を備える、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する工程と、前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する工程と、を備え、前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーを移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における三次元造形装置の概略構成を示す説明図。
図2】スクリューの概略構成を示す斜視図。
図3】バレルを示す概略平面図。
図4】三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す説明図。
図5】三次元造形処理のフローチャート。
図6】部分造形物の例を示す説明図。
図7】走査速度、流路の開度、および、プランジャーの位置の変化を説明する図。
図8】第2実施形態における流路の開度の変化を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形装置100の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向に沿った矢印が表されている。X,Y,Z方向は、互いに直交する3つの空間軸であるX軸、Y軸、Z軸に沿った方向であり、それぞれ、X軸、Y軸、Z軸に沿う一方側の方向と、その反対方向を両方含む。X軸およびY軸は、水平面に沿った軸であり、Z軸は、鉛直線に沿った軸である。他の図においても、X,Y,Z方向に沿った矢印が、適宜、表されている。図1におけるX,Y,Z方向と、他の図におけるX,Y,Z方向とは、同じ方向を表している。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0009】
三次元造形装置100は、三次元造形装置100を制御する制御部101と、造形材料を生成して吐出する吐出部200と、三次元造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する位置変更部230とを備える。
【0010】
吐出部200は、制御部101の制御下において、固体状態の材料を溶融させてペースト状にした造形材料をステージ210上に吐出する。吐出部200は、造形材料に転化される前の材料の供給源である材料供給部20と、材料の少なくとも一部を可塑化して造形材料を生成する可塑化部30と、生成された造形材料が流れる流路69と、流路69に連通し造形材料を吐出するノズル61と、流路69に設けられた吐出量調整部70と、流路69に設けられた圧力調整部75とを備える。流路69は、後述するノズル61のノズル開口62に連通している。
【0011】
材料供給部20には、ペレットや粉末等の状態の材料が収容されている。本実施形態では、ペレット状に形成された樹脂が材料として用いられる。本実施形態における材料供給部20は、ホッパーによって構成されている。材料供給部20の下方には、材料供給部20と可塑化部30との間を接続する供給路22が設けられている。材料供給部20は、供給路22を介して、可塑化部30に材料を供給する。
【0012】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、スクリュー40と、バレル50とを備えている。可塑化部30は、材料供給部20から供給された材料の少なくとも一部を可塑化し、流動性を有するペースト状の造形材料を生成する。そして、可塑化部30は、生成した造形材料をノズル61に供給する。「可塑化」とは、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。本実施形態におけるスクリュー40は、フラットスクリューや、スクロールと呼ばれることもある。
【0013】
図2は、スクリュー40の概略構成を示す斜視図である。図3は、バレル50を示す概略平面図である。スクリュー40は、その中心軸RXに沿った方向である軸線方向における長さが軸線方向に直交する方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。スクリュー40は、その回転中心となる中心軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0014】
図1に示すように、スクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。スクリュー40の上面41側は駆動モーター32に連結されており、スクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部101の制御下において駆動する。なお、スクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0015】
図2に示すように、スクリュー下面42には、渦状の溝部45が形成されている。上述した材料供給部20の供給路22は、スクリュー40の側面43から、溝部45に連通する。溝部45は、スクリュー40の側面43に形成された材料導入口44まで連続している。この材料導入口44は、材料供給部20の供給路22を介して供給された材料を受け入れる部分である。図2に示すように、本実施形態では、溝部45は、凸条部46によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部45の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部45は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部47から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0016】
図1に示すように、バレル50は、スクリュー40の下方に配置されている。バレル上面52は、スクリュー下面42に面しており、スクリュー下面42の溝部45と、バレル上面52との間には空間が形成される。バレル50には、スクリュー40の中心軸RX上に、後述するノズル61に連通する連通孔56が設けられている。本実施形態では、連通孔56は、上述した流路69の一部を形成している。バレル50には、スクリュー40の溝部45に対向する位置にヒーター58が内蔵されている。ヒーター58の温度は、制御部101によって制御される。
【0017】
スクリュー40の溝部45内に供給された材料は、溝部45内において溶融されながら、スクリュー40の回転によって溝部45に沿って流動し、造形材料としてスクリュー40の中央部47へと導かれる。中央部47に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、連通孔56を介してノズル61に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が溶融していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が溶融することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0018】
図1に示すように、ノズル61は、ノズル流路65と、ノズル開口62が設けられた先端面63とを備えている。ノズル流路65は、ノズル61内に形成された造形材料の流路であり、上述した流路69の一部を形成している。先端面63は、ノズル61の、造形面211に向かって-Z方向に突出した先端部分を構成する面である。ノズル開口62は、ノズル流路65の大気に連通する側の端部、つまり、先端面63側の端部に設けられた、ノズル流路65の流路断面が縮小された部分である。可塑化部30によって生成された造形材料は、流路69を介して、ノズル開口62から吐出される。ノズル61の周囲には、ステージ210上に吐出された造形材料の温度低下を抑制するヒーターが配置されてもよい。
【0019】
吐出量調整部70は、流路69の開口面積を変更することによって、吐出量を調整する。本実施形態における吐出量調整部70は、バタフライバルブによって構成されており、ノズル流路65に設けられている。吐出量調整部70は、ノズル流路65内で回転することによりノズル流路65の開度を変化させる。吐出量調整部70は、制御部101による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部101は、第1駆動部74を用いてバタフライバルブの回転角度を制御することによって、流路69を流れる造形材料の量を調整する。これにより、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量を調整でき、吐出量を調整できる。吐出量調整部70は、造形材料の流量を調整するとともに、造形材料の流出のオン/オフを制御する。
【0020】
圧力調整部75は、分岐流路76と、プランジャー77と、第2駆動部78とを有している。分岐流路76は、吐出量調整部70とノズル開口62との間の流路69に、つまり、流路69のうち吐出量調整部70とノズル開口62との間の部分に接続されている。本実施形態では、分岐流路76は、ノズル流路65に接続されたシリンダーによって形成され、ノズル流路65との接続部分から-X方向に延びている。プランジャー77は、分岐流路76内を移動する。より詳細には、プランジャー77は、制御部101による制御下において、第2駆動部78によって駆動される。第2駆動部78は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャー77の並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0021】
制御部101は、後述する部分造形物を造形する場合に、圧力調整部75を制御してプランジャー77を分岐流路76内で移動させることによって、吸引操作と送出操作とを実行する。吸引操作とは、流路69内の造形材料を分岐流路76内に吸引する操作のことを指す。送出操作とは、分岐流路76内に吸引した造形材料を流路69に送出する操作のことを指す。本実施形態では、制御部101は、吸引操作において、プランジャー77をノズル流路65から遠ざかる方向へと後退させ、送出操作において、プランジャー77をノズル流路65へと近付く方向に前進させる。
【0022】
吸引操作が行われた場合、ノズル流路65内の造形材料が圧力調整部75へと吸引されるため、ノズル流路65内の圧力は減少する。送出操作が行われた場合、圧力調整部75からノズル流路65へと造形材料が排出されるため、ノズル流路65内の圧力は増加する。このように、圧力調整部75は、流路69内の圧力を調整する。
【0023】
なお、吸引操作を実行して流路69内の圧力を減少させることにより、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制することも可能である。この場合、制御部101は、吐出量調整部70によってノズル流路65の開度をゼロとした後に吸引操作を実行することで、尾引き現象をより効果的に抑制できる。また、送出操作を実行して流路69内の圧力を増加させることにより、ノズル開口62からの造形材料の送出の応答性を高めることも可能である。この場合、制御部101は、吐出量調整部70によってノズル流路65の開度をゼロより大きくする前に送出操作を実行することで、造形材料の送出の応答性をより高めることができる。
【0024】
ステージ210は、ノズル61に対向する位置に配置されている。三次元造形装置100は、ノズル開口62からステージ210の造形面211に向けて造形材料を吐出させて層を積層することによって三次元造形物を造形する。造形面211および造形面211よりも上方の領域のうち、三次元造形物が造形される領域のことを、造形領域とも呼ぶ。
【0025】
位置変更部230は、ノズル61とステージ210との相対的な位置を変更する。本実施形態では、位置変更部230は、ノズル61に対してステージ210を移動させる。なお、ステージ210に対するノズル61の相対的な位置の変化を、単に、ノズル61の移動や走査と呼ぶこともある。本実施形態では、例えば、ステージ210を+X方向に移動させたことを、ノズル61を-X方向に移動させたと言い換えることもできる。また、ステージ210に対するノズル61の相対的な移動速度のことを、ノズル61の相対移動速度とも呼ぶ。また、ノズル61の相対移動速度のことを、単に、ノズル61の移動速度や走査速度とも呼ぶ。本実施形態における位置変更部230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。各モーターは、制御部101の制御下にて駆動する。なお、位置変更部230は、ステージ210を移動させる構成ではなく、ステージ210を移動させずにノズル61を移動させる構成であってもよい。また、位置変更部230は、ステージ210とノズル61との両方を移動させる構成であってもよい。
【0026】
制御部101は、1以上のプロセッサーと、主記憶装置と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部101は、主記憶装置上に読み込んだプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、三次元造形物を造形するための三次元造形処理を実行する機能等の種々の機能を発揮する。なお、制御部101は、コンピューターではなく、複数の回路の組み合わせによって構成されてもよい。
【0027】
制御部101は、三次元造形処理において、造形データに従って吐出部200と位置変更部230とを制御して、造形面211上の造形領域に造形物を造形する。造形データには、ノズル61のステージ210に対する相対的な移動の移動経路を表す造形パスデータと、造形パスデータに関連付けられた吐出量を表す吐出量データとが含まれる。吐出量とは、ノズル開口62から吐出される造形材料の量のことを指す。
【0028】
図4は、三次元造形装置100において三次元造形物が造形されていく様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、可塑化部30において、回転しているスクリュー40の溝部45に供給された固体状態の材料が溶融されて造形材料MMが生成される。制御部101は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。こうしたノズル61による走査によって、ノズル61の走査経路に沿って線状に延びる造形部位が造形される。このように、三次元造形物のうち、一の連続する線状の造形部位のことを部分造形物Opとも呼ぶ。
【0029】
制御部101は、上記のノズル61による走査を繰り返して層MLを形成する。制御部101は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、さらに層MLを積み重ねることによって三次元造形物を造形していく。制御部101は、造形材料の層を積層する際、ノズル61と吐出目標との間の距離を保持したまま、ノズル61から造形材料を吐出させる。吐出目標は、造形面211上に造形材料を吐出する場合は造形面211であり、既に吐出された造形材料上に造形材料を吐出する場合は、既に吐出された造形材料の上面である。ノズル61と吐出目標との間の距離のことを、ギャップGpと呼ぶこともある。
【0030】
上述した部分造形物Opの幅のことを線幅とも呼び、部分造形物Opの高さのことを積層ピッチとも呼ぶ。線幅および積層ピッチは、上述したギャップGpの大きさと、単位移動量あたりにノズル61から吐出される造形材料の量とによって定まる。例えば、ギャップGpが小さい場合、ギャップGpが大きい場合と比較して、ノズル61から吐出された造形材料がノズル61によってより吐出目標に押しつけられるため、積層ピッチが小さく、かつ、線幅が大きくなる。単位移動量あたりにノズル61から吐出される造形材料の量は、ノズル61の移動速度と、単位時間あたりにノズル61から吐出される造形材料の量とによって定まる。単位時間あたりにノズル61から吐出される造形材料の量は、例えば、ノズル開口62の大きさや、流路69内を流れる造形材料の流量、流路69内の圧力等によって定まる。
【0031】
図5は、本実施形態における、三次元造形物の製造方法を実現する三次元造形処理のフローチャートである。まず、ステップS110にて、制御部101は、外部のコンピューターや記録媒体などから三次元造形物の形状を表す形状データを取得する。制御部101は、例えば、ネットワークや記録媒体を通じて、外部から三次元CADデータなどの形状データを取得する。
【0032】
次に、ステップS120にて、制御部101は、ステップS110で取得した三次元データに基づいて、その三次元データに表された三次元造形物を造形するための造形データを生成する。より詳細には、制御部101は、ステップS120において、上述した造形パスデータと吐出量データとを生成する。なお、他の実施形態では、制御部101は、ステップS110およびステップS120を実行して造形データを生成するのに代えて、例えば、造形データを、ネットワークや記録媒体を通じて外部から取得してもよい。
【0033】
ステップS130にて、制御部101は、移動速度データおよび吐出制御パラメーターを決定する。移動速度データは、造形パスデータに含まれる各移動経路におけるノズル61の移動速度を表す。吐出制御パラメーターとは、各移動経路における、吐出量調整部70および圧力調整部75を制御するためのパラメーターを表す。吐出制御パラメーターの詳細については後述する。ステップS130において決定される移動速度データや吐出制御パラメーターは、造形データに含まれてもよいし、造形データとは別のデータとして生成されてもよい。
【0034】
次に、ステップS140にて、制御部101は、ステップS120で生成された造形データ、並びに、ステップS130で生成された移動速度データおよび吐出制御パラメーターに基づいて、吐出部200および位置変更部230を制御して、三次元造形物の1層を造形する。より詳細には、制御部101は、ステップS140において、三次元造形物の1層を構成する1又は複数の部分造形物を、造形面211上の造形領域に造形する。ステップS150にて、制御部101は、三次元造形物の全層の造形が完了したか否かを判定する。制御部101は、三次元造形物の全層分の造形が完了していないと判断した場合、ステップS140に処理を戻し、次の層の造形を実行する。制御部101は、全層の造形が完了したと判定した場合、三次元造形処理を終了させる。
【0035】
図6は、本実施形態における部分造形物の例を示す説明図である。図6には、三次元造形物のある一層を形成する部分造形物の例として、第1部分造形物Op1と、第2部分造形物Op2とが模式的に示されている。また、図6には、部分造形物を造形するための造形区間として、第1部分造形物Op1を造形するための造形区間である第1造形区間Ms1と、第2部分造形物Op2を造形するための造形区間である第2造形区間Ms2とが示されている。第1造形区間Ms1は、造形パスデータに含まれる移動経路のうち、第1部分造形物Op1を造形するための移動経路によって表される。第2造形区間Ms2は、造形パスデータに含まれる移動経路のうち、第2部分造形物Op2を造形するための移動経路によって表される。なお、図6では、ノズル61の移動経路のうち、ノズル61が造形材料を吐出しながら移動する移動経路が実線によって示され、ノズル61が造形材料を吐出せずに移動する移動経路が破線によって示されている。
【0036】
図7は、部分造形物を造形する際のノズル61の走査速度、流路69の開度、および、プランジャー77の位置の変化を説明する図である。図7は、図6に示した第1部分造形物Op1と第2部分造形物Op2とを造形する際の、走査速度、流路69の開度、および、プランジャー77の位置の時間に対する変化を示している。より詳細には、図7の上段には、横軸を時間とし、縦軸を走査速度とする模式的なグラフが示されている。なお、図7の上段では、各造形区間同士の間の区間、つまり、ノズル61が造形材料を吐出せずに移動する区間における走査速度の遷移は、省略されている。図7の中段には、同様に横軸を時間とし、縦軸を流路69の開度とするグラフが示されている。図7の下段には、同様に横軸を時間とし、縦軸をプランジャー位置とするグラフが示されている。図7の下段におけるプランジャー位置は、図1に示したプランジャー77の+X方向側の端面79の、X方向における位置座標を表している。本実施形態において、プランジャー位置がゼロである場合、端面79は、端面79の移動可能範囲の中間地点に位置する。つまり、端面79が中間地点よりも流路69側に位置している場合、図7に示したプランジャー位置は、正の値をとる。端面79が中間地点よりも流路69と反対側に位置している場合、図7に示したプランジャー位置は、負の値をとる。従って、図7に示したプランジャー位置の値が大きいほど、プランジャー77は、流路69の近くに位置する。
【0037】
ノズル開口62は、図7に示した時刻t1~t6のそれぞれにおいて、図6に示した地点P1~P6のそれぞれに位置する。地点P1および地点P4は、それぞれ、第1造形区間Ms1の開始端St1および終了端Ed1に相当する。また、地点P5および地点P6は、それぞれ、第2造形区間Ms2の開始端St2および終了端Ed2に相当する。
【0038】
本実施形態では、図6および図7に示した第1造形区間Ms1は、3つの指定区間を有している。指定区間とは、造形区間のうち、一定の移動速度でのステージ210に対するノズル61の相対的な移動を指示される区間のことを指す。より詳細には、第1造形区間Ms1は、指定区間として、第1指定区間Sc1と、第2指定区間Sc2と、第3指定区間Sc3とを有している。第1指定区間Sc1~第3指定区間Sc3は、それぞれ、時刻t1から時刻t2までの区間、時刻t2から時刻t3までの区間、時刻t3から時刻ts4までの区間に相当する。第1指定区間Sc1および第3指定区間Sc3では、第1走査速度v1でのノズル61の走査が指示される。第2指定区間Sc2では、第2走査速度v2でのノズル61の走査が指示される。第1走査速度v1および第2走査速度v2は、ノズル61のステージ210に対する相対移動の速度の大きさを表す。第2走査速度v2は、第1走査速度v1よりも遅い。
【0039】
本実施形態では、第1造形区間Ms1は、2つの加速区間と、2つの減速区間とを有している。加速区間とは、造形区間のうち、ノズル61の走査速度が加速される区間のことを指す。減速区間とは、造形区間のうち、ノズル61の走査速度が減速される区間のことを指す。より詳細には、第1造形区間Ms1は、加速区間として、第1加速区間As1と、第2加速区間As2とを有している。第1加速区間As1では、ノズル61の走査速度がゼロから第1走査速度v1へと加速される。本実施形態では、第1加速区間As1は、第1指定区間Sc1に含まれている。第1加速区間As1の開始端は、第1指定区間Sc1の開始端、および、第1造形区間Ms1の開始端St1に相当する。第2加速区間As2では、走査速度が第2走査速度v2から第1走査速度v1へと加速される。第2加速区間As2は、第3指定区間Sc3に含まれている。
【0040】
第1造形区間Ms1は、減速区間として、第1減速区間Ds1と、第2減速区間Ds2とを有している。第1減速区間Ds1では、ノズル61の走査速度が第1走査速度v1から第2走査速度v2へと減速される。本実施形態では、第1減速区間Ds1は、第2指定区間Sc2に含まれている。第2減速区間Ds2では、ノズル61の走査速度が第1走査速度v1からゼロへと減速される。本実施形態では、第2減速区間Ds2は、第3指定区間Sc3に含まれている。第2減速区間Ds2の終了端は、第3指定区間Sc3の終了端、および、第1造形区間Ms1の終了端Ed1に相当する。
【0041】
同様に、第2造形区間Ms2は、指定区間として、第4指定区間Sc4を有している。第4指定区間Sc4は、時刻t5から時刻t6までの区間に相当する。第4指定区間Sc4では、第2走査速度v2でのノズル61の走査が指示される。また、第2造形区間Ms2は、加速区間として第3加速区間As3を有し、減速区間として第3減速区間Ds3を有している。第3加速区間As3および第3減速区間Ds3は、第4指定区間Sc4に含まれている。第3加速区間As3では、ノズル61の走査速度が、ゼロから第2走査速度v2へと加速される。本実施形態では、第3加速区間As3の開始端は、第4指定区間Sc4の開始端および第2造形区間Ms2の開始端に相当する。第3減速区間Ds3では、走査速度が、第2走査速度v2からゼロへと減速される。第3減速区間Ds3の終了端は、第3指定区間Sc3の終了端および第2造形区間Ms2の終了端Ed2に相当する。
【0042】
本実施形態では、制御部101は、指定区間において、第1操作と、第2操作と、第3操作とのうち、少なくともいずれかを実行する。第1操作とは、圧力調整部75を制御せず、かつ、吐出量調整部70によって流路69を開口させた状態で造形材料をノズル開口62から吐出する操作のことを指す。第2操作とは、吐出量調整部70によって流路69を開口させた状態で、圧力調整部75を制御して送出操作を実行することで、造形材料をノズル開口62から吐出する操作のことを指す。第3操作とは、吐出量調整部70によって流路69を閉じた状態で、圧力調整部75を制御して送出操作を実行することで、造形材料をノズル開口62から吐出する操作のことを指す。
【0043】
図7に示すように、本実施形態では、制御部101は、加速区間に対応して上述した第2操作を実行し、減速区間に対応して第4操作を実行する。第4操作とは、吐出量調整部70によって流路69を開口させた状態で吸引操作を実行する操作のことを指す。また制御部101は、各指定区間のうち、第2操作および第4操作を実行する区間を除く区間において、第1操作を実行する。従って、本実施形態では、第1指定区間Sc1では、第1加速区間As1において第2操作が実行された後に、第1操作が実行される。第2指定区間Sc2では、第1減速区間Ds1において第4操作が実行された後に、第1操作が実行される。第3指定区間Sc3では、第2加速区間As2において第2操作が実行された後に、第1操作が実行され、その後、第2減速区間Ds2において第4操作が実行される。第4指定区間Sc4では、第3加速区間As3において第2操作が実行された後に、第1操作が実行され、その後、第3減速区間Ds3において第4操作が実行される。このように、本実施形態では、第2操作は、第1操作の前に実行される。
【0044】
本実施形態では、制御部101は、図7に示すように、第1操作において、流路69を開いた状態でその開度を一定とし、かつ、プランジャー77の位置を変更することなく、ノズル開口62から造形材料を吐出させる。制御部101は、第2操作において、つまり、加速区間において、吐出量調整部70を制御して流路69の開度を徐々に大きくするとともに、圧力調整部75を制御してプランジャー77を徐々に流路69に近付くように前進させる。本実施形態では、制御部101は、吐出量調整部70を制御することによって、第2操作における開口面積を、第1操作における開口面積よりも小さくする。第1操作や第2操作における開口面積とは、その操作が開始されてから終了されるまでの間における、開口面積の時間平均値のことを指す。また、制御部101は、第4操作において、つまり、減速区間において、吐出量調整部70を制御して流路69の開度を徐々に小さくするとともに、圧力調整部75を制御してプランジャー77を徐々に流路69から遠ざかるように後退させる。
【0045】
制御部101は、ステップS130において、造形区間の開始端と終了端とで、プランジャー77の分岐流路76内における位置が一致するように、プランジャー77の移動を制御する。本実施形態では、制御部101は、このような開始端と終了端とにおけるプランジャー77の位置の制御を、ある造形区間における各加速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和と、各減速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和とを制御することによって実現する。より詳細には、制御部101は、ある造形区間における各加速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和と、各減速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和とが相殺するようにプランジャー77の移動を制御する。プランジャー77の変位は、ベクトル量として表され、プランジャー77が流路69に近付くように移動した場合、正の値をとり、プランジャー77が流路69から遠ざかるように移動した場合、負の値をとる。本実施形態では、制御部101は、各加速区間に対応して、送出操作と吸引操作とのうち送出操作のみを実行し、各減速区間に対応して、送出操作と吸引操作とのうち吸引操作のみを実行する。従って、本実施形態では、各加速区間に対応するプランジャー77の変位の総和と各減速区間に対応するプランジャー77の変位の総和とを相殺させることは、各加速区間に対応するプランジャー77の移動量の総和と各減速区間に対応するプランジャー77の移動量の総和とを一致させることと同義である。
【0046】
なお、制御部101は、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致するようにプランジャー77の移動を制御する場合に、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置を完全に一致させることを要しない。より詳細には、ある造形区間の開始端と終了端とにおけるプランジャー77の位置の差が、プランジャー77の分岐流路76内における可動距離の20%以下である場合、その造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致していると解釈できる。なお、造形区間の開始端と終了端とにおけるプランジャー77の位置の差は、10%以下であるとより好ましく、5%以下であると更に好ましい。
【0047】
本実施形態では、制御部101は、ステップS130において、第1区間に対応するプランジャー77の移動量と、第2区間におけるプランジャー77の移動量とが一致するように、プランジャー77の移動を制御する。第1区間とは、走査速度が第1速度から第1速度よりも速い第2速度へと加速される区間のことを指す。制御部101は、第1区間に対応して、吸引操作と送出操作とのいずれか一方を実行する。第2区間とは、走査速度が第2速度から第1速度へと減速される区間のことを指す。制御部101は、第2区間に対応して、吸引操作と送出操作とのうち第1区間において実行される操作とは異なるいずれか他方の操作を実行する。つまり、制御部101は、第1区間に対応して吸引操作が実行される場合、第2区間に対応して送出操作を実行し、第1区間に対応して送出操作が実行される場合、第2区間に対応して吸引操作を実行する。
【0048】
例えば、図7の例において、第1加速区間As1を第1区間とした場合、第2減速区間Ds2が第2区間に相当する。この場合、走査速度ゼロが第1速度に相当し、第1走査速度v1が第2速度に相当する。制御部101は、第1区間である第1加速区間As1で実行される送出操作におけるプランジャー77の+X方向への移動量と、第2区間である第2減速区間Ds2で実行される吸引操作におけるプランジャー77の-X方向への移動量とが一致するように、プランジャー77の移動を制御する。これにより、第1加速区間As1の開始端と、第2減速区間Ds2の終了端とでプランジャー77の位置が一致する。また、例えば、第2加速区間As2を第1区間とした場合、第1減速区間Ds1が第2区間に相当する。この場合、第2走査速度v2が第1速度に相当し、第1走査速度v1が第2速度に相当する。そして、第1区間である第2加速区間As2で実行される送出操作におけるプランジャー77の+X方向への移動量と、第2区間である第1減速区間Ds1におけるプランジャー77の-X方向への移動量とが一致するようにプランジャー77の移動が制御される。これにより、第1減速区間Ds1の開始端と、第2加速区間As2の終了端とでプランジャー77の位置が一致する。このように、制御部101は、第1区間と第2区間とで、走査速度を互いに逆に変化させ、第1区間と第2区間とのそれぞれに対応してプランジャー77を互いに逆に同じ移動量だけ移動させるとも言える。なお、上記と同様に、第3加速区間As3を第1区間とした場合、第3減速区間Ds3が第2区間に相当する。
【0049】
なお、本実施形態では、「ある区間に対応するプランジャー77の移動」は、その区間内におけるプランジャー77の移動に相当する。他の実施形態では、「ある区間に対応するプランジャー77の移動」は、その区間外におけるプランジャー77の移動を含んでいてもよい。例えば、第1区間に対応するプランジャー77の移動は、第1区間より前に開始されて第1区間の途中や第1区間よりも後に完了される移動であってもよいし、第1区間の途中で開始されて第1区間よりも後に完了される移動であってもよい。
【0050】
本実施形態では、制御部101は、各造形区間において、略一定の線幅が実現されるように、上述した吐出制御パラメーターを決定して、吐出量調整部70および圧力調整部75を制御する。制御部101は、吐出制御パラメーターとして、吐出量調整部70による流路69の開度や開度の調整速度や調整タイミング、および、プランジャー77の移動量や移動タイミング、移動速度を決定する。例えば、制御部101は、吐出量調整部70によって流路69の開度をより大きくすることで、吐出量をより大きくでき、線幅をより大きくできる。また、制御部101は、加速区間では、流路69の開度を大きくし始めるタイミングを早めることや、その調整速度を大きくすること、つまり、単位時間あたりの開度の変化量を大きくすることによって、吐出量をより大きくでき、線幅をより大きくできる。制御部101は、減速区間では、流路69の開度を小さくし始めるタイミングを遅くすることや、その調整速度小さくすること、つまり、単位時間あたりの開度の変化量を小さくすることによって、吐出量をより大きくでき、線幅をより大きくできる。また、制御部101は、送出操作や吸引操作において、プランジャー77の移動量や、プランジャー77の制御タイミング、プランジャー77の移動速度を制御することによって、吐出量を調整でき、線幅を調整できる。加速区間や減速区間における、吐出量調整部70による流路69の開度の調整量や、調整速度、調整タイミング、および、プランジャー77の移動量や移動タイミング、移動速度は、例えば、造形材料の種類や、線幅、ヒーター58の設定温度、スクリュー40の回転数等に応じて決定されてもよい。
【0051】
本実施形態では、制御部101は、上述したステップS130において吐出制御パラメーターを決定する際に、第2区間を設定した後に、その第2区間に対応する第1区間を設定する。例えば、制御部101は、第1造形区間Ms1における吐出制御パラメーターを決定する際、まず、図6および図7に示した第2減速区間Ds2を設定する。制御部101は、第2減速区間Ds2を設定する際、第2減速区間Ds2において一定の線幅が実現され、かつ、第1造形区間Ms1の終了端Ed1における尾引きが抑制されるように、第2減速区間Ds2における、吐出量調整部70による開度の調整タイミング等、および、第2減速区間Ds2において実行される吸引操作におけるプランジャー77の移動量を決定する。次に、制御部101は、第1加速区間As1を設定する。制御部101は、第1加速区間As1を設定する際、第2減速区間Ds2におけるプランジャー77の移動量と一致するように、第1加速区間As1において実行される送出操作におけるプランジャー77の移動量を決定する。また、制御部101は、決定されたプランジャー77の移動量に応じて、第1加速区間As1において一定の線幅が実現されるように、吐出量調整部70による開度の調整タイミングや調整速度等を決定する。例えば、図7の中段の例では、加速区間において、仮に送出操作が実行されなかった場合の理想的な開度の調整速度よりも、開度の調整速度が遅く調整された様子が示されている。なお、図7の中段の破線は、送出操作が実行されない場合の理想的な開度の変化を示している。上記と同様に、制御部101は、第1減速区間Ds1を設定した後に、第2加速区間As2を設定し、第3減速区間Ds3を設定した後に、第3加速区間As3を設定する。他の実施形態では、制御部101は、吐出制御パラメーターを決定する際に、第1区間を設定した後に、その第1区間に対応する第2区間を設定してもよい。
【0052】
以上のように構成された本実施形態における三次元造形装置100によれば、制御部101は、部分造形物を造形する場合にプランジャー77を移動させることで吸引操作と送出操作とを実行し、部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致するように、プランジャー77の移動を制御する。これに対して、ある造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致するようにプランジャー77を制御しない場合、その造形区間において所望のプランジャー操作を実行できても、次以降の造形区間において直ちに所望のプランジャー操作を実行できない可能性がある。例えば、ある造形区間の終了端において、プランジャー77が、その造形区間の開始端におけるプランジャー77の位置よりも流路69から遠くに位置する程、次の造形区間の開始端等において、プランジャー77を移動させるスペースの不足により、直ちに吸引操作を実行できない可能性が高まる。吸引操作を実行するためのスペースが不足している場合、吸引操作を実行するためには、例えば、造形を一時的に中止した上で、ノズル61を造形領域とは異なる領域に位置させた上で送出操作を実行し、プランジャー77を移動させるためのスペースを確保することを要する。本実施形態では、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致するようにプランジャー77の移動を制御するので、造形を中断することなく、各造形区間においてプランジャー77を移動させるためのスペースの不足を抑制でき、所望のプランジャー操作を実行できる可能性が高まる。
【0053】
また、本実施形態では、制御部101は、各加速区間に対応するプランジャー77の移動による変位の総和と、各減速区間に対応するプランジャー77の移動による変位の総和とを制御することによって、部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置を一致させる。そのため、簡易な方法によって、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置を一致させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、制御部101は、走査速度が第1速度から第2速度へと加速される第1区間に対応して吸引操作と送出操作とのいずれか一方を実行し、走査速度が第2速度から第1速度へと減速される第2区間に対応して吸引操作と送出操作とのいずれか他方を実行し、第1区間に対応するプランジャー77の移動量と、第2区間に対応するプランジャー77の移動量とが一致するように、プランジャー77の移動を制御する。これにより、走査速度の変化の絶対量が同じ区間同士に対応するプランジャー77の移動量がそれぞれ一致するようにプランジャー77の移動を制御するので、より簡易に、各加速区間に対応するプランジャー77の移動による変位の総和と、各減速区間に対応するプランジャー77の移動による変位の総和とが相殺するように、プランジャー77の移動を制御できる。そのため、より簡易に、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置を一致させることができる。
【0055】
また、制御部101は、吐出量調整部70を制御することによって、第2操作における流路69の開口面積を、第1操作における開口面積よりも小さくする。これにより、例えば、第1操作と第2操作とで開口面積を同じにする場合や、第2操作における開口面積を第1操作における開口面積よりも大きくする場合と比較して、第2操作において実行される送出操作による流路69の圧力の上昇に起因して吐出量が過剰となることを抑制できる。
【0056】
また、本実施形態では、制御部101は、第1操作の前に第2操作を実行する。そのため、例えば、ノズル61が一定の速度で移動している間に第1操作を実行し、その第1操作に先立ってノズル61を減速または加速させる際に第2操作を実行することで、ノズル61を減速または加速させる際の吐出量を精度良く制御できる。なお、他の実施形態では、制御部101は、第1操作の前に第3操作を実行してもよいし、第1操作の前に第2操作と第3操作とを実行してもよい。この場合にも、上記と同様に、例えば、ノズル61を減速または加速させる際の吐出量を精度良く制御できる。
【0057】
B.第2実施形態:
図8は、第2実施形態における流路69の開度の変化を説明する図である。図8には、図7の中段と同様に、図6に示した部分造形物を造形する際の流路69の開度の変化が示されている。本実施形態では、制御部101は、第1実施形態とは異なり、吐出量を増加させる場合に、吐出量調整部70を制御することによって、流路69の開口面積を段階的に大きくする操作を実行する。三次元造形装置100の構成のうち、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様である。
【0058】
本実施形態では、制御部101は、加速区間に対応して吐出量を増加させる場合に、吐出量調整部70を制御することによって、流路69の開口面積を3段階で大きくする。例えば、制御部101は、図8に示すように、第1加速区間As1では、流路69の開度を、まずゼロから開度ap1へと大きくし、次いで開度ap1から開度ap2へと大きくし、更に開度ap2から開度ap3へと大きくする。
【0059】
以上で説明した第2実施形態によれば、制御部101は、吐出量を増加させる場合に、吐出量調整部70を制御することによって、流路69の開口面積を段階的に大きくする操作を実行する。これに対して、例えば、流路69の開口面積を目標の開口面積まで一度に大きくした場合、流路69における吐出量調整部70よりも上流の部分と下流の部分とにおける圧力差により、上流の部分から下流の部分へと造形材料が一気に流れ出す場合がある。特に、流路69の開度がゼロである状態で造形材料が生成された場合、流路69の吐出量調整部70よりも上流の部分における圧力が高まるため、この状態で流路69の開度を一度に大きくした場合、吐出量調整部70よりも上流の部分から下流の部分へと造形材料が一気に流れ出しやすい。本実施形態では、吐出量を増加させる場合に、流路69の開口面積を段階的に大きくする操作を実行することで、このように、流路69における吐出量調整部70よりも上流の部分から下流の部分へと造形材料が一気に流れ出ることを抑制できる。そのため、吐出量をより精度良く制御できる。また、例えば、加速区間等において、吐出量を増加させながら吸引操作や送出操作を実行する場合、段階的に大きくなる流路69の開口面積に応じてプランジャー77の位置を段階的に変化させることで、吐出量をより緻密に制御できる可能性が高まる。
【0060】
他の実施形態では、制御部101は、吐出量を増加させる場合に、例えば、流路69の開口面積を2段階や、4段階以上で大きくしてもよい。また、吐出量を増加させる全ての場合において開口面積を段階的に大きくしなくてもよい。また、制御部101は、吐出量を増加させる場合において、開口面積を段階的に大きくするか否かや、開口面積を段階的に大きくする場合の段階数を、例えば、現在の開度または開口面積や、現在の開度または開口面積と目標の開度または開口面積との差、開口面積を大きくする制御を実行するタイミング等に基づいて決定してもよい。
【0061】
C.他の実施形態:
(C-1)上記実施形態において、吐出量調整部70は、ピストンが流路69内に突出して流路69の開口面積を変化させるプランジャーを用いた機構や、流路69に交差する方向に移動して流路69の開口面積を変化させるシャッターを用いた機構によって構成されてもよい。吐出量調整部70は、上記実施形態のバタフライバルブや、上述のシャッター機構、プランジャー機構のうちの2つ以上を組み合わせて構成されてもよい。
【0062】
(C-2)上記実施形態において、制御部101は、第1区間に対応するプランジャー77の移動量と、第2区間に対応するプランジャー77の移動量とが一致するように、プランジャー77の移動を制御している。これに対して、制御部101は、このようにプランジャー77の移動を制御しなくてもよい。例えば、制御部101は、第1区間に対応するプランジャー77の移動量と第2区間に対応するプランジャー77の移動量とを一致させずに、単に、各加速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和と、各減速区間に対応するプランジャー77の移動によるプランジャー77の変位の総和とが相殺するようにプランジャー77の移動を制御してもよい。
【0063】
(C-3)上記実施形態では、制御部101は、各加速区間におけるプランジャー77の移動による変位の総和と、各減速区間におけるプランジャー77の移動による変位の総和とを制御することによって、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置を一致させているが、このようにプランジャー77の移動を制御しなくてもよい。例えば、制御部101は、加速区間や減速区間において吸引操作や送出操作を実行した後に、ノズル61の加速や減速を実行しない区間において、造形精度に影響を及ぼさない程度に少しずつプランジャー77の位置を変化させるように吸引操作や送出操作を実行することによって、造形区間の開始端と終了端とでプランジャー77の位置が一致するようにプランジャー77の移動を制御してもよい。この場合、例えば、制御部101は、プランジャー77を少しずつ移動させる区間において一定の線幅が実現されるように、吐出量調整部70によって流路69の開度を調整してもよい。
【0064】
(C-4)上記実施形態では、制御部101は、指定区間において、第1操作と第2操作と第3操作とのうち少なくともいずれかを実行している。これに対して、制御部101は、ある指定区間において、例えば、第4操作を実行することによって、吸引操作を実行しながらノズル開口62から造形材料を吐出させてもよい。
【0065】
(C-5)上記実施形態では、制御部101は、第2操作における開口面積を第1操作における開口面積よりも小さくしている。これに対して、制御部101は、このように開口面積を制御しなくてもよく、例えば、第1操作と第2操作とにおいて開口面積を同じとし、かつ、第2操作におけるスクリュー40の回転数を、第1操作におけるスクリュー40の回転数よりも小さくしてもよい。
【0066】
(C-6)上記実施形態では、スクリュー40はフラットスクリューとして構成されている。これに対して、スクリュー40は、フラットスクリューとして構成されていなくてもよく、インラインスクリューとして構成されていてもよい。
【0067】
(C-7)上記実施形態では、材料供給部20に供給される原材料として、ペレット状のABS樹脂が用いられる。これに対して、三次元造形装置100は、例えば、熱可塑性を有する材料や、金属材料、セラミック材料等の種々の材料を主材料として三次元造形物を造形することができる。「主材料」とは、三次元造形物の形状を形作っている中心となる材料を意味し、三次元造形物において50重量%以上の含有率を占める材料を意味する。上述した造形材料には、それらの主材料を単体で溶融したものや、主材料とともに含有される一部の成分が溶融してペースト状にされたものが含まれる。
【0068】
主材料として熱可塑性を有する材料を用いる場合には、可塑化部30において、当該材料が可塑化することによって造形材料が生成される。
【0069】
熱可塑性を有する材料としては、例えば、下記の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。
<熱可塑性樹脂材料の例>
ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリアミド樹脂(PA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、ポリ乳酸樹脂(PLA)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートなどの汎用エンジニアリングプラスチック、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどのエンジニアリングプラスチック。
【0070】
熱可塑性を有する材料には、顔料や、金属、セラミック、その他に、ワックス、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤などの添加剤等が混入されていてもよい。熱可塑性を有する材料は、可塑化部30において、スクリュー40の回転とヒーター58の加熱によって可塑化されて溶融した状態に転化される。熱可塑性を有する材料の溶融によって生成された造形材料は、ノズル61から吐出された後、温度の低下によって硬化する。
【0071】
熱可塑性を有する材料は、そのガラス転移点以上に加熱されて完全に溶融した状態でノズル61から射出されることが望ましい。例えば、ABS樹脂は、ガラス転移点が約120℃であり、ノズル61からの射出時には約200℃であることが望ましい。
【0072】
三次元造形装置100では、上述した熱可塑性を有する材料の代わりに、例えば、以下の金属材料が主材料として用いられてもよい。この場合には、下記の金属材料を粉末状にした粉末材料に、造形材料の生成の際に溶融する成分が混合されて、原材料として可塑化部30に投入されることが望ましい。
<金属材料の例>
マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)やクロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)の単一の金属、もしくはこれらの金属を1つ以上含む合金。
<前記合金の例>
マルエージング鋼、ステンレス、コバルトクロムモリブデン、チタニウム合金、ニッケル合金、アルミニウム合金、コバルト合金、コバルトクロム合金。
【0073】
三次元造形装置100においては、上記の金属材料の代わりに、セラミック材料を主材料として用いることが可能である。セラミック材料としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどの酸化物セラミックスや、窒化アルミニウムなどの非酸化物セラミックスなどが使用可能である。主材料として、上述したような金属材料やセラミック材料を用いる場合には、ステージ210に配置された造形材料はレーザーの照射や温風などによる焼結によって硬化されてもよい。
【0074】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料は、単一の金属の粉末や合金の粉末、セラミック材料の粉末を、複数種類、混合した混合材料であってもよい。また、金属材料やセラミック材料の粉末材料は、例えば、上で例示したような熱可塑性樹脂、あるいは、それ以外の熱可塑性樹脂によってコーティングされていてもよい。この場合には、可塑化部30において、その熱可塑性樹脂が溶融して流動性が発現されるものとしてもよい。
【0075】
材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のような溶剤を添加することもできる。溶剤は、下記の中から選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<溶剤の例>
水;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸iso-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸iso-ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、エチル-n-ブチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;テトラアルキルアンモニウムアセテート類;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;ピリジン、γ-ピコリン、2,6-ルチジン等のピリジン系溶剤;テトラアルキルアンモニウムアセテート(例えば、テトラブチルアンモニウムアセテート等);ブチルカルビトールアセテート等のイオン液体等。
【0076】
その他に、材料供給部20に原材料として投入される金属材料やセラミック材料の粉末材料には、例えば、以下のようなバインダーを添加することもできる。
<バインダーの例>
アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、セルロース系樹脂或いはその他の合成樹脂又はPLA(ポリ乳酸)、PA(ポリアミド)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)或いはその他の熱可塑性樹脂。
【0077】
D.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0078】
(1)本開示の第1の形態によれば、三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、前記位置変更部、前記吐出量調整部および前記圧力調整部を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する吸引操作と、前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する送出操作と、を実行し、前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーの移動を制御する。
このような形態によれば、造形区間の開始端と終了端とでプランジャーの位置が一致するようにプランジャーの移動を制御するので、造形を中断することなく、各造形区間においてプランジャーを移動させるためのスペースの不足を抑制でき、所望のプランジャー操作を実行できる可能性が高まる。
【0079】
(2)上記形態では、前記造形区間は、前記ノズルの前記ステージに対する相対移動速度が加速される1又は複数の加速区間と、前記相対移動速度が減速される1又は複数の減速区間と、を有し、前記制御部は、各前記加速区間に対応する前記プランジャーの移動による変位の総和と、各前記減速区間に対応する前記プランジャーの移動による変位の総和とを制御することによって、前記造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置を一致させてもよい。このような形態によれば、簡易な方法によって、造形区間の開始端と終了端とでプランジャーの位置を一致させることができる。
【0080】
(3)上記形態では、前記制御部は、前記相対移動速度が第1速度から第2速度へと加速される第1区間に対応して、前記吸引操作と前記送出操作とのいずれか一方を実行し、前記相対移動速度が前記第2速度から前記第1速度へと減速される第2区間に対応して、前記第1区間に対応して前記吸引操作が実行される場合に前記送出操作を実行し、前記第1区間に対応して前記送出操作が実行される場合に前記吸引操作を実行し、前記第1区間に対応する前記プランジャーの移動量と、前記第2区間に対応する前記プランジャーの移動量と、が一致するように、前記プランジャーの移動を制御してもよい。このような形態によれば、ノズルの移動速度の変化の絶対量が同じ区間同士に対応するプランジャーの移動量がそれぞれ一致するようにプランジャーの移動を制御するので、より簡易に、造形区間の開始端と終了端とでプランジャーの位置を一致させることができる。
【0081】
(4)上記形態では、前記制御部は、前記造形区間のうち、一定の移動速度での前記ステージに対する前記ノズルの相対的な移動を指示される指定区間において、前記吐出量調整部によって前記流路を開口させた状態で、前記圧力調整部を制御せずに前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第1操作と、前記吐出量調整部によって前記流路を開口させた状態で、前記圧力調整部を制御して前記送出操作を実行することで、前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第2操作と、前記吐出量調整部によって前記流路を閉じた状態で、前記圧力調整部を制御して前記送出操作を実行することで、前記造形材料を前記ノズル開口から吐出する第3操作と、の少なくともいずれかを実行してもよい。
【0082】
(5)上記形態では、前記制御部は、前記吐出量調整部を制御することによって、前記第2操作における前記開口面積を、前記第1操作における前記開口面積よりも小さくしていてもよい。このような形態によれば、例えば、第1操作と第2操作とで開口面積を同じにする場合や、第2操作における開口面積を第1操作における開口面積よりも大きくする場合と比較して、第2操作において実行される送出操作による流路の圧力の上昇に起因して吐出量が過剰となることを抑制できる。
【0083】
(6)上記形態では、前記制御部は、前記第1操作の前に、前記第2操作と前記第3操作との少なくともいずれか一方を実行してもよい。このような形態によれば、例えば、ノズル61が一定の速度で移動している間に第1操作を実行し、その第1操作に先立ってノズル61を減速または加速させる際に第2操作や第3操作を実行することで、ノズルを減速または加速させる際の吐出量を精度良く制御できる。
【0084】
(7)上記形態では、前記制御部は、前記吐出量を増加させる場合に、前記吐出量調整部を制御することによって、前記開口面積を段階的に大きくする操作を実行してもよい。このような形態によれば、例えば、流路の開口面積を目標の開口面積まで一度に大きくする場合と比較して、流路における吐出量調整部よりも上流の部分から下流の部分へと造形材料が一気に流れ出ることを抑制できる。
【0085】
(8)本開示の第2の形態によれば、ノズル開口を有し、前記ノズル開口から造形材料をステージに向けて吐出するノズルと、前記ノズルと前記ステージとの相対的な位置を変化させる位置変更部と、前記ノズル開口に連通し、前記造形材料が流れる流路に設けられ、前記流路の開口面積を変更することによって、前記ノズル開口からの前記造形材料の吐出量を調整する吐出量調整部と、前記吐出量調整部と前記ノズル開口との間の前記流路に接続された分岐流路と、前記分岐流路内を移動するプランジャーと、を有する圧力調整部と、を備える、三次元造形装置における三次元造形物の製造方法が提供される。この製造方法は、一の連続する線状の部分造形物を造形する場合に、前記プランジャーを移動させることで、前記流路内の前記造形材料を前記分岐流路内に吸引する工程と、前記分岐流路内に吸引した前記造形材料を前記流路に送出する工程と、を備え、前記部分造形物を造形するための造形区間の開始端と終了端とで、前記プランジャーの前記分岐流路内における位置が一致するように、前記プランジャーを移動させる。
【符号の説明】
【0086】
20…材料供給部、22…供給路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…スクリュー、41…上面、42…スクリュー下面、43…側面、44…材料導入口、45…溝部、46…凸条部、47…中央部、50…バレル、52…バレル上面、56…連通孔、58…ヒーター、61…ノズル、62…ノズル開口、63…先端面、65…ノズル流路、69…流路、70…吐出量調整部、74…第1駆動部、75…圧力調整部、76…分岐流路、77…プランジャー、78…第2駆動部、79…端面、100…三次元造形装置、101…制御部、200…吐出部、210…ステージ、211…造形面、230…位置変更部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8