(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182089
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】封缶蓋、二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/645 20210101AFI20231219BHJP
H01M 50/159 20210101ALI20231219BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20231219BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H01M50/645
H01M50/159
H01M50/15
H01M10/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095494
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】水本 将弘
【テーマコード(参考)】
5H011
5H023
5H028
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC06
5H011DD13
5H011KK01
5H023AA03
5H023AS01
5H023CC11
5H028AA07
5H028BB01
5H028BB03
(57)【要約】
【課題】従来の接合面構造では、溝または突起の形成及び管理のために工程が複雑になる問題があった。
【解決手段】本発明にかかる封缶蓋は、二次電池のケース10に適用される封缶蓋11であって、封缶蓋11の本体となるベースプレートと、ベースプレートに設けられ、キャップ15が填め込まれる孔30と、を有し、孔30は、断面視において、側面がケース10内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面20を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池のケースに適用される封缶蓋であって、
前記封缶蓋の本体となるベースプレートと、
前記ベースプレートに設けられ、キャップが填め込まれる孔と、を有し、
前記孔は、断面視において、側面が前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面を有する封缶蓋。
【請求項2】
前記キャップは、前記側面のテーパー面に埋め込まれるような状態で前記ベースプレートと接合される請求項1に記載の封缶蓋。
【請求項3】
前記孔は、前記テーパー面に前記キャップを位置決めする凹部または凸部が設けられる請求項1に記載の封缶蓋。
【請求項4】
電力体が封入されるケースと、
前記ケースを密閉する封缶蓋と、を有し、
前記封缶蓋は、前記封缶蓋の本体となるベースプレートに設けられ、キャップが填め込まれる孔と、を有し、
前記孔は、断面視において、側面が前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面を有する二次電池。
【請求項5】
二次電池の製造方法であって、
ケースに電力体を挿入する電力体挿入工程と、
前記電力体が挿入されたケースの開口部に封缶蓋を接合する封缶工程と、
前記封缶蓋に設けられ、キャップが填め込まれる孔から前記ケース内に電解液を注液する注液工程と、
前記孔にキャップを填め込んだ状態で前記キャップと前記封缶蓋を接合する密封工程と、を有し、
密封工程では、前記孔の側面に形成され、断面視において、前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状を有するテーパー面に前記キャップの外周を接した状態で超音波接合により前記キャップと前記封缶蓋とを接合する二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両のバッテリとして利用される二次電池の封缶蓋、二次電池及び二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池では組み立て工程においては、電力体が収納されるケースと種々の蓋とを接合することで、ケースを密閉状態とする。この接合方法の1つに超音波接合がある。そこで、超音波接合に好適な電池の面接合構造に関する技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に記載された電池の接合面構造は、接合される電池用前記金属部材の一方であるベース部材と、接合される電池用前記金属部材の他方である被接合部材と、を有し、前記ベース部材と前記被接合部材の少なくとも一方には、前記ベース部材と前記被接合部材とが接する接合面に溝が形成され、前記ベース部材と前記被接合部材とが接合された状態において、前記溝は、接合前に比べて少なくとも70%以上が消失した状態となっている。また、特許文献1に記載の接合面構造では、接合面において部材の平坦面から突出するように設けられるエネルギダイレクタを有し、このエネルギダイレクタは、1又は複数の溝を構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された面接合構造では、接合面に溝または突起を形成しなければならず、この溝または突起を形成及び管理する必要がある。つまり、特許文献1に開示された技術では、溝または突起の形成及び管理のために工程が複雑になる問題がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、効率的な超音波接合を実現しながら工程管理が容易な封缶蓋及び当該封缶蓋を有する二次電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の封缶蓋の一態様は、二次電池のケースに適用される封缶蓋であって、前記封缶蓋の本体となるベースプレートと、前記ベースプレートに設けられ、キャップが填め込まれる孔と、を有し、前記孔は、断面視において、側面が前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面を有する。
【0008】
本発明の二次電池の一態様は、電力体が封入されるケースと、前記ケースを密閉する封缶蓋と、を有し、前記封缶蓋は、前記封缶蓋の本体となるベースプレートに設けられ、キャップが填め込まれる孔と、を有し、前記孔は、断面視において、側面が前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面を有する。
【0009】
本発明の二次電池の製造方法の一態様は、二次電池の製造方法であって、ケースに電力体を挿入する電力体挿入工程と、前記電力体が挿入されたケースの開口部に封缶蓋を接合する封缶工程と、前記封缶蓋に設けられ、キャップが填め込まれる孔から前記ケース内に電解液を注液する注液工程と、前記孔にキャップを填め込んだ状態で前記キャップと前記封缶蓋を接合する密封工程と、を有し、密封工程では、前記孔の側面に形成され、断面視において、前記ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面に前記キャップの外周を接した状態で超音波接合により前記キャップと前記封缶蓋とを接合する。
【0010】
本発明の封缶蓋、二次電池及び二次電池の製造方法では、ケース内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状の側面を有する孔が封缶蓋に設けられる。そして、本発明の封缶蓋、二次電池及び二次電池の製造方法では、このテーパー形状の側面によりキャップのエッジ部を受け、テーパー面とキャップのエッジ部との接触部分を超音波接合する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の封缶蓋、二次電池及び二次電池の製造方法によれば、効率的な超音波接合を実現しながら工程管理が容易な封缶蓋及び当該封缶蓋を有する二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1にかかる二次電池の構造を説明する斜視図である。
【
図2】実施の形態1にかかる封缶蓋の接合部分の構造を説明する断面図である。
【
図3】実施の形態1にかかる二次電池の製造方法を説明するフリーチャートである。
【
図4】実施の形態1にかかる二次電池の密閉工程を詳細に説明する断面図である。
【
図5】実施の形態2にかかる封缶蓋の第1の例についての接合部分の構造を説明する断面図である。
【
図6】実施の形態2にかかる封缶蓋の第2の例についての接合部分の構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0014】
まず、実施の形態1にかかる接合構造は、充放電ができない一次電池であっても、充放電が可能な二次電池であっても、使用可能であるが、以下の説明では、二次電池に採用される接合構造について説明する。
図1に実施の形態1にかかる二次電池1の構造を説明する斜視図を示す。
【0015】
図1に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1は、ケース10、封缶蓋11を有する。ケース10には、電力体が収納される。封缶蓋11は、ケース10に電力体が収納された状態でケース10を密閉状態とする。そして、封缶蓋11には、正極電極12、負極電極13が設けられる。正極電極12は、ケース10内の電力体の正極から電力を取り出す電極であり、封缶蓋11を貫通して設けられる正極極柱と正極リベット12aにより接合される。正極極柱、正極リベット12a、正極電極12は、レーザー溶接により接合される。負極電極13は、ケース10内の電力体の負極から電力を取り出す電極であり、封缶蓋11を貫通して設けられる負極極柱と負極リベット13aにより接合される。負極極柱、負極リベット13a、負極電極13は、レーザー溶接により接合される。
【0016】
また、封缶蓋11には、開放弁14及びキャップ(例えば、注液孔キャップ15)が設けられる。注液孔キャップ15は、超音波接合により封缶蓋11に接合されるキャップである。なお、開放弁14は、密閉されたケース10内の内圧が一定以上となった時にケース10の内圧を低減する弁である。注液孔キャップ15は、ケース10に電解液を注液する孔(例えば、注液孔)のキャップである。
【0017】
以下の説明では、注液孔キャップ15に設けられる接合構造を例に実施の形態1にかかる封缶蓋11に設けられる接合構造について説明する。そこで、
図2に実施の形態1にかかる封缶蓋11の接合部分の構造を説明する断面図を示す。
図2に示す断面図は、注液孔キャップ15を横切る断面線に沿った封缶蓋11の断面図である。
【0018】
図2に示すように、封缶蓋11は、封缶蓋11の本体となるベースプレートと、ベースプレートに設けられ、注液孔キャップ15が填め込まれる孔となる注液孔30が設けられている。そして、実施の形態1にかかる封缶蓋11では、注液孔30の側壁が断面視において、ケース10内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状となるテーパー面20を有する。
【0019】
また、
図2に示す例では、注液孔30の側壁は水平受け部21及び垂直ガイド部22を有する。水平受け部21は、注液孔30の側壁のうちケース10内側の端部付近であって、テーパー面20のケース10内側の端部に連続するように設けられる。水平受け部21は、注液孔キャップ15がケース10内に脱落することを防止する突起である。垂直ガイド部22は、封缶蓋11の上面と注液孔30の側壁に設けられるテーパー面20とを繋ぐ垂直な面である。
【0020】
また、
図2では、注液孔キャップ15の構造についても示した。
図2に示す例では、注液孔キャップ15のエッジ部151の拡大図も示した。実施の形態1にかかる封缶蓋11に適用される注液孔キャップ15は、エッジ部151にバリ31が有っても構わない。これは、封缶蓋11を用いる事で、注液孔30に填め込まれた注液孔キャップ15のエッジ部151は、テーパー面20に押し当てられ、超音波振動の伝達を効率化するエネルギダイレクタとして機能する。なお、注液孔キャップ15のエッジ部151にバリ31が無くても、エッジ部151は直角に近い角度を有するため、このエッジ部151はエネルギダイレクタとして機能する。そして、詳しくは後述するが、実施の形態1にかかる二次電池1では、超音波接合された封缶蓋11と注液孔キャップ15は、注液孔キャップ15のエッジ部151がテーパー面20に埋め込まれた状態になる。
【0021】
続いて、実施の形態1にかかる二次電池1の製造方法について説明する。そこで、
図3に実施の形態1にかかる二次電池1の製造方法を説明するフリーチャートを示す。
図3に示すフローチャートは、二次電池の製造工程のうち二次電池の組み立て工程を示した。
図3に示すように、実施の形態1にかかる二次電池1の組み立てでは、まず、ケース10に電力体を挿入する電力体挿入工程を行う(ステップS1)。続いて、電力体が挿入されたケース10の開口部に封缶蓋11を接合する封缶工程を行う(ステップS2)。このステップ2では、ケース10と封缶蓋11とをレーザー溶接により接合する。その後、封缶蓋11に設けられ、キャップ15が填め込まれる孔(例えば、注液孔30)からケース10内に電解液を注液する注液工程を行う(ステップS3)。次いで、注液孔30に注液孔キャップ15を填め込んだ状態で注液孔キャップ15と封缶蓋11を接合する密封工程を行うことにより二次電池1の組み立てが完了する(ステップS4)。
【0022】
このステップS4の密封工程では、注液孔30の側面に形成され、断面視においてケース10内に向かって孔の径が小さくなるテーパー形状を有するテーパー面20に注液孔キャップ15の外周を接した状態で超音波接合により注液孔キャップ15と封缶蓋11とを接合する。そこで、密封工程の詳細を
図4を用いてさらに詳細に説明する。
図4は、実施の形態1にかかる二次電池の密閉工程を詳細に説明する断面図である。
【0023】
図4では、ステップS4-1として、注液孔30に注液孔キャップ15を填め込んだ状態を示した。ステップS4-1では、注液孔30内のテーパー面20に注液孔キャップ15のエッジ部151が接した状態となる。この状態で、接合用チップ40を注液孔キャップ15に押し当てることで、注液孔キャップ15と封缶蓋11とが超音波接合された状態となる。
【0024】
図4では、封缶蓋11と注液孔キャップ15とが超音波接合された状態をステップS4-2として示した。このステップS4-2に示すように、封缶蓋11と注液孔キャップ15が超音波接合された状態では、注液孔キャップ15のエッジ部151が封缶蓋11のテーパー面20に埋め込まれた状態となる。これは、封缶蓋11の部材に対して注液孔キャップ15の部材が固い材質であるためである。そして、実施の形態1にかかる二次電池1では、注液孔キャップ15の側壁の一部(特にケース10内側の端部周辺)と、注液孔キャップ15の底面の一部(特に、注液孔30の側壁側の端部周辺)と、の2辺に接合面32が形成される。
【0025】
上記説明より、実施の形態1にかかる二次電池1では、注液孔キャップ15を填め込む注液孔30の側壁にテーパー面20を形成し、テーパー面20に注液孔キャップ15のエッジ部151を押し当てるように超音波接合を行う。これにより、二次電池1では、注液孔キャップ15のエッジ部151をエネルギダイレクタとした高効率な超音波接合が可能になる。
【0026】
また、実施の形態1にかかる封缶蓋11と注液孔キャップ15の組み合わせでは、接合面に溝や突起を形成する必要がなく、さらに注液孔キャップ15のエッジ部151にバリ31があっても問題がない。そのため、実施の形態1にかかる封缶蓋11を用いることで、封缶蓋11のバリ取り工程、バリ検査工程を省略する等により工程を簡略化し、管理コストと製造コストの両方を抑制することができる。なお、一般的なプレス工程或いは切削工程のみで封缶蓋11のテーパー面20を形成でき、その精度誤差の管理も容易なため、製造コスト及び工程管理の上昇はほとんど無い。
【0027】
また、実施の形態1にかかる封缶蓋11と注液孔キャップ15の組み合わせでは、接合面が注液孔キャップ15の側壁の一部(特にケース10内側の端部周辺)と、注液孔キャップ15の底面の一部(特に、注液孔30の側壁側の端部周辺)と、の2辺に渡って形成されるため、高い接合強度を実現することができる。
【0028】
実施の形態2
実施の形態2では封缶蓋11の別の形態となる封缶蓋11a、11bについて説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1と同じ構成要素については実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
まず、
図5に実施の形態2にかかる封缶蓋の第1の例についての接合部分の構造を説明する断面図を示す。以下の説明では、この第1の例を封缶蓋11aと称す。
図5に示すように、封缶蓋11aは、テーパー面20に注液孔キャップ15の位置決めをする凹部を有する。より具体的には、凹部23は、テーパー面20に段差を設けることで形成される。この凹部23により、注液孔キャップ15は、封缶蓋11aとの相対傾きが水平状態なるため、実施の形態1よりも良好な超音波接合を実現する事ができる。また、封缶蓋11aでは、テーパー面20に対して注液孔キャップ15のエッジ部151が接するためエッジ部151をエネルギダイレクタとして有効に機能させることができる。
【0030】
続いて、
図6に実施の形態2にかかる封缶蓋の第2の例についての接合部分の構造を説明する断面図を示す。以下の説明では、この第2の例を封缶蓋11bと称す。
図6に示すように、封缶蓋11bは、テーパー面20に注液孔キャップ15の位置決めをする凸部を有する。より具体的には、凸部24は、テーパー面20から突出するように形成される。この凸部24により、注液孔キャップ15は、封缶蓋11aとの相対傾きが水平状態なるため、実施の形態1よりも良好な超音波接合を実現する事ができる。また、封缶蓋11bでは、テーパー面20に対して注液孔キャップ15のエッジ部151が接するためエッジ部151をエネルギダイレクタとして有効に機能させることができる。
【0031】
上記説明より、実施の形態2で説明した位置決めのための凹部23または凸部24を設けることで、テーパー面20に対する注液孔キャップ15の傾きを容易に制御することが出来る。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 二次電池
10 ケース
11 封缶蓋
12 正極電極
12a 正極リベット
13 負極電極
13a 負極リベット
14 開放弁
15 注液孔キャップ
151 エッジ部
20 テーパー面
21 水平受け部
22 垂直ガイド部
23 凹部
24 凸部
30 注液孔
31 バリ
32 接合面
40 接合用チップ