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  • 特開-湿度計測装置及び湿度計測方法 図1
  • 特開-湿度計測装置及び湿度計測方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001821
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】湿度計測装置及び湿度計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20221226BHJP
   G21F 9/34 20060101ALI20221226BHJP
【FI】
G01N27/12 H
G21F9/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102796
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114524
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 英俊
(72)【発明者】
【氏名】王 海龍
【テーマコード(参考)】
2G046
【Fターム(参考)】
2G046AA09
2G046CA09
2G046EB07
(57)【要約】
【課題】土中の湿度をモニタリングする際等において好適となる新たな原理の湿度計測装置及び湿度計測方法を提供すること。
【解決手段】湿度計測装置10は、湿度を計測する対象領域に設置され、所定の状態変化を計測する計測器11と、計測器11の計測結果から前記湿度を検出する検出器12とを備えている。計測器11は、水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材18と、膨潤材18に接触し、膨潤材18からの押圧力を計測する圧力センサ17とを備えている。検出器12では、前記押圧力に対する前記湿度の関係が予め記憶され、当該関係により前記押圧力から前記湿度を求められる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿度を計測する対象領域に設置されて所定の状態変化を計測する計測器の計測結果に応じて前記対象領域の湿度を求める湿度計測装置であって、
水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材に、前記対象領域の水分や空気を導き、前記膨潤材の膨張に伴う圧力変化から、前記対象領域の湿度を求めることを特徴とする湿度計測装置。
【請求項2】
湿度を計測する対象領域に設置され、所定の状態変化を計測する計測器と、当該計測器の計測結果から前記湿度を検出する検出器とを備え、
前記計測器は、水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材と、当該膨潤材に接触し、前記膨潤材からの押圧力を計測する圧力センサとを備え、
前記検出器では、前記押圧力に対する前記湿度の関係が予め記憶され、当該関係により前記押圧力から前記湿度が求められることを特徴とする湿度計測装置。
【請求項3】
前記計測器は、前記膨潤材及び前記圧力センサの周りを囲んで保護する保護部を更に備え、
前記保護部には、前記対象領域からの水分や空気を前記膨潤材に導く導入口が形成されることを特徴とする請求項2記載の湿度計測装置。
【請求項4】
水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材に、湿度を計測する対象領域の水分や空気を導き、前記膨潤材の膨張に伴う圧力変化から、前記対象領域の湿度を求めることを特徴とする湿度計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土中の湿度モニタリングに適した湿度計測装置及び湿度計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電の際に使用済みとなった核燃料の処理については、様々な課題が存在するが、特に、当該処理時に生成される高レベル放射性廃棄物は、地下深部の岩盤に隔離する地層処分を行うことが現実的に最有力とされている。この高レベル放射性廃棄物は、原子力発電所の使用済み燃料を再処理する過程で発生する廃液をガラス固化したものであり、金属容器に収容された上で、土質材料を締固めて形成された緩衝材により金属容器を包囲した状態にて、地下に設けられた処分孔に埋設される。この処分孔は、地下の岩盤に作業用の処分坑道を掘削した後、当該処分坑道から掘削することで形成される。そして、高レベル放射性廃棄物が収容された金属容器が、緩衝材で包囲された状態で処分孔内に定置された後、土質材料からなる埋め戻し材により当該処分孔の周囲の処分坑道が埋め戻しされる。
【0003】
ここで、バリアとして設置される土質材料からなる前述の緩衝材及び埋め戻し材は、設置後に周囲の岩盤から吸水することにより飽和する。この飽和過程は100年程度と予測されるが、緩衝材及び埋め戻し材の経時的な状況変化等の研究等に際しては、これらの湿度環境をモニタリングすることが必要となる。ここで、湿度環境をモニタリングするには、緩衝材及び埋め戻し材中の湿度を計測する機器を利用する必要があるが、当該機器としては、例えば、特許文献1、2に開示される原理により、土中の電気抵抗の変化から湿度を計測するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3070450号公報
【特許文献2】実用新案登録第3144362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2に開示される原理の湿度計測機器においては、緩衝材や埋め戻し材を施工する際に発生する衝撃や、放射性廃棄物の減衰に伴う高温環境等を考慮すると、前述の湿度環境のモニタリングへの適用は難しい。また、岩盤からの地下水は、塩分等を含んでおり、当該地下水が緩衝材及び埋め戻し材に吸水される点からも、土中に電極を接触させる前記特許文献1、2の原理の機器を使用することは難しい。
【0006】
本発明は、このような課題に着目して案出されたものであり、その目的は、土中の湿度をモニタリングする際等において好適となる新たな原理の湿度計測装置及び湿度計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、主として、湿度を計測する対象領域に設置されて所定の状態変化を計測する計測器の計測結果に応じて前記対象領域の湿度を求める湿度計測装置であって、水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材に、前記対象領域の水分や空気を導き、前記膨潤材の膨張に伴う圧力変化から、前記対象領域の湿度を求める、という構成を採っている。
【0008】
また、本発明は、主として、水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材に、湿度を計測する対象領域の水分や空気を導き、前記膨潤材の膨張に伴う圧力変化から、前記対象領域の湿度を求める、という手法を採っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、湿度計測の対象領域から水分や空気が膨潤材に吸収された際に、膨潤材の膨張による圧力変化を利用して対象領域の湿度が特定される原理を採用している。従って、例えば、高レベル放射性廃棄物の埋設処理の研究等を行う際の土中湿度モニタリングにおいて、湿度計測のための電極等を土中に直接設置する従来の原理とは異なり、湿度計測に直接影響する膨張材の周りを強固な保護部材等で保護することができ、施工時等の周囲の衝撃の影響や高温環境下においても、対象領域の湿度計測を長期的に安定して行うことが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る湿度計測装置の設置例を表す概念図である。
図2】前記湿度計測装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る湿度計測装置の設置例を表す概念図である。この図において、本実施形態における湿度計測装置10は、原子力発電所の使用済燃料を回収する際に発生する廃液をガラスで固化した高レベル放射性廃棄物Wについて、金属容器C、緩衝材K、埋め戻し材U、岩盤G等からなる多重バリアシステムにより地下深部に隔離する地層処分の試験研究時等において、緩衝材Kや埋め戻し材Uの内部の湿度を計測するために用いられる。
【0013】
前記湿度計測装置10は、図2にも示されるように、湿度を計測する対象領域となる緩衝材Kや埋め戻し材Uの所定部位に適宜設置され、所定の状態変化を計測する計測器11と、計測器11の計測結果に応じて対象領域の湿度を求める検出器12とを備えている。
【0014】
前記計測器11は、緩衝材Kや埋め戻し材Uの湿度検出のための情報を取得する中央の情報取得部14と、ステンレス等の金属製の保護部材によって円柱状に形成されるとともに、情報取得部14の周りを囲んで保護する保護部15とを備えている。
【0015】
前記情報取得部14は、保護部15の中央付近に配置される圧力センサ17と、圧力センサ17における図2中下端の圧力計測部17Aに接触し、水分を吸収すると膨張する吸水膨潤性を有する膨潤材18と、膨潤材18の同図中下方に配置されるとともに、ステンレス等の金属粉末を焼結してなる多孔性金属により形成された多孔性プレート19とを備えている。
【0016】
前記圧力センサ17は、膨潤材18から圧力計測部17Aへの押圧力を計測可能となっており、当該押圧力の大きさに対応する電気信号を発生させる。従って、膨潤材18の膨張変形に伴う前記押圧力の変化を把握可能となる。
【0017】
前記膨潤材18は、本実施形態において、膨潤性の鉱物を含むベントナイトからなる膨潤性土が用いられるが、本発明では特に限定されるものではなく、同様の作用を奏する吸水膨潤性を有する限りにおいて、他の土材、粒状体、固体部材等を膨潤材18として適用することも可能である。
【0018】
前記多孔性プレート19は、外部から膨潤材18への空気や水分等の流体通過を許容可能とする微細な空孔が多数形成されてなる。
【0019】
前記保護部15は、円盤状の外形をなす上下一対のブロック体23,24と、これらブロック体23,24を複数箇所で連結固定する固定ねじ25とからなる。
【0020】
前記上側のブロック体23には、その中央部分に図2中上下に貫通する貫通穴が形成されており、当該貫通穴に圧力センサ17及び膨潤材18が収容される。ここで、図示省略しているが、圧力センサ17の外周面は、前記貫通穴の内周面にねじ止めされることで上側のブロック体23に固定される。なお、このねじ止め部分はシールされておらず、当該部分を通じて膨潤材18からの水分をブロック体23の上方から適宜外部に逃がせる設計となっている。
【0021】
前記下側のブロック体24には、その中央部分に図2中上下に貫通する貫通穴が形成されており、当該貫通穴の同図中上側部分に多孔性プレート19が収容され、残りの空間部分は、計測器11周囲の対象領域からの空気や水分を多孔性プレート19に導く導入口30として機能する。つまり、圧力センサ17と多孔性プレート19との間には、膨潤材18が収容される収容空間20が形成され、導入口30は、計測器11の外側の空気や水分を、多孔性プレート19から膨潤材18に導くようになっている。そして、導入口30からの水分により、膨潤材18は、収容空間20内に閉じ込められた状態で膨張変形し、これにより、圧力計測部17Aへの押圧力が変化することになる。ここで、収容空間20と導入口30との間は、多孔性プレート19により仕切られており、多孔性プレート19により、膨張変形した膨潤材18の導入口30への膨出が規制される一方で、導入口30からの空気や水分が、多孔性プレート19を通過して膨潤材18に浸入可能となる。
【0022】
前記検出器12は、コンピュータからなり、予め実験等で取得した前記押圧力の大きさと土中湿度との関係が記憶され、圧力センサ17からの圧力計測値から湿度計測値を特定可能に設けられる。つまり、膨潤材18の膨張による圧力変化から、周囲の緩衝材Kや埋め戻し材Uの湿度が導出される。ここで、圧力センサ17で計測された膨潤材18の圧力値が高くなる程、湿度が高くなる。なお、検出器12は、計測器11と一体化しても良いし、別体として計測器11と離れた場所に設置可能な態様にしても良い。
【0023】
以上の実施形態によれば、緩衝材Kや埋め戻し材Uからの空気や水分が、導入口30に入り込み、多孔性プレート19を通じて膨潤材18に導かれ、それによって膨潤材18が経時的に膨張変形することで、収容空間20に封入された膨潤材18から、圧力センサ17の圧力計測部17Aへの押圧力が経時的に上昇し、当該圧力変化を圧力センサ17で検出することで、緩衝材Kや埋め戻し材Uの湿度が経時的に求められることになる。
【0024】
なお、本発明における湿度計測装置は、前記実施形態の使用態様に限らず、他の湿度計測全般に適用することもできる。
【0025】
その他、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0026】
10 湿度計測装置
11 計測器
12 検出器
14 情報取得部
15 保護部
17 圧力センサ
17A 圧力計測部
18 膨潤材
20 検出空間
30 導入口
K 緩衝材(対象領域)
U 埋め戻し材(対象領域)
図1
図2