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特開2023-182109水力発電管理装置及び水力発電管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182109
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】水力発電管理装置及び水力発電管理方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231219BHJP
   E02B 9/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G06Q50/06
E02B9/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095517
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】岡 伸二
(72)【発明者】
【氏名】山中 和幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】水力発電設備の経済的な運用を支援できる水力発電管理装置及び水力発電管理方法を提供すること。
【解決手段】水力発電管理装置1は、発電機5を駆動させる水を貯留する水槽2内に設けられ、前記発電機5側への塵芥dの入流を規制するスクリーン23を備える水力発電設備100に用いられる水力発電管理装置1であって、スクリーン23への塵芥dの付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出部11と、スクリーン異常検出部11によるスクリーン異常の検出時にスクリーン23に付着した塵芥dを除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間におけるスクリーン異常による発電機5の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定部12と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電機を駆動させる水を貯留する水槽内に設けられ、前記発電機側への塵芥の入流を規制するスクリーンを備える水力発電設備に用いられる水力発電管理装置であって、
前記スクリーンへの塵芥の付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出部と、
前記スクリーン異常検出部による前記スクリーン異常の検出時に前記スクリーンに付着した塵芥を除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、前記スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間における前記スクリーン異常による前記発電機の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定部と、を備える水力発電管理装置。
【請求項2】
前記タイミング判定部は、前記第2の費用が前記第1の費用よりも高額である場合に、前記スクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定する請求項1に記載の水力発電管理装置。
【請求項3】
前記水槽は、前記スクリーンによって上流側の領域と下流側の領域に区画され、
前記スクリーン異常検出部は、前記上流側の領域の水位と前記下流側の領域の水位との水位差に基づいて前記スクリーン異常を検出する請求項1又は2に記載の水力発電管理装置。
【請求項4】
発電機を駆動させる水を貯留する水槽内に設けられ、前記発電機側への塵芥の入流を規制するスクリーンを備える水力発電設備に用いられる水力発電管理方法であって、
前記スクリーンへの塵芥の付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出ステップと、
前記スクリーン異常検出ステップで前記スクリーン異常の検出時に前記スクリーンに付着した塵芥を除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、前記スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間における前記スクリーン異常による前記発電機の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定ステップと、を含む水力発電管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電管理装置及び水力発電管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下流側への塵芥の流入を規制するスクリーンを介して水槽内の水を水車に供給し、発電機を駆動させる水力発電設備が知られている。この種の設備が記載されているものとして例えば特許文献1がある。特許文献1には、内部を上流側と下流側とに区分するスクリーンが配設された水槽のスクリーンを挟んで下流側の水位と、発電機の発電出力との間の関係等に基づいて発電出力を調整し、スクリーンの上流側の水位が所定値以上のときに、発電出力を増加させる装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-115021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スクリーンに落ち葉やゴミ等の塵芥が付着すると、水槽におけるスクリーンの上流側から下流側へ水が流れ難くなり、水車への水の供給量が低下し、発電機の出力値が低下する。特許文献1の装置では、発電機の出力値を調整し、一時的には水の越流を抑制できるものの、時間の経過とともにスクリーンへの塵芥の蓄積が進むので、スクリーンに付着した塵芥を除去する除塵作業を定期的に行う必要がある。しかし、塵芥がスクリーンに蓄積するスピードが想定よりも早いこともある。この場合、定例の除塵作業とは別に臨時で除塵作業を実施することもあるが、予め作業の手配がされている定例の除塵作業に比べて費用がかかり、除塵作業のタイミングによっては水力発電設備の運用にかかる費用が増大する。
【0005】
本発明は、水力発電設備の経済的な運用を支援できる水力発電管理装置及び水力発電管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発電機を駆動させる水を貯留する水槽内に設けられ、前記発電機側への塵芥の入流を規制するスクリーンを備える水力発電設備に用いられる水力発電管理装置であって、前記スクリーンへの塵芥の付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出部と、前記スクリーン異常検出部による前記スクリーン異常の検出時に前記スクリーンに付着した塵芥を除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、前記スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間における前記スクリーン異常による前記発電機の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定部と、を備える水力発電管理装置に関する。
【0007】
前記タイミング判定部は、前記第2の費用が前記第1の費用よりも高額である場合に、前記スクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定してもよい。
【0008】
前記水槽は、前記スクリーンによって上流側の領域と下流側の領域に区画され、前記スクリーン異常検出部は、前記上流側の領域の水位と前記下流側の領域の水位との水位差に基づいて前記スクリーン異常を検出してもよい。
【0009】
また本発明は、発電機を駆動させる水を貯留する水槽内に設けられ、前記発電機側への塵芥の入流を規制するスクリーンを備える水力発電設備に用いられる水力発電管理方法であって、前記スクリーンへの塵芥の付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出ステップと、前記スクリーン異常検出ステップで前記スクリーン異常の検出時に前記スクリーンに付着した塵芥を除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、前記スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間における前記スクリーン異常による前記発電機の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定ステップと、を含む水力発電管理方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水力発電設備の経済的な運用を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る水力発電管理装置が適用される水力発電設備を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る水力発電管理装置の機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る水力発電管理装置によって実行される除塵作業タイミング判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本発明の一実施形態に係る水力発電管理装置1は、水力発電設備100に用いられ、水力発電設備100の運用を支援する装置である。まず、水力発電設備100について図1を参照しながら説明する。図1は水力発電設備100を示す模式図である。
【0014】
水力発電設備100は、流れ込み式の発電設備である。水力発電設備100は、河川に流れる水が流入する水槽2と、水圧鉄管3と、水車4と、水車4の回転によって駆動する発電機5と、水槽2の水位を調整する水位調整機構6と、水力発電管理装置1と、を備える。
【0015】
水槽2は、河川から流入した水を貯留する。水槽2内に貯留された水は、水圧鉄管3を介して水車4に供給され、発電機5を駆動させるために用いられる。
【0016】
水槽2には、水圧鉄管3側への塵芥dの流入を規制するスクリーン23が設けられる。水槽2は、スクリーン23によって上流側の領域(以下、上流側領域という)21と下流側の領域(以下、下流側領域という)22に区画される。上流側領域21は、水槽2における河川からの水が流入する側の領域であり、下流側領域22は水圧鉄管3側の領域である。スクリーン23は、上流側領域21に存在する塵芥dが下流側領域22側に流入しないように塵芥dを捕捉する。
【0017】
水圧鉄管3は、水槽2の下流側領域22に接続され、水槽2内に貯留された水を水車4に送る管である。
【0018】
水車4は、水槽2から水圧鉄管3を介して供給される水によって駆動する。水車4は、水車軸41を備えており、この水車軸41によって発電機5に接続される。
【0019】
発電機5は、タービン(図示省略)を備え、タービンが水車4の水車軸41により駆動されることによって発電を行う。具体的には、発電機5は、水槽2から水圧鉄管3を介して供給される水によって生じる水車4の回転が水車軸41を介して伝達されることでタービンが回転し、発電する。なお、発電機5は、水力発電管理装置1と通信可能に接続され、発電機5の出力値が水力発電管理装置1に送信される。
【0020】
水位調整機構6は、上流側水位計61と、下流側水位計62と、水位調整装置63と、を備える。上流側水位計61及び下流側水位計62は、水位調整装置63と通信可能に接続される。
【0021】
上流側水位計61は、水槽2の上流側領域21に配置され、上流側領域21の水位を検出する。下流側水位計62は、水槽2の下流側領域22に配置され、下流側領域22の水位を検出する。即ち、上流側水位計61によってスクリーン23を挟んで水槽2の上流側の水位(以下、上流側水位という)が検出され、下流側水位計62によってスクリーン23を挟んで水槽2の下流側の水位(以下、下流側水位という)が検出される。検出された上流側水位及び下流側水位に関する水位情報は、水位調整装置63に送信される。
【0022】
水位調整装置63は、受信した上流側水位や下流側水位等に基づいて水槽2から水車4への水の供給量を調整する。水位調整装置63は、例えば下流側水位が所定の閾値よりも下がると水車4への水の供給量を低下させるように動作してもよい。
【0023】
水力発電管理装置1は、スクリーン23に蓄積された塵芥dを除去する除塵作業を行うタイミングを判定し、その判定結果を出力する装置である。水力発電管理装置1は、発電機5や水位調整機構6と通信可能に接続される。
【0024】
ここで、水力発電設備100では、スクリーン23によって水槽2から水圧鉄管3への塵芥dの入流を防止できるものの、スクリーン23に捕捉された塵芥dの増加に伴い、上流側領域21から下流側領域22に流入する流量が減少する。これにより、下流側領域22の水位が減少し、水圧鉄管3への水の流れ込みが悪くなるので、水車4へ供給される水の流量が減少し、発電機5の出力値が低下することになる。このため、スクリーン23に蓄積された塵芥dを除去する除塵作業が定期的に行われる。しかしながら、塵芥dがスクリーン23に蓄積される速度は一定ではなく、定例の除塵作業の実施日よりも前に所定以上の塵芥dが蓄積される場合もある。
【0025】
本実施形態に係る水力発電管理装置1は、スクリーン23の除塵作業の適切なタイミングを判定する除塵作業タイミング判定処理機能を有し、水力発電設備100の経済的な運用を実現することができる。
【0026】
次に、水力発電管理装置1の構成について図2を参照しながら説明する。図2は、水力発電管理装置1の機能ブロック図である。
【0027】
水力発電管理装置1は、処理部10と、記憶部20と、受信部30と、入力部40と、出力部50と、を備える。
【0028】
処理部10は、CPU等のプロセッサによって構成される演算装置であり、後述の記憶部20から各種プログラム、データを読み込んで実行し、移動制御の機能を実現する。本実施形態では、処理部10は、スクリーン異常検出部11と、タイミング判定部12と、出力処理部13の各機能部のデータ処理を実行する。各機能部の動作については後述する。
【0029】
記憶部20は、ハードウェア群を水力発電管理装置1として機能させるための各種プログラム、及び各種データなどの記憶領域であり、ROM、RAM、フラッシュメモリ、半導体ドライブ(SSD)又はハードウェア(HDD)などで構成することができる。具体的には、記憶部20は、本実施形態の各機能を処理部10に実行させるためのプログラム、各種パラメータ、スクリーン23の除塵作業のタイミング判定に利用される情報、水力発電設備100による発電単価に関する発電単価情報、発電機5の定格出力に関する定格出力情報、予め定められた除塵作業である定例の除塵作業のスケジュール、スクリーン23の除塵作業にかかる費用等が記憶される。スクリーン23の除塵作業にかかる費用としては、例えば定例の除塵作業にかかる費用、定例の除塵作業以外のタイミングで実施される除塵作業(以下、臨時の除塵作業という)にかかる費用等が挙げられる。なお、臨時の除塵作業にかかる費用は、予め作業の手配がされている定例の除塵作業にかかる費用に比べて高額である。例えば臨時の除塵作業では、緊急で除塵作業を手配する必要があり、定例の除塵作業では発生しない費用が上乗せされてしまう。
【0030】
受信部30は、発電機5や水位調整機構6、その他の外部機器からの情報を受信するための処理を実行する。受信部30は、例えば上流側水位及び下流側水位を含む水槽2の水位情報、発電単価情報、発電機5の出力値、定例の除塵作業にかかる費用、臨時の除塵作業にかかる費用の情報、気象情報等を受信する。
【0031】
入力部40及び出力部50は、有線又は無線により電気的に処理部10に接続されるユーザインターフェイスである。入力部40はボタンやディスプレイによって構成され、出力部50はディスプレイやスピーカ等の出力デバイスによって構成される。ディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescent)ディスプレイで構成されており、ディスプレイの画像表示面には、ユーザのタッチ位置を検出するタッチパネルが設けられていてもよい。これにより、ユーザがディスプレイの画像表示面にタッチすることで情報の入力を行うことができる。例えばユーザの入力操作により、入力部40を介して発電単価情報や定格出力情報、発電機5の出力値、定例の除塵作業のスケジュール、除塵作業に係る費用等の情報を水力発電管理装置1に入力してもよい。出力部50としてのディスプレイには、例えばスクリーン異常の発生や除塵作業のタイミングに関する情報が表示される。
【0032】
次に、処理部10が除塵作業タイミング判定処理を実行するための機能的構成について説明する。
【0033】
スクリーン異常検出部11は、スクリーン23への塵芥dの付着によって発生するスクリーン異常を検出する処理を実行する。スクリーン異常とは、スクリーン23に所定以上の塵芥dが蓄積することによって発電機5の出力値が低下している状態である。本実施形態に係るスクリーン異常検出部11は、水位情報取得部111と、異常判定部112と、を備え、水槽2の水位情報に基づいてスクリーン異常が発生しているか否かを判定することでスクリーン異常を検出する。
【0034】
水位情報取得部111は、水位調整機構6から受信部30を介して水槽2の水位情報を取得する。具体的には、水位情報取得部111は、水槽2の上流側水位及び下流側水位を水位情報として取得する。
【0035】
異常判定部112は、水位情報取得部111によって取得された上流側水位及び下流側水位に基づいてスクリーン異常が発生しているか否かを判定する。異常判定部112は、例えば上流側水位と下流側水位の水位差に基づいてスクリーン異常が発生しているか否かを判定してもよい。即ち、スクリーン異常検出部11は、スクリーン23を挟んで水槽2の上流側の水位と下流側の水位との水位差に基づいてスクリーン異常を検出する。具体的には、下流側水位が上流側水位よりも低く、かつ、上流側水位と下流側水位との水位差が所定の値よりも大きい場合に、スクリーン異常が発生していると判定してもよい。
【0036】
タイミング判定部12は、スクリーン異常検出部11によってスクリーン異常が検出された場合に、スクリーン23の除塵作業を行うタイミングを判定する処理を実行する。タイミング判定部12は、第1の費用取得部121と、第2の費用特定部122と、費用比較判定部123と、を備える。
【0037】
第1の費用取得部121は、スクリーン異常検出部11によるスクリーン異常の検出時にスクリーン23の除塵作業を行う場合にかかる費用である第1の費用を取得する処理を実行する。第1の費用取得部121は、例えば記憶部20、受信部30、又は入力部40から除塵作業にかかる費用を第1の費用として取得してもよい。具体的には、第1の費用取得部121は、スクリーン異常の検出日が定例の除塵作業の実施日ではない場合、臨時の除塵作業にかかる費用を第1の費用として取得してもよい。
【0038】
第2の費用特定部122は、スクリーン異常の検出時から定例の除塵作業時までの期間におけるスクリーン異常による発電機5の出力低下分に相当する費用である第2の費用を特定する処理を実行する。例えば第2の費用特定部122は、以下の(a)~(f)の処理により第2の費用を特定してもよい。
(a)記憶部20等から定例の除塵作業のスケジュールを取得し、スクリーン異常の検出時から次の定例の除塵作業時までの期間を特定する。
(b)記憶部20等から発電機5の発電単価情報を取得する。
(c)記憶部20等から発電機5の定格出力情報を抽出する。
(d)受信部30を介して発電機5からスクリーン異常時における発電機5の出力値を取得する。
(e)発電機5の定格出力とスクリーン異常検出時の出力値の差からスクリーン異常による発電機5の低下出力を特定する。
(f)スクリーン異常の検出時から定例の除塵作業時までの期間と、発電単価情報と、スクリーン異常による発電機5の低下出力に基づいて、第2の費用を特定する。
【0039】
(f)の処理は、例えば発電機5の定格出力を「A」kWhとし、スクリーン異常時における発電機5の出力値「B」kWhとし、発電単価を「C」円とし、スクリーン異常の検出時から定例の除塵作業時までの期間を「D」hとし、第2の費用「E」円とした場合、下記式(1)を算出することによって実行される。
E=(A-B)×C×D・・・式(1)
【0040】
例えば、発電機5の定格出力が3000kWとし、スクリーン異常検出時の出力値が2900kWとすると、発電機5の低下出力は100kWとなる。そして、発電単価が10円/kWh、スクリーン異常の検出時から次の定例の除塵作業までの期間が48時間とすると、第2の費用は48000円となる。
【0041】
費用比較判定部123は、第1の費用と第2の費用を比較し、その比較結果に基づいて除塵作業を行うタイミングを判定する処理を実行する。費用比較判定部123は、例えば第2の費用が第1の費用よりも高額である場合に、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定してもよい。例えば第1の費用としての臨時の除塵作業の費用が30000円であり、第2の費用が48000円である場合、費用比較判定部123はスクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定する。即ち、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行う方が、次の定例の除塵作業時まで除塵作業を行わずに発電機5の出力が低下した状態で発電を継続するよりも経済的である場合に、除塵作業のタイミングがスクリーン異常の検出時であると判定される。
【0042】
また費用比較判定部123は、第1の費用と第2の費用との比較結果に加え、さらに気象情報を加味して除塵作業を行うタイミングを判定してもよい。例えば第2の費用が第1の費用よりも高額であり、かつ、スクリーン異常の検出時の天候が強風や強雨等の気象警報が発生するような天候である場合、スクリーン異常の検出時から天候が回復する時点を、除塵作業を行うタイミングと判定してもよい。
【0043】
一方で、費用比較判定部123は、スクリーン異常の検出日が定例の除塵作業の実施日と同日になる場合を除き、第2の費用が第1の費用よりも低額である場合に、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行わないと判定してもよい。ただし、費用比較判定部123は、スクリーン異常の検出日が定例の除塵作業の実施日と同日になる場合、除塵作業タイミング判定処理を実行しない。定例の除塵作業の実施日は、スクリーン異常の発生の有無に関わらず、除塵作業が実施されることが決定しているためである。
【0044】
出力処理部130は、タイミング判定部12による判定結果を出力部50に出力する処理を実行する。例えば出力処理部130は、除塵作業を行うタイミングを文字情報としてディスプレイに表示してもよく、音声情報としてスピーカから発生させてもよい。
【0045】
次に、水力発電管理装置1による除塵作業タイミング判定処理の流れについて図3を参照しながら説明する。図3は、水力発電管理装置1の処理部10によって実行される除塵作業タイミング判定処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下の動作説明における処理の内容は一例であって、同様な結果を得ることが可能な様々な処理を適宜に利用できる。
【0046】
ステップS11において、スクリーン異常検出部11の水位情報取得部111は、水位調整機構6から水槽2の水位情報を取得する。
【0047】
ステップS12において、処理部10は、スクリーン異常検出部11によってスクリーン異常が検出されたか否かを判定する。処理部10は、スクリーン異常が検出されたと判定した場合(ステップS12;YES)、処理をステップS13に移行させる。一方で、処理部10は、スクリーン異常が検出されたと判定した場合(ステップS12;NO)、処理をステップS11に戻す。このとき、例えばスクリーン異常検出部11は、ステップS11で取得した水位情報に基づいてスクリーン異常が発生した否かを判定することでスクリーン異常を検出する。具体的には、スクリーン異常検出部11は、水槽2における下流側水位が上流側水位よりも所定値以上低い場合に、スクリーン異常が発生していると判定してもよい。
【0048】
ステップS13において、タイミング判定部12の第1の費用取得部121は、記憶部20や受信部30から第1の費用を取得する。
【0049】
ステップS14において、第2の費用特定部122は、ステップS12で検出したスクリーン異常時から定例の除塵作業時までの期間におけるスクリーン異常による発電機5の出力低下分に相当する第2の費用を特定する。例えば、第2の費用特定部122は、ステップS12で検出したスクリーン異常時から定例の除塵作業時までの期間と、記憶部20から抽出した発電単価と、発電機5の定格出力とスクリーン異常時の出力値との差分である発電機5の低下出力とに基づいて、第2の費用を特定してもよい。
【0050】
ステップS15において、費用比較判定部123は、ステップS13で取得した第1の費用と、ステップS14で特定した第2の費用とを比較し、除塵作業を行うタイミングを判定する。例えば費用比較判定部123は、第2の費用が第1の費用よりも高額である場合に、ステップS12のスクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定してもよい。一方で、費用比較判定部123は、スクリーン異常の検出日が定例の除塵作業の実施日と同日になる場合を除き、第2の費用が第1の費用以下である場合に、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行わずに、次の定例の除塵作業の実施日に除塵作業を行うと判定してもよい。
【0051】
ステップS16において、出力処理部130は、ステップS15で判定した除塵作業を行うタイミングを出力部50に出力する。例えば出力処理部130は、除塵作業を行うタイミングを文字情報等としてディスプレイに表示してもよく、音声情報としてスピーカから発生させてもよい。ステップS16の処理の後、水力発電管理装置1が実行する除塵作業タイミング判定処理が終了する。
【0052】
以上説明した実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0053】
本実施形態に係る水力発電管理装置1は、発電機5を駆動させる水を貯留する水槽2内に設けられ、発電機5側への塵芥dの入流を規制するスクリーン23を備える水力発電設備100に用いられる水力発電管理装置1であって、スクリーン23への塵芥dの付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出部11と、スクリーン異常検出部11によるスクリーン異常の検出時にスクリーン23に付着した塵芥dを除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間におけるスクリーン異常による発電機5の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定部12と、を備える。
【0054】
これにより、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行う場合の費用と、次の定例の除塵作業時まで除塵作業を行わずに発電を継続した場合の発電機5の出力低下による発電量の損失の両方を加味して、除塵作業のタイミングを自動的に求めることができる。よって、水力発電設備100の経済的な運用を支援できる。
【0055】
本実施形態に係る水力発電管理装置1において、タイミング判定部12は、第2の費用が第1の費用よりも高額である場合に、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定する。
【0056】
これにより、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行う場合の費用よりも、検出時に除塵作業を行わずに発電を継続した場合の出力低下による発電量の損失の方が高額である場合にスクリーン異常の検出時に除塵作業を行うと判定するので、より経済的な除塵作業のタイミングを確実に判定できる。
【0057】
本実施形態に係る水力発電管理装置1において、水槽2は、スクリーン23によって上流側領域21と下流側領域22に区画され、スクリーン異常検出部11は、上流側領域21の水位と下流側領域22の水位との水位差に基づいてスクリーン異常を検出する。
【0058】
これにより、スクリーン23への塵芥dの付着によるスクリーン異常を容易に検出できる。
【0059】
本実施形態に係る水力発電管理方法は、発電機5を駆動させる水を貯留する水槽2内に設けられ、発電機5側への塵芥dの入流を規制するスクリーン23を備える水力発電設備100に用いられる水力発電管理方法であって、スクリーン23への塵芥dの付着によって発生するスクリーン異常を検出するスクリーン異常検出ステップと、スクリーン異常検出ステップでスクリーン異常の検出時にスクリーン23に付着した塵芥dを除去する除塵作業を行う場合にかかる第1の費用と、スクリーン異常の検出時から予め定められた除塵作業時までの期間におけるスクリーン異常による発電機5の出力低下分に相当する第2の費用との比較結果に基づいて、除塵作業を行うタイミングを判定するタイミング判定ステップと、を含む。
【0060】
これにより、スクリーン異常の検出時に除塵作業を行う場合の費用と、次の定例の除塵作業時まで除塵作業を行わずに発電を継続した場合の発電機5の出力低下による発電量の損失の両方を加味して、除塵作業のタイミングを自動的に求めることができる。よって、水力発電設備100の経済的な運用を支援できる。
【0061】
以上、本発明に関する実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 水力発電管理装置
2 水槽
5 発電機
11 スクリーン異常検出部
12 タイミング判定部
100 水力発電設備
d 塵芥
図1
図2
図3