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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182112
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】除雪機
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/04 20060101AFI20231219BHJP
   E01H 5/09 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E01H5/04 D
E01H5/09 B
E01H5/09 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095522
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】根子 貴太
(57)【要約】
【課題】チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機を提供する。
【解決手段】制御部60は、除雪部の上昇を制御する上昇タイマー61と、除雪部の下降を制御する下降タイマー62とを備え、上昇タイマー61でカウントした上昇時間が目標上昇時間に達したら除雪部の上昇を完了し、下降タイマー62でカウントした下降時間が目標下降時間に達したら除雪部の下降を完了することにより、下降タイマー62及び上昇タイマー61で、除雪部の昇降を制御する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の動力により路面を走行する走行部と、
この走行部に傾動可能に取付けられ前記路面に積もる雪を除去する除雪部と、
前進位置と中立位置と後進位置に切替えられて前記走行部を前進、停止又は後進させる走行操作子と、
この走行操作子の位置の切替え情報を取得し、前記走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには前記除雪部を上昇し、前記走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには前記除雪部を下降する制御を実施する制御部とを備え、
除雪作業中、後進時に前記除雪部を自動的に上昇し、前進時に前記除雪部を自動的に下降することで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機であって、
前記制御部は、前記除雪部の上昇を制御する上昇タイマーと、前記除雪部の下降を制御する下降タイマーとを備え、
前記上昇タイマーでカウントした上昇時間が目標上昇時間に達したら前記除雪部の上昇を完了し、前記下降タイマーでカウントした下降時間が目標下降時間に達したら前記除雪部の下降を完了することにより、
前記下降タイマー及び前記上昇タイマーで、前記除雪部の昇降を制御することを特徴とする除雪機。
【請求項2】
請求項1記載の除雪機であって、
前記目標下降時間は、(直前に前記上昇タイマーでカウントした上昇時間)×(1.0未満の値)の算式で得た値に置き換えられることを特徴とする除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪作業中、後進時には除雪部を上へ自動的に逃がすことで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機に関する。以下の説明で「昇降」は「上昇」と「下降」を合わせた用語である。
【背景技術】
【0002】
雪国において除雪は重要である。手作業による除雪は大変であるため、除雪機の導入が望まれる。
【0003】
除雪機は、路面を走行する走行部と、路面の雪を除する除雪部とを備える。除雪部は走行部に昇降可能に取付けられている。
前進と後進とを繰り返すことで除雪作業を行うとき、後進時には、除雪部を路面から十分に離して、除雪部が積雪に当たらないようにする。
そのために、作業者は、前進時に除雪部を下降し、後進時に除雪部を上昇することを、繰り返す。この昇降は、除雪部昇降レバーを操作して実施する。
【0004】
作業者は、除雪部の昇降操作に加えて、走行速度の調節、前進と後進の操作、除雪方向の制御などを行うため、操作項目が多い。
そこで、作業者の負担軽減を目的として、除雪部の昇降を自動化する技術が提案されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1は除雪機に係り、この除雪機は除雪部に相当する車体フレームの傾動角度を検出するセンサ(具体的にはチルト角検出用センサ)を備えている。作業者が目標傾斜角度を設定する。
【0006】
後進時に、除雪部はチルト角検出用センサで計測した傾斜角度が、目標傾斜角度になるまで自動的に上昇する。
前進時に、除雪部は自動的に降ろされる。チルト角検出用センサで位置が監視されるため、除雪部は元の位置(高さ)に戻される。
【0007】
特許文献2は除雪機に係り、この除雪機は除雪部に相当するオーガハウジングに加速度センサを備えている。
加速度センサで検出した加速度に基づいて、オーガハウジングの傾き角(傾斜角度)が算出される。
【0008】
特許文献1と同様に、後進時に、除雪部は加速度センサで計測した傾斜角度が、目標傾斜角度になるまで自動的に上昇する。
前進時に、除雪部は自動的に降ろされる。加速度センサで位置が監視されるため、除雪部は元の位置(高さ)に戻される。
【0009】
以上に述べたように、後進時に自動的に除雪部を上昇させる除雪機は、除雪部の傾きを計測するチルト角検出用センサや加速度センサを搭載している。
チルト角検出用センサや加速度センサは、精密機器に属し、高価である。
加えて、オーガー等の除雪部が積雪(特に凍った雪)に食い込むとき、大きな反力を受ける。この反力は衝撃力である。精密機器は衝撃を受けると狂う。この狂いは定期的もしくは随時「校正」される。
【0010】
校正中は除雪作業を中断するため、除雪作業の能率が低下する。校正によりメンテナンス費用が嵩む。
作業能率の低下及びメンテナンス費用の発生が、自動的に除雪部を昇降させる除雪機の普及の障害になっている。
【0011】
そのため、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4319437号公報
【特許文献2】特許第6040139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、除雪機による除雪作業を検証する中で、次に述べる事項を見出した。
積雪の状態は、場所によって変化する。積雪の状態とは、積雪の高さ、密度、湿り具合などである。
除雪作業に慣れた作業者は、積雪の状態に応じて、除雪部の高さを調整する。すなわち、前進時に自動的に除雪部が元の位置に戻る除雪機においても、元の位置に戻った除雪部は、高さが微調整される。この微調整の頻度は大きい。
【0015】
本発明者らは、高さが微調整されるのであれば、除雪部は、元の位置へ正確に戻すことは必要がなく、だいたいの位置に戻すことで差し支えないことを、知見した。この知見に基づいて、次に述べる発明を完成するに至った。
【0016】
請求項1に係る発明は、駆動源の動力により路面を走行する走行部と、
この走行部に傾動可能に取付けられ前記路面に積もる雪を除去する除雪部と、
前進位置と中立位置と後進位置に切替えられて前記走行部を前進、停止又は後進させる走行操作子と、
この走行操作子の位置の切替え情報を取得し、前記走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには前記除雪部を上昇し、前記走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには前記除雪部を下降する制御を実施する制御部とを備え、
除雪作業中、後進時に前記除雪部を自動的に上昇し、前進時に前記除雪部を自動的に下降することで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機であって、
前記制御部は、前記除雪部の上昇を制御する上昇タイマーと、前記除雪部の下降を制御する下降タイマーとを備え、
前記上昇タイマーでカウントした上昇時間が目標上昇時間に達したら前記除雪部の上昇を完了し、前記下降タイマーでカウントした下降時間が目標下降時間に達したら前記除雪部の下降を完了することにより、
前記下降タイマー及び前記上昇タイマーで、前記除雪部の昇降を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の除雪機であって、
前記目標下降時間は、(直前に前記上昇タイマーでカウントした上昇時間)×(1.0未満の値)の算式で得た値に置き換えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、下降タイマー及び上昇タイマーで、除雪部の昇降を制御するようにした。
下降タイマー及び上昇タイマーは独立したデバイスの他、制御回路に組み込んだタイマー回路であってもよく、タイマーを設けることによるコスト上昇は僅かであり、除雪機の価格上昇が抑制される。
【0019】
加えて、タイマーは、衝撃を受けても狂うことはなく、校正の必要がない。校正のために除雪作業を中断する必要はなく、除雪作業の能率が高まる。
結果、本発明により、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機が提供される。
【0020】
請求項2に係る発明では、目標下降時間を、(直前に上昇タイマーでカウントした上昇時間)×(1.0未満の値)の算式で得た値に置き換えるようにした。
【0021】
(1.0未満の値)を乗じることにより、目標下降時間を、目標上昇時間より短く設定する。重力作用で、除雪部はゆっくり上がり、早く下がる。目標下降時間を、目標上昇時間より短く設定することにより、上昇開始時点の高さに、下降時の除雪部を戻すことができる。
【0022】
目標下降時間は、決まった値ではなく、(直前に上昇タイマーでカウントした上昇時間)の値に基づいて修正した値(変動値)とする。すなわち、目標下降時間を上昇時間の実測値×補正係数の算式で、常に修正するようにした。
【0023】
ところで、必ず目標上昇時間だけ除雪部を上昇させるときには、目標下降時間は固定値で差し支えない。
しかし、除雪部が上昇している途中で人為的に上昇を中断するときには、目標下降時間に基づいて除雪部を自動的に下降することはできない。除雪部が下がり過ぎるからである。このときは自動モードを解除し手動モードで除雪部を下降する必要がある。
【0024】
対して、本発明では、目標下降時間を、(直前に上昇タイマーでカウントした上昇時間)×(1.0未満の値)の算式で得た値に置き換えるようにしたので、除雪部を上昇している途中で、この上昇動作が中断されても、この中断の直前の高さに準じた目標下降時間に修正され、自動モードが維持される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る除雪部が上昇限にあるときの除雪機の側面図である。
図2】除雪部が下降限にあるときの除雪機の側面図である。
図3】除雪機の平面図である。
図4】運転盤の平面図である。
図5図4の5-5矢視図である。
図6】走行操作子の作用を説明する図であり、(a)は後進の作用を示す図であり、(b)は前進の作用を説明する図である。
図7】(a)はポテンショメータの回転角と出力電圧の相関を示すグラフであり、(b)は出力電圧と前後進の相関を示すグラフである。
図8】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図である。
図9】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
図10】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
図11】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
なお、以下の説明において、上下、前後、左右はハンドルのグリップ(図1、符号45L、45R)を握る作業者を基準に定める。
【実施例0027】
[除雪機]
図1に示すように、除雪機10は、路面11を走行する走行部20と、この走行部20に載っている除雪部30とからなる。なお、除雪部30は傾動支軸14を介して、走行部20に傾動可能に支持されている。
路面11は、道路面の他、道路脇の面、駐車場の地面、原野の地面など除雪機10が走行する面であればよく、種類は問わない。
【0028】
[走行部]
走行部20は、長手方向(図1では左右)に延びる走行部フレーム21と、この走行部フレーム21に回転可能に取付けられ駆動源32で回される駆動軸22と、この駆動軸22に取付けられ駆動軸22で回される駆動輪23と、走行部フレーム21に回転可能に取付けられる従動輪24及び遊転輪25と、これらに掛け渡されるクローラ26とからなる。クローラ26は接地面積が大きいため、雪道走行に好適である。
【0029】
駆動輪23及び従動輪24は、タイヤでもよい。タイヤであれば、クローラ26及び遊転輪25は不要となる。タイヤはバルーンタイヤが好ましい。バルーンタイヤは低圧空気で風船のように膨らませたタイヤであり、普通のタイヤより接地面積が大きいため、雪道走行に適している。
また、駆動輪23をタイヤとし、従動輪24をスキーにしてもよい。
よって、走行部20の構成は、実施例に限定されるものではない。
【0030】
[除雪部]
除雪部30は、傾動支軸14を兼ねる駆動軸22を介して走行部20に支持される除雪部フレーム31と、この除雪部フレーム31の略中央に設置される駆動源32としての内燃機関33と、除雪部フレーム31の前部に設けられブロア34を収納するブロアハウジング35と、このブロアハウジング35の底から下に延びるシュー36と、ブロアハウジング35の前部に一体形成されるオーガハウジング37と、このオーガハウジング37に収納され図面表裏方向へ延びるオーガー38と、ブロアハウジング35から上へ延びるシュータ39と、除雪部フレーム31の後部から上へ延びる左ハンドル41L(Lは左を示す添字である。以下同じ)及び右ハンドル41R(Rは右を示す添字である。以下同じ)と、左ハンドル41Lと右ハンドル41Rとの間に設けられた運転盤50と、右ハンドル41Rに取付けられた前照灯43とからなる。
【0031】
走行部フレーム21と除雪部フレーム31とに、昇降シリンダ44が渡されている。昇降シリンダ44は、電動油圧シリンダが好適である。
図1では、昇降シリンダ44は伸びている。昇降シリンダ44を縮めると、傾動支軸14を中心にして除雪部30が図面時計回りに傾動し、オーガー38が路面11に接近する。
【0032】
図2に示すように、シュー36が路面11に当たることで、除雪部30の下降限位置が定まる。内燃機関33の動力は、駆動輪23とブロア34とオーガー38との回転駆動に供される。
【0033】
左ハンドル41Lには、左グリップ45Lの上に走行クラッチレバー46が設けられ、左グリップ45Lの下に左操向レバー47Lが設けられている。右グリップ45Rの下に右操向レバー47Rが設けられている。
【0034】
内燃機関33と駆動輪23との間の駆動力伝達系に走行クラッチが設けられており、走行クラッチレバー46を握ると走行クラッチが接続され、離すと走行クラッチが断状態になる。
【0035】
走行クラッチレバー46が握られて駆動輪23が回されることで、除雪機10は前進又は後進する。
オーガー38は、回されることで、路面11に積もった雪12を幅寄せする。
ブロア34は、回されることで、幅寄せされた雪12を吸い込み、シュータ39へ吐出する。
雪12は、シュータ39を介して、所望の方向や場所へ捨てられる。
【0036】
なお、本実施例では、除雪部30の主要素をブロア34、オーガー38及びシュータ39としたが、平面視で「へ」字状や「―」状を呈するドーザー(雪押し板)であってもよい。よって、除雪部30は、実施例に限定されるものではない。
【0037】
また、駆動源32は、内燃機関33の他、電動機であってもよい。
さらに、内燃機関33は、ガソリンエンジンが好適であるが、ヂーゼルエンジンであってもよい。
【0038】
次に、図3に基づいて、操向(左旋回、直進、右旋回)について、説明する。
なお、左操向レバー47Lは、左グリップ45Lの真下にあって見えず、右操向レバー47Rは、右グリップ45Rの真下にあって見えないが、便宜上、見えるように描いた。
【0039】
運転盤50の中央に設けた走行操作子51としての走行変速レバー52で、前進、停止、後進を選択することができる。走行変速レバー52の詳細は後述する。
【0040】
走行変速レバー52の右に設けたシュータ旋回レバー53はジョイスティックであり、シュータ旋回レバー53を、左に倒すとシュータ39が左旋回し、右に倒すとシュータ39が右旋回し、上に倒すと投雪距離が「近」になるようにシュータ39が傾き、下に倒すと投雪距離が「遠」になるようにシュータ39が傾く。
その他のレバー類やボタン類は、図4で説明する。
【0041】
走行クラッチレバー46を握った状態で左操向レバー47Lを握ると、左クローラ26Lへの駆動力が断たれる。結果、右クラーラ26Rの前進作用により、除雪機10は左旋回する。
走行クラッチレバー46を握った状態で右操向レバー47Rを握ると、右クローラ26への駆動力が断たれる。結果、左クローラ26Lの前進作用により、除雪機10は右旋回する。
【0042】
走行クラッチレバー46を握った状態で左操向レバー47Lと右操向レバー47Rの両方を離すと、除雪機10は直進する。
走行クラッチレバー46を離す(戻す)と、走行は停止する。
【0043】
[運転盤]
図4に示すように、運転盤50には、走行変速レバー52及びシュータ旋回レバー53の他、除雪部調節レバー54と、除雪クラッチボタン55と、オートリフト切替ボタン56とが設けられている。
【0044】
除雪部調節レバー54は、除雪部30(正しくはオーガー38)の姿勢を調節するジョイスティックであり、中立位置から前(図では上)へ倒すとオーガー38が下降し、後(図では下)へ倒すとオーガー38が上昇し、左に倒すとオーガー38が左に傾動し、右に倒すとオーガー38が右に傾動する。
【0045】
除雪クラッチボタン55は、除雪を行うか行わないかを設定するプッシュボタンである。
駆動源とブロア及びオーガーとの間の駆動系に除雪クラッチが設けられており、この除雪クラッチを接続すると、除雪が行え、除雪クラッチを断状態にすると除雪は行えない。
【0046】
除雪クラッチボタン55は、「長押し」することでオーガー等が回転し、もう一度押すとオーガー等の回転が停止する。
回転中のオーガーに作業者や周囲の人が近づくことは禁止されている。そこで、作業者の手袋や袖が触れるなどして、除雪クラッチボタン55が短押しされても、オーガーが回転しないようにした。
オーガーの回転を止めるときには、安全側に推移するため、除雪クラッチボタン55は短押しで差し支えない。
【0047】
オートリフト切替ボタン56は、後進時に自動的に除雪部を上げ、前進時に自動的に除雪部を下げるという「オートリフトモードON」と、除雪部を自動的には昇降しない「オートリフトモードOFF」とを切替える照光式プッシュボタンである。
すなわち、オートリフト切替ボタン56は、押すと「オートリフトモードがON」になり、ボタンが発光する。
【0048】
オートリフト切替ボタン56を、もう一度押すと「オートリフトモードがOFF」になり、ボタンが消光する。
【0049】
[制御部]
運転盤50に、制御部60が付属されている。制御部60は、後述する制御フローを実施する。制御部60は、運転盤50に内蔵される他、運転盤50から離れた部位に置かれてもよい。
加えて、制御部60に、上昇タイマー61と下降タイマー62が含まれている。上昇タイマー61は独立したデバイスの他、制御回路に組み込んだタイマー回路であってもよい。下降タイマー62も同様である。
【0050】
制御部60に、目標上昇時間を設定する目標上昇時間設定器63と、目標下降時間を設定する目標下降時間設定器64と、補正係数を設定する補正係数設定器65が備えられている。
目標上昇時間設定器63は、独立したデバイスの他、プログラムに書き込むことでもよい。この場合は、プログラムを書き変えることで設定値を変更する。目標下降時間設定器64と補正係数設定器65も同様である。
【0051】
[走行変速レバー]
図4の5-5矢視図である図5に基づいて、走行変速レバー52を詳しく説明する。
図5に示すように、走行変速レバー52は、矩形状のメンバー67と、このメンバー67から上へ延びるスティック68と、このスティック68の上部に嵌められた握り69とからなる。
メンバー67は、ハンドル(図1、符号41L、41R)から延びるブラケットに支持ピン71を介して止められている。
【0052】
また、メンバー67には、支持ピン71から所定距離離れた部位に、ピン72が設けられている。
また、ハンドル(図1、符号41L、41R)から延びる部材に、ロータリー式ポテンショメータ73が設けられており、このメータ73のフォーク部74に、ピン72が嵌められている。
【0053】
また、ピン72には、スロットルワイヤ(又はスロットルロッド)75が連結されている。
【0054】
図4に示すように、走行変速レバー52の近くに、中立位置(走行停止)を意味する「N」と、前進位置を意味する「F」と、後進位置を意味する「R」が付されており、走行変速レバー52が「F」から「R」へ倒されるとき、及び「R」から「F」へ倒されるときには、必ず「N」を経由する。
【0055】
以上の構成からなる走行変速レバー52の作用を、図6に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、走行変速レバー52が「N」から「R」へ倒されると、ピン72が支持ピン71を中心に図反時計回りに回転し、結果、フォーク部74が図時計回りに角度θrだけ回転する。
同時に、スロットルワイヤ75が引かれ、除雪機10が後進する。スロットルワイヤ75の引き量に応じて、後進速度が後進低速から後進高速に変化する。
【0056】
図6(b)に示すように、走行変速レバー52が「N」から「F」へ倒されると、フォーク部74が図反時計回りに角度θfだけ、回転する。
同時に、スロットルワイヤ75が戻され(又は押され)、除雪機10が前進する。スロットルワイヤ75の戻し量(又は押し量)に応じて、前進速度が前進低速から前進高速に変化する。
【0057】
このときのロータリー式ポテンショメータ73の作用を、図7に基づいて説明する。
ポテンショメータは摺動型の可変抵抗であり、フォーク部の回転に基づいて出力電圧が変化する。
図7(a)は横軸にフォーク部の回転角を取り、縦軸にポテンショメータの出力電圧を取ったグラフである。
回転角の変化に正比例して出力電圧が直線的に変化する。すなわち、中立位置NでVnが出力され、回転角θfでVnより大きなVn+1が出力され、回転角θrでVnより小さなVn-1が出力される。
【0058】
この出力電圧が制御部(図4、符号60)へ送られる。制御部(図4、符号60)は、出力電圧に応じて前進、停止、後進を認識する。
すなわち、図7(b)に示すように、Vnで停止、VnとVn+1の間で前進、VnとVn-1の間で後進と認識する。
【0059】
図4に示す走行操作子51は、前と後と停止の走行方向を決める機能と、速度の増減(すなわち、速度変更)を決める機能を兼ね備えた走行変速レバー52が好適である。
しかし、走行レバーと変速レバーとは個別に備えてもよい。この場合は、前と後と停止の走行方向を決める走行レバーが、走行操作子51となる。
【0060】
走行操作子51は、ダイヤル式操作子やボタン式操作子でもよい。
例えば、ダイヤル式操作子は円弧状の目盛り板と、ダイヤルと、回転式ポテンショメータとからなり、目盛り板に後進、停止、前進を印字しておき、ダイヤルを停止目盛りから前進目盛りへ回すと前進し且つ前進速度が増し、停止目盛りから後進目盛りへ回すと後進し且つ後進速度が増す。
したがって、走行操作子51は、走行変速レバー52に限定されるものではない。
【0061】
本発明に係る制御部(図4、符号60)は、通常の除雪制御に加えて、除雪部昇降制御を実施する。この除雪部昇降制御の制御フローを、図8図11に基づいて説明する。
なお、制御フロー図において、横長の六角形は、菱形と同様の選択用チャート記号であり、記号内の文字数が多いときに使用する。
【0062】
[制御部の作用]
図8図11において、STはステップ番号を示す。
図8のST01にて、除雪部調節レバー(図4、符号54)の位置を判別する。
除雪部調節レバーが中立でなければ、(手動リフトモード)となり、手動で設定された位置に基づいて、除雪部は上昇/下降/左傾動/右傾動の何れかが実施される(ST02)。
【0063】
除雪部調節レバーが中立であれば、ST03でオートリフト切替ボタン(図4、符号56)が押されてオートリフトモードであるか否かを調べる。
オートリフトモードであれば、ST04で、目標上昇時間Tumaxと、目標下降時間Tdmaxと、補正係数αとを設定するか又は変更する否かを問う。αは1.0未満の数値であり、除雪部を試験的に昇降して定められる値である。
【0064】
YESであれば、ST05で目標上昇時間Tumaxと、目標下降時間Tdmaxと、補正係数αとの一つ又は複数を設定又は変更する。この設定又は変更は設定器類(図4、符号63~65)で行うか、プログラムを書き換えることで実施する。
【0065】
次に、ST06で、除雪クラッチボタン(図4、符号55)の状態を調べる。
除雪クラッチボタンを長押しするとONとなり、オーガーが回転する。
除雪クラッチボタンをもう一度押すとOFFとなり、オーガーは回転を停止する。
【0066】
ST06でNOであれば、オーガーは停止したままで除雪は行わないため、ST07でフラグ類及びタイマー類をクリアし、フローのトップに戻る。
なお、ST01でNOのとき及びST03でNOのときも、ST07へ進む。
【0067】
ST06でYESであれば、ST08で、走行変速レバー(図4、符号52)の位置情報を読み込む。位置情報とは、走行変速レバーが、中立位置から前進位置へ切替わったか、中立位置から後進位置へ切替わったか、前進位置にあるか、中立位置にあるか、後進位置にあるかの情報である。
【0068】
図9は、図8に続く制御フロー図である。
図9のST09で、走行変速レバーが、中立位置→前進位置に切り替わったか否かを調べる。
ST10で、走行変速レバーが、中立位置→後進位置に切り替わったか否かを調べる。
【0069】
制御フローを繰り返す中で、自動上昇完了フラグは、セットされたり、クリアされたりする。
そこで、前進と判断されたときは、ST11で自動上昇完了フラグの有無を調べる。自動上昇完了フラグが有る(セットされている)ときには、ST12で自動上昇完了フラグをクリアし、ST13で自動下降フラグをセットし、ST14で下降時間Tdに「0」を与えることで下降タイマーをクリアする。
【0070】
ST10で中立位置→後進位置と判断されたら、ST15で自動上昇フラグをセットし、ST16で上昇時間Tuに「0」を与えることで上昇タイマーをクリアする。
【0071】
図10は、図9に続く制御フロー図である。
図10のST17で自動上昇フラグが有る(セットされている)ことが確認できたら、ST18で走行変速レバーが後進位置にあることを確認する。
確認できたら、上昇タイマーのカウントを開始し(ST19)、上昇時間Tuを記憶する(ST20)。
【0072】
ST21で、計測し累積した上昇時間Tuが、目標上昇時間Tumaxに達したか否かを調べる。ST16で上昇タイマーがクリアされたため、暫くは否である。
否であれば、除雪部を上昇駆動し(ST22)、自動制御中フラグをセットし(ST23)、トップに戻る。
【0073】
ST21でYESになると、除雪部の上昇が完了と判断され、自動上昇フラグをクリアし(ST24)、自動上昇完了フラグをセットする(ST25)。
ST21でYESになるときは、そのときまでに実測した上昇時間Tuは目標上昇時間Tumaxに実質的に等しい。
【0074】
または、ST21がYESになる前に、ST18でNO(除雪部の上昇の途中で走行変速レバーの位置が中立位置や前進位置に替えられた。)になると、自動上昇フラグをクリアし(ST24)、自動上昇完了フラグをセットする(ST25)。
ST18がNOのときは、そのときまでに実測した上昇時間Tuは目標上昇時間Tumaxより短い。
【0075】
そこで、ST26では、目標下降時間Tdmaxに、(Tumax)×αを置き換えずに、Tu×αを置き換える。αは1.0未満の値である。
これにより、上昇動作が途中で中断されても、この中断の直前の高さに準じた目標下降時間Tdmaxに修正される。
【0076】
ST27で除雪部の昇降を停止し、ST28で自動制御中フラグをクリアし、トップに戻る。
ST24で自動上昇フラグがクリアされたときには、次回のST17でNOとなり、図11へ進む。
【0077】
図11図10に続く制御フロー図である。
図11のST29で自動下降フラグが有る(セットされている)ことが確認できたら、ST30で走行変速レバーが前進位置にあることを確認する。
確認できたら、下降タイマーのカウントを開始し(ST31)、下降時間Tdを記憶する(ST32)。
【0078】
ST33で、計測し累積した下降時間Tdが、目標下降時間Tdmaxに達したか否かを調べる。ST14で下降タイマーがクリアされたため、暫くは否である。
否であれば、除雪部を下降駆動し(ST34)、自動制御中フラグをセットし(ST35)、トップに戻る。
【0079】
ST33でYESになると、除雪部の下降が完了と判断され、自動下降フラグをクリアし(ST36)、除雪部の昇降を停止し(ST37)、自動制御中フラグをクリアし(ST38)、トップに戻る。
ST29でNOのときは、除雪部の下降を行わないため、ST37、ST38に進む。
【0080】
以上に述べた作用の中で重要な作用は、次の通りである。
図9のST10でYESであれば、ST15で「自動上昇フラグ」がセットされ、図10のST17でYESとなり、ST18でYESとなり、ST22で除雪部は上昇駆動される。
よって、制御部は、走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには除雪部を上昇する制御を実施する。
【0081】
また、図10のST21でYES(又はST18でNO)であれば、ST24で「自動上昇フラグ」がクリアされ、ST25で「自動上昇完了フラグ」がセットされる。
次に、図9のST09でYESであれば、ST11でYESとなり、ST13で「自動下降フラグ」がセットされ、図10のST17でNOとなり、図11のST29でYESとなり、ST30でYESとなり、ST34で除雪部は下降駆動される。
よって、制御部は、走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには除雪部を下降する制御を実施する。
【0082】
従来技術及び本発明において、自動的に下降された作業部(オーガー)の高さを、作業者の意志で、微調整することがある。
図8図11で説明した制御フローが繰り返される中、作業者の手で除雪部調節レバー(図4、符号54)が中立からそれ以外の位置、例えば上昇(又は下降)に切替えられると、図8のST01でNOとなり、ST02で昇降部が上昇(又は下降)されて高さの微調整がなされ、ST07を経てトップに戻る。
【0083】
作業者の手で除雪部調節レバーが中立に戻されると、ST03以降の制御フローが実行される。すなわち、作業者の意志で作業部の高さの微調整を行っても、オートリフトモードは(キャンセルされることなく)維持される。オートリフト切替ボタンを押し直す必要はない。
【0084】
すなわち、本発明によれば、オートリフトモードを維持しつつ、手動リフトモードを割り込ませることができ、随時、昇降部の上昇、下降、左傾動、右傾動が実施でき、除雪機の作業性が高まる。
【0085】
以上に述べた本発明は、次に述べる長所を有している。
第1に、除雪部の自動昇降を、上昇タイマーと下降タイマーとで制御することである。
従来、この種の制御に、チルト角検出用センサや加速度センサが採用されてきた。チルト角検出用センサや加速度センサは、除雪部の高さを常時モニターすることができ、上昇開始時点の高さに下降時の除雪部を正確に戻すことができるという利点を有する。反面、チルト角検出用センサや加速度センサは、高価であることに加えて精密機器であるため除雪時の衝撃力で狂いがちであるという短所を有する。
【0086】
対して、本発明では、上昇タイマーと下降タイマーとを採用した。タイマーは制御回路に含めることが可能であり、殆どコストアップにはならない。加えて、タイマーは除雪時の衝撃力で狂うことはない。
【0087】
第2に、(1.0未満の値である補正係数α)を乗じることで、目標下降時間を、目標上昇時間より短く設定した。
重力作用で、除雪部はゆっくり上がり、早く下がる。目標下降時間を、目標上昇時間より短く設定することにより、上昇開始時点の高さに、下降時の除雪部をほぼ正確に戻すことができる。
【0088】
加えて、目標下降時間は、目標上昇時間ではなく、上昇時間の実測値を採用した。
除雪部を上昇している途中で、この上昇動作が中断されても、この中断の直前の高さに準じた目標下降時間に修正されるからである。
【0089】
すなわち、長所の第2では、目標下降時間を、(直前に上昇タイマーでカウントした上昇時間)×(1.0未満の値)の算式で得た値に置き換えるようにしたので、除雪部を上昇している途中で、この上昇動作が中断されても、この中断の直前の高さに準じた目標下降時間に修正され、自動モードが維持される。
【0090】
尚、実施例では、傾動支軸14は、駆動軸22と兼用したが、駆動軸22とは別に設けてもよい。要は、除雪部30が、傾動支軸14を介して走行部20に傾動可能に支持されていればよく、駆動軸22と兼ねるか、駆動軸22とは別に設けるかは任意である。
【0091】
また、実施例では、除雪機10は、作業者がグリップ45L、45Rを握った状態で路面11を歩行する「歩行型除雪機」とした。しかし、本発明を作業者が載って操作する「乗用型除雪機」に適用することや、作業者が無線又は有線コントローラで操作する「遠隔操縦型除雪機」に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、前進と後進とを繰り返しつつ除雪を行う除雪機に好適である。
【符号の説明】
【0093】
10…除雪機、11…路面、12…雪、20…走行部、30…除雪部、32…駆動源、51…走行操作子、60…制御部、61…上昇タイマー、62…下降タイマー、Td…下降タイマーでカウントした下降時間、Tu…上昇タイマーでカウントした上昇時間、Tdmax…目標下降時間、Tumax…目標上昇時間、α…補正係数。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11