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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182113
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】除雪機
(51)【国際特許分類】
   E01H 5/04 20060101AFI20231219BHJP
   E01H 5/09 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E01H5/04 D
E01H5/09 B
E01H5/09 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095523
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】592226729
【氏名又は名称】和同産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋介
(72)【発明者】
【氏名】根子 貴太
(57)【要約】
【課題】チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を下降させることができる除雪機を提供する。
【解決手段】ハンドル(41L)と除雪部フレーム(31)との間に、除雪部が所定位置へ下降したことを検知する下降検知機構(80)が設けられ、この下降検知機構(80)は、リミットスイッチ(110)を備え、このリミットスイッチ(110)は、接点を内蔵し、接点が切替わったら除雪部の下降を完了することにより、リミットスイッチ(110)で除雪部の下降を制御する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源の動力により路面を走行する走行部と、
この走行部に傾動支軸を介して傾動可能に取付けられ前記路面に積もる雪を除去する除雪部と、
前進位置と中立位置と後進位置に切替えられて前記走行部を前進、停止又は後進させる走行操作子と、
この走行操作子の位置の切替え情報を取得し、前記走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには前記除雪部を上昇し、前記走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには前記除雪部を下降する制御を実施する制御部とを備え、
除雪作業中、後進時に前記除雪部を自動的に上昇し、前進時に前記除雪部を自動的に下降することで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機であって、
前記走行部と前記除雪部との間に、前記除雪部が所定位置へ下降したことを検知する下降検知機構が設けられ、
この下降検知機構は、リミットスイッチを備え、このリミットスイッチは、接点を内蔵し、
前記制御部は、前記除雪部の上昇を制御する上昇タイマーを備え、
前記上昇タイマーでカウントした上昇時間が目標上昇時間に達したら前記除雪部の上昇を完了し、前記接点が切替わったら前記除雪部の下降を完了することにより、
前記上昇タイマー及び前記リミットスイッチで、前記除雪部の昇降を制御することを特徴とする除雪機。
【請求項2】
請求項1記載の除雪機であって、
前記下降検知機構は、前記除雪部と前記走行部の一方に取付けられる第1ヒンジと、この第1ヒンジに回転自在に取付けられ前記リミットスイッチが取付けられるスイッチ支持部材と、このスイッチ支持部材に立てられる細長いガイドメンバーと、
前記除雪部と前記走行部の他方に取付けられる第2ヒンジと、この第2ヒンジに回転自在に取付けられる細長プレートとからなり、
前記細長プレートは、前記ガイドメンバーが嵌められる長穴を有すると共に前記接点に作用するカム部を有し、
前記除雪部に取付けられた前記第1ヒンジ又は前記第2ヒンジは、前記傾動支軸を中心として円弧運動するが、この円弧運動は、前記ガイドメンバーと前記長穴とにより直線運動に変換され、前記カム部が、直線運動をするように構成されていることを特徴とする除雪機。
【請求項3】
請求項2記載の除雪機であって、
前記スイッチ支持部材は、前記リミットスイッチが取付けられる第1支持板と、前記ガイドメンバーが取付けられると共に前記リミットスイッチを通過させることができる大きさの通孔とが設けられている第2支持板と、前記第1支持板に前記第2支持板を重ねた状態で前記第1支持板に前記第2支持板を固定する1本の締結ボルトとからなり、
前記第2支持板に、前記第1ヒンジ又は前記第2ヒンジに係合する係合部が設けられ、
前記第1支持板に、前記第2支持板の側面を相対的に案内する案内部が設けられ、この案内部は、前記カム部と前記リミットスイッチとの相互位置を調整するときに前記第1支持板が移動される方向へ延びていることを特徴とする除雪機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除雪作業中、後進時には除雪部を上へ自動的に逃がすことで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機に関する。以下の説明で「昇降」は「上昇」と「下降」を合わせた用語である。
【背景技術】
【0002】
雪国において除雪は重要である。手作業による除雪は大変であるため、除雪機の導入が望まれる。
【0003】
除雪機は、路面を走行する走行部と、路面の雪を除する除雪部とを備える。除雪部は走行部に昇降可能に取付けられている。
前進と後進とを繰り返すことで除雪作業を行うとき、後進時には、除雪部を路面から十分に離して、除雪部が積雪に当たらないようにする。
そのために、作業者は、前進時に除雪部を下降し、後進時に除雪部を上昇することを、繰り返す。この昇降は、除雪部昇降レバーを操作して実施する。
【0004】
作業者は、除雪部の昇降操作に加えて、走行速度の調節、前進と後進の操作、除雪方向の制御などを行うため、操作項目が多い。
そこで、作業者の負担軽減を目的として、除雪部の昇降を自動化する技術が提案されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献1は除雪機に係り、この除雪機は除雪部に相当する車体フレームの傾動角度を検出するセンサ(具体的にはチルト角検出用センサ)を備えている。作業者が目標傾斜角度を設定する。
【0006】
後進時に、除雪部はチルト角検出用センサで計測した傾斜角度が、目標傾斜角度になるまで自動的に上昇する。
前進時に、除雪部は自動的に降ろされる。チルト角検出用センサで位置が監視されるため、除雪部は元の位置(高さ)に戻される。
【0007】
特許文献2は除雪機に係り、この除雪機は除雪部に相当するオーガハウジングに加速度センサを備えている。
加速度センサで検出した加速度に基づいて、オーガハウジングの傾き角(傾斜角度)が算出される。
【0008】
特許文献1と同様に、後進時に、除雪部は加速度センサで計測した傾斜角度が、目標傾斜角度になるまで自動的に上昇する。
前進時に、除雪部は自動的に降ろされる。加速度センサで位置が監視されるため、除雪部は元の位置(高さ)に戻される。
【0009】
以上に述べたように、後進時に自動的に除雪部を上昇させる除雪機は、除雪部の傾きを計測するチルト角検出用センサや加速度センサを搭載している。
チルト角検出用センサや加速度センサは、精密機器に属し、高価である。
加えて、オーガー等の除雪部が積雪(特に凍った雪)に食い込むとき、大きな反力を受ける。この反力は衝撃力である。精密機器は衝撃を受けると狂う。この狂いは定期的もしくは随時「校正」される。
【0010】
校正中は除雪作業を中断するため、除雪作業の能率が低下する。校正によりメンテナンス費用が嵩む。
作業能率の低下及びメンテナンス費用の発生が、自動的に除雪部を上昇させる除雪機の普及の障害になっている。
【0011】
そのため、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第4319437号公報
【特許文献2】特許第6040139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、除雪機による除雪作業を検証する中で、次に述べる事項を見出した。
積雪の状態は、場所によって変化する。積雪の状態とは、積雪の高さ、密度、湿り具合などである。
除雪作業に慣れた作業者は、積雪の状態に応じて、除雪部の高さを調整する。すなわち、前進時に自動的に除雪部が元の位置に戻る除雪機においても、元の位置に戻った除雪部は、高さが微調整される。この微調整の頻度は大きい。
【0015】
本発明者らは、高さが微調整されるのであれば、除雪部は、元の位置へ正確に戻すことは必要がなく、だいたいの位置に戻すことで差し支えないことを、知見した。この知見に基づいて、次に述べる発明を完成するに至った。
【0016】
請求項1に係る発明は、駆動源の動力により路面を走行する走行部と、
この走行部に傾動支軸を介して傾動可能に取付けられ前記路面に積もる雪を除去する除雪部と、
前進位置と中立位置と後進位置に切替えられて前記走行部を前進、停止又は後進させる走行操作子と、
この走行操作子の位置の切替え情報を取得し、前記走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには前記除雪部を上昇し、前記走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには前記除雪部を下降する制御を実施する制御部とを備え、
除雪作業中、後進時に前記除雪部を自動的に上昇し、前進時に前記除雪部を自動的に下降することで、作業者の負担を軽減するようにした除雪機であって、
前記走行部と前記除雪部との間に、前記除雪部が所定位置へ下降したことを検知する下降検知機構が設けられ、
この下降検知機構は、リミットスイッチを備え、このリミットスイッチは、接点を内蔵し、
前記制御部は、前記除雪部の上昇を制御する上昇タイマーを備え、
前記上昇タイマーでカウントした上昇時間が目標上昇時間に達したら前記除雪部の上昇を完了し、前記接点が切替わったら前記除雪部の下降を完了することにより、
前記上昇タイマー及び前記リミットスイッチで、前記除雪部の昇降を制御することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の除雪機であって、
前記下降検知機構は、前記除雪部と前記走行部の一方に取付けられる第1ヒンジと、この第1ヒンジに回転自在に取付けられ前記リミットスイッチが取付けられるスイッチ支持部材と、このスイッチ支持部材に立てられる細長いガイドメンバーと、
前記除雪部と前記走行部の他方に取付けられる第2ヒンジと、この第2ヒンジに回転自在に取付けられる細長プレートとからなり、
前記細長プレートは、前記ガイドメンバーが嵌められる長穴を有すると共に前記接点に作用するカム部を有し、
前記除雪部に取付けられた前記第1ヒンジ又は前記第2ヒンジは、前記傾動支軸を中心として円弧運動するが、この円弧運動は、前記ガイドメンバーと前記長穴とにより直線運動に変換され、前記カム部が、直線運動をするように構成されていることを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の除雪機であって、
前記スイッチ支持部材は、前記リミットスイッチが取付けられる第1支持板と、前記ガイドメンバーが取付けられると共に前記リミットスイッチを通過させることができる大きさの通孔とが設けられている第2支持板と、前記第1支持板に前記第2支持板を重ねた状態で前記第1支持板に前記第2支持板を固定する1本の締結ボルトとからなり、
前記第2支持板に、前記第1ヒンジ又は前記第2ヒンジに係合する係合部が設けられ、
前記第1支持板に、前記第2支持板の側面を相対的に案内する案内部が設けられ、この案内部は、前記カム部と前記リミットスイッチとの相互位置を調整するときに前記第1支持板が移動される方向へ延びていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明では、上昇タイマーで、除雪部の上昇を制御するようにした。
上昇タイマーは独立したデバイスの他、制御回路に組み込んだタイマー回路であってもよく、タイマーを設けることによるコスト上昇は僅かであり、除雪機の価格上昇が抑制される。
また、本発明では、リミットスイッチで、除雪部の下降を制御するようにした。リミットスイッチは、汎用品であって入手が容易で且つ安価である。
加えて、リミットスイッチは、構造が単純で、衝撃力を受けても狂うことはなく、除雪機に適している。
【0020】
本発明は、このような上昇タイマーとリミットスイッチとで、除雪部の昇降を制御するようにした。
結果、本発明により、チルト角検出用センサや加速度センサを用いることなく、自動的に除雪部を昇降させることができる除雪機が提供される。
【0021】
請求項2に係る発明では、リミットスイッチを要部とする下降検知機構は、第1ヒンジと、スイッチ支持部材と、ガイドメンバーと、第2ヒンジと、細長プレートとからなり、細長プレートは、リミットスイッチの接点に作用するカム部を有する。この構成により、カム部は直線運動をする。
仮に、カム部が円弧軌跡上を移動すると、円弧軌跡を考慮してリミットスイッチの位置を調整する必要があり、リミットスイッチの調整が難しくなる。
対して、本発明では、カム部は直線上を移動するため、リミットスイッチの位置の調整が容易になる。
【0022】
請求項3に係る発明では、リミットスイッチが取付けられる第1支持板と、この第1支持板に重ねる第2支持板と、第1支持板に第2支持板を固定する締結ボルトとでスイッチ支持部材を構成すると共に、第1支持板に、第2支持板を相対的に案内する案内部を設けたので、締結ボルトは1本のみで足りる。
加えて、調整の一環としてリミットスイッチの位置を変更するときに、案内部の作用により、リミットスイッチを安定した状態で直線的に移動することができ、調整作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る除雪部が上昇限にあるときの除雪機の側面図である。
図2】除雪部が下降限にあるときの除雪機の側面図である。
図3】除雪機の平面図である。
図4】運転盤の平面図である。
図5図4の5-5矢視図である。
図6】走行操作子の作用を説明する図であり、(a)は後進の作用を示す図であり、(b)は前進の作用を説明する図である。
図7】(a)はポテンショメータの回転角と出力電圧の相関を示すグラフであり、(b)は出力電圧と前後進の相関を示すグラフである。
図8】(a)は図1の8a部拡大図、(b)は図2の8b部拡大図である。
図9】下部検知機構の分解斜視図である。
図10】リミットスイッチの断面図である。
図11】下部検知機構の正面図である。
図12図11の12-12線断面図である。
図13】(a)~(c)は下部検知機構の変更例を説明する断面図である。
図14】(a)、(b)は下部検知機構の更なる変更例を説明する図である。
図15】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図である。
図16】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
図17】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
図18】制御部で実施する除雪部昇降制御のフロー図(続き)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
なお、以下の説明において、上下、前後、左右はハンドルのグリップ(図1、符号45L、45R)を握る作業者を基準に定める。
【実施例0025】
[除雪機]
図1に示すように、除雪機10は、路面11を走行する走行部20と、この走行部20に載っている除雪部30とからなる。なお、除雪部30は傾動支軸14を介して、走行部20に傾動可能に支持されている。
路面11は、道路面の他、道路脇の面、駐車場の地面、原野の地面など除雪機10が走行する面であればよく、種類は問わない。
【0026】
加えて、走行部20と除雪部30との間に、除雪部30が所定位置へ下降したことを検知する下降検知機構80が設けられている。この下降検知機構80の詳細構造及び作用は、後述する。
【0027】
下降検知機構80の設置位置は任意である。
ただし、走行フレーム21の長手方向中間と除雪部フレーム31の長手方向中間との間(昇降シリンダ44の近傍)に配置すると、路面11に近くなり、雪の影響を受けやすい。
【0028】
そこで、本実施例では、下降検知機構80を、除雪部フレーム31の上に配置した。この配置により、下降検知機構80は路面11から十分に離れる。下降検知機構80は、比較的高い位置にあるため、点検や調整が容易になる。
【0029】
好ましくは、除雪部フレーム31の後部と、走行フレーム21の後部から上へ延びるハンドル41L、41R(Lは左を示す添字であり、Rは右を示す添字である。以下同じ)との間に且つハンドル41L、41Rの後方に、下降検知機構80を設ける。
【0030】
下降検知機構80は、オーガー38から十分遠い部位に設けられるため、オーガー38が受ける衝撃力は除雪部フレーム31を通る間に十分に減衰される。
加えて、下降検知機構80は、ハンドル41L、41Rの後方に設けられているため、点検や調整は更に容易になる。
【0031】
[走行部]
走行部20は、長手方向(図1では左右)に延びる走行部フレーム21と、この走行部フレーム21に回転可能に取付けられ駆動源32で回される駆動軸22と、この駆動軸22に取付けられ駆動軸22で回される駆動輪23と、走行部フレーム21に回転可能に取付けられる従動輪24及び遊転輪25と、これらに掛け渡されるクローラ26とからなる。クローラ26は接地面積が大きいため、雪道走行に好適である。
【0032】
駆動輪23及び従動輪24は、タイヤでもよい。タイヤであれば、クローラ26及び遊転輪25は不要となる。タイヤはバルーンタイヤが好ましい。バルーンタイヤは低圧空気で風船のように膨らませたタイヤであり、普通のタイヤより接地面積が大きいため、雪道走行に適している。
また、駆動輪23をタイヤとし、従動輪24をスキーにしてもよい。
よって、走行部20の構成は、実施例に限定されるものではない。
【0033】
[除雪部]
除雪部30は、傾動支軸14を兼ねる駆動軸22を介して走行部20に支持される除雪部フレーム31と、この除雪部フレーム31の略中央に設置される駆動源32としての内燃機関33と、除雪部フレーム31の前部に設けられブロア34を収納するブロアハウジング35と、このブロアハウジング35の底から下に延びるシュー36と、ブロアハウジング35の前部に一体形成されるオーガハウジング37と、このオーガハウジング37に収納され図面表裏方向へ延びるオーガー38と、ブロアハウジング35から上へ延びるシュータ39と、除雪部フレーム31の後部から上へ延びる左ハンドル41L及び右ハンドル41Rと、左ハンドル41Lと右ハンドル41Rとの間に設けられた運転盤50と、右ハンドル41Rに取付けられた前照灯43とからなる。
【0034】
走行部フレーム21と除雪部フレーム31とに、昇降シリンダ44が渡されている。昇降シリンダ44は、電動油圧シリンダが好適である。
図1では、昇降シリンダ44は伸びている。昇降シリンダ44を縮めると、傾動支軸14を中心にして除雪部30が図面時計回りに傾動し、オーガー38が路面11に接近する。
【0035】
図2に示すように、シュー36が路面11に当たることで、除雪部30の下降限位置が定まる。内燃機関33の動力は、駆動輪23とブロア34とオーガー38との回転駆動に供される。
【0036】
左ハンドル41Lには、左グリップ45Lの上に走行クラッチレバー46が設けられ、左グリップ45Lの下に左操向レバー47Lが設けられている。右グリップ45Rの下に右操向レバー47Rが設けられている。
【0037】
内燃機関33と駆動輪23との間の駆動力伝達系に走行クラッチが設けられており、走行クラッチレバー46を握ると走行クラッチが接続され、離すと走行クラッチが断状態になる。
【0038】
走行クラッチレバー46が握られて駆動輪23が回されることで、除雪機10は前進又は後進する。
オーガー38は、回されることで、路面11に積もった雪12を幅寄せする。
ブロア34は、回されることで、幅寄せされた雪12を吸い込み、シュータ39へ吐出する。
雪12は、シュータ39を介して、所望の方向や場所へ捨てられる。
【0039】
なお、本実施例では、除雪部30の主要素をブロア34、オーガー38及びシュータ39としたが、平面視で「へ」字状や「―」状を呈するドーザー(雪押し板)であってもよい。よって、除雪部30は、実施例に限定されるものではない。
【0040】
また、駆動源32は、内燃機関33の他、電動機であってもよい。
さらに、内燃機関33は、ガソリンエンジンが好適であるが、ヂーゼルエンジンであってもよい。
【0041】
次に、図3に基づいて、操向(左旋回、直進、右旋回)について、説明する。
なお、左操向レバー47Lは、左グリップ45Lの真下にあって見えず、右操向レバー47Rは、右グリップ45Rの真下にあって見えないが、便宜上、見えるように描いた。
【0042】
運転盤50の中央に設けた走行操作子51としての走行変速レバー52で、前進、停止、後進を選択することができる。走行変速レバー52の詳細は後述する。
【0043】
走行変速レバー52の右に設けたシュータ旋回レバー53はジョイスティックであり、シュータ旋回レバー53を、左に倒すとシュータ39が左旋回し、右に倒すとシュータ39が右旋回し、上に倒すと投雪距離が「近」になるようにシュータ39が傾き、下に倒すと投雪距離が「遠」になるようにシュータ39が傾く。
その他のレバー類やボタン類は、図4で説明する。
【0044】
走行クラッチレバー46を握った状態で左操向レバー47Lを握ると、左クローラ26Lへの駆動力が断たれる。結果、右クラーラ26Rの前進作用により、除雪機10は左旋回する。
走行クラッチレバー46を握った状態で右操向レバー47Rを握ると、右クローラ26への駆動力が断たれる。結果、左クローラ26Lの前進作用により、除雪機10は右旋回する。
【0045】
走行クラッチレバー46を握った状態で左操向レバー47Lと右操向レバー47Rの両方を離すと、除雪機10は直進する。
走行クラッチレバー46を離す(戻す)と、走行は停止する。
【0046】
[運転盤]
図4に示すように、運転盤50には、走行変速レバー52及びシュータ旋回レバー53の他、除雪部調節レバー54と、除雪クラッチボタン55と、オートリフト切替ボタン56とが設けられている。
【0047】
除雪部調節レバー54は、除雪部30(正しくはオーガー38)の姿勢を調節するジョイスティックであり、中立位置から前(図では上)へ倒すとオーガー38が下降し、後(図では下)へ倒すとオーガー38が上昇し、左に倒すとオーガー38が左に傾動し、右に倒すとオーガー38が右に傾動する。
【0048】
除雪クラッチボタン55は、除雪を行うか行わないかを設定するプッシュボタンである。
駆動源とブロア及びオーガーとの間の駆動系に除雪クラッチが設けられており、この除雪クラッチを接続すると、除雪が行え、除雪クラッチを断状態にすると除雪は行えない。
【0049】
除雪クラッチボタン55は、「長押し」することでオーガー等が回転し、もう一度押すとオーガー等の回転が停止する。
回転中のオーガーに作業者や周囲の人が近づくことは禁止されている。そこで、作業者の手袋や袖が触れるなどして、除雪クラッチボタン55が短押しされても、オーガーが回転しないようにした。
オーガーの回転を止めるときには、安全側に推移するため、除雪クラッチボタン55は短押しで差し支えない。
【0050】
オートリフト切替ボタン56は、後進時に自動的に除雪部を上げ、前進時に自動的に除雪部を下げるという「オートリフトモードON」と、除雪部を自動的には昇降しない「オートリフトモードOFF」とを切替える照光式プッシュボタンである。
すなわち、オートリフト切替ボタン56は、押すと「オートリフトモードがON」になり、ボタンが発光する。
【0051】
オートリフト切替ボタン56を、もう一度押すと「オートリフトモードがOFF」になり、ボタンが消光する。
【0052】
[制御部]
運転盤50に、制御部60が付属されている。制御部60は、後述する制御フローを実施する。制御部60は、運転盤50に内蔵される他、運転盤50から離れた部位に置かれてもよい。
加えて、制御部60に、上昇タイマー61と下降タイマー62が含まれている。上昇タイマー61は独立したデバイスの他、制御回路に組み込んだタイマー回路であってもよい。下降タイマー62も同様である。
【0053】
制御部60に、目標上昇時間を設定する目標上昇時間設定器63と、監視降下時間を設定する監視降下時間設定器64とが備えられている。
目標上昇時間設定器63は、独立したデバイスの他、プログラムに書き込むことでもよい。この場合は、プログラムを書き変えることで設定値を変更する。監視降下時間設定器64も同様である。
【0054】
[走行変速レバー]
図4の5-5矢視図である図5に基づいて、走行変速レバー52を詳しく説明する。
図5に示すように、走行変速レバー52は、矩形状のメンバー67と、このメンバー67から上へ延びるスティック68と、このスティック68の上部に嵌められた握り69とからなる。
メンバー67は、ハンドル(図1、符号41L、41R)から延びるブラケットに支持ピン71を介して止められている。
【0055】
また、メンバー67には、支持ピン71から所定距離離れた部位に、ピン72が設けられている。
また、ハンドル(図1、符号41L、41R)から延びる部材に、ロータリー式ポテンショメータ73が設けられており、このメータ73のフォーク部74に、ピン72が嵌められている。
【0056】
また、ピン72には、スロットルワイヤ(又はスロットルロッド)75が連結されている。
【0057】
図4に示すように、走行変速レバー52の近くに、中立位置(走行停止)を意味する「N」と、前進位置を意味する「F」と、後進位置を意味する「R」が付されており、走行変速レバー52が「F」から「R」へ倒されるとき、及び「R」から「F」へ倒されるときには、必ず「N」を経由する。
【0058】
以上の構成からなる走行変速レバー52の作用を、図6に基づいて説明する。
図6(a)に示すように、走行変速レバー52が「N」から「R」へ倒されると、ピン72が支持ピン71を中心に図反時計回りに回転し、結果、フォーク部74が図時計回りに角度θrだけ回転する。
同時に、スロットルワイヤ75が引かれ、除雪機10が後進する。スロットルワイヤ75の引き量に応じて、後進速度が後進低速から後進高速に変化する。
【0059】
図6(b)に示すように、走行変速レバー52が「N」から「F」へ倒されると、フォーク部74が図反時計回りに角度θfだけ、回転する。
同時に、スロットルワイヤ75が戻され(又は押され)、除雪機10が前進する。スロットルワイヤ75の戻し量(又は押し量)に応じて、前進速度が前進低速から前進高速に変化する。
【0060】
このときのロータリー式ポテンショメータ73の作用を、図7に基づいて説明する。
ポテンショメータは摺動型の可変抵抗であり、フォーク部の回転に基づいて出力電圧が変化する。
図7(a)は横軸にフォーク部の回転角を取り、縦軸にポテンショメータの出力電圧を取ったグラフである。
回転角の変化に正比例して出力電圧が直線的に変化する。すなわち、中立位置NでVnが出力され、回転角θfでVnより大きなVn+1が出力され、回転角θrでVnより小さなVn-1が出力される。
【0061】
この出力電圧が制御部(図4、符号60)へ送られる。制御部(図4、符号60)は、出力電圧に応じて前進、停止、後進を認識する。
すなわち、図7(b)に示すように、Vnで停止、VnとVn+1の間で前進、VnとVn-1の間で後進と認識する。
【0062】
図4に示す走行操作子51は、前と後と停止の走行方向を決める機能と、速度の増減(すなわち、速度変更)を決める機能を兼ね備えた走行変速レバー52が好適である。
しかし、走行レバーと変速レバーとは個別に備えてもよい。この場合は、前と後と停止の走行方向を決める走行レバーが、走行操作子51となる。
【0063】
走行操作子51は、ダイヤル式操作子やボタン式操作子でもよい。
例えば、ダイヤル式操作子は円弧状の目盛り板と、ダイヤルと、回転式ポテンショメータとからなり、目盛り板に後進、停止、前進を印字しておき、ダイヤルを停止目盛りから前進目盛りへ回すと前進し且つ前進速度が増し、停止目盛りから後進目盛りへ回すと後進し且つ後進速度が増す。
したがって、走行操作子51は、走行変速レバー52に限定されるものではない。
【0064】
[下降検知機構]
図8(a)は図1の8a部拡大図であり、図8(b)は図2の8b部拡大図である。
下降検知機構80は、除雪部フレーム31の後部と、ハンドル41L、41Rから後方へ延ばしたブラケット81との間に、略縦向きに掛け渡されている。
下降検知機構80の構造は、やや分かり難いため、図9図12を用いて詳しく説明する。
【0065】
図9に示すように、下降検知機構80は、リミットスイッチ110と、スイッチ支持部材82と、細長プレート85と、細長いガイドメンバー86と、第1ヒンジ87と、第2ヒンジ88と、1本の締結ボルト89と、2本のガイド固定ボルト91とからなる。
【0066】
リミットスイッチ110は、機械的動作を電気信号に変換する機構の総称であって、マイクロスイッチと呼ばれる小型のリミットスイッチを含む。
【0067】
スイッチ支持部材82は、1枚の平板でもよいが、この例では、第1支持板83と、第2支持板84とで構成した。
リミットスイッチ110は、第1支持板83に取付けられる。
【0068】
第1支持板83は、下部に縦長の長穴92を有し、左側部に図面手前へ折り曲げて形成した案内部93を有する。
第2支持板84は、リミットスイッチ110が通過し得る大きさの矩形の通孔94を有し、締結ボルト89を通すボルト穴95を有し、第1ヒンジピン96を通す第1ピン穴97を有し、左側部に図面手前へ折り曲げ成形した折り曲げ部98を有し、ガイド固定ボルト91に対応するボルト穴99を有する。
第1ピン穴97は、第2支持板84を第1ヒンジ87に係合する係合部である。
【0069】
細長プレート85は、十分に長い長穴101を有し、左側部にカム部102を有し、上部に第2ヒンジピン103を通す第2ピン穴104を有する。
ガイドメンバー86は、長穴101に相対的に嵌められる部材であって、ガイド固定ボルト91で第2支持板84に固定される。
【0070】
図10に示すように、リミットスイッチ110は、例えば、マイクロスイッチであって、筐体111と、この筐体111を貫通するプランジャ112と、このプランジャ112を押し戻すリターンばね113と、筐体111に収納されプランジャ112で押される接点114と、筐体111の外に配置されるレバー115と、このレバー115を筐体111の外面に止めるヒンジ116とからなる。
【0071】
接点114にリターン機能が含まれているときは、リターンばね113は不要となる。
また、リミットスイッチ110は、筐体111を大型化し、接点114をマイクロスイッチ(図10からレバー115とヒンジ116を除いた形態のプランジャタイプのスイッチ)に置き換えてもよい。この構造の場合、リミットスイッチ110は、大型になるが、マイクロスイッチを筐体111で保護するため、耐久性や耐候性が高まる。
【0072】
レバー115が外力で押されると、プランジャ112が押され、接点114が「ON」になる。
外力が除かれると、リターンばね113のリターン作用により、プランジャ112及びレバー115が戻り、接点114が「OFF」に戻る。
このような構造のリミットスイッチ110は、ヒンジレバータイプと呼ばれるスイッチである。
【0073】
リミットスイッチ110は、汎用品であって入手が容易で且つ安価である。
加えて、リミットスイッチ110は、構造が単純で、非精密機器であって、衝撃力を受けても狂うことはなく、耐衝撃性能が要求される除雪機に適している。
【0074】
リミットスイッチ110は、図10からヒンジ116及びレバー115を除いた形態のプランジャタイプのスイッチでもよい。
また、リミットスイッチ110は、後述の図14で説明する回転レバータイプのスイッチであってもよい。
よって、リミットスイッチ110は、図10の構造に限定されない。
【0075】
図9に示した複数の構成要素を、組み立てた後の姿は、図11に示す通りである。
図11において、細長プレート85が静止していると仮定すると、スイッチ支持部材82が昇降する。
スイッチ支持部材82が図面上へ移動すると、リミットスイッチ110のレバー115がカム部102で押され始める。
【0076】
図1に示すように、除雪部30が上昇するときには、除雪部フレーム31は、傾動支軸14を中心に図面反時計回りに回転し、除雪部フレーム31の後端が下がる。
図8(a)に示すように、除雪部フレーム31に固定された第1ヒンジ87と、ブラケット81に固定された第2ヒンジ88とは十分に離れている。
【0077】
図1において、除雪部30を下降させると、除雪部フレーム31は、傾動支軸14を中心に図面時計回りに回転する。
結果、図8(b)に示すように、第1ヒンジ87が第2ヒンジ88に接近し、リミットスイッチ110のレバー115がカム部102で押される。
【0078】
図8(a)から図8(b)へ変化する過程で、スイッチ支持部材82は、第1ヒンジ87を中心に図面反時計回りに回転し、細長プレート85も、第1ヒンジ87を中心に図面反時計回りに回転する。
【0079】
リミットスイッチ110が、いわゆるフローチング支持されているため、リミットスイッチ110に連結するハーネス(電線)は、可撓性が求められという短所があるものの、リミットスイッチ110のレバー115に、カム部102が直線的に接離するため、リミットスイッチ110の作動が安定し作動の信頼性が高まるという長所がある。
【0080】
なお、図8(a)、(b)において、第1ヒンジ87及び第2ヒンジ88と共に下降検知機構80を180°回転(いわゆる天地を逆に)し、第1ヒンジ87をブラケット81に固定し、第2ヒンジ88を除雪部フレーム31に固定してもよい。
【0081】
図11において、カム部102に対して、レバー115の位置を調整することがある。
このときには、1本の締結ボルト89を緩める。次に、第2支持板84に対して、第1支持板83を上又は下へ移動する。この移動により、レバー115は上又は下へ移動する。調整が終わったら、締結ボルト89を締める。
【0082】
この実施例では、第1支持板83に案内部93を一体形成したために、次に述べる利点が生じる。
先ず、第1支持板83の案内部93が、第2支持板84で案内されるため、第1支持板83の移動が直線的になる。
【0083】
次に、第2支持板84が、不都合に回転しないことである。
締結ボルト89が1本である場合、締結の末期に、偶力により、第2支持板84が時計方向に僅かに回転する。
しかし、この実施例では、案内部93が回り止め作用を発揮するため、不都合が回転は起こらない。
結果、締結ボルト89は1本のみで済ませることができ、部品点数の増加を抑制することができる。
【0084】
図11の12-12線断面図を、図12に示す。
図12に示すように、ガイドメンバー86により、細長プレート85が左右に振れることなく、相対的に図面表裏方向に移動する。
また、第1支持板83の左側端が、折り曲げ形成されて案内部93とされているが、第1支持板83はL字断面とされているため、断面係数が大きくなり、曲げ剛性が高くなる。結果、第1支持板83を薄くしても所望の剛性が確保でき、第1支持板83の軽量化が可能となる。
【0085】
同様に、第2支持板84の左側端が、折り曲げ形成されて折り曲げ部98とされているが、第2支持板84はL字断面とされているため、断面係数が大きくなり、曲げ剛性が高くなる。結果、第2支持板84を薄くしても所望の剛性が確保でき、第2支持板84の軽量化が可能となる。
【0086】
また、案内部93の先端とガイド固定ボルト91の先端とを結ぶ線118の内側に、リミットスイッチ110が収まっている。
仮に、雪の塊などの物体が、リミットスイッチ110に接近したとすると、この物体はかなりの確率で案内部93やガイド固定ボルト91で阻止され、リミットスイッチ110に至らない。よって、リミットスイッチ110が傷むことはない。
【0087】
なお、第1支持板83と第2支持板84との形態は、次に説明するように適宜変更することができる。
図13(a)に示すように、第2支持板84は単なる平板としてもよく、平板状の第2支持板84の左端面を、案内部93に相対的に当てるようにしてもよい。
【0088】
また、図13(b)に示すように、第1支持板83の左右両端を折り曲げて左右の案内部93とし、これらの案内部93で平板状の第2支持板84を相対的に案内するようにしてもよい。
また、図13(c)に示すように、案内部93は、第1支持板83に溶接やボルトで付設した角棒であってもよい。
【0089】
次に、本発明に係る下降検知機構80の変更例を、図14(a)、(b)に基づいて説明する。
図14(a)に示すように、下降検知機構80は、ハンドル41L、41Rから後方に延びるブラケット81と、このブラケット81に取付けられたリミットスイッチ110と、除雪部フレーム31の後部に立てられたサポート119と、このサポート119の上端に取付けられたストライカーボルト121とからなる。
【0090】
リミットスイッチ110は、回転レバータイプのリミットスイッチであって、回転レバー122を回すと、この回転が内蔵カムにより直線運動に変換され、プランジャ(図10、符号112)を押し、接点(図10、符号114)に作用する。
【0091】
除雪部が下降すると、除雪部フレーム31の後部が上昇し、ストライカーボルト121が円弧を描きつつ上昇する。円弧は、図1に示す傾動支軸14を中心に描かれる。
すると、図14(b)に示すように、ストライカーボルト121が回転レバー122を回す。
ストライカーボルト121が離れると、回転レバー122は図14(a)の状態に戻る。
【0092】
図14(a)ではリミットスイッチ110はオフ状態であり、図14(b)ではリミットスイッチ110はオン状態になる。
よって、リミットスイッチ110は、マイクロスイッチ、回転レバータイプのスイッチ、図10に示したヒンジレバータイプと呼ばれるスイッチ、その他(プランジャタイプのスイッチ)でもよく、形式は任意である。
【0093】
ただし、図14(a)、(b)に示す下降検知機構80の調整は、ストライカーボルト121の上げ/下げと、リミットスイッチ110の水平移動との組み合わせによる。対して、ストライカーボルト121の移動軌跡が円弧である。ストライカーボルト121の上げ/下げと、リミットスイッチ110の水平移動との組み合わせと、円弧軌跡とは相性がよくなくため、調整が煩雑となり、調整時間が伸びる。
【0094】
折角調整してもハンドル41L、41Rが歪むなどすると、図14(b)において、ストライカーボルト121と回転レバー122の接触点が変化し、この変化が著しいときは回転レバー122にストライカーボルト121が当たらない(いわゆる空振りとなる)ことがある。
この点、図8(a)、(b)に示す構造であれば、ハンドル41L、41Rが歪んでも、レバー115とカム部102との相関が維持され、空振りが起こることはなく、下降検知機構80の信頼性が保たれる。
【0095】
本発明に係る制御部(図4、符号60)は、通常の除雪制御に加えて、除雪部昇降制御を実施する。この除雪部昇降制御の制御フローを、図15図18に基づいて説明する。
なお、制御フロー図において、横長の六角形は、菱形と同様の選択用チャート記号であり、記号内の文字数が多いときに使用する。
【0096】
[制御部の作用]
図15図18において、STはステップ番号を示す。
図15のST01にて、除雪部調節レバー(図4、符号54)の位置を判別する。
除雪部調節レバーが中立でなければ、(手動リフトモード)となり、手動で設定された位置に基づいて、除雪部は上昇/下降/左傾動/右傾動の何れかが実施される(ST02)。
【0097】
除雪部調節レバーが中立であれば、ST03でオートリフト切替ボタン(図4、符号56)が押されてオートリフトモードであるか否かを調べる。
オートリフトモードであれば、ST04で、目標上昇時間Tumaxと、監視降下時間Twatchとを設定するか又は変更する否かを問う。
【0098】
除雪部の昇降実験を行い、下降時間を計測する。得られた下降時間に、(1.2~1.5)を乗じた値を、監視降下時間Twatchとする。
【0099】
ST04でYESであれば、ST05で目標上昇時間Tumaxと、監視降下時間Twatchとの一つ又は複数を設定又は変更する。この設定又は変更は設定器類(図4、符号63、64)で行うか、プログラムを書き換えることで実施する。
【0100】
次に、ST06で、除雪クラッチボタン(図4、符号55)の状態を調べる。
除雪クラッチボタンを長押しするとONとなり、オーガーが回転する。
除雪クラッチボタンをもう一度押すとOFFとなり、オーガーは回転を停止する。
【0101】
ST06でNOであれば、オーガーは停止したままで除雪は行わないため、ST07でフラグ類及びタイマー類をクリアし、フローのトップに戻る。
なお、ST01でNOのとき及びST03でNOのときも、ST07へ進む。
【0102】
ST06でYESであれば、ST08で、走行変速レバー(図4、符号52)の位置情報を読み込む。位置情報とは、走行変速レバーが、中立位置から前進位置へ切替わったか、中立位置から後進位置へ切替わったか、前進位置にあるか、中立位置にあるか、後進位置にあるかの情報である。
【0103】
図16は、図15に続く制御フロー図である。
図16のST09で、走行変速レバーが、中立位置→前進位置に切り替わったか否かを調べる。
ST10で、走行変速レバーが、中立位置→後進位置に切り替わったか否かを調べる。
【0104】
制御フローを繰り返す中で、自動上昇完了フラグは、セットされたり、クリアされたりする。
そこで、前進と判断されたときは、ST11で自動上昇完了フラグの有無を調べる。自動上昇完了フラグが有る(セットされている)ときには、ST12で自動上昇完了フラグをクリアし、ST13で自動下降フラグをセットし、ST14で下降時間Tdに「0」を与えることで下降タイマーをクリアする。
【0105】
ST10で中立位置→後進位置と判断されたら、ST15で自動上昇フラグをセットし、ST16で上昇時間Tuに「0」を与えることで上昇タイマーをクリアする。
【0106】
図17は、図16に続く制御フロー図である。
図17のST17で自動上昇フラグが有る(セットされている)ことが確認できたら、ST18で走行変速レバーが後進位置にあることを確認する。
確認できたら、上昇タイマーのカウントを開始し(ST19)、上昇時間Tuを記憶する(ST20)。
【0107】
ST21で、計測し累積した上昇時間Tuが、目標上昇時間Tumaxに達したか否かを調べる。ST16で上昇タイマーがクリアされたため、暫くは否である。
否であれば、除雪部を上昇駆動し(ST22)、自動制御中フラグをセットし(ST23)、トップに戻る。
【0108】
ST21でYESになると、除雪部の上昇が完了と判断され、自動上昇フラグをクリアし(ST24)、自動上昇完了フラグをセットする(ST25)。
ST21でYESになるときは、そのときまでに実測した上昇時間Tuは目標上昇時間Tumaxに実質的に等しい。
【0109】
または、ST21がYESになる前に、ST18でNO(除雪部の上昇の途中で走行変速レバーの位置が中立位置や前進位置に替えられた。)になると、自動上昇フラグをクリアし(ST24)、自動上昇完了フラグをセットする(ST25)。
ST18がNOのときは、そのときまでに実測した上昇時間Tuは目標上昇時間Tumaxより短い。
【0110】
ST26で除雪部の昇降を停止し、ST27で自動制御中フラグをクリアし、トップに戻る。
ST24で自動上昇フラグがクリアされたときには、次回のST17でNOとなり、図18へ進む。
【0111】
図18図17に続く制御フロー図である。
図18のST28で自動下降フラグが有る(セットされている)ことが確認できたら、ST29で走行変速レバーが前進位置にあることを確認する。
確認できたら、ST30でリミットスイッチがONであるか否かを調べる。除雪部の上昇開始から暫くはリミットスイッチはOFFである。
ST30でNOであれば、下降タイマーのカウントを開始し(ST31)、下降時間Tdを記憶する(ST32)。
【0112】
ST33で、計測し累積した下降時間Tdが、監視降下時間Twatchに達したか否かを調べる。ST14で下降タイマーがクリアされたため、暫くは否である。
否であれば、除雪部を下降駆動し(ST34)、自動制御中フラグをセットし(ST35)、トップに戻る。
【0113】
ST30でYES(リミットスイッチがON)になると、除雪部の下降が完了と判断され、自動下降フラグをクリアし(ST37)、除雪部の昇降を停止し(ST38)、自動制御中フラグをクリアし(ST39)、トップに戻る。
ST28でNOのときは、除雪部の下降を行わないため、ST38、ST39に進む。
【0114】
ところで、図11において、リミットスイッチ110が故障することはあり得る。また、図14(b)において、固定しているボルトが緩み、リミットスイッチ110が図面右に移動し、ストライカーボルト121が回転レバー122に当たらなくなる(空振りする)ことがあり得る。何れにおいても、除雪部は下降を続ける。
【0115】
異常(故障や空振り)のときには、ST33でYESとなり、ST36でリミットスイッチが異常であることを表示し、ST38で除雪部の下降を停止する。
結果、リミットスイッチ110に異常が発生しても、ST33で異常を検知し、除雪部が過剰に下降する(又は昇降シリンダ(図2、符号44)が過負荷状態になる)ことを未然に防止することができる。
【0116】
以上に述べた作用の中で重要な作用は、次の通りである。
図16のST10でYESであれば、ST15で「自動上昇フラグ」がセットされ、図17のST17でYESとなり、ST18でYESとなり、ST22で除雪部は上昇駆動される。
よって、制御部は、走行操作子が中立位置から後進位置へ切替えられたときには除雪部を上昇する制御を実施する。
【0117】
また、図17のST21でYES(又はST18でNO)であれば、ST24で「自動上昇フラグ」がクリアされ、ST25で「自動上昇完了フラグ」がセットされる。
次に、図16のST09でYESであれば、ST11でYESとなり、ST13で「自動下降フラグ」がセットされ、図17のST17でNOとなり、図18のST28でYESとなり、ST29でYESとなり、ST34で除雪部は下降駆動される。
よって、制御部は、走行操作子が後進位置から中立位置を経て前進位置へ切替えられたときには除雪部を下降する制御を実施する。
【0118】
従来技術及び本発明において、自動的に下降された作業部(オーガー)の高さを、作業者の意志で、微調整することがある。
図15図18で説明した制御フローが繰り返される中、作業者の手で除雪部調節レバー(図4、符号54)が中立からそれ以外の位置、例えば上昇(又は下降)に切替えられると、図15のST01でNOとなり、ST02で昇降部が上昇(又は下降)されて高さの微調整がなされ、ST07を経てトップに戻る。
【0119】
作業者の手で除雪部調節レバーが中立に戻されると、ST03以降の制御フローが実行される。すなわち、作業者の意志で作業部の高さの微調整を行っても、オートリフトモードは(キャンセルされることなく)維持される。オートリフト切替ボタンを押し直す必要はない。
【0120】
すなわち、本発明によれば、オートリフトモードを維持しつつ、手動リフトモードを割り込ませることができ、随時、昇降部の上昇、下降、左傾動、右傾動が実施でき、除雪機の作業性が高まる。
【0121】
尚、実施例では、傾動支軸14は、駆動軸22と兼用したが、駆動軸22とは別に設けてもよい。要は、除雪部30が、傾動支軸14を介して走行部20に傾動可能に支持されていればよく、駆動軸22と兼ねるか、駆動軸22とは別に設けるかは任意である。
【0122】
また、実施例では、除雪機10は、作業者がグリップ45L、45Rを握った状態で路面11を歩行する「歩行型除雪機」とした。しかし、本発明を作業者が載って操作する「乗用型除雪機」に適用することや、作業者が無線又は有線コントローラで操作する「遠隔操縦型除雪機」に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、前進と後進とを繰り返しつつ除雪を行う除雪機に好適である。
【符号の説明】
【0124】
10…除雪機、11…路面、12…雪、14…傾動支軸、20…走行部、30…除雪部、32…駆動源、51…走行操作子、60…制御部、61…上昇タイマー、80…下降検知機構、82…スイッチ支持部材、83…第1支持板、84…第2支持板、85…細長プレート、86…ガイドメンバー、87…第1ヒンジ、88…第2ヒンジ、89…締結ボルト、93…案内部、94…通孔、97…係合部(第1ピン穴)、101…長穴、102…カム部、110…リミットスイッチ、114…接点、Tu…上昇タイマーでカウントした上昇時間、Tumax…目標上昇時間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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