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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182132
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】セルロース繊維体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20231219BHJP
【FI】
D04H1/425
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095553
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小池 尚志
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047BA12
4L047BC01
4L047EA11
(57)【要約】
【課題】加熱時間を短縮可能なセルロース繊維体の製造方法を提供する。
【解決手段】セルロース繊維体の製造方法は、解繊されたセルロース繊維と澱粉とを混合し、ウェブを形成するウェブ形成工程と、前記ウェブに対して、溶存空気量が低減された脱気水を付与する脱気水付与工程と、前記脱気水が付与された前記ウェブを成形型に入れて前記ウェブを加圧した状態で、前記ウェブをマイクロ波で加熱する加熱・加圧工程と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維体の製造方法であって、
解繊されたセルロース繊維と澱粉とを混合し、ウェブを形成するウェブ形成工程と、
前記ウェブに対して、溶存空気量が低減された脱気水を付与する脱気水付与工程と、
前記脱気水が付与された前記ウェブを成形型に入れて前記ウェブを加圧した状態で、前記ウェブをマイクロ波で加熱する加熱・加圧工程と、を含むセルロース繊維体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセルロース繊維体の製造方法であって、
前記加熱・加圧工程における前記成形型は樹脂である、セルロース繊維体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のセルロース繊維体の製造方法であって、
前記加熱・加圧工程における前記成形型は、第1プレス型と、前記第1プレス型とともに前記ウェブを加圧する第2プレス型と、を有し、
前記第1プレス型及び前記第2プレス型のうち、一方のプレス型のプレス面は平坦面を有し、他方のプレス型は前記ウェブに含まれる水分を逃がす水抜き穴を有する、セルロース繊維体の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載のセルロース繊維体の製造方法であって、
前記加熱・加圧工程の後に、前記ウェブを再びマイクロ波で加熱して前記ウェブを乾燥させる乾燥工程を含む、セルロース繊維体の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のセルロース繊維体の製造方法であって、
前記加熱・加圧工程の後に、前記ウェブを冷却する冷却工程を含む、セルロース繊維体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、繊維と結合剤とを混合させてシートを製造するシート製造装置が知られている。当該シート製造装置では、結合剤として石油由来の樹脂が使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-131912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、環境負荷低減のため、結合剤の脱石油化が望まれる。
また、例えば、繊維及び結合剤を含む混合物を上下金型でプレスしながら加熱する構成では、混合物が厚くなると内部まで十分に加熱する必要があるため、加熱時間が延びてしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
セルロース繊維体の製造方法は、解繊されたセルロース繊維と澱粉とを混合し、ウェブを形成するウェブ形成工程と、前記ウェブに対して、溶存空気量が低減された脱気水を付与する脱気水付与工程と、前記脱気水が付与された前記ウェブを成形型に入れて前記ウェブを加圧した状態で、前記ウェブをマイクロ波で加熱する加熱・加圧工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態にかかるセルロース繊維体製造装置の構成を示す概略図。
図2A】第1実施形態にかかる加熱・加圧部の構成を示す模式図。
図2B】第1実施形態にかかる加熱・加圧部の構成を示す模式図。
図3】第1実施形態にかかるセルロース繊維体の構成を示す模式図。
図4】第1実施形態にかかるセルロース繊維体の製造方法を示すフローチャート。
図5】第2実施形態にかかるセルロース繊維体製造装置の構成を示す概略図。
図6】第2実施形態にかかるセルロース繊維体の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
1.第1実施形態
まず、セルロース繊維体製造装置1の構成について説明する。セルロース繊維体製造装置1は、セルロース繊維体Sを製造する装置である。本実施形態のセルロース繊維体Sは、例えば、キノコ培地に好適である。
図1に示すように、セルロース繊維体製造装置1は、例えば、粗砕部10と、乾式解繊部20と、選別部30と、選別物搬送部40と、澱粉供給部50と、混合・堆積部60と、脱気水付与部90と、切断部100と、加熱・加圧部110とを含む。また、セルロース繊維体製造装置1は、これらの各部を制御する制御部(プロセッサー)を備える。
【0008】
粗砕部10は、供給された原料を、大気中等の気中で裁断して粗砕物を生成する。粗砕物の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。粗砕部10は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断する。粗砕部10としては、例えば、シュレッダーを用いることができる。粗砕部10によって裁断された粗砕物は、ホッパー16で受けてから管17を介して、乾式解繊部20に移送される。
ここで、本実施形態で用いられる原料は、紙、段ボール、パルプ、パルプシート、おがくず、かんなくず、木材等である。
【0009】
乾式解繊部20は、乾式で粗砕物(原料)を解繊してセルロース繊維(単に、繊維とも称する)を生成する。ここで、液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。乾式解繊部20において解繊処理されたものを解繊物ともいう。乾式解繊部20としては、例えば、インペラーミルを用いる。乾式解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有する。これにより、乾式解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。乾式解繊部20を通過した解繊物は、管28を介して、選別部30に移送される。なお、乾式解繊部20から選別部30に解繊物を搬送させるための気流は、乾式解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0010】
選別部30は、乾式解繊部20により解繊された解繊物を導入口32から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部30は、分離ドラム31と、分離ドラム31を収容するハウジング部33と、を有する。分離ドラム31は、繊維を繊維長で選別するものであり、例えば、篩を用いる。分離ドラム31は、網であり、複数の開口を有する。そして、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子、すなわち網を通過する第1選別物と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ、すなわち網を通過しない第2選別物と、を分けることができる。第1選別物は、選別物搬送部40に移送される。第2選別物は、排出口34から管36を介して、ホッパー16に戻され再び乾式解繊部20に投入される。分離ドラム31は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。分離ドラム31の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0011】
選別物搬送部40は、選別部30によって選別された第1選別物を堆積させて下流に搬送する。選別物搬送部40は、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、サクション機構48と、を有する。
【0012】
サクション機構48は、分離ドラム31によって空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積される。
【0013】
メッシュベルト46は、張架ローラー47によって張架され、第1選別物を通し難く空気を通す構成となっている。メッシュベルト46は、張架ローラー47が自転することによって移動する。メッシュベルト46が連続的に移動しながら、選別部30を通過した第1選別物が連続的に降り積もる。
【0014】
サクション機構48は、メッシュベルト46の下方に設けられる。サクション機構48は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構48によって、選別部30により空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。これにより、選別部30から排出される第1選別物の排出速度を大きくすることができる。
【0015】
メッシュベルト46に堆積された第1選別物は、下流に搬送される。第1選別物は、メッシュベルト46の第1選別物の搬送経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に配置されたホッパー55に投入される。ホッパー55に投入された第1選別物は管56を介して混合・堆積部60に移送される。
【0016】
選別部30と混合・堆積部60との間には、澱粉を供給する澱粉供給部50が配置される。澱粉供給部50には、粒状の澱粉が収容され、供給口52を介して澱粉がホッパー55に投入される。これにより、第1選別物と澱粉とが管56を介して混合・堆積部60に移送される。なお、ブロアー等により第1選別物と澱粉とを移送してもよい。
【0017】
澱粉は、セルロース繊維同士を結合させる結合剤である。澱粉は、水分と熱とが加えられると糊化する。糊化した澱粉は、セルロール繊維同士を結合させる。澱粉は、天然系の結合剤であるため、環境負荷の低減を図ることができる。
【0018】
混合・堆積部60は、原料の第1選別物と澱粉とを導入口72から導入し、第1選別物(セルロース繊維)と澱粉とを混合して混合物を生成する。そして、混合物に含まれるセルロース繊維をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。混合・堆積部60は、第1選別物と澱粉とが混合した混合物を均一性よく堆積させ、ウェブWを形成する。
【0019】
混合・堆積部60は、堆積ドラム71及び堆積ドラム71を収容するハウジング部73を有する。堆積ドラム71は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。堆積ドラム71の回転により、第1選別物と澱粉とが混合して混合物が生成される。堆積ドラム71は、網であり、複数の開口を有する。堆積ドラム71は、網の目開きのより小さい繊維や澱粉を通過させ、混合物を堆積させる。
【0020】
また、混合・堆積部60は、メッシュベルト82、ローラー84、及びサクション機構86を有する。メッシュベルト82は、堆積ドラム71の下方に配置される。サクション機構86は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構86によって、堆積ドラム71により空気中に分散された混合物をメッシュベルト82上に吸引することができる。これにより、堆積ドラム71から排出される混合物の排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構86によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に繊維同士が絡み合うことを防ぐことができる。メッシュベルト82上には、堆積ドラム71を通過した混合物が堆積して、ウェブWが形成される。
【0021】
メッシュベルト82は、無端形状のベルトであって、複数のローラー84に張架され、ローラー84の自転により、メッシュベルト82が連続的に移動し、ウェブWが下流側に搬送される。メッシュベルト82は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。メッシュベルト82の表面は、所定サイズの開口が並ぶ網で構成されている。堆積ドラム71から降下するセルロース繊維や粒子のうち、網の目を通過するサイズの微粒子は、メッシュベルト82の下方に落下し、網の目を通過できないサイズのセルロース繊維及び澱粉がメッシュベルト82に堆積してウェブWが形成される。ウェブWはメッシュベルト82の移動に伴って下流方向に搬送される。
【0022】
メッシュベルト82におけるウェブWの搬送方向下流には脱気水付与部90が配置される。脱気水付与部90は、メッシュベルト82によって搬送されるウェブWに向けて脱気水を付与する。本実施形態の脱気水付与部90は、ウェブWの上方に配置され、ウェブWの一方面に向けて脱気水を付与する。脱気水付与部90では、例えば、脱気水をミストとして噴霧する。脱気水は、溶存空気量が低減された水である。例えば、ポンプ等を用いて水に含まれる空気を除去することで脱気水が生成される。脱気水における溶存空気量は、例えば、6mg/L以下である。脱気水をウェブWに付与することにより、ウェブW内部に含まれる空気を溶かしながら浸透する。これにより、ウェブWの内部に脱気水が容易に浸透し、ウェブW全体に対して均一に水分を付与することができる。
【0023】
脱気水付与部90の下流には切断部100が配置される。切断部100は、脱気水が付与されたウェブWを切断する。これにより、単票のウェブWaが形成される。
【0024】
切断部100の下流には加熱・加圧部110が配置される。加熱・加圧部110は、ウェブWaを加圧しながら加熱してセルロース繊維体Sを形成する。
図2A及び図2Bに示すように、加熱・加圧部110は、成形型111と、マイクロ波発生部115と、成形型111及びマイクロ波発生部115を収容する枠体118と、を備える。
【0025】
成形型111は、樹脂で形成される。成形型111は、例えば、ポリオレフィンで形成される。さらに詳細には、ポリメチルペンテンで形成される。なお、成形型111は、フッ素樹脂やシリコン樹脂であってもよい。これらの樹脂は、糊化した澱粉に対して比較的接触角が大きいので、澱粉を含むウェブWaの離型性を向上させることができる。
【0026】
成形型111は、第1プレス型121と、第2プレス型122とを備える。第1プレス型121と第2プレス型122とでウェブWaを加圧可能に構成される。第1プレス型121は、第2プレス型122の上方に配置される。第2プレス型122は固定して配置される。第1プレス型121は、モーター等の駆動力により、第2プレス型122に対して昇降可能に構成される。成形型111では、ウェブWaに対して所定の圧力が付与されるように第1プレス型121が駆動制御される。
【0027】
本実施形態では、第1プレス型121のウェブWaと接するプレス面121aは平坦面を有する。第2プレス型122のウェブWaと接するプレス面122aは平坦面を有する。さらに、第2プレス型122には、プレス面122aから厚み方向に貫通する水抜き穴123が複数形成される。水抜き穴123は、ウェブWaに含まれる水分を逃がす穴である。具体的には、成形型111によってウェブWaを加圧した際、ウェブWaに含まれる水分が染み出す。染み出した水分は、水抜き穴123を介して外部に排出される。これにより、不要な水分が除去され、ウェブWaを効率よく加熱することができる。
【0028】
マイクロ波発生部115は、マイクロ波(例えば、1GHz~100GHz)を照射(発振)させ、ウェブWaを加熱する。具体的には、マイクロ波によってウェブWaに含まれる水分子が振動し、当該振動により加熱する。本実施形態では、図2Bに示すように、脱気水が付与されたウェブWaを成形型111に入れてウェブWaを加圧した状態で、ウェブWaをマイクロ波で加熱する。例えば、ウェブWaを約80℃~100℃で、5分程度加熱する。
【0029】
成形型111及びマイクロ波発生部115は、枠体118によって覆われる。枠体118の内部は、例えばステンレス等の金属部材で形成される。これにより、照射されたマイクロ波は枠体118内で反射するため、ウェブWaを効率よく加熱することができる。また、マイクロ波の枠体118外部への漏れを防止することができる。
【0030】
また、本実施形態の加熱・加圧部110では、ウェブWaを加圧しない状態でも、ウェブWaをマイクロ波で加熱可能である。具体的には、第1プレス型121を上昇させ、第1プレス型121がウェブWaに接しない状態でマイクロ波を照射させることで、ウェブWaを加熱(例えば、100℃程度)する。本実施形態では、加圧した状態で加熱した後に、加圧しない状態で加熱することで、ウェブWaを乾燥する。これにより、ウェブWaが固化され、セルロース繊維体Sが形成される。セルロース繊維体Sは、澱粉分子に水が吸着した状態(非老化状態)である。また、澱粉は、肥料や保水剤としても機能する。このようなセルロース繊維体Sは、キノコ培地等として好適である。
形成されたセルロース繊維体Sは、受け部150に排出される。成形型111は、樹脂で形成されるため、セルロース繊維体Sは成形型111から容易に取り外され、下流に搬送することができる。
【0031】
ここで、加熱・加圧部110において、ウェブWaに対して所定の圧力、例えば、ウェブWa内の水分が染み出す程度に圧力を付与した状態で加熱した場合、ウェブWaの表面は、澱粉が解けた水分に覆われた状態で加熱される。このため、ウェブWaの表面を覆う澱粉成分が固化する。そして、図3に示すように、成形されたセルロース繊維体Sの表面は、被膜(スキン層)Saが形成される。当該被膜Saは、光沢を有しており、被膜Saが無い場合と比べて外観で判別可能である。被膜Saの形成により、セルロース繊維体Sの内部からの微粉の発生を抑制することができる。これにより、セルロース繊維体S周辺の製品等への微粉の付着を防止できる。
また、脱気水付与部90による脱気水の付与によって澱粉が希釈されるので、澱粉の添加量が少なくても、ウェブWaの表面を、澱粉を含む水分で容易に覆うことができ、被膜Saを容易に形成することができる。
【0032】
なお、セルロース繊維体Sをキノコ培地として用いる場合、キノコが生える位置や面については被膜Saが無い形態としてもよい。
本実施形態では、第2プレス型122に水抜き穴123が形成されるため、第1プレス型121側に比べ第2プレス型122側に水分がより多い状態で加熱される。このため、第2プレス型122に接したウェブWa面(セルロース繊維体Sの一方面)に被膜Saが形成されやすくなる。すなわち、水抜き穴123の配置位置を規定することで、セルロース繊維体Sにおいて所望する位置に被膜Saを形成することができる。
【0033】
また、成形型111の形態によっても被膜Saを所望の位置に形成することが可能である。例えば、第1プレス型121のプレス面121aを複数の凹凸状(マイクレンズ状)に形成し、第2プレス型122のプレス面122aを平坦面とする。これにより、プレス面121aの表面積がプレス面122aの表面積よりも大きくなり、第1プレス型121のウェブWaにかかる圧力がより小さくなる。一方、第2プレス型122のウェブWaにかかる圧力がより大きくなるので、第2プレス型122側に水分が染み出しやすくなり、ウェブWaのプレス面122aに接する部分に被膜Saを形成しやすくなる。
また、マイクロ波の出力を制御することで被膜Saの形成箇所を規定することが可能である。例えば、ウェブWaの厚み方向において、被膜Saを形成したい方の面側に対してマイクロ波の出力をより大きくする。これにより、マイクロ波の出力がより大きい部分に被膜Saを形成することができる。また、第1プレス型121側に加え、第2プレス型122側にもマイクロ波発生部115を配置し、各マイクロ波発生部115を制御する構成であってもよい。
また、被膜Saが形成されたセルロース繊維体Sにおいて、被膜Saの不要な部分はカッター等で切除してもよい。
【0034】
なお、本実施形態のセルロース繊維体製造装置1では、加熱・加圧部110をインライン構成としたが、これに限定されない。例えば、加熱・加圧部110を別個に配置し、単票のウェブWaを加熱・加圧してもよい。
【0035】
次に、セルロース繊維体Sの製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、セルロース繊維体製造装置1によるセルロース繊維体Sの製造方法について説明する。
図4に示すように、まず、ウェブ形成工程(ステップS11)では、解繊されたセルロース繊維と澱粉とを混合し、ウェブWを形成する。具体的には、原料を乾式解繊部20で解繊することでセルロース繊維を生成する。また、澱粉供給部50から澱粉をホッパー55に供給する。そして、混合・堆積部60において、セルロース繊維と澱粉とを混合し、混合した混合物をメッシュベルト82上に降り積もらせることでウェブWを形成する。
【0036】
次いで、脱気水付与工程(ステップS12)では、ウェブWに対して、溶存空気量が低減された脱気水を付与する。具体的には、脱気水付与部90からウェブWに対して脱気水を噴霧する。付与された脱気水は、ウェブW内部に含まれる空気を溶かし出しながら容易にウェブW内部に浸透する。
【0037】
次いで、常温プレス工程(ステップS13)では、常温(例えば、20℃~30℃程度)でウェブWを加圧する。具体的には、切断部100で切断した単票のウェブWaを加熱・加圧部110における成形型111に入れて、第1プレス型121と第2プレス型122とでウェブWaを複数回加圧する。詳細には、第1プレス型121をウェブWaに対して昇降移動させ、ウェブWaに対して加圧動作を繰り返す。このとき、マイクロ波発生部115は駆動させない。ウェブWaを加圧することで、脱気水のウェブWa内部への浸透が促され、脱気水がウェブWa全体に浸透する。
【0038】
次いで、加熱・加圧工程(ステップS14)では、脱気水が付与されたウェブWaを成形型111に入れてウェブWaを加圧した状態で、ウェブWaをマイクロ波で加熱する。具体的には、加熱・加圧部110の第1プレス型121と第2プレス型122とでウェブWaを加圧し、マイクロ波を照射する。
また、加熱・加圧工程では、加圧と非加圧とを複数回行う。具体的には、マイクロ波を照射させている状態で、第1プレス型121を第2プレス型122に対して昇降移動を繰り返し行う。これにより、ウェブWaに対する加圧動作と非加圧動作とが繰り返し行われる。加圧動作と非加圧動作とを繰り返し行うことにより、脱気水のウェブWaへの浸透を促すとともに、ウェブWaに含まれる水分の染み出しを促す。
ウェブWa表面に水分が染み出した状態で加熱されるため、水分に含まれる澱粉成分が固化し、ウェブWaの表面に被膜Saが形成される。
また、第1プレス型121及び第2プレス型122は樹脂で形成されているため、澱粉を含むウェブWaに対して離型性が高い。このため、加熱中であっても加圧動作と非加圧動作とを容易に行うことができる。
【0039】
次いで、乾燥工程(ステップS15)では、ウェブWaを再びマイクロ波で加熱してウェブWaを乾燥させる。具体的には、加熱・加圧工程(ステップS14)の後に、第1プレス型121を上昇させることで、第1プレス型121をウェブWaから離間させる。そして、マイクロ波を照射させてウェブWaを乾燥させる。これにより、澱粉分子に水が吸着した状態(非老化状態)のセルロース繊維体Sが形成される。
【0040】
以上、本実施形態によれば、マイクロ波でウェブWaを加熱するため、ウェブWaが厚くなってもウェブWa内部まで素早く加熱でき、加熱時間を短縮させることができる。例えば、従来、上下金型でウェブWaを加熱・加圧する構成では、成形時間に60分から90分程度かかっていた。これに対し、本実施形態では、同様の厚み寸法の成形に5分程度で済む。
【0041】
2.第2実施形態
次に、第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
本実施形態のセルロース繊維体製造装置1Aは、例えば、緩衝材や梱包材に好適なセルロース繊維体Sを製造する装置である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態のセルロース繊維体製造装置1Aは、例えば、粗砕部10と、乾式解繊部20と、選別部30と、選別物搬送部40と、澱粉供給部50と、混合・堆積部60と、脱気水付与部90と、切断部100と、加熱・加圧部110と、冷却部140と、を含む。また、セルロース繊維体製造装置1Aは、これらの各部を制御する制御部(プロセッサー)を備える。
なお、セルロース繊維体製造装置1Aにおける冷却部140以外の構成は、第1実施形態と同様なので説明を省略する。
【0043】
冷却部140は、加熱・加圧部110の下流に配置される。冷却部140は、加熱・加圧部110によって処理されたウェブWaを冷却する。冷却部140は、ウェブWaを25℃以下で冷却可能に構成される。冷却部140は、例えば、冷蔵庫である。冷却部140は、ウェブWaに含まれる水分を除去して、澱粉分子同士を結合させる(老化させる)。これにより、セルロース繊維体Sが形成される。なお、冷却部140は、インライン構成でなく、別個に配置した構成であってもよい。
【0044】
次に、セルロース繊維体Sの製造方法について説明する。
なお、本実施形態では、セルロース繊維体製造装置1Aによるセルロース繊維体Sの製造方法について説明する。
図6に示すように、セルロース繊維体Sの製造方法は、ウェブ形成工程(ステップS21)、脱気水付与工程(ステップS22)、常温プレス工程(ステップS23)、加熱・加圧工程(ステップS24)、冷却工程(ステップS25)の順で実行される。
なお、ウェブ形成工程(ステップS21)から加熱・加圧工程(ステップS24)は、第1実施形態におけるウェブ形成工程(ステップS11)から加熱・加圧工程(ステップS14)と同じなので説明を省略する。
【0045】
冷却工程(ステップS25)は、加熱・加圧工程(ステップS24)の後に、ウェブWaを冷却する。具体的には、冷却部140により25℃以下の環境でウェブWaを冷却する。例えば、冷却部140により5℃の環境下でウェブWaを72時間冷却する。これにより、澱粉に含まれる水分が除去され、澱粉分子同士が結び付いて老化する。以上により、セルロース繊維体Sが形成される。
【0046】
以上、本実施形態によれば、ウェブWaを加熱・加圧した後に冷却する。これにより、ウェブWa内の澱粉が老化してセルロース繊維体Sが形成される。このよう形成されたセルロース繊維体Sは、耐吸湿性を備える。このため、セルロース繊維体Sは、例えば、緩衝材や梱包材等として適用することができる。また、セルロース繊維体Sの表面には被膜Saが形成されるので微粉の発生を抑制できる。これにより、緩衝材や梱包材として用いる際、製品等への微粉の付着を抑制できる。
【0047】
なお、セルロース繊維体製造装置1Aでは、セルロース繊維体Sを任意の形状に成形可能である。この場合、例えば、加熱・加圧部110における成形型111の第1プレス型121及び第2プレス型122の形状を適宜設定する。これにより、厚み寸法の異なる部位を有するセルロース繊維体Sや、凹凸形状を有するセルロース繊維体Sを形成することができる。これにより、梱包される製品の形状に対応するセルロース繊維体Sを形成することができる。
【0048】
3.実施例
次に、実施例について説明する。
【0049】
3-1.実施例1
1)乾式解繊部20を用いて、解繊されたセルロース繊維150gを生成した。
2)混合・堆積部60を用いて、セルロース繊維と澱粉(日本コーンスターチ株式会社製sk200)50gとを混合し、ウェブWを形成した。
3)脱気水付与部90を用いて、上記ウェブWに対して脱気水(溶存空気量6mg/L、8g)を噴霧した。
4)加熱・加圧部110を用いて、成形型111でウェブWaを加圧した状態でマイクロ波を照射し、ウェブWaを加熱した。成形型111の材質は、ポリメチルペンテンであった。また、第2プレス型122には複数の水抜き穴123を形成した。マイクロ波発生部115における加熱条件は、200W、85℃、5Min.であった。
5)冷却部140を用いて、ウェブWaを冷却し、セルロース繊維体Sを形成した。冷却条件は、5℃、72Hr.であった。
【0050】
3-2.実施例2
1)乾式解繊部20を用いて、解繊されたセルロース繊維150gを生成した。
2)混合・堆積部60を用いて、当該セルロース繊維と澱粉(日本コーンスターチ株式会社製sk200)50gとを混合し、ウェブWを形成した。
3)脱気水付与部90を用いて、上記ウェブWに対して脱気水(溶存空気量6mg/L、8g)を噴霧した。
4)加熱・加圧部110を用いて、成形型111でウェブWaを加圧した状態でマイクロ波を照射し、ウェブWaを加熱した。成形型111の材質は、ポリメチルペンテンであった。また、第2プレス型122には複数の水抜き穴123を形成した。マイクロ波発生部115における加熱条件は、200W、85℃、5Min.であった。
5)その後、第1プレス型121を上昇させ、第1プレス型121がウェブWaと離間した状態でマイクロ波を照射し、ウェブWaを乾燥してセルロース繊維体Sを形成した。マイクロ波発生部115における乾燥条件は、500W、100℃、5Min.であった。
【0051】
3-3.実施例3
1)実施例2と同じ工程を実施し、セルロース繊維体を2枚形成した。
2)脱気水付与部90を用いて、1)の各セルロース繊維体の一方面に脱気水(溶存空気量6mg/L、8g)を噴霧した。
3)2)各セルロース繊維体の脱気水が噴霧された面同士を接触させて、2枚のセルロース繊維体を重ねた状態で成形型111に入れた。そして、成形型111で2枚のセルロース繊維体を加圧した状態でマイクロ波を照射し、加熱した。成形型111の材質は、ポリメチルペンテンであった。また、第2プレス型122には複数の水抜き穴123を形成した。マイクロ波発生部115における加熱条件は、200W、85℃、5Min.であった。
4)冷却部140を用いて、上記セルロース繊維体を冷却し、1つのセルロース繊維体Sを形成した。冷却条件は、5℃、72Hr.であった。
【0052】
3-4.実施例4
1)実施例2においてセルロース繊維体を2枚形成した。
2)脱気水付与部90を用いて、1)の各セルロース繊維体Sの一方面に脱気水(溶存空気量6mg/L、8g)を噴霧した。
3)2)各セルロース繊維体の脱気水が噴霧された面同士を接触させて、2枚のセルロース繊維体を重ねた状態で成形型111に入れた。そして、成形型111で2枚のセルロース繊維体を加圧した状態でマイクロ波を照射し、加熱した。成形型111の材質は、ポリメチルペンテンであった。また、第2プレス型122には複数の水抜き穴123を形成した。マイクロ波発生部115における加熱条件は、200W、85℃、5Min.であった。
4)その後、第1プレス型121を上昇させ、第1プレス型121がセルロース繊維体と離間した状態でマイクロ波を照射し、セルロース繊維体を乾燥して1つのセルロース繊維体Sを形成した。マイクロ波発生部115における乾燥条件は、500W、100℃、5Min.であった。
【0053】
3-5.実施例5
1)上記各実施例1から実施例4において、加熱・加圧前に、加熱・加圧部110を用いて常温(25℃)でウェブWa、またはセルロース繊維体に対して加圧動作を2回繰り返した。
【0054】
3-6.実施例6
1)上記各実施例1から実施例4において、厚み寸法が異なる部分を有するセルロース繊維体Sを形成した。具体的には、3種類の成形型111の形状を変えたものを用意した。各成形型111で加熱・加圧を行い、各実施例において3種類のセルロース繊維体Sを形成した。セルロース繊維体Sの厚み寸法が最も薄い寸法と最も厚い寸法の差が、3mm、10mm、30mmであった。
【0055】
3-7.評価方法
1)以下の手順で耐吸湿性を評価した。
2)各実施例において形成されたセルロース繊維体Sを乾燥し、各セルロース繊維体Sの重量を計測した。
3)その後、各セルロース繊維体Sを恒温恒湿槽に放置した。吸湿条件は、60℃、90%RH、72Hr.であった。
4)吸湿後における各セルロース繊維体Sの重量を計測した。
5)吸湿前後の重量差を測定した。
6)評価項目:吸湿前後における重量の変化の有無。セルロース繊維体Sの形状の変形の有無。
【0056】
3-8.評価結果
1)実施例1,実施例3、実施例5において冷却工程を行った実施例、及び実施例6において冷却工程を行った実施例では、吸湿前後の重量の変化が無かった。また、セルロース繊維体Sの変形は無かった。
2)上記以外の実施例は、吸湿後に約20%の重量増加があったが、セルロース繊維体Sの変形は無かった。
【0057】
3-9.まとめ
1)実施例1,実施例3、実施例5において冷却工程を行った実施例、及び実施例6において冷却工程を行った実施例で形成された各セルロース繊維体Sは、吸湿前後の重量の変化が無く、緩衝材や梱包材として適用可能であることが分かった。
さらに、実施例6において冷却工程を行って形成されたセルロース繊維体Sは、厚みが均一でなくても、吸湿前後の重量の変化が無く、被梱包物の形状に合わせた梱包材等に適用可能であることが分かった。
2)上記以外の実施例で形成されたセルロース繊維体Sは、形状が維持されつつ、吸湿可能に形成されるため、例えば、キノコ培地として適用可能であることがわかった。
【符号の説明】
【0058】
1,1A…セルロース繊維体製造装置、10…粗砕部、14…粗砕刃、16…ホッパー、17…管、20…乾式解繊部、22…導入口、24…排出口、28…管、30…選別部、31…分離ドラム、32…導入口、33…ハウジング部、34…排出口、36…管、40…選別物搬送部、46…メッシュベルト、47…張架ローラー、47a…張架ローラー、48…サクション機構、50…澱粉供給部、52…供給口、55…ホッパー、56…管、60…混合・堆積部、71…堆積ドラム、72…導入口、73…ハウジング部、82…メッシュベルト、84…ローラー、86…サクション機構、90…脱気水付与部、100…切断部、110…加熱・加圧部、111…成形型、115…マイクロ波発生部、118…枠体、121…第1プレス型、121a…プレス面、122…第2プレス型、122a…プレス面、123…水抜き穴、140…冷却部、150…受け部、S…セルロース繊維体、Sa…被膜、W,Wa…ウェブ。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6