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特開2023-182133水力発電所向け制御装置及び制御方法
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  • 特開-水力発電所向け制御装置及び制御方法 図1
  • 特開-水力発電所向け制御装置及び制御方法 図2
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  • 特開-水力発電所向け制御装置及び制御方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182133
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】水力発電所向け制御装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/04 20060101AFI20231219BHJP
   G05B 9/02 20060101ALI20231219BHJP
   F03B 15/18 20060101ALI20231219BHJP
   H02P 101/10 20150101ALN20231219BHJP
【FI】
H02P9/04 A
G05B9/02 B
F03B15/18 Z
H02P101:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095556
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聖希
【テーマコード(参考)】
3H073
5H209
5H590
【Fターム(参考)】
3H073AA02
3H073BB07
3H073BB18
3H073BB31
3H073CC22
3H073CD02
3H073CD18
3H073CE06
3H073CE26
3H073FF02
5H209AA02
5H209DD04
5H209EE18
5H209GG06
5H209HH04
5H590AA01
5H590CA11
5H590EA05
5H590FC25
5H590JA02
5H590JA03
5H590JA09
5H590JB02
5H590KK04
5H590KK06
(57)【要約】
【課題】停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能な水力発電所向け制御装置を提供する。
【解決手段】ソフトウェア回路100は、主機21に関する制御対象機器20に対して当該制御対象機器20の状態を変更するための制御指令を予め定められた制御手順に従って発令することで主機21を停止させる停止制御を行う。監視回路(120~150、200、300)は、制御対象機器20の状態が制御手順に従って変更された否かを検出して、当該検出結果に基づいてソフトウェア回路100に故障が生じたと判断した場合、主機21を非常停止させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電所において発電を行う主機に関する制御を行う水力発電所向け制御装置であって、
前記主機に関する複数の制御対象機器に対して当該制御対象機器の状態を変更するための指令を予め定められた手順に従って発令することで前記主機を停止させる停止制御を行うソフトウェア回路と、
各制御対象機器の状態が前記手順に従って変更された否かを検出し、当該検出結果に基づいて前記ソフトウェア回路に故障が生じたと判断した場合、前記主機を非常停止させる監視回路と、を有する水力発電所向け制御装置。
【請求項2】
前記停止制御は、前記主機を急停止させる急停止制御を含み、
前記監視回路は、前記主機を急停止させる事象が検出された場合、前記制御対象機器ごとに、前記手順に応じた判定時間内に当該制御対象機器の状態が変更されたか否かを検出する、請求項1に記載の水力発電所向け制御装置。
【請求項3】
前記停止制御は、前記主機を緩停止させる緩停止制御及び前記主機を普通停止させる普通停止制御を含み、
前記監視回路は、前記非常停止指令及び急停止指令が発令されていない場合、前記制御対象機器の状態が前記手順に応じた順番で変更されたか否かを検出する、請求項1に記載の請求項1に記載の水力発電所向け制御装置。
【請求項4】
前記監視回路は、
各制御対象機器の状態が前記手順に従って変更された否かを検出し、当該検出結果に基づいて前記ソフトウェア回路に故障が生じたと判断した場合、出力信号をオフにする検出回路と、
前記出力信号がオフになると、前記主機を非常停止させる非常停止回路と、を有する、請求項1に記載の水力発電所向け制御装置。
【請求項5】
前記検出回路は、前記ソフトウェア回路にて実現される、請求項4に記載の水力発電所向け制御装置。
【請求項6】
前記監視回路は、所内浸水、水車過速度及び急停止開閉器操作を含む項目に関する故障が検出された場合、前記主機を非常停止させる、請求項1に記載の水力発電所向け制御装置。
【請求項7】
水力発電所において発電を行う主機に関する複数の制御対象機器に対して当該制御対象機器の状態を変更するための指令を予め定められた手順に従って発令することで前記主機を停止させる停止制御を行うソフトウェア回路を備える水力発電所向け制御装置による制御方法であって、
各制御対象機器の状態が前記手順に従って変更された否かを検出し、
当該検出結果に基づいて前記ソフトウェア回路に故障が生じたと判断した場合、前記主機を非常停止させる、制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水力発電所向け制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力市場の国際化及び規制緩和などの影響により、発電所の建設コスト及び維持管理コストの低減が強く求められている。特に小規模の発電所では、発電所の制御及び保護を行う制御・保護装置のコストが発電所の全コストであるプラントコストの大きな割合を占めているため、制御・保護装置のコストの低減が重要となる。
【0003】
制御・保護装置のコスト低減に関しては、保護リレーを用いたハードウェア構成による保護機能を、発電所の制御装置であるシーケンサ内のコンピュータプログラムに従って動作するソフトウェア回路により実現するソフトウェア化が試みられている(特許文献1参照)。ただし、発電機の保護に大きく寄与する、急停止を含むロックアウト継電器に関わる機能は、通常、高い信頼性が求められるため、ハードウェア構成によって実現されている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、近年では、ソフトウェア回路を構成するモジュールの性能向上などにより、急停止に関する機能についても、ソフトウェア化が検討されている。例えば、非特許文献1では、急停止に関する機能のソフトウェア化について、「急停止については、機械的故障に対する主機保護回路であり、ハードウェア回路を省略しても、主機に対する影響はほとんどなく、合理化が可能である」、及び、「制御装置故障時は、この急停止回路のソフトウェアが動作しないため、装置故障にて非常停止(86-1)とする必要がある」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭59-184903号公報
【特許文献2】特開平7-7997号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】一般社団法人電気協同研究会、電気共同研究57巻5号「一般水力発電所の制御・保護システム合理化」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1では、発電所の急停止を行う急停止回路などの保護機能をソフトウェア回路にて構成した場合における、制御装置の故障を判定する具体的な方法については検討が行われていない。なお、一般的に水力発電所において採用されているシーケンサの重故障項目は、ハードウェア構成による保護装置を前提としているため、ソフトウェア化した停止回路の異常の検出には適切ではない可能性もある。
【0008】
本発明の目的は、停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能な水力発電所向け制御装置及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に従う水力発電所向け制御装置は、水力発電所において発電を行う主機に関する制御を行う水力発電所向け制御装置であって、前記主機に関する複数の制御対象機器に対して当該制御対象機器の状態を変更するための指令を予め定められた手順に従って発令することで前記主機を停止させる停止制御を行うソフトウェア回路と、各制御対象機器の状態が前記手順に従って変更された否かを検出し、当該検出結果に基づいて前記ソフトウェア回路に故障が生じたと判断した場合、前記主機を非常停止させる監視回路と、を有する
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の一実施形態の水力発電システムの構成例を示す図である
図2】本開示の一実施形態におけるシーケンサ異常検出回路の構成例を示す図である。
図3】本開示の一実施形態におけるアンサーバック監視部の構成例を示す図である。
図4】本開示の一実施形態における状態監視部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態の水力発電システムの構成を示す図である。図1に示す水力発電システムは、水力発電所のシーケンス制御を行う水力発電所向け制御装置であるシーケンサ10と、シーケンサ10の制御対象である制御対象機器20とを有する。制御対象機器20は、例えば、水車及び発電機などの主機21と、主機21に関連する制御対象である調速装置用ソレノイド22、入口弁23、並列用遮断器24及び界磁遮断器25を有する。なお、制御対象機器20は、図示した例に限らず、水力発電所において使用される機器であればよい。
【0014】
図2は、シーケンサ10に備わったシーケンサ異常検出回路の構成例を示す図である。図2に示すシーケンサ異常検出回路1は、ソフトウェア回路100と、論理否定回路(NOT)200と、非常停止回路300と、メモリ400とを有する。
【0015】
ソフトウェア回路100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサであり、メモリ400に記録されたプログラム(コンピュータプログラム)を読み取り、その読み取ったプログラムを実行することで種々の機能を実現する回路である。具体的には、ソフトウェア回路100は、停止制御部110と、アンサーバック監視部120と、状態監視部と、シーケンサ重故障検出部140と、否定論理和回路(NOR)150とを実現する。
【0016】
停止制御部110は、主機21を停止させる停止指令が発令された場合に、制御対象機器20を制御して主機21を停止させる停止制御を行う停止回路である。停止制御は、具体的には、制御対象機器20のそれぞれに対して、制御対象機器20の状態を変更するための指令である制御指令を予め定められた手順である制御手順に従って発令することで主機21を停止させる処理である。
【0017】
停止制御には、通常の停止制御である「普通制御」と、水力発電所の故障時の停止制御である「故障停止制御」とがある。また、故障停止制御には、故障の種類に応じて、「非常停止」、「急停止」及び「緩停止」の3種類がある。非常停止は電源装置重故障及び制御用コントローラ重故障のような水力発電所内で重大な電気的故障が生じた際などに行われ、急停止は水力発電所内で重大な機械的故障が生じた際などに行われ、緩停止は軽度の故障が生じた際に行われる。主機21を停止させる緊急度は、非常停止、急停止、緩停止の順に高く、それぞれの制御において、異なる制御手順が定められている。また、緩停止では、普通停止と同じ制御手順で主機21が停止される。
【0018】
本実施形態では、停止制御部110は、普通停止及び緩停止を行う普通停止回路としてだけでなく、それらよりも緊急度が高い急停止を行う急停止回路としても機能する。また、非常停止については、緊急度が高いため、専用のハードウェア回路である非常停止回路300にて行われる。なお、各故障停止制御(非常停止、急停止及び緩停止)には、その故障停止制御を行う故障を示す保護項目が定められている。その保護項目に該当する故障が不図示の検出回路にて検出された場合、その故障に応じた停止指令が発令される。本実施形態では、急停止をソフトウェア回路100にて行うにあたり、主機保護の信頼性を担保するために、一般的には急停止の保護項目とされる保護項目のうち、主機保護の信頼性への影響が大きい所定の項目を非常停止の保護項目へ区分変更する。具体的には、「所内浸水」、「水車過速度」及び「急停止開閉器操作」の3項目が非常停止の保護項目とされる。
【0019】
所内浸水は、急停止回路の不動作により発電所が水没してしまう恐れがあるため、ハードウェア回路を用いてより確実に主機21を停止させることが好ましい。また、水車過速度は、急停止回路の不動作により主機21を損傷させる恐れが高いため、ハードウェア回路を用いてより確実に主機21を停止させることが好ましい。急停止開閉器操作は、主機21を直ぐに停止させるための緊急停止スイッチ(図示せず)が操作されたことを示す保護項目であり、どのような状況でもより確実に主機21を停止させることが好ましい。
【0020】
ソフトウェア回路100内にあるアンサーバック監視部120、状態監視部130、シーケンサ重故障検出部140及び否定論理和回路150と、ソフトウェア回路100外にある論理否定回路200及び非常停止回路300とは、停止制御を監視する監視回路を構成する。監視回路は、停止制御時において、制御対象機器20の状態が制御手順に従って変更された否かを検出して、当該検出結果に基づいてシーケンサ10(具体的には、ソフトウェア回路100)に故障が生じたと判断した場合、主機21を非常停止させる。
【0021】
監視回路の構成のうち、ソフトウェア回路100内にあるアンサーバック監視部120、状態監視部130、シーケンサ重故障検出部140及び否定論理和回路150は、検出回路を構成する。検出回路は、停止制御時において、制御対象機器20の状態が制御手順に従って変更された否かを検出して、当該検出結果に基づいてシーケンサ10に故障が生じたと判断した場合、出力信号をOFFにする。
【0022】
アンサーバック監視部120は、急停止に関する保護項目に該当する故障(事象)が発生した場合、主機21の急停止に係る急停止動作に異常が発生したか否かを監視する。アンサーバック監視部120は、急停止動作に異常が発生した場合、シーケンサ10に故障が生じたと判断して、出力信号である異常検出信号をONにする。なお、急停止動作は、急停止時の制御手順に従って制御対象機器20の状態を変更して主機21を停止させる動作である。
【0023】
状態監視部130は、非常停止及び急停止が動作していない場合、主機21の緩停止及び普通停止に係る普通停止動作に関連する状態に異常が発生したか否かを監視する。状態監視部130は、普通停止動作に関連する状態に異常が発生した場合、シーケンサ10に故障が生じたと判断して、出力信号である異常検出信号をONにする。なお、普通停止動作は、緩停止及び普通停止時の制御手順に従って制御対象機器20の状態を変更して主機21を停止させる動作である。また、緩停止及び普通停止に関する事象は、具体的には、緩停止に関する保護項目に該当する故障、及び、普通停止による停止指示が入力されたことなどである。
【0024】
シーケンサ重故障検出部140は、非常停止に関する保護項目に該当する事象が発生した場合、出力信号である異常検出信号をONにする。
【0025】
否定論理和回路150は、アンサーバック監視部120、状態監視部130及びシーケンサ重故障検出部140のそれぞれの異常検出信号の否定論理和を示す信号を検出回路の出力信号である異常検出信号101として出力する。この場合、異常検出信号101は、シーケンサ10に故障が発生して、アンサーバック監視部120、状態監視部130及びシーケンサ重故障検出部140のそれぞれの異常検出信号がONになると、OFFになる。
【0026】
論理否定回路200は、ソフトウェア回路100からの異常検出信号101の論理否定を示す異常検出信号102を非常停止回路300に出力する。したがって、異常検出信号102は、シーケンサ10に故障が発生した場合、ONになる。
【0027】
非常停止回路300は、論理否定回路200からの異常検出信号102がONになると、シーケンサ10に重故障が発生したと判断して、主機21の非常停止を行う。
【0028】
図3は、アンサーバック監視部120のより詳細な構成例を示す図である。アンサーバック監視部120は、急停止動作検出部201と、アンサーバック部202とを有する。
【0029】
急停止動作検出部201は、急停止に関する停止指令である急停止指令が発令されたか否か検出し、急停止指令が発令された場合、アンサーバック部202に動作指令を出力する。
【0030】
非特許文献1に記載されているように、急停止では、調速装置用ソレノイド22を開状態にする閉指令(65T)、入口弁23を開状態にする閉指令(21T)の順に発令され、さらに、ガイドベーン全閉後に並列用遮断器24を開状態にする開指令(52T)が発令され、並列用遮断器24の開放後に界磁遮断器25を開状態にする開指令(41T)が発令される。本実施形態では、ソフトウェア回路100の停止制御部110がこれらの制御指令をこの制御手順で発令することで急停止制御を行う。なお、ソフトウェア回路100からの制御指令の出力は、信頼性向上のために多重化されてもよい。
【0031】
アンサーバック監視部120は、急停止指令が発令されてから所定の判定時間が経過しても制御指令に応じて各制御対象機器20の状態が変更されなかった場合に、出力信号である異常検出信号をONにする回路である。
【0032】
アンサーバック監視部120は、ソレノイド状態検出部211と、入口弁状態検出部212と、並列用遮断器状態検出部213と、界磁遮断器状態検出部214と、タイマ221~224と、論理和回路(OR)231とを有する。
【0033】
ソレノイド状態検出部211は、動作指令を受け付けると、調速装置用ソレノイド22の開閉状態を検出し、調速装置用ソレノイド22が開状態(65S)の場合、検出信号を出力する。入口弁状態検出部212は、動作指令を受け付けると、入口弁23の開閉状態を検出し、入口弁23が開状態(21S)の場合、検出信号を出力する。並列用遮断器状態検出部213は、動作指令を受け付けると、並列用遮断器24の開閉状態を検出し、並列用遮断器24が閉状態(52C)の場合、検出信号を出力する。界磁遮断器状態検出部214は、動作指令を受け付けると、界磁遮断器25の開閉状態を検出し、界磁遮断器25が閉状態(41C)の場合、検出信号を出力する。
【0034】
タイマ221~224のそれぞれは、ソレノイド状態検出部211、入口弁状態検出部212、並列用遮断器状態検出部213及び界磁遮断器状態検出部214のいずれかと排他的に対応し、その対応した検出部から検出信号を受け付ける。タイマ221~224は、検出信号を受け付けている時間を検出時間として測定し、その検出時間が判定時間を超えると、出力信号をONにする。判定時間は、タイマごとに異なり、具体的には、タイマに対応する検出部の状態を変更する制御指令の発令手順や水力発電所の各機器の特性に応じて適宜設定される。例えば、急停止では、上述したように急停止動作に異常が生じていない場合、調速装置用ソレノイド22、入口弁23、並列用遮断器24、界磁遮断器25の順に状態が変更されるため、図2の例の場合、タイマ221~224の判定時間は、タイマ221、222、223、224の順に大きくなる。
【0035】
論理和回路231は、タイマ221~224のいずれかの出力信号がONになると、自身の出力信号である異常検出信号をONにする。
【0036】
これにより、急停止指令が発令されている状況において、急停止動作が適切に作動していない場合にシーケンサ10の故障であるシーケンサ重故障と判定することが可能となり、主機21を非常停止させることが可能となる。
【0037】
図4は、状態監視部130のより詳細な構成例を示す図である。図4に示す状態序監視部130は、非常停止・急停止非動作検出部301と、状態異常検出部302とを有する。
【0038】
非常停止・急停止非動作検出部301は、主機21を非常停止する非常停止指令が発令されたか否かと、主機21を急停止する急停止指令が発令されたか否かと、を検出し、非常停止指令及び急停止指令が発令されていない場合、状態異常検出部302に動作命令を出力する。
【0039】
非特許文献1に記載されているように、緩停止及び普通停止では、並列用遮断器24の開状態(52T)、界磁遮断器25の開状態(41T)、調速装置用ソレノイド22の閉状態(65T)の順に制御対象機器20の状態を変更し、その後、ガイドベーン全閉後に入口弁23を閉状態(21T)に変更する。本実施形態では、ソフトウェア回路100の停止制御部110がこれらの制御指令をこの制御手順で発令することで緩停止及び普通停止を行う。
【0040】
非特許文献1に記載されているように、始動制御では、入口弁23の開状態(21C)、調速装置用ソレノイド22の開状態(65S)、界磁遮断器25の閉状態(41C)の順に制御対象機器20の状態を変更し、その後、並列用遮断器24を閉状態(52C)に変更する。本実施形態では、ソフトウェア回路100の始動制御部160がこれらの制御指令をこの制御手順で発令することで始動制御を行う。
【0041】
状態異常検出部302は、非常停止指令及び急停止指令が発令されていない場合に、各制御対象機器20の状態が制御手順に応じた順番で変更された場合には実現されない組み合わせとなった場合に、出力信号である異常検出信号をONにする回路である。
【0042】
状態異常検出部302は、入口弁閉状態検出部311と、ソレノイド開状態検出部312と、ソレノイド閉状態検出部313と、界磁遮断器閉状態検出部314と、界磁遮断器開状態検出部315と、並列用遮断器閉状態検出部316と、タイマ321~323と、論理和回路331とを有する。
【0043】
入口弁閉状態検出部311は、動作命令を受け付けている間、入口弁23の開閉状態を検出し、入口弁23が閉状態(21T)の場合、検出信号を出力する。ソレノイド開状態検出部312は、入力弁閉状態検出部311から検出信号を受け付けると、調速装置用ソレノイド22の開閉状態を検出し、調速装置用ソレノイド22が開状態(65S)の場合、検出信号を出力する。
【0044】
ソレノイド閉状態検出部313は、動作命令を受け付けている間、調速装置用ソレノイド22の開閉状態を検出し、調速装置用ソレノイド22が閉状態(65T)の場合、検出信号を出力する。界磁遮断器閉状態検出部314は、ソレノイド閉状態検出部313から検出信号を受け付けると、界磁遮断器25の開閉状態を検出し、界磁遮断器25が閉状態(41C)の場合、検出信号を出力する。
【0045】
界磁遮断器開状態検出部315は、動作命令を受け付けている間、界磁用遮断器25の開閉状態を検出し、界磁用遮断器25が開状態(41T)の場合、検出信号を出力する。並列用遮断器閉状態検出部316は、界磁遮断器開状態検出部315から検出信号を受け付けると、並列用遮断器24の開閉状態を検出し、並列用遮断器24が閉状態(52C)の場合、検出信号を出力する。
【0046】
タイマ321~323のそれぞれは、ソレノイド開状態検出部312、界磁遮断器閉状態検出部314及び並列用遮断器閉状態検出部316のいずれかと排他的に対応し、その対応した検出部から検出信号を受け付ける。タイマ321~323は、検出信号を受け付けている時間を検出時間として測定し、その検出時間が判定時間を超えると、出力信号をONにする。タイマ321~323の判定時間は、水力発電所の各機器の特性に応じて適宜設定され、それぞれ異なっていてもよい。
【0047】
論理和回路331は、タイマ321~323のいずれかの出力信号がONになると、自身の出力信号である異常検出信号をONにする。
【0048】
これにより、非常停止指令及び急停止指令が発令されていない状況において、普通停止動作、緩停止動作、及び始動制御が適切に作動していない場合、及び運転中に状態の組み合わせに異常が生じた場合にシーケンサ10の故障であるシーケンサ重故障と判定することが可能となり、主機21を非常停止させることが可能となる。
【0049】
例えば、緩停止指令又は普通停止指令が発令された場合、シーケンサ10に故障がないと、界磁遮断器25が開状態(41T)となっている状況では、停止順序が先である並列用遮断器24は開状態(52T)となっている。それにも関わらず、界磁遮断器25の開指令(41T)が発令されている状況において、並列用遮断器24の閉状態(52C)が継続している場合、シーケンサ10が故障していると考えられる。本実施形態では、状態異常検出部302(具体的には、界磁遮断器開状態検出部315、並列用遮断器閉状態検出部316及びタイマ323)は、そのような状況が判定時間以上継続していることを検出すると、シーケンサ10が故障していると判定して、出力信号をONとする。
【0050】
入力弁閉状態検出部311、ソレノイド開状態検出部312、ソレノイド閉状態検出部313、界磁遮断器閉状態検出部314、タイマ321及び322にて他の制御手順についても同様にシーケンサ10が故障していることを検出することができる。なお、並列用遮断器24の開状態(52T)の誤出力については、主機21の破損に直接つながることはなく、停止順序が先の機器も存在しないため、本実施形態では、監視が行われていない。しかしながら、並列用遮断器24の開指令(52T)の誤出力を監視する回路が別途設けられてもよい。
【0051】
なお、水力発電所に対する操作には、遠隔操作と直接操作とがあり、直接操作は主に水力発電所の試験を行うために使用される。試験では、通常の手順とは異なる手順で各機器が制御されることがあるため、試験時においてシーケンサ10の故障が誤検出されないように、直接操作が選択されている場合には、監視回路によるソフトウェア回路100の監視が停止されてもよい。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、ソフトウェア回路100は、主機21に関する制御対象機器20に対して当該制御対象機器20の状態を変更するための制御指令を予め定められた制御手順に従って発令することで主機21を始動させる始動制御及び停止させる停止制御を行う。監視回路(120~150、200、300)は、制御対象機器20の状態が制御手順に従って変更された否かを検出して、当該検出結果に基づいてソフトウェア回路100に故障が生じたと判断した場合、主機21を非常停止させる。したがって、停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態では、アンサーバック監視部120は、主機21を急停止させる事象が検出された場合、制御対象機器20に、制御手順に応じた判定時間内に当該制御対象機器20の状態が変更されたか否かを検出する。したがって、急停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、状態監視部130は、非常停止指令及び急停止指令が発令されていない場合、制御対象機器20の状態が制御手順に応じた順番で変更されたか否かを検出する。したがって、緩停止回路をソフトウェア化しつつ、信頼性を確保することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、検出回路(120~150)は、ソフトウェア回路100に故障が生じたと判断した場合、出力信号をOFFにする。このため、シーケンサ10の重故障により検出回路から出力が停止されてOFFになった場合でも非常停止を行うことが可能となるため、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0056】
また、本実施形態では、検出回路はソフトウェア回路100にて実現される。このため、検出回路に係るコストを低減しつつ、信頼性を担保することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態では、監視回路は、所内浸水、水車過速度及び急停止開閉器操作を含む非常項目に関する故障が検出された場合、主機21を非常停止させる。この場合、通常は急停止に関する項目のうち緊急度が高い項目に関する故障が発生した場合に非常停止が可能となるため、信頼性をより向上させることが可能となる。
【0058】
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【0059】
例えば、検出回路はソフトウェア回路100とは別に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1:シーケンサ異常検出回路 10:シーケンサ 20:制御対象機器 21:主機 22:調速装置用ソレノイド 23:入口弁 24:並列用遮断器 25:界磁遮断器 100:ソフトウェア回路 110:停止制御部 120:アンサーバック監視部 130:状態監視部 140:シーケンサ重故障検出部 150:否定論理和回路 160:始動制御部 200:論理否定回路 201:急停止動作検出部 202:アンサーバック部 211:ソレノイド状態検出部 212:入口弁状態検出部 213:並列用遮断器状態検出部 214:界磁遮断器状態検出部 221~224、321~323:タイマ 231:論理和回路 300:非常停止回路 301:非常停止・急停止非動作検出部 302:指令順序異常検出部 311:入力弁閉状態検出部 312:ソレノイド開状態検出部 313:ソレノイド閉状態検出部 314:界磁遮断器閉状態検出部 315:界磁遮断器開状態検出部 316:並列用遮断器閉状態検出部 331:論理和回路 400:メモリ

図1
図2
図3
図4