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特開2023-182135混練物の温度管理システムおよびセンタリング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182135
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】混練物の温度管理システムおよびセンタリング装置
(51)【国際特許分類】
   B29B 13/02 20060101AFI20231219BHJP
   B29C 70/54 20060101ALI20231219BHJP
   B29B 7/72 20060101ALI20231219BHJP
   B29B 11/10 20060101ALI20231219BHJP
   B29C 31/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B29B13/02
B29C70/54
B29B7/72
B29B11/10
B29C31/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095558
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 友樹
(72)【発明者】
【氏名】保阪 真喜
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 賢一
【テーマコード(参考)】
4F201
4F205
【Fターム(参考)】
4F201AJ08
4F201AK04
4F201AP05
4F201AR06
4F201BA03
4F201BA04
4F201BA06
4F201BC02
4F201BC03
4F201BC06
4F201BC12
4F201BC17
4F201BC21
4F201BD05
4F201BK02
4F201BK13
4F201BK74
4F201BM01
4F201BM06
4F201BM09
4F201BN01
4F201BN09
4F201BQ07
4F201BQ22
4F201BQ57
4F205AD16
4F205AJ08
4F205AL21
4F205AP05
4F205AR06
4F205HA19
4F205HA22
4F205HA34
4F205HA35
4F205HB01
4F205HF23
4F205HK04
4F205HK23
(57)【要約】
【課題】最終製品(樹脂成形体)の不良率を低減することのできる混練物の温度管理システムに好適なセンタリング装置を提供する。
【解決手段】センタリング装置(4)は、熱可塑性樹脂を含む混練物を製造する混練装置と成形装置との間に配置される搬送装置(51)に搭載されたセンタリング装置であって、搬送装置の搬送面(510)の両側に、互いに対面して配置された一対の接触部を備え、接触部に、加熱手段(41,42)および温度測定手段(46)の少なくとも一方を設けたことを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂を含む混練物を製造する混練装置と成形装置との間に配置される搬送装置に搭載されたセンタリング装置であって、
前記搬送装置の搬送面の両側に、互いに対面して配置された一対の接触部を備え、
前記接触部に、加熱手段および温度測定手段の少なくとも一方を設けたことを特徴とする、センタリング装置。
【請求項2】
前記加熱手段が、前記接触部と一体的に形成されている、請求項1に記載のセンタリング装置。
【請求項3】
前記温度測定手段は、前記接触部から内側に向かって突出し、混練物の内部の温度を測定する、請求項1に記載のセンタリング装置。
【請求項4】
前記温度測定手段は、前記接触部の内側面に設けられ、混練物の側面の温度を測定する、請求項1に記載のセンタリング装置。
【請求項5】
請求項3に記載のセンタリング装置と、前記温度測定手段が測定した温度を入力する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記温度測定手段により測定された温度と目標温度範囲とを比較することにより、混練物の合否を判定する合否判定手段を含む、混練物の温度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂を含む混練物の温度管理システムおよびセンタリング装置に関し、特に、移送途中の混練物の温度を管理するための温度管理システム、ならびに、搬送装置(コンベア)に搭載されたセンタリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を含む混練物は冷えると固まる性質がある。そのため、熱可塑性樹脂を含む混練物を成形して樹脂成形体を製造する製造装置においては、混練装置から成形装置に至るまでの期間、混練物が冷えないように混練物を加熱(保温)する必要がある。
【0003】
たとえば特開2018-144287号公報(特許文献1)では、混練装置から吐出された連続形状の混練物を裁断する裁断装置から混練物載置台まで混練物を搬送するコンベア(搬送用コンベア)に、混練物を上方および下方のそれぞれから加温する複数の保温手段が備えられている。また、混練物載置台を構成するコンベア(位置決め用コンベア)、および、混練物載置台から混練物をピックアップするロボットハンドにも、混練物を加温する保温手段が設けられている。
【0004】
また、成形装置に投入する直前の混練物の温度が目標温度未満である場合には、成形装置で良好な製品(成形体)を成形できない可能性がある。そのため、特開2020-146977号公報(特許文献2)では、ロボットハンドの把持部を構成する針状部材に温度センサを設けて、混練物の内部の温度を測定可能とする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-144287号公報
【特許文献2】特開2020-146977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
混練物の外表面は内部よりも放熱による温度低下が著しく硬化が生じやすいことから、混練物の温度管理を適切に行うためには、特許文献1のように、移送装置による移送途中の混練物の外表面を加熱する機構を設ける必要がある。
【0007】
通常、コンベアによる搬送対象物の温度管理を行う場合、測定容易の観点から、対象物の上面の点データまたは面データを代表値として取得することが一般的であるが、厚みのある混練物を成形材料として用いる場合、混練物の温度の低下状況は部位(上面、下面、側面、など)ごとに異なることがある。そのため、このような一般的な測定方法では適切な温度管理を行うことができない。
【0008】
一方で、移送途中の混練物の外表面全体を温度ムラなく加熱しようとすると、トンネル炉内にコンベア(搬送装置)を配置するなど大掛かりなシステムが必要となる。したがって、簡易な構成で、混練物の外表面の温度ムラを低減できるようにすることも、混練物の温度管理システムにおける課題として挙げられる。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、簡易な構成で最終製品(樹脂成形体)の不良率を低減することのできる混練物の温度管理システムに好適なセンタリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のある局面に従うセンタリング装置は、熱可塑性樹脂を含む混練物を製造する混練装置と成形装置との間に配置される搬送装置に搭載されたセンタリング装置であって、搬送装置の搬送面の両側に、互いに対面して配置された一対の接触部を備え、接触部に、加熱手段および温度測定手段の少なくとも一方を設けたことを特徴とする。
【0011】
好ましくは、加熱手段が、接触部と一体的に形成されている。
【0012】
温度測定手段は、接触部から内側に向かって突出し、混練物の内部の温度を測定することが望ましい。
【0013】
あるいは、温度測定手段は、接触部の内側面に設けられ、混練物の側面の温度を測定してもよい。
【0014】
この発明の他の局面に従う混練物の温度管理システムは、上記センタリング装置と、温度測定手段が測定した温度を入力する制御装置とを備え、制御装置は、温度測定手段により測定された温度と目標温度範囲とを比較することにより、混練物の合否を判定する合否判定手段を含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセンタリング装置および温度管理システムによれば、簡易な構成で最終製品(樹脂成形体)の不良率を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の各実施の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の各実施の形態における投入待機位置、投入位置、および廃棄位置を模式的に示す平面図である。
図3】(A),(B)は、本発明の実施の形態1におけるロボットハンド(混練物投入装置)の把持部の基本構成例を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る温度管理システムの動作を示すフローチャートである。
図5】(A)は、本発明の実施の形態2におけるロボットハンドの把持部の構成例を模式的に示す図であり、(B)は、本発明の実施の形態2の変形例におけるロボットハンドの把持部の構成例を模式的に示す図である。
図6】(A)は、本発明の実施の形態2に係る温度管理システムの動作を示すフローチャートであり、(B)は、出力設定パターンテーブルの具体例を示す図である。
図7】(A),(B)は、本発明の実施の形態3におけるセンタリング装置の構成例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
[実施の形態1]
<繊維強化樹脂成形体の製造装置の概略構成>
図1を参照して、はじめに、本発明の実施の形態に係る繊維強化樹脂成形体の製造装置(以下「製造装置」と略す)1の概略構成について説明する。図1では、混練物K1,K2をハッチングで示している。
【0019】
図1に示すように、製造装置1は、繊維と熱可塑性樹脂とを混練する混練装置2と、混練装置2から吐出された連続形状の混練物(連続混練物)K1を裁断する裁断装置3と、金型90(下型91および上型92)を有する成形装置9と、裁断装置3と成形装置9との間に配置された搬送機構5とを備えている。なお、混練装置2は、熱可塑性樹脂を含む成形体材料を製造するものであればよく、繊維以外の材料と樹脂とを混練してもよい。
【0020】
裁断装置3は、混練装置2の吐出口から押し出された混練物K1を下方から受けて一方向に搬送する第1コンベア31と、第1コンベア31により搬送される混練物K1を裁断する裁断刃33と、裁断刃33による裁断後の混練物(不連続混練物)K2を一方向に搬送して混練物K2を搬送機構5に排出する第2コンベア32とで構成されている。混練物K2の搬送方向を矢印A1で示している。
【0021】
搬送機構5は、裁断装置3の第2コンベア32に連なって設けられたコンベア(以下「搬送用コンベア」という)51と、搬送用コンベア51に連なり、投入待機位置P1に配置されたコンベア(以下「待機用コンベア」という)52と、投入待機位置P1に位置する1つまたは複数の混練物K2をピックアップして金型90に投入(挿入)するロボットハンド7とを含む。図2に示すように、投入待機位置P1は、ロボットハンド7による混練物K2の受け取り位置に相当する。
【0022】
待機用コンベア52は、台車53上に載置されている。待機用コンベア52と台車53とは、混練物Kの配置パターンを調整する位置決め装置を構成していてもよい。台車53は、待機用コンベア52の搬送方向に直交する方向(以下「幅方向」という)に移動可能に設けられている。台車53上に、1個または複数個(たとえば2個)の待機用コンベア52が、幅方向に並べて載置されている。図2では、待機用コンベア52の幅方向(搬送方向に直交する方向)を矢印A2で示している。
【0023】
製造装置1に含まれる各コンベア31,32,51,52は、混練物K1,K2を一方向に搬送する搬送装置である。これらの搬送装置は、典型的にはベルトコンベアであり、搬送対象の混練物K1,K2を下方から支持する搬送ベルトと、搬送ベルトを回転駆動するプーリおよびモータを含む駆動手段とを備えている。裁断装置3の第2コンベア32および搬送用コンベア51の少なくとも一方には、搬送ベルト上に、混練物K2の位置ずれを修正するためのセンタリング装置4(想像線で示す)が配置されていることが望ましい。
【0024】
ロボットハンド7は、搬送装置により最下流位置である投入待機位置P1まで搬送されてきた混練物K2を持ち上げて成形装置9に移送する混練物投入装置であり、混練物K2を把持する把持部71と、投入待機位置P1と投入位置P2との間で把持部71を往復移動させるアーム部72とを含む。
【0025】
把持部71は、典型的にはニードルグリッパであり、複数の針状部材(後述のニードル711,712)と、複数の針状部材を進退させる進退部材とを有している。ロボットハンド7は、投入待機位置P1において、1つまたは複数の把持部71により1つまたは複数の混練物K2をピックアップし、投入位置P2において、把持部71が把持していた混練物K2を放出する動作を行う。また、混練物K2の温度が適切でない場合には、廃棄位置P3において混練物K2を放出する動作を行い、混練物K2を廃棄する。
【0026】
ロボットハンド7は、搬送装置である待機用コンベア52から混練物Kを吊り上げる吊り上げ機構として機能する。本実施の形態では、投入待機位置P1において、待機用コンベア52上の混練物K2を垂直方向に吊り上げ、その場で保持することができる。
【0027】
<混練物の加熱手段>
上述のように、混練装置2の吐出口から成形装置9に至るまでの混練物K1,K2(以下、単に「混練物K」という)の移送経路上には、混練物Kを加熱(保温)するための加熱手段が設けられている。加熱手段は、「移送装置」の各々に設けられていることが望ましい。「移送装置」は、裁断装置3に組み込まれたコンベア31,32、搬送用コンベア51、待機用コンベア52、およびロボットハンド7を含む。ここでは、移送経路上に設けられた基本的な加熱手段について説明する。
【0028】
図1に示されるように、裁断装置3に組み込まれたコンベア31,32に、混練物Kを上方から加熱する上側加熱手段36aと、混練物Kを下方から加熱する下側加熱手段36bとが設けられている。搬送用コンベア51にも、混練物Kを上方から加熱する上側加熱手段56aと、混練物Kを下方から加熱する下側加熱手段56bとが設けられている。待機用コンベア52には、混練物Kを下方から加熱する下側加熱手段57が設けられている。また、ロボットハンド7の把持部71にも、把持対象の混練物Kを上方から加熱する加熱手段80が設けられている。
【0029】
各加熱手段36a,36b,56a,56b,57,80は、たとえば赤外線ヒータにより実現される。赤外線ヒータは、被加熱物に赤外線を放射し、被加熱物に共振吸収されたエネルギーにより熱を発生させる輻射(放射)伝熱方式の加熱手段である。コンベア31,32,51の上方に設けられた上側加熱手段36a,56aは、搬送ベルトの上面(混練物Kの載置面)に対面して配置されており、非接触で混練物Kの上面(表面)を加熱する。すなわち、上側加熱手段36a,56aは、混練物Kの上面を加熱する上面加熱手段として機能する。
【0030】
コンベア31,32,51,52の内部に組み込まれた下側加熱手段36b,56b,57は、搬送ベルトの裏面に対面して配置されており、搬送ベルトを介して混練物Kの下面(裏面)を加熱する。すなわち、下側加熱手段36b,56b,57は、混練物Kの下面を加熱する下面加熱手段として機能する。
【0031】
混練物Kの下面を効率良く加熱するためには、各コンベア31,32,51,52の搬送ベルトは、多数の開口部(貫通孔)を有するメッシュベルトにより構成されていることが望ましい。これにより、下側加熱手段36b,56b,57は、搬送ベルト上の混練物Kの下面を、開口部を通過した放射エネルギーによる輻射熱と、混練物Kの下面に接触する接触部分(ワイヤおよびステーピンなど)からの伝導伝熱とにより、混練物Kを下方から加熱する。なお、コンベア31,32,51,52は、典型的にはベルトコンベアであるものの、搬送体が多数のローラで構成されたローラコンベアであってもよい。
【0032】
把持部71の加熱手段80については、図3を参照して説明する。図3は、本実施の形態におけるロボットハンド7の把持部71の基本構成例を模式的に示す図である。図3(A),(B)は、投入待機位置P1に位置する把持部71および待機用コンベア52を正面および側面からそれぞれ見た図である。なお、図3(B)には、搬送方向に沿って切断した待機用コンベア52の断面図が示されている。
【0033】
図3において矢印A1,A2で示すように、本実施の形態では、正面から見た把持部71の左右方向が待機用コンベア52の幅方向(矢印A2方向)に一致し、把持部71の奥行き方向(以下「前後方向」ともいう)が待機用コンベア52の搬送方向(矢印A1方向)に一致するものとする。なお、「一致する」とは、両方向が平行であることを意味する。
【0034】
把持部71の基本構成例についてまず説明すると、把持部71は、たとえば、正面から見て互いに交差する第一群のニードル711および第2群のニードル712を含み、第一群のニードル711および第2群のニードル712を混練物Kに突き刺すことにより、混練物Kを把持する。紙面上において、第一群のニードル711は右斜め下方向に向かって延び、第二群のニードル712は左斜め下方向に向かって延びている。
【0035】
把持部71は、シリンダ751およびピストン752を有するニードル駆動手段75を含む。シリンダ751が、アーム部72の先端部に直接または間接的に連結された連結部73に固定され、ピストン752が、ガイド部材(図示せず)を介して、第一群のニードル711および第2群のニードル712をそれぞれ保持する保持部材741,742に固定されている。
【0036】
図3(B)に示されるように、保持部材741,742は、前後方向に長さを有しており、保持部材741,742にはそれぞれ、多数のニードル711,712が左右方向および前後方向に整列した状態で固定されている。これにより、ピストン752の往復運動によって第一群のニードル711および第2群のニードル712のそれぞれが、長手方向に沿って、初期位置(最も後退した位置)と把持位置(最も前進した位置)との間を進退する。ニードル711,712の進退動作は、把持部71の全体が「退避位置」から「作業位置」に下降された場合にのみ行われる。
【0037】
第一群のニードル711および第2群のニードル712に干渉しない位置に、把持対象の混練物Kを上方から加熱する加熱手段80が設けられている。本実施の形態の加熱手段80は、混練物Kの上面11を加熱する上面加熱手段として機能する。
【0038】
加熱手段80は、たとえば前後方向に沿って延在する複数本の赤外線ヒータ810により実現される。複数本の赤外線ヒータ810は、左右方向において互いに間隔をあけて配置されている。各赤外線ヒータ810の長手方向両端部は、上下方向に延在する取り付け部811,812を介して、一対のヒータ保持部材82,83に保持されている。一対のヒータ保持部材82,83は、前後方向において互いに対面して配置されている。
【0039】
赤外線ヒータ810は、たとえば、初期位置におけるニードル711,712の高さ範囲内(上端位置と下端位置との間)に配置されており、ニードル711,712は、隣り合う赤外線ヒータ810の間を通る。なお、赤外線ヒータ810は、ニードル711,712が把持位置に位置して混練物Kを把持している状態において、混練物Kと接触しない高さに配置されている。
【0040】
このような赤外線ヒータ810が把持部71に組み込まれているため、把持している混練物Kの上面11を均一に加熱することができる。また、赤外線ヒータ810は非接触の加熱手段であるため、把持部71を待機用コンベア52上で待機させている期間(後述の把持待機状態)においても、待機用コンベア52上に載置された混練物Kを上方から加熱することもできる。
【0041】
上述のように、本実施の形態において、裁断装置3による裁断後の混練物Kは、ロボットハンド7によりピックアップされるまでの移送期間中、上方および下方の両方から加熱される。これにより、混練物Kの外表面の冷えを抑制することができる。しかしながら、実際の混練物Kはシート材とは異なり、厚みがある。また、混練物Kの形状も一様ではなく、外表面には不規則な凸凹が生じていることが一般的である。そのため、混練物Kの上面11および下面12をそれぞれ独立した上面加熱手段および下面加熱手段によって加熱したとしても、混練物Kの上面11、下面12、および側面13の温度状態はそれぞれ異なることが多い。
【0042】
なお、樹脂溶融状態である混練物K(K2)の立体形状は直方体や立方体形状に限らないため、各面の境界が曖昧な場合があるが、本明細書では、混練物Kを真上から見て見える部分を「上面」、搬送装置の搬送面に接する部分を「下面」、それ以外の部分を「側面」と称する。この定義によれば、「側面」には、左側面および右側面だけでなく、裁断装置3による切断面である前端面および後端面が含まれるものの、以下の説明において「側面」とは、特筆しない限り、左側面および/または右側面を表わす。また、以下の説明において「両側面」と称する場合、左側面および右側面の両面を表わす。
【0043】
上記のように、混練物Kの外表面は部位により温度ムラが生じやすいという実情に鑑み、本実施の形態に係る製造装置1には、図2に模式的に示すように、たとえば搬送機構5を構成する移送装置による移送途中の混練物Kの温度を管理するための温度管理システムSYS1が搭載されている。
【0044】
<温度管理システムの構成>
図2および図3を参照して、温度管理システムSYS1の主な構成について説明する。温度管理システムSYS1は、混練物Kの上面11、下面12、および側面13のそれぞれを測定対象面とし、測定対象面ごとに温度を測定する温度測定手段61と、測定対象面ごとに、温度測定手段61により測定された温度と目標温度範囲とを比較することにより、混練物Kの合否を判定する合否判定部601とを備えている。
【0045】
本実施の形態の温度測定手段61は、投入待機位置P1に位置する混練物Kの各面の温度を測定する。この場合、合否判定部601の機能は、ロボットハンド7を制御する制御装置60により実現される。
【0046】
(温度測定手段について)
図3(A)に示されるように、温度測定手段61は、たとえば、混練物Kの上面11の温度を測定する第1の放射温度計611と、混練物Kの下面12の温度を測定する第2の放射温度計612と、混練物Kの側面13の温度を測定する第3の放射温度計613とを含む。
【0047】
第1の放射温度計611は、上面温度測定手段として機能する。第1の放射温度計611は、ロボットハンド7の把持部71に下向きに固定されている。これにより、第1の放射温度計611は、把持部71を投入待機位置P1にて待機させている期間に、待機用コンベア52上の混練物Kの上面温度Tuを測定することができる。また、把持部71により混練物Kを把持した状態(後述の投入待機状態)において、混練物Kの上面温度Tuを測定することも可能である。
【0048】
第2の放射温度計612は、下面温度測定手段として機能する。第2の放射温度計612は、待機用コンベア52の側部521に、内側かつ斜め上方を指向するように固定されている。第2の放射温度計612は、たとえば鋭角の角度付きブラケット522を介して、側部521の上端面に取り付けられている。これにより、第2の放射温度計612は、把持部71により混練物Kが吊り上げられた状態において、混練物Kの下面温度Tdを斜入角で測定することができる。
【0049】
第3の放射温度計613は、側面温度測定手段として機能する。第3の放射温度計613もまた、上記ブラケット522を介して、待機用コンベア52の側部521に内側かつ斜め上方を指向するように固定されている。第3の放射温度計613は、第1の放射温度計612よりも上方に取り付けられている。これにより、第3の放射温度計613は、把持部71により混練物Kが吊り上げられた状態において、混練物Kの側面温度Tsを測定することができる。なお、第3の放射温度計613は、混練物Kの側面13を真っすぐ指向するように、水平に固定されていてもよい。
【0050】
第2および第3の放射温度計612,613が固定される側部521は、混練物Kを載置している搬送面(搬送ベルトの上面)520の側方に位置する部分であればよく、待機用コンベア52の一部である例に限定されない。
【0051】
第1~第3の放射温度計611~613は1つずつ設けられていてもよいし、待機用コンベア52の搬送方向(把持部71の前後方向)に沿って複数個ずつ設けられていてもよい。通常、混練物Kの両側面13の温度状態は同程度となるため、第3の放射温度計613は待機用コンベア52の片側にのみ設けることで足りるものの、待機用コンベア52の両側に設けてもよい。また、本実施の形態では、温度測定手段61が、第1~第3の放射温度計611~613によって実現される例を示したが、限定的ではなく、たとえば赤外線カメラにより実現されてもよい。
【0052】
(制御装置について)
制御装置60は、プロセッサおよびメモリを含む情報処理装置であり、たとえばPLC(Programmable Logic Controller)により実現されてもよい。
【0053】
図3(A)には、待機用コンベア52および把持部71の構造例とともに、制御装置60の機能構成が図示されている。図3(A)に示されるように、制御装置60は、第1~第3の放射温度計611~613がそれぞれ測定した混練物Kの上面温度Tu、下面温度Td、および側面温度Tsに基づいて、混練物Kの合否を判定する合否判定部601と、合否判定部601による判定結果に応じて、ロボットハンド7を制御する移送制御部602とを含む。
【0054】
合否判定部601は、測定対象面ごとに、測定温度と目標温度範囲とを比較することにより、混練物Kの合否を判定する。本実施の形態では、上面温度Tu、下面温度Td、および側面温度Tsの全てが目標温度範囲内である場合に「合格」と判定し、これらのうちいずれか1つでも目標温度範囲外である場合には「不合格」と判定する。
【0055】
目標温度範囲の上限値(上限温度)および下限値(下限温度)は、混練物Kに含まれる熱可塑性樹脂の種類に応じて定められればよい。目標温度範囲は、上限温度と下限温度との差がたとえば10~50度程度となるように事前に設定される。熱可塑性樹脂の種類がたとえばポリアミド(6ナイロン)である場合、上限温度がたとえば300℃、下限温度がたとえば250℃に設定されることが想定される。
【0056】
混練物Kの外表面の温度が上限温度(例えば300℃)を超過すると、樹脂の熱劣化が著しくなり、逆に下限温度(例えば250℃)を下回ると、混練物Kの内部との温度差が大きくなり、成形物の内部にボイドやウェルドラインが形成される可能性がある。つまり、どちらの場合も、成形物の欠陥に繋がり、所定の力学特性を得ることができない。そのため、合否判定部601は、上面温度Tu、下面温度Td、および側面温度Tsの全てが目標温度範囲内である場合に限り、「合格」と判定する。
【0057】
移送制御部602は、合否判定部601による判定結果に応じて、混練物Kを投入位置P2および廃棄位置P3のいずれか一方に移送する制御を行う。具体的には、合否判定部601により合格と判定された場合に、投入位置P2に混練物Kを移送し、合否判定部601により不合格と判定された場合には、廃棄位置P3に混練物Kを移送するよう、ロボットハンド7を制御する。
【0058】
一般的には、放射温度計611などによって測定した上面11の温度Tuを、混練物Kの表面温度の代表値として用いることが多い。しかし、たとえば下面12や側面13に昇温不足がある状態で成形装置9において混練物Kを成形すると、成形体の裏面(下面)には加熱ムラによる痕跡が残り、外観不良となるおそれがある。これに対し、本実施の形態では、上面11、下面12、および側面13の全てを測定対象面とし、全ての測定対象面が適切に昇温された状態の混練物Kのみが投入位置P2に移送されるので、成形装置9において外観の良い成形体を製造することができる。つまり、最終製品の再現性を高めることができる。
【0059】
<温度管理システムの動作>
図4は、本実施の形態に係る温度管理システムSYS1の動作を示すフローチャートである。図4を参照して、製造装置1の運転を開始する前に、たとえば制御装置60が備える操作手段(図示せず)や制御装置60とネットワークを介して接続された通信装置等を操作することにより、測定対象面の目標温度範囲を設定する(ステップS2)。目標温度範囲は、たとえば250℃~300℃である。ここで設定した目標温度範囲は、制御装置60のメモリ内に記憶される。なお、測定対象面ごとの目標温度範囲は完全に一致していていもよいし、部分的に一致していてもよい(上限値および下限値が多少ずれていてもよい)。
【0060】
その後、製造装置1の運転が開始されると(ステップS4)、制御装置60は、投入待機位置P1にロボットハンド7の把持部71を移動させる(ステップS6)。投入待機位置P1において把持部71が混練物Kを把持せずに退避位置にて停止している状態を、「把持待機状態」という。
【0061】
混練物Kが待機用コンベア52まで移送されると、把持部71に組み込まれた加熱手段80と待機用コンベア52に組み込まれた加熱手段57とにより、把持待機状態のまま、混練物Kの上面11および下面12が加熱される。その後、予め定められた投入タイミング(投入位置P2への移送タイミング)となると、把持部71を作業位置まで下降させて混練物Kの把持動作(混練物Kにニードル711,712を突き刺す動作)を行い、待機用コンベア52から混練物Kを持ち上げる(ステップS8)。
【0062】
これにより、図3(A),(B)に示されるように、投入待機位置P1において、混練物Kの下面12と待機用コンベア52の搬送面520との間に空間20ができる。投入待機位置P1において把持部71が混練物Kを把持した状態で退避位置にて停止している状態を、「投入待機状態」という。
【0063】
制御装置60の合否判定部601は、把持部71が投入待機状態のときに、温度測定手段が測定した測定対象面(上面11、下面12、および側面)の温度を取得する(ステップS10)。つまり、第1~第3の放射温度計611~613によりそれぞれ測定された混練物Kの上面11、下面12、および側面の温度を取得する。
【0064】
合否判定部601は、取得した温度が目標温度範囲内か否かを個別に判断する(ステップS12)。全ての面の温度が目標温度範囲内であれば(ステップS12にてYES)、合格と判定する。その場合、移送制御部602は、ロボットハンド7のアーム部72を制御して把持部71を投入待機位置P1から投入位置P2に移動させることにより、混練物Kを投入位置P2に移送する(ステップS14)。
【0065】
これに対し、少なくとも1つの面の温度が目標温度範囲外であれば(ステップS12にてNO)、合否判定部601は不合格と判定する。その場合、移送制御部602は、ロボットハンド7のアーム部72を制御して把持部71を投入待機位置P1から廃棄位置P3に移動させることにより、混練物Kを廃棄位置P3へと移送する(ステップS16)。
【0066】
投入位置P2または廃棄位置P3において、制御装置60がニードル711,712を後退させて把持部71による混練物Kの把持を解除する。これにより、投入位置P2または廃棄位置P3において混練物Kが放出されると、ステップS6に戻り、上記処理を繰り返す。
【0067】
以上説明したように、本実施の形態では、ロボットハンド7によって待機用コンベア52から混練物Kが吊り上げられた状態、すなわち投入待機状態において、混練物Kの温度を測定するようにすることで、混練物Kの上面11だけでなく、下面12および側面13を測定対象面とすることができるので、精度良く混練物Kの良否を判定することができる。なお、本実施の形態では、測定対象面の温度が目標温度範囲を下回る場合(下限値未満の場合)にのみ、不合格と判定してもよい。
【0068】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る温度管理システムSYS2は、混練物Kの側面13を加熱する側面加熱手段をさらに含む。つまり、本実施の形態では、温度測定手段による測定対象面ごとに加熱手段が設けられる。以下に、実施の形態1と異なる部分のみ詳細に説明する。
【0069】
図5は、本実施の形態におけるロボットハンド7の把持部71Aの基本構成例を模式的に示す図である。把持部71Aは、混練物Kを上方から加熱する上側加熱手段(上面加熱手段)80に加え、混練物Kを側方(たとえば上斜め側方)から加熱する側面加熱手段84を有している。
【0070】
側面加熱手段84は、ヒータ保持部材82から両側方にはみ出して設けられた一対の赤外線ヒータ840を含む。赤外線ヒータ840は、上述の赤外線ヒータ810と平行に、前後方向に沿って延びている。一対の赤外線ヒータ840は、たとえば、上端から下端に向かって外斜め方向に延在する取り付け部841を介して、ヒータ保持部材82に取り付けられている。つまり、取り付け部841の上端部がヒータ保持部材82に取り付けられている。
【0071】
取り付け部841は、ヒータ保持部材82に回動可能に取り付けられることが望ましい。これにより、赤外線ヒータ840の入射角度を調整することができるので、様々な形状(厚み、幅寸法、など)の混練物Kの側面13に放射熱を与えることができる。
【0072】
投入待機位置P1における加熱手段57,80,84のデフォルトの出力は「中出力」とされる。本実施の形態の制御装置60Aは、混練物Kの各面の初期温度に応じて、これらの加熱手段57,80,84の出力を個別に調整する加熱制御部603を含む。加熱制御部603による加熱制御は、合否判定部601による合否判定前に行われることが望ましい。これにより、混練物Kの廃棄率を少なくすることができる。
【0073】
すなわち、本実施の形態に係る温度管理システムSYS2は、把持部71Aが投入待機状態の際に、i)各面の初期温度の測定、ii)加熱手段の出力調整、iii)各面の最終温度の測定、を順に行い、合否判定部601は、iii)の結果に応じて混練物Kの合否判定を行う。
【0074】
本実施の形態に係る温度管理システムSYS2の動作について、図6を参照しながら説明する。なお、図6のフローチャートのうち、図4のフローチャートと同じ処理については同じステップ番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0075】
本実施の形態では、ステップS6において把持部71Aが投入待機位置P1に到着してすぐに、制御装置60Aは、把持部71Aを作業位置まで下降させて混練物Kの把持動作を行い、把持部71Aを投入待機状態とする。つまり、ロボットハンド7によって混練物Kが投入待機位置P1で持ち上げ保持される(ステップS8A)。
【0076】
把持部71が投入待機状態となると、加熱制御部603は、温度測定手段が測定した測定対象面(上面11、下面12、および側面13)の初期温度を取得する(ステップS91)。つまり、第1~第3の放射温度計611~613によりそれぞれ測定された混練物Kの上面11、下面12、および側面13の温度を取得する。そして、各面の初期温度が目標温度範囲内か否かを判定することにより、加熱手段57,80,84の出力調整(加熱制御)を行う(ステップS92)。具体的には、たとえば図6(B)に示すような出力設定パターンテーブルに基づいて、加熱手段57,80,84の出力調整が行われる。
【0077】
ある面の初期温度が下限温度(目標温度範囲の下限値)を下回っている場合に、対応する加熱手段の出力を高出力にする。たとえば、混練物Kの下面12の初期温度が下限温度を下回っている場合、待機用コンベア52の赤外線ヒータ57の出力をデフォルトの出力(中出力)から高出力に変更する。逆に、ある面の初期温度が上限温度(目標温度の上限値)を上回っている場合には、対応する加熱手段の出力を低出力にする。ある面の初期温度が目標温度範囲内(下限温度以上かつ上限温度以下)である場合、対応する加熱手段の出力を中出力(デフォルトの出力)に維持し、現状の温度を維持する。
【0078】
このような加熱制御を行うことにより、把持部71が把持している混練物Kの外表面の温度ムラを抑制することができる。なお、加熱制御の際には、上述の合否判定用の「目標温度範囲」から所定温度だけ余裕を持たせた温度範囲(加熱用の目標温度範囲)と比較してもよい。この場合、頻繁な出力の変更を抑制できるので、混練物Kの加熱温度が不安定になることを防止することができる。
【0079】
加熱手段57,80,84の加熱制御の後、予め定められた投入タイミング(投入位置P2への移送タイミング)となった時点で、合否判定部601が、温度測定手段が測定した測定対象面(上面11、下面12、および側面13)の温度を取得する(ステップS10A)。すなわち、加熱制御部603による調整後の最終温度を取得する。そして、実施の形態1と同様に、各面の最終温度が目標温度範囲内か否かを個別に判定することにより、混練物Kの合否判定および移送制御を行う(ステップS12、S14、S16)。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態によれば、簡易な構成で、混練物Kの外表面の温度ムラを抑制できるので、実施の形態1よりも混練物Kの廃棄率を低下させることができる。その結果、製造装置1による樹脂成形体の生産性を高めることができる。
【0081】
<側面加熱手段の変形例>
本実施の形態では、把持部71Aの側面加熱手段84が、赤外線ヒータ840により構成されることとしたが、このような例に限定されない。
【0082】
たとえば図5(B)に示すように、側面加熱手段84は、上側加熱手段80からの放射光を混練物Kの側面13に向かって反射させる反射板85により構成されてもよい。図5(B)に示す把持部71Bは、一対の反射板85を有している。一対の反射板85は、上側加熱手段80を構成する複数本の赤外線ヒータ810の両側方に、赤外線ヒータ810と平行に配置されている。反射板85は、赤外線ヒータ810の長手方向(前後方向)に沿って延在していることが望ましい。
【0083】
本変形例によれば、赤外線ヒータ810の放射光が反射板85で反射して混練物Kの側面13に入射するので、把持部71Bが備える上側加熱手段80の放射熱を利用して混練物Kの両側面13を間接的に加熱することができる。このように、把持部71Bが備える上側加熱手段80によって、混練物Kの上面11および両側面13が加熱されてもよい。
【0084】
<他の変形例>
温度管理システムSYS2は、混練物Kの六面(上面11、下面12、両側面13、および前後の切断面14,15)の全てを加熱する加熱手段を備えていてもよい。つまり、上述の上側加熱手段80、下側加熱手段57、側面加熱手段84に加えて、混練物Kの前端面14および後端面15(図3(B)参照)を加熱する加熱手段を備えていてもよい(図示せず)。この加熱手段もまた、赤外線ヒータにより構成し、ロボットハンド7の把持部に搭載することが可能である。
【0085】
また、温度管理システムSYS2は、混練物Kの切断面(前端面14、後端面15)の少なくとも一方の温度を測定する温度測定手段をさらに備えていてもよい。これにより、混練物Kの温度管理をより適正に行うことができる。
【0086】
なお、温度測定手段は、混練物Kの上面11、下面12、および側面13のうち少なくとも2面を測定対象面として設けられていればよい。この場合、温度管理システムSYSは、典型的には、上面温度測定手段と、下面温度測定手段または側面温度測定手段とを含む。同様に、温度管理システムSYSは、混練物Kの上面11を加熱する上面加熱手段と、混練物Kの下面または側面を加熱する他面加熱手段(下面加熱手段または側面加熱手段)とを含んでいればよい。温度測定手段は、これらの加熱手段による加熱対象面が測定対象面となるように設けられていることが望ましい。
【0087】
加熱手段および温度測定手段は、各々の対象面に近い位置に設けられていることが望ましいものの、温度管理が可能な範囲であれば、対象面から離れた位置に設けられていてもよい。
【0088】
[実施の形態3]
上記実施の形態2では、投入待機位置P1において、混練物Kの上面11および下面12だけでなく側面13を加熱できるようにすることで、混練物Kの外表面の温度ムラを抑制する例について説明したが、投入待機位置P1に至るまでの搬送経路上においても、混練物Kの側面13を加熱できるようにすることが望ましい。
【0089】
本実施の形態に係る温度管理システムSYS3は、センタリング装置4に搭載された側面加熱手段を備えている。センタリング装置4の構成例を図7に示す。図7では、センタリング装置4がたとえば搬送用コンベア51に搭載された例を示している。図7(A)には、センタリング装置4の退避状態(混練物Kから離れた状態)が示され、(B)には、センタリング装置4の作動状態(混練物Kに接した状態)が示されている。
【0090】
図7を参照して、センタリング装置4は、搬送用コンベア51の搬送面510の上方かつ搬送基準ラインLの両側に設けられ、互いに対面する一対の加熱プレート41,42と、加熱プレート41,42を幅方向に沿って往復移動させる移動機構45とを含む。加熱プレート41,42は、搬送面510に対して垂直に配置され、搬送方向に沿って延びている。移動機構45は、たとえば、加熱プレート41,42それぞれの裏面に固定された進退部材43,44と、進退部材43,44を同期させて駆動する駆動手段(図示せず)とを含む。
【0091】
このように、本実施の形態では、混練物Kの両側面13に押し当てる「接触部」自体が、加熱プレート41,42により構成されている。これにより、混練物Kのセンタリング(位置ずれの修正)と、伝導伝熱による混練物Kの両側面13の加熱とを、同時に行うことができる。なお、加熱プレート41,42が混練物Kの両側面13に押し当てられる作動状態の際に、搬送用コンベア51の搬送ベルト51Bの回転を一時停止することにより、作動状態を一定時間(たとえば20秒~40秒程度)継続させてもよい。これにより、混練物Kの側面13の加熱を効果的に行うことができる。
【0092】
また、図1に示したように、搬送用コンベア51には、輻射(放射)伝熱方式の上側加熱手段56aおよび下側加熱手段56bが設けられ、搬送ベルト51Bは、多数の開口部(貫通孔)を有するメッシュベルトにより構成されている。そのため、混練物Kの上面11は、上側加熱手段56aによる輻射熱により加熱され、混練物Kの下面12は、搬送ベルト51Bの開口部を通過する輻射熱と他の接触部分(ワイヤおよびステーピンなど)を介した伝導伝熱とにより加熱される。そのため、搬送用コンベア51に大掛かりなトンネル炉を設けなくても、搬送ベルト51B上の混練物Kの上面11、下面12、および両側面13の全てを、効率的かつ省エネルギーで加熱することができる。
【0093】
ここで、図7(A)に示されるように、加熱プレート41,42の内側面410,420から搬送基準ラインLに向かって(内側に向かって)突出するように、棒状の温度センサ46が設けられていてもよい。温度センサ46は、混練物Kの内部の温度を測定する温度測定手段であり、たとえば熱電対により構成される。
【0094】
この場合、加熱プレート41,42を退避位置から作業位置へと移動させる過程において、温度センサ46が混練物Kの両側面13から混練物Kの内部に突き刺される。また、加熱プレート41,42を作業位置から退避位置へと戻す過程において、温度センサ46が混練物Kの内部から引き抜かれる。
【0095】
図示されるように、温度センサ46は、各加熱プレート41,42の長手方向(搬送方向)に沿って複数個(たとえば2個)設けられていてもよい。これにより、一つの混練物Kに対し、複数個所の内部温度Tiを取得することができる。温度センサ46により測定された内部温度Tiは、制御装置60Bに入力される。
【0096】
本実施の形態における制御装置60Bは、上述の合否判定部601と同様に、取得した内部温度Tiと目標温度範囲とを比較することにより、混練物Kの合否判定を行ってもよい。あるいは、取得した内部温度Tiを混練物Kごとに(つまり、サイクルごとに)メモリに記録してもよい。
【0097】
前者の場合、実施の形態1,2のように、内部温度Tiが目標温度範囲外である場合(混練物Kが不合格である場合)、不合格の混練物Kが待機用コンベア52に移送された時点で、当該混練物Kを廃棄位置P3に移送するようロボットハンド7を制御してもよい。あるいは、搬送用コンベア51の近傍に廃棄用のロボットハンド(図示せず)を設けて、搬送用コンベア51の下流側端部から直接、不合格の混練物Kをピックアップして廃棄位置P3に移送するようにしてもよい。つまり、制御装置60Bは、その機能として、内部温度Tiに応じて混練物Kの合否判定を行う合否判定手段と、合否判定手段により不合格と判定された場合に混練物Kを廃棄位置に移送する移送制御手段とを備えていてもよい。
【0098】
なお、本実施の形態では、混練物Kの両側面13に接触する一対の「接触部」自体が加熱プレート41,42により構成された例を示したが、このような例に限定されない。たとえば、接触部のうち混練物Kの側面13に接触する部分(内側面)に薄型の加熱プレートを設けてもよい。
【0099】
あるいは、本実施の形態では、側面加熱手段が接触部と一体的に形成され、混練物Kに接触することにより加熱する例について説明したが、このような例に限定されない。たとえば、接触部を複数の開口部(孔)のある板状部材により形成し、接触部の外側面側に、非接触で混練物Kを加熱する輻射伝熱方式の加熱手段(赤外線ヒータ)を設けてもよい。この場合、搬送用コンベア51上の混練物Kの両側面13を、接触部の開口部を通過する輻射熱と孔以外の接触部分を介して加えられる伝導伝熱とにより加熱することができる。
【0100】
また、本実施の形態では、接触部(加熱プレート41,42)に設けられた「温度測定手段」が、接触部から内側に向かって真っすぐ突出する温度センサ46により構成され、混練物Kの内部の温度を測定する例を示したが、このような例に限定されない。たとえば、接触部の内側面(接触面)に貼り付けられた薄型の温度センサにより、混練物Kの側面13の温度(Ts)を測定してもよい。
【0101】
また、本実施の形態では、センタリング装置4の一対の接触部に加熱手段が設けられた例を示したが、一対の接触部に温度測定手段のみが設けられてもよい。つまり、接触部に、加熱手段および温度測定手段の少なくとも一方が設けられていればよい。
【0102】
なお、裁断装置3の第2コンベア32にセンタリング装置4を搭載する場合においても、センタリング装置4を上記のような構成とすることができる。
【0103】
以上説明した通り、各実施の形態に係る温度管理システムSYS1~SYS3は、混練装置2から成形装置9までの移送経路上の少なくとも一部において、混練物Kを立体的に加熱するとともに、混練物Kの上面温度と他面の温度を取得する。たとえば炭素繊維と熱可塑性樹脂との混練物においては、炭素繊維の高い熱伝導率により、外気に接触する外表面は急激に冷えやすいという特徴がある。また、混練物の内部の多数の気泡(酸素)と炭素繊維とが反応して発熱することから、冷えて固化した表面が断熱材となり、混練物の内部は外周部よりも高温状態となるという特徴がある。そのため、上述の各実施の形態のように、混練物Kの上面11を含む複数個所の温度を取得することにより、混練物Kの温度状態を適切に把握することができる。その結果、混練物Kの温度管理を適切に行うことができる。
【0104】
なお、実施の形態1または2と実施の形態3とを組み合わせて、図3に示した投入待機状態において合否判定部601による合否判定に用いるパラメータに、内部温度Tiを含めてもよい。この場合、合否判定部601は、上面温度Tu、下面温度Td、内部温度Tiの全てが目標温度範囲内である場合にのみ合格と判定することができるので、温度状態が良好な混練物Kのみを投入位置P2に移送することができる。したがって、成形装置9によって高精度な樹脂成形体を成形することができる。
【0105】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0106】
1 混練物の製造装置、2 混練装置、3 裁断装置、4 センタリング装置、5 搬送機構、7 ロボットハンド(混練物投入装置)、9 成形装置、31,32,51,52 コンベア(搬送装置)、36a,36b,56a,56b,57,80,84 加熱手段(赤外線ヒータ)、41,42 加熱プレート、46,61 温度測定手段、60,60A,60B 制御装置、71,71A,71B 把持部、85 反射板、601 合否判定部、602 移送制御部、603 加熱制御部、K,K1,K2 混練物、P1 投入待機位置、P2 投入位置、P3 廃棄位置、SYS 温度管理システム、Td 下面温度、Ti 内部温度、Ts 側面温度、Tu 上面温度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7