(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182137
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/06 20060101AFI20231219BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G03G15/06 101
G03G15/08 220
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095560
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】井上 達也
【テーマコード(参考)】
2H073
2H077
【Fターム(参考)】
2H073AA02
2H073AA07
2H073BA04
2H073BA09
2H073BA13
2H073BA41
2H073BA45
2H073CA03
2H077AB02
2H077AB14
2H077AB15
2H077AC02
2H077AD02
2H077AD06
2H077AD13
2H077AD18
2H077AD24
2H077AD36
2H077AE06
2H077DA24
2H077DA43
2H077DA82
2H077DB08
2H077EA03
(57)【要約】
【課題】 現像ローラの回転駆動を開始してから現像ローラの回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の減少を抑制する。
【解決手段】 画像形成装置であって、駆動手段による前記現像剤担持体の回転駆動を開始してから前記現像剤担持体の回転速度が前記画像形成時の速度に到達するまでの期間における、前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差(Vpp)を第1のピークツーピーク値とし、前記画像形成時における、前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差(Vpp)を第2のピークツーピーク値とした場合、前記第1のピークツーピーク値は、前記第2のピークツーピーク値よりも小さいことを特徴とする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と、
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、を有する現像装置と、
前記現像剤担持体を回転駆動する駆動手段と、
前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、
前記像担持体に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加手段と、
を備え、
前記駆動手段による前記現像剤担持体の回転駆動を開始してから前記現像剤担持体の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間における前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差を第1のピークツーピーク値とし、前記画像形成時における前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差を第2のピークツーピーク値とした場合、前記第1のピークツーピーク値は、前記第2のピークツーピーク値よりも小さい
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記現像バイアス印加手段は、前記駆動手段により回転駆動された前記現像剤担持体の回転速度が前記画像形成時の前記現像剤担持体の回転速度に到達した時点から起算して100msec以上であって且つ当該時点から起算して前記像担持体が1回転するまでの間に、前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差が前記第1のピークツーピーク値から前記第2のピークツーピーク値となるように前記現像剤担持体に印加する前記現像バイアスを変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記駆動手段による前記現像剤担持体の回転駆動を開始してから前記現像剤担持体の回転速度が前記画像形成時の速度に到達するまでの前記期間における、前記現像バイアス印加手段により前記現像バイアスが印加された前記現像剤担持体の表面電位と、前記帯電バイアス印加手段により前記帯電バイアスが印加された前記像担持体の表面電位との差分の絶対値は、前記画像形成時における、前記現像バイアス印加手段により前記現像バイアスが印加された前記現像剤担持体の表面電位と、前記帯電バイアス印加手段により前記帯電バイアスが印加された前記像担持体の表面電位との差分の絶対値よりも小さい
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記帯電バイアス印加手段は、前記駆動手段による前記現像剤担持体の回転駆動を開始してから前記現像剤担持体の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの前記期間において、前記像担持体の表面電位が第1の電位となるように前記像担持体に前記帯電バイアスを印加し、その後、前記画像形成時において、前記像担持体の表面電位が前記第1の電位とは異なる第2の電位となるように前記像担持体に前記帯電バイアスを印加する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成された静電潜像を現像する現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は、感光体ドラム(像担持体)と、像担持体を帯電する帯電装置と、像担持体に形成された静電潜像を現像するためにトナーとキャリアを含む現像剤を担持する現像ローラ(現像剤担持体)を有する現像装置と、を備える。
【0003】
特許文献1には、画像形成期間中において、現像ローラに現像DCバイアスと現像ACバイアスとを印加する画像形成装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者らの検討によれば、前回転動作が開始されて現像ローラの回転駆動を開始した直後の非画像形成期間(以降、前回転動作の非画像形成期間と呼ぶ)では、画像形成時と比べて、感光体ドラムの非画像部にキャリアが付着する現象が生じやすいことが分かった。これは、画像形成時は現像ローラの回転駆動の立ち上げが完了している為に現像ローラの回転速度が安定しているのに対し、前回転動作の非画像形成期間では現像ローラの回転駆動の立ち上げの為に現像ローラの回転速度が安定していない事が関係している。
【0006】
一般的に、現像バイアスの交流電圧(現像ACバイアス)の最大電圧と最小電圧の差であるVpp(ピークツーピーク値)を小さくした場合は、Vppを大きくした場合と比べて、感光体ドラムの非画像部にキャリアが付着する現象が抑制される傾向がある。そこで、前回転動作の非画像形成期間において、感光体ドラムの非画像部にキャリアが付着する現象(以降、キャリア付着と呼ぶ)を抑制するために、前回転動作を開始した以降のVppを一律に小さくすることが考えられる。一方、画像形成時においてVppを小さくした場合は、Vppを大きくした場合と比べて、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量が減少する傾向がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、現像ローラの回転駆動を開始してから現像ローラの回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の減少を抑制する事が可能な画像形成装置を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像形成装置は以下のような構成を備える。即ち、像担持体と、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、前記像担持体に形成された静電潜像を現像するために前記現像剤を担持する回転可能な現像剤担持体と、を有する現像装置と、前記現像剤担持体を回転駆動する駆動手段と、前記現像剤担持体に直流電圧と交流電圧とを重畳した現像バイアスを印加する現像バイアス印加手段と、前記像担持体に帯電バイアスを印加する帯電バイアス印加手段と、を備え、前記駆動手段による前記現像剤担持体の回転駆動を開始してから前記現像剤担持体の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間における前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差を第1のピークツーピーク値とし、前記画像形成時における前記現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差を第2のピークツーピーク値とした場合、前記第1のピークツーピーク値は、前記第2のピークツーピーク値よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、現像ローラの回転駆動を開始してから現像ローラの回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の減少を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る画像形成装置の構成を説明するための図である。
【
図2】第1の実施形態に係る現像装置の構成を説明するための断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る画像形成動作(作像動作)のシーケンスを示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る画像形成動作(作像動作)のシーケンスを示す図である。
【
図5】第3の実施形態に係る画像形成動作(作像動作)のシーケンスを示す図である。
【
図6】従来例における画像形成動作(作像動作)のシーケンスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また、本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。本発明は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
【0012】
[第1の実施形態]
(画像形成装置の構成)
図1は、インライン方式(4ドラム系)のカラー画像形成装置100の構成図である。
【0013】
画像形成装置100は、イエロー色の画像を形成する画像形成部と、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部と、シアン色の画像を形成する画像形成部と、ブラック色の画像を形成する画像形成部の4つの画像形成部(画像形成ユニット)を備えている。これらの4つの画像形成部は一定の間隔をおいて一列に配置されている。以下、符号に添字A、B、C、Dが記載されている場合には、それぞれイエロー色、マゼンタ色、シアン色、ブラック色の各々の部材(もしくは装置)を示し、添字の記載がなく単に符号のみである場合には、色に関わらない部材(もしくは装置)を示すものとする。
【0014】
各画像形成部には、それぞれ像担持体である感光体ドラム1A、1B、1C、1Dが配置されている。感光体ドラム1A、1B、1C、1Dは、負帯電の有機感光体でアルミニウム等のドラム基体上に感光層を有しており、駆動装置によって所定のプロセススピードで回転駆動される。
【0015】
各感光体ドラム1A、1B、1C、1Dの周囲には、帯電ローラ2A、2B、2C、2D、及び現像装置4A、4B、4C、4D、及び一次転写ローラ61A、61B、61C、61Dがそれぞれ配置されている。
【0016】
ここで、帯電装置として導電性ゴムから形成される帯電ローラ2を用いた画像形成ユニットについて詳細に説明する。帯電ローラ2は、芯金の両端部を軸受け部材により一定の軸間距離を保って、回転自在に保持される。また、帯電ローラ2は、押圧ばねによって感光体ドラム1に向かって付勢して、感光体ドラム1の表面に対して所定の押圧力をもって圧接させている。帯電ローラ2は、感光体ドラム1の回転に従動して回転し、帯電ローラ2の芯金には、所定の条件の帯電バイアスが印加される。これにより、帯電ローラ2と接触しながら回転する感光体ドラム1の表面は、所定の極性・電位に接触帯電処理される。
【0017】
さらに、各感光体ドラム1A、1B、1C、1Dの上方には、帯電処理された感光体ドラム1の表面に静電潜像を形成するための露光手段(露光装置)3A、3B、3C、3Dがそれぞれ配置されている。なお、露光装置3は、画像処理部9と電気的に接続されており、画像処理部9から送信された出力画像信号に応じて静電潜像を形成する。
【0018】
各現像手段(現像装置)4A、4B、4C、4Dには、それぞれイエロートナー、シアントナー、マゼンタトナー、ブラックトナーが収容されている。各現像ローラ44A、44B、44C、44Dは、各駆動手段(現像モータ)によって回転駆動され、感光体ドラム1A、1B、1C、1Dの表面に形成された静電潜像を現像して、トナー像を形成する。
【0019】
各画像形成部の対向する位置には、中間転写体であって、回転可能な無端状の中間転写ベルト62が配置されている。中間転写ベルト62は、駆動ローラ65、二次転写対向ローラ63、張架ローラ66、によって張架されている。モータが接続された駆動ローラ65の駆動によって、中間転写ベルト62は、矢印方向(反時計回り方向)に回転(移動)される。中間転写ベルト62の各一次転写ローラ61A、61B、61C、61Dに対向する位置に到達したトナー像は、一次転写電圧によって、感光体ドラム2から中間転写ベルト62に転写される。
【0020】
二次転写対向ローラ63は、中間転写ベルト62を介して二次転写ローラ64と当接して二次転写部を形成している。中間転写ベルト62の外側には、中間転写ベルト62の表面に残った転写残トナーを除去して回収するベルトクリーニング装置67が配置されている。
【0021】
また、中間転写ベルト62の回転方向において、二次転写対向ローラ63と二次転写ローラ64とが当接する二次転写部の下流側には、トナーを転写材に定着させる熱圧処理を行うために、定着装置7が設置されている。
【0022】
各感光体ドラム1A、1B、1C、1Dの周囲には、感光体ドラム1A、1B、1C、1Dの表面に残留したトナーを清掃するためのクリーニング部材(ドラムクリーニング装置)8A、8B、8C、8Dがそれぞれ配置されている。
【0023】
ここで、現像装置4の構成について、
図2の断面図に示す。
【0024】
現像装置4は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器45を有する。現像容器45は、隔壁43によって攪拌室46aと現像室46bとに区画されており、攪拌室46aと現像室46bとの間で現像剤が循環される。攪拌室46aには、攪拌室46a内の現像剤を攪拌し搬送するスクリュー45aが配置されている。現像室46bには、現像室46b内の現像剤を攪拌し搬送するスクリュー45bが配置されている。
【0025】
また、現像装置4は、現像剤規制部材42を有する。現像剤規制部材42は、現像ローラ44に担持される現像剤の量を規制する。
【0026】
現像装置4(現像容器)に収容される現像剤は、負帯電性の非磁性トナーと磁性キャリアとが混合される二成分現像剤である。非磁性トナーはポリエステル、スチレン等の樹脂に着色料、ワックス成分などを内包し、粉砕あるいは重合によって粉体としたものである。磁性キャリアは、フェライト粒子や磁性粉を混錬した樹脂粒子からなるコアの表層に樹脂コートを施したものである。
【0027】
現像領域における、感光体ドラム1へのトナーの現像過程について説明する。感光体ドラム1は帯電ローラ2によって帯電電位Vd[V]に一様に帯電された後、画像部は露光装置3によって露光され露光電位Vl[V]になる。
【0028】
帯電ローラ2には、高圧電源(帯電バイアス印加手段)によって、直流電圧(帯電DCバイアス)、又は、直流電圧に交流電圧を重畳させた電圧(帯電DC+ACバイアス)が印加される。そして、感光体ドラム1には、感光体ドラム1と接触する帯電ローラ2を介して、帯電DCバイアス、又は、帯電DC+ACバイアスが印加される。
【0029】
また、現像ローラ44には、高圧電源(現像バイアス印加手段)によって、直流電圧(現像DCバイアス)と交流電圧(現像ACバイアス)とを重畳した電圧(現像DC+ACバイアス)が印加される。
【0030】
現像ローラ44に印加される現像バイアスの交流電圧(現像ACバイアス)の最大電圧と最小電圧の差をVpp(ピークツーピーク値)と呼ぶ。現像バイアスの交流電圧により磁性キャリアから剥離するトナーの量を調整することが可能であり、Vpp(ピークツーピーク値)が大きいほど磁性キャリアから剥離するトナーの量は増加する。
【0031】
現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧の差であるVppを小さくした場合、Vppを大きくした場合と比べて、感光体ドラム1の非画像部にキャリアが付着する現象(キャリア付着)が抑制される傾向がある。一方、画像形成時においてVppを小さくした場合は、Vppを大きくした場合と比べて、画像形成時の感光体ドラム1へのトナー供給量が減少する傾向がある。
【0032】
また、現像ローラ44の直流成分の電圧をVdc[V]としたとき、露光電位V1との差分の絶対値|Vdc-V1|をVcontとよび、これがトナーを画像部へと運ぶ電界を作る。
【0033】
また、直流電圧Vdcと帯電電位Vdとの差分の絶対値|Vdc-Vd|はVbackと呼ばれる。Vbackとは、帯電装置により帯電された感光体ドラム1の表面電位(非画像部電位)Vdと現像バイアスの直流成分Vdcとの電位差のことである。Vbackは、トナーに対しては感光体ドラム1から現像ローラ44に向かう方向に引き戻す電界を作る。これは、トナー(かぶりトナー)が感光体ドラム1の非画像部へと付着する現象(所謂、かぶり現象)を抑制するために設けられている。
【0034】
Vbackの絶対値を大きくした場合は、Vbackの絶対値を小さくした場合と比べて、現像ローラへのトナーの引き付け力が強くなるため、感光体ドラム1の非画像部にトナー(かぶりトナー)が付着しづらくなる傾向がある。一方、Vbackの絶対値を小さくした場合は、Vbackの絶対値を大きくした場合と比べて、感光体ドラムの非画像部にキャリアが付着する現象(キャリア付着)が抑制される傾向がある。
【0035】
なお、感光体ドラム1の帯電電位Vdは暗減衰がある。このため、感光体ドラム1に帯電バイアスを印加した直後の帯電電位Vdと、感光体ドラム1の回転により感光体ドラム1の帯電された位置が現像ローラ44との対向位置に到達した時点での帯電電位Vdでは異なる値になっている。
【0036】
第1の実施形態では、感光体ドラム1が現像ローラ44に対向する対向位置での現象(かぶり現象)を対象としている。このため、帯電電位Vdは、感光体ドラム1に帯電バイアスを印加した直後の帯電電位Vdの値ではなく、感光体ドラム1の回転により感光体ドラム1の帯電された位置が現像ローラ44との対向位置に到達した時点での帯電電位Vdの値を指すものとする。これは、感光体ドラム1の潜像電位V1等のその他の電位に関しても同様である。
【0037】
(従来例)
第1の実施形態に係る画像形成動作(作像動作)のシーケンスを説明することに先立ち、従来例における作像動作のシーケンスについて、
図6を用いて説明する。
図6は、従来例における、作像動作の開始時における現像ローラの回転駆動、現像ローラに印加される現像DCバイアス及び現像ACバイアス、感光体ドラムが現像ローラに対向する対向位置での帯電電位Vdの値、及びタイミングチャートを示している。
【0038】
図6に示す従来例の動作では、前回転動作が開始し、感光ドラム1の回転駆動が開始されるのと同時に、帯電ローラ2への帯電バイアスの印加が開始され、感光ドラム1が現像ローラ44に対向する位置において一様に帯電(Vd=-900V)される。
【0039】
感光ドラム1の回転により、感光ドラム1の帯電された位置が現像ローラ44との対向位置に到達すると、高圧電源22による現像ローラ44への現像DCバイアス(Vdc=-740V)の印加が開始される。一定時間経過後、ドラム帯電電位Vdおよび現像DCバイアスVdcが安定状態となり、現像バイアスの交流電圧(現像ACバイアス)(Vpp=1.6kV)の印加が開始される。
【0040】
ドラム電位Vdおよび現像DCバイアスVdcが安定した後、現像ローラ44の回転駆動が開始される。このとき、かぶり取り電位差Vback(=160V)と現像バイアスの交流電圧(Vpp(ピークツーピーク値)=1.6kV、矩形波形、Duty50%)は画像形成時と同じ値になるように制御される。
【0041】
図6に示した従来例の動作において、現像バイアスの交流電圧の最大電圧と最小電圧との差であるVppを0.4kV、0.8kV、1.0kV、1.2kV、1.6kV、2.0kVに振った際の、キャリア付着量及びかぶりトナー量を測定した。また、
図6に示した従来例の動作において、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間における現像ACバイアスのVppを振る。当該期間における現像ACバイアスのVppを振った際の、キャリア付着量、かぶりトナー量、及びトナー供給量を測定した結果を表1に示す。また、従来例の動作において、画像形成時における現像ACバイアスのVppを振った際の、キャリア付着量、かぶりトナー量、及び感光体ドラム1へのトナー供給量を測定した結果を表2に示す。
【0042】
なお、表1、表2のそれぞれにおけるキャリア付着の項目に関して、「〇」はキャリア付着の程度が画像品質として許容できるレベルであることを表し、「×」はキャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルであることを表している。また、表1、表2のそれぞれにおけるかぶりトナーの項目に関して、「〇」はかぶりトナーの程度が画像品質として許容できるレベルであることを表し、「×」はかぶりトナーの程度が画像品質として許容できないレベルであることを表している。また、表2における感光体ドラム1へのトナー供給量の項目に関して、「〇」はトナー供給量が画像品質として許容できるレベルであることを表し、「×」はトナー供給量が画像品質として許容できないレベルであることを表している。なお、画像品質として許容できないレベルとは、画像不良が生じていることを意味する。
【0043】
【0044】
【0045】
本実験では、画像形成装置100を用いて、ベタ白画像(即ち、画像比率が0%の画像)の画像形成中に動作を途中で停止させ、感光体ドラム1上に付着したキャリア及びかぶりトナーをテープで回収した。キャリア付着量は、3cm×3cm中のキャリア粒子の個数をカウントし、1cm2当りの付着キャリア粒子の個数を算出した。かぶりトナー量はX-Rite社製のX-Rite500カラー反射濃度計を用いて濃度を測定した。
【0046】
現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間では、現像ACバイアスのVppが0.4kV以下、1.2kV以上の場合にキャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルとなる。これに対して、画像形成時では、現像ACバイアスのVppが0.8kV以下、2.0kV以上の場合にキャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルとなる。
【0047】
一方、かぶりトナーに関しては、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間は、現像ACバイアスのVppが0.4k以下の場合に、画像品質として許容できないレベルとなる。これに対して、画像形成時では、現像ACバイアスのVppが0.8k以下の場合に、画像品質として許容できないレベルとなる。また、画像形成時の感光体ドラム1へのトナー供給量は現像ACバイアスのVppが1.2k以下の場合に、画像品質として許容できないレベルとなる。
【0048】
以上の結果から、キャリア付着とかぶりトナーによる画像不良が抑制される現像ACバイアスのVppは、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間と、画像形成時とで異なることが分かる。
【0049】
これは、感光体ドラム1付近に存在するキャリア粒子のトナーの被覆状態が現像ACバイアスのVppの大きさによって変化することに起因していると考えられる。また、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの間は、現像ローラ44と感光体ドラム1との間を通過する現像剤の挙動が不安定になる傾向があることも起因していると考えられる。
【0050】
続いて、第1の実施形態における画像形成動作(作像動作)のシーケンスについて、
図4を用いて説明する。
図4は、第1の実施形態における、作像動作の開始時における現像ローラの回転駆動、現像ローラに印加される現像DCバイアス及び現像ACバイアス、感光体ドラムが現像ローラに対向する対向位置での帯電電位Vdの値、及びタイミングチャートを示している。
【0051】
前回転動作が開始し、感光体ドラム1の回転駆動が開始されるのと同時に、感光体ドラム1への帯電バイアスの印加が開始され、感光体ドラム1は第1の帯電電位(Vd1=-900V)に一様に帯電される。
【0052】
そして、感光体ドラム1の回転により、感光体ドラム1の帯電された位置が現像ローラ44との対向位置に到達すると、現像ローラ44への現像DCバイアス(Vdc=-740V)の印加が開始される。現像DCバイアスを印加してから一定時間が経過した後、感光体ドラム1の帯電電位Vdおよび現像DCバイアスが安定状態となり、第1のピークツーピーク値を持つ現像ACバイアス(Vpp=0.8kV)の印加が開始される。その後、現像ローラ44の回転駆動が開始される。現像ACバイアスのVppは、0.8kVである。
【0053】
次に、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達した後、現像ACバイアスのVppは、画像形成時と同じ値である第2のピークツーピーク値を持つ現像ACバイアスのVpp(Vpp=1.6kV)となる。
【0054】
図4に示す制御を実行することにより、現像ローラ44の回転駆動を開始してから画像形成時の速度に到達するまでの期間では、現像ACバイアスのVppを0.8kVにすることで、キャリア付着を抑制することができる。また、画像形成時は、現像ACバイアスのVppを0.8kVから1.6kVに変更する。即ち、画像形成時は、現像ローラ44の回転駆動を開始してから画像形成時の速度に到達するまでの期間よりも、現像ACバイアスのVppを大きくすることにより、画像形成時の感光体ドラム1へのトナーの供給量の減少を抑制することができる。
【0055】
以上説明したように第1の実施形態では、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の減少を抑制することができる。
【0056】
[第2の実施形態]
続いて、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態の基本的な構成については第1の実施形態と同じである。そのため、第1の実施形態と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳細な説明は省略し、第2の実施形態に特有の構成部分のみ詳細に説明する。
【0057】
第2の実施形態における画像形成動作(作像動作)のシーケンスについて、
図4を用いて説明する。
図4は、第2の実施形態における、作像動作の開始時における現像ローラの回転駆動、現像ローラに印加される現像DCバイアス及び現像ACバイアス、感光体ドラムが現像ローラに対向する対向位置での帯電電位Vdの値、及び、タイミングチャートを示している。
【0058】
前述した第1の実施形態では、現像ローラ44の回転駆動が画像形成時と同じ速度に到達した後に現像ACバイアスのVppを変更している。しかしながら、第1の実施形態では、現像ローラ44の回転速度が十分に安定していない状態で現像ACバイアスのVppが変更される可能性がある。この状態においては、現像ローラ44の回転速度に対してキャリア付着およびかぶりトナーの抑制における最適な現像ACバイアスのVppに制御されていない。一方、現像ローラ44が1回転した後(本実施例では約100msec)は現像ローラ44の回転速度が十分に安定する。このため、感光ドラム1の帯電電位Vdは、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達後から100msecが経過した以降に変更することが好ましい。
【0059】
一方、生産性の観点から、画像形成動作の開始前の制御は短時間で実施することが好ましい。そのため、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達した後、少なくとも感光体ドラム1が1回転するまでの間(本実施例では216msec)に現像ACバイアスのVppを画像形成時と同じ値に変更する。これにより、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達した後の現像ACバイアスのVppの変更のために、画像形成動作開始点を必要以上に遅らせることがないので、生産性の低下を抑制することができる。
【0060】
そこで、第2の実施形態では、
図4に示すとおり、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達した後から現像ACバイアスのVppを変更するまでの時間tを以下のようにしている。即ち、時間tは、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達した時点から起算して、100msec以上であって感光体ドラム1が1回転するのに要する時間までの間となるように制御する。
【0061】
このような第2の実施形態によれば、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、生産性の低下を抑制することができる。又、第2の実施形態では第1の実施形態と同様に、現像ローラの回転駆動を開始してから現像ローラの回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の低下を抑制する事ができる。
【0062】
[第3の実施形態]
続いて、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態の基本的な構成については第1の実施形態と同じである。そのため、第1の実施形態と実質的に同一若しくは相当する機能、構成を有する要素には同一符号を付して詳細な説明は省略し、第3の実施形態に特有の構成部分のみ詳細に説明する。
【0063】
第3の実施形態における画像形成動作(作像動作)のシーケンスについて、
図5を用いて説明する。
【0064】
図6に示した従来例の動作において、Vbackの絶対値を60V、110V、160V、210Vに振った際の、キャリア付着量及びかぶりトナー量を測定した。現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間におけるVbackの絶対値を振った際の、キャリア付着量及びかぶりトナー量を測定した結果を表3に示す。また、
図6に示した従来例の動作において、画像形成時におけるVbackの絶対値を振った際の、キャリア付着量及びかぶりトナー量を測定した結果を表4に示す。
【0065】
なお、表3、表4のそれぞれにおけるキャリア付着の項目に関して、「〇」はキャリア付着の程度が画像品質として許容できるレベルであることを表し、「×」はキャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルであることを表している。また、表3、表4のそれぞれにおけるかぶりトナーの項目に関して、「〇」はかぶりトナーの程度が画像品質として許容できるレベルであることを表し、「×」はかぶりトナーの程度が画像品質として許容できないレベルであることを表している。なお、画像品質として許容できないレベルとは、画像不良が生じていることを意味する。
【0066】
【0067】
【0068】
本実験では、画像形成装置100を用いて、ベタ白画像(即ち、画像比率が0%の画像)の画像形成中に動作を途中で停止させ、感光体ドラム1上に付着したキャリア及びかぶりトナーをテープで回収した。キャリア付着量は、3cm×3cm中のキャリア粒子の個数をカウントし、1cm2当りの付着キャリア粒子の個数を算出した。かぶりトナー量はX-Rite社製のX-Rite500カラー反射濃度計を用いて濃度を測定した。
【0069】
現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間では、Vbackが160V以上である場合に、キャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルとなる。これに対して、画像形成時では、Vbackが210V以上である場合に、キャリア付着の程度が画像品質として許容できないレベルとなる。
【0070】
一方、かぶりトナーに関しては、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間では、Vbackが60V以下である場合に、画像品質として許容できないレベルとなる。これに対して、画像形成時では、Vbackが110V以下である場合に、かぶりトナーの程度が画像品質として許容できないレベルとなる。
【0071】
以上の結果から、キャリア付着とかぶりトナーによる画像不良が抑制されるVbackは、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達するまでの期間と、画像形成時とで異なることが分かる。これと同様のことが、現像ローラ44の回転駆動の停止時においても当て嵌まることが発明者らの検討により確認されている。このことから現像ACバイアスのVppを最適に制御することと合わせて、Vbackの値も最適に制御することにより、キャリア付着とかぶりトナーを抑制することが可能となる。
【0072】
続いて、第3の実施形態における画像形成動作(作像動作)のシーケンスについて、
図5を用いて説明する。
図5は、第3の実施形態における、作像動作の開始時における現像ローラの回転駆動、現像ローラに印加される現像DCバイアス及び現像ACバイアス、感光体ドラムが現像ローラに対向する対向位置での帯電電位Vdの値、及びタイミングチャートを示している。
【0073】
前回転動作が開始し、感光体ドラム1の回転駆動が開始されるのと同時に、感光体ドラム1への帯電バイアスの印加が開始され、感光体ドラム1は第1の帯電電位(Vd1=-850V)に一様に帯電される。そして、感光体ドラム1の回転により、感光体ドラム1の帯電された位置が現像ローラ44との対向位置に到達すると、現像ローラ44への現像DCバイアス(Vdc=-740V)の印加が開始される。現像DCバイアスを印加してから一定時間が経過した後、感光体ドラム1の帯電電位Vdおよび現像DCバイアスが安定状態となり、現像ローラ44の回転駆動が開始される。このときのVback(立ち上げVback)は、110Vである。
【0074】
次に、現像ローラ44の回転速度が画像形成時と同じ速度に到達後であって画像形成動作の開始点よりも前に帯電DCバイアスが変更され、感光体ドラム1の帯電電位Vdは画像形成時と同じ値である第2の帯電電位(Vd2=-900V)に一様に帯電される。このときのVbackは、160Vとなる。また、現像ACバイアスのVppは、画像形成時と同じ値である現像バイアスのVpp(Vpp=1.6kv)となる。
【0075】
図5に示す制御を実行することにより、現像ローラ44の回転駆動を開始してから画像形成時の速度に到達するまでの期間では、Vback(立ち上げVback)を110Vにすることで、キャリア付着を抑制することができる。また、画像形成時は、帯電DCバイアスを変更してVback(作像Vback)を160Vにすることにより、画像形成時のかぶりトナー及びキャリア付着を抑制することができる。
【0076】
以上説明した第3の実施形態では、第1の実施形態に対して、更に、立ち上げVbackを、作像Vbackよりも小さくしている。このような第3の実施形態によれば、現像ローラ44の回転駆動を開始してから現像ローラ44の回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時のかぶりトナーを抑制することができる。又、第3の実施形態では第1の実施形態と同様に、現像ローラの回転駆動を開始してから現像ローラの回転速度が画像形成時の速度に到達するまでの期間でのキャリア付着を抑制しつつ、画像形成時の感光体ドラムへのトナーの供給量の低下を抑制する事ができる。
【0077】
なお、
図5に示す制御では、立ち上げVbackから作像Vbackに変更する際に、現像ローラ44への現像DCバイアス(Vdc=-740V)を一定にしたまま、帯電DCバイアスを変更する例について説明したが、これに限られない。立ち上げVbackが作像Vbackよりも小さい関係を満たすのであれば、帯電DCバイアスを変更することに加えて、現像DCバイアスも変更する変形例であってもよい。また、立ち上げVbackが作像Vbackよりも小さい関係を満たすのであれば、帯電DCバイアスを変更することなく、現像DCバイアスを変更する変形例であってもよい。
【0078】
(その他の実施形態)
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形(各実施形態の有機的な組合せを含む)が可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0079】
上記実施形態では、
図1に示したように、中間転写ベルト62を用いる構成の画像形成装置100を例に説明したが、これに限られない。感光体ドラム1に順に記録媒体を直接接触させて転写を行う構成の画像形成装置に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0080】
1 感光体ドラム
2 帯電装置
4 現像装置
44 現像ローラ
45 現像容器
100 画像形成装置