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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182139
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】発電単位セル、及び、燃料電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20231219BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20231219BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231219BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0273
H01M8/0271
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095566
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和則
(72)【発明者】
【氏名】濱田 仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 耕太郎
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126AA13
5H126AA15
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126EE03
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】シール性と寸法安定性とを両立できる構造を備える発電単位セルを提供する。
【解決手段】電解質膜、及び、電解質膜を挟むように配置された触媒層を有する膜電極接合体と、膜電極接合体を囲むように配置された支持体と、膜電極接合体及び支持体を挟むように配置された一対のセパレータと、を有する発電単位セルであって、支持体は、基材及び基材の両面に積層された接着層を有しており、セパレータは、支持体の接着層と接着する部位において、平滑な面であるシール部と、凹凸を具備する拘束部と、を有している。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜、及び、前記電解質膜を挟むように配置された触媒層を有する膜電極接合体と、前記膜電極接合体を囲むように配置された支持体と、前記膜電極接合体及び前記支持体を挟むように配置された一対のセパレータと、を有する発電単位セルであって、
前記支持体は、基材及び前記基材の両面に積層された接着層を有しており、
前記セパレータは、前記支持体の前記接着層と接着する部位において、平滑な面であるシール部と、凹凸を具備する拘束部と、を有している、
発電単位セル。
【請求項2】
請求項1に記載の発電単位セルが複数積層されてなる燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接着層厚みを確保するために、リブ上の突起を接着側に設けることが開示されている。これにより必要な接着層厚みを確保することができる。
また、特許文献2には、燃料電池スタック10の積層体14に、発電セル12の積層方向に締付荷重が付与され、第1金属セパレータ30には、シール用ビード部51の外方側に第1波状凸部70が一体に設けられ、第2金属セパレータ32には、シール用ビード部61の外方側に第2波状凸部80が一体に設けられており、第1波状凸部70と第2波状凸部80とは、積層方向から見て波形状の位相が互いにずれた状態で重なることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-95902号公報
【特許文献2】特開2021-012838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
樹脂フレーム(支持体)は発電単位セルの外周部等に設けられ、発電単位セル内をシールする機能を有するが、熱による寸法変化、並びに、圧力又は衝撃等の外力等による動きによりシール性や接着強度低下、寸法安定性の問題があった。
特許文献1に記載の発明では、接着厚みは確保できるが、リブの数を増やした際に、気泡などのボイドが発生しやすくなり、リーク、漏れの起点となりシール性が低下する虞がある。また、シールによる気密性を必要とする部位にリブを設けているためにシール性(リーク)と寸法安定性を確保することが併用できない。
特許文献2に記載の発明は、メタルばねシールでの溶接部位へのモーメントによる入力を低減する手段であるが、フレーム(支持体)の熱収縮、クリープ等による寸法変化を抑制することはできない。すなわち、曲げモーメントを低減させるために設置された波状のビードであるため、フレーム(支持体)の動きを抑制する効果は期待できない。
【0005】
上記問題に鑑み、本開示はシール性と寸法安定性とを両立できる構造を備える発電単位セルを提供することを目的とする。また、この発電単位セルを用いた燃料電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、電解質膜、及び、電解質膜を挟むように配置された触媒層を有する膜電極接合体と、膜電極接合体を囲むように配置された支持体と、膜電極接合体及び支持体を挟むように配置された一対のセパレータと、を有する発電単位セルであって、支持体は、基材及び基材の両面に積層された接着層を有しており、セパレータは、支持体の接着層と接着する部位において、平滑な面であるシール部と、凹凸を具備する拘束部と、を有している、発電単位セルを開示する。また、この発電単位セルが複数積層されてなる燃料電池を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シール性の高い部位と寸法安定性を向上する部位とが個別に設けられていることから両方の機能を高い性能で両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は発電単位セル10を平面視した図である。
図2図2は発電部11の断面でありその層構成を説明する図である。
図3図3は外周部21の断面でありその層構成を説明する図である。
図4図4図3の一部を拡大した図である。
図5図5は支持体23を平面視した図である。
図6図6は拘束部26の形態例を説明する図である。
図7図7は封止部24の配置を説明する図である。
図8図8は他の形態を説明する図である。
図9図9は燃料電池30を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.発電単位セル
図1図3に1つの形態にかかる発電単位セル10を説明する図を示した。発電単位セル10は、水素と酸素(空気)を供給することにより発電するための単位要素であり、このような発電単位セル10が複数積層されて燃料電池を構成している。
図1は発電単位セル10を平面視した図、図2は発電単位セル10のうち発電部11における層構成を説明する図、図3は発電単位セル10のうち外周部21における層構成を説明する図である。
【0010】
1.1.発電部
発電部11は、例えば図1に点線で囲った部分において発電に寄与する部分であり、図2に当該発電部11における層構成(A-A断面の一部)を表したように複数の層が積層されてなる。
発電単位セル10の発電部11では、電解質膜12を挟んで一方がカソード(酸素供給側)、他方がアノード(水素供給側)である。カソードは電解質膜12側からカソード触媒層13、カソードガス拡散層14、及び、カソードセパレータ15がこの順に積層されている。一方アノードは、電解質膜12側からアノード触媒層16、アノードガス拡散層17、及び、アノードセパレータ18をこの順に備えている。なお、電解質膜12、カソード触媒層13、アノード触媒層16による積層体(電解質膜を触媒層で挟んだ積層体)を膜電極接合体と呼ぶことがある。膜電極接合体の厚さは0.4mm程度が典型的であり、発電部11における発電単位セル10の厚さは1.3mm程度が典型的である。
各層は例えば次の通りである。
【0011】
1.1.1.電解質膜
電解質膜12は湿潤状態において良好なプロトン伝導性を示す固体高分子電解質膜である。例えばフッ素系のイオン交換膜によって構成され、例えば、炭素-フッ素系高分子を用いることができ、具体的にはパーフルオロアルキルスルフォン酸系ポリマー(ナフィオン(登録商標))等が挙げられる。
電解質膜12の厚さは特に限定されることはないが200μm以下が好ましく、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0012】
1.1.2.カソード触媒層
カソード触媒層13は、触媒金属が担体に担持されている形態で触媒金属が含まれる層である。例えば、触媒金属としてはPt、Pd、Rh、又はこれらを含む合金が挙げられる。担体としては、炭素担体、より詳しくはグラッシーカーボン、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、及び、人造黒鉛等からなる炭素粒子を挙げることができる。
【0013】
1.1.3.アノード触媒層
アノード触媒層16も、カソード触媒層13と同様に、触媒金属が担体に担持されている形態で触媒金属が含まれる層である。例えば、触媒金属としてはPt、Pd、Rh、又はこれらを含む合金が挙げられる。担体としては、炭素担体、より詳しくはグラッシーカーボン、カーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛、及び、人造黒鉛等からなる炭素粒子を挙げることができる。
【0014】
1.1.4.カソードガス拡散層
本形態でカソードガス拡散層14は、例えば導電性を有する多孔質体で構成された層である。より具体的な例としては、カーボン多孔体(カーボンペーパー、カーボンクロス、ガラス状カーボン等)、金属多孔体(金属メッシュ、発泡金属)等が挙げられる。
カソードガス拡散層14には、必要に応じてMPL(マイクロポーラスレイヤー)を設けてもよい。MPLは、カソードガス拡散層14のうちカソード触媒層13側に塗工された被覆状の薄膜である。MPLは必要に応じて撥水性や親水性を有して水分の調整をする機能を有する。またカーボン多孔体で生じる毛羽等が電解質膜に刺さるのを防止する役割がある。MPLとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂とカーボンブラックなどの導電性材料を主成分とするものが典型的である。
【0015】
発電部11におけるカソードガス拡散層14の厚さは、50μm以上250μm以下が好ましい。この厚さが250μmを超えると電子抵抗が高くなり、50μmより薄くなるとカソードガス拡散層の柔軟性が不足し、発電部11に均一な面圧が得られないことがある。より具体的には、発電部11に0.2MPa以上2MPa以下の面圧をかけてカソードガス拡散層14のばね性(弾性)を利用して発電部11における面圧を一定にする。
【0016】
1.1.5.アノードガス拡散層
アノードガス拡散層17は、例えば導電性を有する多孔質体で構成された層である。より具体的な例としては、カーボン多孔体(カーボンペーパー、カーボンクロス、ガラス状カーボン等)、金属多孔体(金属メッシュ、発泡金属)等が挙げられる。
【0017】
発電部11におけるアノードガス拡散層17の厚さは、50μm以上250μm以下が好ましい。この厚さが250μmを超えると電子抵抗が高くなり、50μmより薄くなるとアノードガス拡散層の柔軟性が不足し、発電部11に均一な面圧が得られないことがある。より具体的には、発電部11に0.2MPa以上2MPa以下の面圧をかけてアノードガス拡散層14のばね性(弾性)を利用して発電部11における面圧を一定にする。
【0018】
1.1.6.カソードセパレータ
カソードセパレータ15はカソードガス拡散層14に反応ガス(本形態では空気)を供給する部材であり、カソードガス拡散層14に対向する面に、複数の溝15aを有しており、この溝が反応ガス流路として機能する。溝の形状は反応ガスを適切にカソードガス拡散層14に供給することができれば特に限定されることはなく、本形態のように板状の部材を波状にして溝を形成したものが挙げられる。そのとき、板厚は0.1mm以上0.2mm以下が典型的であり、凹凸の高さは0.5mm程度が典型的である。このようにした場合、隣り合う溝15aの間にはカソードセパレータ15を挟んで反対側に溝15bが形成され、これが冷却水流路として機能する。
【0019】
また、カソードセパレータ15には、図1からわかるように、発電部11から延長して外側となる位置で、溝15a、溝15bが延びる方向の一端側となる部位には空気入口孔Ain、冷却水入口孔Win、水素出口孔Houtが設けられ、溝15a、溝15bが延びる方向の他端側となる部位には空気出口孔Aout、冷却水出口孔Wout、水素入口孔Hinが設けられている。ここで溝15aは空気入口孔Ain、空気出口孔Aoutに連通し、溝15bは冷却水入口孔Win、冷却水出口孔Woutに連通している。
【0020】
カソードセパレータ15を構成する材料は、発電単位セルのセパレータとして用いることができる任意の材料であってよく、ガス不透過性の導電性材料であってよい。このような材料としては、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成型した金属板等を挙げることができる。
【0021】
1.1.7.アノードセパレータ
アノードセパレータ18はアノードガス拡散層17に反応ガス(水素)を供給する部材であり、アノードガス拡散層17に対向する面に、複数の溝18aを有しており、この溝が反応ガス流路として機能する。溝の形状は反応ガスを適切にアノードガス拡散層17に供給することができれば特に限定されることはなく、本形態のように板状の部材を波状として溝を形成したものが挙げられる。そのとき板厚は0.1mm以上0.2mm以下が典型的であり、凹凸の高さは0.4mm程度が典型的である。このようにした場合、隣り合う溝18aの間にはアノードセパレータ18を挟んで反対側に溝18bが形成され、これが冷却水流路として機能する。
【0022】
また、アノードセパレータ18には、図1からわかるように、発電部11から延長して外側となる位置で、溝18a、溝18bが延びる方向の一端側となる部位には空気入口孔Ain、冷却水入口孔Win、水素出口孔Houtが設けられ、溝18a、溝18bが延びる方向の他端側となる部位には空気出口孔Aout、冷却水出口孔Wout、水素入口孔Hinが設けられている。ここで溝18aは水素入口孔Hin、水素出口孔Houtに連通し、溝18bは冷却水入口孔Win、冷却水出口孔Woutに連通している。
【0023】
アノードセパレータ18を構成する材料は、発電単位セルのセパレータとして用いることができる任意の材料であってよく、ガス不透過性の導電性材料であってよい。このような材料としては、例えばカーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成型した金属板等を挙げることができる。
【0024】
1.1.8.発電部による発電
公知の通りであるが、以上説明した発電単位セル10により次のように発電が行われる。
水素入口孔Hinからアノードセパレータ18の溝18aに供給された水素はアノードガス拡散層17を通りアノード触媒層16にてプロトン(H)と電子(e)に分解される。プロトンは電解質膜12を通り、電子は外部へつながる導電線を通り、それぞれがカソード触媒層13に達する。残った水素は水素出口孔Houtから排出される。
カソード触媒層13には空気入口孔Ainからカソードセパレータ15の溝15a、カソードガス拡散層14を介して酸素(空気)供給されており、カソード触媒層13では、プロトン、電子、酸素により水(HO)が発生する。発生した水、及び、残りの空気はカソードガス拡散層14を通りカソードセパレータ15の溝15aに達して空気出口孔Aoutから排出される。
発電単位セル10ではアノード触媒層16から外部へつながる導電線を通る電子の流れを電流として利用する。
【0025】
また、複数の発電単位セル10を重ねて燃料電池としたとき、隣り合う発電単位セル10において、一方の発電単位セル10のカソードセパレータ15に隣接する他方の発電単位セル10のアノードセパレータ18が重なるように配置されることで、カソードセパレータ15の溝15bとアノードセパレータ18の溝18bとにより冷却水流路が形成される。この冷却水流路に対して冷却水入口孔Winから冷却水が供給され、供給された冷却水は発電単位セル10を冷却し、冷却水出口孔Woutから排出される。
【0026】
1.2.外周部
外周部21は図1に点線で囲った発電部11の外側で発電単位セル10の外周部であり、図3に当該外周部21における層構成(B-B断面の一部)を表したように複数の層が積層されてなる。図4には図3の一部を拡大した図を示した。
【0027】
1.2.1.外周部の基本構造
図3図4からわかるように本形態で外周部21はその少なくとも一部で次のような構成を備えている。
電解質膜12、アノード触媒層16、アノードガス拡散層17の端面は概ね同じ位置となるように積層され、カソード触媒層13の端面は電解質膜12の端面よりも没した(後退した)位置となるように積層されている。さらにカソードガス拡散層14の端面は電解質膜12の端面よりも突出した(進行した)位置であり、発電単位セル10の平面視(図1の方向からの視点、図3に矢印Zで示した方向の視線)で支持体23に重なる位置にまで延びている。支持体23については後で説明する。
【0028】
カソードセパレータ15、アノードセパレータ18は、外周部21でもその間に発電部11と同様に上記した各層を挟むように配置されている。外周部21では、カソードセパレータ15及びアノードセパレータ18の外周は、膜電極接合体、カソードガス拡散層14、アノードガス拡散層17の各端面よりも突出するように延び、当該延びた部位においてカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18との間に支持体23が配置される。なお、外周部21ではカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18とも流路は不要であるため溝15a、溝18aは形成されていない(ただし、図3からわかるように一部に溝が形成されていることを妨げるものではない。)。
すなわち、発電単位セル10では、発電部11で膜電極接合体を含む積層体、外周部21で支持体23を一対のセパレータ(カソードセパレータ15及びアノードセパレータ18)で挟むように構成されている。
【0029】
また、支持体23のカソード側に向く面の端部と膜電極接合体のカソード側を向く面の端部とを渡すようにカバーシート22が配置されている。カバーシート22については後で説明する。
【0030】
1.2.2.支持体
上記した支持体23は発電単位セル10の外周部21においてカソードセパレータ15とアノードセパレータ18との間を封止する部材として機能する。図5に支持体23を平面視した(図1と同様の視点の)図を示した。図5からわかるように支持体23は枠状の部材であり、空気入口孔Ain、冷却水入口孔Win、水素出口孔Hout、空気出口孔Aout、冷却水出口孔Wout、水素入口孔Hin、及び、発電部11に相当する部位23dが中空となるように穴が設けられている。
【0031】
支持体23は基材23a、及び、基材23aの両面(カソード側を向く面、アノード側を向く面)のそれぞれに接着層23bを備えている。接着層23bがカソードセパレータ15、アノードセパレータ18に接着されることにより発電部11を一対のセパレータの間に封止している。従ってカソードセパレータ15とアノードセパレータ18との間隔はその間に挟まれる層によって変化するように曲げられており、図3図4からわかるように支持体23のみが配置されている部位ではその一部で間隔が狭められており、カソードセパレータ15とアノードセパレータ18と(一対のセパレータ)で支持体23を挟んで固定され、ここが封止部24として機能する。封止部24については後で説明する。
【0032】
基材23aは、電気絶縁性及び気密性を有する任意の材料から形成される。このような材料としては、結晶性のポリマー、より具体的には、エンジニアリングプラスチックを挙げることができる。エンジニアリングプラスチックとしては、例えばポリエチレンナフタレート系樹脂(PEN)及びポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET)、ポリフェニルエーテル(PPE)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PSU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリフェニルスルフィド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ナイロン系樹脂等を挙げることができる。
基材23aの厚さは特に限定されることはないが0.05mm以上0.25mm以下であることが好ましい。
【0033】
接着層23bは、接着された状態において、接着性を有するものであればよく公知のものを用いることができる。接着層に用いられる接着材としてはマレイン酸、無水マレイン酸を含むポリオレフィン系ポリマーが挙げられる。より具体的には例えばアドマー(登録商標、三井化学株式会社)が挙げられる。
接着層23bの厚さは特に限定されることはないが30μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0034】
このような支持体23は、その枠状である内側に膜電極接合体を含む発電部11の積層体を囲むように配置される。このとき、図3からわかるように、その端面が膜電極接合体、及び、アノードガス拡散層17の端面に対して、空間Aを開けて対向するように位置付けられる。この空間Aにより支持体23や膜電極接合体等の線膨張による寸法変化を吸収することができ、膨張、収縮による破損の発生を抑制することができる。
より具体的にはこの空間Aは、支持体23と膜電極接合体及びアノードガス拡散層17とが対向する方向の距離が0.01mm以上2mm以下であることが好ましい。距離が0.01mm未満であると支持体23の寸法変化を吸収することが難しくなり、距離が2mmを超えると空間Aとカソードガス拡散層14との差圧により支持体23に変形や破損を生じてシール性が低下する可能性がある。
【0035】
1.2.3.カバーシート
上記したように支持体23のカソード側に向く面の端部と膜電極接合体のカソード側を向く面の端部とを渡すようにカバーシート22が配置されている。
【0036】
カバーシート22は、一方の端部が支持体23のカソード側の表面端部、他方の端部が膜電極接合体側で電解質膜12及びカソード触媒層13の少なくとも一方の表面端部を覆うように配置されている(本形態ではカバーシートは電解質膜12及びカソード触媒層13の両方の表面端部を覆うように配置されている。)。これにより、外周部21においてカソードとアノードとを適切に分離することができる。従ってカバーシート22は膜電極接合体側の端部で膜電極接合体とカソードガス拡散層14との間に配置されている。
【0037】
カバーシート22は、燃料電池の反応ガスを透過しない材料が用いられている。反応ガスを透過しない部材として、例えば、ポリプロピレンやポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンナフタレート、ナイロン、エチレンビニルアルコール共重合体等の樹脂からなるフィルム状の部材を採用することができる。特に耐加水分解性、電解質膜との接着の観点から、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン9T、エチレンビニルアルコールが挙げられる。また電解質膜12との接着性を上げるためにアミド基、エポキシ基、ヒドロキシル基等を有する等の添加剤を加えてもよい。
【0038】
カバーシート22は支持体23に重なる部位については支持体23の接着層23bより接着される。一方、カバーシート22が膜電極接合体と重なる部分については必要に応じてカバーシート22に接着層を設けて接着される。ただし、カバーシート22としてナイロンを用いた場合には熱圧着によりカバーシートと膜電極接合体とを接着することができるため接着層は不要とすることも可能である。
【0039】
1.2.4.封止部
封止部24では、カソードセパレータ15とアノードセパレータ18との間に支持体23のみが配置され、カソードセパレータ15とアノードセパレータ18とで支持体23を挟んで固定され封止する。封止部24では、カソードセパレータ15、アノードセパレータ18、及び、支持体23の形態により封止できるように構成されている。詳しくは次の通りである。
【0040】
図3図4からわかるように、本形態で封止部24は、シール部25及び拘束部26を備えている。本形態ではシール部25と拘束部26との間にカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18に突起24aが配置されている。
【0041】
[シール部]
シール部25は、カソードセパレータ15及びアノードセパレータ18のうち、支持体23の接着層23bと接触する面25aが平滑とされ、当該平滑な面25aと接着層23bとの接触により高いシール性を発揮する部位である。接着層23bとの接触面に凹凸があると接着層23bの表面に気泡が表れることがありシール性が低下する。シール部25によれば平滑な面25aによる接着層23bとの接着が可能であるため高いシール性を確保できる。
【0042】
シール部25における当該平滑な面25aの平滑の程度は、シール性を確保することができれば特に限定されることはないが、例えばJIS B 0601-2001(ISO 4287-1997)の最大高さRzで0.5μm以下とすることが好ましい。また、図4にWで示したシール部の幅は1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0043】
[拘束部]
拘束部26は、カソードセパレータ15及びアノードセパレータ18のうち、少なくとも支持体23の接着層23bと接触する面に凹凸(凸部26a、凹部26b)を有し、凹部26bへの接着層23bの入り込み、及び、凸部26aの接着層23bへの食い込みにより、支持体23の移動を制限する部位である。
拘束部26により支持体23を拘束することができ、熱による膨張収縮、衝突等による寸法変化等のような、図4に直線矢印Bで示した方向の支持体23の移動を抑制して寸法安定性を高めることが可能となる。また、凹凸による接着面積の増加でカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18と支持体23との接着性(接着強度)を高めることもできる。
【0044】
拘束部26の凹凸の形態は、シール部25よりも支持体23の移動を制限することができる構造であれば特に限定されることはないが、例えば図6の(a)~(c)に挙げたような形態を挙げることができる。(a)~(c)は拘束部26のうち、アノードセパレータ18に形成された凸部26a及び凹部26b側の面の一部を模式的に表した図である。カソードセパレータ15側についても同様に考えることができる。
【0045】
図6の(a)の例は、アノードセパレータ18が拘束部26において波状に形成され、その表裏に凹凸の線条が形成されている。当該凹凸の線条のうち支持体23側に形成された凹凸の線条がそれぞれ凸部26a(凸線条)、凹部26b(凹線条)となる。本形態では、凸部26aが延びる方向と凹部26bが延びる方向とが概ね平行とされ、当該延びる方向に直交する方向に凸部26aと凹部26bとが交互に配列された形態となる。
特に限定されることはないが、凸部26a、凹部26bは、燃料電池セル10の最も近い外周端部に向かう方向に凸部26aと凹部26bとが交互に並ぶことが好ましい。これによりさらに効果的に支持体の移動を抑制することができる。
【0046】
凸部26a、凹部26bの大きさは特に限定されることはないが、凸部26aの高さ及び凹部26bの深さは20μm以上80μm以下とすることができ、隣り合う凸部26a同士(又は隣り合う凹部26b同士)の繰り返し間隔、すなわちピッチは0.4mm以上1.5mm以下とすることができる。また、図4にWで示した拘束部26の幅は1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0047】
図6の(b)の例は、アノードセパレータ18が拘束部26において支持体23側となる面に間隔を有して配列された溝を有しておりこれが凹部26bとなり、凹部26bの間が凸部26aとなる形態である。本例でも凸部26aは凸線条、凹部26bは凹線条となり(a)と同様に考えることができる。
このような凹部26bとなる溝は、微細形状とすることもでき、その際には溝をレーザー照射による掘り込みで形成することができる。
【0048】
図6の(c)の例は、アノードセパレータ18が拘束部26において支持体23側となる面に突起が配列されており、この突起が凸部26aとなり、凸部26aの間が凹部26bとなる。本形態では凸部26aが円柱状の突起であるがこれに限定されることはなく他の形状柱状(例えば四角柱、三角柱等)であってもよいし、錐状(例えば円錐、三角錐、四角錐)の突起であってもよい。また、波状であったり、エンボス/ディンプル形状であってもよい。
突起の配列は特に限定されることはないが、縦横に整列されるように配列されてもよく、互い違い(いわゆる千鳥配列)に配列されてもよい。
また、凸部26a、凹部26bの大きさは特に限定されることはないが、凸部26aの高さ及び凹部26bの深さは20μm以上80μm以下とすることができ、隣り合う凸部26a同士(又は隣り合う凹部26b同士)の繰り返し間隔、すなわちピッチは0.4mm以上1.5mm以下とすることができる。また、図4にWで示した拘束部26の幅は1mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0049】
上記の他、図示はしないが、拘束部26の凹凸の形態を粗面により形成してもよい。この場合、表面粗さによる凹凸が凸部26a及び凹部26bをそれぞれ構成する。表面粗さの程度は特に限定されることはないが、少なくともシール部25における平滑な面25aよりは粗いものとする。具体的には例えばJIS B 0601-2001(ISO 4287-1997)の最大高さRzで20μm以上50μm以下であることが好ましい。
このような凹凸はプレス成型、ショットブラスト処理、レーザー照射等で形成することが可能である。
【0050】
[封止部の配置]
本形態では、封止部24において、シール部25が内側(発電部11に近い側)に配置され、拘束部26が外側(外周に近い側)に配置されている。ただしこれに限らず反対としてもよい。
【0051】
図7には発電単位セル10において封止部24が配置される位置を示した図である。図7(a)はカソード(酸素供給側)、図7(b)はアノード(水素供給側)をそれぞれ表しており、各図で太線でシール部25、点線で拘束部26を示している。このように封止部24は発電単位セル10の外周部、及び、流体の出入り口の周囲に必要に応じて配置されており、本開示では封止部24においてシール部25と拘束部26とが別に設けられ、異なる位置に並べて配置されている。
【0052】
[その他]
図4に示した形態ではシール部25と拘束部26との間のカソードセパレータ15及びアノードセパレータ18に突出部24aが設けられている。これは後述するように複数の発電単位セル10を重ねて燃料電池30とする際に、隣り合う発電単位セル10同士を接着する粘着シートが当該突出部24aに重なるように接着されて隣り合う発電単位セル10を固定するものである。
突出部24aは必ずしもシール部25と拘束部26との間に配置される必要はなく、図8に示したようにシール部25と拘束部26とが隣り合うように配置してもよい。この場合には突出部24aは異なる位置に設けられていればよい。
【0053】
2.燃料電池
燃料電池30は、上記した発電単位セル10が複数(50枚~400枚程度)重ねられてなる部材であり、複数の発電単位セル10から集電を行う。図9にその構成の概要を示した。燃料電池30は、スタックケース31、エンドプレート32、複数の発電単位セル10、集電板34、及び、付勢部材35を備えている。
【0054】
スタックケース31は、重ねられた複数の発電単位セル10、集電板34、及び、付勢部材35をその内側に収納する筐体である。本形態でスタックケース31は四角形の筒状で一端が開口し、他端が閉じているとともに、開口の縁に沿って開口とは反対側に板状の片が張り出し、フランジ31aを形成している。
【0055】
エンドプレート32は板状の部材であり、スタックケース31の開口を塞ぐ。スタックケース31のフランジ31aとの重なり部分をボルト及びナット等によりスタックケース31にフタをするようにエンドプレート32がスタックケース31に固定される。
【0056】
発電単位セル10は上記の通りである。このような発電単位セル10が複数重ねられている。このとき、1つの発電単位セル10のカソードセパレータ15に隣接する発電単位セル10のアノードセパレータ18が重なるように配置する。そしてカソードセパレータ15の溝15bとアノードセパレータ18の溝18bとが重なることで冷却水流路が形成される。
隣り合う発電単位セル10の間には粘着(接着)シートが配置され、隣り合う発電単位セル10の突起24a(図3図4参照)同士が粘着シートにより接着されることにより両者が安定して固定される。
【0057】
集電板34は、積層された発電単位セル10から集電を行う部材である。従って集電板34は発電単位セル10の積層体の一端及び他端のそれぞれに配置されており、一方が正極、他方が負極となる。この集電板34に不図示の端子が接続され、外部に電気的に接続できるように構成されている。
【0058】
付勢部材35は、スタックケース31の内側に収まり、発電単位セル10の積層体に対してその積層方向に押圧力を付与する。付勢部材として例えば皿バネ等を挙げることができる。
【0059】
3.効果等
本開示では発電単位セルの封止部において、シール性が高く気密性に優れるシール部と、支持体23の熱、差圧、衝撃等による動きを抑制するために拘束する拘束部と、を個別に設けるため、シール性と寸法安定性の両者を互いに阻害しないで確実に機能させることができる。
例えば、これらを個別に設けることなく、シール性を確保しようとすれば支持体の動きを十分に拘束することができずに形状安定性やシール性にも問題が生じることがある。一方、支持体の動きを拘束するために凹凸面のみでシールした場合には凹凸部に気泡が生じてシール性を損なうことがある。これに対して本開示によれば上記のようにシール性と寸法安定性の両者を互いに阻害しないで確実に機能させることができる。
【符号の説明】
【0060】
10 発電単位セル
11 発電部
12 電解質膜
13 カソード触媒層
14 カソードガス拡散層
15 カソードセパレータ
16 アノード触媒層
17 アノードガス拡散層
18 アノードセパレータ
21 外周部
22 カバーシート
23 支持体
23a 基材
23b 接着層
24 封止部
25 シール部
26 拘束部
26a 凸部
26b 凹部
30 燃料電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9