(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182142
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】部材連結機構
(51)【国際特許分類】
G01N 30/12 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G01N30/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095570
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古賀 聖規
(57)【要約】 (修正有)
【課題】連結部材の耐久性と弾性変形部に設けられている突起部の摺動性の両立を図る。
【解決手段】部材連結機構は、先端面が開口した円筒形状の部材連結部20を有し、前記部材連結部の外周面又は内周面に、前記部材連結部の先端側から基端側へ周方向に沿って傾斜した段差部30を有する第1部材14と、前記部材連結部に連結される第2部材22と、前記第2部材の前記第1部材側の端部を保持しながら前記部材連結部の前記段差部と係合する構造を有する連結部材34と、を備え、前記連結部材には、前記部材連結部の前記段差部と係合するように前記部材連結部の外周面又は内周面に向かって突起した円筒状の突起部が回転可能に設けられており、当該連結部材が前記部材連結部の周方向へ回転したときに前記突起部が回転しながら前記段差部に沿って移動し、それによって前記第1部材と前記第2部材とを近接させる方向に押圧して連結するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面が開口した円筒形状の部材連結部を有し、前記部材連結部の外周面又は内周面に、前記部材連結部の先端側から基端側へ周方向に沿って傾斜した段差部を有する第1部材と、
前記部材連結部に連結される第2部材と、
前記第2部材の前記第1部材側の端部を保持しながら前記部材連結部の前記段差部と係合する構造を有する連結部材と、を備え、
前記連結部材には、前記部材連結部の前記段差部と係合するように前記部材連結部の外周面又は内周面に向かって突起した円筒状の突起部が回転可能に設けられており、当該連結部材が前記部材連結部の周方向へ回転したときに前記突起部が回転しながら前記段差部に沿って移動し、それによって前記第1部材と前記第2部材とを近接させる方向に押圧して連結するように構成されている、部材連結機構。
【請求項2】
前記突起部は、前記連結部材に設けられた孔に挿し込まれたピンの一部である、請求項1に記載の部材連結機構。
【請求項3】
前記ピンはステンレス鋼製である、請求項2に記載の部材連結機構。
【請求項4】
前記ピンのうち少なくとも前記突起部をなす部分の外周面に摩擦係数を低減する表面処理が施されている、請求項3に記載の部材連結機構。
【請求項5】
前記ピンは、前記連結部材の前記孔の内径よりも大きい外径を有する第1円筒部、及び、前記第1円筒部と連結され前記連結部材の前記孔の内径よりも小さい外径を有する第2円筒部を有し、前記第1円筒部が前記突起部をなすように前記第2円筒部が前記連結部材の前記孔に挿し込まれている、請求項2に記載の部材連結機構。
【請求項6】
前記ピンの前記第2円筒部は前記連結部材の前記孔を貫通して前記第1円筒部とは反対側の端部が前記孔から突出し、前記孔から突出した前記端部の外周面に溝が設けられており、前記第2円筒部が前記孔から抜けることを防止するための留め具が前記溝と係合することによって前記ピンに取り付けられている、請求項5に記載の部材連結機構。
【請求項7】
前記連結部材は、
前記第2部材の前記第1部材側の端部の周囲を囲うリング状の連結部材本体と、
基端が前記連結部材本体と連結され、先端が前記連結部材本体の周方向に沿って前記連結部材本体と平行に伸びるように、前記連結部材本体とは間隔をもって前記連結部材本体よりも前記第1部材側に設けられた弾性変形部と、
を備えており、
前記弾性変形部は、前記連結部材の回転方向に対して垂直な方向へ弾性変形する円弧状の片持ちバネであり、
前記突起部は、前記弾性変形部の先端部から前記部材連結部の外周面に向かって突起している、請求項1から6に記載の部材連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気密を保って2つの部材を連結する際に用いられる部材連結機構に関するものである。このような部材連結機構は、例えばガスクロマトグラフの試料気化ユニットの開口を封止するようにOリングを挟み込んでシールキャップを装着する場合等に使用される。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ガスクロマトグラフには試料を気化して分析カラムへ送り込むための試料気化ユニットが設けられている。試料気化ユニットは筐体を有し、その筐体の内部に試料気化室となる空間があり、筐体の上部に試料気化室へ試料を注入するための試料注入口が設けられている。試料気化室の下部は分析カラムへ接続されており、試料気化室の上部からキャリアガスが導入されるようになっている。試料気化室は高温に加熱され、試料気化室に注入された液体試料は熱によって気化し、キャリアガスによって分析カラムへ送り込まれる。
【0003】
筐体内部の試料気化室には石英ガラスなどからなる円筒状のインサートが収容されており、試料注入口から注入された試料はインサートの内側で気化するようになっている。試料がインサートの内側で気化するようになっているため、試料ガスを試料気化室の金属内壁に接触させることなく分析カラムへ導入することができる。
【0004】
インサートは試料に直接接触するものであるから、試料気化後の残渣等の付着により汚れやすい部品である。そのため、インサートの定期的な交換や洗浄を行なうことができるように、インサートは着脱可能な状態で試料気化室内に収容されている。筐体の上面には試料気化室に通じる開口が設けられており、その開口からインサートを挿入したり取り出したりすることができる。筐体の開口はシールキャップが装着されることによって封止される。
【0005】
筐体に対するシールキャップの着脱を容易に行なうための機構が提案されている(特許文献1参照。)。提案の機構は、シールキャップを筐体に対して押し付けた状態で固定するための連結部材を使用する。連結部材は、シールキャップを保持する本体と本体に連結された弾性変形部を有し、筐体の外面に設けられた段差と係合させるための突起部が弾性変形部の先端に設けられている。筐体の外面に設けられた段差は傾斜をもち、連結部材の突起部を段差に係合させた状態で突起部が段差に沿って摺動するように連結部材を回転させて弾性変形部を弾性変形させ、連結部材の弾性変形部に弾性力を発生させる。連結部材の本体に保持されたシールキャップは弾性変形部の弾性力によって筐体に対して押し付けられ、それによってインサートとシールキャップとの間に挟み込まれるように設けられたOリングが押し潰されて筐体の開口における気密が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の連結部材の突起部は、摺動性等を考慮して、弾性変形部の孔にPBI(ポリベンゾイミダゾール)等の樹脂からなるピンを圧入することによって形成される。しかし、弾性変形部の孔にピンを圧入する際にピンが変形して局所的に強度の弱い箇所が発生し、連結部材の耐久性が低くなる恐れがある。そこで、ピンの素材をステンレス等の金属にすることも考えられる。しかし、ステンレス等の金属材料は、連結部材の使用回数の増加に伴って摩耗することにより突起部の摺動性が低下し、連結部材を回転させるために必要な力が大きくなる等の問題があった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、連結部材に設けられている突起部の耐久性と摺動性の両立を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る部材連結機構は、先端面が開口した円筒形状の部材連結部を有し、前記部材連結部の外周面又は内周面に、前記部材連結部の先端側から基端側へ周方向に沿って傾斜した段差部を有する第1部材と、前記第2部材の前記第1部材側の端部を保持しながら前記部材連結部の前記段差部と係合する構造を有する連結部材と、を備え、前記連結部材には、前記部材連結部の前記段差部と係合するように前記部材連結部の外周面又は内周面に向かって突起した円筒状の突起部が回転可能に設けられており、当該連結部材が前記部材連結部の周方向へ回転したときに前記突起部が回転しながら前記段差部に沿って移動し、それによって前記第1部材と前記第2部材とを近接させる方向に押圧して連結するように構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る部材連結機構では、連結部材に設けられた突起部が回転可能であり、連結部材が部材連結部の周方向へ回転したときに突起部が回転しながら段差部に沿って移動するように構成されているので、突起部と段差部との間の摩擦が軽減され、連結部材を回転させる際の突起部と段差部との間の摺動性が確保される。突起部の回転によって突起部と段差部との間の摺動性が確保されるため、樹脂製のピンの圧入によって突起部を形成する必要がなく、突起部の耐久性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る部材連結機構が適用された試料気化ユニットの一実施例を示すシールキャップ装着前の斜視図である。
【
図2】同実施例のシールキャップ装着後の斜視図である。
【
図3】同実施例のシールキャップ固定後の斜視図である。
【
図4A】同実施例においてシールキャップを締め込む前の状態を示す断面図である。
【
図4B】同実施例においてシールキャップを締め込んだ時の状態を示す断面図である。
【
図5A】同実施例における部材連結機構の連結部材を示す平面図である。
【
図6】連結部材に取り付けられているピンの一例を示す図である。
【
図7】連結部材にピンを取り付けるための留め具の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る部材連結機構が適用されたガスクロマトグラフにおける試料気化ユニットの一実施例について図面を用いて説明する。
【0013】
図1から
図3に示されているように、試料気化ユニット2の筐体14(第1部材)はこの実施例では角柱形状を有する。なお、筐体14の形状は角柱形状に限らず、円柱形状その他の形状であってもよい。筐体14は内部にインサート16を収容するための空間14a(
図4参照。以下、内部空間14aと称する。)を備えている。内部空間14aは筐体14の上面から下部の出口部2aまで通じる円柱形状の穴からなる。筐体14は熱伝導性の良好な金属材料で構成されている。筐体14にはヒータ(図示は省略)が内部空間14aの周囲を取り囲むようにして埋設されており、ヒータによって内部空間14aに収容されたインサート16が加熱されるようになっている。インサート16は石英ガラスなどからなる円筒状の部材である。
【0014】
筐体14の開口部28はシールキャップ22(第2部材)により封止される。シールキャップ22は、円筒形状のシールキャップ本体部32とそのシールキャップ本体部32の最上部に取り付けられた円板形状のセプタムカバー33からなる。ニードル挿入部24はセプタムカバー33に設けられている。
【0015】
図4Aに示されているように、シールキャップ本体部32の最上部にセプタム40が配置され、そのセプタム40の上方にニードル挿入部24がくるように、シールキャップ本体部32の最上部にセプタムカバー33が装着されている。セプタム40は、ニードル挿入部24から挿入された試料注入用のニードルで貫通可能で、かつニードルを引き抜いた後はその弾力性によってニードルによる貫通孔を閉じるものである。セプタム40は、例えば天然ゴムやシリコーンゴムなどの弾性材料からなるものである。セプタム40を貫通したニードルの先端からシールキャップ本体部32の中央の貫通孔42を介してインサート16側へ試料が吐出される。
【0016】
筐体14の上面の開口部28の縁は上方へ円環状に突起してキャップ装着部20(部材連結部)をなしている。シールキャップ22は連結部材34によってキャップ装着部20に固定される。キャップ装着部20の外周面の対称な2ヶ所に段差部30が設けられている。段差部30はキャップ装着部20の先端側から基端側へキャップ装着部20の周方向に沿って傾斜している。この段差部30はキャップ装着部20の基端側を向いた側面を有する。シールキャップ22を筐体14に装着する際は、シールキャップ22に装着された連結部材34のピン36を段差部30の側面に係合させる。連結部材34をキャップ装着部20の軸方向に対して垂直な平面(回転平面)内において回転させると、ピン36が段差部30の側面に沿って移動し、キャップ装着部20の軸方向に変位する。
【0017】
図5Aから
図5Cに示されているように、連結部材34は、中央に穴が設けられたリング状の連結部材本体34aと、連結部材本体34aの一方の面側に2つの弾性変形部34bを備えている。連結部材34の弾性変形部34bが設けられていない側を表面側、弾性変形部34bが設けられている側を裏面側とすると、連結部材34はその裏面側が筐体14側を向くように、シールキャップ本体部32に装着される。
【0018】
連結部材34の弾性変形部34bは連結部材本体34aの周縁に沿って弧を描くように連結部材本体34aと一定の間隔をもって設けられている。弾性変形部34bの基端は連結部材本体34aと一体をなしているが先端は自由端となっている。すなわち、弾性変形部34bは片持ちバネをなしている。2つの弾性変形部34bは同一形状を有する。連結部材本体34aにはこの連結部材34を保持して回転させるためのレバー38が設けられている。
【0019】
それぞれの弾性変形部34の先端にピン36が回転可能に取り付けられている。ピン36は、
図6に示されているように、弾性変形部34の先端の孔の内径よりも大きい外径d1を有する円筒状の第1円筒部36aと、第1円頭部36aと連結され弾性変形部34の先端の孔の内径よりも小さい外径d2を有する円筒状の第2円筒部36bと、を有する。第2円筒部36bの第1円筒部36aとは反対側の端部に溝36cが設けられている。ピン36は、弾性変形部34の先端に設けられた孔に嵌め込まれた状態で留め具37によって固定されている。
【0020】
図5Cに示されているように、ピン36は、第1円筒部36aが弾性変形部34の内側へ突起して突起部をなすように第2円筒部36bが弾性変形部34の孔に内側から挿通されて弾性変形部34を貫通している。弾性変形部34の外側には第2円筒部36bの第1円筒部36aとは反対側の端部が突出して溝36cが露出し、その溝36cに留め具37が取り付けられることでピン36が弾性変形部34の孔から抜けないようになっている。ピン36の第1円筒部36aは、弾性変形部34から内側に向かって突起した突起部を形成している。
【0021】
ピン36の素材は特に限定されないが、ステンレス鋼などの高硬度金属材料を使用することができる。このような高硬度金属材料を使用すれば、ピン36に高負荷がかかったときにピン36が折れるといったことが防止され、連結部材34の高い耐久性が得られる。さらに好ましい実施形態では、高硬度金属材料からなるピン36の少なくとも第1円筒部36aに、二硫化モリブデンコーティングなど、摩擦係数を低減するための表面処理が施されている。これにより、連結部材34の耐久性とピン36(突起部)の摺動性との両立を図ることができる。
【0022】
留め具37としては、
図7に示されているようなEリングを使用することができる。
【0023】
この実施例では、連結部材34の連結部材本体34aと弾性変形部34bが金属ブロックからの削り出しやMIM(金属粉末射出成形法)などの製法によって一体的に形成されている。なお、連結部材本体34aと弾性変形部34bは別部品として形成された後に連結されていてもよい。その場合、連結部材本体34aと弾性変形部34bの素材は同一である必要はない。
【0024】
連結部材本体34aは、シールキャップ本体部32に対してその外周面の周方向に移動可能に係合する。すなわち、連結部材本体34aは第2部材であるシールキャップ本体部32の筐体14側の端部と係合する第2係合部を構成している。
【0025】
具体的には、
図4Aに示されているように、シールキャップ本体部32の外周面には、周方向に設けられた円環状の凹部である水平溝32aが設けられている。水平溝32aにはC型止め輪44が嵌め込まれている。C型止め輪44は一部に切欠きを有するC字型の金属部材であり、シールキャップ本体部32の水平溝32aが設けられている部分の外径と同程度の大きさの内径と、シールキャップ本体部32の水平溝32aが設けられていない部分の外径よりも大きい外径を有するものである。連結部材36の連結部材本体34aの中央の穴の内径はシールキャップ本体部32の水平溝32aが設けられていない部分の外径よりも大きく、C型止め輪44の外径よりも小さくなっている。連結部材本体34aの下方にC型止め輪44がくるようにシールキャップ本体部32が連結部材本体34aの中央の穴に嵌め込まれている。なお、水平溝32a及びC型止め輪44に代えて、シールキャップ本体部32の外周面から周方向へ突起する鍔部がシールキャップ32と一体として設けられていてもよい。
【0026】
図8に示されているように、段差部30は、キャップ装着部20の上端面外側に設けられたピン36を嵌め込む凹部30aと、キャップ装着部20の基端側を向く互いに連続した側面30b及び30cを備えている。キャップ装着部20へのシールキャップ22の固定は、連結部材34の弾性変形部34bの先端のピン36が凹部30aに嵌め込まれるようにシールキャップ22をキャップ装着部20に被せ(
図2の状態)、ピン36が回転しながら段差部30の側面30b及び30cに沿って移動するように連結部材34を一方向(
図6Aにおいて時計回りの方向)へ回転させることにより行なう(
図3の状態)。ピン36が回転可能であるため、ピン36と段差部30の側面30b,30cとの間の摩擦力が低減され、段差部30に対するピン36の良好な摺動性が得られる。仮にピン36が弾性変形部34bの孔に圧入されて回転不可能である場合、連結部材34の回転に伴ってピン36が段差部30の側面30b及び30c上を摺動し、ピン36が摩耗して摺動性や耐久性が低下することになる。
【0027】
段差部30の側面30b及び30cは、凹部30aに嵌め込まれたピン36がキャップ装着部20の外周面に沿って時計回りへ移動するにしたがってキャップ装着部20の基端側へ変位するように、連結部材34の回転平面に対して傾斜している。側面30bと30cの傾斜角度は異なっており、側面30cの傾斜角度は側面30bの傾斜角度よりも緩やかである。
【0028】
図4Aに示されているように、筐体14の内部空間14aの開口部側に、インサート16の外周面と内部空間14aの内側壁面との間の隙間を封止するOリング46(弾性封止部材)が配置される。Oリング46は、例えばフッ素ゴムなどからなるものである。筐体14の内側側壁の開口部28の近傍に、下方へいくにしたがってその内径が小さくなるように傾斜した円環状の台座28aが設けられており、Oリング46がその台座28aによって支持される。シールキャップ本体部32は、下面側にインサート16の上端を収容する凹部を有するとともに、その下端部が開口部28内に収容され、Oリング46を台座28aとの間で挟み込むようになっている。シールキャップ本体部32の円環状の下端面は、台座28aとは逆に下方へいくにしたがってその内径が大きくなるように傾斜している。
【0029】
連結部材34のピン36を段差部30の凹部30aに合わせるようにしてシールキャップ22をキャップ装着部20に被せると、シールキャップ本体部32の下端がOリング46と当接する。この状態で、ピン36が段差部30の側面30b及び30cに沿って移動するように連結部材34を回転させると、
図4Bに示されているように、ピン36がキャップ装着部20の基端側へ変位し、連結部材本体34aがC型止め輪44を下方へ押圧する。これにより、シールキャップ本体部32が下方へ押圧される。連結部材34は、連結部材本体34aがC型止め輪44と係合することによって、シールキャップ本体部32とは独立して回転しながらシールキャップ本体部32を下方へ押圧するものであるため、シールキャップ22を回転させることなく連結部材34のみを回転させることができる。
【0030】
連結部材34の弾性変形部34bは、ピン36の位置を、連結部材本体34aとは相対的にキャップ装着部20の軸方向へ変位させるように弾性変形するものであり、その変位量に応じた復元力を生じるバネ性を有する。連結部材34が回転してピン36が段差部30の側面30cの終点位置まで移動したときに、弾性変形部34bの弾性力によってシールキャップ本体部32を開口部28内へ押し込む方向に押圧し、それによって内部空間14aの内側壁面とインサート16の外周面との間の隙間へのガスの進入を完全に防止できる程度にOリング46を変形させる。連結部材34の弾性変形部34bは、ピン36がキャップ装着部20の基端から所定距離にある位置として設定された側面30cの終点位置に到達したときに、Oリング46を必要量だけ変形させるのに必要な弾性力を発生させるように設計されている。
【0031】
以上において説明した実施例は、本発明に係る部材連結機構の実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係る部材連結機構の実施形態は以下のとおりである。
【0032】
本発明に係る部材連結機構の一実施形態では、先端面が開口した円筒形状の部材連結部(20)を有し、前記部材連結部(20)の外周面又は内周面に、前記部材連結部(20)の先端側から基端側へ周方向に沿って傾斜した段差部(30)を有する第1部材(14)と、前記部材連結部(20)に連結される第2部材(22)と、前記第2部材(22)の前記第1部材(14)側の端部を保持しながら前記部材連結部(20)の前記段差部(30)と係合する構造を有する連結部材(34)と、を備え、前記連結部材(34)には、前記部材連結部(20)の前記段差部(30)と係合するように前記部材連結部(20)の外周面又は内周面に向かって突起した円筒状の突起部(36a)が回転可能に設けられており、当該連結部材(34)が前記部材連結部(20)の周方向へ回転したときに前記突起部(36a)が回転しながら前記段差部(30)に沿って移動し、それによって前記第1部材(14)と前記第2部材(22)とを近接させる方向に押圧して連結するように構成されている。
【0033】
上記一実施形態の第1態様では、前記突起部(36a)は、前記連結部材(34)に設けられた孔に挿し込まれたピン(36)の一部である。
【0034】
上記第1態様において、前記ピン(36)はステンレス鋼製であってもよい。そうすれば、突起部が高い耐久性を有するようになり、連結部材の耐久性が向上する。
【0035】
上記の場合、前記ピン(36)のうち少なくとも前記突起部をなす前記一部は摩擦係数を低減する表面処理が施されていてもよい。そうすれば、突起部の摺動性がさらに向上する。
【0036】
また、上記第1態様において、前記ピン(36)は、前記連結部材(34)の前記孔の内径よりも大きい外径を有する第1円筒部(36a)、及び、前記第1円筒部(36a)と連結され前記連結部材(34)の前記孔の内径よりも小さい外径を有する第2円筒部(36b)を有するものとすることができ、その場合には、前記第1円筒部(36a)が前記突起部をなすように前記第2円筒部(34b)が前記連結部材(34)の前記孔に挿し込まれている。
【0037】
上記の場合、前記ピン(36)の前記第2円筒部(36b)は前記連結部材の前記孔を貫通して前記第1円筒部(36a)とは反対側の端部が前記孔から突出し、前記孔から突出した前記端部の外周面に溝(36c)が設けられており、前記第2円筒部(36b)が前記孔から抜けることを防止するための留め具(37)が前記溝と係合することによって前記ピン(36)に取り付けられていてもよい。
【0038】
上記一実施形態の第2態様では、前記連結部材は、前記第2部材(22)の前記第1部材(14)側の端部の周囲を囲うリング状の連結部材本体と、基端が前記連結部材本体(34a)と連結され、先端が前記連結部材本体(34a)の周方向に沿って前記連結部材本体(34a)と平行に伸びるように、前記連結部材本体(34a)とは間隔をもって前記連結部材本体(34a)よりも前記第1部材(14)側に設けられた弾性変形部と、を備え、前記弾性変形部は前記連結部材(34)の回転方向に対して垂直な方向へ弾性変形する円弧状の片持ちバネであり、前記突起部(36a)は、前記弾性変形部(34b)の先端部から前記部材連結部(20)の外周面に向かって突起している。
【符号の説明】
【0039】
2 試料気化ユニット
2a 試料気化ユニット出口部
14 筐体(第1部材)
14a 筐体の内部空間
16 インサート
20 キャップ装着部(部材連結部)
22 シールキャップ(第2部材)
24 ニードル挿入部
26 キャリアガス供給用の配管
28 開口部
30 段差部
30a 凹部
30b,30c 段差部の側面
32 シールキャップ本体部
32a 水平溝
33 セプタムカバー
34 連結部材
34a 連結部材本体
34b 弾性変形部
36 ピン
36a 第1円筒部
36b 第2円筒部
36c 溝
37 留め具
38 レバー(作用部)
40 セプタム
42 貫通孔
44 C型止め輪
46 Oリング