(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182144
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】窓表示制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B64D 11/00 20060101AFI20231219BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B64D11/00
B64C39/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095573
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂口 晶子
(57)【要約】
【課題】飛行体の乗客に対する飛行中の視覚上の不安を軽減させること。
【解決手段】本発明にかかる窓表示制御装置(16)は、飛行体(10)の乗客(U)に関する離陸前又は後の状態情報を取得する取得部(1621)と、状態情報に基づいて飛行体(10)の乗客(U)が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定する判定部(1622)と、不安状態であると判定した場合、飛行体(10)の窓領域(15)における表示部(151)の表示を制御する表示制御部(1623)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定する判定部と、
前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御する表示制御部と、
を備える窓表示制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記乗客から取得された生体情報及び前記乗客の撮影画像の少なくとも一方を含む状態情報に基づいて前記不安状態であるか否かを判定する
請求項1に記載の窓表示制御装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記飛行体の離陸前に前記乗客から取得された第1の状態情報と、前記飛行体の離陸後に前記乗客から取得された第2の状態情報との比較結果に基づいて前記不安状態であるか否かを判定する
請求項2に記載の窓表示制御装置。
【請求項4】
コンピュータが、
飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定するステップと、
前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御するステップと、
を行う窓表示制御方法。
【請求項5】
飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定するステップと、
前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御するステップと、
をコンピュータに実行させる窓表示制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窓表示制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、旅客移動体の客室内における閉塞感や圧迫感を解消するための客室照明方法に関する技術が開示されている。特に、特許文献1にかかる方法は、旅客移動体の窓の外の景色等の画像情報を疑似化して、画像情報を基にして照明装置を発光させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、空陸両用で近中距離を移動するための中小型の飛行体であるエアモビリティが実用化されつつある。ここで、飛行体の乗客の中には、高所が苦手であるために飛行体の利用を躊躇する場合がある。そして、高所への不安を克服するには、慣れやトレーニング等が必要となり、克服できない場合には、上述したエアモビリティ等の飛行体の利用が阻害され得る。
【0005】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、飛行体の乗客に対する飛行中の視覚上の不安を軽減させるための窓表示制御装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる窓表示制御装置は、飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定する判定部と、前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御する表示制御部と、を備える。
【0007】
本開示にかかる窓表示制御方法は、コンピュータが、飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定するステップと、前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御するステップと、を行う。
【0008】
本開示にかかる窓表示制御プログラムは、飛行体の乗客が飛行に起因する不安状態であるか否かを判定するステップと、前記不安状態であると判定した場合、前記飛行体の窓領域における表示部の表示を制御するステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、飛行体の乗客に対する飛行中の視覚上の不安を軽減させるための窓表示制御装置、方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態1にかかる窓表示制御装置が搭載された飛行体の側面図である。
【
図2】本実施形態1にかかる窓表示制御装置が搭載された飛行体の構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態1にかかる窓表示制御方法の流れを示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態1にかかる窓表示制御装置が搭載された飛行体の利用状態の概念を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本開示の具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0012】
<実施形態1>
図1は、本実施形態1にかかる窓表示制御装置16が搭載された飛行体10の側面図である。飛行体10は、乗客Uを空路で送客する航空機、つまり空中を移動する移動体である。例えば、飛行体10は、乗客が近中距離を移動するために利用する中小型の飛行体であるエアモビリティであってもよい。また、飛行体10は、空陸両用の自動車や垂直離着陸機であってもよい。例えば、飛行体10は、空飛ぶクルマ、クルマヒコーキ、有人ドローン、eVTOL(Electric Vertical Take-Off and Landing aircraft)、UAM(Urban Air Mobility)等と呼ばれるものであっても良い。ここで、乗客Uは、飛行体10を操縦しないものとする。また、飛行体10には、複数の乗客Uが搭乗していても良い。そして、飛行体10は、乗客Uとは別に搭乗する操縦士又は運転手により操縦又は運転されてもよい。または、飛行体10は、操縦士又は運転手が搭乗しておらず、遠隔により操縦又は運転されてもよい。または、飛行体10は、自動運転されるものであってもよい。
【0013】
飛行体10は、乗客Uの座席から外部の風景を視認可能な窓領域15と、飛行を実現する飛行部11を備える。窓領域15は、調光ガラス、液晶調光フィルム又は透明ディスプレイ等を備える。また、飛行体10は、内部に窓表示制御装置16や不安申請ボタン17等を備える。尚、飛行体10は、これら以外にも
図1に示されていない構成を備えており、各構成の詳細な説明は、後述する。窓表示制御装置16は、後述するように、乗客Uが不安状態であると判定した場合、窓領域15の表示を、乗客Uから外部が見え難くなるように制御する。乗客Uが不安申請ボタン17を押下した場合にも、窓表示制御装置16は、乗客Uが不安状態であると判定し、同様の制御を行う。
【0014】
図2は、本実施形態1にかかる窓表示制御装置16が搭載された飛行体10の構成を示すブロック図である。飛行体10は、飛行部11、無線部12、機内カメラ13、生体センサ14、窓領域15、窓表示制御装置16及び不安申請ボタン17を備える。尚、飛行体10は、
図2に示されていない構成として、飛行体を実現する一般的な構成を備えるものとする。
【0015】
飛行部11は、図示しない飛行制御部からの指示に応じて、飛行体10を飛行させる。飛行部11は、例えば、複数枚のブレード、つまり羽根と、ブレードを指示するハブその他部品を含むプロペラである。尚、飛行制御部は、飛行部11を制御するためのハードウェアもしくはソフトウェア、又は、これらの組合せである。例えば、飛行制御部は、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路であるか、機能の全て又は一部が窓表示制御装置16で実現されたものであってもよい。
【0016】
無線部12は、図示しない無線通信制御部の制御に応じて、飛行体10の外部との無線通信を行う。無線部12は、所定の無線通信プロトコルによる無線通信のための信号の送受信を行うためのアンテナ等である。尚、無線通信制御部は、無線部12を制御するためのハードウェアもしくはソフトウェア、又は、これらの組合せである。例えば、無線通信制御部は、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路であるか、機能の全て又は一部が窓表示制御装置16で実現されたものであってもよい。
【0017】
機内カメラ13は、図示しない撮影制御部の制御に応じて、飛行体10内の乗客の顔等の身体を撮影する撮影装置である。機内カメラ13は、撮影した画像を窓表示制御装置16へ出力する。機内カメラ13は、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等である。尚、撮影制御部は、機内カメラ13を制御するためのハードウェアもしくはソフトウェア、又は、これらの組合せである。例えば、撮影制御部は、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路であるか、機能の全て又は一部が窓表示制御装置16で実現されたものであってもよい。
【0018】
生体センサ14は、図示しないセンサ制御部の制御に応じて、飛行体10内の乗客から生体情報を測定して取得し、生体情報を窓表示制御装置16へ出力する測定装置である。生体情報は、乗客の心拍数、脈拍数、体温、血圧、姿勢等を含んでも良い。生体センサ14は、乗客に装着する接触型のセンサ、例えばウェアラブルデバイス、又は、非接触型のセンサである。尚、センサ制御部は、生体センサ14を制御するためのハードウェアもしくはソフトウェア、又は、これらの組合せである。例えば、センサ制御部は、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路であるか、機能の全て又は一部が窓表示制御装置16で実現されたものであってもよい。
【0019】
窓領域15は、飛行体10の内部空間と外部との境界の少なくとも一部の領域であり、乗客Uの座席から飛行体10の外部の風景を視認可能な窓部に相当する領域である。窓領域15は、表示部151を備える。表示部151は、内部空間と外部との境界に設置され、透過度合いを調光可能な部材及び装置であるか、透過状態に所定の画像や映像を表示可能な部材及び装置であってもよい。表示部151は、例えば、調光ガラス、液晶調光フィルム、透明ディスプレイ等であり、通常の窓ガラス等と重畳させたものであってもよい。表示部151は、調光ガラス、液晶調光フィルム、透明ディスプレイ等の図示しない制御回路を含んでも良い。尚、制御回路は、窓表示制御装置16からの指示に応じて、表示部151の透過状態と非透過状態とを切替可能なものとする。非透過状態としては、例えば、遮光状態、画像や映像が表示された状態等が挙げられる。また、表示部151は、窓表示制御装置16からの指示に応じて、制御対象の領域が調整可能とする。尚、制御回路は、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路である。
【0020】
不安申請ボタン17は、乗客Uが飛行体10への搭乗後の離陸前や離陸後に高所に対する不安や恐怖を感じた場合に、乗客Uによる不安申請を受け付けるためのボタンである。不安申請ボタン17は、乗客Uにより押下された場合に不安申請の通知情報を窓表示制御装置16へ出力する。
【0021】
窓表示制御装置16は、飛行体10内に設置されたコンピュータ、つまり情報処理装置である。窓表示制御装置16は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)であるが、これに限定されない。尚、窓表示制御装置16は、複数台のコンピュータに冗長化されてもよく、各機能ブロックが複数台のコンピュータで実現されてもよい。窓表示制御装置16は、通信部161、制御部162及び記憶部163を少なくとも備える。通信部161は、無線部12を介して飛行体10の外部との通信を行うインタフェース回路である。
【0022】
記憶部163は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性記憶装置とRAM(Random Access Memory)等のメモリ、つまり揮発性記憶装置とを含むものとする。記憶部163は、プログラム1631、事前情報1632、離陸前状態情報1633及び離陸後状態情報1634を記憶する。プログラム1631は、本実施形態にかかる窓表示制御方法の処理が実装されたコンピュータプログラムであり、窓表示制御プログラムの一例である。尚、記憶部163は、少なくともプログラム1631を記憶していれば良く、乗客Uの搭乗前には事前情報1632を記憶していなくてもよい。また、記憶部163は、乗客Uの搭乗後かつ離陸前に離陸前状態情報1633を記憶し、離陸後に離陸後状態情報1634を記憶する。また、事前情報1632、離陸前状態情報1633及び離陸後状態情報1634は、着陸後に、記憶部163から削除されてもよい。
【0023】
事前情報1632は、乗客Uの搭乗に起因して入力された情報である。例えば、事前情報1632は、乗客Uが飛行体10に搭乗することが決まった後、搭乗前に、外部の情報処理装置を介して窓表示制御装置16へ入力されてもよい。または、事前情報1632は、乗客Uが飛行体10に搭乗した後に、飛行体10の内部の入力装置を介して乗客U等により入力されてもよい。事前情報1632は、例えば、飛行体10の乗客Uおける飛行に起因する不安状態の有無や不安状態に関する疾病情報等を示す情報であり、乗客U等により事前に申請された情報である。疾病情報とは、飛行時に乗客Uが視覚で認識したことにより不安や恐怖が生じ得る症状に関する情報である。疾病情報は、例えば、高所恐怖症や高所恐怖癖の有無や内容を示す医療情報、又は、不安や恐怖を感じる度合い、例えば、高度の閾値等の情報等であってもよい。また、事前情報1632は、乗客Uが不安状態ではない正常時の顔画像や生体情報等を含んでも良い。
【0024】
離陸前状態情報1633は、搭乗後かつ飛行体10の離陸前に乗客Uから取得された第1の状態情報である。離陸後状態情報1634は、飛行体10の離陸後かつ飛行中に乗客Uから取得された第2の状態情報である。第1及び第2の状態情報は、生体センサ14により乗客Uから測定され取得された生体情報、及び、機内カメラ13により乗客Uが撮影された撮影画像の少なくとも一方を含む。撮影画像は、乗客Uの状態を判定可能な身体の少なくとも一部が撮影されたものである。撮影画像は、例えば、乗客Uの顔、上半身、皮膚の一部、全身等を含むものである。また、第1及び第2の状態情報は、生体情報や撮影画像に対する不安状態の分析結果であってもよい。
【0025】
制御部162は、窓表示制御装置16の各構成を制御する制御装置である。制御部162は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、量子プロセッサ(量子コンピュータ制御チップ)等のプロセッサである。制御部162は、記憶部163内の不揮発性記憶装置からプログラム1631をメモリへ読み込ませ、プログラム1631を実行する。これにより、制御部162は、取得部1621、判定部1622及び表示制御部1623の機能を実現する。尚、制御部162は、上述した飛行制御部、無線通信制御部、撮影制御部、センサ制御部の一部又は全ての機能を実現してもよい。または、飛行制御部、無線通信制御部、撮影制御部、センサ制御部の一部又は全ての処理は、プログラム1631とは別のプログラムに実装されてもよい。または、飛行制御部、無線通信制御部、撮影制御部、センサ制御部の一部又は全ては、制御部162とは別のハードウェア、例えば、半導体装置で実現される汎用又は専用の回路であってもよい。
【0026】
取得部1621は、飛行体10の内部又は外部の入力装置を介して、事前情報1632を受け付け、事前情報1632を記憶部163に記憶する。また、取得部1621は、飛行体10の離陸前に第1の状態情報を取得し、第1の状態情報を離陸前状態情報1633として記憶部163に記憶する。また、取得部1621は、飛行体10の離陸後に第2の状態情報を取得し、第2の状態情報を離陸後状態情報1634として記憶部163に記憶する。
【0027】
具体的には、取得部1621は、飛行体10の離陸前に機内カメラ13により撮影された乗客Uの顔画像等を受け付け、顔画像を含めた離陸前状態情報1633として記憶部163に記憶する。また、取得部1621は、飛行体10の離陸前に生体センサ14により乗客Uから測定され取得された生体情報を受け付け、生体情報を含めた離陸前状態情報1633として記憶部163に記憶する。
【0028】
また、取得部1621は、飛行体10の離陸後に機内カメラ13により撮影された乗客Uの顔画像等を受け付け、顔画像を含めた離陸後状態情報1634として記憶部163に記憶する。また、取得部1621は、飛行体10の離陸後に生体センサ14により乗客Uから測定され取得された生体情報を受け付け、生体情報を含めた離陸後状態情報1634として記憶部163に記憶する。
【0029】
尚、取得部1621は、離陸前の顔画像及び生体情報の少なくとも一方を取得し、取得した情報を離陸前状態情報1633として記憶部163に記憶してもよい。そして、取得部1621は、離陸前に顔画像を取得していた場合、離陸後も乗客Uの顔画像を取得し、離陸後状態情報1634として記憶部163に記憶する。また、取得部1621は、離陸後に生体情報を取得していた場合、離陸後も乗客Uの生体情報を取得し、離陸後状態情報1634として記憶部163に記憶する。尚、取得部1621は、不安申請ボタン17が押下された場合に、不安申請の通知情報を取得してもよい。
【0030】
判定部1622は、飛行体10の乗客Uが飛行に起因する不安状態であるか否かを判定する。飛行に起因する不安状態とは、例えば、飛行体10が離陸に伴い地上から高所へ移動、つまり、上昇する過程や上昇後において、窓領域15から視認可能な風景により乗客Uが不安や恐怖を感じた状態を含む。また、飛行に起因する不安状態には、飛行体10の上昇過程や上昇後の風景が視認可能になることを、乗客Uが離陸前に意識することにより、不安や恐怖を感じた状態を含んでも良い。または、飛行に起因する不安状態には、現時点で乗客Uが不安状態に陥っていないとしても、不安状態に陥る予兆がある場合も含むものとする。そのため、飛行に起因する不安状態は、飛行時に乗客Uが視覚で認識したことにより不安が生じ得る状態、または、不安が生じた状態ともいえる。
【0031】
具体的には、判定部1622は、事前情報1632を参照又は分析することにより、乗客Uが離陸前に不安状態に陥る予兆があるか否かを判定する。例えば、判定部1622は、乗客Uに対応する事前情報1632に飛行に起因する疾病情報として高所恐怖症や高所恐怖癖が有ることを示す場合、離陸前であっても、不安状態に陥る予兆があると判定するとよい。また、判定部1622は、乗客Uに対応する事前情報1632に恐怖を感じる高度の閾値が含まれる場合、飛行体10が飛行時に上昇する高度の予定値と閾値とを比較する。そして、高度の予定値が閾値を超える場合、判定部1622は、乗客Uが不安状態に陥る予兆があると判定するとよい。
【0032】
また、判定部1622は、状態情報に基づいて、乗客Uが不安状態であるか否かを判定するとよい。例えば、状態情報が顔画像等の画像情報である場合、判定部1622は、画像認識により乗客Uの不安状態を示す情報(表情、行動など)を抽出し、抽出した情報の度合いにより、乗客Uが不安状態であるか否かを判定するとよい。また、状態情報が生体情報である場合、判定部1622は、乗客Uの顔の総血流量や酸素飽和度のセンシング結果が正常範囲か否かにより、乗客Uが不安状態であるか否かを判定するとよい。
【0033】
具体的には、判定部1622は、離陸前状態情報1633を分析することにより、乗客Uが離陸前に不安状態に陥っているか否かを判定するとよい。例えば、判定部1622は、事前情報1632に含まれる正常時の状態情報と、離陸前状態情報1633に含まれる状態情報とを比較し、正常時の状態情報と離陸前状態情報1633に含まれる状態情報との差異が所定値以上である場合、乗客Uが離陸前に不安状態に陥っていると判定するとよい。
【0034】
また、判定部1622は、離陸後に取得された離陸後状態情報1634を分析することにより、乗客Uが離陸前に不安状態に陥っているか否かを判定するとよい。例えば、判定部1622は、事前情報1632に含まれる正常時の状態情報と、離陸後状態情報1634に含まれる状態情報とを比較し、正常時の状態情報と離陸後状態情報1634に含まれる状態情報との差異が所定値以上である場合、乗客Uが離陸後に不安状態に陥っていると判定するとよい。
【0035】
また、判定部1622は、第1の状態情報と第2の状態情報との比較結果に基づいて、乗客Uが不安状態であるか否かを判定するとよい。具体的には、判定部1622は、離陸前状態情報1633と離陸後状態情報1634との比較結果に基づいて、乗客Uが不安状態であるか否かを判定するとよい。例えば、判定部1622は、離陸前状態情報1633と離陸後状態情報1634のそれぞれに含まれる顔画像を比較し、顔画像の特徴情報の差分に不安状態を示す特徴情報が所定値以上含まれる場合に、乗客Uが離陸後に不安状態に陥っていると判定するとよい。また、判定部1622は、離陸前状態情報1633と離陸後状態情報1634のそれぞれに含まれる生体情報を比較し、生体情報の差分が所定値以上である場合に、乗客Uが離陸後に不安状態に陥っていると判定するとよい。
【0036】
尚、判定部1622は、取得部1621により乗客Uが不安申請ボタン17を押下したことによる不安申請の通知情報が取得された場合、乗客Uが不安状態に陥っていると判定してもよい。
【0037】
表示制御部1623は、判定部1622が不安状態であると判定した場合、飛行体10の窓領域15における表示部151の表示を制御する。具体的には、表示制御部1623は、表示部151の表示内容を、乗客Uの不安状態を軽減するように変更する。すなわち、表示制御部1623は、乗客Uが窓領域15から飛行体10の外の風景が見え難くなるように表示部151を制御する。具体的には、表示制御部1623は、表示部151の表示を透過状態から透過状態以外の状態へ変更するように制御する。尚、表示制御部1623は、飛行体10が着陸した後、表示部151の表示を透過状態へ戻すように制御する。
【0038】
例えば、表示部151が調光ガラス又は液晶調光フィルムの場合、表示制御部1623は、調光ガラス等の透過率を所定値以下に下げる。例えば、表示制御部1623は、調光ガラス等を遮光状態に切り替えても良い。また、表示部151が透明ディスプレイの場合、表示制御部1623は、所定の映像や画像等を表示部151に表示する。所定の映像等とは、乗客Uが高所恐怖を感じにくい映像等とする。具体的には、所定の映像等は、自動車が出発地から目的地までの道路を走行した場合に自動車に搭載されたドライブレコーダにより撮影された録画映像や画像であるとよい。例えば、所定の映像等には、飛行体10が空陸両用のエアモビリティの場合、飛行体10が陸上を走行した際に、飛行体10に搭載された360度を撮影可能な車外カメラにより撮影された車外風景の映像を用いても良い。これらにより、乗客Uに空を飛んでいないように錯覚させて、飛行中の視覚上の不安を軽減させることができる。
【0039】
また、表示制御部1623は、表示部151の表示範囲の一部に対して上述した表示を制御してもよい。例えば、表示制御部1623は、表示部151の表示範囲の下半分や、乗客Uの視点の高さから一定距離以下の範囲に対して制御してもよい。尚、窓表示制御装置16は、機内カメラ13による乗客Uの撮影画像を解析することにより乗客Uの視点の高さを特定してもよい。また、飛行体10に複数人の乗客Uが搭乗している場合、表示制御部1623は、表示部151の表示範囲のうち、不安状態と判定された乗客Uの周辺の所定範囲を特定し、特定した範囲に対して上述した表示を制御してもよい。
【0040】
図3は、本実施形態1にかかる窓表示制御方法の流れを示すフローチャートである。まず、窓表示制御装置16の取得部1621は、飛行体10の離陸前に乗客Uの事前情報1632を取得する(S101)。このとき、取得部1621は、取得した事前情報1632を記憶部163に記憶する。また、ステップS101の前後に乗客Uが飛行体10に搭乗し、着席したものとする。
【0041】
次に、取得部1621は、飛行体10内の乗客Uから離陸前状態情報1633を取得する(S102)。そして、取得部1621は、取得した離陸前状態情報1633を記憶部163に記憶する(S103)。
【0042】
続いて、判定部1622は、乗客Uが不安状態か否かを判定する(S104)。例えば、判定部1622は、上述したように事前情報1632及び離陸前状態情報1633の一方又は両方に基づいて、離陸前の乗客Uに不安状態の予兆や既に不安状態となっているかを判定する。また、判定部1622は、取得部1621により乗客Uが不安申請ボタン17を押下したことによる不安申請の通知情報が取得された場合にも、乗客Uが不安状態に陥っていると判定する。
【0043】
ステップS104において、乗客Uが飛行に起因する不安状態と判定された場合、つまり、不安状態に陥る予兆があるか又は既に不安状態となっていると判定された場合、表示制御部1623は、窓領域15の表示部151の表示を透過状態から透過状態以外の状態へ変更するように制御する(S105)。具体的には、表示制御部1623は、表示部151の具体的な構成に応じて、上述したいずれかの方法により制御を行う。これにより、乗客Uは、飛行体10の離陸前から窓領域15の外が見え難くなり、飛行に起因する不安状態を軽減できる。また、このとき、表示制御部1623は、表示部151を通常モードから高所恐怖軽減モードに切り替えるものということができる。尚、ステップS104において乗客Uが飛行に起因する不安状態でないと判定された場合、ステップS106へ進む。
【0044】
その後、判定部1622は、飛行体10が離陸したか否かを判定する(S106)。例えば、判定部1622は、飛行部11に対する離陸制御の動作情報に基づき離陸したか否かを判定するとよい。または、判定部1622は、飛行体10が備える高度メータや気圧センサからの情報に基づいて、高度が所定値以上である場合に、飛行体10が離陸したと判定してもよい。または、飛行体10は、底面に超音波レーダやTOF(Time Of Flight)などの測距センサを備えても良い。その場合、判定部1622は、超音波レーダや測距センサによる測定値に基づいて、高度が所定値以上である場合に、飛行体10が離陸したと判定してもよい。または、飛行体10が空陸両用で、
図1のように車輪を備える場合、判定部1622は、車輪の空転を検出した場合または車軸にかかる荷重が一定値以下になった場合に、飛行体10が離陸したと判定してもよい。または、取得部1621は、飛行体10が備える車外カメラによる撮影映像を取得し、判定部1622は、撮影映像を解析することにより、飛行体10の高度が所定値以上である場合に、飛行体10が離陸したと判定してもよい。例えば、判定部1622は、撮影映像の下側から建物の屋根や電柱の先端が検出された場合に、飛行体10の高度が所定値以上であると判定してもよい。尚、撮影映像を解析処理には、AI(Artificial Intelligence)技術を用いても良い。
【0045】
尚、ステップS106で飛行体10が離陸していないと判定した場合、一定時間経過後に、再度、ステップS102に戻り、ステップS102からS105を実行する。また、ステップS104において事前情報1632のみにより判定を行う場合には、ステップS104及びS105は、ステップS102及びS103とは並行して実行してもよい。また、ステップS105による表示部151の表示制御は、ステップS106で離陸したと判定された後に実行されてもよい。
【0046】
その後、つまり、飛行体10の飛行中に、取得部1621は、乗客Uから離陸後状態情報1634を取得する(S107)。そして、取得部1621は、取得した離陸後状態情報1634を記憶部163に記憶する。
【0047】
そして、判定部1622は、乗客Uの離陸前状態情報1633と離陸後状態情報1634を比較し(S108)、乗客Uが不安状態か否かを判定する(S109)。例えば、離陸前には、事前情報1632や離陸前状態情報1633に基づいて不安状態の予兆がなく、不安状態に陥っていなかったとしても、離陸後に、乗客Uが窓領域15の高所の風景を見たことにより不安状態に陥ったことを検出できる。また、離陸前に不安状態の予兆や既に不安状態であり、ステップS105による表示制御が不十分なことにより、離陸後に不安状態に陥ったことを検出できる。また、判定部1622は、取得部1621により乗客Uが不安申請ボタン17を押下したことによる不安申請の通知情報が取得された場合にも、乗客Uが不安状態に陥っていると判定する。
【0048】
ステップS109において、乗客Uが離陸後に不安状態であると判定された場合、表示制御部1623は、窓領域15の表示部151の表示を透過状態以外の状態へ変更するように制御する(S110)。例えば、ステップS105が未実行である場合、表示制御部1623は、ステップS105と同様に、窓領域15の表示部151の表示を透過状態から透過状態以外の状態へ変更するように制御する。そのため、乗客Uが飛行に起因する不安状態が離陸前に検出されず、離陸後に不安状態が検出された場合に、速やかに乗客Uの高所に対する不安を軽減できる。
【0049】
また、ステップS105が実行済である場合、ステップS110において、表示制御部1623は、表示部151の表示について、乗客Uが外の風景をより見え難くなるように制御を行うとよい。つまり、表示制御部1623は、表示部151の表示を第1の非透過状態から第2の非透過状態へ変更するように制御する。ここで、第2の非透過状態は、第1の非透過状態よりも透過率が低いものであるとよい。例えば、表示制御部1623は、ステップS105よりも表示部151の透過率を下げるように制御するとよい。または、表示制御部1623は、ステップS105において表示部151に表示した映像等を、乗客Uがよりリラックスするような映像等に変更してもよい。これらにより、乗客Uは、飛行体10の窓領域15の外の風景が離陸前と比べてさらに見え難くなり、飛行に起因する不安状態を軽減できる。
【0050】
尚、ステップS109において乗客Uが離陸後に不安状態でないと判定された場合、ステップS111へ進む。例えば、乗客Uが飛行に起因する不安状態が離陸前に検出されなかったことによりステップS105が実行されておらず、さらにステップS109において離陸後も不安状態が検出されなかった場合、ステップS110による表示部151に対する表示制御は行われない。この場合、乗客Uは、高所に対する不安がないため、窓領域15から高所の風景を楽しむことができる。また、ステップS105が実行済みにより乗客Uが離陸前から窓領域15の外が見え難くなっている場合にも、乗客Uは、離陸後に不安状態ではない可能性がある。このときは、ステップS105による表示制御が維持されるため、乗客Uは、飛行中に窓領域15の外の高所の風景を見ることなく、飛行に伴う視覚的な不安が軽減され、飛行体10内で安心して過ごすことができる。
【0051】
その後、判定部1622は、飛行体10が着陸したか否かを判定する(S111)。例えば、判定部1622は、上述したステップS106と同様の手段により、飛行体10が着陸したか否かを判定するとよい。ステップS111で飛行体10が着陸していない、つまり、飛行中であると判定した場合、一定時間経過後に、ステップS107へ戻る。そして、ステップS107からS111が再度実行される。
【0052】
ステップS111で飛行体10が着陸したと判定した場合、表示制御部1623は、窓領域15の表示部151の表示を透過状態へ戻すように制御する(S112)。
【0053】
図4は、本実施形態1にかかる窓表示制御装置16が搭載された飛行体10の利用状態の概念を説明するための図である。ここでは、乗客Uが不安状態であると判定され、表示制御部1623が窓領域15のうち乗客Uの視点の高さから一定距離以下の範囲に対して透過率を下げて、遮光領域152としたものとする。また、乗客Uの座席付近の拡大
図150では、乗客Uの視点の付近に表示情報154が表示され、また、窓領域15の下部分が遮光領域153とされたことを示す。これらにより、高所が苦手な乗客Uは、飛行体10の飛行中に高所の景色が見え難く、また、家族等の表示情報154を視認することができる。そのため、飛行体10の乗客Uに対する飛行中の視覚上の不安を軽減させることができる。つまり、高所に対する慣れや高所の恐怖を克服するためのトレーニングを必要とせずに、安心してエアモビリティを利用できる。よって、高所が苦手なためにエアモビリティの利用を躊躇する人物であっても、利用し易くなるため、エアモビリティ等の飛行体の利用を促進させることができる。
【0054】
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、本発明は上記実施の形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得る各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
【0055】
尚、上述の実施形態では、ハードウェアの構成として説明したが、これに限定されるものではない。本開示は、任意の処理を、CPUにコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0056】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0057】
10 飛行体
11 飛行部
12 無線部
13 機内カメラ
14 生体センサ
15 窓領域
150 座席付近の拡大図
151 表示部
152 遮光領域
153 遮光領域
154 表示情報
16 窓表示制御装置
161 通信部
162 制御部
1621 取得部
1622 判定部
1623 表示制御部
163 記憶部
1631 プログラム
1632 事前情報
1633 離陸前状態情報
1634 離陸後状態情報
17 不安申請ボタン
U 乗客