(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182146
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ロボット制御装置
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20231219BHJP
B23K 9/10 20060101ALI20231219BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B23K9/12 331K
B23K9/10 Z
B25J13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095575
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】小森 慎也
(72)【発明者】
【氏名】中川 慎一郎
【テーマコード(参考)】
3C707
4E082
【Fターム(参考)】
3C707AS11
3C707BS10
3C707DS01
3C707JU03
4E082AA01
4E082ED03
4E082ED05
4E082EF02
4E082EF07
4E082EF24
4E082EF27
(57)【要約】
【課題】ビードの仕上がりを調整しつつ、ウロコの形状によって影響される溶接の施工関係の因子を把握可能なロボット制御装置を提供することである。
【解決手段】ロボット制御装置100は、溶接ロボット20を制御するロボット制御装置であって、ウロコ形状を生成する溶接法を用いた溶接において形成されるウロコの外観に関するパラメータを受け付けるパラメータ受付部110と、受け付けられたパラメータに応じて推測されるウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子を出力する出力部130と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接ロボットを制御するロボット制御装置であって、
ウロコ形状を生成する溶接法を用いた溶接において形成されるウロコの外観に関するパラメータを受け付けるパラメータ受付部と、
前記受け付けられたパラメータに応じて推測される、前記ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子を出力する出力部と、
を備える、ロボット制御装置。
【請求項2】
前記溶接の施工関係の因子は、溶接時間及び溶接母材への入熱量である、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記ウロコの外観に関するパラメータ及び前記溶接の施工関係の因子を同一画面に表示する、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記受け付けられたパラメータに基づいて形成されるウロコの画像を前記同一画面に表示する、
請求項3に記載のロボット制御装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記受け付けられたパラメータに基づいて算出される前記溶接の施工条件を前記同一画面に表示する、
請求項3に記載のロボット制御装置。
【請求項6】
前記パラメータ受付部によって受け付けられるパラメータの変更に追従して、前記溶接の施工関係の因子を変更させる、
請求項1に記載のロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業界において、多くのロボットが普及している。当該ロボットは、例えば、電子部品及び機械部品の組み立て、溶接及び搬送等に用いられ、工場の生産ラインの効率化及び自動化が図られている。
【0003】
溶接ロボットでは、生産ラインの効率化のために溶接時間やタクトタイムの短縮化が求められる一方で、アーク溶接におけるビードの仕上がりを考慮した溶接品質を確保しなければならない。
【0004】
一般的に、このビードの仕上げ方の一つに、ワイヤの溶着量を周期的に制御して、ウロコ状の形状に仕上げる方法がある。自転車のフレームなど、溶接部分の形状が露出する場合、このウロコの形状も外観的な価値として重んじられる場合があり、ウロコ形状を所望の形に規定したいという要望がある。
【0005】
特許文献1では、この要望を叶えるために、ウロコ形状から溶接条件を設定することが可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ウロコ形状に着目し、リップルをあげたりすると、溶接時間が延びたり、ウロコの大きさを大きくすると母材への入熱量が増えたりして、ウロコ形状以外への影響が大きくなる。しかも、その影響の過多も実際に溶接しなければわからないため、不便だった。
【0008】
そこで、本発明は、ビードの仕上がりを調整しつつ、ウロコの形状によって影響される溶接の施工関係の因子を把握可能なロボット制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係るロボット制御装置は、溶接ロボットを制御するロボット制御装置であって、ウロコ形状を生成する溶接法を用いた溶接において形成されるウロコの外観に関するパラメータを受け付けるパラメータ受付部と、受け付けられたパラメータに応じて推測される、ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子を出力する出力部と、を備える。
【0010】
この態様によれば、パラメータ受付部は、ウロコの外観に関するパラメータを受け付けて、出力部は、受け付けられたパラメータに応じて推測されるウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子を出力するため、ユーザにとっては、ビードの仕上がりを調整しつつ、ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子である、例えば、溶接時間や溶接母材への影響を把握することができる。
【0011】
上記態様において、溶接の施工関係の因子は、溶接時間及び溶接母材への入熱量であってもよい。
【0012】
この態様によれば、ユーザにとっては、ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子である溶接時間や溶接母材への入熱量を具体的に把握することができる。
【0013】
上記態様において、出力部は、ウロコの外観に関するパラメータ及び溶接の施工関係の因子を同一画面に表示してもよい。
【0014】
この態様によれば、同一画面においてウロコの外観に関するパラメータと溶接の施工関係の因子とが表示されるため、ユーザにとっては視覚的により把握し易くなる。
【0015】
上記態様において、出力部は、受け付けられたパラメータに基づいて形成されるウロコの画像を同一画面に表示してもよい。
【0016】
この態様によれば、出力部は、受け付けられたパラメータに基づいて形成されるウロコの画像を表示するため、ユーザにとっては、ビードの仕上がりをイメージし易くなる。
【0017】
上記態様において、出力部は、受け付けられたパラメータに基づいて算出される溶接の施工条件を同一画面に表示してもよい。
【0018】
この態様によれば、出力部は、受け付けられたパラメータに基づいて算出される溶接の施工条件を同一画面に表示するため、ユーザにとっては、ウロコの外観に関するパラメータに関係する溶接の施工条件をより容易に把握することができる。
【0019】
上記態様において、パラメータ受付部によって受け付けられるパラメータの変更に追従して、溶接の施工関係の因子を変更させてもよい。
【0020】
この態様によれば、パラメータの変更に追従して、溶接の施工関係の因子を変更させるため、ユーザにとっては、どのパラメータを変更すれば、どの溶接の施工関係の因子が変更するかについて、より容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ビードの仕上がりを調整しつつ、ウロコの形状によって影響される溶接の施工関係の因子を把握可能なロボット制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
【
図3】ウロコの外観に関するパラメータに対応する溶接の施工条件及び影響を示す一具体例である。
【
図4】ウロコの外観に関するパラメータを設定するパラメータ設定画面の一例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100が実行するパラメータ設定方法M100を示すフローチャートである。
【
図6】ウロコの外観に関するパラメータを設定するパラメータ設定画面の他の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、あくまで、本発明を実施するための具体的な一例を挙げるものであって、本発明を限定的に解釈させるものではない。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する場合がある。
【0024】
<一実施形態>
[溶接ロボットシステムの概要]
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接ロボットシステム10を示すシステム概要図である。
図1において、溶接ロボットシステム10は、溶接ロボット20と、ティーチペンダント30と、ロボット制御装置100と、電源40とを備える。
【0025】
溶接ロボット20は、ケーブルを介してロボット制御装置100と接続されており、ロボット制御装置100からの動作指令に基づいてアーク溶接を行う。溶接ロボット20は、アーム先端部に溶接トーチ21を備えており、当該溶接トーチ21の先端から溶接ワイヤを送給し、溶接対象である溶接母材(金属材料のワーク)との間にアークを発生させることによりアーク溶接を行う。
【0026】
溶接トーチ21は、ケーブルを介して電源40と接続されており、溶接ワイヤへの溶接電圧や溶接電流の供給を受ける。アーク溶接では、溶接ワイヤを金属材料に瞬間的に接触させて通電させると、溶接ワイヤと金属材料との間にアーク放電が発生し、発生したアークの熱により溶接ワイヤと金属材料とを溶解させることで、溶接が行われる。
【0027】
ティーチペンダント30は、溶接ロボット20の溶接関連教示情報について、溶接作業を実施する作業者からの入力を受け付ける。作業者は、アークの状態を確認しつつ、ティーチペンダント30を用いて最適な溶接関連教示情報を入力する。
【0028】
ここで、溶接関連教示情報とは、溶接ロボット20により行われる溶接に関する情報であり、溶接ロボット20の動作を教示する教示情報及び溶接の施工条件が含まれる。
【0029】
溶接ロボット20の教示情報には、溶接ロボット20のアームの動作に関する情報、溶接ロボット20の位置及び姿勢に関する情報、溶接トーチ21の先端から送給される溶接ワイヤの突出長さに関する情報等が含まれる。
【0030】
また、溶接の施工条件には、溶接ワイヤに印加される溶接電圧、溶接ワイヤを流れる溶接電流の値、溶接中における溶接線方向への溶接トーチ21の移動速度を表す溶接速度及び停止時間等が含まれる。
【0031】
ロボット制御装置100は、溶接ロボット20の制御を行う機器である。ロボット制御装置100は、ティーチペンダント30に接続されており、当該ティーチペンダント30に入力された溶接関連教示情報を取得することができる。ロボット制御装置100は、当該溶接関連教示情報に基づいて溶接ロボット20及び電源40を制御する。
【0032】
電源40は、ケーブルを介して溶接ロボット20に接続されており、ロボット制御装置100からの指令に基づいて溶接ロボット20における溶接トーチ21へ溶接電圧や溶接電流を供給する。
【0033】
なお、
図1では、ティーチペンダント30は、ケーブルを介してロボット制御装置100に接続されているが、ワイヤレスで接続されていてもよい。すなわち、ティーチペンダント30とロボット制御装置100とは、無線通信を行う通信部を備えていてもよい。ロボット制御装置100とティーチペンダント30とがワイヤレスに接続されることで、作業者はケーブルの存在に煩わされたり、ケーブルの長さによる移動範囲の制限を受けたりすることなく、自由に移動をしながら溶接関連教示情報の入力を行うことができる。
【0034】
また、本実施形態に係る溶接ロボットシステム10では、ステッチパルス溶接法を用いており、ロボット制御装置100は、上述した溶接の施工条件に従って、所定位置で溶接トーチ21を停止させてアークを発生させることによって溶接母材を溶融させ、その後、アークを停止させて溶接トーチ21を次点へ移動させる。溶接開始位置から溶接終了位置まで、これらの処理を繰り返すことによって溶接母材における溶接位置を溶接することになる。
【0035】
この時、溶接の施工条件としては、溶接電流値、溶接電圧値、溶接速度、停止時間、アーク発生時間、アーク停止時間、ピッチ間隔及び冷却時間などが設定されており、これらは、1回のアーク発生で形成される溶接痕であるウロコの外観や溶接母材への入熱量などに影響を与える。換言すれば、ビードの仕上がりや溶接母材への影響は、溶接の施工条件に含まれるこれらのパラメータの設定に依存する。
【0036】
[ロボット制御装置の構成]
図2は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100の各機能を示す機能ブロック図である。
図2において、ロボット制御装置100は、パラメータ受付部110と、推測部120と、出力部130と、制御部140とを備える。
【0037】
なお、ロボット制御装置100は、
図1に示されたように、溶接ロボット20、ティーチペンダント30、及び電源40に接続されており、種々の制御を行うために多くの機能を備えて、処理を行っている。ここでは、ロボット制御装置100について、主に、ユーザからのパラメータ設定を受け付けて各種データを表示する機能に関するものを示しているが、その他の構成及び機能を備えている。
【0038】
パラメータ受付部110は、溶接において形成されるウロコの外観に関するパラメータを受け付ける。ここで、ウロコとは、1回のアーク発生で形成される溶接痕であって、この1回のアーク発生及びその後の冷却時間などに応じて、リップルの鮮明度を含むウロコの外観が形成される。このように、アーク発生及び冷却時間を繰り返すことによって、溶接におけるウロコ状のビードが形成されることになる。
【0039】
例えば、ウロコの外観に関するパラメータは、ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度のうち少なくともいずれかを含み、ユーザは、これらのパラメータを設定する。
【0040】
推測部120は、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータに応じて影響を与える溶接の施工関係の因子を推測する。ここでは、当該溶接の施工関係の因子として、溶接時間及び溶接母材への入熱量を例に挙げて説明する。例えば、ユーザが所望するウロコの外観を形成するためには、例えば、溶接電流や冷却時間など必要な溶接の施工条件があり、また、それに伴い、溶接母材への入熱量及び溶接時間に影響を与える。
【0041】
図3は、ウロコの外観に関するパラメータに対応する溶接の施工条件及び影響を示す一具体例である。
図3に示されるように、ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度に応じて必要又は適切な溶接の施工条件があり、それに伴い、溶接母材への入熱量や溶接時間(タクトタイム)に影響があることが分かる。
【0042】
例えば、ウロコの大きさを大きくしたり、ウロコの高さを高くしたりしようとすると、溶接電流/溶接電圧を大きく設定する必要があり、それに伴い、溶接母材への入熱量が大きくなる。ウロコの間隔を広くしようとすると、ピッチ間隔が広く設定されることになり、それに伴い、アーク発生の回数が少なくなるため、溶接時間が短くなり、その結果、タクトタイムが短くなる。また、リップルをはっきりと明瞭に付けようとすると、冷却時間を長く設定する必要があり、それに伴い、溶接母材への入熱量が小さくなるものの、溶接時間及びタクトタイムが長くなる。
【0043】
なお、ウロコの外観に関するパラメータに対応する溶接の施工条件及び影響は、ここで示された要因に限定されるものではなく、例えば、ロボットの移動速度や停止時間、溶接母材の金属材料の種類、周辺環境、及びその他溶接の施工条件等、種々の要因が考慮されることが含まれる。
【0044】
このようにウロコの外観に関するパラメータに基づいて設定され得る溶接の施工条件やそれに伴う影響については、予めメモリ等の記憶部(図示せず)にデータベース形式又は数式等として記憶されていてもよい。推測部120は、当該記憶部に記憶されているデータベース形式又は数式等を参照して、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータに応じて溶接時間及び溶接母材への入熱量を推測すればよい。
【0045】
具体的には、推測部120は、溶接中及び非溶接中のロボットの移動速度に、アーク発生・停止にかかる時間を加味した上で、溶接時間を推測したり、予め実際に計測した溶接時間に基づいて、その他の条件を加味した上で、溶接時間を推測したりする。
【0046】
また、溶接電流及び時間等による熱エネルギーや、溶接母材の熱伝導率に応じた入熱量のモデルに基づく溶接母材への入熱量を推測する数式を予め記憶部に記憶しておき、推測部120は、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータから、当該数式を用いて、溶接母材への入熱量を推測すればよい。
【0047】
なお、溶接時間及び溶接電流に対応した溶接母材への入熱量を、データベースとして予め記憶部に記憶しておき、推測部120は、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータから溶接時間や溶接電流を算出し、当該データベースを用いて溶接母材への入熱量を推測すればよい。
【0048】
さらに、推測部120は、機械学習などによって得られるモデルに基づいて、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータに応じて溶接時間及び溶接母材への入熱量を推測するようにしてもよい。
【0049】
出力部130は、パラメータ受付部110によって受け付けられたパラメータに応じて推測される溶接時間及び溶接母材への入熱量を出力する。例えば、出力部130は、推測部120によって推測された溶接時間及び溶接母材への入熱量を出力することによって、ウロコの外観に関するパラメータを設定したユーザは、当該パラメータに応じて推測される溶接時間及び溶接母材を把握することができる。
【0050】
なお、出力部130は、当該ロボット制御装置100に一体的に含まれる表示部を含む構成であってもよく、例えば、当該ロボット制御装置100に有線又は無線を用いて、直接的又は間接的に接続され、別体として液晶ディスプレイなどの表示装置を備える構成であってもよい。出力部130によって表示される画面の詳細については、後述する。
【0051】
制御部140は、ロボット制御装置100の各部で実行される処理を制御し、メモリ等の記憶部に記憶された溶接関連教示情報に基づいて、溶接ロボット20及び電源40を制御している。
【0052】
[パラメータ設定画面]
図4は、ウロコの外観に関するパラメータを設定するパラメータ設定画面の一例を示す図である。
図4に示されるように、ウロコの外観に関するパラメータとして、ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度は、スライドバーを用いて表示され、それぞれユーザ操作により調整可能となっている。また、これらのパラメータに基づく推測結果として、溶接時間及び溶接母材への入熱量もスライドバーを用いて同一画面に表示されている。
【0053】
例えば、ユーザとしては、スライドバーを操作することによって、単に、ウロコの大きさを大きくしたり、小さくしたりして、その変更に追従して、溶接時間が長くなったり、短くなったり、又は溶接母材への入熱量が大きくなったり、小さくなったりすることを把握する。具体的にウロコの大きさを数値で示し、溶接時間及び溶接母材への入熱量を数値で表示するよりも、ユーザとしては、ウロコの外観に関するパラメータによって、溶接時間及び溶接母材への入熱量にどのような影響を与えるのかを直感的に把握することができる。
【0054】
同様に、ウロコの間隔や高さ、及びリップルの鮮明度についても、スライドバーを操作することによって調整すれば、その調整に追従して、スライドバーを用いて表示されている溶接時間及び溶接母材への入熱量も変化する。
【0055】
このように、ユーザは、ウロコの外観に関するパラメータをスライドバーを用いて調整することによって、ビードの仕上がりと溶接時間や溶接母材への影響とを把握し、これらのバランスを考慮してパラメータを設定することができる。
【0056】
[パラメータ設定方法]
次に、ウロコの外観に関するパラメータを受け付けて、当該パラメータに基づく推測結果を表示して、当該パラメータを設定するパラメータ設定方法について、具体的に詳しく説明する。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100が実行するパラメータ設定方法M100を示すフローチャートである。
図5に示されるように、パラメータ設定方法M100は、ステップS110~S140を含み、各ステップはロボット制御装置100に含まれるプロセッサによって実行される。
【0058】
ステップS110において、パラメータ受付部110によって、ウロコの外観に関するパラメータを受け付ける(パラメータ受付ステップ)。具体例としては、パラメータ受付部110は、
図4に示されたように、ユーザによってスライドバーが操作されることにより、ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度について、これらのパラメータのうち少なくとも1つを受け付けた場合、ステップS120の処理に進む(ステップS110のYes)。一方、パラメータの受け付けがない場合には、パラメータの受け付けを継続する(ステップS110のNo)。
【0059】
ステップS120において、推測部120は、ステップS110で受け付けられたパラメータに応じて溶接時間及び溶接母材への入熱量を推測する(推測ステップ)。具体例としては、推測部120は、ウロコの外観に関するパラメータ(ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度)に応じて、予めメモリ等に記憶された、例えば、
図3に示されたような関係性を考慮して、溶接時間及び溶接母材への入熱量を推測する。
【0060】
ステップS130において、出力部130は、ステップS120で推測された溶接時間及び溶接母材への入熱量を表示する。具体例としては、出力部130は、
図4に示されたように、溶接時間及び溶接母材への入熱量をスライドバーを用いて表示する。
【0061】
ステップS140において、ロボット制御装置100は、ウロコの外観に関するパラメータの設定が完了したか否かを判定する(完了判定ステップ)。具体例としては、ロボット制御装置100は、
図4に示されたパラメータ設定画面において、例えば、設定完了ボタンを配置し、ユーザによって当該設定完了ボタンが押下されたことにより、パラメータの設定が完了したと判定すればよい(ステップS140のYes)。さらに、ウロコの外観に関するパラメータの設定が完了したことにより、当該パラメータに応じて必要又は適切な溶接の施工条件も設定されてもよい。
【0062】
一方、ユーザによって当該設定完了ボタンが押下されず、再度、ユーザによってウロコの外観に関するパラメータのスライドバーが操作される場合には、ステップS110の処理に戻り、パラメータの受け付けを継続する(ステップS140のNo)。
【0063】
以上のように、本発明の一実施形態に係るロボット制御装置100及び溶接のパラメータ設定方法M100によれば、パラメータ受付部110は、ウロコの外観に関するパラメータを受け付けて、出力部130は、受け付けられたパラメータに応じて推測される溶接時間及び溶接母材への入熱量を表示するため、ユーザにとっては、ビードの仕上がりを調整しつつ、ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子(溶接時間や溶接母材への影響)を把握することができる。また、
図4に示されたように、ウロコの外観に関するパラメータを調整しながら、溶接時間や溶接母材への入熱量を把握することができるため、溶接の施工条件の調整に費やされる時間が短縮でき、熟練作業者でなくても直感的に溶接の施工条件を調整することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、
図4において、パラメータ設定画面の一例を示したが、これに限定されるものではなく、さらに、表示する項目を拡張したりする等して、使用状況や環境、及びユーザに応じた画面を用いても構わない。
【0065】
図6は、ウロコの外観に関するパラメータを設定するパラメータ設定画面の他の具体例を示す図である。
図6に示されるように、ウロコの画像及び溶接の施工条件における各項目が同一画面に表示されている。
【0066】
ウロコの画像は、ロボット制御装置100の画像生成部(図示せず)によって、ウロコの外観に関するパラメータに基づいて形成されるものであり、例えば、ユーザによって当該パラメータのスライドバーが操作されることに応じて生成される。これにより、ユーザにとっては、ビードの仕上がりをイメージし易くなる。
【0067】
なお、ここでは、ウロコの画像として、ウロコの大きさ、ウロコの高さ及びウロコの間隔が表示されているが、これに限定されるものではなく、例えば、これらのうち1つ又は2つが表示されてもよいし、3次画像等を用いて表示されてもよいし、ユーザにとって把握しやすい形式であれば、その他の形式を用いて表示されてもよい。
【0068】
溶接の施工条件における各項目は、ウロコの外観に関するパラメータに応じて算出される必要又は適切な設定値である。例えば、ウロコの大きさを大きくしたり、ウロコの高さを高くしたりすると、それに応じて、必要又は適切な溶接電流/溶接電圧の値が算出されて、表示されることになる。
【0069】
なお、ユーザによってウロコの外観に関するパラメータ(ウロコの大きさ、間隔、高さ、及びリップルの鮮明度)のうち、いずれかが変更された場合、それに応じて変更(更新)された溶接の施工条件における項目及び推測結果を、例えば、ハイライトする等して強調表示するようにしてもよい。これにより、ユーザにとっては、ウロコの外観に関するパラメータのうちのどのパラメータが、溶接の施工条件のどの項目及び推測結果に影響があるかを容易に把握することができる。
【0070】
なお、溶接の施工条件における各項目をユーザによって直接設定(変更)できるようにしてもよく、この場合、当該設定(変更)に応じてウロコの外観に関するパラメータが算出されて、当該パラメータのスライドバー表示やウロコの画像表示がされるとよい。
【0071】
また、
図4及び
図6において、溶接時間及び溶接部材への入熱量は、スライドバーを用いて表示されていたが、これに限定されるものではなく、パーセント表示やその他の画像表示などを用いて相対値(パラメータの変更に応じてその違い)を認識できれば、その他の表示方法を用いても構わない。具体的には、溶接部材への入熱量が前回設定値の推測値から増加傾向か下限傾向かのような矢印表示、及び予め決めておいた溶接部材への入熱量に対してどの程度大きいか小さいか等のパーセント表示である。
【0072】
さらに、ここでは、ウロコの外観に関するパラメータによって影響を与える溶接の施工関係の因子として、溶接時間及び溶接母材への入熱量を例に挙げて説明したが、これらに限定されるものではなく、例えば、溶接母材への溶け込み量など、その他の因子であっても構わない。
【0073】
また、
図4及び
図6において、ウロコの外観に関するパラメータの設定(調整)には、スライドバーを用いていたが、これに限定されるものではなく、例えば、タッチパネルによるフリック入力、数値の直接入力、及びボダン形式等、他のユーザインタフェースを用いてもよい。
【0074】
また、
図4及び
図6に示されたパラメータ設定画面において設定されたパラメータ、及び溶接の施工条件における各項目の設定値は、設定ファイルとして保存して、別途、当該設定ファイルを読み込むことによって、溶接関連教示情報として適用できるようにしてもよい。
【0075】
なお、本実施形態では、ステッチパルス溶接法として説明したが、これに限定されるものではなく、ウロコ形状を生成する溶接法を用いた溶接法であればよく、例えば、周期的にアークを切り替えるその他の間欠溶接法等にも、本発明を適用することが可能である。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
10…溶接ロボットシステム、20…溶接ロボット、21…溶接トーチ、30…ティーチペンダント、40…電源、100…ロボット制御装置、110…パラメータ受付部、120…推測部、130…出力部、140…制御部、M100…パラメータ設定方法、S110~S140…パラメータ設定方法M100の各ステップ