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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182153
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】電動作業車
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/69 20060101AFI20231219BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231219BHJP
   A01D 34/76 20060101ALI20231219BHJP
   A01D 34/78 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
A01D34/69
B60L15/20 J
A01D34/76 E
A01D34/78 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095595
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊東 寛和
(72)【発明者】
【氏名】長山 尚史
【テーマコード(参考)】
2B083
5H125
【Fターム(参考)】
2B083AA02
2B083BA18
2B083DA03
5H125AA20
5H125AC12
5H125BA00
5H125BA09
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE49
5H125EE51
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】車速と作業装置の回転速度とが作業種類や作業領域等に応じて合理的に選択される電動作業車。
【解決手段】電動作業車は走行用電動モータによって回転する駆動輪ユニットと、作業用電動モータによって回転する作業装置と、車速変更のために操作される人為車速操作具17と、制御ユニットとを備え、制御ユニットは、車速に対する作業装置の回転速度を決定する複数の作業モードから実際に適用する適用作業モードを選択するモード選択部57と、人為車速操作具17の操作量と適用作業モードとに基づいて、走行用電動モータの車速目標値と作業用電動モータの回転速度目標値とを算出する制御目標値算出部58と、車速目標値に基づいて走行用電動モータを制御する走行制御部52と、回転速度に基づいて作業用電動モータを制御する作業制御部53とを有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用電動モータによって回転する駆動輪ユニットと、
作業用電動モータによって回転する作業装置と、
車速変更のために操作される人為車速操作具と、
制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、
車速に対する前記作業装置の回転速度を決定する複数の作業モードから実際に適用する適用作業モードを選択するモード選択部と、前記人為車速操作具の操作量と前記適用作業モードとに基づいて、前記走行用電動モータの車速目標値と前記作業用電動モータの回転速度目標値とを算出する制御目標値算出部と、前記車速目標値に基づいて前記走行用電動モータを制御する走行制御部と、前記回転速度に基づいて前記作業用電動モータを制御する作業制御部とを有する電動作業車。
【請求項2】
前記作業モードには、第1作業モードと第2作業モードと第3作業モードと第4作業モードとが含まれ、
前記第1作業モードにおいて、前記車速の全域にわたって前記回転速度が低速の第1定回転速度に維持され、
前記第2作業モードにおいて、第1低車速域では低速の第1低回転速度が維持され、前記第1低車速域より速い車速域である第1高車速域では前記第1低回転速度より速い第1高回転速度が維持され、前記第1低車速域と前記第1高車速域との間の第1中間車速域では前記車速の変化に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に、前記第1低回転速度と前記第1高回転速度との間を変化し、
前記第3作業モードにおいて、第2低車速域では低速の第2低回転速度が維持され、前記第2低車速域より速い車速域である第2高車速域では前記第2低回転速度より速い第2高回転速度が維持され、前記第2低車速域と前記第2高車速域との間の第2中間車速域では前記車速の増加に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に、前記第2低回転速度と前記第2高回転速度との間を変化し、
前記第4作業モードにおいて、前記車速の全域にわたって前記回転速度が前記第2高回転速度と同じかより高速の第2定回転速度に維持される請求項1に記載の電動作業車。
【請求項3】
前記第1中間車速域または前記第2中間車速域あるいはその両方の車速域における前記車速の変化に対する前記回転速度の変化は、直線的または非直線的に、連続して変化する請求項2に記載の電動作業車。
【請求項4】
前記第1中間車速域及び前記第2中間車速域における、前記車速の変化に対する前記回転速度の変化は、少なくとも部分的に、ヒステリシスを示す請求項2に記載の電動作業車。
【請求項5】
前記第1低車速域と前記第2低車速域は同じであり、前記第2高回転速度は前記第1高回転速度より速い速度である請求項2に記載の電動作業車。
【請求項6】
前記作業用電動モータのモータ負荷を検出する作業負荷検出部が備えられており、前記モータ負荷が所定値以上に増大すると、前記回転速度を低下させる処理、または前記車速を低下させる処理、あるいはその両方の処理である負荷軽減処理が行われる請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行しながら作業を行う電動作業車に関する。このような作業車の一例では、走行用電動モータによって回転する駆動輪ユニットと、作業用電動モータによって回転する作業装置と、人為車速操作具の操作位置を検出する操作検出部と、複数の作業モードから適用作業モードを選択するモード選択部とが備えられている。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変速駆動機構によって駆動される駆動輪ユニットと、作業装置としてのモーアユニットと、人為車速操作具と、前記人為車速操作具の操作位置に基づいて、最高車速を含む車速指示値を生成する車速指示値算出部と、複数の制御モードから使用する制御モードを選択するモード選択部と、最高車速値と基本刈刃回転速度値とを含む制御パラメータを規定する制御モード毎に用意された制御テーブルと、車速指示値と制御テーブルとに基づいて車速制御目標値を算出する車速制御目標値算出部と、車速制御目標値に基づいて駆動輪ユニットを制御する走行制御部と、刈刃の回転速度制御目標値を算出する刈刃制御目標値算出部と、回転速度制御目標値に基づいてモーアユニットの刈刃回転数を制御する作業制御部とを備える草刈機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-196354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の草刈機では、検出された刈刃の回転速度から最高車速値が算出されると、当該最高車速値を有する制御テーブルが設定される。この制御テーブルを用いて、人為車速操作具の操作位置に応じた車速制御目標値が算出され、走行制御部に与えられる。その際、刈刃モータの負荷に応じて基本刈刃回転速度が算出され、回転速度制御目標値が変更され、作業制御部に与えられる。この草刈機では、各制御モードで、基本刈刃回転速度と最高車速値とが規定されている。刃回転速度の検出値により車速制御目標値が変更され、当該車速制御目標値に適応する制御テーブルが選択される。
【0005】
草刈機などの作業車では、作業種類や作業領域等に基づく作業者(運転者)の意思により、車速は自由に選択できることが好ましい。しかしながら、特許文献1の草刈機の作業走行制御では、刈刃の回転速度により制限される最高車速に基づく車速域に規定される。このような実情に鑑み、本発明の目的は、車速と作業装置の回転速度とが作業種類や作業領域等に応じて合理的に選択される電動作業車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による電動作業車は、走行用電動モータによって回転する駆動輪ユニットと、作業用電動モータによって回転する作業装置と、車速変更のために操作される人為車速操作具と、制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、
車速に対する前記作業装置の回転速度を決定する複数の作業モードから実際に適用する適用作業モードを選択するモード選択部と、前記人為車速操作具の操作量と前記適用作業モードとに基づいて、前記走行用電動モータの車速目標値と前記作業用電動モータの回転速度目標値とを算出する制御目標値算出部と、前記車速目標値に基づいて前記走行用電動モータを制御する走行制御部と、前記回転速度に基づいて前記作業用電動モータを制御する作業制御部とを有する。
【0007】
この構成によれば、運転者は人為車速操作具を用いて、この電動作業車の車速を変更することができる。車速に対する作業装置の回転速度を決定する複数の作業モードから、実際に適用する適用作業モードが選択されると、人為車速操作具の操作量と当該適用作業モードとに基づいて、車速と作業速度が決定される。つまり、作業内容や作業領域等に応じて作業モードさえ設定すれば、当該作業モードには、予め車速と作業速度との関係が適切に設定されているので、電動作業車による適切な作業走行が行われる。本発明を用いることで、車速と作業速度とをそれぞれ独立した操作具によって調節するといった熟練を要するような作業走行は不要となる。
【0008】
芝刈作業や耕耘作業などを行う作業走行において要望される作業モードとして、電動モータを低回転で駆動させ、長時間にわたる静かな作業走行を可能にさせる弱モード、作業負荷を考慮して作業回転速度調節及び車速調節を可能にする自動弱モード、作業効率を高めた作業優先の自動強モード、最大パワーで作業を短時間で完了させる強モードが挙げられる。この発明による電動作業車では、上記作業モードを実現するために、前記作業モードには、第1作業モード(弱モード)と第2作業モード(自動弱モード)と第3作業モード(自動強モード)と第4作業モード(強モード)とが含まれている。前記第1作業モードにおいては、前記車速の全域にわたって前記回転速度が低速の第1定回転速度に維持される。前記第2作業モードにおいては、第1低車速域では低速の第1低回転速度が維持され、前記第1低車速域より速い車速域である第1高車速域において、前記車速の増加に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に第1高回転速度まで増加する。前記第3作業モードにおいては、第2低車速域では低速の第2低回転速度が維持され、前記第2低車速域より速い車速域である第2高車速域において、前記車速の増加に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に前記第1高回転速度より速い第2高回転速度まで増加する。前記第4作業モードにおいては、前記車速の全域にわたって前記回転速度が前記第2高回転速度と同じかより速い第2定回転速度に維持される。前記第1作業モードにおいて、前記車速の全域にわたって前記回転速度が低速の第1定回転速度に維持される。前記第2作業モードにおいて、第1低車速域では低速の第1低回転速度が維持され、前記第1低車速域より速い車速域である第1高車速域では前記第1低回転速度より速い第1高回転速度が維持され、前記第1低車速域と前記第1高車速域との間の第1中間車速域では前記車速の変化に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に、前記第1低回転速度と前記第1高回転速度との間を変化する。前記第3作業モードにおいて、第2低車速域では低速の第2低回転速度が維持され、前記第2低車速域より速い車速域である第2高車速域では前記第2低回転速度より速い第2高回転速度が維持され、前記第2低車速域と前記第2高車速域との間の第2中間車速域では前記車速の増加に応じて前記回転速度が段階的に、または連続的に、前記第2低回転速度と前記第2高回転速度との間を変化する。前記第4作業モードにおいて、前記車速の全域にわたって前記回転速度が前記第2高回転速度と同じかより高速の第2定回転速度に維持される。運転者は、作業種別や作業場所など、作業目的や作業環境に適合した作業モードを選択することで、簡単な操作で、合理的な作業走行を行うことができる。
【0009】
第2作業モードと第3作業モードとは、いずれも、エコを考慮して、車速に合った作業装置の回転速度を自動選択しながらも、運転者の意図する走行作業が可能となるように設定された、作業モードである。また、第2作業モードと第3作業モードには、車速に応じて作業回転速度が変化する中間車速域がある。中間車速域における、車速の変化に対する回転速度の変化は、滑らかな方が好都合である。このことから、本発明の1つでは、前記第1中間車速域または前記第2中間車速域あるいはその両方の車速域における前記車速の変化に対する前記回転速度の変化は、直線的または非直線的に、連続して変化する。さらには、この変化において、車速が増速する場合と車速が減速する場合とでは、作業状態が異なるため、車速と作業回転速度との関係も、車速が増速する場合と車速が減速する場合とで異なったものにすることが好都合である。このことから、本発明では、前記第1中間車速域及び前記第2中間車速域における、前記車速の変化に対する前記回転速度の変化は、少なくとも部分的に、ヒステリシスを示すように構成されている。
【0010】
第1作業モードと第4作業モードとは、どちらも、車速に依存せずに、一定の回転速度が維持される作業モードである。この2つの作業モードに対しても、種々の作業や作業環境に適応できるように、より特徴的な差異を与えることは重要である。このことから、本発明では、前記第1低車速域と前記第2低車速域は同じであり、前記第2低回転速度は前記第1低回転速度と同じかそれより速い速度である。これにより、常に最低レベルの動力を用いることで、静粛性を維持し、バッテリを長持ちさせる作業走行を実現させる第1作業モードと、常に最高レベルの動力を用いることで、重作業を短時間で行う作業走行を実現させる第4作業モードとが選択可能である。どちらの作業モードであって、運転者の操作パターンは同じであるので、作業走行操作が簡単である。
【0011】
作業走行において、突発的に作業負荷が高くなり、電動モータに大きな負荷がかかることがある。このような高負荷が続くと、作業装置や伝動モータはダメージを受ける。これを回避するためには、電動モータの回転数、つまり作業装置の回転速度を低下させるか、あるいは、車速を低下させることが有効である。このことから、本発明では、前記作業用電動モータのモータ負荷を検出する作業負荷検出部が備えられており、前記モータ負荷が所定値以上に増大すると、前記回転速度を低下させる処理、または前記車速を低下させる処理、あるいはその両方の処理である負荷軽減処理が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電動作業車の一例である電動草刈機の全体側面図である。
図2】電動草刈機の全体平面図である。
図3】運転パネルの平面図である。
図4】電動草刈機の動力系統及び制御系統を示す模式図である。
図5】制御ユニットに制御機能部を示す機能ブロック図である。
図6】各作業モードにおける車速と作業回転速度との関係を示すグラフである。
図7】車速と作業回転速度とを制御する制御系の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書では、特に断りがない限り、「前」は車体前後方向(走行方向)に関して前方を意味し、「後」は車体前後方向(走行方向)に関して後方を意味する。また、左右方向または横方向は、車体前後方向に直交する車体横断方向(車体幅方向)を意味する。「上」または「下」は、車体の鉛直方向(垂直方向)での位置関係であり、地上高さにおける関係を示す。なお、図では、「前」は「F」で、「後」は「B」で、「左」は「L」で、「右」は「R」で、「上」は「U」で、「下」は「D」で示されている。
【0014】
次に、本発明による電動作業車の実施形態の1つを説明する。ここでは、電動作業車は、電動草刈機である。図1及び図2に示すように、この電動草刈機は、車体1の前部に支持された左右一対の前輪11、車体1の後部に支持された、駆動輪ユニットとしての左右一対の後輪12、車体1の下部で前輪11及び後輪12の間に支持された、作業装置としてのモーアユニット3を備えている。左右の後輪12の間にはバッテリ6を収納するバッテリ収納部60が設けられている。さらに、車体1には、運転座席13及びロプスフレーム14等が設けられている。
【0015】
車体1は前後方向に延びている右及び左の長手ビームと、この長手ビームを連結するクロスビームとからなるフレーム10を含む。ロプスフレーム14の下端はフレーム10に連結されている。
【0016】
前輪11は、キャスタータイプ車輪であり、後輪12は駆動輪である。それぞれの後輪12の内側に、走行用電動モータとして左走行モータ41と右走行モータ42が配置されている。左走行モータ41と右走行モータ42の動力は減速機構16を介して後輪12に伝達される。各後輪12は独立的に駆動される。
【0017】
運転座席13の両側に、車速変更のための人為車速操作具としての変速レバー17が配置されている。右の変速レバー17を中立位置に操作すると、右走行モータ42が停止状態となる。右の変速レバー17を前進側に操作すると、右走行モータ42が前進側に回転し、右の変速レバー17を後進側に操作すると、右走行モータ42が後進側に回転する。同様に、左の変速レバー17を中立位置、前進側及び後進側に操作すると、左走行モータ41が前述した右走行モータ42と同様な動作を行う。つまり右及び左の変速レバー17を操作することにより、右及び左の後輪12が互いに独立に前進側または後進側に駆動し、車体1は前進または後進、右旋回または左旋回する。
【0018】
図1に示すように、モーアユニット3は、モーアデッキ30と、モーアデッキ30の内部に縦軸芯周りに回転自在に支持された刈刃31とを備えている。刈刃31は、モーアモータ43によって回転駆動される。モーアデッキ30は、リンク機構34により昇降自在にフレーム10から吊り下げられている。
【0019】
運転座席13の左側には、図3に示すような計器パネル7が配置されている。計器パネル7には、本発明に特に関係するものとして、モーア起動ボタン71、作業モード選択ボタン72、表示パネル73が配置されている。モーア起動ボタン71は、モーアユニット3を操作する操作具であり、モーア起動ボタン71が引き起こされることでモーアユニット3が起動し、モーア起動ボタン71が押し戻されることでモーアユニット3は停止する。作業モード選択ボタン72は、後で詳説される作業モードを選択するための作業モード選択操作具であり、この実施形態では、作業モード選択ボタン72が押し操作される毎に、4つの異なる作業モードから順次適用すべき作業モードが選択される。表示パネル73は、バッテリ6の残量を示すバッテリ充電率表示部73aと、作業モード選択ボタン72により選択された適用作業モードを示す作業モード表示部73bとを有する。なお、図示は省略されているが、その他の種々の情報を、視覚的にまたは聴覚的に、あるいはその両方で運転者に報知するための報知デバイスも備えられている。
【0020】
図4には、電動草刈機の動力系統及び制御系統が示されている。作業用電動モータとしてのモーアモータ43は、モーアデッキ30の後側壁に設けられている。モーアモータ43は、ベルト伝動機構33を介して刈刃31を取り付けている回転軸32を、回転させる。左側の後輪12を回転させるために、走行用電動モータとしての左走行モータ41が設けられ、右側の後輪12を回転させるために、走行用電動モータとしての右走行モータ42が設けられている。
【0021】
左走行モータ41と右走行モータ42とモーアモータ43とには、インバータ4から電力が供給される。インバータ4は、左走行モータ41と右走行モータ42とに電力を供給する走行モータ用インバータ4Aと、モーアモータ43に電力を供給するモーアモータ用インバータ4Bとを含む。インバータ4は、制御ユニット5からの制御信号に基づいて駆動制御される。インバータ4は、電力源としてのバッテリ6と接続されている。
【0022】
図5に示すように、制御ユニット5は、制御機能部として、入出力処理部51、走行制御部52、作業制御部53、機器制御部54、車速算出部55、モード記述部56、モード選択部57、制御目標値算出部58、作業負荷検出部59を有する。
【0023】
入出力処理部51には、検出機器群9A、装備機器群9B、計器パネル7、インバータ4などが接続されている。検出機器群9Aには、図4に示めされた、左走行モータ41の回転速度を検出する左走行モータセンサ91、右走行モータ42の回転速度を検出する右走行モータセンサ92、モーアモータ43の回転速度を検出するモーアモータセンサ93、左側の変速レバー17の操作量を検出する左変速センサ94、右側の変速レバー17の操作量を検出する右変速センサ95などのセンサ(ポテンショメータなど)が含まれている。装備機器群9Bには、ライトやブザーなどが含まれている。
【0024】
機器制御部54は、計器パネル7や装備機器群9Bの動作管理のほか、運転者に報知すべき種々の情報を報知信号化して、例えば、種々の報知デバイスに送る。
【0025】
車速算出部55は、車体1の走行速度、つまり車速を算出する。この実施形態では、左変速センサ94によって検出される左側の変速レバー17の操作量と、右変速センサ95によって検出される右側の変速レバー17の操作量とに基づいて算出される。もちろん、左走行モータセンサ91によって検出される左走行モータ41の回転速度と、右走行モータセンサ92によって検出される右走行モータ42の回転速度とに基づいて算出してもよい。あるいは、その他の車速検出装置を用いて車速が算出されてもよい。
【0026】
モード記述部56は、車速に対する作業装置の回転速度を決定する複数の作業モードを記憶、編集、管理する。モード記述部56は、各作業モードをテーブル化する。この実施形態では、作業モードとして、第1作業モード、第2作業モード、第3作業モード、第4作業モードが用いられている。第1作業モードは、モーアモータ43を低回転で駆動させ、長時間にわたる静かな作業走行を可能にさせる弱モードである。第2作業モードは、作業負荷を考慮して作業回転速度調節及び車速調節を可能にする自動弱モードである。第3作業モードは、作業効率を高めた自動弱モードである作業優先の自動強モードである。第4作業モードは、最大パワーで作業を短時間で完了させる強モードである。
【0027】
各作業モードにおける、車速と作業回転速度(刈刃回転速度)との関係は、グラフによって表すことができ、図6に示されている。図6では、第1作業モードを示すグラフは細い点線で示され、第2作業モードを示すグラフは細い実線で示され、第3作業モードを示すグラフは太い実線で示され、第4作業モードを示すグラフは太い点線で示されている。図6のグラフでは、縦軸は作業回転速度(モーアモータ43の回転速度)をrpm単位で示しており、横軸は、車速ゼロ位置に対応する人為車速操作具(変速レバー17)の操作量を0%、最高車速位置に対応する操作量を100%として、示している。なお、0%の左領域は、後進作業を示し、0%の右領域は、後進作業を示している。
【0028】
第1作業モードは、車速の全域にわたって回転速度が低速の第1定回転速度(例えば、3000rpm)に維持される。
【0029】
第2作業モードは、第1低車速域では低速の第1低回転速度(例えば、3000rpm)が維持され、第1低車速域より速い車速域である第1高車速域において、第1低回転速度より速い第1高回転速度(例えば、3300rpm)が維持される。第1低車速域と前記第1高車速域との間の第1中間車速域では車速の変化に応じて回転速度が段階的(図6の例では2段階)に、変化する。図6のグラフを用いて、車速増加方向で説明すると、車速の増加に応じて回転速度が段階的(ここでは2段階)に第1高回転速度(例えば、3300rpm)まで増加する。1段階目では、第1低回転速度と第1高回転速度との中間である中間回転速度(例えば、3150rpm)となる。
【0030】
第3作業モードは、第2低車速域では低速の第2低回転速度(例えば、3000rpm)が維持され、第2低車速域より速い車速域である第2高車速域において、第2低回転速度より速い第2高回転速度が維持される。第2低車速域と前記第2高車速域との間の第2中間車速域では、車速の変化に応じて回転速度が段階的(図6の例では2段階)に、変化する。図6のグラフを用いて、車速増加方向で説明すると、車速の増加に応じて回転速度が段階的(ここでは2段階)に、第1高回転速度より速い第2高回転速度(例えば、3600rpm)まで増加する。1段階目では、第2低回転速度と第2高回転速度との中間である中間回転速度(例えば、3300rpm)となる。
【0031】
第2作業モード及び第3作業モードの少なくともいずれかの中間車速域において、2段階を超える段階数で、車速に増加に応じて、作業回転速度を上昇させてもよい。また、第1中間車速域または第2中間車速域あるいはその両方の車速域において、段階的に作業回転速度を上昇させるのではなく、車速の変化に対する回転速度の変化は、直線的または非直線的に、連続して変化させてもよい。
【0032】
図6で示された第2作業モード及び第3作業モードのグラフでは、第1中間車速域及び第2中間車速域における、車速の変化に対する作業回転速度の上昇変化と下降変化とにおいて、ヒステリシスが示されている。つまり、第2作業モード及び第3作業モードのグラフでは、上昇変化時においては、車速を示す変速レバー17の操作量が38%付近で第1低回転速度または第2低回転速度から中間回転速度に上昇するのに対して、下降変化時においては、車速を示す変速レバー17の操作量が35%付近で中間回転速度から第1低回転速度または第2低回転速度に下降するというヒステリシスを示している。中間回転速度と第1高回転速度または第2高回転速度との間の移行においても同様なヒステリシスを示している。このヒステリシスの位置は、第1中間車速域と第2中間車速域とで異なっていてもよい。
【0033】
第4作業モードは、車速の全域にわたって作業回転速度が第2高回転速度と同じかより速い第2定回転速度(この例では、3600rpm)に維持される。
【0034】
モード選択部57は、上述した複数の作業モードから、作業モード選択ボタン72の操作に基づいて、実際に適用する適用作業モードを選択する。
【0035】
制御目標値算出部58は、図7の制御流れ図に示されているように、車速算出部55によって算出された車速、つまり変速レバー17の操作量と、モード選択部57によって選択された適用作業モードによって規定される作業テーブルとに基づいて、左走行モータ41と右走行モータ42とのための目標回転速度である車速目標値、及びモーアモータ43のための回転速度目標値とを算出する。
【0036】
走行制御部52は、車速目標値に基づいて車速制御信号を生成し、走行モータ用インバータ4Aに送る。走行モータ用インバータ4Aは、車速制御信号に基づいて、左走行モータ41と右走行モータ42とを駆動制御する。つまり、走行制御部52は、変速レバー17の操作量に基づいて、左走行モータ41と右走行モータ42とを駆動制御する。
【0037】
作業負荷検出部59は、作業用電動モータのモータ負荷を検出し、モータ負荷が所定値以上に増大すると、負荷軽減処理を行う。負荷軽減処理には、モータ負荷が所定値以上に増大すると作業用電動モータの回転速度を低下させる処理、またはモータ負荷が所定値以上に増大すると車速を低下させる処理、あるいはその両方の処理が含まれる。図7で示された例では、モータ負荷が所定値以上に増大すると、負荷調整係数を生成し、制御目標値算出部58に与える。制御目標値算出部58は、この負荷調整係数を用いて、車速目標値または回転速度目標値を低下させる。
【0038】
作業制御部53は、回転速度目標値に基づいて作業制御信号を生成し、モーアモータ用インバータ4Bに送る。モーアモータ用インバータ4Bは、作業制御信号に基づいて、モーアモータ43を駆動制御する。つまり、モーアモータ43は、変速レバー17の操作量に基づいて、適用作業モードで定められているように駆動制御される。
【0039】
〔別実施の形態〕
(1)図6で示された変速レバー17の操作量(車速)とモーアモータ43の回転速度(作業回転速度)との関係を示すグラフにおける、グラフ形状、及び縦軸と横軸とにおける数値は、作業内容や作業場所によって変更可能である。
(2)上述した実施形態では、電動作業車として、電動草刈機が取り挙げられたが、その他の電動作業機、電動トラクタ、電動収穫機、電動建機などにも、上述の給電装置は装備可能である。
【0040】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、バッテリによって駆動する電動作業車に適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
4 :インバータ
4A :走行モータ用インバータ
4B :モーアモータ用インバータ
5 :制御ユニット
7 :計器パネル
17 :変速レバー
41 :左走行モータ
42 :右走行モータ
43 :モーアモータ
51 :入出力処理部
52 :走行制御部
53 :作業制御部
54 :機器制御部
55 :車速算出部
56 :モード記述部
57 :モード選択部
58 :制御目標値算出部
59 :作業負荷検出部
72 :作業モード選択ボタン
91 :左走行モータセンサ
92 :右走行モータセンサ
93 :モーアモータセンサ
94 :左変速センサ
95 :右変速センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7