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特開2023-182161ブラシレスモータおよびブラシレスモータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182161
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ブラシレスモータおよびブラシレスモータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/04 20060101AFI20231219BHJP
   H02K 15/14 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K15/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095612
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 和也
(72)【発明者】
【氏名】永田 俊顕
(72)【発明者】
【氏名】貴傳名 康生
【テーマコード(参考)】
5H605
5H615
【Fターム(参考)】
5H605AA07
5H605AA08
5H605BB05
5H605BB14
5H605BB17
5H605CC01
5H605CC02
5H605CC03
5H605CC10
5H605EA07
5H605FF06
5H605GG04
5H605GG18
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB14
5H615BB17
5H615PP01
5H615PP02
5H615PP28
5H615SS09
5H615SS10
5H615SS19
(57)【要約】
【課題】ブラシレスモータに関して、ステータを固定する構成を改善する。
【解決手段】ブラシレスモータ10は、ロータ30とステータ20とハウジング50とを備えている。ハウジング50は、ステータ20の第1端面21aを覆う第1端壁52と、第2端面21bを覆う第2端壁62と、を有している。ステータ20には、貫通孔として丸孔25および長孔25Lが形成されている。ブラシレスモータ10は、ステータ20を固定する取付具70を備えている。取付具70は、第1端壁52から突出しており先端に凹部を有している第1取付具と、第2端壁62から突出しており先端が凹部に圧入されている凸部を有している第2取付具と、を一組として構成している。ブラシレスモータ10は、二組の取付具70と各取付具70に対応する貫通孔とにおいて、第1取付具の端部が貫通孔の内壁に接触してステータ20が締り嵌めされている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材を中心として回転することができるロータと、
前記ロータに対して径方向に対向して配置されているステータと、
前記ステータおよび前記ロータを収容するものであり、前記ステータにおいて前記ロータの回転軸に沿って延びる方向に並ぶ端面のうち一方の端面である第1端面を覆う第1端壁と、前記ステータにおいて前記第1端面とは反対側に位置する端面である第2端面を覆う第2端壁と、を有するハウジングと、を備えるブラシレスモータであって、
前記ステータには、前記回転軸に沿って延びる方向に前記第1端面から前記第2端面まで前記ステータを貫通する貫通孔が形成されており、
前記ステータを固定するように構成されており前記貫通孔に挿入されている取付具を備え、
前記取付具は、前記第1端壁から突出している柱体であり端面が窪んでいる凹部を有しており該凹部が前記貫通孔に配置されている第1取付具と、前記第2端壁から突出している柱体であり前記貫通孔に配置されている先端が前記凹部に圧入されている凸部を有している第2取付具と、を一組として、一組の前記取付具につき対応する一つの前記貫通孔に当該取付具が挿入されているものであり、
少なくとも二組の前記取付具と各取付具に対応する前記貫通孔とにおいて、前記第1取付具の端部が前記貫通孔の内壁に接触して前記ステータが締り嵌めされている
ブラシレスモータ。
【請求項2】
前記第2端壁は、低剛性部を備え、
前記低剛性部は、前記第2端壁のうち前記低剛性部ではない部分に比して剛性が低く、
前記第2取付具の基端は、前記低剛性部に配置されている
請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
前記低剛性部は、前記回転軸に沿って延びる方向に波打つ波形状である
請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
前記凸部は、先端に比して基端ほど太いテーパ形状である
請求項1~3のいずれか一項に記載のブラシレスモータ。
【請求項5】
軸部材を中心として回転することができるロータと、
前記ロータに対して径方向に対向して配置されているものであり、前記ロータの回転軸に沿って延びる方向に並ぶ端面のうち一方の端面である第1端面から該第1端面とは反対側に位置する端面である第2端面まで前記回転軸に沿って延びる方向に貫通する貫通孔が形成されているステータと、
前記ステータおよび前記ロータを収容するものであり、前記第1端面を覆う第1ハウジング部と、前記第2端面を覆う第2ハウジング部と、を有するハウジングと、
前記第1ハウジング部から突出している柱体である第1取付具と、前記第2ハウジング部から突出している柱体である第2取付具と、を一組として、前記第1取付具および前記第2取付具によって前記ステータを固定するように構成されている少なくとも二組の取付具と、
を備えるものであり、一組の前記取付具につき対応する一つの前記貫通孔に当該取付具が挿入されているブラシレスモータの製造方法であって、
前記ステータと前記第1ハウジング部とを組み合わせて、前記第1取付具を前記第1端面側の開口から前記貫通孔に挿入して、隙間嵌めによって前記第1取付具を前記貫通孔に嵌め合わせる配置工程と、
前記第2取付具を前記第2端面側の開口から前記貫通孔に挿入して、前記貫通孔に挿入されている前記第1取付具の先端における凹部に、前記第2取付具の先端における凸部を圧入して前記第2ハウジング部を組み付ける組付工程と、を含み、
前記組付工程では、前記凹部への前記凸部の圧入によって前記第1取付具の端部を変形させて該端部を前記貫通孔の内壁に押し付けることで、締り嵌めによって前記ステータを固定する
ブラシレスモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータおよびブラシレスモータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているブラシレスモータは、ステータの外周に形成されている凸部とハウジングに形成されている凹部とが嵌め合わされていることで、ステータの位置決め、およびステータの回転止めがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-11616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているようなステータの位置決め、およびステータの回転止めを行うには、ステータにおける外周の形状、およびハウジングにおけるステータの外周に対向する形状に制約がある。このため、ブラシレスモータの構造について自由度が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのブラシレスモータの各態様を記載する。
[態様1]軸部材を中心として回転することができるロータと、前記ロータに対して径方向に対向して配置されているステータと、前記ステータおよび前記ロータを収容するものであり、前記ステータにおいて前記ロータの回転軸に沿って延びる方向に並ぶ端面のうち一方の端面である第1端面を覆う第1端壁と、前記ステータにおいて前記第1端面とは反対側に位置する端面である第2端面を覆う第2端壁と、を有するハウジングと、を備えるブラシレスモータであって、前記ステータには、前記回転軸に沿って延びる方向に前記第1端面から前記第2端面まで前記ステータを貫通する貫通孔が形成されており、前記ステータを固定するように構成されており前記貫通孔に挿入されている取付具を備え、前記取付具は、前記第1端壁から突出している柱体であり端面が窪んでいる凹部を有しており該凹部が前記貫通孔に配置されている第1取付具と、前記第2端壁から突出している柱体であり前記貫通孔に配置されている先端が前記凹部に圧入されている凸部を有している第2取付具と、を一組として、一組の前記取付具につき対応する一つの前記貫通孔に当該取付具が挿入されているものであり、少なくとも二組の前記取付具と各取付具に対応する前記貫通孔とにおいて、前記第1取付具の端部が前記貫通孔の内壁に接触して前記ステータが締り嵌めされているブラシレスモータ。
【0006】
上記構成では、第1取付具の凹部に第2取付具の凸部が圧入されていることによって第1取付具の端部が貫通孔の内壁に押し付けられるように変形していることで、ステータが締り嵌めされている。ステータの締り嵌めが、少なくとも二組の取付具と各取付具に対応する貫通孔とによってなされていることで、ステータの位置決め、およびステータの回り止めを行うことができる。
【0007】
上記構成において、取付具は、ステータに形成されている貫通孔に挿入されているものである。このため、ステータのうち外周の形状、およびステータの外周に対向するハウジングの形状にかかわらずステータの位置決め、およびステータの回り止めを行うことができる。
【0008】
[態様2]前記第2端壁は、低剛性部を備え、前記低剛性部は、前記第2端壁のうち前記低剛性部ではない部分に比して剛性が低く、前記第2取付具の基端は、前記低剛性部に配置されている[態様1]に記載のブラシレスモータ。
【0009】
上記構成では、第2取付具の基端に位置する低剛性部が弾性変形しやすい。第1取付具の凹部と第2取付具の凸部との間で製造誤差等に起因して凹部に対する凸部の挿し込み量のずれが生じたとしても、低剛性部が変形することによって、ずれを吸収することができる。凹部に対する凸部の挿し込み量のずれは、たとえば、凹部および凸部のうちいずれか一方の形状誤差、または、凹部および凸部の両方の形状誤差によって生じ得る。すなわち、上記構成は、凹部に対する凸部の挿し込み量にずれが生じ得る形状誤差を許容できるといえる。このため、取付具に関して過剰な高精度による成形を行わなくてもよくなる。
【0010】
[態様3]前記低剛性部は、前記回転軸に沿って延びる方向に波打つ波形状である[態様2]に記載のブラシレスモータ。
上記構成によれば、回転軸に沿って延びる方向に嵌め合わされるものである凹部と凸部とに関する挿し込み量のずれに関して、低剛性部が回転軸に沿って延びる方向に変形しやすいことによって、ずれを吸収しやすい。
【0011】
[態様4]前記凸部は、先端に比して基端ほど太いテーパ形状である[態様1]~[態様3]のいずれか一つに記載のブラシレスモータ。
上記構成が備える凸部が圧入されていることで、凹部を区画する周壁が径方向に押し広げられやすい。このため、第1取付具の端部が貫通孔の内壁に、より押し付けられやすくなる。
【0012】
上記課題を解決するためのブラシレスモータの製造方法を記載する。
[態様5]軸部材を中心として回転することができるロータと、前記ロータに対して径方向に対向して配置されているものであり、前記ロータの回転軸に沿って延びる方向に並ぶ端面のうち一方の端面である第1端面から該第1端面とは反対側に位置する端面である第2端面まで前記回転軸に沿って延びる方向に貫通する貫通孔が形成されているステータと、前記ステータおよび前記ロータを収容するものであり、前記第1端面を覆う第1ハウジング部と、前記第2端面を覆う第2ハウジング部と、を有するハウジングと、前記第1ハウジング部から突出している柱体である第1取付具と、前記第2ハウジング部から突出している柱体である第2取付具と、を一組として、前記第1取付具および前記第2取付具によって前記ステータを固定するように構成されている少なくとも二組の取付具と、を備えるものであり、一組の前記取付具につき対応する一つの前記貫通孔に当該取付具が挿入されているブラシレスモータの製造方法であって、前記ステータと前記第1ハウジング部とを組み合わせて、前記第1取付具を前記第1端面側の開口から前記貫通孔に挿入して、隙間嵌めによって前記第1取付具を前記貫通孔に嵌め合わせる配置工程と、前記第2取付具を前記第2端面側の開口から前記貫通孔に挿入して、前記貫通孔に挿入されている前記第1取付具の先端における凹部に、前記第2取付具の先端における凸部を圧入して前記第2ハウジング部を組み付ける組付工程と、を含み、前記組付工程では、前記凹部への前記凸部の圧入によって前記第1取付具の端部を変形させて該端部を前記貫通孔の内壁に押し付けることで、締り嵌めによって前記ステータを固定するブラシレスモータの製造方法。
【0013】
上記製造方法では、配置工程が行われてステータが隙間嵌めされている段階では、ステータはハウジングに固定されていない。上記製造方法によれば、第1ハウジング部に嵌め合わせられているステータに第2ハウジング部を組み付けることで、ステータの位置決め、ステータの回転止め、およびステータの固定を同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、ブラシレスモータの一実施形態における断面構造を示す図である。
図2図2は、同ブラシレスモータが備えるステータコアを示す斜視図である。
図3図3は、同ブラシレスモータを分解した状態の断面構造を示す図である。
図4図4は、同ブラシレスモータが備える取付具における先端凸部が先端凹部に圧入されていない状態を示す断面図である。
図5図5は、同ブラシレスモータが備える取付具における先端凸部が圧入されている先端凹部を示す断面図である。
図6図6は、ブラシレスモータの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ブラシレスモータおよびブラシレスモータの製造方法の一実施形態について説明する。
図1に示すように、ブラシレスモータ10は、ステータ20、ロータ30、ハウジング50、第1軸受41および第2軸受42を備えている。
【0016】
ロータ30は、永久磁石33と軸部材31とホルダ32とを備えている。永久磁石33は、円筒状をなしている。ホルダ32は、永久磁石33を軸部材31に固定している。ロータ30は、軸部材31を中心として回転することができる。具体的には、ロータ30は、軸部材31における軸心を回転軸として、軸部材31とホルダ32と永久磁石33とが一体に回転する。図1および図3には、ロータ30の回転軸に沿った軸線を回転軸C1と表示している。
【0017】
ステータ20は、ステータコア21を備えている。図1および図2に示すように、ステータコア21は、円環状をなしている。ステータコア21は、たとえば、複数の電磁鋼板を積層することで構成されている。ステータコア21においてロータ30の回転軸C1に沿って延びる方向に並ぶ端面のうち一方の端面を第1端面21aという。ステータコア21において第1端面21aとは反対側に位置する端面を第2端面21bという。
【0018】
ステータ20の一例は、ステータコア21を覆う二つのインシュレータを備えている。ステータ20は、インシュレータを介してステータコア21に巻回される巻線を備えている。ステータ20は、巻線が接続されるバスバーと、巻線が接続される中性点端子と、を備えている。
【0019】
ハウジング50は、ステータ20およびロータ30を収容する。ハウジング50は、ステータ20の第1端面21aを覆う第1端壁52と、ステータ20の第2端面21bを覆う第2端壁62と、を備えている。ハウジング50は、ステータ20を固定するように構成されている取付具70を備えている。
【0020】
ハウジング50は、たとえば、第1ハウジング部51と第2ハウジング部61とによって構成されている。第1ハウジング部51は、たとえば樹脂材料によって構成されている。第2ハウジング部61は、たとえば樹脂材料によって構成されている。
【0021】
ブラシレスモータ10では、ステータ20は、ロータ30に対して径方向に対向して配置されている。具体的には、ステータ20の内側にロータ30が配置されている。すなわち、ブラシレスモータ10は、インナーロータ型の電気モータである。軸部材31の軸方向における端部の一方は、第1軸受41に支持されている。軸部材31の軸方向における端部の他方は、第2軸受42に支持されている。たとえば第1軸受41は、第1ハウジング部51に取り付けられている。たとえば第2軸受42は、第2ハウジング部61に取り付けられている。ロータ30は、ステータ20で発生する回転磁界を受けて回転することができる。ブラシレスモータ10は、軸部材31の回転が伝達される駆動ギヤを介して駆動対象に動力を伝達することができる。
【0022】
<ステータコア>
図1および図2を用いてステータコア21について説明する。
図2に示すように、ステータコア21は、環状のヨーク22を備えている。ステータコア21は、ヨーク22から中心部に向かって延びている複数のティースを備えている。すなわち、ブラシレスモータ10では、ロータ30にはティースが対向している。
【0023】
ステータコア21は、ティースとして、第1ティース23を備えている。ステータ20が有する上述の巻線は、第1ティース23に巻回される。
ステータコア21は、ティースとして、第2ティース24を備えていてもよい。たとえば、第1ティース23と第2ティース24とが、ステータコア21の周方向に沿って交互に配置されている。ティースの数は特に制限されないが、一例として本実施形態のステータコア21は、六個の第1ティース23と、六個の第2ティース24とを備えている。第1ティース23および第2ティース24は、ステータコア21の周方向に整列して配置されている。
【0024】
図1および図2に示すように、ステータコア21には、丸孔25が形成されている。丸孔25は、回転軸C1に沿って延びる方向に第1端面21aから第2端面21bまでステータコア21を貫通している貫通孔である。丸孔25は、たとえば、丸孔25の中心軸と直交する断面が正円の丸孔である。丸孔25は、「回転軸に沿って延びる方向に第1端面から第2端面までステータを貫通する貫通孔」の一例である。
【0025】
一例として本実施形態のステータコア21では、第2ティース24に、丸孔25が形成されている。たとえば、第2ティース24のうち先端よりもヨーク22に近い部分に丸孔25が形成されている。丸孔25は、第2ティース24のうち五個の第2ティース24に形成されている。第2ティース24のうち丸孔25が形成されていない第2ティース24には、長孔25Lが形成されている。長孔25Lが形成されている第2ティース24は、丸孔25が形成されている第2ティース24と向かい合っている。長孔25Lは、回転軸C1に沿って延びる方向に第1端面21aから第2端面21bまでステータコア21を貫通している貫通孔である点で丸孔25と共通している。すなわち、長孔25Lは、「回転軸に沿って延びる方向に第1端面から第2端面までステータを貫通する貫通孔」の一例である。長孔25Lは、ステータコア21の径方向における寸法が丸孔25よりも長い点で丸孔25と異なる。たとえば長孔25Lは、ステータコア21の径方向における両端が丸みを帯びている。なお、長孔25Lが形成されている第2ティース24には、長孔25Lに替えて丸孔25が形成されていてもよい。
【0026】
<第1ハウジング部>
第1ハウジング部51の一例について説明する。図1および図3に示すように、第1ハウジング部51は、第1端壁52を有している。たとえば、第1ハウジング部51は、第1端壁52と周壁53と開口端54とによって構成されている開口を有する箱状である。
【0027】
図3に示すように、ブラシレスモータ10は、第1端壁52から突出している柱体である第1取付具55を備えている。たとえば第1取付具55は、第1端壁52と一体に成形されている。たとえば第1取付具55は、基部56と挿入部57とによって構成されている。基部56は、第1取付具55における基端に位置している。すなわち、第1端壁52から基部56が突出している。挿入部57は、基部56における先端からさらに突出するように構成されている。挿入部57は、基部56よりも細くされている。挿入部57は、丸孔25に挿入することができる。基部56は、丸孔25よりも大きくされている。基部56は、ステータコア21の第1端面21aに接している。
【0028】
挿入部57の直径は、挿入部57が丸孔25に挿入されている状態で挿入部57が丸孔25の内壁に接触しない大きさにされている。すなわち、挿入部57と丸孔25の内壁との間に間隔が確保されている。たとえば、挿入部57の直径は、丸孔25の内径よりも僅かに小さくされている。
【0029】
第1取付具55は、端面が窪んでいる先端凹部58を有している。第1取付具55では、先端凹部58が丸孔25の内部に配置されるように、丸孔25の長さに対する挿入部57の長さが設定されている。たとえば、先端凹部58は、丸孔25においてステータコア21の第2端面21bに近い端部に配置されている。先端凹部58の詳細は、後述する。
【0030】
<第2ハウジング部>
第2ハウジング部61の一例について説明する。図1および図3に示すように、第2ハウジング部61は、第2端壁62を有している。たとえば、第2ハウジング部61は、第1ハウジング部51の開口端54を塞ぐように取り付けられる。
【0031】
図3に示すように、ブラシレスモータ10は、第2端壁62から突出している柱体である第2取付具65を備えている。たとえば第2取付具65は、第2端壁62と一体に成形されている。第2取付具65は、先端が凸状の先端凸部68を備えている。第2取付具65の先端凸部68は、第1取付具55の先端凹部58に圧入することができるように構成されている。先端凸部68の詳細は、後述する。
【0032】
第2端壁62は、低剛性部63を備えていてもよい。低剛性部63は、第2端壁62のうち低剛性部63ではない部分に比して剛性が低い部分である。第2端壁62から突出している第2取付具65の基端は、第2端壁62のうち低剛性部63に配置されていることが好ましい。
【0033】
低剛性部63の一例は、図1および図3に示すような、回転軸C1に沿って延びる方向に波打つ波形状である。低剛性部63は、たとえば、第2取付具65の基端を中心に広がるような波紋を模している。
【0034】
低剛性部63は、図1および図3に例示する波形状のように、低剛性部63が変形することに伴って第2取付具65の基端が回転軸C1に沿って延びる方向に移動することができる形状であることが好ましい。
【0035】
<取付具>
取付具70について詳細に説明する。
取付具70は、ステータ20を固定するように構成されている。取付具70は、第1取付具55と第2取付具65とを一組として構成されている。一組の取付具70は、対応する一つの貫通孔に挿入されている。
【0036】
ブラシレスモータ10は、二組の取付具70を備えている。図1に示すように、一方の取付具70は、丸孔25に対応する位置に配置されている。他方の取付具70は、長孔25Lに対応する位置に配置されている。
【0037】
図4は、丸孔25に対応する取付具70に関して、第1取付具55と第2取付具65とが分離した状態を示している。図4には、丸孔25の中心軸に沿った軸線を軸線C2と表示している。図4は、軸線C2に沿った断面構造を示す。第1取付具55と第2取付具65とが分離した状態では、挿入部57が丸孔25の内壁に接触していない。
【0038】
図4を用いて、分離状態にある先端凹部58の一例について説明する。
先端凹部58は、軸線C2が延びる方向に関していずれの位置においても当該先端凹部58の内径である第1径R1が一定の窪みである。先端凹部58における窪みの底に位置する壁を底壁58aとする。先端凹部58における窪みの周壁を凹部周壁59とする。先端凹部58において底壁58aと凹部周壁59とがなす図中に示す角度を第1角度θ1とする。第1角度θ1は、90°である。
【0039】
図4を用いて、先端凸部68の一例について説明する。
先端凸部68における先端の直径を第2径R2とする。先端凸部68の端面と側面とがなす図中に示す角度を第2角度θ2とする。第2角度θ2は、先端凹部58における第1角度θ1以上である。たとえば、第2角度θ2は、第1角度θ1よりも大きい。
【0040】
先端凸部68の一例は、先端に比して基端ほど太いテーパ形状である。この場合には、第2角度θ2は、90°よりも大きい。第2角度θ2の最大値は、先端凸部68がテーパ形状である範囲で特に制限されないが、たとえば、120°である。先端凸部68における基端の直径は、丸孔25の内径よりも小さい範囲で第2径R2よりも大きい。第2径R2は、先端凹部58における第1径R1よりも大きいことが好ましい。
【0041】
図5は、丸孔25に対応する取付具70に関して、第1取付具55の先端凹部58に第2取付具65の先端凸部68が圧入されている状態の一例を示している。
図5を用いて、先端凸部68が圧入されている状態にある先端凹部58の一例について説明する。
【0042】
先端凸部68が圧入されていることで、先端凹部58が変形している。具体的には、第1取付具55の直径が大きくなる方向に先端凹部58が変形している。より具体的には、第1取付具55において先端凹部58の底壁58aよりも第1取付具55の先端に近い部分である凹部周壁59が、丸孔25の内壁に押し付けられるように変形している。たとえば、凹部周壁59が全周に亘って丸孔25の内壁に接触するように押し付けられている。第1取付具55と丸孔25の内壁との接触によって、ステータ20を保持する力が作用している。先端凹部58に先端凸部68が圧入されている状態であっても、第1取付具55のうち底壁58aよりも基端側の部分は、丸孔25の内壁に接触していない。
【0043】
なお、先端凸部68が先端凹部58に圧入されている状態において、先端凸部68を含む第2取付具65は、ステータコア21には接触していないことが好ましい。また、先端凸部68は、軸線C2が延びる方向における全体が先端凹部58に収まっていなくてもよい。言い換えれば、先端凹部58の底壁58aと、底壁58aに向かい合う先端凸部68の端面と、が離れていてもよい。また、第1取付具55における先端凹部58側の端面は、第2取付具65に接触していなくてもよいし、接触していてもよい。
【0044】
続いて、長孔25Lに対応する取付具70に関して説明する。
第1取付具55と第2取付具65とが分離した状態では、図4に例示した丸孔25の場合と同様に、挿入部57が長孔25Lの内壁に接触していない。
【0045】
第1取付具55の先端凹部58に第2取付具65の先端凸部68が圧入されている状態では、ステータコア21の周方向においては、図5に例示した丸孔25の場合と同様に、先端凹部58の変形によって凹部周壁59が長孔25Lの内壁に押し付けられている。このような第1取付具55と長孔25Lの内壁との接触によって、ステータ20を保持する力が作用することになる。一方で、ステータコア21の径方向においては、図1に例示するように、挿入部57と長孔25Lの内壁との間に間隔があってもよい。これは、丸孔25と長孔25Lとの大きさの違い、すなわちステータコア21の径方向において丸孔25に比して長孔25Lが大きいためである。このように、長孔25Lに対応する取付具70では、凹部周壁59が部分的に長孔25Lの内壁に押し付けられている。
【0046】
上記のように本実施形態のブラシレスモータ10では、
二組の取付具70と、一方の取付具70に対応する貫通孔である丸孔25と他方の取付具70に対応する貫通孔である長孔25Lとにおいて、第1取付具55の端部が貫通孔の内壁に接触してステータ20が締り嵌めされている。
【0047】
ブラシレスモータ10の製造方法の一例を説明する。
図6に示すように、ブラシレスモータ10の製造方法は、配置工程S1と、配置工程S1に続いて行う組付工程S2と、を含む。
【0048】
配置工程S1は、ステータ20と第1ハウジング部51とを組み合わせて、第1ハウジング部51にステータ20を配置する工程である。具体的には、第1ハウジング部51が有する第1取付具55を、ステータコア21の第1端面21a側の開口から貫通孔に挿入するように、ステータコア21を第1ハウジング部51に配置する。たとえば、一つの第1取付具55を丸孔25に挿入するとともに、他の第1取付具55を長孔25Lに挿入する。このとき、ステータコア21の貫通孔と第1取付具55とは、隙間嵌めによって嵌め合わせられた関係にある。
【0049】
組付工程S2は、第2ハウジング部61を組み付けることでハウジング50にステータ20を固定する工程である。具体的には、第2ハウジング部61が有する第2取付具65を、ステータコア21の第2端面21b側の開口から貫通孔に挿入して、貫通孔に挿入されている第1取付具55の先端凹部58に第2取付具65の先端凸部68を圧入する。
【0050】
組付工程S2では、先端凹部58への先端凸部68の圧入によって第1取付具55の端部を変形させて該端部を貫通孔の内壁に押し付ける。この結果として、締り嵌めによってステータ20がハウジング50に固定される。
【0051】
<本実施形態の作用>
本実施形態の作用を説明する。
ブラシレスモータ10では、第1取付具55の先端凹部58に第2取付具65の先端凸部68が圧入されていることによって第1取付具55の端部が貫通孔の内壁に押し付けられるように変形している。このためブラシレスモータ10では、貫通孔の内径に対して取付具70の直径が部分的に大きくなっている。すなわち、貫通孔に対して取付具70が締り嵌めの関係になっている。締り嵌めによってステータ20を固定することができる。先端凸部68が圧入されている状態でも第1取付具55が変形していない部分では、貫通孔と取付具70とが隙間嵌めの関係にある。
【0052】
ブラシレスモータ10では、第2取付具65の基端に位置する低剛性部63が弾性変形しやすい。
ブラシレスモータ10の製造方法では、配置工程S1においてステータ20の隙間嵌めがなされる。組付工程S2において第2ハウジング部61が組み付けられることによって、初めてステータ20の締り嵌めがなされる。
【0053】
<本実施形態の効果>
本実施形態の効果を説明する。
(1)ブラシレスモータ10では、貫通孔に挿入されている取付具70によってステータ20が締り嵌めされている。より詳しくは、ステータ20の締り嵌めが、二組の取付具70と、一方の取付具70に対応する貫通孔である丸孔25と他方の取付具70に対応する貫通孔である長孔25Lとにおいて、第1取付具55の端部が貫通孔の内壁に接触してなされている。これによって、ステータ20の位置決め、およびステータ20の回り止めを行うことができる。ブラシレスモータ10によれば、ステータ20のうち外周の形状、およびステータ20の外周に対向するハウジング50の形状にかかわらずステータ20の位置決め、およびステータ20の回り止めを行うことができる。
【0054】
(2)第1取付具55の先端凹部58と第2取付具65の先端凸部68との間で製造誤差等に起因して先端凹部58に対する先端凸部68の挿し込み量のずれが生じたとしても、低剛性部63が変形することによって、ずれを吸収することができる。
【0055】
ここで、先端凹部58に対する先端凸部68の挿し込み量のずれは、たとえば、先端凹部58および先端凸部68のうちいずれか一方の形状誤差、または、先端凹部58および先端凸部68の両方の形状誤差によって生じ得る。すなわち、ブラシレスモータ10は、先端凹部58に対する先端凸部68の挿し込み量にずれが生じ得る形状誤差を許容できるといえる。このため、取付具70に関して過剰な高精度による成形を行わなくてもよくなる。
【0056】
また、ブラシレスモータ10によれば、先端凹部58に限らず先端凹部58を有する第1ハウジング部51の形状誤差を許容できることがある。ブラシレスモータ10によれば、先端凸部68に限らず先端凸部68を有する第2ハウジング部61の形状誤差を許容できることがある。
【0057】
仮に先端凸部68の挿し込み量のずれが生じると、下記に例示するように第2ハウジング部61の組付け態様が適切ではなくなるおそれがある。たとえば、想定されている姿勢に比較して傾斜した姿勢で第2ハウジング部61が取り付けられるおそれがある。たとえば、先端凸部68の挿し込みが浅い場合には第2ハウジング部61の浮き上がりが発生するおそれがある。第2ハウジング部61の組付け態様が適切ではないことによって、第2軸受42が回転軸C1に対して傾いた角度で取り付けられるおそれがある。これに対してブラシレスモータ10によれば、第2ハウジング部61の組付け態様が適切ではなくなることを抑制できる。
【0058】
(3)低剛性部63が波形状であるブラシレスモータ10では、先端凹部58と先端凸部68とに関する挿し込み量のずれに関して、低剛性部63が回転軸C1に沿って延びる方向に変形しやすいことによって、ずれを吸収しやすい。
【0059】
(4)内径が一定である先端凹部58に対して先端凸部68がテーパ形状であることによって、凹部周壁59が貫通孔の径方向に押し広げられやすい。このため、第1取付具55の端部が貫通孔の内壁に、より押し付けられやすくなる。
【0060】
また、先端凸部68がテーパ形状であることによって、先端凹部58に先端凸部68が圧入される過程において、先端凸部68が深く圧入されるに従って第1取付具55の端部が貫通孔の内壁に押し付けられる力が徐々に強くなる。このため、先端凸部68を圧入し始めた時点では、圧入を行うために必要な力を比較的小さくできる。これによって、先端凹部58に対して先端凸部68を圧入しやすくなる。
【0061】
(5)ブラシレスモータ10の製造方法では、配置工程S1が行われてステータ20が隙間嵌めされている段階では、ステータ20はハウジング50に固定されていない。ブラシレスモータ10の製造方法によれば、第1ハウジング部51に嵌め合わせられているステータ20に第2ハウジング部61を組み付けることによって先端凹部58に先端凸部68を圧入した時点で、ステータ20が締り嵌めされる。すなわち、第2ハウジング部61を組み付けることで、ステータ20の位置決め、ステータ20の回転止め、およびステータ20の固定を同時に行うことができる。
【0062】
(6)丸孔25に対向する位置に配置されている貫通孔が長孔25Lであるブラシレスモータ10では、丸孔25を基準としてステータ20の位置合わせを行う際に調整を容易に行うことができる。
【0063】
(変更例)
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・上記実施形態では、先端凹部58に関して、第1角度θ1が90°である例を示した。第2角度θ2が第1角度θ1以上であるという角度の関係が成り立っている範囲であれば、第1角度θ1は、90°より大きくてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、低剛性部63として、波形状を例示した。低剛性部63は、これに限らない。低剛性部63は、低剛性部63ではない部分に比して、剛性が低ければよい。
【0066】
たとえば、低剛性部63の他の例としては、第2端壁62に形成されている穴、第2端壁62に形成されているスリット、第2端壁62に形成されている貫通孔、および第2端壁62に形成されている溝等を挙げることができる。また、第2ハウジング部61において低剛性部63を低剛性部63ではない部分に比して剛性が低い素材によって成形することもできる。
【0067】
・上記実施形態では、ステータコア21における第2ティース24に丸孔25および長孔25Lが形成されている例を示した。丸孔25および長孔25Lは、ステータコア21を貫通する貫通孔としてステータコア21に形成されていればよい。すなわち、丸孔25および長孔25Lの位置は、ティースに限らない。
【0068】
・ステータコア21には、丸孔25および長孔25Lのようなステータコア21を貫通する貫通孔が二つ以上形成されていればよい。二つ以上の貫通孔については、丸孔25と長孔25Lとを任意に組み合わせることができる。たとえば、二つ以上の貫通孔は、全ての孔が丸孔25でもよい。二つ以上の貫通孔は、一つ以上の長孔25Lを含んでいてもよい。長孔25Lは、丸孔25に向かい合う位置にあることが好ましい。
【0069】
・上記実施形態では、先端凹部58は、貫通孔においてステータコア21の第2端面21bに近い端部に配置されている。先端凹部58の位置は、これに限らない。第1取付具55では、先端凹部58が貫通孔の内部に配置されるように、貫通孔の長さに対する挿入部57の長さが設定されていればよい。
【0070】
・上記実施形態では、二組の取付具70に対応する二つの貫通孔がステータ20において向かい合う位置に形成されている。すなわち、ステータ20の中心と二つの貫通孔のそれぞれとを結んだ場合になす角度が180°である。二つの貫通孔は、対向していなくてもよい。たとえば、上記角度が90°でもよいし、120°でもよい。
【0071】
・上記実施形態では、二組の取付具70と、取付具70に対応する二つの貫通孔と、によってステータ20を固定する例を示した。ブラシレスモータ10は、三組以上の取付具70を備えていてもよい。ステータコア21において、複数の取付具70に対応する位置に貫通孔が形成されていれば、上記実施形態と同様にステータ20を固定することができる。
【0072】
・上記実施形態では、第1取付具55が第1端壁52と一体に成形されている例を示した。これに替えて、第1ハウジング部51とは別体の第1取付具55を第1端壁52に取り付けるようにしてもよい。たとえば、第1端壁52における第1取付具55を配置する位置に孔を形成する。当該孔に挿し込むことで第1取付具55を配置することができる。第2取付具65に関しても、第1取付具55と同様に、第2端壁62と一体に成形されていることは必須の構成ではない。
【0073】
・上記実施形態では、ブラシレスモータ10としてインナーロータ型の電気モータを例示した。ブラシレスモータは、アウターロータ型の電気モータでもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…ブラシレスモータ
20…ステータ
21…ステータコア
21a…第1端面
21b…第2端面
25…丸孔
25L…長孔
30…ロータ
31…軸部材
50…ハウジング
51…第1ハウジング部
52…第1端壁
55…第1取付具
58…先端凹部
58a…底壁
59…凹部周壁
61…第2ハウジング部
62…第2端壁
63…低剛性部
65…第2取付具
68…先端凸部
70…取付具
図1
図2
図3
図4
図5
図6