(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182164
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H03K 17/16 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H03K17/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095619
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田岡 正裕
【テーマコード(参考)】
5J055
【Fターム(参考)】
5J055AX23
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5J055GX05
(57)【要約】
【課題】異常な入力を検出して誤動作の防止を図る。
【解決手段】異常入力制御回路1cは、検出回路1c1、1c2、1c3の少なくとも1つを有し、検出回路1c1は、入力信号s11に重畳されているノイズの検出を行う。検出回路1c2は、入力信号s11のパルス幅が所定幅以下であることを検出する。検出回路1c3は、入力信号s11のレベルとスイッチング素子1aの動作との不整合を検出する。警報・保護回路1c4は、警報信号出力機能1c41および駆動調整機能1c42の少なくとも1つを有し、警報信号出力機能1c41は、検出結果にもとづいて、警報信号s12を外部に出力し、駆動調整機能1c42は、検出結果にもとづいて、スイッチング素子1aの駆動を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子と、
入力信号にもとづき前記スイッチング素子をスイッチングさせる駆動回路と、
前記入力信号に重畳されているノイズの検出を行う第1の検出回路、前記入力信号のパルス幅が所定幅以下であることを検出する第2の検出回路および前記入力信号のレベルと前記スイッチング素子の動作との不整合を検出する第3の検出回路の少なくとも1つの回路を備え、検出結果にもとづいて、警報信号を出力する警報信号出力機能および前記スイッチング素子の駆動を調整する駆動調整機能の少なくとも1つの機能を含む警報・保護回路を備える異常入力制御回路と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記第1の検出回路は、フィルタ回路、抵抗およびコンパレータを含み、
前記フィルタ回路の入力端には前記入力信号が入力され、前記フィルタ回路の出力端は前記コンパレータの非反転入力端子および前記抵抗の一端に接続され、前記抵抗の他端はグランドに接続され、前記コンパレータの反転入力端子には基準電圧が入力され、
前記フィルタ回路は、前記入力信号に重畳されているノイズをフィルタリングして出力し、前記コンパレータは、前記ノイズの電圧信号と、前記基準電圧とを比較し、前記電圧信号が前記基準電圧以上の場合に前記入力信号に前記ノイズが重畳されていることを示すノイズ検出信号を出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記入力信号のレベルを反転した反転入力信号を生成して、前記反転入力信号にもとづいて前記スイッチング素子の駆動を行い、
前記第2の検出回路は、インバータ素子、ワンショット回路および過小パルス幅検出用論理素子を含み、
前記インバータ素子の入力端には前記反転入力信号が入力され、前記インバータ素子の出力端は前記過小パルス幅検出用論理素子の一方の入力端に接続され、前記ワンショット回路の入力端には前記反転入力信号が入力され、前記ワンショット回路の出力端は前記過小パルス幅検出用論理素子の他方の入力端に接続され、
前記ワンショット回路は、前記反転入力信号が入力すると、所定の第1のパルス幅を持つワンショットパルス信号を出力し、前記過小パルス幅検出用論理素子は、前記ワンショットパルス信号の前記第1のパルス幅に対して前記インバータ素子から出力されるパルス信号の第2のパルス幅が小さい場合に、前記入力信号のパルス幅が過小であることを示す過小パルス幅検出信号を出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1のパルス幅は、前記反転入力信号が前記ワンショット回路に入力してから前記スイッチング素子のゲート充電が完了するまでの時間幅を有する、
請求項3記載の半導体装置。
【請求項5】
前記駆動回路は、前記入力信号のレベルを反転した反転入力信号を生成して、前記反転入力信号にもとづいて前記スイッチング素子のゲートの充放電を行うためのゲート充放電信号を生成して前記スイッチング素子の駆動を行い、
前記第3の検出回路は、反転入力端子および非反転入力端子を有する不整合検出用論理素子を含み、
前記反転入力端子には前記反転入力信号が入力され、前記非反転入力端子には前記ゲート充放電信号が入力され、
前記不整合検出用論理素子は、前記反転入力信号のレベルと前記ゲート充放電信号のレベルとが不一致の場合に前記不整合が生じていることを示す不整合検出信号を出力する、
請求項1記載の半導体装置。
【請求項6】
前記異常入力制御回路の前記警報信号出力機能は、前記第1の検出回路による前記ノイズの検出、前記第2の検出回路による前記過小パルス幅の検出、前記第3の検出回路による前記不整合の検出によって、少なくとも1つの事象が検出された場合には警報信号を出力する、請求項1記載の半導体装置。
【請求項7】
前記異常入力制御回路の前記駆動調整機能は、前記第1の検出回路による前記ノイズの検出、前記第2の検出回路による前記過小パルス幅の検出、前記第3の検出回路による前記不整合の検出によって、少なくとも1つの事象が検出された場合には前記スイッチング素子の駆動を調整する、
請求項1記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などのパワー半導体素子と、パワー半導体素子を駆動する駆動回路等を内蔵したIPM(Intelligent Power Module)と呼ばれる半導体装置の開発が進んでいる。
【0003】
IPMは、例えば、モータ、インバータおよびコンバータ等に電力供給を行う車両電装システム等に広く利用されており、小型化、高性能化および高信頼性に応える製品が要望されている。
【0004】
また、IPMでは、パワー半導体素子に流れる電流やパワー半導体素子の温度等を監視して、監視結果にもとづいて、パワー半導体素子が破壊されないようにパワー半導体素子を保護する監視・保護機能が備えられている。
【0005】
関連技術としては、例えば、入力信号と、ノイズの最大パルス幅を遅延量として入力信号を遅延させた第1の遅延信号とのレベル一致検出を行って入力信号のスパイクノイズを除去する技術が提案されている(特許文献1)。また、ハイサイド入力信号の立ち上がりおよび立ち下がりからオン信号パルスとオフ信号パルスを発生させ、オン信号パルス幅よりもオフ信号パルス幅を長くして、入力信号のパルス幅が狭くなった場合の誤動作を防止する技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/044639号
【特許文献2】特開2003-339151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IPMは、IGBTを含む半導体チップと、半導体チップのドライブおよび保護動作を行う制御IC(Integrated Circuit)とを備えている。また、制御ICは、外部から送信される入力信号にもとづいて、半導体チップ内のIGBTの駆動制御を行う。
【0008】
しかし、従来のIPMでは、半導体チップの過熱、過電流等の監視・保護機能は備えているが、制御ICに対する異常入力への監視・保護機能は備えられていない。
このため、例えば、制御ICに送信される入力信号に高周波ノイズが重畳されていたり、またはパルス幅が所定幅よりも過小な状態の入力信号が制御ICに入力したりすると、IPMが誤動作してしまう可能性がある。
【0009】
さらに、入力信号のレベルとIGBTの動作とが不整合な場合においても、IPMが誤動作する可能性がある。そして、このような異常な入力によって誤動作が継続すると、素子破壊や寿命減につながるという問題がある。
【0010】
1つの側面では、本発明は、異常な入力を検出して誤動作の防止を可能にした半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、半導体装置が提供される。半導体装置は、スイッチング素子、駆動回路および異常入力制御回路を有する。異常入力制御回路は、第1の検出回路、第2の検出回路および第3の検出回路の少なくとも1つの回路を備える。駆動回路は、入力信号にもとづきスイッチング素子をスイッチングさせる。第1の検出回路は、入力信号に重畳されているノイズの検出を行う。第2の検出回路は、入力信号のパルス幅が所定幅以下であることを検出する。第3の検出回路は、入力信号のレベルとスイッチング素子の動作との不整合を検出する。異常入力制御回路は、さらに警報・保護回路を備える。警報・保護回路は、警報信号出力機能および駆動調整機能の少なくとも1つの機能を備え、検出結果にもとづいて、警報信号出力機能は警報信号を出力し、駆動調整機能はスイッチング素子の駆動を調整する。
【発明の効果】
【0012】
1側面によれば、異常な入力を検出して誤動作の防止を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】半導体装置の一例を説明するための図である。
【
図3】異常入力制御回路の機能ブロックを示す図である。
【
図4】過小パルス幅検出の動作を示すタイムチャートである。
【
図5】不整合検出の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は半導体装置の一例を説明するための図である。半導体装置1は、スイッチング素子1a、駆動回路1bおよび異常入力制御回路1cを有する。スイッチング素子1aは、駆動制御にてターンオン/ターンオフ可能な半導体素子であり、例えば、IGBTやパワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のような電圧制御型半導体素子である。駆動回路1bは、入力信号s11にもとづきスイッチング素子1aをスイッチング駆動させる。
【0015】
異常入力制御回路1cは、検出回路1c1(第1の検出回路)、検出回路1c2(第2の検出回路)および検出回路1c3(第3の検出回路)の少なくとも1つの回路を含む。検出回路1c1は、入力信号s11に重畳されているノイズの検出を行う。検出回路1c2は、入力信号s11のパルス幅が所定幅以下であることを検出する。検出回路1c3は、入力信号s11のレベルとスイッチング素子1aの動作との不整合を検出する。
【0016】
また、異常入力制御回路1cは、警報・保護回路1c4を備える。警報・保護回路1c4は、警報信号出力機能1c41および駆動調整機能1c42の少なくとも1つの機能を備える。警報信号出力機能1c41は、検出回路1c1、1c2、1c3の少なくとも1つの検出結果にもとづいて、警報信号s12を外部に出力して異常入力状態を通知する。また、駆動調整機能1c42は、検出回路1c1、1c2、1c3の少なくとも1つの検出結果にもとづいて、スイッチング素子1aの駆動を調整する。
【0017】
このように、半導体装置1によれば、入力信号s11に対して、ノイズ検出、過小パルス幅検出および不整合検出の少なくとも1つを行い、検出結果にもとづいて警報信号s12の出力およびスイッチング素子1aの駆動調整の少なくとも一方を行う構成とした。これにより、異常な入力信号s11が入力した場合であっても誤動作を防止することが可能になる。
【0018】
<半導体装置の構成>
次に半導体装置1の構成についてさらに詳しく説明する。
図2は半導体装置の構成の一例を示す図である。半導体装置10は、例えば、IPMに適用される装置であり、半導体チップ11、および制御ICに相当する制御回路12を備える。
【0019】
半導体チップ11は、IGBT11aと温度検出用ダイオード11bとを備える。制御回路12は、入出力端子として、入力端子IN、アラーム出力端子AE、AW、電源端子Vcc、出力端子OUT、接地端子GND、過電流検出用端子OCおよび過熱検出用端子OHを備える。
【0020】
また、制御回路12は、入力回路12a1、ドライブ回路12a2、ゲート充放電回路12a3、電源回路12a4、短絡検出回路12a5、過電流検出回路12a6、過熱検出回路12a7、電圧検出回路12a8、アラーム出力回路12a9および4入力1出力の論理和素子IC0を備える。なお、入力回路12a1、ドライブ回路12a2およびゲート充放電回路12a3は、
図1の駆動回路1bの機能を実現する。
【0021】
さらに、制御回路12は、異常入力制御回路12bを備える。異常入力制御回路12bは、フィルタ回路cr1、ワンショット回路cr2、インバータ素子IC1、2入力1出力の論理積素子IC2(過小パルス幅検出用論理素子)、2入力1出力の論理積素子IC3(不整合検出用論理素子)、3入力1出力の論理和素子IC4、コンパレータcmp1、抵抗R1、R2およびNMOSトランジスタm1を含む。
【0022】
半導体チップ11において、IGBT11aのゲートは、出力端子OUTに接続され、IGBT11aのエミッタは、接地端子GNDに接続される。IGBT11aのセンスエミッタは、過電流検出用端子OCに接続される。なお、図示を省略しているが、半導体チップ11では、IGBT11aに逆並列に接続されたFWD(Free Wheeling Diode)を有している。また、IGBT11aの温度を検出する温度検出用ダイオード11bのアノードは、過熱検出用端子OHに接続され、温度検出用ダイオード11bのアノードは、GNDに接続される。
【0023】
(半導体チップ11に対する監視・保護機能)
制御回路12において、入力端子INには、マイコン等から送信された入力信号s1が入力される。入力回路12a1は、制御回路12がローアクティブでIGBT11aを駆動する場合、入力信号s1のレベルを反転して反転入力信号s1nを出力する。
【0024】
すなわち、IGBT11aはゲートレベルがHレベルでターンオンし、Lレベルでターンオフする。このため、制御回路12がローアクティブの場合、IGBT11aをターンオンさせる場合にはLレベルの入力信号s1がマイコンから送信され、IGBT11aをターンオフさせる場合にはHレベルの入力信号s1がマイコンから送信されることになる。よって、入力回路12a1では、マイコンから送信される入力信号s1のレベルを反転させて次段に出力している。
【0025】
ドライブ回路12a2は、入力回路12a1から出力された反転入力信号s1nにもとづいて駆動信号を生成する。ゲート充放電回路12a3は、駆動信号にもとづいて、IGBT11aのゲートの充電を行ってIGBT11aをターンオンし、また、ゲートの放電を行ってIGBT11aをターンオフするためのゲート充放電信号s2を出力する。ゲート充放電信号s2がオン(Hレベル)の場合にIGBT11aはターンオンし、ゲート充放電信号s2がオフ(Lレベル)の場合にIGBT11aはターンオフする。
【0026】
電源回路12a4は、電源端子Vccから入力される電源電圧を制御回路12用の制御電圧に変換して各構成要素に印加する。短絡検出回路12a5は、IGBT11aのセンスエミッタから送信されるセンス電流にもとづいて、IGBT11aの負荷に対する短絡を検出し、短絡を検出した場合はHレベルの短絡検出信号s3を出力する。
【0027】
過電流検出回路12a6は、IGBT11aのセンスエミッタから送信されるセンス電流を、過電流検出用端子OCを介して受信すると、センス電流をセンス電圧に変換する。そして、過電流検出回路12a6は、センス電圧と、予め定めた電流基準電圧とを比較し、比較結果にもとづいてIGBT11aの電流状態が過電流状態であることを検出した場合に、Hレベルの過電流検出信号s4を出力する。
【0028】
過熱検出回路12a7は、温度検出用ダイオード11bによる温度検出電圧を、過熱検出用端子OHを介して受信する。そして、過熱検出回路12a7は、温度検出電圧と、予め定めた温度基準電圧とを比較し、比較結果にもとづいてIGBT11aの温度状態が過熱状態であることを検出した場合に、Hレベルの過熱検出信号s5を出力する。
【0029】
電圧検出回路12a8は、電源回路12a4で生成された制御電圧が、予め定めた閾値電圧以上であるか否かを検出し、制御電圧が閾値電圧を下回ることを検出した場合に、Hレベルの電圧低下検出信号s6を出力する。
【0030】
論理和素子IC0の入力端には、短絡検出信号s3、過電流検出信号s4、過熱検出信号s5および電圧低下検出信号s6が入力される。したがって、論理和素子IC0は、短絡状態、過電流状態、過熱状態および制御電圧低下状態の少なくとも1つの異常状態が発生した場合には、Hレベル信号を出力する。
【0031】
アラーム出力回路12a9は、論理和素子IC0からのHレベル信号を受信するとアラーム信号s7を生成して、アラーム出力端子AEを介して出力する。そして、短絡状態、過電流状態、過熱状態および制御電圧低下状態の少なくとも1つが発生していることを外部に通知する。なお、電源回路12a4は、アラーム信号s7の出力が行われるとパワーオンリセットを行う機能を有している。
【0032】
また、アラーム出力回路12a9は、論理和素子IC0からのHレベル信号を受信すると、駆動調整信号s8をドライブ回路12a2に出力する。ドライブ回路12a2は、駆動調整信号s8を受信すると、ゲート充放電回路12a3に対してゲート放電の指示を出してIGBT11aをターンオフさせて駆動を調整する。
【0033】
(異常入力に対する監視・保護機能)
以下、異常入力に対する制御回路12における監視・保護機能について、
図2,
図3を用いて説明する。
図3は異常入力制御回路の機能ブロックを示す図である。
図2に示した異常入力制御回路12bの機能ブロック構成を示している。入力信号s1における異常状態の監視・保護を行う異常入力制御回路12bは、ノイズ検出回路12b1、過小パルス幅検出回路12b2、不整合検出回路12b3およびアラーム出力・保護回路12b4を有している。
【0034】
(ノイズ検出回路)
ノイズ検出回路12b1は、
図1の検出回路1c1の機能を有する。ノイズ検出回路12b1は、フィルタ回路cr1、コンパレータcmp1および抵抗R1を含む。フィルタ回路cr1の入力端には入力信号s1が入力される。フィルタ回路cr1の出力端は、コンパレータcmp1の非反転入力端子(+)および抵抗R1の一端に接続され、抵抗R1の他端はGNDに接続される。コンパレータcmp1の反転入力端子(-)には基準電圧Vrが入力される。コンパレータcmp1の出力端は、論理和素子IC4の3入力のうちの1つの入力端に接続される。
【0035】
ノイズ検出回路12b1では、制御回路12の入力端子INに入力される入力信号s1に重畳されている高周波ノイズを検出する。ここで、入力信号s1が流れるラインに並列して、ハイパスフィルタリングを行うフィルタ回路cr1が設置されており、フィルタ回路cr1によって、入力信号s1に重畳されている高周波ノイズが抽出、誘導されてフィルタ回路cr1から出力される。
【0036】
フィルタ回路cr1の出力端には、プルダウン抵抗R1が接続されているので、高周波ノイズ成分に相当する電圧信号がコンパレータcmp1の非反転入力端子(+)に入力される。そして、コンパレータcmp1は、高周波ノイズ成分に相当する電圧信号と、基準電圧Vrとを比較し、該電圧信号が基準電圧Vr以上の場合には、Hレベル信号(ノイズ検出信号)を出力する。このような構成により、入力信号s1に重畳されている高周波ノイズの検出が行われる。
【0037】
このように、ノイズ検出回路12b1では、入力信号s1に高周波ノイズが重畳されている場合、遮断周波数以上のものはフィルタ回路cr1側へと流れる。フィルタ回路cr1の出力端は、プルダウンされた抵抗R1を通るため、抵抗R1の両端電圧がコンパレータcmp1の非反転入力端子(+)に入力される。コンパレータcmp1は、非反転入力端子(+)に入力される電圧が、基準電圧Vr以上になったときに警報機能をオンにするためのHレベル信号を出力することになる。
【0038】
なお、フィルタ回路cr1のフィルタリング能力や、抵抗R1の抵抗値および基準電圧Vrの値は調整可能なので、入力信号s1に重畳されているノイズの周波数や電圧幅に対して、柔軟に検出制御することができる。
【0039】
(過小パルス幅検出回路)
過小パルス幅検出回路12b2は、
図1の検出回路1c2の機能を有する。過小パルス幅検出回路12b2は、インバータ素子IC1、ワンショット回路cr2および論理積素子IC2を含む。
【0040】
インバータ素子IC1の入力端には、入力回路12a1でレベル反転された反転入力信号s1nが入力される。インバータ素子IC1の出力端は、論理積素子IC2の一方の入力端に接続される。ワンショット回路cr2の入力端には、入力回路12a1でレベル反転された反転入力信号s1nが入力される。ワンショット回路cr2の出力端は、論理積素子IC2の他方の入力端に接続される。論理積素子IC2の出力端は、論理和素子IC4の3入力のうちの1つの入力端に接続される。
【0041】
過小パルス幅検出回路12b2では、入力信号s1が過小パルス幅の状態であることを検出する。ここで、ワンショット回路cr2は、入力回路12a1からの反転入力信号s1nの出力と同時に、所定のパルス幅を持つワンショットパルス信号を出力する。そして、反転入力信号s1nのパルス幅がワンショットパルス信号のパルス幅以下である場合に、入力信号s1のパルス幅が過小パルス幅として検出される(
図4で詳細を後述)。
【0042】
(不整合検出回路)
不整合検出回路12b3は、
図1の検出回路1c3の機能を有する。不整合検出回路12b3は、論理積素子IC3を含む。論理積素子IC3の一方の反転入力端子には、入力回路12a1でレベル反転された反転入力信号s1nが入力される。論理積素子IC3の他方の非反転入力端子には、ゲート充放電回路12a3から出力されるゲート充放電信号s2が入力される。論理積素子IC3の出力端は、論理和素子IC4の3入力のうちの1つの入力端に接続される。
【0043】
不整合検出回路12b3では、論理積素子IC3において、例えば、入力信号s1がHレベルのときにゲート充放電信号s2がオフになっているか否かを判定することで、入力信号s1のレベルと、IGBT11aの動作との不整合を検出する(
図5で詳細を後述する)。
【0044】
なお、制御回路12はローアクティブなので、入力信号s1がHレベルのときはIGBT11aに対してターンオフ指示となる。したがって、入力信号s1がHレベルのときにゲート充放電信号s2がオフ(IGBT11aがターンオフ)になっていれば整合しており、入力信号s1がHレベルのときにゲート充放電信号s2がオン(IGBT11aがターンオン)になっていれば不整合となる。
【0045】
(アラーム出力・保護回路)
アラーム出力・保護回路12b4は、
図1の警報・保護回路1c4の機能を有する。アラーム出力・保護回路12b4は、論理和素子IC4、抵抗R2およびNMOSトランジスタm1を含む。論理和素子IC4の3つの入力端には、コンパレータcmp1の出力端、論理積素子IC2の出力端および論理積素子IC3の出力端がそれぞれ接続される。
【0046】
論理和素子IC4の出力端は、NMOSトランジスタm1のゲートおよびドライブ回路12a2の入力端に接続される。NMOSトランジスタm1のドレインは電源電圧および抵抗R2の一端に接続され、NMOSトランジスタm1のソースはGNDに接続される。抵抗R2の他端は、アラーム出力端子AWに接続される。
【0047】
ここで、論理和素子IC4は、ノイズの重畳、過小パルス幅状態および不整合状態の少なくとも1つの異常状態が発生した場合には、Hレベル信号を出力する。NMOSトランジスタm1のドレインには、電源電圧が印加され、NMOSトランジスタm1のソースはGNDに接続されているため、NMOSトランジスタm1のゲートにHレベル信号が入力すると、NMOSトランジスタm1はオンする。
【0048】
NMOSトランジスタm1がオンすると、NMOSトランジスタm1のドレインに接続されている抵抗R2を介して、Lレベルのアラーム信号d0(警報信号)がアラーム出力端子AWから出力される(アラーム信号d0がLレベルのとき異常入力状態有りとなる)。
【0049】
また、論理和素子IC4の出力は、ドライブ回路12a2にも入力されており、ドライブ回路12a2は、論理和素子IC4からのHレベル信号を受信すると、ゲート充放電回路12a3に対してゲート放電の指示を出してIGBT11aをターンオフさせて駆動を調整する。すなわち、論理和素子IC4からのHレベル信号は、IGBT11aに対する駆動調整信号にもなっている。これにより、異常入力に対する保護機能が実現される。
【0050】
(過小パルス幅検出の動作)
図4は過小パルス幅検出の動作を示すタイムチャートである。
〔波形W1〕制御回路12の入力端子INにLレベルの入力信号s1が入力される。制御回路12はローアクティブなので、Lレベルの入力信号s1はIGBT11aのターンオン指示を意味する。なお、IGBT11aのゲート充電を正常に完了するのに要するパルス幅よりも小さい過小パルス幅(第2のパルス幅:ゲート充電を正常に完了できないパルス幅)を有する異常な入力信号s1が入力されたとする。
【0051】
〔波形W2〕入力回路12a1は、入力信号s1を反転してHレベルパルスの反転入力信号s1nを出力する。
〔波形W3〕ドライブ回路12a2は、反転入力信号s1nにもとづき駆動信号を生成し、ゲート充放電回路12a3は駆動信号にもとづいてIGBT11aのゲートを充電する。しかし、過小パルス幅の入力信号s1にもとづくゲート充電になるため、IGBT11aのゲート電圧Vgは、所定の電圧値まで上昇することができない状態になっている。
【0052】
〔波形W4〕インバータ素子IC1に反転入力信号s1nが入力される。
〔波形W5〕インバータ素子IC1は、反転入力信号s1nのレベルを反転してLレベルパルス信号d1を出力する。
【0053】
〔波形W6〕ワンショット回路cr2は、反転入力信号s1nの入力と同時にHレベルのワンショットパルス信号d2を出力する。なお、ワンショットパルス信号d2のパルス幅tp(第1のパルス幅)は、IGBT11aのゲート充電が正常に完了可能な時間幅を有している。すなわち、反転入力信号s1nがワンショット回路cr2に入力してからIGBT11aのゲート充電が正常に完了するまでの時間幅とする。
【0054】
〔波形W7〕論理積素子IC2は、Lレベルパルス信号d1とワンショットパルス信号d2との論理積をとってHレベル信号d3(過小パルス幅検出信号)を出力する。論理積素子IC2からHレベル信号d3が出力されるとき、入力信号s1は過小パルス幅状態であることが検出されることになる(IGBT11aをターンオンするには足りない短すぎる入力信号s1が制御回路12に入力していることになる)。このとき、アラーム出力端子AWからは、Lレベルのアラーム信号d0が出力される。
【0055】
このように、制御回路12に入力信号s1が入力すると、所定の時間のパルス幅のワンショットパルス信号を出力するワンショット回路cr2が起動する。ワンショットパルス信号のパルス幅が切れる前に入力信号s1がオフになると論理積素子IC2の2入力がH、Hの組み合わせとなって、論理積素子IC2から警報機能をオンにするためのHレベル信号が出力することになる。
【0056】
(不整合検出の動作)
図5は不整合検出の動作を示すタイムチャートである。
〔波形W11〕制御回路12の入力端子INにHレベルの入力信号s1が入力される。制御回路12はローアクティブなので、Hレベルの入力信号s1はIGBT11aのターンオフ指示を意味する。
【0057】
〔波形W12〕入力回路12a1は、入力信号s1を反転してLレベルの反転入力信号s1nを出力する。
〔波形W13〕論理積素子IC3の反転入力端子に反転入力信号s1nが入力される。なお、波形W13は、反転入力信号s1nのレベル反転後の論理積素子IC3への入力波形(Hレベル信号d4とする)を示している。
【0058】
〔波形W14〕ゲート充放電回路12a3が誤動作しているものとする。ここでは、入力信号s1がHレベル(反転入力信号s1nがLレベル)なので本来はゲートを放電させるためのLレベルのゲート充放電信号s2をゲート充放電回路12a3は出力するはずが、Hレベル信号を出力している。このような誤動作は、例えば、外部のトランシーバなどの強電磁波を出力する機器や高電圧機器のスイッチ等によって発生する外来ノイズの影響によって生じる場合がある。
【0059】
〔波形W15〕ゲート充放電回路12a3から出力されるゲート充放電信号s2がHレベルなので、論理積素子IC3の非反転入力端子にはHレベル信号d5が入力される。
〔波形W16〕論理積素子IC3は、Hレベル信号d4とHレベル信号d5との論理積をとってHレベル信号d6(不整合検出信号)を出力する。論理積素子IC3からHレベル信号d6が出力されるとき、入力信号s1のレベルとIGBT11aの動作は不整合であることが検出されたことになる。このとき、アラーム出力端子AWからはLレベルのアラーム信号d0が出力される。
【0060】
このように、反転入力信号s1nのレベルと、ゲート充放電信号s2のレベルとが不一致の場合に、論理積素子IC3から警報機能をオンにするためのHレベル信号が出力することになる。
【0061】
以上説明したように、本発明によれば、半導体装置の制御回路への入力信号に重畳されているノイズや、不適切なパルス幅の入力信号、さらには入力信号のレベルとIGBTの動作との不整合を検出して、異常状態検出時の外部への通知および異常状態検出時におけるIGBTの駆動調整を行う構成とした。これにより、異常入力が原因による誤動作を効率よく防止することができ、また、異常入力の解明や素子の保護を行うことができる。
【0062】
以上、実施の形態を例示したが、実施の形態で示した各部の構成は同様の機能を有する他のものに置換することができる。また、他の任意の構成物や工程が付加されてもよい。さらに、前述した実施の形態のうちの任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 半導体装置
1a スイッチング素子
1b 駆動回路
1c 異常入力制御回路
1c1 検出回路(第1の検出回路:ノイズ検出)
1c2 検出回路(第2の検出回路:過小パルス幅検出)
1c3 検出回路(第3の検出回路:不整合検出)
1c4 警報・保護回路
1c41 警報信号出力機能
1c42 駆動調整機能
s11 入力信号
s12 警報信号