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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182181
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】船舶監視装置、船舶監視方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 3/02 20060101AFI20231219BHJP
   B63B 43/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G08G3/02 A
B63B43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095649
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】渡来 保奈美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茉莉
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB05
5H181BB13
5H181CC11
5H181CC14
5H181CC27
5H181EE14
5H181FF25
5H181FF33
5H181FF35
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181MB04
(57)【要約】
【課題】錨泊に関連して生じるリスクを評価することである。
【解決手段】錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を取得する取得部と、前記船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求めるエリア算出部と、前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求めるリスク算出部と、前記リスクの度合いを出力する出力部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を取得する取得部と、
前記船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求めるエリア算出部と、
前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求めるリスク算出部と、
前記リスクの度合いを出力する出力部と
を有する船舶監視装置。
【請求項2】
船舶から投錨された投錨点から錨鎖の長さに基づく当該船舶の最大移動距離を求める距離算出部と、
前記推定位置が前記最大移動距離に基づく最大移動範囲を超えたか否かを判定する判定部と、
を有し、
前記出力部は、
前記推定位置が前記最大移動範囲を超えた場合に、前記リスクの度合いに応じた表示態様で表示部に表示させる
請求項1に記載の船舶監視装置。
【請求項3】
前記オブジェクトが構造物であり、
前記エリア算出部は、前記構造物からの距離に基づいて前記禁止エリアを求め、
前記リスク算出部は、前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づいてリスクの度合いを求める
請求項1に記載の船舶監視装置。
【請求項4】
前記オブジェクトが相手船であり、
前記リスク算出部は、前記相手船の位置を基準として求まる禁止エリアと、当該相手船の針路とに基づいて、リスクの度合いを求める
請求項1に記載の船舶監視装置。
【請求項5】
前記オブジェクトが海中における地形に応じて水深が定められた深さよりも浅い領域であり、
前記リスク算出部は、前記推定位置と、前記浅い領域を基準として求まる禁止エリアとの位置関係に基づいてリスクの度合いを求める
請求項1に記載の船舶監視装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記リスク算出部が算出する対象の要因毎にリスクの度合いを表示部における異なる表示領域に表示させる
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の船舶監視装置。
【請求項7】
取得部が、錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を取得し、
エリア算出部と、前記船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求め、
リスク算出部が、前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求め、
出力部が、前記リスクの度合いを出力する
船舶監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶監視装置、船舶監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、港湾内や公海において錨泊する場合がある。この場合、荒天、風向き、うねり等の状況によっては、走錨のリスクがある。このようなリスクを把握するために、走錨しているか否かを監視するための監視装置がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-159530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、走錨しているか否かを把握することも重要であるが、これとは別に、周囲に岸壁や他船等のオブジェクトがある場合に走錨が生じると、船舶の船体の運動状態によっては、錨泊中の船舶とオブジェクトとが衝突する可能性が生じる。そのため、走錨時における衝突のリスクを把握できることが望ましい。また、錨泊中は、錨泊していない場合とは船舶の挙動(振れまわり)が異なるため、走錨しているか否かにかかわらず、周囲のオブジェクトに対する衝突リスクを把握できることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、錨泊に関連して生じるリスクを評価することができる船舶監視装置、船舶監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を取得する取得部と、前記船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求めるエリア算出部と、前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求めるリスク算出部と、前記リスクの度合いを出力する出力部とを有する船舶監視装置である。
【0007】
また、本発明の一態様は、取得部が、錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を取得し、エリア算出部と、前記船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求め、リスク算出部が、前記推定位置と前記禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求め、出力部が、前記リスクの度合いを出力する船舶監視方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、錨泊に関連して生じるリスクを評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態による船舶監視装置を用いた船舶監視システムSの構成を示す概略ブロック図である。
図2】端末装置50の表示画面に表示される表示内容の一例を示す図である。
図3】表示領域R20に表示される画面の一例を示す図である。
図4】船舶監視システムS0の動作を説明するフローチャートである。
図5】最大移動距離とバリアを説明する図である。
図6】侵入禁止エリアを求める処理について説明する図である。
図7】安全領域について説明する図である。
図8】錨泊中における船舶の運動について説明する図である。
図9】推定された緯度経度に基づいて投錨点ACと自船S0の運動の軌跡との関係を示す図である。
図10】船舶監視システムS0の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による船舶監視装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による船舶監視装置を用いた船舶監視システムSの構成を示す概略ブロック図である。
船舶監視システムSは、船舶情報収集装置10、環境情報収集装置20、船舶監視装置30、中間サーバ40、端末装置50を有する。
船舶監視システムSは、陸上に設けられた監視所において、港湾等を航行する複数の船舶を監視対象として監視するために用いることができる。また、船舶監視システムSは、船舶に搭載されることで、当該船舶において自船を管理するために用いることができる。この実施形態においては、監視対象の船舶に端末装置50が搭載され、当該船舶の乗員が自船を監視する場合を一例として説明する。
ここで、監視対象となる船舶については、乗員によって操船される船舶であってもよいし、自動運航船あるいは自律船と呼ばれる、乗員が直接操船することなく運航可能な船舶であってもよい。自動運航船等を監視する場合、自動運航船等に乗員が乗船している場合には、端末装置50を当該自動運航船等に設け、乗員が表示内容を確認するようにしてもよいし、自動運航船等に乗員が乗船しない場合には、端末装置50を監視所に設け、監視員が表示内容を確認するようにしてもよい。
【0011】
船舶情報収集装置10は、監視対象の船舶に関する情報を収集する。船舶情報収集装置10は、例えば、監視対象の船舶の位置情報(緯度、経度、船首方位)、船速、風況(風向、風速)、船体の大きさ(全長)などである。位置情報、船速、船体の大きさについては、監視対象である船舶に搭載されたAIS(Automatic Identification System)から取得することができる。風況については、監視対象である船舶に搭載された風速センサ、風向センサなどから得られる測定結果を取得することができる。
船舶情報収集装置10は、船舶監視装置30に対して無線または有線によって通信可能に接続され、収集した各種情報を船舶監視装置30に送信する。
【0012】
環境情報収集装置20は、船舶が航行する海域に関する各種情報を収集する。例えば、環境情報収集装置20は、外部のサーバ装置と通信を行い、当該サーバ装置から各種情報を受信する。受信する情報としては、気象・海象情報、水深情報、構造物情報等である。気象・海象情報は、気象や海象に関する情報であり、天候等の気象、波浪(波高、波向、周期等)、潮位等の情報がある。
水深情報は、海底の地形に応じた水深を表す情報である。水深情報は、船舶に搭載されたセンサ(例えば、水深測量機、ソナー)から取得する。また、センサを用いる方法の他に、自船の現在位置における水深を航海用電子海図のデータからから取得するようにしてもよい。航海用電子海図のデータは、環境情報取得装置に予め記憶されていてもよいし、外部から取得してもよい。
構造物情報は、岸壁、橋桁等の構造物が配置された位置や形状を表す情報である。構造物情報は、航海用電子海図のデータから取得することができる。
環境情報収集装置20は、船舶監視装置30に対して無線または有線によって通信可能に接続され、収集した各種情報を船舶監視装置30に送信する。
環境情報収集装置20は、API(Application Programming Interface)を用いて、外部のサーバ装置等にリクエストを送信することでその結果を受信するようにしてもよい。
【0013】
船舶監視装置30は、船舶情報収集装置10、環境情報収集装置20、中間サーバ40と無線または有線によって通信可能に接続される。船舶監視装置30は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。
データベース31は、各種データを記憶する。例えばデータベース31は、船舶情報収集装置10から受信したデータと、環境情報収集装置20から受信したデータと、中間サーバ40から受信したデータを記憶する。また、データベース31は、欠落値補完用データベース32から得られるデータを読み出して記憶する。
【0014】
欠落値補完用データベース32は、監視対象の過去の船舶の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速を記憶する。
【0015】
錨泊判定部33は、監視対象の船舶が錨泊しているか否かを判定する。
錨泊判定部33は、データ補完部331と、錨泊状態判定エンジン332とを有する。
データ補完部331は、欠落値補完用データベース32から、過去の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速の組み合わせの時系列の傾向に基づいて、欠落している項目の値を推定することで補完する。
【0016】
錨泊状態判定エンジン332は、判定対象の船舶が錨泊状態であるかを判定する。例えば、錨泊状態判定エンジン332は、判定対象の船舶の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速の関係に基づいて、船舶の運動状態を推定し、推定された船舶の運動状態が錨泊している状態に合致する場合には、錨泊していると推定し、合致しない場合には錨泊していないと推定する。錨泊している場合には、船舶の位置の履歴が投錨点を基準として一定範囲内に収まる傾向にあるため、その傾向に基づいて、錨泊しているか否かを推定することができる。
錨泊判定部33は、監視対象の船舶が、錨泊状態判定エンジン332によって錨泊していると推定された場合には、錨泊していると判定し、錨泊していないと推定された場合には、錨泊していないと判定する。
また、錨泊状態判定エンジン332は、判定対象の船舶のAISから得られるデータに、錨泊していることを表すデータが含まれているか否かを判定し、錨泊していることを表すデータが含まれている場合には、錨泊していると判定し、錨泊していることを表すデータが含まれていない、または、錨泊していないことを表すデータが含まれている場合には、錨泊していないと判定するようにしてもよい。
【0017】
運動予測部34は、錨泊している船舶の将来の位置を推定した位置情報を求める。この位置の推定をする対象の船舶は、実際に錨泊している船舶と錨泊していると推定される船舶とのうち少なくともいずれか一方であればよい。
運動予測部34は、外力推定部341と、振れまわり運動推定エンジン342とを有する。
外力推定部341は、過去の外力の履歴に基づいて、将来の外力を推定する。外力には、例えば、風圧力、波、潮の流れ等がある。
振れまわり運動推定エンジン342は、監視対象の船舶の将来における、錨泊状態における船舶の振れまわり運動を推定する。例えば、振れまわり運動推定エンジン342は、1つの錨によって錨泊している状態において、風速、風圧、波、潮流等の外力、船体の形状、船体の大きさ、緯度経度、投錨位置等に基づく運動モデルを用いることで、船舶の振れまわり運動を推定する。振れまわり運動の推定は、既存の技術を用いてもよい。
予測する将来の期間は任意の期間であってもよい。
【0018】
事故リスク算出部35は、錨泊している船舶の将来の位置を推定した推定位置を運動予測部34から取得する取得機能を有する。この推定位置を取得する対象の船舶は、実際に錨泊している船舶と、錨泊していると推定される船舶とのうち少なくともいずれか一方であればよい。
事故リスク算出部35は、推定位置と禁止エリアとの位置関係に基づくリスクの度合いを求める。禁止エリアは、船舶が当該エリア内に入るとリスクが生じることを示す領域である。
【0019】
事故リスク算出部35は、エリア算出部351と、要因別リスク算出部352と、総合事故リスク算出部353とを有する。
【0020】
エリア算出部351は、船舶の周囲に存在するオブジェクトを基準にした禁止エリアを求める。オブジェクトは、船舶、構造物、地理的要因に基づく物体などがある。
例えば、エリア算出部351は、構造物からの距離に基づいて禁止エリアを求める。また、エリア算出部351は、船舶から投錨された投錨点から錨鎖の長さに基づく当該船舶の移動距離や最大移動距離を求める距離算出部の機能、求められた最大移動距離に基づいて監視対象の船舶に対する安全領域の算出機能、侵入禁止エリアを算出する機能を有する。
【0021】
要因別リスク算出部352は、要因毎に、リスク度を算出する。要因別リスク算出部352が求める対象の要因は、例えば下記の(1)から(4)の4つがある。
【0022】
(1)走錨に基づく要因
要因別リスク算出部352は、推定位置が、監視円を超えたか否かを判定する。監視円は、自船が安全に錨泊している状態における最大移動距離に基づく最大移動範囲であり、後述する安全領域を用いる。
要因別リスク算出部352は、推定位置が、最大移動範囲を超える場合には、走錨の可能性があると判定することで、走錨によるリスクがあると判定し、最大移動範囲を超えない場合には、走錨の可能性がないと判定することで、走錨によるリスクがないと判定する。走錨すると意図しない方向へ運動する場合があるため、そのリスクを管理することができる。
【0023】
(2)構造物との関係に基づく要因
監視対象の船舶の周囲に存在するオブジェクトとしては、例えば構造物がある。構造物は、例えば、橋桁、岸壁などがある。このような構造物を要因とした衝突のリスクが考えられる。
【0024】
(3)他船との関係に基づく要因
監視対象の船舶の周囲に存在するオブジェクトとしては、例えば他船がある。このような他船を要因とした衝突のリスクが考えられる。
【0025】
(4)地理的要因
監視対象の船舶の周囲に存在するオブジェクトとしては、海中における地形に応じた水深が、定められた深さよりも浅い領域である。このような領域は、岩礁または暗礁がある領域である。定められた深さは、監視対象の船舶の喫水に基づいて決めることができる。例えば、端末装置50から、監視対象の船舶の喫水を表す喫水データを中間サーバ40を介して船舶監視装置30が取得し、この喫水データが示す深さよりも浅い領域をオブジェクトとして抽出する。
要因別リスク算出部352は、推定位置と、水深が浅い領域を基準として求められる禁止エリアとの距離に基づいてリスクの度合いを求める。
【0026】
要因別リスク算出部352は、要因が構造物または他船である場合には、推定位置と侵入禁止エリアとの位置関係に基づいてリスクの度合いを求める。位置関係としては、推定位置が侵入禁止エリアに入ったか否か、推定位置が、侵入禁止エリア内における中心までの距離等である。
また、要因別リスク算出部352は、要因が他船である場合には、推定位置と禁止エリアとの距離の他に、相手船の針路も用いることで、リスクの度合いを求めるようにしてもよい。すなわち、自船の推定位置が他船に対して設定された禁止エリア内にある場合であっても、他船の針路が自船の推定位置に干渉しない場合には、衝突のリスクは下がる。
【0027】
総合事故リスク算出部353は、要因毎について算出されたリスク度の度合いに基づいて、総合事故リスクの度合いを求める。例えば、総合事故リスク算出部353は、各要因のリスクの度合いについて将来の時刻毎の合計値を求めることで、総合事故リスクの度合いを将来の時刻毎に求める。
【0028】
予測結果記憶部36は、事故リスク算出部35によって算出された、将来における時系列に沿った予測結果(リスクの度合い)を記憶する。
データ送信部37は、事故リスク算出部35によって算出されたリスクの度合いを出力する。例えば、データ送信部37は、予測結果記憶部36に記憶されたリスクの度合いを中間サーバ40に送信する。送信される予測結果は、総合事故リスクだけでなく、要因毎のリスクの度合いや、監視対象の船舶と周囲のオブジェクトとの関係を示す表示データ等も含むことができる。
通信部38は、船舶情報収集装置10、環境情報収集装置20、中間サーバ40のそれぞれと通信可能に接続され、各種データの送信や受信を行う。
【0029】
中間サーバ40は、リスクの度合いに応じた表示態様で端末装置50の表示装置にリスクの度合いを表示する。表示態様としては、リスクの度合いに応じた色(緑、黄、赤等)や、文字(レベル1、レベル2等)であったり、ポップアップ画面を表示することであってもよいし、音を放音、ランプの点灯であってもよい。推定位置が最大移動範囲を超える場合に、リスクの度合いに応じた表示態様で端末装置50の表示装置に表示させる。
中間サーバ40は、船舶監視装置30において求められた予測結果を端末装置50に送信する。中間サーバ40は、船舶監視装置30に無線または有線によって通信可能に接続される。中間サーバ40は、予測結果記憶部41と設定値記憶部42とを有する。
【0030】
予測結果記憶部41は、船舶監視装置30のデータ送信部37から送信される予測結果を記憶する。
設定値記憶部42は、各種設定値を記憶する。設定値記憶部42は、例えば、注意のレベルに応じた基準値を記憶している。基準値はリスクの度合いがいずれのアラートレベルにあるかを判定するために用いられる基準値であり、1つであってもよいし、複数であってもよい。基準値が1つである場合には、基準値に基づいて、安全であるか否かを判定することができ、基準値が2つ(第1基準値、第2基準値)でありそれぞれ異なる値である場合には、複数の基準値との大小関係に基づいて、安全であるか注意相当のレベルであるか、危険相当のレベルであるかを判定することができる。基準値は3つ以上であってもよい。
【0031】
端末装置50は、例えばコンピュータであり、中間サーバ40に無線または有線によって通信可能に接続される。端末装置50は、スマートフォンまたはタブレットであってもよい。端末装置50が、スマートフォン、またはタブレットである場合、乗員が携帯して、船内における任意の位置において、予測結果を確認することができる。
端末装置50は、中間サーバ40から予測結果を受信し、予測結果を出力する。
端末装置50は、液晶表示装置が接続されており、予測結果を液晶表示装置に表示させることで出力をする。端末装置50は、事故リスク算出部35が算出する対象の要因毎にリスクの度合いを液晶表示装置における異なる表示領域に表示させる。
また、端末装置50は、予測結果に応じた音をスピーカから出力させるようにしてもよいし、予測結果に応じた光をランプによって点灯させるようにしてもよい。
端末装置50は、キーボードやマウス等の入力装置が接続されており、入力装置からの操作入力に応じて、船舶データ、錨・錨鎖データ、安全パラメータ等の入力を受け付ける。
【0032】
図2は、端末装置50の表示画面に表示される表示内容の一例を示す図である。
端末装置50に接続される表示装置の表示画面GM1は、表示領域R10と表示領域R20とを含む。
表示領域R10には、電子海図に対して、監視対象となる船舶とその周囲のオブジェクトとの関係を重ねて表示される表示領域である。ここでは、自船S0を表す図形が表示領域R10の略中央に表示される。自船S0を示す図形の向きは、船舶の船首が向く方向に応じた向きとして表示される。安全領域は、自船S0の位置基準として設定された領域であり、この範囲内については、安全領域の外部よりも注意を払うレベルが低い領域である。
この図では、自船S0の周囲において、オブジェクトとして橋桁BGと、岸壁GPと、他船S1とが図示されている。橋桁BGの周囲には、侵入禁止エリアRBGが表示され、岸壁GPの周囲には、侵入禁止エリアRGPが表示され、他船S1の周囲には、侵入禁止エリアRS1が表示されている。
【0033】
表示領域R20は、各種リスクが表示される領域である。表示領域R20には、総合事故リスク表示領域R21、走錨リスク表示領域R22、座礁リスク表示領域R23、他船衝突リスク表示領域R24、橋桁衝突リスク表示領域R25、岸壁衝突リスクR26が含まれる。
【0034】
図3は、表示領域R20に表示される画面の一例を示す図である。
総合事故リスク表示領域R21は、走錨リスクと、座礁リスクと、他船衝突リスクと、橋桁衝突リスクと、岸壁衝突リスクとを元に求められた総合事故リスクが表示される領域である。総合事故リスクは、走錨リスクと、座礁リスクと、他船衝突リスクと、橋桁衝突リスクと、岸壁衝突リスクの合計値であってもよい。
総合事故リスク表示領域R21には、横軸に将来の時間を表し、縦軸に総合事故リスクの度合いを表すグラフが表示される。
走錨リスク表示領域R22には、横軸に将来の時間を表し、縦軸に走錨リスクの度合いを表すグラフが表示される。
座礁リスク表示領域R23には、横軸に将来の時間を表し、縦軸に座礁リスクの度合いを表すグラフが表示される。
他船衝突リスク表示領域R24には、横軸に将来の時間を表し、縦軸に他船衝突リスクの度合いを表すグラフが表示される。
橋桁衝突リスク表示領域R25には、横軸に将来の時間を表し、縦軸に橋桁衝突リスクの度合いを表すグラフが表示される。
【0035】
次に、上述した船舶監視システムSの動作について説明する。
図4図10は、船舶監視システムS0の動作を説明するフローチャートである。
端末装置50は、船舶データ、鎖・錨鎖データ、安全パラメータの入力を受け付ける(ステップS101)。船舶データは、船舶情報収集装置10によって得られる緯度経度・船種情報、船速、風向・風速、船体の大きさ等の情報であり、鎖・錨鎖データは、錨鎖の長さ等の仕様を表し、安全パラメータは、侵入禁止エリアを定めるためのパラメータであり、構造物からの距離や、座礁しないような水深である。
中間サーバ40は、端末装置50から船舶データ、鎖・錨鎖データ、安全パラメータを取得し、船舶監視装置30に送信する。船舶監視装置30の通信部38は、中間サーバ40から送信される、船舶データ、鎖・錨鎖データ、安全パラメータを受信する。データベース31は、通信部38が受信した船舶データ、鎖・錨鎖データ、安全パラメータを記憶する。
通信部38は、一定時間毎に、船舶情報収集装置10から、自船S0の位置情報(緯度経度、船首方位)、船速、風向・風速、船体の大きさのデータを取得する(ステップS102)。通信部38によって受信されると、データベース31は、受信されたデータを記憶する。
【0036】
錨泊判定部33は、監視対象の船舶S0が錨泊している状態であるか否かを判定する。ここでは、データ補完部331が、自船S0の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速のデータをデータベース31から取得し、これらのセンサデータに欠落があれば、欠落値補完用データベース32からデータを読み出すことで補完する(ステップS103)。例えば、欠落したデータがある場合、データ補完部331は、過去のデータにおける緯度経度、船首方位、船速、風向、風速の組み合わせの時系列の傾向に基づいて、欠落している項目の値を推定することで補完する。
【0037】
錨泊状態判定エンジン332は、錨泊確率を求める(ステップS104)。そして、錨泊状態判定エンジン332は、求められた錨泊確率と、基準値との大小関係を判定することで、自船S0が錨泊状態であるか否かを判定する(ステップS105)。錨泊状態判定エンジン332は、錨泊確率が基準値を超えている場合には、錨泊していると判定し(ステップS105-YES)、処理をステップS106に進め、錨泊確率が基準値を超えていない場合には、錨泊していないと判定し(ステップS105-NO)、処理をS102に進める。
【0038】
錨泊していると判定されると、事故リスク算出部35のエリア算出部351は、錨鎖伸出量に対する最大移動距離を算出し(ステップS106)、最大移動距離に基づく最大移動範囲を算出する(ステップS107)。
【0039】
次に、エリア算出部351は、描画機能によって、最大運動範囲と任意に設定した侵入禁止範囲(以下、バリア)を求める(ステップS108)。
図5は、最大運動範囲とバリアを説明する図である。
この図において、最大移動距離L0は、上空から見た場合における、投錨された位置を示す投錨点ACから、錨鎖を最大まで伸ばした場合における船体の位置までの距離である。
最大運動距離L1は、最大移動距離L0に自船S0の船体の大きさを加えた距離である。
最大運動範囲RL1は、投錨点ACを中心とし、最大移動距離L0に船体の大きさ(全長)を加えた距離(最大運動距離L1)を半径として定まる範囲である。
エリア算出部351は、最大移動距離L0を、錨鎖を最大まで伸ばした場合の錨鎖の長さと、船舶の位置における水深とに基づいて求めることができる。また、エリア算出部351は、最大運動範囲RL1を、最大移動距離L0に船体の大きさ(全長)を加えた距離を求めた上で、投錨点ACを中心とし、この求められた距離を半径とした円を描画することで求める。
エリア算出部351は、最大移動距離L0を求め、自船S0の船体の大きさを加えることで最大運動距離L1を求め、投錨点ACを中心とした円を求めることで、最大運動範囲RL1を求める。また、ユーザーから入力装置から手入力により本船周辺に侵入してほしくないバリアRL2を描画できる。バリアRL2は、最大運動距離L1に対してバリア距離L2を加算した距離を半径とし、投錨点ACを中心とすることで求める。
【0040】
次に、エリア算出部351は、オブジェクトや地理的条件に対して安全パラメータを基準にして侵入禁止エリアを求める(ステップS109)。
ここで図6は、侵入禁止エリアを求める処理について説明する図である。
エリア算出部351は、各オブジェクトのそれぞれに対して、安全パラメータに基づいて侵入禁止エリアを求める。ここでは、オブジェクトとして、橋桁BG、岸壁GP、他船S1、暗礁SHがある。
エリア算出部351は、橋桁BGについて、橋桁BGの外形と橋桁BGの緯度経度を基に橋桁BGの位置と外形を特定し、その橋桁BGの外形を起点として安全パラメータに基づく距離LBGだけ離れた位置(領域)を求めることで、橋桁BGに対する侵入禁止エリアRBGを求める。侵入禁止エリアRBGは、この領域内に自船S0が侵入した場合に橋GPに対して衝突するリスクが高まることを表すエリアである。
エリア算出部351は、岸壁GPについて、岸壁GPの外形と岸壁GPの緯度経度を基に岸壁GPの位置と外形を特定し、その岸壁GPの外形を起点として安全パラメータに基づく距離LGPだけ離れた位置(領域)を求めることで、岸壁GPに対する侵入禁止エリアRGPを求める。侵入禁止エリアRGPは、この領域内に自船S0が侵入した場合に岸壁GPに対して衝突するリスクが高まることを表すエリアである。
エリア算出部351は、他船S1について、他船S1の船体の大きさと外形、緯度経度を基に他船S1の位置と外形を特定し、その他船S1の外形を起点として安全パラメータに基づく距離LS1だけ離れた位置(領域)を求めることで、他船S1に対する侵入禁止エリアRS1を求める。侵入禁止エリアRS1は、この領域内に自船S0が侵入した場合に他船S1に対して衝突するリスクが高まることを表すエリアである。
エリア算出部351は、暗礁SHについて、地形データと緯度経度を基に暗礁SHの位置と形状を特定し、暗礁の水深が定められた深さよりも浅い領域を特定する。その上で、エリア算出部351は、特定された領域の外周を起点として、安全パラメータに基づく距離だけ離れた位置(領域)を求めることで、暗礁SHに対する侵入禁止エリアRSHを求める。侵入禁止エリアRSHは、この領域内に自船S0が侵入した場合に暗礁SHに座礁するリスクが高まることを表すエリアである。
【0041】
各オブジェクトに対する侵入禁止エリアが求まると、エリア算出部351は、自船S0のバリアRL2から侵入禁止エリアを除外したエリアを安全領域として算出する(ステップS110)。
図7は、安全領域について説明する図である。
エリア算出部351は、バリアRL2から侵入禁止エリアのそれぞれを除外することで安全領域を算出する。
【0042】
次に図8を用いて、錨泊中における船舶の運動について説明する。
この図において、符号9Aは、投錨直後における錨ANと自船S0との関係を示す。錨ANを投錨した直後においては、自船S0の錨鎖出口から概ね真下に錨ANが位置する。その後、自船S0が外力を受けたことにより船舶に運動が生じると、符号9Bに示すように、錨鎖ACCは、その懸垂部においてカテナリーを描く形状となる。この形状は、カテナリー理論に基づいて求めることができる。
さらに外力を受け、錨ACから離れる方向に自船S0が運動した場合には、符号9Cに示すように、やがて錨鎖の伸出量が最大に達すると、錨ACと自船S0の真下の位置までの距離が最大移動距離MDに達する。そして、係駐力(把駐力)を超える外力が船舶に働き、錨ACが移動する状態となると走錨の危険性がある状態となり、走錨のリスクが高まる。例えば、風圧力が高くなることが推定された場合には、その風圧力を船体が受けた場合の自船S0の緯度経度が推定され、その緯度経度の位置によっては、走錨していることが推定される。
【0043】
図9は、推定された緯度経度に基づいて投錨点ACと自船S0の運動の軌跡との関係を示す図である。
符号10Aは、走錨が発生していない状態における自船S0の運動の軌跡を示す。この場合、軌跡trは、投錨点ACから一定の距離(最大移動距離MD)内に収まる。
符号10Bは、走錨が発生している場合の自船S0の運動の軌跡を示す。この場合、軌跡trは、投錨点ACから一定の距離(最大移動距離MD)よりも離れた位置まで到達している。特に、自船s0が投錨点acを起点にして弧を描くように運動していたが、ある時点から投錨点acから離れる方向へ概ね直線状に移動する場合が示されている。この場合、錨についても、自船s0とともに直線状に移動しているものと考えられる。
符号10Cは、走錨が発生している場合の自船S0の運動の軌跡を示す。この場合、軌跡trは、投錨点ACから一定の距離(最大移動距離MD)よりも離れた位置まで到達している。特に、自船s0が投錨点acを起点にして弧を描くように運動をしつつ、投錨点ACから離れていく場合が示されている。
符号10Dは、走錨が発生している場合の自船S0の運動の軌跡を示す。この場合、軌跡trは、投錨点ACから一定の距離(最大移動距離MD)よりも離れた位置まで到達している。特に、自船s0が運動する幅が符号10cに示すケースに比べて広くなっている。すなわち、投錨点ACを起点とした弧を描く運動だけでなく、投錨点ACから近づく方向への運動と投錨点ACから離れた方向への運動とが生じており、錨がほぼ外れ、自由度が、符号10Cに示すケースに比べて高い状態になっていると考えられる。
【0044】
次に、運動の予測結果が求まると、事故リスク算出部35は、要因毎にリスクを算出する。要因には、例えば、走錨、他船衝突、構造物に対する衝突(岸壁衝突、橋桁衝突)、地理条件(座礁等)等がある。
事故リスク算出部35の要因別リスク算出部352は、推定された運動軌跡に基づいて、走錨距離に対するリスク度を算出する(ステップS114)。要因別リスク算出部352は、自船S0について、推定された将来の時系列の運動軌跡(位置の時系列データ)が、安全領域の範囲外である区間について、リスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。また、要因別リスク算出部352は、推定された将来の時系列の運動軌跡のうち、安全領域の範囲から離れるほどリスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。中間サーバ40は、求められた走錨距離に対するリスクの度合いを、例えば、上述した図3符号R22に示すようなグラフによって、端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0045】
次に、要因別リスク算出部352は、衝突判定アルゴリズムを用いて、他船との衝突リスクを求める(ステップS115)。要因別リスク算出部352は、OZT(ObstacleZone by Target,航行妨害ゾーン)、DAC(Dangerous Area of Collision,衝突危険範囲)等の衝突計算アルゴリズムを用い、自船S0の将来における他船との衝突リスクが求められた結果を用いるようにしてもよい。要因別リスク算出部352求められた将来における他船との衝突が生じる可能性が高いほど、他船との衝突リスクが高くなるように求めることができる。中間サーバ40は、求められた他船との衝突リスクの度合いを、例えば、上述した図3符号R24に示すようなグラフによって、端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0046】
次に、要因別リスク算出部352は、岸壁までの距離に基づいて、岸壁衝突リスクを求める(ステップS116)。例えば、要因別リスク算出部352は、自船S0について、推定された将来の時系列の運動軌跡が、岸壁GPに対して設定された侵入禁止エリアRGPの範囲内に入る場合には、推定位置がその侵入エリアの中心に近いほど、リスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。
また、要因別リスク算出部352は、推定された将来の時系列の運動軌跡が、侵入禁止エリアRGPの範囲内であって、岸壁GPに近い位置であるほどリスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。中間サーバ40は、求められた岸壁衝突リスク度を、例えば、上述した図3符号R26に示すようなグラフによって、端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0047】
次に、要因別リスク算出部352は、橋桁までの距離に基づいて、橋桁衝突リスクを求める(ステップS117)。例えば、要因別リスク算出部352は、自船S0について、推定された将来の時系列の運動軌跡が、橋桁BGに対して設定された侵入禁止エリアRBGの範囲内に入る場合には、リスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。
また、要因別リスク算出部352は、推定された将来の時系列の運動軌跡が、侵入禁止エリアRBGの範囲内であって、橋桁BGに近い位置であるほどリスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。中間サーバ40は、求められた橋桁衝突リスク度を、例えば、上述した図3符号R25に示すようなグラフによって端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0048】
次に、要因別リスク算出部352は、地形データに基づく水深と、自船S0の将来の時系列の運動軌跡とに基づいて、地理条件に基づくリスク(座礁リスク)を求める(ステップS118)。例えば、要因別リスク算出部352は、自船S0について、推定された将来の時系列の運動軌跡における位置が、暗礁SHに対して設定された侵入禁止エリアRSHの範囲内に入る場合には、リスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。
また、要因別リスク算出部352は、推定された将来の時系列の運動軌跡が、侵入禁止エリアRSHの範囲内であって、暗礁SHに近づくほどリスクの度合いが高くなるように時系列の時刻毎に求める。中間サーバ40は、求められた座礁リスク度を、例えば、上述した図3符号R23に示すようなグラフによって、端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0049】
要因別リスク算出部352によって各要因についてのリスクが算出されると、総合事故リスク算出部353は、各要因について算出されたリスクに基づいて、総合事故リスクを求める(ステップS119)。例えば、総合事故リスク算出部353は、各要因のリスク度について将来における時刻毎の合計値を求めることで、総合事故リスク度を将来の時刻毎に求める。中間サーバ40は、求められた総合事故リスク度を、例えば、上述した図3符号R21に示すようなグラフによって、端末装置50の表示装置に表示させることができる。
【0050】
総合事故リスク度が算出されると、事故リスク算出部35は、要因毎のリスク度と総合事故リスク度を予測結果として予測結果記憶部36に書き込む。データ送信部37は、予測結果記憶部36に予測結果が書き込まれると、中間サーバ40に予測結果を送信する。中間サーバ40は、データ送信部37から送信された予測結果を予測結果記憶部41に記憶し、設定値記憶部42に記憶された設定値に基づいて、端末装置50の表示装置に表示させるための表示データを生成し、端末装置50に送信する。
【0051】
ここでは、中間サーバ40は、リスクの度合いと基準値とを比較することで、アラートレベルのいずれに該当するかを判定する。中間サーバ40は、要因毎のリスクの度合いと、総合事故リスク度とのそれぞれについて、項目毎に基準値を記憶しており、その項目に応じた基準値との大小関係を判定することで、項目毎に、アラートレベルを判定する(ステップS120)。例えば、中間サーバ40は、設定値記憶部42に記憶された、総合事故リスク度の判定に用いる総合第1基準値と、総合第1基準値よりも大きな値である総合第2基準値とを読み出し、総合事故リスク度との大小関係を判定する。
【0052】
中間サーバ40は、現在から将来の所定時間内において、総合事故リスク度が、総合第1基準値に達しているか否かを判定し、達していない場合には、アラートレベルが安全相当であると判定する(ステップS121)。この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における総合事故リスク度表示領域R21の背景の色を緑色によって表示させる。
一方、中間サーバ40は、総合事故リスク度が、総合第1基準値に達している場合には、総合事故リスク度が総合第2基準値に達しているか否かを判定し、総合第2基準値に達していない場合には、アラートレベルが注意相当であると判定する(ステップS122)。
この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における総合事故リスク度表示領域R21の背景の色を黄色によって表示させる。
一方、中間サーバ40は、総合事故リスク度が、総合第2基準値に達している場合には、アラートレベルが危険相当であると判定する(ステップS123)。この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における総合事故リスク度表示領域R21の背景の色を赤色によって表示させる。
このように中間サーバ40は、アラートレベルに応じて、表示領域の表示態様を異なる表示態様で表示させる。
【0053】
ここで、中間サーバ40は、総合事故リスク度について基準値との大小関係を判定する場合について説明したが、走錨リスク、座礁リスク、他船衝突リスク、橋桁衝突リスク、岸壁衝突リスクのそれぞれについても同様に、基準値との大小関係を判定し、判定結果に応じたアラートレベルに基づく表示態様で表示領域を表示させてもよい。
例えば、中間サーバ40は、走錨リスクについては、走錨リスク度の判定に用いる走錨第1基準値と、走錨第1基準値よりも大きな値である走錨第2基準値とを読み出し、走錨リスク度との大小関係を判定する。
中間サーバ40は、現在から将来の所定時間内において、走錨リスク度が、走錨第1基準値に達しているか否かを判定し、達していない場合には、アラートレベルが安全相当であると判定する。この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における走錨リスク度表示領域R22の背景の色を緑色によって表示させる。
一方、中間サーバ40は、走錨リスク度が、走錨第1基準値に達している場合には、走錨リスク度が走錨第2基準値に達しているか否かを判定し、走錨第2基準値に達していない場合には、アラートレベルが注意相当であると判定する。
この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における走錨リスク度表示領域R22の背景の色を黄色によって表示させる。
一方、中間サーバ40は、走錨リスク度が、走錨第2基準値に達している場合には、アラートレベルが危険相当であると判定する。この場合、中間サーバ40は、端末装置50の表示画面における走錨リスク度表示領域R22の背景の色を赤色によって表示させる。
このように中間サーバ40は、アラートレベルに応じて、要因に応じた表示領域の表示態様を異なる表示態様で表示させる。
【0054】
また、中間サーバ40は、座礁リスク、他船衝突リスク、橋桁衝突リスク、についても同様にアラートレベルの判定を行う。アラートレベルが注意相当または危険相当である場合には、表示領域R20における項目毎の表示領域の表示態様を変えることとは別に、表示領域R10における侵入禁止エリアの領域を、アラートレベルに応じた色で表示するようにしてもよい。
【0055】
これらの表示制御が行われると、処理はステップS102に移行する。
【0056】
船舶情報収集装置10は、一定時間毎に監視対象の船舶に関する最新の情報を船舶監視装置30へ送信する。船舶監視装置30は、監視対象の船舶に関する情報を一定時間毎に取得し、これに基づいて、ステップS102以降の処理が実行される。
【0057】
以上説明した実施形態において、自船S0が錨泊するが走錨していない場合であっても、上述の処理を行うことで、走錨していない場合における各種リスクを判定し、出力することもできる。自船S0が停泊している場合には、いわゆる錨泊による振れまわりの挙動が生じないが、錨泊をしている場合には、錨による係駐力(把駐力)が生じるため、錨泊をしていない場合とは船舶の挙動(運動)が異なる。そのため、本実施形態によれば、錨泊をしている場合には、錨泊をしていない場合とは別の観点からリスクを管理することができる。また、走錨する可能性が生じた場合であっても、その走錨した場合を想定したリスクを管理することができる。
【0058】
また、以上説明した実施形態において、監視対象として船舶は、自動運航船あるいは自律船と呼ばれる、乗員が直接操船することなく運航可能な船舶であってもよい。この場合、例えば船舶に乗員が搭乗しないシステムであっても、錨泊前及び錨泊中の船舶の船体運動を推定して走錨などによる錨泊事故リスクを評価することができる。
【0059】
なお、上述の実施形態において、船舶監視システムSを、自船を監視する場合に利用する場合について説明したが、陸上における監視所において利用するようにしてもよい。この場合、端末装置50は、監視所に設けられ、港湾等を航行する複数の船舶について、リスクの関する予測結果を表示するようにしてもよい。
【0060】
上述した実施形態において、船舶監視装置30が予測結果を中間サーバ40に送信し、中間サーバ40が、端末装置50の表示装置に対して予測結果(リスクの度合い)を表示させる場合について説明したが、中間サーバ40の機能を船舶監視装置30に設け、1つの装置として構成するようにしてもよい。また、中間サーバ40の機能を端末装置50に設けるようにしてもよい。
【0061】
上述したデータベース31、欠落値補完用データベース32、予測結果記憶部36、予測結果記憶部41、設定値記憶部42は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
これらデータベース31、欠落値補完用データベース32、予測結果記憶部36、予測結果記憶部41、設定値記憶部42は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
錨泊判定部33、運動予測部34、事故リスク算出部35、データ送信部37は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0062】
上述した実施形態における錨泊判定部33、運動予測部34、事故リスク算出部35、データ送信部37、通信部38をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0063】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0064】
10…船舶情報収集装置、20…環境情報収集装置、30…船舶監視装置、31…データベース、32…欠落値補完用データベース、33…錨泊判定部、34…運動予測部、35…事故リスク算出部、36…予測結果記憶部、37…データ送信部、38…通信部、40…中間サーバ、41…予測結果記憶部、42…設定値記憶部、50…端末装置、331…データ補完部、332…錨泊状態判定エンジン、341…外力推定部、342…運動推定エンジン、351…エリア算出部、352…要因別リスク算出部、353…総合事故リスク算出部、S…船舶監視システム
図1
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