(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182183
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】船舶監視装置、船舶監視方法
(51)【国際特許分類】
G08G 3/00 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
G08G3/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095652
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】鹿志村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】渡来 保奈美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茉莉
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA25
5H181BB05
5H181BB20
5H181EE14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF33
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】錨泊に関する情報入力を支援することができる船舶監視装置を提供する。
【解決手段】船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを取得する取得部と、前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊しているか否かを判定する錨泊判定部と、前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する出力部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを取得する取得部と、
前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊しているか否かを判定する錨泊判定部と、
前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する出力部と、
を有する船舶監視装置。
【請求項2】
前記錨泊判定部は、
前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊している確率を示す錨泊確率を推定する確率推定部を有し、
前記錨泊確率が基準値以上であるか否かを判定する
を有する請求項1に記載の船舶監視装置。
【請求項3】
前記錨泊判定部は、
前記運動データに含まれる船速が基準速度未満であるか否かを判定し、前記船速が基準速度未満である場合に、前記船舶が錨泊しているか否かを判定する
請求項2に記載の船舶監視装置。
【請求項4】
前記確率推定部は、前記運動データと前記環境データと前記位置情報とを決定木における説明変数として用い、当該決定木から錨泊確率を得る
請求項3に記載の船舶監視装置。
【請求項5】
前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、前記船舶の監視者が視認可能な表示装置に、錨泊していることを示す通知を表示させる通知部と、
を有する請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の船舶監視装置。
【請求項6】
船舶監視装置に実行させる船舶監視方法であり、
取得部が、船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを取得し、
錨泊判定部が、前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊しているか否かを判定し、
出力部が、前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する
船舶監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶監視装置、船舶監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
AIS(船舶自動識別装置)を搭載した船舶の運航者は、AISの目的地情報欄に、必要に応じて各種情報を入力している。例えば、船舶が錨泊している場合、運航者は、錨泊していることを表すコードを目的地情報欄に入力する。これにより、船舶が錨泊中であることを、他船や陸上監視所に対して周知することができる。
【0003】
船舶を運航するにあたり、各種有益な情報を表示することで、運航事業者に対して安全性向上のための各種情報を表示するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、経験の浅い船員やヒューマンエラー等により、AISへの情報入力を正しく行うことができなかった場合には、船舶の錨泊意思を伝達できない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、錨泊に関する情報入力を支援することができる船舶監視装置、船舶監視方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを取得する取得部と、前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊しているか否かを判定する錨泊判定部と、
前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する出力部と、を有する。
【0008】
また、本発明の一態様は、船舶監視装置に実行させる船舶監視方法であり、取得部が、船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを取得し、錨泊判定部が、前記取得された運動データと、前記環境データと前記位置情報とに基づいて、前記船舶が錨泊しているか否かを判定し、出力部が、前記判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する船舶監視方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、錨泊に関する情報入力を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の一実施形態による船舶監視装置を用いた船舶監視システムSの構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】船舶監視装置30の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】クライアントPC40に接続された表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による船舶監視装置について図面を参照して説明する。
図1は、この発明の一実施形態による船舶監視装置を用いた船舶監視システムSの構成を示す概略ブロック図である。
船舶監視システムSは、船舶情報収集装置10、通信インタフェース(I/F)20、船舶監視装置30、クライアントPC40、AIS(船舶自動識別装置)50を含む。
【0012】
船舶情報収集装置10は、GPS(Global Positioning System)11、速度計12、風向風速計13を有する。
船舶情報収集装置10は、船舶監視装置30に対して通信I/F20を介して通信可能に接続される。
船舶情報収集装置10は、監視対象の船舶に関する船舶関連情報を収集する。
船舶関連情報は、例えば、船舶の運動状態が検出された運動データと、船舶の周囲の環境を検出した環境データと、船舶の位置を表す位置情報とを含む。運動データは、船舶の運動状態を表すデータであり、例えば、船首方位、船速等を含む。環境データは、船舶の周囲の環境を表すデータであり、例えば、風況(風向、風速)等を含む。位置情報は、監視対象の船舶の位置を表すデータであり、例えば緯度、経度等を含む。
【0013】
船舶情報収集装置10は、運動データと位置情報について、監視対象である船舶に搭載されたGPS11から取得する。GPS11は、監視対象である船舶の位置と船首方位を測位する。
船舶情報収集装置10は、船速については、速度計12から取得する。速度計12は、監視対象の船舶の船速を測定する。
船舶情報収集装置10は、運動データと位置情報について、監視対象である船舶に搭載されたAIS(Automatic Identification System)から取得するようにしてもよい。船舶情報収集装置10は、風況については、風向風速計13から取得する。風向風速計13は、監視対象である船舶に搭載され、当該船舶の周囲の風向と風速を測定する。船舶情報収集装置10は、収集した各種情報を無線または有線によって船舶監視装置30に送信する。
【0014】
通信I/F20は、船舶情報収集装置10と船舶監視装置30とを通信可能に接続する。
【0015】
船舶監視装置30は、取得部31、データベース32、欠落値補完部33、錨泊判定部34、推定結果出力部35を有する。
船舶監視装置30は、船舶に搭載されることで、当該船舶において自船を管理するために用いることができる。この実施形態においては、監視対象の船舶に船舶監視装置30が搭載され、当該船舶の乗員が自船を監視する場合を一例として説明する。
ここで、監視対象となる船舶については、乗員によって操船される船舶であってもよいし、自動運航船あるいは自律船と呼ばれる、乗員が直接操船することなく運航可能な船舶であってもよい。自動運航船等を監視する場合、自動運航船等に乗員が乗船している場合には、船舶監視装置30を当該自動運航船等に設け、乗員が表示内容(推定結果)を確認するようにしてもよいし、自動運航船等に乗員が乗船しない場合には、船舶監視装置30を監視所に設け、監視員が表示内容(推定結果)を確認するようにしてもよい。
取得部31は、船舶の運動状態が検出された運動データと、前記船舶の周囲の環境を検出した環境データと、前記船舶の位置を表す位置情報とを、船舶情報収集装置10から取得する。
【0016】
データベース32は、各種データを記憶する。例えばデータベース32は、船舶情報収集装置10から取得したデータを記憶する。
【0017】
欠落値補完部33は、取得部31によって取得された各種データ(緯度経度、船首方位、船速、風向、風速等)について、欠落値があるか否かを判定し、欠落値がある場合にはデータベース32に記憶されたデータに基づいて、欠落した項目の値を推定することで補完する。欠落値補完部33は、欠落値を補完する場合、データベース32に記憶された、過去の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速の組み合わせの時系列の傾向に基づいて、欠落値がある項目の値を推定することで補完する。欠落した値の補完は、過去の平均値を用いてもよい。
欠落値補完部33が、欠落値を補完することによって、後述する決定木分析エンジン341における学習の処理を行うことができる。
【0018】
錨泊判定部34は、取得された運動データと、環境データと、位置情報とに基づいて、船舶が錨泊しているか否かを判定する。
錨泊判定部34は、例えば、判定対象の船舶の緯度経度、船首方位、船速、風向、風速の関係に基づいて、船舶の運動状態を推定し、推定された船舶の運動状態が錨泊している状態に合致する場合には、錨泊していると推定し、合致しない場合には錨泊していないと推定する。錨泊する場合には、船速を減速し、周囲の風速が速い、船首の向きを風上みに向ける等の状態があるため、その傾向に基づいて、錨泊をしようとしているか否かあるいは錨泊したことを推定することができる。また、錨泊している場合には、船舶の位置の履歴が投錨点を基準として一定範囲内に収まる傾向にあるため、その傾向や風速、風向等の関係に基づいて、錨泊しているか否かを推定することができる。錨泊判定部34は、決定木分析エンジン341を有しており、船舶が錨泊しているか否かを判定するにあたり、決定木分析エンジン341によって判定することができる。
【0019】
決定木分析エンジン341は、取得された運動データと、環境データと、位置情報とに基づいて、船舶が錨泊している確率を示す錨泊確率を推定する確率推定部として機能する。
決定木分析エンジン341は、決定木を利用して錨泊確率を求める機能をしており、運動データと環境データと位置情報とを決定木における説明変数として用い、当該決定木から錨泊確率を得る。説明変数として用いる値は、欠落値がある場合には、欠落値補完部33によって補完された後の値を用いることができる。
決定木分析エンジン341は、得られた錨泊確率が確率基準値以上であるか否かを判定し、錨泊確率が確率基準値以上であると判定された場合に、錨泊していると推定し、錨泊確率が確率基準値未満であると判定された場合に、錨泊していないと推定する。この確率基準値は任意の値を用いることができる。この確率基準値は、オペレータ等によって入力装置から入力されることで設定されてもよい。
【0020】
学習済みモデル342は、船舶の状態を表すデータ(運動データ、環境データ、位置情報を含むデータ)と、船舶が錨泊しているか否かとの関係を学習した学習済みモデルである。例えば、この学習済みモデル342は、決定木モデル用いることができる。また、学習済みモデル342は、機械学習やディープラーニングによって学習されたモデルであってもよい。
学習済みモデル342は、船舶の状態を表すデータに対して、船舶が錨泊しているか否かを表すラベルを付した教師データを準備し、これを学習エンジン(学習装置)に入力することで学習させ、学習済みモデルを得る。
【0021】
錨泊判定部34は、運動データに含まれる船速が基準速度以下であるか否かを判定し、船速が基準速度以下である場合に、船舶が錨泊しているか否かを決定木分析エンジン341によって判定し、船速が基準速度を超えている場合に、船舶が錨泊しているか否の判定を行わないようにすることができる。
【0022】
推定結果出力部35は、判定された結果において錨泊していると判定された場合に、錨泊していることを表す情報を出力する出力部としての機能を有する。推定結果出力部35は、錨泊していることを表す情報を通信I/F20を介してAIS50に出力することで、錨泊していることを表す情報をAIS信号(Ship Static data)に含めてAIS50から送信させる。
推定結果出力部35は、錨泊判定部34よって判定された結果において、錨泊していると判定された場合に、船舶の監視者が視認可能な表示装置(例えば、クライアントPC40)に、錨泊していることを示す通知を表示させる通知機能を有する。
これにより、推定結果出力部35は、錨泊中と判断された場合、錨泊状態であることをクライアントPC40ユーザーに通知し、AIS50に対してはAISメッセージとしてNavigation Statusの自動入力を行わせる。
【0023】
クライアントPC40は、通信I/F20を介して船舶情報収集装置10と船舶監視装置30とAIS50とに通信可能に接続される。クライアントPC40には、表示装置と入力装置とが接続される。
クライアントPC40は、船舶監視装置30から出力される各種情報を表示装置に表示させる。
また、クライアントPC40は、入力装置からの入力を受け付ける。入力装置は、例えばキーボードやマウス等の入力デバイスである。
クライアントPC40は、端末装置であればよく、例えば、スマートフォンまたはタブレットであってもよい。クライアントPC40の機能をスマートフォンまたはタブレットによって実現する場合、船舶の乗員が携帯し、船内における任意の位置において、予測結果を確認することができる。
【0024】
AIS50は、通信I/F20を介して、船舶情報収集装置10と船舶監視装置30とクライアントPC40とに通信可能に接続される。AIS50は、船舶監視装置30の推定結果出力部35から錨泊状態であることを表す情報を取得した場合に、錨泊していることを表すコードを含むAIS信号を送信する。AIS50は、錨泊していることを表すコードを含むAIS信号を、運航者からの指示を入力してもらうことなく送信する。また、AIS50は、船舶監視装置30から錨泊状態であることを表す情報がクライアントPC40に出力された後、その情報を確認した運航者によって、クライアントPC40またはAIS50に設けられた入力装置から、錨泊していることを表すコードを含むAIS信号を送信する指示が入力された場合に、錨泊していることを表すコードを含むAIS信号を送信するようにしてもよい。
【0025】
図2は、船舶監視装置30の動作を説明するフローチャートである。
船舶監視装置30は、入力装置からの操作入力に応じて錨泊している確率の基準値を、所定の記憶領域に記憶する(ステップS101)。
取得部31は、通信I/F20を介して船舶情報収集装置10から運動データと、環境データと、位置情報とを取得する(ステップS102)。
【0026】
取得部31によって各種データが取得されると、欠落値補完部33は、取得されたデータに欠落があるか否かを判定し(ステップS103)、欠落値がなければ(ステップS103-NO)、ステップS105に処理を進め、欠落値があれば(ステップS103-YES)、処理をステップS104に進める。
欠落値補完部33は、欠落値がある場合、データベース32を参照し、欠落値を補完する(ステップS104)。
【0027】
次に、錨泊判定部34は、運動データに含まれる船速が基準速度以下であるか否かを判定する(ステップS105)。錨泊判定部34は、船速が基準速度以下である場合(ステップS105-YES)、処理をステップS106に進め、船速が基準速度を超えている場合(ステップS105-NO)、処理をステップS102に進める。
錨泊判定部34は、船速が基準速度以下である場合、取得部31によって得られた運動データと、環境データと、位置情報とを説明変数として決定木分析エンジン341に入力する(ステップS106)。ここで、欠落値があったためデータが補完されていれば、その補完されたデータを説明変数として入力する。
決定木分析エンジン341は、入力された運動データと、環境データと、位置情報を用いて、錨泊確率を求め(ステップS107)、得られた錨泊確率が確率基準値を超えている場合(ステップS108-YES)には処理をステップS109に進め、錨泊確率が確率基準値未満である場合(ステップS108-NO)には、処理をステップS112に進める。
【0028】
決定木分析エンジン341は、得られた錨泊確率が確率基準値を超えている場合には、錨泊中であると判定し(ステップS109)、判定結果を推定結果出力部35に出力する。推定結果出力部35は、錨泊中であると判定された結果を受けると、錨泊していることを示す通知をクライアントPC40に通知する(ステップS110)。これにより、クライアントPC40に接続された表示装置には、「錨泊」であることが表示される。
そして推定結果出力部35は、錨泊していることを表す情報を通信I/F20を介してAIS50に推定結果として出力することで、錨泊していることを表す情報をAIS信号に含めてAIS50から送信させる。AIS50は、例えば、Navigation Statusの値を「1」としてAIS信号を送信する(ステップS111)。これにより、自船が錨泊していることを他船等へ通知することができる。そして船舶監視装置30は、一定のウエイト時間が経過した後、処理をステップS102に移行する。
【0029】
一方、ステップS108において、錨泊確率が確率基準値未満である場合、推定結果出力部35は、「非錨泊」であることを示す推定結果をクライアントPC40に通知する(ステップS112)。これにより、クライアントPC40に接続された表示装置には、「非錨泊」であることが表示される。そして船舶監視装置30は、一定のウエイト時間が経過した後、処理をステップS102に移行する。
【0030】
図4は、クライアントPC40に接続された表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
表示画面においては、自船の位置を示す表示領域R1には、自船の履歴が表示される。ここでは、所定時間前の段階における自船の位置が示されており(符号400)。その位置から現在における自船の位置(符号410)までの一定時間毎の履歴が表示される。また、自船の位置の近傍には、その位置が計測された時点において推定された錨泊確率が表示される。ここでは、符号400に示す位置において、自船の錨泊確率は33%であり、符号410に示す現在の位置において、自船の錨泊確率が92%であることが表示されている。そして、錨泊確率が確率基準値を超えた場合には、この表示画面上に「錨泊していると推定されます」等の文字列が表示される(符号430)。ここでは、「錨泊または非錨泊の状態がAISの目的地情報欄に正しく入力されていますか」のように、目的地情報欄への入力が正しいか否かの確認を促すメッセージを表示するようにしてもよい。これにより、船舶の管理者や運航者は、錨泊しているか否かの船舶の状態と、目的地情報欄に入力されたデータとが整合するように入力状態を設定することができる。
また、表示画面におけるステータス表示領域R2は、自船に関する各種情報が表示される。ここでは、錨泊確率を表示する表示欄(符号420)には、「錨泊/非錨泊 92%」として表示され、錨泊確率が表示される。
【0031】
このような表示画面において、クライアントPC40を見る管理者は、錨泊している確率を確認することで、錨泊確率を元に、錨泊しているか否かを確認することができる。また、設定された確率基準値によってはAIS50において推定結果出力部35から錨泊していることを示す情報が出力されない場合があるが、クライアントPC40を見る管理者は、表示された錨泊確率がある程度高い値を示している場合には、その数値を見たことによって、錨泊していたことを認識し、AIS50に対して、錨泊していることを表すコードを目的地情報欄に入力する。これにより、船舶が錨泊していることをAIS信号によって送信することができる。また、錨泊しているか否かについて目的地情報欄に対する入力ミスがあったとしても、錨泊確率等を確認することで、入力値が正しいか否かを確認し、必要に応じて入力をし直すこともできる。
【0032】
以上説明した実施形態によれば、船舶の運動状態や周囲の環境に基づいて、船舶が錨泊しているか否かを判定し、錨泊していると判定された場合には、AISによって錨泊していることを送信するようにした。これにより、船舶の運航者がAISの目的地情報欄に錨泊していることを入力していなかったとしても、錨泊していることを外部に通知することができ、錨泊に関する情報入力を支援することができる。
【0033】
また、以上説明した実施形態によれば、錨泊をする前の船体運動または錨泊した後の船体運動のうち少なくともいずれか一方のデータに基づいて、管理者等の人が介入することなく、船舶監視装置30が錨泊の有無を自動で判断し、周知することが可能となる。
【0034】
なお、上述の実施形態において、船舶監視装置30を、自船を監視する場合に利用する場合について説明したが、陸上における監視所において利用するようにしてもよい。この場合、クライアントPC40は、監視所に設けられ、港湾等を航行する複数の船舶について、リスクの関する予測結果を表示するようにしてもよい。
なお、船舶監視装置30とクライアントPC40は、同じ場所に設けなくてもよい。例えば、船舶監視装置30がインターネット等のネットワーク上に接続され、クライアントPC40が船舶または陸上の監視所に設けられるようにしてもよい。これにより、船舶監視装置30が実行する機能を、ネットワークを介したサービスとして提供することができる。この場合、船舶監視装置30は、クラウドサーバとして設けられるようにしてもよい。
【0035】
以上説明した実施形態において、船舶監視装置30は、監視対象の船舶に搭載される場合について説明したが、船舶監視装置30を、陸上に設けられた監視所や、船舶を管理する管理会社等に設けるようにしてもよい。この場合、錨泊していると船舶監視装置30において判定された場合には、その判定結果を管理者が確認し、錨泊していると推定されることを、周囲の他船に周知する等の対応するようにしてもよい。
また、船舶監視装置30は、1台のコンピュータであってもよいし、クラウドサーバであってもよい。
【0036】
上述したデータベース32は、記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
データベース32は、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
欠落値補完部33、錨泊判定部34、推定結果出力部35は、例えばCPU(中央処理装置)等の処理装置若しくは専用の電子回路で構成されてよい。
【0037】
上述した実施形態における欠落値補完部33、錨泊判定部34、推定結果出力部35をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0038】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10…船舶情報収集装置、12…速度計、13…風向風速計、20…通信インタフェース、30…船舶監視装置、31…取得部、32…データベース、33…欠落値補完部、34…錨泊判定部、35…推定結果出力部、341…決定木分析エンジン、342…学習済みモデル、S…船舶監視システム