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特開2023-182185モータ用ワイヤレス給電装置、モータ駆動システム、車両用ワイヤレス給電システムおよび車々間給電システム
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  • 特開-モータ用ワイヤレス給電装置、モータ駆動システム、車両用ワイヤレス給電システムおよび車々間給電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182185
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】モータ用ワイヤレス給電装置、モータ駆動システム、車両用ワイヤレス給電システムおよび車々間給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20231219BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20231219BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20231219BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J7/00 303C
H02M3/28 Q
B60L53/122
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095655
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エサキムトゥパンダラコンシリナータン
(72)【発明者】
【氏名】矢次 健一
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 英男
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA04
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA11
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB06
5G503GB08
5H105AA20
5H105BB05
5H105CC02
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H105GG04
5H125AA01
5H125AC04
5H125AC12
5H125AC25
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE02
5H125DD02
5H125EE61
5H730AS13
5H730BB26
5H730BB61
5H730EE04
5H730EE07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、モータに電力を伝送するワイヤレス給電装置について、モータまたはその周辺回路の状態を安定化することである。
【解決手段】ワイヤレス給電装置10は、モータMTに電力を供給する受電共振回路2にワイヤレス、すなわち非接触で結合する給電共振回路1を備えている。また、ワイヤレス給電装置10は、スイッチングによって給電共振回路1に電力を供給するスイッチング電源20を備えている。ワイヤレス給電装置10は、さらに、給電共振回路1に結合する制御部3を備えている。制御部3は、帰還部16および位相調整部18から構成され、給電共振回路1における電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、スイッチング電源20をスイッチングさせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに電力を供給する受電共振回路に非接触で結合する給電共振回路と、
前記給電共振回路にスイッチングによって電力を供給するスイッチング電源と、
前記給電共振回路に結合し、前記給電共振回路における電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、前記スイッチング電源をスイッチングする制御部と、を備えることを特徴とするモータ用ワイヤレス給電装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ用ワイヤレス給電装置であって、
前記制御部は、
前記給電共振回路に結合する帰還インダクタを備え、
前記スイッチング電源は、
前記帰還インダクタにおける電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、前記スイッチング電源をスイッチングするスイッチング回路を備えることを特徴とするモータ用ワイヤレス給電装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ用ワイヤレス給電装置であって、
前記制御部は、
前記帰還インダクタにおける電圧または電流に応じた帰還信号を生成する帰還部と、
前記帰還信号の位相を調整する位相調整部と、を備え、
前記スイッチング回路は、
位相が調整された前記帰還信号に基づいて、前記給電共振回路における電流または電圧をオンオフすることを特徴とするモータ用ワイヤレス給電装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ用ワイヤレス給電装置と、
前記受電共振回路と、前記モータと、前記受電共振回路から出力される電力を前記モータに供給する電力変換回路と、を備えることを特徴とするモータ駆動システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ用ワイヤレス給電装置を複数備える車両用ワイヤレス給電システムであって、
複数の前記モータ用ワイヤレス給電装置が、道路に沿って配置されていることを特徴とする車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項6】
電動車両に搭載された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ用ワイヤレス給電装置と、
インホイールモータと共に前記電動車両のホイールに設けられ、前記モータ用ワイヤレス給電装置から給電された電力を取得するワイヤレス受電装置と、を備え、
前記ワイヤレス受電装置は、
前記インホイールモータに電力を供給することを特徴とする車両用ワイヤレス給電システム。
【請求項7】
車々間給電システムであって、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ用ワイヤレス給電装置が、複数の電動車両のそれぞれに搭載され、
各前記電動車両には、他の前記電動車両に搭載された前記モータ用ワイヤレス給電装置から給電された電力を取得するワイヤレス受電装置が搭載され、
複数の前記電動車両の相互間で電力の授受を行うことを特徴とする車々間給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ用ワイヤレス給電装置、モータ駆動システム、車両用ワイヤレス給電システムおよび車々間給電システムに関し、特に、モータへのワイヤレス給電に関する。
【背景技術】
【0002】
給電装置から負荷装置に非接触で電力を供給するワイヤレス給電システムにつき広く研究開発が行われている。ワイヤレス給電システムには、給電装置に設けられた共振回路と、負荷装置に設けられた共振回路とを非接触で結合させ、これらの共振回路を共鳴させることで給電装置から負荷装置に電力を供給するものがある。以下の特許文献1および2には、このようなワイヤレス給電に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-164294号公報
【特許文献2】特開2017-005790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイヤレス給電システムでは、負荷装置の共振回路に接続された負荷回路の状態が変化したときに、給電装置の共振回路と、負荷装置の共振回路の共振状態が変化し、負荷装置に印加される電圧や負荷装置に流れる電流が変動してしまうことがある。例えば、負荷装置にモータが含まれている場合には、モータの回転数や負荷の変動によって、モータに接続される電気回路における電圧または電流が変動し、モータまたはその周辺回路の状態が不安定となってしまうことがある。
【0005】
本発明の目的は、モータに電力を伝送するワイヤレス給電装置について、モータまたはその周辺回路の状態を安定化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モータに電力を供給する受電共振回路に非接触で結合する給電共振回路と、前記給電共振回路にスイッチングによって電力を供給するスイッチング電源と、前記給電共振回路に結合し、前記給電共振回路における電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、前記スイッチング電源をスイッチングする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
望ましくは、前記制御部は、前記給電共振回路に結合する帰還インダクタを備え、前記スイッチング電源は、前記帰還インダクタにおける電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、前記スイッチング電源をスイッチングするスイッチング回路を備える。
【0008】
望ましくは、前記制御部は、前記帰還インダクタにおける電圧または電流に応じた帰還信号を生成する帰還部と、前記帰還信号の位相を調整する位相調整部と、を備え、前記スイッチング回路は、位相が調整された前記帰還信号に基づいて、前記給電共振回路における電流または電圧をオンオフする。
【0009】
望ましくは、前記受電共振回路と、前記モータと、前記受電共振回路から出力される電力を前記モータに供給する電力変換回路と、を備える。
【0010】
また、本発明は、前記モータ用ワイヤレス給電装置を複数備える車両用ワイヤレス給電システムであって、複数の前記モータ用ワイヤレス給電装置が、道路に沿って配置されている。
【0011】
また、本発明は、電動車両に搭載された請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ用ワイヤレス給電装置と、インホイールモータと共に前記電動車両のホイールに設けられ、前記モータ用ワイヤレス給電装置から給電された電力を取得するワイヤレス受電装置と、を備え、前記ワイヤレス受電装置は、前記インホイールモータに電力を供給することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、車々間給電システムであって、前記モータ用ワイヤレス給電装置が、複数の電動車両のそれぞれに搭載され、各前記電動車両には、他の前記電動車両に搭載された前記モータ用ワイヤレス給電装置から給電された電力を取得するワイヤレス受電装置が搭載され、複数の前記電動車両の相互間で電力の授受を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータまたはその周辺回路の状態を安定化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】モータ用ワイヤレス給電システムの基本構成を示す図である。
図2】モータ用ワイヤレス給電システムの具体的な構成例を示す図である。
図3】負荷抵抗値に対する負荷電力および伝送効率の特性をシミュレーションによって求めた結果を示す図である。
図4】負荷抵抗値に対する負荷電圧および負荷電流の特性をシミュレーションによって求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本発明の実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100の基本構成が示されている。モータ用ワイヤレス給電システム100は、ワイヤレス給電装置10およびワイヤレス受電装置12を備えている。ワイヤレス受電装置12には、負荷RLとしてモータMTが接続されており、ワイヤレス給電装置10からワイヤレス受電装置12に電力が伝送され、モータMTに電力が供給される。すなわち、ワイヤレス給電装置10からワイヤレス受電装置12を介してモータMTに電力が供給されるモータ駆動システムが、モータ用ワイヤレス給電システム100によって構成されている。
【0016】
ワイヤレス給電装置10は、スイッチング電源20、第1コンデンサC1、第1抵抗器R1、給電インダクタL1、帰還部16および位相調整部18を備えている。第1コンデンサC1、第1抵抗器R1および給電インダクタL1は直列接続され、給電共振回路1を構成している。第1コンデンサC1の第1抵抗器R1が接続された側とは反対側の一端と、給電インダクタL1の第1抵抗器R1が接続された側とは反対側の一端との間には、スイッチング電源20が接続されている。
【0017】
なお、第1抵抗器R1は、給電インダクタL1に含まれる抵抗成分であってよい。ただし、図1では、第1抵抗器R1が給電インダクタL1に含まれる抵抗成分である場合も含めて、第1抵抗器R1が給電インダクタL1とは別の素子として描かれている。
【0018】
ワイヤレス受電装置12は、受電インダクタL2、第2抵抗器R2、第2コンデンサC2、整流回路14および平滑コンデンサCsを備えている。受電インダクタL2、第2抵抗器R2および第2コンデンサC2は直列接続され、受電共振回路2を構成している。給電共振回路1と受電共振回路2の共振周波数は一致または近似している。第2コンデンサC2の第2抵抗器R2が接続された側とは反対側の一端と、受電インダクタL2の第2抵抗器R2が接続された側とは反対側の一端との間には、電力変換回路として整流回路14が接続されている。整流回路14には、モータMTと、モータMTに並列に接続された平滑コンデンサCsが接続されている。
【0019】
モータMTは、DCモータの他、DCブラシレスモータ、ACモータ、スイッチトリラクタンス、ステッピングモータ、超音波モータであってもよい。モータMTに供給される電力が交流電力であるか直流電力であるかによって、整流回路が他の電力変換回路に置き換えられてよい。
【0020】
第1抵抗器R1と同様、第2抵抗器R2は、受電インダクタL2に含まれる抵抗成分であってよい。ただし、図1では、第2抵抗器R2が受電インダクタL2に含まれる抵抗成分である場合も含めて、第2抵抗器R2が受電インダクタL2とは別の素子として描かれている。
【0021】
スイッチング電源20は、スイッチングによって交流電圧を発生する発振回路によって構成されてよい。スイッチング電源20は、例えば、給電共振回路1の共振周波数と同一のまたは近似した周波数で値がハイおよびローを繰り返す矩形波電圧を交流電圧として出力する。これによって、給電共振回路1には給電電流としての共振電流が流れる。帰還部16は、給電共振回路1に結合し、給電インダクタL1に流れる給電電流を検出し、検出値に応じた帰還信号を位相調整部18に出力する。位相調整部18は、給電電流(共振電流)の位相と、スイッチング電源20に流れる電流との位相差が低減され、または0となるように、スイッチング電源20が出力する交流電圧の位相を調整する。
【0022】
位相調整部18が、帰還信号の位相を調整することで、給電共振回路1に流れる給電電流の値が、スイッチング電源20が出力する交流電圧に正帰還される。これによって、ワイヤレス給電装置10において自励式発振器が構成され、給電共振回路1の共振状態が安定的に維持される。
【0023】
給電共振回路1と、受電共振回路2は磁気的に結合し、あるいは、電磁界結合をする。すなわち、給電インダクタL1および受電インダクタL2の電磁誘導によって、給電共振回路1および受電共振回路2が磁気的に結合してよい。また、給電共振回路1が電磁界を発生し、受電共振回路2がその電磁界を受信して、給電共振回路1および受電共振回路2が電磁界結合してもよい。
【0024】
給電共振回路1と受電共振回路2の共振周波数は一致または近似しているので、給電共振回路1と受電共振回路2が共鳴する。給電共振回路1に流れる給電電流によって、受電共振回路2には受電電流が流れる。整流回路14によって受電電流が整流され、平滑コンデンサCsおよびモータMTに直流成分を含む電流が流れる。すなわち、整流回路14は、受電共振回路2から出力される交流電力を直流電力に変換してモータMTに供給する。
【0025】
上記では、給電インダクタL1に流れる給電電流を検出し、位相調整部18に検出値に応じた帰還信号を出力する帰還部16について説明した。帰還部16は、給電インダクタL1または第1コンデンサC1に現れる電圧を検出し、位相調整部18に検出値に応じた帰還信号を出力する回路であってもよい。この場合、給電共振回路1に現れる電圧の値が、スイッチング電源20が出力する交流電圧に正帰還される。
【0026】
このように、本実施形態に係るワイヤレス給電装置10(モータ用ワイヤレス給電装置)は、モータMTに電力を供給する受電共振回路2にワイヤレス、すなわち非接触で結合する給電共振回路1を備えている。また、ワイヤレス給電装置10は、給電共振回路1にスイッチングによって電力を供給するスイッチング電源20を備えている。ワイヤレス給電装置10は、さらに、給電共振回路1に結合する制御部3を備えている。制御部3は、帰還部16および位相調整部18から構成され、給電共振回路1における電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、スイッチング電源20をスイッチングさせる。
【0027】
従来のワイヤレス給電システムでは、モータの回転数や負荷が変動すると、給電装置の共振回路および受電装置の共振回路の共振周波数も変化し、モータやその周辺の回路に現れる電圧または電流が変動してしまうことがあった。この場合、モータの制御が困難となったり、周辺回路に用いる部品の耐電圧または許容電流を大きくする必要が生じたりする場合があった。
【0028】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100では、給電共振回路1に流れる給電電流の検出値が、スイッチング電源20が出力する交流電圧に対して正帰還される。そのため、給電共振回路1および受電共振回路2の共振状態が安定的に維持される。これによって、モータMTやその周辺の回路に現れる電圧または電流の変動が抑制され、モータMTの制御が容易になる。また、モータMTの回転数やトルクが変動する等、モータMTの状態が変動した場合であっても、給電共振回路1および受電共振回路2の共振状態が安定的に維持され、モータMTに安定的に電力が供給される。
【0029】
また、本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100では、整流回路14の代わりに、スイッチング素子を用いた電力変換回路が用いられた場合であっても、スイッチング電源20のスイッチングと、電力変換回路のスイッチングとを同期させなくてもよい。これによって、モータ用ワイヤレス給電システム100の構成が単純化される。
【0030】
図2には、本発明の実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100の具体的な構成例として、モータ用ワイヤレス給電システム102が示されている。モータ用ワイヤレス給電システム102は、ワイヤレス給電装置10、ワイヤレス受電装置12、整流回路14およびモータMTを備えている。
【0031】
ワイヤレス給電装置10は、スイッチング回路22、給電共振回路1a、帰還部16、および位相調整部18を備えている。
【0032】
スイッチング回路22は、図1に示されたスイッチング電源20に相当する。スイッチング回路22は、スイッチングドライバ54およびハーフブリッジ56を備えている。ハーフブリッジ56は、一端が共通に接続された第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2を備えている。第1スイッチング素子S1の第2スイッチング素子S2とは反対側の一端は、直流電圧源58に接続されており、第2スイッチング素子S2の第1スイッチング素子S1とは反対側の一端は、接地導体に接続されている。
【0033】
スイッチングドライバ54は、位相調整部18から出力される位相制御信号に従う位相で、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2を交互にオンオフする。第1スイッチング素子S1がオフからオンに切り替えられたときは、第2スイッチング素子S2はオンからオフに切り替えられ、第1スイッチング素子S1がオンからオフに切り替えられたときは、第2スイッチング素子S2はオフからオンに切り替えられる。
【0034】
給電共振回路1aは、第1コンデンサC1、第1給電インダクタLaおよび第2給電インダクタLbを備えている。第1給電インダクタLaおよび第2給電インダクタLbは、図1に示された給電インダクタL1に相当する。第1コンデンサC1の一端は、ハーフブリッジ56における第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2の接続点に接続されている。第1コンデンサC1の他端は、第1給電インダクタLaの一端に接続されている。第1給電インダクタLaの他端は、第2給電インダクタLbの一端に接続され、第2給電インダクタLbの他端は接地導体に接続されている。
【0035】
帰還部16は、帰還トランスTおよび増幅回路50を備えている。帰還トランスTは、磁気的に結合した第2給電インダクタLbおよび帰還インダクタLfを備えている。すなわち、帰還トランスTおよび給電共振回路1aは、第2給電インダクタLbを共有している。帰還インダクタLfの両端は、増幅回路50の正相端子50pと逆相端子50nとの間に接続されている。
【0036】
増幅回路50は、差動増幅器51、正相入力抵抗器Ra3、逆相入力抵抗器Ra1、帰還抵抗器Ra2およびシャント抵抗器Ra4~Ra6を備えている。正相入力抵抗器Ra3は、正相端子50pと差動増幅器51の正相入力端子との間に接続され、逆相入力抵抗器Ra1は、逆相端子50nと差動増幅器51の逆相入力端子との間に接続されている。帰還抵抗器Ra2は、差動増幅器51の出力端子と逆相入力端子との間に接続されている。シャント抵抗器Ra4は、逆相端子50nと接地導体との間に接続されている。シャント抵抗器Ra5は、正相端子50pと接地導体との間に接続され、シャント抵抗器Ra6は、差動増幅器51の正相入力端子と接地導体との間に接続されている。正相入力抵抗器Ra3、逆相入力抵抗器Ra1、帰還抵抗器Ra2およびシャント抵抗器Ra4~Ra6の各抵抗値によって、増幅回路50の利得が定められる。
【0037】
増幅回路50は、帰還インダクタLfの両端の電圧を増幅し、帰還信号を位相調整部18に出力する。帰還信号は、給電共振回路1aに流れる電流に応じた信号である。増幅回路50は、帰還インダクタLfに流れる電流に応じた帰還信号を出力する増幅回路に置き換えられてもよい。この場合、増幅回路は、帰還インダクタLfに直列に接続された抵抗器等を有し、その抵抗器に現れる電圧を増幅し、帰還信号を位相調整部18に出力する回路であってよい。
【0038】
位相調整部18は、移相コンデンサCb、第1可変抵抗器Rb1、第2可変抵抗器Rb2および比較器52を備えている。移相コンデンサCbおよび第1可変抵抗器Rb1は並列に接続されている。移相コンデンサCbおよび第1可変抵抗器Rb1の一方の接続点は、増幅回路50の出力端子に接続されている。移相コンデンサCbおよび第1可変抵抗器Rb1の他方の接続点は、比較器52の入力端子および第2可変抵抗器Rb2の一端に接続されている。第2可変抵抗器Rb2の他端は接地導体に接続されている。
【0039】
移相コンデンサCb、第1可変抵抗器Rb1および第2可変抵抗器Rb2は、帰還信号の位相を変化させて比較器52に出力する。位相変化量は、第1可変抵抗器Rb1または第2可変抵抗器Rb2の抵抗値を変化させることで調整される。
【0040】
比較器52は、帰還信号が基準値を超えたときには値がハイとなり、基準値以下であるときには値がローとなる位相制御信号をスイッチングドライバ54に出力する。スイッチングドライバ54は、位相制御信号のハイおよびローの切り替わりのタイミングと同期して、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2を交互にオンオフする。
【0041】
第1スイッチング素子S1がオンとなり、第2スイッチング素子S2がオフとなっているときには、接地導体から第2給電インダクタLbおよび第1給電インダクタLaを経て直流電圧源58に至る経路に電流が流れる。
【0042】
第2スイッチング素子S2がオンとなり、第1スイッチング素子S1がオフとなっているときには、第1コンデンサC1の一端が接地導体に短絡される。第2スイッチング素子S2、第1コンデンサC1、第1給電インダクタLaおよび第2給電インダクタLbによる電流ループが形成される。
【0043】
第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2が交互にオンオフすることで、給電共振回路1aの第1コンデンサC1、第1給電インダクタLaおよび第2給電インダクタLbには給電電流としての共振電流が流れる。給電電流に応じた帰還信号が帰還部16から位相調整部18に出力され、帰還信号の位相に応じた位相制御信号がスイッチングドライバ54に出力される。スイッチングドライバ54は、位相制御信号のハイおよびローの切り替わりのタイミングと同期して、第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2を交互にオンオフする。
【0044】
このような構成によって、スイッチング回路22は、帰還インダクタLfにおける電圧または電流の時間変化に応じたタイミングで、ハーフブリッジ56をスイッチングして、(スイッチング電源20をスイッチングして)、給電共振回路1aにおける電圧または電流をオンオフする。
【0045】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102では、給電電流に基づく帰還信号および位相制御信号が、給電電流に対して正帰還となるように、位相調整部18における位相変化量が設定されている。すなわち、給電電流の位相と第1スイッチング素子S1および第2スイッチング素子S2のスイッチングタイミングとが同期するように、位相調整部18における位相変化量が設定されている。これによって、ワイヤレス給電装置10において自励式発振器が構成され、給電共振回路1の共振状態が安定的に維持される。
【0046】
ワイヤレス受電装置12は、受電共振回路2aおよび整流回路14を備えている。受電共振回路2aは、受電インダクタL2および第2コンデンサC2を備えている。整流回路14は、ダイオードD1~D4を備えている。ダイオードD1のアノードはダイオードD2のカソードに接続され、ダイオードD3のアノードはダイオードD4のカソードに接続されている。ダイオードD1のカソードはダイオードD3のカソードに接続され、ダイオードD2のアノードはダイオードD4のアノードに接続されている。
【0047】
第2コンデンサC2の一端はダイオードD1およびD2の接続点に接続されている。第2コンデンサC2の他端は、受電インダクタL2の一端に接続され、受電インダクタL2の他端はダイオードD3およびD4の接続点に接続されている。ダイオードD1およびD3の接続点と、ダイオードD2およびD4の接続点との間には、平滑コンデンサCsおよびモータMTが接続されている。
【0048】
第1給電インダクタLaおよび受電インダクタL2が結合することで、給電共振回路1aおよび受電共振回路2aが結合する。あるいは、給電共振回路1aは電磁界を発生し、受電共振回路2aがその電磁界を受信して、給電共振回路1aおよび受電共振回路2aが電磁界結合する。給電共振回路1aの第1コンデンサC1、第1給電インダクタLaおよび第2給電インダクタLbに流れる給電電流に基づいて、受電共振回路2aの受電インダクタL2および第2コンデンサC2には、受電電流が流れる。受電電流は整流回路14によって整流される。すなわち、受電電流は、ダイオードD1およびD3の接続点からモータMTおよび平滑コンデンサCs側に流出し、モータMTおよび平滑コンデンサCs側からダイオードD2およびD4の接続点に流入する直流電流に整流される。
【0049】
モータMTに印加される直流電圧は平滑コンデンサCsによって平滑化される。整流回路14からモータMTに流れる電流および整流回路14からモータMTに印加される電圧によって、モータMTはトルクを発生し回転する。
【0050】
一般に、モータは、回転数やトルク等、回転状態が変化することで、電力供給端に現れる電圧の大きさや位相、あるいは、モータに流れる電流の大きさや位相が変化する。したがって、ワイヤレス給電装置に共振周波数を安定化させる回路等が設けられていない場合には、モータの回転状態の変化によって、給電共振回路および受電共振回路の共鳴周波数や、給電共振回路および受電共振回路のQ値が変化することがある。
【0051】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102では、ワイヤレス給電装置10において自励式発振器が構成される。したがって、給電共振回路1aの共振状態が安定的に維持され、さらには、給電共振回路1aおよび受電共振回路2aの共鳴状態が安定的に維持される。これによって、モータMTに安定的に電力が供給される。
【0052】
図3には、負荷RLの抵抗値(負荷抵抗値)に対する負荷電力および伝送効率の特性をシミュレーションによって求めた結果が示されている。負荷電力は、ワイヤレス受電装置12からモータMT等の負荷RLに供給される電力である。伝送効率は、ワイヤレス給電装置10における直流電圧源(スイッチング電源20または直流電圧源58)が出力する電力に対する、負荷電力の比率である。横軸は負荷抵抗値を示す。左側の縦軸は負荷電力を示し、右側の縦軸は伝送効率を示す。
【0053】
特性70-1は、本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102についての負荷電力の特性である。特性70-2は、従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムについての負荷電力の特性である。
【0054】
特性72-1は、本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102についての伝送効率の特性である。特性72-2は、従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムについての伝送効率の特性である。
【0055】
ここで、従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムは、図1に示されるモータ用ワイヤレス給電システム100から、帰還部16および位相調整部18を取り除いたものである。従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムでは、給電共振回路1に流れる給電電流の値が、スイッチング電源20が出力する電圧に正帰還されない。また、AC/DCコンバータが用いられる場合には、スイッチング電源20が出力する交流電圧と同期したスイッチングを行う。
【0056】
負荷抵抗値の臨界値Pは、負荷抵抗値を小さい値から大きい値へと変化させたときに、給電共振回路1と受電共振回路2の固有周波数が2つから1つに変化するときの値である。給電共振回路1と受電共振回路2の固有角周波数ωeは、次の(数1)で表される。
【0057】
(数1)ωe=ω0±(κ-γ1/2
【0058】
κは、第1給電インダクタLaおよび受電インダクタL2の結合係数であり、それぞれの自己インダクタンスをLaおよびL2とし、これらの相互インダクタンスをMとした場合、結合係数κは、次の(数2)で表される。
【0059】
(数2)κ=M/(La・L2)1/2
【0060】
γは、給電共振回路1aと受電共振回路2aの損失の大きさを表す値である。給電共振回路1aおよび受電共振回路2aの素子定数が異なる場合、γは複雑な数式で表される。ただし、第1給電インダクタLaと受電インダクタL2のインダクタンスがLで等しく、第1コンデンサC1と第2コンデンサC2の容量がCで等しく、第1抵抗器R1と第2抵抗器R2の抵抗値が0である場合には、負荷抵抗値をRとして、γは次の(数3)で近似される。
【0061】
(数3)γ=R・(C/L)1/2
【0062】
(数1)においてκ=γを成立させるような負荷抵抗値が、臨界値Pである
【0063】
負荷抵抗値が臨界値P以下であるときは、給電共振回路1と受電共振回路2との結合が密であり、固有角周波数ωeは2つとなる。負荷抵抗値が臨界値Pを超えるときは、給電共振回路1と受電共振回路2との結合が疎であり、固有角周波数ωeは1つとなる。
【0064】
負荷抵抗値が臨界値Pを超えるときは、従来技術と本実施形態との間には、負荷電力および伝送効率に大きな差異は認められない。負荷抵抗値が臨界値P以下であるときは、本実施形態では、従来技術に比べて伝送効率が小さくなるものの、負荷電力が大きくなる。
【0065】
図4には、負荷抵抗値に対する負荷電圧および負荷電流の特性をシミュレーションによって求めた結果が示されている。負荷電圧は負荷RLの両端に印加される電圧であり、負荷電流は負荷RLに流れる電流である。横軸は負荷抵抗値を示す。左側の縦軸は負荷電圧を示し、右側の縦軸は負荷電流を示す。
【0066】
特性74-1は、本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102についての負荷電圧の特性である。特性74-2は、従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムについての負荷電圧の特性である。
【0067】
特性76-1は、本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム102についての負荷電流の特性である。特性76-2は、従来技術に係るモータ用ワイヤレス給電システムのシミュレーションについての負荷電流の特性である。
【0068】
負荷抵抗値が臨界値Pを超えるときは、従来技術と本実施形態との間には、負荷電圧および負荷電流に大きな差異は認められない。負荷抵抗値が臨界値P以下であるときは、本実施形態では、従来技術に比べて負荷電圧および負荷電流が大きくなる。
【0069】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100または102は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の電動車両のモータに電力を供給する車両用ワイヤレス給電システムに用いられてよい。車両用給電システムでは、ワイヤレス給電装置10が道路に沿って所定の間隔で配置される。各ワイヤレス給電装置10は、ガードレール、路肩、路面下または路面上、トンネルの天井または壁面等に配置されてよい。電動車両にはワイヤレス受電装置12が搭載される。電動車両に最も近い位置にあるワイヤレス給電装置10から、電動車両に搭載されたワイヤレス受電装置12に電力が供給されてよい。電動車両が走行すると共に、電動車両に電力を供給するワイヤレス給電装置10が道路に沿って順に入れ替わっていく。ワイヤレス受電装置12は、電動車両に搭載されたモータに電力を供給し、モータは供給された電力によって電動車両を駆動する。
【0070】
一般に、道路を走行する電動車両は速度や加速度が一定でないため、モータの回転数やトルクが変動する。モータ用ワイヤレス給電システム100または102を用いることで、給電共振回路1および受電共振回路2の共振状態が安定的に維持され、走行中の電動車両のモータに安定的に電力が供給される。
【0071】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100または102は、車々間給電システムに用いられてもよい。車々間給電システムは、複数の電動車両のそれぞれが、ワイヤレス給電装置10およびワイヤレス受電装置12を搭載し、電動車両の相互間で電力を授受するものである。各電動車両には、無線制御装置が搭載され、各電動車両の無線制御装置は、各電動車両が搭載するバッテリのSOC(State Of Charge)を共有する。例えば、各電動車両の無線制御装置は、ワイヤレス給電が可能な位置関係にある電動車両の間で、SOCの大きい電動車両からSOCの小さい電動車両に電力を供給するように、ワイヤレス給電装置10およびワイヤレス受電装置12を制御する。
【0072】
車々間給電システムは、隊列走行を行う複数の電動車両において構成されてよい。また、車々間給電システムは、会員としてID(Identification)を登録した複数の電動車両において構成されてもよい。この場合、各電動車両の無線制御装置は、IDの認証がされた他の無線制御装置との間で通信を行い、電動車両の相互間で電力を授受し合う制御を実行する。また、車々間給電システムは、工場等で用いられる複数の無人搬送機において構成されてもよい。
【0073】
本実施形態に係るモータ用ワイヤレス給電システム100または102は、電動車両のインホイールモータに用いられてもよい。インホイールモータは、ホイールに固定され、ホイールを駆動するものである。電動車両のボデー側には、ワイヤレス給電装置10が配置され、ホイールには、インホイールモータに電力を供給するワイヤレス受電装置12が配置される。
【0074】
一般に、インホイールモータは、ホイールと共に回転する。そのため、電動車両に設けられた給電装置とインホイールモータとの間の電気配線は複雑な構造となる。モータ用ワイヤレス給電システム100または102をインホイールモータに用いることで、ホイール側に配置されたインホイールモータおよびワイヤレス受電装置12と、ボデー側に配置されたワイヤレス給電装置10との間の電気配線は不要となる。これによって、インホイールモータの機械的な構造が単純化される。
【符号の説明】
【0075】
1a 給電共振回路、2,2a 受電共振回路、3 制御部、10 ワイヤレス給電装置、12 ワイヤレス受電装置、14 整流回路、16 帰還部、18 位相調整部、20 スイッチング電源、22 スイッチング回路、50 増幅回路、50p 正相入力端子、50n 逆相入力端子、51 差動増幅器、52 比較器、54 スイッチングドライバ、56 ハーフブリッジ、58 直流電圧源、100,102 モータ用ワイヤレス給電システム、L1 給電インダクタ、C1 第1コンデンサ、R1 第1抵抗器、L2 給電インダクタ、C2 第2コンデンサ、R2 第2抵抗器、Cs 平滑コンデンサ、RL 負荷、La 第1給電インダクタ、Lb 第2給電インダクタ、Lf 帰還インダクタ、Ra1 逆相入力抵抗器、Ra2 帰還抵抗器、Ra3 正相入力抵抗器、Ra4~Ra6 シャント抵抗器、Cb 移相コンデンサ、Rb1、Rb2 可変抵抗器、D1~D4 ダイオード、MT モータ。
図1
図2
図3
図4