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特開2023-182187ダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182187
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】ダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/22 20060101AFI20231219BHJP
   B29C 45/42 20060101ALI20231219BHJP
   B29C 33/44 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B22D17/22 L
B22D17/22 A
B29C45/42
B29C33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095657
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117204
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 徳哉
(72)【発明者】
【氏名】望月 潤
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AP06
4F202AR07
4F202CA11
4F202CM12
4F202CM17
4F202CR06
(57)【要約】
【課題】製品取り出し装置に製品掴み姿勢をティーチングする作業の負担を軽減する。
【解決手段】以下の工程(a)から(f)を順次行う。(a)金型固定装置に金型を取り付ける。(b)可動型の位置を測定し、その位置を基準位置として製品取り出し装置の記憶部に記憶させる。(c)記憶部に製品取り出し装置の製品掴み姿勢を記憶させる。(d)金型固定装置から金型を取り外す。(e)金型固定装置に金型を再び取り付ける。(f)可動型の位置を再度測定し、その位置を基準位置と比較し、その差に基づいて、製品掴み姿勢を補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動型から製品を取り出す製品取り出し装置の制御方法であって、以下の工程(a)から(f)を順次行う、ダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法。
(a)金型固定装置に金型を取り付ける。
(b)可動型の位置を測定し、その位置を基準位置として製品取り出し装置の記憶部に記憶させる。
(c)記憶部に製品取り出し装置の製品掴み姿勢を記憶させる。
(d)金型固定装置から金型を取り外す。
(e)金型固定装置に金型を再び取り付ける。
(f)可動型の位置を再度測定し、その位置を基準位置と比較し、その差に基づいて、製品掴み姿勢を補正する。
【請求項2】
工程(b)及び工程(f)において、可動型に設けられたリターンピンの位置を測定する、請求項1記載のダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法。
【請求項3】
リターンピンの中心に凹部が設けられ、リターンピンの凹部の位置を測定する、請求項2記載のダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法。
【請求項4】
工程(b)及び工程(f)において、製品取り出し装置に取り付けられたレーザー照射装置により可動型の位置を測定する、請求項1乃至3の何れかに記載のダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト装置の製品取り出し装置を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造された製品は製品取り出し装置によって金型から取り出される。ダイカスト装置に新たに金型を取り付けた場合には、製品取り出し装置が製品を掴むときの姿勢を製品取り出し装置にティーチングさせる。即ち、製品掴み姿勢を製品取り出し装置の記憶部に記憶させる。製品取り出し装置は、記憶部に記憶されている製品掴み姿勢の情報に基づいて、型開き毎に製品を掴んで金型から取り外し、次の工程を行う場所まで製品を運ぶ。次の工程は例えば製品に刻印をする刻印工程である。製品取り出し装置は金型から取り外した製品を刻印工程まで運ぶ。刻印工程において、製品取り出し装置に掴まれた状態の製品に例えばレーザーにより刻印する。
【0003】
ダイカスト装置に取り付けられた金型は、種々の理由によって、一旦取り外された後に再び取り付けられることがある。例えば、金型をメンテナンスする場合である。また、複数の金型を適宜交換しながらロット生産するような場合である。ロット生産は、例えば以下のように行われる。第1の金型をダイカスト装置に取り付けて所定数の第1の製品を鋳造する。その後、第1の金型をダイカスト装置から取り外して第2の金型に交換し、第2の製品を鋳造する。そして、第2の金型から再び第1の金型に交換して第1の製品を鋳造する。
【0004】
このように一旦取り外された金型が再びダイカスト装置に取り付けられた際に、前回とは異なる位置に金型が取り付けられる場合がある。即ち、1回目の金型取付位置に対して2回目以降の金型取付位置が異なる場合である。そのような場合、1回目の金型取付時に行ったティーチングの状態のままで、2回目以降の金型取付時に製品取り出し装置が製品を掴むと、掴みミスが生じたり、あるいは、製品をしっかりと掴めたとしても、次の刻印工程において製品の適正位置に刻印することができなかったりする。そのため、同じ金型を2回目以降に取り付けた場合においても、金型を1回目に取り付けた場合と同様に、製品掴み姿勢をティーチングし直す必要があり、作業者の作業負担が大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-16886号公報
【特許文献2】特開2003-53505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、製品取り出し装置に製品掴み姿勢をティーチングする作業の負担を軽減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法は、可動型から製品を取り出す製品取り出し装置の制御方法であって、以下の工程(a)から(f)を順次行うものである。
(a)金型固定装置に金型を取り付ける。
(b)可動型の位置を測定し、その位置を基準位置として製品取り出し装置の記憶部に記憶させる。
(c)記憶部に製品取り出し装置の製品掴み姿勢を記憶させる。
(d)金型固定装置から金型を取り外す。
(e)金型固定装置に金型を再び取り付ける。
(f)可動型の位置を再度測定し、その位置を基準位置と比較し、その差に基づいて、製品掴み姿勢を補正する。
【0008】
この方法によれば、例えば金型を金型固定装置に1回目に取り付けた際の取付位置と2回目以降に取り付けた際の取付位置とを比較して、両取付位置の差に基づいて製品掴み姿勢を補正する。そのため、2回目以降の金型の取付時にティーチングをし直す必要がない。
【0009】
特に、上記の工程(b)及び工程(f)において、可動型に設けられたリターンピンの位置を測定することが好ましい。リターンピンは、製品を中心としてその周囲の複数箇所に配置されている。そのため、リターンピンの位置を測定することにより、可動型の取付位置を高精度に測定することができる。また、リターンピンは、容易に視認でき、その位置を容易に測定できる。
【0010】
また、リターンピンの中心に凹部が設けられ、その凹部の位置を測定することが好ましい。リターンピンの中心に凹部を設けておくと、リターンピンの位置をより一層高精度に測定でき、且つ、容易に測定できる。
【0011】
また、上記の工程(b)及び工程(f)において、製品取り出し装置に取り付けられたレーザー照射装置により可動型の位置を測定することが好ましい。この方法によれば、製品取り出し装置を利用して可動型の位置を容易に測定できる。また、レーザー光によって可動型の位置を非接触で且つ高精度に測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、2回目以降の金型の取付時にティーチングをし直す必要がないので、ティーチングのための作業負担が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a)は、本発明の一実施形態におけるダイカスト装置の可動型を示す正面図、(b)は同可動型の要部を示す正面図。
図2】同装置の固定型を示し、(a)は正面図、(b)は概略断面図。
図3】同装置の製品掴み姿勢を示す正面図。
図4】同装置の可動型の位置を測定している状態を示す正面図。
図5】同装置の可動型の位置を測定している状態を示す正面図。
図6】同装置の可動型の位置を測定している状態を示す正面図。
図7】同装置の製品取り出し装置の可動範囲を示す正面図。
図8】同装置への可動型の2回目の取付状態を示す正面図。
図9】同装置への可動型の2回目の取付状態を示す正面図。
図10】同装置への可動型の2回目の取付状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態にかかるダイカスト装置における製品取り出し装置の制御方法について、図1図10を参酌しつつ説明する。図1図3に、ダイカスト装置の全体構成の概略を示している。尚、図1(a)及び図2(a)において製品90を二点鎖線で示している。
【0015】
図1は可動型1を示している。可動型1は、可動プラテン10(金型固定装置)に取り付けられる。可動プラテン10は、タイバー11により、後述の固定プラテン20に接離可能に連結され、図示しない型締め装置により型締め方向に移動する。型締め方向は、図1(a)において紙面の法線方向であって、水平方向である。可動型1は、可動プラテン10に取り付けられる可動ホルダー12と、可動ホルダー12に取り付けられる図示しない可動ダイスとを備える。また、可動型1は、図示しない一つあるいは複数の中子を備える。
【0016】
可動ホルダー12は、四隅にそれぞれ可動ノック凹凸部13を有する。可動ノック凹凸部13は、ノックピンとノック孔のうちの一方であり、型締め時に後述の固定ホルダー21の固定ノック凹凸部24と型締め方向に係合する。可動ノック凹凸部13よりも製品90に近い側には、合計四つのリターンピンが設けられている。可動型1の背面側には、図示しない押し出し板が設けられ、押し出し板には図示しない押し出しピンが取り付けられている。押し出しピンは、鋳造された製品90を可動型1から押し出して離型させる。リターンピンは、押し出し板に取り付けられており、型締め時に先端部が固定型2によって押されて初期位置に戻り、これにより押し出し板が初期位置に戻る。以下、四つのリターンピンを、製品90を正面に見て向かって左下から順に反時計回りに、第1リターンピン14、第2リターンピン15、第3リターンピン16、及び、第4リターンピン17と称する。本実施形態において四つのリターンピンは全て同一の形状である。代表的に、第1リターンピン14の拡大正面図を図1(b)に示している。第1リターンピン14の先端面の中央部には凹部19が形成されている。凹部19は先端面から第1リターンピン14の軸方向に凹んでいる。他の三つのリターンピンについても同様に凹部19が形成されている。図1(a)のように四つのリターンピンは、製品90を中心として上下対称且つ左右対称に配置されていることが好ましい。第1リターンピン14と第2リターンピン15は、互いにビスケット18を中心として左右対称に配置され、第3リターンピン16と第4リターンピン17は、互いにビスケット18を中心として左右対称に配置されていることが好ましい。
【0017】
図2は固定型2を示している。固定型2は、固定プラテン20(金型固定装置)に取り付けられる。固定型2は、固定プラテン20に取り付けられる固定ホルダー21と、固定ホルダー21に取り付けられる図示しない固定ダイスとを備える。固定プラテン20には、図示しないプランジャが備えられ、プランジャスリーブ22から固定ホルダー21のホルダースリーブ23を通って図示しないキャビティに溶湯が供給される。固定ホルダー21の四隅には、それぞれ固定ノック凹凸部24を有する。固定ノック凹凸部24は、ノックピンとノック孔のうちの他方であり、型締め時に可動ホルダー12の可動ノック凹凸部13と型締め方向に係合する。
【0018】
図3に、可動型1から製品90を取り出すための製品取り出し装置3を示している。製品取り出し装置3は、製品90を掴んで金型から取り出し、取り出した製品90を次工程まで運ぶアーム部30と、アーム部30を制御する制御部31と、アーム部30の制御に関するプログラムや各種の情報を記憶する記憶部32と、作業者が操作、入力する操作部33とを備える。
【0019】
アーム部30は、架台40の上面に取り付けられたベース41と、ベース41の上側に、ベース41に対して上下方向の軸線まわりに回転可能に連結された本体42と、本体42の側部に水平方向の軸線まわりに回転可能に連結された第1アーム43と、第1アーム43の先端部に水平方向の軸線まわりに回転可能に連結された第2アーム44と、第2アーム44の先端部に水平方向の軸線まわりに回転可能に連結された第3アーム45と、第3アーム45の先端部に設けられ、製品90を掴む一対の把持爪46aからなるチャック46と、を備えている。第1アーム43は、第1支点43aを回動支点として上下に回動し、第2アーム44は、第2支点44aを回動支点として上下に回動し、第3アーム45は、第3支点45aを回動支点として上下に回動する。尚、図3のような製品90の取り出し時において、第1アーム43、第2アーム44及び第3アーム45のそれぞれの回動軸線の方向は型締め方向に沿っている。
【0020】
製品取り出し装置3は、型締め方向に対して直交する方向であって且つ可動型1の側方に配置されている。即ち、架台40は、可動型1に対して水平方向に離間して配置されている。アーム部30は、架台40から可動型1に向けて延びている。アーム部30は、型締め時には、架台40側に離れて待機した待機状態となり、型開き時に、製品90を取り出すために伸張すると共に製品90に下側から接近して、図3のような取り出し状態となる。チャック46は、アーム部30の先端部に固定されている。チャック46は、製品90のビスケット部90aを把持する。ビスケット部90aは、製品90の最下部に位置する。ビスケット部90aは、型締め方向の軸線を有する円柱形状である。チャック46は、図3のように製品90を正面に見たとき、ビスケット部90aを下側から左右方向に把持する。チャック46の一対の把持爪46aは、上方に開口していて、ビスケット部90aに対して下側から接近してビスケット部90aを把持する。チャック46は、製品90から側方(図3において右側)に離れた図示しない待機位置と、図3に示すような製品掴み位置との間を往復する。
【0021】
図3は、可動プラテン10に、最初に即ち1回目に金型を取り付けた状態を示している。作業者は、1回目に金型を取り付けた状態で、ティーチングを行う。即ち、金型の取り付け状態で実際に製品90を鋳造し、鋳造された製品90をチャック46で正確に掴むことができるように、作業者は操作部33を操作する。図3は、チャック46が製品90を正確に掴むことができる製品掴み姿勢を示している。このようにアーム部30が製品掴み姿勢となると、作業者が操作部33を操作することにより操作部33から制御部31に信号が送られ、制御部31は、そのときのアーム部30の製品掴み姿勢を記憶部32に記憶させる。その後、型開き毎に、制御部31はアーム部30を駆動制御して、記憶部32に記憶されている製品掴み姿勢に基づいてアーム部30を製品掴み姿勢に移動させてチャック46に製品90を把持させる。
【0022】
また、アーム部30には、可動型1の位置を測定するための測定装置として、レーザー照射装置4が設けられている。レーザー照射装置4は、レーザー光を可動型1に向けて照射する。レーザー光の照射方向は型締め方向である。レーザー照射装置4は、第3アーム45に取り付けられ、より詳細には、第3アーム45の先端部に取り付けられる。
【0023】
次に、可動型1の位置を測定する方法について説明する。可動型1を最初に即ち1回目に可動プラテン10に取り付けたときに、その可動型1の位置をレーザー照射装置4により測定する。図4図7に可動型1を測定している状態を示している。尚、製品取り出し装置3は、アーム部30の第3アーム45のみを示している。四つのリターンピンのうち三つのリターンピンの位置を測定する。四つのリターンピンの中から選択される三つのリターンピンは任意であってよいが、本実施形態では第1リターンピン14から第3リターンピン16である。
【0024】
作業者は、操作部33を操作してアーム部30を移動させ、図4のようにレーザー照射装置4を第1リターンピン14の正面に位置させる。そして、レーザー照射装置4からレーザー光を照射させて第1リターンピン14の凹部19にレーザー光を当てる。第1リターンピン14の凹部19にレーザー光が当たったときの第3アーム45の位置を第1位置とし、その第1位置を記憶部32に記憶させる。
【0025】
続いて、作業者は、アーム部30を移動させて、図5のようにレーザー照射装置4を第2リターンピン15の正面に位置させる。レーザー光が第2リターンピン15の凹部19に当たったときの第3アーム45の位置を第2位置とし、その第2位置を記憶部32に記憶させる。更に、作業者は、アーム部30を移動させて、図6のようにレーザー照射装置4を第3リターンピン16の正面に位置させる。レーザー光が第3リターンピン16の凹部19に当たったときの第3アーム45の位置を第3位置とし、その第3位置を記憶部32に記憶させる。第1位置から第3位置は、代表的には、可動型1を正面に見て、左右方向をX軸とし、上下方向をY軸とした、XY座標系で現される。尚、第1リターンピン14から第3リターンピン16の測定順序は特には限定されない。リターンピンは、作業者から容易に視認できる。そのため、各リターンピンの正面にレーザー光照射装置4を容易に位置させることができる。また、リターンピンの先端面の中央部に凹部19が設けられていると、より一層高精度にリターンピンの位置を測定できる。リターンピンは、可動型1において製品90(キャビティ)から周縁部に離れている。そのため、リターンピンの位置を測定することにより、可動型1の位置を正確に測定できる。また、四つのリターンピンのうち三つのリターンピンの位置を測定することにより可動型1の位置を正確に特定できる。尚、リターンピンに代えて、例えば可動側のノック凹凸部13の位置を測定してもよい。その他、可動型1の特定の箇所の位置を測定してもよい。
【0026】
以上のように第1位置から第3位置を測定し、その三つの位置から可動型1の位置を特定することができる。即ち、本実施形態では、チャック46が製品90のビスケット部90aを把持するので、可動型1のビスケット18の位置と、ビスケット18を中心とした可動型1の型締め方向の軸線まわりの角度を特定することができる。これにより、製品90のビスケット部90aの位置と、ビスケット部90aを中心とした製品90の角度を特定することができる。そして、このように特定した1回目の可動型1の位置を基準位置として記憶部に記憶する。
【0027】
尚、本実施形態では、四つのリターンピンのうち第4リターンピン17については測定しない。図7に二点鎖線で第3支点の可動範囲を示している。図7において、第3アーム45を第4リターンピン17の正面に位置させた状態を示しているが、これは仮想的に示したものであり、実際には第3アーム45はこの位置には位置しない。即ち、図7に示している第3アーム45の位置は、第3支点45aの可動範囲の外側に位置しているため、第3アーム45は実際には図7に示している位置に位置させることができない。従って、レーザー照射装置4を第4リターンピン17の正面に位置させることができず、第4リターンピン17の位置を測定することができない。
【0028】
次に、可動型1と固定型2をそれぞれ可動プラテン10と固定プラテン20から取り外し、その後、再度、その可動型1と固定型2を可動プラテン10と固定プラテン20に取り付けたときの状態について説明する。図8図10に、可動型1を可動プラテン10に2回目に取り付けたときの状態を誇張して図示している。可動型1は、ビスケット18を支点として型締め方向の軸線まわりに回動した状態で取り付けられる場合がある。1回目の取り付け時と同様に2回目の取り付け時においても、第1リターンピン14から第3リターンピン16の位置を測定する。
【0029】
図8には、代表的に、第1リターンピン14の位置を測定している状態を示している。尚、第2リターンピン15と第3リターンピン16の測定状態の図示は省略する。第1リターンピン14から第3リターンピン16の位置をそれぞれ測定し、それらの位置から2回目の取り付け状態における可動型1の位置を特定する。その位置を可動型1の2回目位置とする。
【0030】
制御部31は、2回目位置と、記憶部32に記憶されている基準位置とを比較する。制御部31は、基準位置と2回目位置との差に基づいて、2回目位置における、ビスケット部90aの位置、及び、ビスケット部90aを中心とした型締め方向の軸線まわりの製品90の角度θを制御部31において算出する。そして、制御部31は、記憶部32に記憶しているアーム部30の製品掴み姿勢を補正する。つまり、制御部31は、アーム部30の製品掴み姿勢を可動型1の2回目位置に対応したものとし、それを記憶部32に記憶する。また、制御部31は、2回目位置を新たに基準位置とし、それを記憶部32に記憶させる。2回目の取付状態では、制御部31は、補正された製品掴み姿勢に基づいてアーム部30を制御して、型開き毎に可動型1から製品90を取り出す。
【0031】
図9は、アーム部30の製品掴み姿勢が補正される前の状態を示している。図9では、可動型1が2回目に取り付けられた状態において、可動型1のビスケット18の位置は1回目の取り付け状態から変化せず、可動型1がビスケット18を中心として反時計回りに角度θで傾いている場合、即ち、回転している場合を示している。可動型1のビスケット18の位置が変化していないため、補正前の製品掴み姿勢であってもチャック46は製品90のビスケット部90aを掴むことができる。しかしながら、製品90は、ビスケット部90aを中心として傾いているため、補正前の製品掴み姿勢のままでアーム部30が製品90を次工程の例えば刻印工程に運ぶと、刻印工程において製品90の正規の位置に刻印されないことになる。
【0032】
図10は、アーム部30の製品掴み姿勢が補正された後の状態を示している。ビスケット部90aを中心とした製品90の傾きに対応してアーム部30の姿勢が1回目から変わっており、チャック46は製品90の傾きに対応して左側に傾いた姿勢で製品90を掴む。チャック46と製品90との相対関係は1回目と同じであるため、次工程の刻印工程において製品90の正規の位置に刻印されることになる。このように、製品掴み姿勢が制御部31によって自動的に補正されるため、作業者は、可動型1を2回目に取り付けた際に、ティーチングをし直す必要がなく、作業負担が軽減される。
【0033】
尚、可動型1を可動プラテン10に3回目に取り付けた場合も、2回目のときと同様である。第1リターンピン14から第3リターンピン16の位置をそれぞれ測定し、それらの位置から3回目の取り付け状態における可動型1の位置を特定する。その位置を可動型1の3回目位置とし、その3回目位置と基準位置(2回目位置)とを比較して、アーム部30の製品掴み姿勢を補正する。
【0034】
また、上記の説明では、製品90のビスケット部90aの位置が変化せず、ビスケット部90aを中心とした製品90の傾きが変化した場合を例示したが、ビスケット部90aが上下方向や左右方向に位置ずれした場合であっても同様に補正により対応できる。その場合、チャック46の上下方向の位置や左右方向の位置も補正される。
【符号の説明】
【0035】
1 可動型
2 固定型
3 製品取り出し装置
4 レーザー照射装置
10 可動プラテン(金型固定装置)
11 タイバー
12 可動ホルダー
13 可動ノック凹凸部
14 第1リターンピン
15 第2リターンピン
16 第3リターンピン
17 第4リターンピン
18 ビスケット
19 凹部
20 固定プラテン
21 固定ホルダー
22 プランジャスリーブ
23 ホルダースリーブ
24 固定ノック凹凸部
30 アーム部
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
40 架台
41 ベース
42 本体
43 第1アーム
43a 第1支点
44 第2アーム
44a 第2支点
45 第3アーム
45a 第3支点
46 チャック
46a 把持爪
90 製品
90a ビスケット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10