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特開2023-182188情報処理システム、植物の育成方法および栽培支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182188
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】情報処理システム、植物の育成方法および栽培支援方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20231219BHJP
   A01G 24/10 20180101ALI20231219BHJP
   G06Q 50/02 20120101ALI20231219BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20231219BHJP
   C12N 1/14 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 1/00 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
A01G24/10
G06Q50/02
A01G7/00 605Z
C12N1/14 A
C12N1/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095660
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】522159738
【氏名又は名称】株式会社 下ル上ル
(74)【代理人】
【識別番号】100125531
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 曜
(72)【発明者】
【氏名】小野 曜
【テーマコード(参考)】
2B022
4B065
4D004
5L049
【Fターム(参考)】
2B022BA18
4B065AA58X
4B065AC20
4B065CA53
4B065CA60
4D004AA50
4D004BA04
4D004CA18
4D004CC02
4D004DA16
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】地域で発生する小規模で多様なバイオマス廃棄物を原料とした植物栽培用資材の製造を簡便、効率化する。またバイオマス廃棄物の生物処理や植物栽培に用いられる微生物資材の機能を安定かつ効果的に奏させる。
【解決手段】バイオマス廃棄物の種類、発生場所、発生量に基づき、所定範囲内で発生するバイオマス廃棄物を原料とするバイオマス資材の種類と作製法を決定する情報処理システム。バイオマス廃棄物の資材化や植物栽培用資材に用いられる微生物について、資材化された糸状菌を菌糸が伸長している状態として施用し、その施用方法や時期などを決定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類のバイオマス廃棄物について、各バイオマス廃棄物の種類、発生場所、発生時期および発生量を入力情報とし、
前記各バイオマス廃棄物の種類から特定される当該バイオマス廃棄物の性状と発生量とを参照して、所定範囲内の時期と地域で発生する1以上の種類のバイオマス廃棄物を原料として作製できるバイオマス資材の種類とその作製方法を決定する演算部を有する情報処理システム。
【請求項2】
前記バイオマス資材には、微生物を用いる生物処理により前記バイオマス廃棄物を資材化した微生物処理資材が含まれ、
前記生物処理に用いる複数の微生物について、各微生物の属性を示す属性情報、当該微生物が奏する機能、および当該微生物の採取場所に基づいて決定された好適使用地情報を取得する請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
植物の根圏で菌糸を伸長させ当該植物にとって友好的に共生する植物友好的共生型の糸状菌を資材化した微生物資材を用いる植物育成方法であって、
前記資材に含まれる前記糸状菌を種菌として当該糸状菌の増殖基質を含む培地で当該種菌を増殖させることにより得られる培養物であって、当該培養物に含まれる当該糸状菌の菌糸が伸長している状態とした生菌糸含有物を、前記植物の地上部に付着させるまたは地下部に浸透させる植物の育成方法。
【請求項4】
植物を人為的に育てる植物栽培を支援する植物栽培支援法であって、
前記植物にとって友好的に共生する植物友好的共生型の糸状菌を選定し、
前記糸状菌の培養物を種菌として当該糸状菌の増殖基質を含む培地で当該種菌を増殖させ、当該糸状菌の菌糸が伸長している状態とした生菌糸含有資材として、当該資材を前記植物の根圏を構成する地下部と植物の地上部とで構成される栽培系に導入するために、前記資材を固体資材とするか液体資材とするかを決定し、
前記固体資材とする場合、前記糸状菌の菌糸が菌糸伸長している状態で前記植物の根を伸長させる状態とするための、当該資材の調製法、導入時期、および導入法、
前記液体資材とする場合、前記糸状菌の菌糸が菌糸伸長している状態で、当該液剤を前記植物の栽培系に導入するための、当該資材の調製法、導入時期、および導入法を決定する植物栽培支援法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物を育成する植物栽培用資材の作製に用いられる情報処理システムおよび植物栽培用の資材を用いた植物育成方法および植物資材を用いる植物栽培支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物を人為的に育成するために用いられる様々な資材が提供されている。植物栽培用の資材としては、土壌改良材、肥料および農薬などがあり、近代化学の発展に伴って人工的に合成した窒素やリンなどを原料とする肥料や農薬(それぞれ「化学肥料」、「化学農薬」、以下「化成資材」と総称する)が安価大量に製造できるようになった。
【0003】
化学資材が普及する以前は、土壌生物の働きなどによって植物の養分に変換される有機物が植物栽培用の資材(以下、「バイオマス資材」と称する)として利用されてきた。バイオマス資材は、化成資材に比べると品質や効果を安定させづらく、特有の匂いを持つなど取扱や保管も容易ではない。
【0004】
このため、植物栽培用の資材としては、化成資材が広く普及しているが、近年、環境保全や地政学リスクなどの観点から資材原料の国産化が求められる中で、バイオマス資材が再評価されている。
【0005】
バイオマス資材としては、植物系素材(剪定枝や農作物残渣など)や動物系素材(家畜糞など)を原料とする有機系資材や、微生物を資材化した微生物資材がある。微生物資材には、系統や機能が特定されている1または多くても2~3種類程度の所定の種類の微生物を資材化したもの(以下、「特定微生物資材」)と、資材化された微生物の種類(属種)や機能が不明で、資材に含まれている微生物の種類数も不明な資材(以下、「複雑系微生物資材」)とがある。
【0006】
こうした微生物資材は、乳酸菌や納豆菌といった細菌や、真菌(糸状菌または菌類とも呼ばれる)の一種で菌糸を形成しない非糸状菌である酵母菌のような単細胞微生物を含むことが多い。ただし、土壌に含まれる微生物としては、細菌より真菌の方が多いと考えられている。ここで真菌は、一般的には菌糸と呼ばれる糸状の多細胞の菌体を形成し、複数の菌糸が集まって子実体を形成する。子実体は一般的には胞子を形成し、胞子は発芽して菌糸を伸長させる。なお本明細書においては、糸状の菌体(菌糸)を形成する多細胞生物である真菌を糸状菌と称し、菌糸を形成しない酵母のような単細胞の菌類と糸状菌との総称を真菌とする。
【0007】
このように真菌と細菌とは生活史が大きく異なるが、植物の多くは、根やその周囲土壌(根圏と称する)で糸状菌の菌糸と共生している。共生には、相利共生や偏(「片」とも書く)利共生などがあり、共生の型が一方にとって害がある寄生である場合、寄生された生物が病害にかかるといった不利益がある。
【0008】
特定微生物資材は、育成する植物に有益な機能を奏する微生物を特定し、これを資材化したものである。微生物を資材化するためには、微生物と植物との関係を解明して育成する植物に有益な機能を奏する微生物を見出し、植物にとって有益であることが確認された微生物を人為的に単離して増殖させ、さらに資材化する必要がある。
【0009】
しかし微生物は肉眼で観察できず、また人為的に培養できる微生物は全体の1%に満たないとも言われ、特定微生物資材として用いられている微生物種は限られている。特に、真菌は細菌に比べて産業利用や研究が進んでおらず、特定微生物資材として用いられている真菌種はトリコデルマ属や菌根菌などに限られている(特許文献1)。
【0010】
このように植物に有益な微生物を特定しこれを資材化することは容易ではなく特定微生物資材の開発は高コストであるため、得られた特定微生物資材も高価になりがちである。一方、種類や機能が特定されていない微生物を資材化した複雑系微生物資材は特定微生物資材に比べて安価に開発製造できる。こうした複雑系微生物資材としては、生ごみを堆肥化(ぼかし肥料)とするために生ごみに混ぜる発酵促進剤や、堆肥や土壌に混ぜる微生物の混合物などがある。
【0011】
複雑系微生物資材は一般的には、生ごみや動植物残渣などの有機系資材を基質として資材に含まれる微生物が増殖することで有機系資材を無機化して窒素などの養分を植物に供給する。複雑系微生物資材に含まれる複数種類の微生物は、それぞれが異なる分解特性を有するため、種類や性状が異なる様々な有機系資材を無機化して土壌改良材や肥料にできる。一方で、複雑系微生物資材に含まれる複数種類の微生物で構成する微生物群集(微生物叢)の構成や機能は複雑で、解明や人為的な制御は容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】再表2017/188051
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
植物栽培用の資材は従来、他国産品を原料とし、国際的に取引されてきたが、環境保全や地政学リスクの観点から国産化が求められつつある。また、移送コストの観点からは植物栽培用資材の消費地での原料調達と生産、つまり「資材の地産地消」が望ましい。
【0014】
植物栽培を行う農林地は一般的には都市部ではなく農山村部にあり、農林地やその周辺部から産出される農作物残渣や剪定枝といった有機系資材はバイオマス資材の原料となる。このため有機系資材を原料としたバイオマス資材は資材の地産地消に適している。しかし、ある一定の範囲の地域(以下、「特定地域」)で産出される有機系資材は一般的に多種多様であり、特定地域から均質な有機系資材を大量かつ安定的に調達することは難しい。
【0015】
このため、特定地域で産出される有機系資材を原料とした資材の地産地消を実現するためには、当該地域で産出される多種多様な有機系資材をバイオマス資材とする多種多様な技術が必要となる。すなわち特定地域での資材の地産地消を実現するためには、多種多様な有機系資材に適した資材化方法を検討して選択する必要がある。また、選択した資材化方法が多様であれば資材作製工程も多様化する結果、資材化方法の選択と資材作製工程の管理が複雑化する。
【0016】
また、バイオマス資材は化成資材に比べて製造販売や保管、取り扱いが難しいといった課題もある。例えば複雑系微生物資材は、種類や機能が特定されていない複数種類の微生物群集を用いているため、奏される機能が微生物群集の構成に左右され、作用機序を科学的に説明したり人為的に制御したりすることが難しい。
【0017】
特定微生物資材は、種類や機能が解明されている特定の微生物を用いているため、複雑系微生物資材に比べて作用機序が明確で効果を人為的に奏させやすい。特に単細胞微生物を資材化した微生物資材は、資材化した微生物が増殖しやすい条件を整えることで比較的機能を奏させやすい。細菌や酵母などの単細胞微生物は、細胞分裂により増殖するため環境条件が良いと速やかに増殖するためである。
【0018】
それでも微生物資材として施用された微生物の活性は施用された場所に生息する他の生物や物理化学的環境に左右されるため、化成資材に比べて安定した効果を奏させることは容易ではない。特にトリコデルマ属菌のような糸状菌を資材化している場合、その活性は菌糸の状態に左右される。このため、糸状菌を微生物資材としている場合は細菌を微生物資材としている場合に比べて安定して期待される効果を奏させがたい。また、一般に多細胞生物で有性生殖期を持つ糸状菌は、単細胞で分裂により増殖する細菌に比べて遺伝子が変異しやすいと考えられる。このため細菌に比べて、資材化された特定の糸状菌株の性質が変異するリスクも高い。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題に対して特定地域で産出される多種多様な有機系資材のバイオマス資材化を簡易効率化することを目的とする。また、バイオマス資材化の機能を奏しやすくすることを目的とする。
【0020】
本発明は、動植物由来の廃棄物(以下、「バイオマス廃棄物」)を原料とする有機系植物栽培用資材を製造するための情報処理システムであって、種類が異なるバイオマス廃棄物について、その種類と発生場所、発生時期および発生量を入力することで、発生場所と発生時期が所定範囲にあるバイオマス廃棄物を効率的にバイオマス資材化する方法を決定する情報処理システムを提供する。
【0021】
バイオマス廃棄物を資材化する方法としては、バイオマス廃棄物を炭化する炭化処理や灰化する焼却処理、バイオマス廃棄物を生物的に変成させる生物処理、加熱変成させる熱処理、化学変成させる化学処理、および物理的に破砕などする物理処理などがある。本発明に係る情報処理システムは、バイオマス廃棄物の種類ごとに、その性状を保持するデータベース(バイオマス廃棄物マスタなど)を参照して、バイオマス廃棄物に係る情報の入力値に基づいて、所定範囲で所定時期に発生するバイオマス廃棄物を原料として作製しうるバイオマス資材の種類とその資材化方法とを決定する演算部を有する。
【0022】
バイオマス資材には、バイオマス廃棄物を生物処理して得られる微生物処理資材が含まれる。バイオマス廃棄物を生物処理するために用いる微生物(以下、「資材源微生物」)としては、機能や種類が特定されていない複数種類の微生物群集を用いてもよく、種類や機能が特定されている特定の微生物を用いてもよい。植物に友好的な機能を奏する(以下、「植物友好的共生型」)特定の微生物として、土壌改良材や生物農薬として用いられている、枯草菌やシュードモナス属細菌のような細菌類や糸状の放線菌および真菌などが知られており、これらの任意の微生物を資材源微生物として用いることができる。
【0023】
ここで糸状菌には、植物根と一体化して「菌根」と呼ばれる共生構造を構築するタイプ(菌根菌)と、菌根を形成せずに共生関係を構築するタイプ(非菌根性糸状菌)とがある。菌根菌は、菌根を形成して植物根との共生関係を構築すれば、共生関係を維持しやすく植物と菌根菌双方にとっての共生(相利共生)の利益を長期安定的に持続させることが期待できる。ただし、菌根菌はその生育に植物を必要とする(以下、「絶対共生型」と称する)ため、人工的に増殖させることが難しい。
【0024】
一方、非菌根性糸状菌は、菌根を形成することなく植物体内に菌糸を侵入させたり、植物の根圏で菌糸を伸長させて植物と密接に関係したりして植物と共生関係を持つと考えられている。非菌根性糸状菌は、植物根と共生させることなく、一般的な培地や動植物残渣を基質としてその菌だけを人工的に純粋培養(単離)できる(以下、「単独培養型」と称する)。
【0025】
本発明で資材源微生物として用いる糸状菌としては、菌根菌であってもよく非菌根性糸状菌であってもよいが、非菌根性糸状菌の方が調製容易であるため、好ましい。
【0026】
糸状菌は植物と友好的に共生するタイプ(植物友好的共生型)を用いる。なお、本明細書においては植物と微生物との共生関係について、片方のみが便益を受けている場合を偏利共生、双方が便益を受けている場合を相利共生と称する。また、偏利共生でも、利益を得ていない側が不利益を被っていない場合は「片利共生」とし、便益を得ていない側が不利益を被る場合を「寄生」とする。さらに、共生している生物の一方は利益を得ている場合は、「友好的共生」とする。本明細書において植物友好的共生には、植物が利益を受けている友好的共生と相利共生とを含むものとする。
【0027】
機能や種類が特定され、人為的に単離培養された微生物は、資材源微生物としてバイオマス廃棄物の生物処理に使用できるほか、資材化して土壌改良材、肥料、または生物農薬としても使用できる場合がある。例えば、非菌根性糸状菌のトリコデルマ属菌は、植物の成長促進および病害防除効果があるとされており、トリコデルマ属菌を資材化した液状や固形の資材(特定微生物資材)が市販されている。
【0028】
本発明では、資材源微生物として用いる微生物として、バイオマス資材の資源化地またはそれを施用する使用地(両者の近傍含む)で採取した微生物を用いることが好ましい。具体的には、トリコデルマ属などの特定の植物友好的共生型微生物を複数の地域で採取し、機能確認して資材源微生物として資源化しておくとともに、その採取地から定められる所定の範囲を好適使用地情報として、情報処理装置に記憶させておく。好適使用地としては、資材源微生物を用いて作製する微生物処理資材の作製地(バイオマス資源化地)、その施用地、またはバイオマス廃棄物の発生地を起点とし、起点とする場所と陸続きの地域で、概ね半径50km~200km以内の範囲の地域とすることが好ましい。遺伝資源の拡散を防止するとともに、土地になじんだ微生物を使用するためである。
【0029】
資材源微生物としては、人為的に単離同定され系統種類(属性)や機能が判明している微生物(同定済み微生物)を用いてもよく、複数種類の微生物群集(微生物叢)であって微生物叢の構成や機能が特定されていない微生物群集(「不特定微生物群集」)を用いてもよい。資材源微生物は、作製するバイオマス資材の種類に応じて、資材源微生物の種類と機能を考慮した好適な使用態様を定めておくことが好ましい。
【0030】
例えば、植物病害防除機能を有する同定済み微生物からなる資材源微生物であれば、好適な使用態様としては、植物の播種または定植時の培土として用いられるバイオマス資材に混合する、などである。好適使用地は上述した範囲から資材源微生物の使用態様に応じて決定するとよい。例えば、培土に混合する場合であれば、作製された微生物処理資材の施用地と陸続きの地域で上述した距離範囲の地域とするとよい。
【0031】
あるいは、資材源微生物が不特定微生物群集である場合、バイオマス廃棄物を堆肥化することに好適に用いられるため、好適使用態様をバイオマス廃棄物に混合する、とするとよい。この場合、好適使用地は、バイオマス廃棄物の発生地またはバイオマス資源化地を起点とし、起点と陸続きの上述の範囲内とするとよい。
【0032】
資材源微生物は、施用の際、増殖活性が高い状態で用いることが好ましい。特に糸状菌は、菌糸が伸長している状態で用いることが好ましい。特に糸状菌を同定済み微生物として用いる場合は、糸状の菌糸が伸長している状態で施用するとよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、植物栽培用の資材の地産地消を簡易化及び効率化する。また、本発明はバイオマス資材化の機能を奏しやすくする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施態様に係る情報処理システムの構成図である。
図2】システム1が生成し、入力情報を入力する画面例である。
図3】システム1が保持するデータベースのデータ例である。
図4】システム1が保持するデータベースのデータ例である。
図5】実施例、比較例1、2で育てたネギ苗の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。
<システム構成>
図1は、本発明の第1実施態様に係る情報処理システム1の構成を示す概要図である。システム1は、サーバ10と入出力端末20とを含む。サーバ10は概念上、情報の入出力を制御し入出力端末20とともに取得部を構成するフロントエンドと、演算処理を行う演算部300と記憶部200を有するバックエンドとを有する。フロントエンドは、バックエンドが生成し入出力端末の表示画面に表示させる入出力画面や、入出力端末20から入力された情報を記憶部に記憶させるといった情報の入出力を行う。
【0036】
記憶部200には、バイオマス廃棄物や資材源微生物などに関するデータを保持するデータベースと、演算部300による演算処理を行うための計算式やプログラムなどを保持するプログラム保持部が概念上、設けられている。演算部300は、入出力制御部を介して記憶部200に保持されたデータやプログラムを呼び出し、演算処理を行う。
【0037】
入出力端末20は、入出力装置と表示装置を有する情報処理端末であり、入出力装置としてのマウスやキーボードや表示装置としてのディスプレイを有するコンピューター、タッチパネル式の表示画面上で入出力を行うタブレット型端末などで構成できる。本実施態様の入出力端末20は、インターネットその他の通信回線でサーバ10と接続され、サーバ10の入出力制御部を介してサーバ10が生成した入出力画面を表示画面に表示する。
【0038】
<情報処理>
図2は、システム1の利用者(ユーザ)によるバイオマス廃棄物の発生情報を登録するための画面(以下「「発生登録画面」)3の例である。
【0039】
システム1では、ユーザは氏名やユーザを一意に特定するための識別符号(ユーザID)、システム1を利用するためのパスワードを入力することで、システム1が利用できるように構成している。システム1では、ユーザは図示しないユーザ登録画面から、自らの氏名や識別情報等の属性情報の他、自らに係るバイオマス廃棄物発生場所について位置情報や当該場所を一意に特定する識別符号などの発生場所情報を登録することができる。ユーザの属性情報や当該ユーザに係る発生場所情報は、記憶部200のユーザデータベース(図示せず)に保持される。
【0040】
このシステム1では、ユーザが入出力端末20からサーバ10にアクセスしてバイオマス廃棄物の発生予定を登録する処理を要求すると、サーバ10が発生登録画面3を生成して入出力端末20に表示させる。システム1は、複数種類のバイオマス廃棄物の各々について、種類(一般名称)と性状とを記憶するバイオマス廃棄物マスタ3(図3)を記憶部200に保持している。
【0041】
バイオマス廃棄物マスタ3は、バイオマス廃棄物の種類ごとに、性状として少なくとも当該廃棄物の含水率とC/N比とを保持し、好ましくは炭素と窒素の含有量、さらに好ましくは窒素と炭素に加えてリンとカリウムの含有量(いずれも乾重%)の値を保持しているとよい。値は一般的な値の幅や平均値などでよい。このようなバイオマス廃棄物マスタ3は、公知のバイオマス成分データベースから作成できる。なおバイオマス廃棄物マスタ3を作成して記憶部200に保持させる代わりに、公知のバイオマス成分データベースにアクセスし、バイオマス廃棄物の種類をキーとしてその性状に関する情報を取得するようにしてもよい。
【0042】
ユーザは、システム1が生成する発生登録画面3から、バイオマス廃棄物マスタ3に保持されているバイオマス廃棄物の種類を選択することでバイオマス廃棄物の種類を特定し、その発生時期、発生場所、発生量(見込み)を登録する。システム1には、バイオマス廃棄物を資源化する場所(バイオマス資源化地)の位置情報と、当該バイオマス資源化地にバイオマス廃棄物を移送するための移送用情報(例えば移送時間とコスト)とが保持されている。また、複数のバイオマス資源化地のそれぞれについて、複数個所で発生するバイオマス廃棄物のうち所定の期間内に当該バイオマス資源化地に移送できる時期および地域を算出するための計算式(集積用計算式)も保持されている。バイオマス資源化地の位置情報、移送用情報および集積用計算式は、システム1では記憶部200に記憶されている。
【0043】
システム1の演算部300は、発生登録画面3からバイオマス廃棄物の種類と発生時期、場所、発生量(見込み)が登録されると、これら入力情報と、バイオマス資源化地の位置情報、および移送用情報を参照して集積用計算式を用いて、バイオマス資源化地に、資源化プロセス開始時点に遅滞なく(例えば開始前日までに)開始時点に必要となるバイオマス廃棄物を集積できる時間的、地理的距離範囲(所定範囲)を算出する。例えば、所定範囲の時期としては、発生場所またはバイオマス資源化地で保管可能な期間と、発生場所から資源化地への輸送に要する期間とを考慮して、保管と輸送コストが最小~許容できる最大の範囲となる期間を所定の期間とする、などである。具体的には、バイオマス廃棄物の発生場所(農地)に1週間、放置できる場合、資源化プロセス開始前1週間から前日までとする、などである。
【0044】
システム1は、バイオマス廃棄物について、バイオマス資材とする場合の品質に係る情報も登録できるようにしている。本明細書において、バイオマス資材とする場合の品質情報とは、バイオマス廃棄物に含まれる生物毒性物質や難分解物質に関する情報とする。例えば、剪定枝であれば樹種に応じたリグニンなどの難分解性物質の含有度合い、もみ殻などの農作物残渣であれば有機栽培、特別栽培などの環境保全型栽培、慣行栽培の別によって生物毒性物質や難分解物質の含有度合いをランク分けしている(図3参照)。
【0045】
このシステム1は、このようにバイオマス廃棄物の生物毒性および生物分解特性をランク分けし、生物処理が難しいランクであるか否かを演算部300が判定するように構成している。演算部300は、生物処理が難しいと判定した場合、バイオマス廃棄物の種類と性状を参照し、生物処理以外の資源化方法、例えば炭化や物理化学処理による成分回収処理といったバイオマス資材の作製方法およびその方法により得られるバイオマス資材の種類を決定する。
【0046】
演算部300は、生物処理が可能と判定した場合、演算部300は所定の範囲内の時期と地域で発生する1以上の種類のバイオマス廃棄物の性状と発生量を参照し、複数種類のバイオマス廃棄物を生物処理に適した配合を算出する。生物処理としては、堆肥化やメタン発酵などがある。バイオマス廃棄物を資源化するために用いる微生物(資材源微生物)としては、発酵促進剤として提供されている微生物群集や、メタン発酵汚泥などを用いることができる。
【0047】
資材源微生物は、任意の微生物を使用できるが、バイオマス廃棄物を資源化する資源化地またはバイオマス廃棄物の資源化により得られる微生物処理資材の施用地、またはバイオマス廃棄物の発生地から選ばれた1以上の場所を起点とした所定範囲内の場所で採取、単離培養されたものを用いることが好ましい。そこで、システム1では、生物処理に用いる複数種類の微生物について、各微生物を特定する識別情報(微生物群集名や同定済み微生物の属、種、系統、および菌株情報、好ましくは特定の遺伝子配列情報など)と、当該微生物が奏する機能と、その採取場所に基づいて決定された好適使用地情報と、をデータベース化して保持させておく。また、好適使用態様もデータベースに保持させておくとよい。
【0048】
植物は栽培地で栽培、採種、播種することで土地になじむと言われている。同様に、微生物も施用する土地に生息していた微生物が施用地で効果を奏しやすいと考えられ、また、遺伝資源の人為的拡散防止の点でも施用地に生息していた微生物を用いることが好ましい。そこで、植物栽培にとって有益な機能を奏することが判明している微生物を、施用地(その近傍、すなわち陸続きで半径200km以内程度を含む)で採取し、資材源微生物とするとよい。本システム1は、このようなバイオマス廃棄物からのバイオマス資材の作製に好適に用いられ、上述した資材源微生物マスタ4を保持する。
【0049】
図4に、資材源微生物の属性情報と機能、機能に応じた好適使用態様、採取場所、及び採取場所に基づいて決定された好適使用地情報を保持する資材源微生物マスタ4の例を示す。本実施態様では、資材源微生物マスタ4には不特定微生物群集と同定済み微生物との情報が登録されている。同定済み微生物については、単離された1種類(1菌株)ごとに、属性(属、種、遺伝子配列など)、植物栽培にとって有益な機能(病害防除、成長促進など)、採取地、好適使用態様、および好適使用地の情報を保持している。不特定微生物群集は、群集を特定する名称や識別符号を属性情報とし、機能、採取地、好適使用態様および好適使用地の情報が登録されている。同定済み微生物や不特定微生物群集としては、市販の微生物資材を利用してもよく、図4の例では市販の不特定微生物群集について属性として商品名を登録している。
【0050】
同定済み微生物としても、シュードモナス属細菌やトリコデルマ属糸状菌など特定微生物資材として資材化されている微生物を用いることができる。しかし、上述した通り施用地で採取した微生物を用いる方がよく、この場合、機能と採取地と採取地に基づいて決定された好適使用地を示す情報と、好ましくは採取年月日とをデータベースに保持し、マスタ化するとよい。施用地で採取した同定済み微生物は、人為的に単離培養して単離培養物を資材化して特定微生物資材を作製し、これを資材源微生物としてもよく、単離培養物(種菌)を資材源微生物としてもよい。
【0051】
不特定微生物群集は、バイオマス廃棄物を堆肥化した堆肥に含まれる不特定微生物群集として、堆肥とともに採取できる。不特定微生物群集は、培養および生息基質となっている堆肥などとともに、バイオマス廃棄物に混合することで施用できる。
【0052】
一方、同定済み源微生物には、施用地で増殖することで植物栽培に有用な機能を奏するものも多い。このように施用地で効果を奏させたい同定済み源微生物は、バイオマス廃棄物を無機化して資材化するために用いるより、バイオマス廃棄物から作製された微生物処理資材に含ませて施用地で増殖するように施用することが好ましい。
【0053】
ここで、資材源微生物は施用時に活性が高い状態で施用することが好ましく、特に特定資材源微生物が糸状菌である場合は、菌糸が伸長している状態で施用することが好ましい。単離培養され保管されている糸状菌、特に資材化されている糸状菌は、活性が低く、そのまま施用しても所望の効果を奏せない場合があることが見出されたためである。
【0054】
そこで、本発明の他の実施態様として、微生物を用いる植物育成法または植物栽培支援法として、特に糸状菌を資材化した特定微生物資材を菌糸が伸長している状態で施用する植物育成法および植物栽培支援法を提供する。本発明の他の実施態様は後述する。
【0055】
システム1の演算部300は、バイオマス廃棄物に関する入力情報を基に、本実施態様では生物処理の可否を判定し、生物処理が可能と判断した場合は、所定の時間的地理的範囲内で発生するバイオマス廃棄物を生物処理に適した配合になるための計算を行う。例えば植物系のバイオマス廃棄物は一般的には生物処理の中でも堆肥化に適しており、演算部300は、所定範囲の地域と時期に発生するバイオマス廃棄物が、堆肥化に適した性状(特にC/N比と含水率)になる配合を算出する。
【0056】
またバイオマス廃棄物を液化して液肥とし、液肥を培養基質として資材源微生物を増殖させて微生物資材とするというように、複数のバイオマス資材化技術を組み合わせてもよい。システム1では、複数種類のバイオマス廃棄物について、所定の時期的、距離的範囲内で発生するバイオマス廃棄物の情報を取得し、バイオマス廃棄物の性状などを考慮することで最適なバイオマス資材化方法を算出する。
【0057】
特にバイオマス資材の作製に生物処理を採用する場合は、バイオマス資材を作製または施用する地域に好適な生物を選択できる。このため、本発明によれば地域で発生する小規模で多様なバイオマス廃棄物を効率的に資源化でき、特に生物処理について効果を奏しやすくできる。
【0058】
<植物育成方法および植物栽培支援方法>
次に、本発明の別の態様に係る植物育成方法および植物栽培支援方法について説明する。この実施態様においては、植物に友好的な糸状菌を資材源微生物とした資材から液剤を調製する。液剤を調製するための液体培地としては、糸状菌の増殖基質を含めばよく、非菌根性糸状菌を用いる場合は、市販の液肥、一般的な糸状菌培養液(ポテト抽出液など)、その他糸状菌の増殖基質となる液体(例えば米のとぎ汁をベースに養分調整した液体など)を使用できる。市販の液肥としては、酵母抽出液のような天然素材由来のものが好ましい。
【0059】
液体培地は、糸状菌の増殖に適した濃度とし、例えば市販の液肥であれば植物に施用する場合より濃い方がよい。液体培地は、好ましくは煮沸するなどの簡易な殺菌処理をし、資材に含まれる糸状菌を種菌として接種する。液体培地に接種する種菌は、資材を固体培地(平板)で培養して単離したものとしてもよいが、資材をそのまま種菌として液体培地に接種してもよい。種菌の摂取量は接種後の液体培地中に菌糸が肉眼でごくわずか確認できる程度でよく、具体的には液体培地500mlに対して10~70ml(液剤の場合)程度、または0.5~2g(固形剤の場合)程度の少量でよい。
【0060】
種菌を接種した液体培地は、好ましくは糸状菌の増殖に適した温度(25~35℃)で培養する。培養は、他の微生物の混入を防止して好気的条件で行うことが好ましく、振とう培養すると培養時間を短縮できる。培養は、液体培地を静置した場合の底部1/10~1/20程度の部分に菌糸が目視で確認できる程度に増殖するまでとするとよい。目視でごくわずかしか確認できない少量の種菌を接種した液体培地を培養して菌糸が目視観察できる状態まで増殖していれば、菌糸が伸長している状態と考えられるためであり、およその培養時間は2~5日程度である。
【0061】
液体培地を殺菌し、資材に含まれる糸状菌を単離培養した種菌を用いれば、目的とする(すなわち資材化された)糸状菌以外の微生物の混入が抑えられ、資材化された糸状菌の菌糸の含有率を増大できる。ただし、単一の糸状菌を資材化した資材の場合、資材には資材化された糸状菌以外の微生物が混入している恐れは低いため、滅菌しない液体培地に、種菌として資材をそのまま接種してもよい。
【0062】
上述した手順により調製した生菌糸含有液剤は、植物の地上部に散布(葉面散布)または地下部に浸透させる。なお、植物の地上部および地下部を「栽培系」と総称する。地下部に浸透させる方法は限定されず、育成対象の植物の定植時に苗を液剤に浸漬する、育成対象植物の根圏に散布または注入する、生菌糸含有液を浸漬した土壌に植物の種子や苗を植える、などがある。
【0063】
生菌糸含有液剤を調製する種菌とする糸状菌は、育成する植物や、その植物を育成する条件によって選定することが好ましく、特に植物を育成する環境に適応的な糸状菌が好ましい。植物を育成する環境(例えば農地やその近隣の土壌など)には、育成する植物にとって友好的な土着の糸状菌が存在することも多い。このような土着の糸状菌は、一般的には、市販される資材化されている糸状菌と同属同種であっても、機能の程度が異なり、当該土地ではより高い機能を奏する場合もある。
【0064】
このため植物を育成する土地や育成する植物を考慮し、育成する土地と植物とに適した植物友好的共生型の糸状菌を用いれば、市販の資材から生菌糸含有液剤を調製するより良い効果が得られる場合もありうる。ただし、市販の資材を用いることがよいのか、土着の糸状菌から友好的共生型の糸状菌を取得すればよいかの判断や、植物友好的共生型糸状菌を期待される効果を奏せるように導入する方法などを決定するためには、専門的な知識やノウハウを要する。
【0065】
そこで、本発明の別の態様では、植物育成者とは別に、植物友好的共生型糸状菌の選定やその使用法の設計を行う植物栽培支援者が、植物育成者に対し、植物友好的共生型糸状菌の選定やその使用法の設計を提供する。すなわち、微生物資材については、一般的な資材にも増してその使用法のいかんにより効果や手間が左右されるため、植物の栽培を行う植物育成者と、資材に精通した栽培支援者とが役割分担して植物を育成することが好ましい。
【0066】
具体的には、植物栽培の支援者が、栽培する植物の種類や土地の状況(地形や地質、土壌の物理化学生物的状態など)を考慮して、植物友好的共生型の糸状菌を決定し、当該糸状菌が育成植物との共生関係を構築しやすい条件で当該糸状菌を施用するための方法や施用時期を決定し、植物栽培を支援する。
【0067】
この場合、植物友好的共生型の糸状菌は、資材化されていない糸状菌を、植物を育成する土地やその周辺、あるいは糸状菌分譲機関などから取得して種菌としてもよい。また、植物が発根するタイミングや定植時など、糸状菌を植物の栽培系に導入する時期や植物種に応じて、糸状菌を植物の栽培系に導入する形態も決定する。例えば、植物の種類や時期によっては、糸状菌を液剤とせず培養土に混合するなどする導入法を選択してもよい。
【0068】
<実施例1>
実施例1として、市販のトリコデルマ液剤を種菌として、市販の液肥に接種し、培養して生菌糸含有液剤を調製した。このトリコデルマ液剤は、トリコデルマ属菌を液体培地で培養したものを冷凍保存していた資材であり、静置した液剤容器の1/10程度の領域に、緑黒色の培養菌体が沈殿した状態であった。
【0069】
市販の液肥としては、酵母抽出液を用いた。この酵母抽出液は、液肥として施用する場合は1000倍に希釈して使用することが推奨されており、500倍希釈して煮沸して液体培地とした。煮沸後、冷却した液体培地500mlに、トリコデルマ液剤を10ml接種し、20~25℃の室温で静置培養した。
【0070】
培養開始後、1日目は目視では液体培地中に菌糸が観察できなかった。3日後、液体培地中に菌糸が目視でき、4日目は菌糸量が増大し、培養容器を静置すると底部1/10程度の領域に菌糸が確認できた。液体培地の色は培養開始前と大差はなく、菌糸は着色していない無色~白色であったため、菌糸は液体培地中で伸長している状態で胞子形成は行われていないと判断した。なお目視で観察できる菌糸量が前日に比べ増大していたことから、菌体は培養開始から3~4日で対数増殖期に達したと考えられた。そこで、この培養液100mlを蒸留水100mlで希釈し、市販の液肥の希釈倍率を1000倍とした生菌糸含有液剤を得た。
【0071】
育成する植物として、市販のネギ苗(商品名「ブラックアロー」)を、得られた生菌糸含有液剤に浸漬して定植した。実施例、比較例1および比較例2には、大きさや本数がほぼ同じネギ苗を用いた。
【0072】
<比較例1>
市販のトリコデルマ液剤を培養した培養液の代わりに、冷蔵保存を続けたトリコデルマ液剤を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0073】
<比較例2>
トリコデルマを含まない、市販の液肥のみ(1000倍希釈)を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0074】
図1は、定植して2か月後の実施例1、比較例1、比較例2のネギの写真である。右端が比較例2、中央が比較例1、左端が実施例1である。実験開始時に起立していたネギの葉の数は、いずれも5本であったのが、定植2か月後では実施例が13本、比較例1が9本、比較例2が11本であり、起立しているネギの葉の平均の長さは、実施例が約28cm、比較例1が約19cm、比較例2が約24mであった。
【0075】
トリコデルマ属糸状菌は、ネギの生育を促進する効果があることが確認されているものの、上述した実験結果が示す通り、資材化されたトリコデルマ属糸状菌は、そのままではネギ生育促進効果は低かった(比較例1)。一方、資材化されたトリコデルマ属糸状菌を菌糸伸長させて施用した場合(実施例1)、ネギは良好な生育を示した。
【0076】
以上、示した通り、本発明によれば、期待される効果を奏することが難しい微生物資材でも、期待される効果を奏させることができる。
【0077】
本発明は、植物栽培用資材を他国依存から地産化を促進し、植物栽培地域のバイオマス廃棄物や微生物などの地域資源を活用した植物栽培に寄与する。
【符号の説明】
【0078】
1 情報処理システム
3 登録画面
図1
図2
図3
図4
図5