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特開2023-182227フリクションドライブローラ方式ウインチ
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  • 特開-フリクションドライブローラ方式ウインチ 図1
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  • 特開-フリクションドライブローラ方式ウインチ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182227
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】フリクションドライブローラ方式ウインチ
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/74 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
B66D1/74 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095710
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚田 太郎
(57)【要約】
【課題】 フリクションドライブローラ方式ウインチのローラに於いて、テザーの巻き付き位置を安定に保ちつつ、テザーの温度上昇を回避できるように、ローラ周面の適当なランプ角と円周方向の高い摩擦係数を維持しつつ、ローラ周面の回転軸方向の摩擦係数を低減する。
【解決手段】 負荷2に接続されたテザーの引き出しと巻取りのためのウインチ4は、テザー3を巻き付けて収納するスプール5と、負荷とスプールとの間にてテザーが巻回され、負荷の側に於いてスプールの側よりも高い張力にてテザーを牽引するフリクションドライブローラ6とを含み、フリクションドライブローラの周面6a、6bが、その回転軸方向の両端の間の部位6cから両端に向かって大径となるよう傾斜し、周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝6gが円周方向に亙って複数形成されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に接続されたテザーの引き出しと巻取りのためのフリクションドライブローラ方式のウインチであって、
前記テザーを巻き付けて収納するスプールと、
前記負荷と前記スプールとの間にて前記テザーが巻回され、前記負荷の側に於いて前記スプールの側よりも高い張力にて前記テザーを牽引するフリクションドライブローラとを含み、
前記フリクションドライブローラの周面が、その回転軸方向の両端の間の部位から前記両端に向かって大径となるよう傾斜し、前記周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝が前記円周方向に亙って複数形成されているウインチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリクションドライブローラ(キャプスタンドラム)方式ウインチの構造に係り、より詳細には、カイトシステムに於けるカイト(凧)やバルーン等の係留飛行体を地上と接続するテザーの引出し及び巻取りに利用可能なウインチに係る。
【背景技術】
【0002】
カイトシステムに於いて係留飛行体を地上と接続する長大なテザーを、その運用高度の高低と距離の長短に伴って高張力~低張力に亙って種々変化する条件にて、出し入れするための地上設備として、連続運転可能なウインチが有用である。そのようなウインチに関して、魚釣りのリールの如く、単一のスプールのみでテザーの収納と張力発生・制御を行う場合、低張力で巻かれたテザーの下巻き部分に高張力で巻き付け力が発生すると、テザーが高張力にて下巻き部分へ切り込み、潜り込む現象が発生し、テザーの損傷や絡みを生じ得る。そこで、上記の如く係留飛行体と地上とを接続するテザーのためのウインチとして、テザーを巻き取って収納するスプールと係留飛行体との間に、キャプスタンドラム又はフリクションドライブローラと称される動力付きのプーリを配置し、かかるプーリにより係留飛行体を牽引する張力の発生を行うフリクションドライブローラ方式又はキャプスタンドラム方式(以下、「FDR方式」と称する。)のものを採用することが考えられている。そのような方式の一般的なウインチの構成としては、例えば、特許文献1に於いて、キャプスタンドラムのワイヤ(テザー)の巻取り面部が、その中央部から両端にかけて斜め上方への傾斜面を有する構成が開示されている。特許文献2は、キャプスタン式ウインチのキャプスタンの巻胴部に於ける両外方部分の傾斜を中央部分よりも急にした構成を開示している。なお、FDR方式ウインチの構成ではないが、特許文献3には、弾性のある細長い要素(ケーブル、ロープ等)を引くためのデバイスにおいて、外径が一定の回転ドラムの表面に長手方向のスプライン(凹凸)を設け、外周回る方向には高い摩擦係数を、長手方向にはより低い摩擦係数を与えることが開示されている。特許文献4には、無端ロープとプーリを用いた直動ユニットに於いて、無端ロープにらせん状線条体を巻き付け、プーリにらせん状線条体と係合する係合溝を設け、プーリとロープのすべりを防止することが開示されている。特許文献5には、ワイヤを巻き取る巻き取り用ドラムの巻き取り面を傾斜面とすることで、ワイヤが整列巻きされ、巻き取り、繰り出しが円滑に行われ、ワイヤに疵がつかず、耐久性が向上することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実全昭60-56687
【特許文献2】特開平5-43193
【特許文献3】特表2008-536780
【特許文献4】特開2000-344473
【特許文献5】特開2001-55868
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の如きカイトシステムの係留飛行体に接続されるテザーとして、軽量で高強度の樹脂製テザーは、テザーの出し入れ・保持に要するエネルギーが少なく、大幅な性能向上が見込まれ、有利である。しかしながら,樹脂製テザーは、鋼製テザーに比べて、熱に弱く、高温となると、強度が大幅に低下することとなる。この点に関し、FDR方式ウインチでは、テザーがフリクションドライブローラ(以下、「ローラ」と称する。)の周面上でその中央付近に巻き付くように、ローラの周面は、図1(B)の如く、回転軸方向の中間部分から両端へ向かって傾斜するよう形成され、テザーは、ローラの回転軸方向に滑りながら、巻き取られつつ引き出されることとなるので、テザーに於いては、滑りにより摩擦熱が発生し、昇温することとなる。かかる摩擦熱に関し、より詳細には、まず、ローラの回転軸方向のテザーの滑りに対する摩擦が大きいと、滑りの際に発生する摩擦熱が大きくなる。また、かかる摩擦が大きい場合、テザーがローラ周面上にて確実に回転軸方向に滑るように、ローラ周面の傾斜の角度(ランプ角)を大きくされるが、そうすると、ローラ周面の円周方向のテザーの滑り量が増大すると共に、テザーの滑り速度を高くなり、やはり、摩擦熱が大きくなる。更に、単に、ローラ周面のランプ角を小さくした場合、テザーの巻き付く位置が安定せず、スティックフリップや絡まりが生じ易くなってしまう。そして、ローラ周面は、その円周方向については、テザーができるだけ滑らないように十分に高い摩擦係数を有している必要がある。従って、FDR方式ウインチのローラに於いて、テザーの巻き付き位置を安定に保ちつつ、テザーの温度上昇が回避できるようにするためには、できるだけ小さい適当なランプ角を維持しつつ、ローラ周面が、円周方向については、テザーができるだけ滑らないように高い摩擦係数を有し、回転軸方向については、テザーが滑り易く、摩擦熱が問題にならない程度に摩擦係数が低くできるようになっていることが好ましい。
【0005】
かくして、本発明の課題は、FDR方式ウインチのローラに於いて、テザーの巻き付き位置を安定に保ちつつ、テザーの温度上昇を回避できるように、ローラ周面の適当なランプ角と円周方向の高い摩擦係数を維持しつつ、ローラ周面の回転軸方向の摩擦係数を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記の課題は、負荷に接続されたテザーの引き出しと巻取りのためのフリクションドライブローラ方式のウインチであって、
前記テザーを巻き付けて収納するスプールと、
前記負荷と前記スプールとの間にて前記テザーが巻回され、前記負荷の側に於いて前記スプールの側よりも高い張力にて前記テザーを牽引するフリクションドライブローラとを含み、
前記フリクションドライブローラの周面が、その回転軸方向の両端の間の部位から前記両端に向かって大径となるよう傾斜し、前記周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝が前記円周方向に亙って複数形成されているウインチによって達成される。
【0007】
上記の構成に於いて、「負荷」とは、テザーに接続されてウインチを介して任意の位置にて係留若しくは保持される任意の物体であってよく、例えば、ウインチがカイトシステムに於いて用いられる場合には、係留飛行体であってよいが、これに限定されない。「スプール」とは、円筒状又は円柱状の形状を有し、その周面上に、上記の如くテザーが巻き付けられて、負荷の保持位置までの距離に応じて長さが調節されるテザーを収納するためのリールの如き部材である。「フリクションドライブローラ」とは、キャプスタンドラムとも称されるローラであり、その周面にて負荷とスプールとの間に接続されたテザーが、数回、巻き付けられて、周面とテザーとの間に作用する摩擦力と、負荷との間の張力とをバランスさせて、テザーに於ける負荷との間の張力及びスプールとの間の張力を調節する機能を有する部材である。本発明のウインチの基本的な作動に於いては、通常のFDR方式のウインチと同様に、テザーをスプールから負荷へ引き出す際又は負荷からスプールへ巻き取る際には、ローラが回転駆動されて、周面にてテザーの巻取りと引き出しが行われる。その際、テザーは、ローラの円周方向にはできるだけ滑らずに、回転軸方向に滑りながら、周面上を移動し、負荷へのテザーの張力は、ローラの周面上の巻回数により調節されることとなる。
【0008】
上記のウインチの構成に於いて、本発明の場合には、特に、上記の如く、フリクションドライブローラの周面が、その回転軸方向の両端の間の部位から両端に向かって大径となるよう傾斜し、周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝が円周方向に亙って複数形成される。かかる構成によれば、周面の円周方向に交差する方向に形成された溝により、周面の円周方向にはテザーができるだけ滑らないように摩擦係数が十分に高く保ったまま、ローラ周面の回転軸方向の摩擦係数が低減できることとなる。これにより、まず、ローラ周面の回転軸方向のテザーの滑りに対する摩擦が小さくなり、その分、摩擦熱の発生が小さく抑えられることとなる。また、テザーがローラの回転軸方向に滑り易くなることから、ローラ周面のランプ角が小さくても、ローラに巻回されたテザーの引き出される側の端が径の最小の部位へ来るように、テザーが容易に滑ることができるので、ローラ周面のランプ角をできるだけ小さくすることで、ローラ周面の円周方向のテザーの滑り量を小さくでき、また、テザーの滑り速度を低くでき、これらにより、テザーに於いて発生する摩擦熱を更に抑制することが可能となる。
【0009】
上記の本発明の構成に於いて、ローラ周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝は、より具体的には、ローラの回転軸方向と平行に形成されてもよく、ヘリンボーン又はハス歯状に、回転軸方向に対して角度を持って形成されてもよい。後者の場合、ローラにトルクが作用したときの回転軸方向への移動を補助する力が働くこととなる。溝の幅、深さ、密度、角度、ローラ上の分布は、実験的に決定されよい。アルミニウム製フリクションドライブプーリの場合、例えば、表面に対し数十μm程度の溝を形成すると、超高分子量ポリエチレン樹脂製テザーに対して十分な回転軸方向の摩擦低減効果と、円周方向の摩擦確保が可能であることが見出されている。ローラ周面に於けるランプ角は、一様であってもよいし、途中で複数段階に変化していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記の本発明の構成によれば、FDR方式ウインチのローラに於いて、ローラ周面にてその円周方向に交差する方向に延在する溝を形成することで、ローラ周面の円周方向の高い摩擦係数を維持しつつ、ローラ周面の回転軸方向の摩擦係数を低減することができ、これにより、ローラ周面の回転軸方向のテザーの滑りに対する摩擦を選択的に低減し、テザーに発生する摩擦熱の低減を図り、テザーの昇温の程度が抑制されることとなる。そして、ローラの構造をテザーの昇温が抑制できるものとすることにより、ウインチを介して係留飛行体などの負荷に接続されるテザーとして、軽量で高強度の樹脂製テザーを採用することができ、大幅な性能向上が期待されることとなる。本発明のウインチの構成は、カイトシステムに限らず、任意の用途に用いられてよい。
【0011】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1(A)は、本実施形態によるウインチが適用されるカイトシステムの模式図である。図1(B)は、本実施形態の対象となるウインチのフリクションドライブローラの模式的な断面図である。
図2図2は、本実施形態によるウインチのフリクションドライブローラの模式的な斜視図である。
図3図3(A)、(B)は、本実施形態によるウインチのフリクションドライブローラの模式的な斜視図(上)と側面図(下)であって、テザーの引出し時と巻取り時の回転方向、トルクの作用方向、テザーの移動方向を説明する図である。
【符号の説明】
【0013】
1…カイトシステム
2…係留飛行体(カイト)
3…テザー
4…ウインチ
5…スプール
6…フリクションドライブローラ
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
ウインチの構成
本実施形態のウインチは、例えば、図1(A)に模式的に描かれている如きカイトシステム1に於いて、カイト(凧)やバルーンなどの飛行体2に接続されて、飛行体2を空中に係留するためのテザー3の引出しと巻取りとを行うためのウインチ4として用いられてよい。かかるウインチ4は、端的に述べれば、テザー3を巻き取って収納するスプール5と、該スプール5と係留飛行体2との間に於いてテザー3が巻き付けられ回転駆動されるフリクションドライブローラ6(以下、「ローラ」と称する。)とを有するFDR方式のウインチである。かかるウインチ4を用いたシステムに於いては、端的に述べれば、スプール5の周面に巻回されたテザー3の一方の端がスプール5から引出されて、ローラ6の周面に数回巻き付けられた後、係留飛行体2へ接続された状態となっている。そして、テザー3とローラ6の周面との間に摩擦力が作用するので、係留飛行体2が風力にて上空に揚げられる際に、ローラ6から係留飛行体2の側のテザー3に作用する高い張力は、そのまま、スプール5には伝わらず、ローラ6とスプール5との間のテザー3には、テザー3とローラ6周面との間の摩擦力が差し引かれた低い張力が作用することとなる。これにより、スプール5から係留飛行体2までの距離に応じてテザー3の長さを調節するべく、スプール5でのテザー3の引出しと巻取りをする際に、スプール5の周面へのテザー3の巻き付け力が安定し、テザー3の損傷や絡みを防止できることとなる。
【0015】
フリクションドライブローラの構成
図1(B)に描かれている如く、上記の如きFDR方式のウインチ4のローラ6に於いては、典型的には、その回転軸Cx方向の両端の間の或る部位6cから両端へ向かって大径となるように周面6a、6bに傾斜が設けられる。かかる周面の傾斜により、周面上に巻き付けられるテザー3に於いて引出される側が周面に於いて最も径の小さい部位6cに位置決めされることとなり、テザー3とローラ6周面との間の摩擦力が安定することとなる。そして、後述の如く、係留飛行体2までの距離の変更のために、スプール5に於けるテザー3の出し入れの際には、テザー3は、ローラ周面6a又は6b上の部位から巻き付き始め、最小径の部位6cへ向かって、回転軸Cx方向に滑りながら移動することとなる。
【0016】
かかるローラ6の回転軸Cx方向にテザー3の滑り移動に於いては、テザー3と周面6a又は6bとの間に摩擦力が作用するので、摩擦熱が発生し、テザー3が昇温することとなる。この点に関し、テザー3として、鋼製テザーに比して、テザーの出し入れ・保持に要するエネルギーが少なく、大幅な性能向上が見込まれる軽量で高強度の樹脂製テザーを用いることを考える場合、樹脂製テザーは熱に弱いので、ローラ周面6a又は6bでのテザーの滑りに於いて発生する摩擦熱をできるだけ小さく抑えられることが好ましい。そこで、ローラ周面6a又は6b上の摩擦を小さくすることが考えられるところ、その場合、FDR方式では、係留飛行体との間の張力を低減して、スプールに伝えるために、ローラ周面上でのテザーに作用する摩擦力が発生する必要があるので、ローラ周面6a又は6bの円周方向の摩擦は大きい状態に保持されることが好ましい。
【0017】
かくして、本実施形態に於いては、図2又は図3に描かれている如く、ローラ周面6a、6bに於いて、ローラ6の円周方向に交差する方向に延在するサイプ6g(溝)が、ローラ6の円周方向に亙って、複数、形成される。かかるサイプ6gの形成によれば、図示の如く、ローラ周面6a又は6b上の円周方向の摩擦を大きい状態に保ったまま、ローラ周面6a又は6b上の回転軸方向の摩擦を小さくできることとなる。そして、ローラ周面6a又は6b上の回転軸方向の摩擦を小さくできると、かかる摩擦が大きい場合に比して、ローラ周面6a又は6bの傾斜の角度(ランプ角)を小さくすることが可能となり、摩擦熱を更に抑制することが可能となる。即ち、ローラ周面の回転軸方向の摩擦が小さいほど、その方向にテザーが滑りやすくなるので、ランプ角を小さくしても、テザーの引出し側の端が最小径部位6cへ確実に移動できることとなる。その際、ランプ角が小さいことで、ローラ周面の円周方向の滑り量が低減されると共に、ローラ周面の回転軸方向の滑り速度が低くなるので、これらのことから、摩擦熱の発生量を、単に、摩擦が小さいことで小さくできる以上に抑制できることとなる。
【0018】
上記のサイプ6gの幅、深さ、密度、角度、ローラ上の分布は、実験的に決定されよい(図に於いては、肉眼で認識できるほどの寸法で描かれているが、実際には、表面処理レベルの微細な寸法にて形成されてもよい。)。サイプの延在方向は、図2の如く、ローラの回転軸方向と平行に形成されてもよく、図3の如く、ヘリンボーン又はハス歯状に、回転軸方向に対して角度を持って形成されてもよい。例えば、アルミニウム製フリクションドライブプーリの場合、例えば、表面に対し数十μm程度の溝を形成すると、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)樹脂製テザーに対して十分な回転軸方向の摩擦低減効果と、円周方向の摩擦確保が可能であることが見出されている。
【0019】
フリクションドライブローラの作動
図3を参照して、作動に於いて、本実施形態のローラは、通常のFDR方式のウインチの場合と同様であってよい。具体的には、スプール5からテザー3を引出す際には、図3(A)の如く、ローラ6は、テザー3を係留飛行体2へ送り出す方向に回転される(トルクの作用方向は、逆となる。)。その場合、係留飛行体2に接続された側にテザー3が引出されるので、係留飛行体2に接続された端がローラ6の最小径部位6cまで移動し、スプール5に接続された側の端が傾斜したローラ周面の一方6aの途中まで移動して、張力と摩擦力とが釣り合う状態となるようにテザー3が、ローラ周面上を回転軸方向に摺動しながら、巻き付けられることとなる。一方、スプール5にテザー3を巻き取る際には、図3(B)の如く、ローラ6は、テザー3をスプール5へ送り出す方向に回転される(トルクの作用方向は、同じとなる。)。その場合、スプール5に接続された側にテザー3が引出されるので、スプール5に接続された端がーラ6の最小径部位6cまで移動し、係留飛行体2に接続された側の端が傾斜したローラ周面の一方6bの途中まで移動して、張力と摩擦力とが釣り合う状態となるようにテザー3が、ローラ周面上を回転軸方向に摺動しながら、巻き付けられることとなる。なお、ローラ周面6a、6bのランプ角α、βは、実験等を通じて適合により決定されてよい。αとβは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0020】
上記の本実施形態のウインチは、カイトシステムに限らず、任意の用途のFDR方式のウインチに用いられてよい。
【0021】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとって多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3