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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182239
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】湿式微粒化装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 25/21 20220101AFI20231219BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20231219BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20231219BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20231219BHJP
   B01F 35/222 20220101ALI20231219BHJP
   B02C 19/06 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
B01F25/21
B01F23/50
B01F35/213
B01F35/221
B01F35/222
B02C19/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095728
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 侑矢
(72)【発明者】
【氏名】片山 敬一
(72)【発明者】
【氏名】常本 真嗣
【テーマコード(参考)】
4D067
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4D067CG06
4D067GA20
4G035AB44
4G035AC14
4G035AE03
4G035AE13
4G037AA18
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】余分なエアが取り込まれることを抑制することで、加圧室内の昇圧を安定して実現し、再現性の高い原料処理を行うことのできる小型の湿式微粒化装置を提供する。
【解決手段】サーボモータの正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達手段と、動力伝達手段により高圧シリンダ3内を往復運動させることで、原料を加圧するプランジャと、プランジャの往復運動を制御する駆動制御手段と、加圧された原料を微粒化させるノズル6と、ノズル6の下流側に配置される第1の逆止弁7aと、第1の逆止弁7aを押圧する第1の弾性部材8aと、を有する、湿式微粒化装置。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータの正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達手段と、
前記動力伝達手段により高圧シリンダ内を往復運動させることで、原料を加圧するプランジャと、
前記プランジャの往復運動を制御する駆動制御手段と、
前記加圧された原料を微粒化させるノズルと、
前記ノズルの下流側に配置される第1の逆止弁と、
前記第1の逆止弁を押圧する第1の弾性部材と、を有する、湿式微粒化装置。
【請求項2】
前記高圧シリンダは、
前記原料の吸引口と吐出口を有し、
前記湿式微粒化装置は、
前記吸引口の上流側に配置される第2の逆止弁と、
前記第2の逆止弁を押圧する第2の弾性部材と、を有する、請求項1に記載の湿式微粒化装置。
【請求項3】
前記高圧シリンダ内の圧力を計測する圧力検知部を有する、請求項1または2に記載の湿式微粒化装置。
【請求項4】
前記圧力検知部は、圧力検知用シールを介して前記高圧シリンダの圧力検知用連通部と連結する、請求項3に記載の湿式微粒化装置。
【請求項5】
前記高圧シリンダに配置され、前記ノズルを内設させるノズルホルダを有する、請求項1または2に記載の湿式微粒化装置。
【請求項6】
前記ノズルホルダの外側に配置される保護カバーを有する、請求項5に記載の湿式微粒化装置。
【請求項7】
複数のノズル径のうちのいずれか一つを選択するノズル径設定部と、目標噴射圧力を選択する噴射圧力設定部と、使用する溶媒を選択する溶媒比重設定部と、を有する表示部と、
前記ノズル径、前記目標噴射圧力、および前記溶媒の比重から、前記プランジャの前進/後退スピードを演算する前進/後退スピード演算部と、を有する、請求項3に記載の湿式微粒化装置。
【請求項8】
前記表示部は、
前記圧力検知部で計測する噴射圧力を表示する計測圧力表示部を有する、請求項7記載の湿式微粒化装置。
【請求項9】
前記ノズルは、
前記高圧シリンダ内で高圧状態となった原料を通過させる貫通孔と、
前記貫通孔に連通する形で形成されたノズル溝と、を有し、
前記貫通孔と前記ノズル溝が断面視でL字状である、請求項1または2に記載の湿式微粒化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式微粒化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
湿式微粒化装置は、ウォータージェットにより、原料を最大245MPaの高圧に加圧し、噴射口径0.05~0.5mmの微細ノズルから高速噴射させることによって、噴射の際の粒子同士または硬質部材への衝突やノズル通過および対向流により生じる剪断力、また噴流キャビテーションによる衝撃力で、主に1次粒子が集まってなる2次凝集粒子の解砕、分散を行うものである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような湿式微粒化装置においては、245MPaもの高圧を得るためには、油圧駆動を用いたブースタータイプ(増圧タイプ)が用いられているが、医薬品製造及び精密電子部品製造等の製造においては、汚染防止のため、駆動油を使用する雰囲気自体を嫌う傾向にあった。このような微粒化装置としては、モータを駆動源とし、小型化を目指した微粒化装置も既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、油圧駆動ではなく電動機を駆動源とし、小型で、100Vの電源で簡易実験室等でも使用でき、また、シリンダ内部に組み込まれている高圧パッキンシール材の交換作業を容易とする電動式湿式微粒化装置も既に提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
さらに、吸込管と吐出管にそれぞれコイルバネやスチールボール等を配置することで、吸水と送水を円滑に行うことのできるポンプ装置も既に提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3151706号公報
【特許文献2】特許第2897915号公報
【特許文献3】特許第6045372号公報
【特許文献4】実開昭51-47902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、小型の湿式微粒化装置であっても、原料を噴射し、微細化(解砕、分散)させる際のノズル径は、複数のバリエーションがあり、処理量を増やしたい場合には、比較的大きなサイズのノズル径を使用する。その場合、ノズル内や周辺機器内を通過する原料の量が増加するとともに、高圧シリンダ内をプランジャが往復する際の加圧および減圧エネルギーも大きくなる。このため、湿式微粒化装置が外部と連通する箇所(特に、ノズルや噴射部)から外気(エア)が取り込まれ、加圧室となる高圧シリンダ内の加圧(圧力上昇)にブレが出てしまう、という課題もあった。加圧室内の圧力上昇がブレるということは、原料を処理するための圧力にバラつきが出るということであり、処理後の原料の特性が安定しないということになる。
【0008】
さらに、特許文献4に開示されたような弁構造は、水等の粘性が低く、流動性が高い流体を想定しているものが多い。しかし、湿式微粒化装置で処理するための原料は、粘性が高いものも多く、このような弁構造を用いたとしても、弁の内部に原料が付着し、原料詰まりが発生してしまう可能性がある。原料詰まりが発生した場合、適切な圧力を付与することができず、処理後の原料の特性にバラつきが生じてしまう。
【0009】
本発明は、これら従来の不都合を解消し、余分なエアが取り込まれることを抑制することで、加圧室内の昇圧を安定して実現し、再現性の高い原料処理を行うことのできる小型の湿式微粒化装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の湿式微粒化装置は、サーボモータ(21)の正逆回転運動を往復運動に変換する動力伝達手段(2)と、動力伝達手段(2)により高圧シリンダ(3)内を往復運動させることで、原料(M)を加圧するプランジャ(4)と、プランジャ(4)の往復運動を制御する駆動制御手段(5)と、加圧された原料(M)を微粒化させるノズル(6)と、ノズル(6)の下流側に配置される第1の逆止弁(7a)と、第1の逆止弁(7a)を押圧する第1の弾性部材(8a)と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の湿式微粒化装置によれば、余分なエアが取り込まれることを抑制することで、加圧室内の昇圧を安定して実現し、再現性の高い原料処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の湿式微粒化装置を示す構成図
図2】本実施形態の湿式微粒化装置を示す外観図
図3】本実施形態の湿式微粒化装置の要部を示す断面図
図4】本実施形態の湿式微粒化装置の要部を示す斜視図
図5】本実施形態の表示部の構成図
図6】本実施形態の変形例のノズルの断面図
図7】本実施形態の湿式微粒化装置の変形例を示す構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
本実施形態における湿式微粒化装置1は、図1図3に示すように、動力伝達手段2と、高圧シリンダ3と、プランジャ4と、駆動制御手段5と、ノズル6と、逆止弁7と、弾性部材8と、を備えている。
湿式微粒化装置1は、プランジャ4の往復運動により吸引口3aから高圧シリンダ3内に原料Mを吸入し加圧して吐出口3bから吐出する。湿式微粒化装置1は、本体1aに上記各構成が連結して構成されている。湿式微粒化装置1は、原料タンク1bから高圧シリンダ3内に原料Mを投入しながら、駆動源20がONになった状態で、作業者が押圧部1cや表示部1dを操作することによって、原料Mを処理する。
【0014】
動力伝達手段2は、サーボモータ21の正逆回転運動を往復運動に変換する。動力伝達手段2としては、例えば、ボールネジ機構やローラーネジ機構等の高効率ネジ機構2aである。例えば、高効率ネジ機構2a(ローラーネジ機構)をサーボモータ21の内部に取り付け、高効率ネジ機構2aのナット部21bをモータ内部で回転させ、ネジシャフト部21cが前進・後退するようにする。
【0015】
サーボモータ21は、中空部21aを内部に備えた内円筒を回転させており、その内部に取り付けたナット部21bを回転させることで、中心軸上のネジシャフト部21cが前進後退する。ネジシャフト部21cの軸方向先端側にプランジャ4を結合することで、ネジシャフト部21cの前進後退がプランジャ4の往復運動となる。
サーボモータ21の仕様は、ここでは、駆動電圧100V、駆動出力1.5kWである。高効率ネジ機構2aを採用しているため、動力の伝達効率が高まり、100Vで駆動されるサーボモータ21でも、高圧力の出力が得られる。
【0016】
高圧シリンダ3は、内部に流路3cが形成されており、流路3c内をプランジャ4が往復することによって、流路3c(加圧室)内が昇圧されることで、原料Mを加圧することができる。
原料Mや加圧するための溶媒は、種類(素材、酸性またはアルカリ性等)が多岐にわたるため、高圧シリンダ3が、内部で腐食等しないように、ステンレス等の素材を用いることもできる。
高圧シリンダ3は、給液ポンプ(不図示)から供給される原料Mを吸引する吸引口3aと、加圧処理後の原料Mを吐出する吐出口3bとを有する。例えば、吸引口3aと吐出口3bは、上下の位置関係で配置されるケースや、吸引口3aが上方で左右方向の位置に吐出口3bを配置するケース等、位置関係は適宜設定できる。
【0017】
プランジャ4は、動力伝達手段2により高圧シリンダ3内を往復運動することで、原料Mを加圧する。
【0018】
駆動制御手段5は、プランジャ4の往復運動を制御する。駆動制御手段5は、シーケンサ5aとサーボアンプ5bとを備え、シーケンサ5aからサーボアンプ5bへプランジャ4の目標位置を指令している。ここでいう目標位置とはプランジャ4の昇圧前進端位置、昇圧後退端位置、および分解最後端位置である。
【0019】
駆動制御手段5は、プランジャ4の往復運動開始前に、プランジャ4の昇圧後退端位置を原点として検知する原点位置検知センサ5cにより位置制御の基準となる原点を認識する。そして、駆動制御手段5は、指令した目標位置と高効率ネジ機構2aのナット部21bの回転角度を検知する回転角度検知手段22により検知した現在位置とを比較することで、プランジャ4の位置制御をしている。このようにプランジャ4の位置制御を行うことにより、湿式微粒化装置1は、確実に高圧シリンダ3内に原料Mを吸入し加圧して吐出できる。昇圧前進端位置と該昇圧前進端位置から1ストローク分後退した昇圧後退端位置との間でプランジャ4が前進、後退を繰り返すことにより、原料Mの吸引、昇圧が行われる。
【0020】
回転角度検知手段22は、高効率ネジ機構2aのナット部21bの回転角度を検知することにより、プランジャ4の現在位置を認識させることができる。回転角度検知手段22としては、例えばエンコーダやレゾルバが挙げられる。
【0021】
ノズル6は、加圧された原料Mを微粒化させる。ノズル6は、原料Mを通過させることで微粒化させるオリフィスを有しており、オリフィス径としては、0.05~0.5mmのものを適宜選択できる。
また、図3に示すように、ノズル6の噴射方向には、球体6aが配置されており、高圧噴射された原料Mを球体6aに衝突させることによって、原料Mを微粒化または乳化させることができる。球体6aは、硬質体であり、原料Mの衝突によって摩耗や破損がしにくい素材を用いることが望ましい。
また、ノズル6は、高圧シリンダ3に直接連結させることもできる。ただし、図3に示すように、高圧シリンダ3とは別に、ノズルホルダ9を高圧シリンダ3に連結および固定し、ノズルホルダ9内にノズル6を内設、配置することで、原料Mの噴射方向も安定させることができる。
具体的には、ノズルホルダ9は、上部ノズルホルダ9aを備えており、高圧シリンダ3に形成する高圧シリンダ側連結部3dと上部ノズルホルダ9aとが連結することで、ノズル6を安定して固定できる。高圧シリンダ側連結部3dの外面と、上部ノズルホルダ9aの内面には、ネジ溝が形成されており、上部ノズルホルダ9aを高圧シリンダ側連結部3dに被せるように螺合することで、連結する。また、この連結構造は、本明細書中においては、ネジによる連結で例示したが、凹部と凸部による連結や、一方に爪部を形成して連結するもの等、適宜選択できる。
さらに、流路の内側においてネジ等によって連結させた場合には、流路内は原料Mが流れるため、原料M詰まりやネジ等の錆が発生する可能性があるため、上部ノズルホルダ9aを外側からはめ込む構造にすることによって、ノズル詰まりや錆等の発生を抑制する。
【0022】
ノズルホルダ9は、上部ノズルホルダ9aと接続され、第1の逆止弁7a、第1の弾性部材8a、および吐出口3bを固定する下部ノズルホルダ9bを備えることもできる。例えば、下部ノズルホルダ9bは、突起部9baを有しており、上部ノズルホルダ9aの受部9aaと接続することで、ノズルホルダ9として機能させることもできる。
【0023】
また、ノズル6の下部(下流側)に第1の逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aを配置することによって、高圧処理を施すためのノズル6が装置内部に存在するため、外部エアの吸い込みによる影響が一層届きにくい状態とすることができる。
もし、第1の逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aが高圧シリンダ3と直接連結し、第1の逆止弁7aの下部にノズル6を配置した場合、高圧環境下に配置されるため、第1の逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aが損傷しやすく、万が一損傷したときは、シール不良や原料M詰まりを招き、ノズル6から噴射される処理後の原料Mの特性に悪影響を与えてしまう可能性があった。
さらに、ノズル6の径が大きくなると、外部エアの吸い込みを招く可能性が残ってしまい、原料Mの処理が不安定になる。
そこで、ノズル6の下部に第1の逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aを配置することによって、第1の逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aへ与える負荷を軽減できるとともに、シール不良や原料M詰まりを防止することによる原料Mの微粒化処理や乳化処理を安定させることができる。
さらに、ノズル6から噴射され、球体6aに衝突させることで微粒化された(サイズの小さな)原料Mを、逆止弁7aおよび第1の弾性部材8aでシールする構造にすることで、従来のように第1の逆止弁7aの下部にノズル6を配置し、微粒化前の(サイズの大きな)原料Mをシールする場合と較べて、粒子径や圧力上昇による影響が少ないため、より効率的なシール性を確保できる。
【0024】
さらに、図4に示すように、ノズルホルダ9の外側に配置される保護カバー9dを設けることで、安定性や防振性を向上させることもできる。
【0025】
逆止弁7は、図3に示すように、第1の逆止弁7aと、第2の逆止弁7bとで構成される。
第1の逆止弁7aは、加圧処理後の原料Mを吐出する吐出口3b側に配置される。具体的には、第1の逆止弁7aは、ノズル6の下流側(ここでは下方)に配置される。第1の逆止弁7aは、プランジャ4の往復運動時において、吐出口3bから高圧シリンダ3内にエアを吸入させない。第1の逆止弁7aを配置することによって、プランジャ4が前進する場合は、第1の逆止弁7aが開いた状態となり、原料Mを吐出口3bから吐出できる。一方、プランジャ4が後退する場合は、第1の逆止弁7aが閉じた状態となり、原料Mを吐出できない。こうした構造にすることによって、高圧シリンダ3内において、プランジャ4が前進して原料Mを昇圧しながらノズル6から吐出するときには、処理後の原料Mが適切に吐出口3bから吐出される。一方、高圧シリンダ3内において、プランジャ4が後退して、高圧シリンダ3内が降圧される際には、吐出口3bからエアが入らない。
【0026】
高圧シリンダ3内にエアが入ったままで、高圧シリンダ3内におけるプランジャ4の往復(昇圧、降圧)を繰り返した場合、高圧シリンダ3内の圧力が、吸入したエアの影響で適切に昇圧されない状態となる。この場合には、結果的に、処理後の原料Mの品質にバラつきが発生してしまうため、第1の逆止弁7aを配置することによって、そうした昇圧を安定させることができる。第1の逆止弁7aとしては、例えば、球状のボール等を使用できる。
【0027】
さらに、第1の逆止弁7aの下方に、第1の弾性部材8aを配置することによって、第1の逆止弁7aが通常時には同じ位置で固定されるように調整できる。第1の弾性部材8aは、第1の逆止弁7aを閉弁方向である上流側、すなわちノズル6側(ここでは上方)に向けて押圧する。処理後の原料Mを吐出する場合には、吐出圧力が高くなることで、第1の逆止弁7aと第1の弾性部材8aが下方に押し出され、外部と連通することによって、吐出口3bから処理後の原料Mを吐出することができる。
【0028】
第2の逆止弁7bは、給液ポンプ(不図示)から供給される原料Mを吸引する吸引口3a側に配置される。具体的には、第2の逆止弁7bは、吸引口3aの上流側(ここでは上方)に配置される。第2の逆止弁7bは、プランジャ4の往復運動時において、吸引口3aから高圧シリンダ3内にエアを吸入させない。第2の逆止弁7bを配置することによって、プランジャ4が後退する場合は、第2の逆止弁7bが開いた状態となり、原料Mを吸引できる。一方、プランジャ4が前進して原料Mを吐出する場合は、第2の逆止弁7bが閉じた状態となり、原料Mが吸引口3aから漏れない。こうした構造にすることによって、高圧シリンダ3内において、プランジャ4が前進して原料Mを昇圧しながらノズル6から吐出するときには、処理後の原料Mが吐出口3bから適切に吐出される。一方、高圧シリンダ3内において、プランジャ4が後退して、高圧シリンダ3内が降圧される際には、吸引口3aからエアが入らない。
【0029】
高圧シリンダ3内にエアが入ったままで、高圧シリンダ3内におけるプランジャ4の往復(昇圧、降圧)を繰り返した場合、高圧シリンダ3内の圧力が、吸入したエアの影響で適切に昇圧されない状態となる。この場合には、結果的に、処理後の原料Mの品質にバラつきが発生してしまうため、第2の逆止弁7bを配置することによって、そうした昇圧を安定させることができる。第2の逆止弁7bとしては、例えば、球状のボール等を使用できる。
【0030】
さらに、第2の逆止弁7bの下方に、第2の弾性部材8bを配置することによって、第2の逆止弁7bが通常時には同じ位置で固定されるように調整できる。第2の弾性部材8bは、第2の逆止弁7bを閉弁方向である上流側、すなわち吸引口3aとは反対側(ここでは上方)に向けて押圧する。処理後の原料Mを吐出する場合には、第2の逆止弁7bと第2の弾性部材8bが上方に押圧され、閉じた状態となる。
第1の逆止弁7aを原料Mが通過する場合には、第2の逆止弁7bは原料Mを通過させず、第2の逆止弁7bを原料Mが通過する場合には、第1の逆止弁7aは原料Mを通過させない構造とすることによって、高圧シリンダ3内における圧力を効果的に管理できる。
【0031】
また、本明細書中においては、原料タンク1bとノズル6が上下にそれぞれ1つずつ配置された形態で説明したが、配置数量は1つに限らない。原料タンク1bおよび/またはノズル6を高圧シリンダ3の周囲に複数配置することによって、処理流量を増加させることもできる。
また、第1の逆止弁7aや第2の逆止弁7bを配置することによって、機械的に高圧シリンダ3内における圧力が漏れることなく、一定に維持することを提案したが、電動化を図ることもできる。例えば、第1の逆止弁7aや第2の逆止弁7bが、押圧部1cの操作や原料Mの処理時間に併せて、自動でON、OFFが切り替わる構造などが挙げられる。
【0032】
また、図2図4に示すように、高圧シリンダ3内の圧力を計測する圧力検知部10が配置され得る。高圧シリンダ3内の圧力を計測することによって、処理後の原料Mの品質を安定させることができるとともに、湿式微粒化装置1の異常を検知することもできる。
圧力検知部10としては、圧力センサを用いることが望ましい。圧力検知部10で取得する情報は、表示部1dで表示させ、作業者が適宜、圧力の状態を確認できる。
また、圧力検知部10は、圧力検知用シール10bを介して高圧シリンダ3の圧力検知用連通部10aと連結する。これにより、高圧シリンダ3内の圧力をより正確に計測することができる。
また、圧力検知部10を高圧シリンダ3に直接接続することによって、原料の圧力を検知するために追加で空間を形成する必要がなく、デッドボリュームを減らすこともできる。
【0033】
表示部1dについて、図5を用いて説明する。表示部1dには、ノズル径設定部11と、噴射圧力設定部12と、溶媒比重設定部13と、が配置される。表示部1dは、例えば、各種情報を表示し、または各種設定入力を行うタッチパネルである。
【0034】
ノズル径設定部11は、複数のノズル径のうちのいずれか一つを選択する。例えば、設定ボタンが3種類あり、ノズル径0.1mm、0.15mm、0.20mmのどれかを選択できる。なお、設定ボタンの個数については、3種類に限るものではなく、5種類設定する等、適宜変更できる。さらに、選択式(特定のノズル径毎に選択できる形式)のほか、数値を手動で調整できる形式等も想定できる。
【0035】
噴射圧力設定部12は、目標噴射圧力を選択する。例えば、設定ボタンが3種類あり、50MPa、100MPa、150MPaのどれかを選択できる。なお、設定ボタンの個数については、3種類に限るものではなく、5種類設定する等、適宜変更できる。さらに、選択式(特定の圧力毎に選択できる形式)のほか、数値を手動で調整できる形式等も想定できる。
【0036】
溶媒比重設定部13は、使用する溶媒を選択する。例えば、設定ボタンが3種類あり、水、溶媒A(エタノール)、溶媒B(有機溶媒)のどれかを選択できる。なお、設定ボタンの個数については、3種類に限るものではなく、5種類設定する等、適宜変更できる。
【0037】
前進/後退スピード演算部15は、ノズル径設定部11、噴射圧力設定部12および溶媒比重設定部13を用いて設定されたノズル径、目標噴射圧力および溶媒の比重から、プランジャ4の前進/後退スピードを演算する。前進/後退スピード演算部15によって演算された前進/後退スピードは、表示部1dに表示されてもよい。
【0038】
さらに、圧力検知部10で計測する噴射圧力を表示する計測圧力表示部14を表示部1dに配置することもできる。
【0039】
そのほか、100V電源の場合における処理時間に応じた電力量を用いて、二酸化炭素量等の環境負荷に関する数値を表示部1dに表示させることもできる。
【0040】
また、原料Mが、原料タンク1bから高圧シリンダ3内に吸入されるように、給液ポンプ(不図示)を用いて、強制的に吸入させることもできる。
【0041】
また、制御部(不図示)を配置して、サーボモータ21のトルクや回転数による圧力調整と、圧力検知部10による高圧シリンダ3内における圧力調整とを組み合わせることによって、精度の高い圧力管理を実現することもできる。
具体的には、圧力検知部10で検知した圧力が事前に設定する値よりも低い場合は、制御部からの信号によって、サーボモータ21の回転数が上昇し、高圧シリンダ3内の圧力を調整する等である。
【0042】
また、ノズル6の変形例として、図6に示すように、ノズル6Bは、ノズル本体6Baの凹部6Bc内に、原料Mを通過させる内部チップ6Bdと、内部チップ6Bdの外側に外部チップ6Beを配置したものである。
内部チップ6Bdは、貫通孔6Bfとノズル溝6Bgとを有する。貫通孔6Bfは、高圧シリンダ3内で高圧状態となった原料Mをノズル6B内に通過させる孔である。ノズル溝6Bgは、貫通孔6Bfに連通する形で形成された凹部である。この変形例では、貫通孔6Bfとノズル溝6Bgが断面視でL字状になっているため、貫通孔6Bfの縮径による微細化とともに、ノズル溝6Bgによる進行方向の異なる流れによるせん断を効果的に与えることができる。
また、この変形例のノズル6Bは、貫通孔6Bfとノズル溝6Bgが断面視でL字状になっているため、外部のエアを高圧シリンダ3内に吸入し難い構成である。そのため、第1の逆止弁7aおよび第2の逆止弁7bによるエアの吸入防止効果をさらに向上させることができ、高圧シリンダ3内における加圧圧力の均一化に寄与できる。
【0043】
また、動力伝達手段2および駆動制御手段5の変形例を、図7に示す。図7に示すように、サーボモータ21の回転駆動が、ベルト機構2bを介して、ナット部21bに伝達され、ナット部21bの回転によってネジシャフト部21cに結合されたプランジャ4が前進・後退する。ベルト機構2bは、サーボモータ21の軸に連結された第1のプーリ21d、ナット部21bに連結された第2のプーリ21e、および第1のプーリ21dと第2のプーリ21eとに架け渡されたベルト21fを有している。さらに、駆動制御手段5は、端検出手段5dによりネジシャフト部21cの端部を検知することによって、前後ストロークの調整を行う。
【0044】
次に、以上のように構成された本実施形態の湿式微粒化装置1の使用方法について説明する。
【0045】
まず、作業者は、駆動源20を駆動させることで、動力伝達手段2や駆動制御手段5を待機状態とする。また、作業者は、原料タンク1bを高圧シリンダ3の吸引口3aから供給できる状態にする。
【0046】
次に、駆動源20は、電源であるため、湿式微粒化装置1が準備された状態となっており、押圧部1cや表示部1dを操作し、原料Mに付与する加圧圧力を設定し、原料Mの処理(微粒化)を開始する。
処理時間や処理回数等も適宜設定することができ、指定の作業完了後には、処理後の原料Mを入れるための容器に充填して保管する。
【0047】
また、ノズル径設定部11、噴射圧力設定部12および溶媒比重設定部13において、ノズル径、噴射圧力および溶媒比重を設定することで、プランジャ4の前進/後退スピードを演算した上で、駆動制御手段5は、適正な稼動値を設定できる。また、圧力検知部10で計測される実際の圧力を確認しながら、原料Mを処理するための加圧圧力を調整することもできる。
【0048】
前記したように、本実施形態の湿式微粒化装置1によれば、例えばノズル径を変更した場合であっても、余分なエアが取り込まれることを抑制することで、加圧室内の昇圧を安定して実現し、再現性の高い原料処理を行うことができる。
【0049】
(検証テスト)
湿式微粒化装置1において、逆止弁7および弾性部材8を配置する場合と、逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合とで、吐出量の変化を検証した。なお、ノズル6の口径が、0.1mm、0.15mmの場合で検証した。
【0050】
ノズル6の口径0.1mmの場合は、最大100MPaを想定するが、利用されることの多い圧力帯である40MPa、60MPaの吐出量を計測した。なお、吐出量は3.0ml/1ショットが適正値として、計測した。
結果、40MPaの場合、逆止弁7および弾性部材8を配置する場合は、吐出量が3.0ml/1ショットであったのに対して、逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合は、吐出量が2.8ml/1ショットであった。
結果、60MPaの場合、逆止弁7および弾性部材8を配置する場合は、吐出量が2.9ml/1ショットであったのに対して、逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合は、吐出量が2.8ml/1ショットであった。
【0051】
ノズル6の口径0.15mmの場合は、最大20MPaを想定するが、利用されることの多い圧力帯である5MPa、15MPaの吐出量を計測した。なお、吐出量は3.0ml/1ショットが適正値として、計測した。
結果、5MPaの場合、逆止弁7および弾性部材8を配置する場合は、吐出量が2.9ml/1ショットであったのに対して、逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合は、吐出量が2.7ml/1ショットであった。
結果、15MPaの場合、逆止弁7および弾性部材8を配置する場合は、吐出量が2.9ml/1ショットであったのに対して、逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合は、吐出量が2.8ml/1ショットであった。
【0052】
どちらにケースにおいても、吐出量が増加しており、逆止弁7および弾性部材8を配置することで、処理量が安定することが確認できた。
さらに、従来の逆止弁7および弾性部材8を配置しない場合において、吐出量を安定させるためには、原料Mにもよるが、4~10回程度のエア抜き作業を施すことがあった。しかし、逆止弁7および弾性部材8を配置した場合には、2~3回程度のエア抜き作業を施すことで、吐出量が安定することも確認できた。
【0053】
以上、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 湿式微粒化装置
1a 本体
1b 原料タンク
1c 押圧部
1d 表示部
2 動力伝達手段
2a 高効率ネジ機構
3 高圧シリンダ
3a 吸引口
3b 吐出口
3c 流路
4 プランジャ
5 駆動制御手段
5a シーケンサ
5b サーボアンプ
5c 原点位置検知センサ
6,6B ノズル
6Bf 貫通孔
6Bg ノズル溝
7 逆止弁(第1の逆止弁7a、第2の逆止弁7b)
8 弾性部材(第1の弾性部材8a、第2の弾性部材8b)
9 ノズルホルダ
9d 保護カバー
10 圧力検知部
10a 圧力検知用連通部
10b 圧力検知用シール
11 ノズル径設定部
12 噴射圧力設定部
13 溶媒比重設定部
14 計測圧力表示部
15 前進/後退スピード演算部
20 駆動源
21 サーボモータ
21a 中空部
21b ナット部
21c ネジシャフト部
22 回転角度検知手段
M 原料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7