(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018224
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】エレベータ点検システム及びエレベータ点検方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20230201BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122167
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峰尾 智昭
(72)【発明者】
【氏名】船津 輝宣
(72)【発明者】
【氏名】藪内 達志
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303BA01
3F303DA08
3F303DB11
3F303DC34
3F303FA14
3F304BA01
3F304BA07
3F304BA26
3F304ED16
(57)【要約】
【課題】管制センタによるエレベータの常時監視を行わない場合においても、エレベータの点検を適切に実施可能とする。
【解決手段】本発明の一態様のエレベータ管理装置3は、携帯端末123との間で通信を行う通信制御部31と、通信制御部31が受信したエレベータの運転データD1に基づいて、エレベータ1の点検項目を決定し、点検項目から生成した点検項目データを、通信制御部を介して携帯端末に送信する管理制御部30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運転を制御する制御装置から前記エレベータの運転履歴データを取得する通信装置に対して通信可能に接続された携帯端末と、前記携帯端末に対して通信可能に接続されたエレベータ管理装置と、を備えたエレベータ点検システムであって、
前記エレベータ管理装置は、
前記携帯端末が前記制御装置から取得した前記運転履歴データを前記携帯端末から受信する通信制御部と、
前記通信制御部が受信した前記エレベータの運転履歴データに基づいて前記エレベータの点検項目を決定し、前記点検項目から生成した点検項目データを、前記通信制御部を介して前記携帯端末に送信する管理制御部と、を備える
エレベータ点検システム。
【請求項2】
前記点検項目データには、前記点検項目に基づいて前記制御装置に前記エレベータの診断運転を実行させる診断運転用データが含まれる
請求項1に記載のエレベータ点検システム。
【請求項3】
前記点検項目データには、前記携帯端末を操作する前記エレベータの管理者が実施可能な点検内容の指示が含まれる
請求項2に記載のエレベータ点検システム。
【請求項4】
前記点検内容の指示には、複数の前記点検項目が実施順に示される
請求項3に記載のエレベータ点検システム。
【請求項5】
前記管理制御部は、前記運転履歴データと、正常運転された前記エレベータから取得され、比較の基準とされる運転データである基準データとの比較結果に基づいて、前記点検項目を決定する
請求項3に記載のエレベータ点検システム。
【請求項6】
前記管理制御部は、前記運転履歴データと、前記点検項目の実施履歴である点検履歴情報とに基づいて、前記点検項目を決定する
請求項5に記載のエレベータ点検システム。
【請求項7】
前記管理制御部は、撮影を要すると判断した点検箇所の撮影を指示する前記点検項目データを生成し、
前記携帯端末は、前記点検項目データに基づいて撮影された前記点検箇所の画像データを、前記エレベータ管理装置に送信する端末制御部を備える
請求項5に記載のエレベータ点検システム。
【請求項8】
前記携帯端末は、前記管理者の認証情報の入力を受け付け、前記認証情報が予め登録された認証情報と一致した場合に、前記通信装置に接続する制御を行う端末制御部を備える
請求項5に記載のエレベータ点検システム。
【請求項9】
前記端末制御部は、前記通信装置より、前記エレベータで発生した異常が通知された場合、前記異常の発生を前記エレベータ管理装置に通知する制御を行う
請求項8に記載のエレベータ点検システム。
【請求項10】
前記端末制御部は、前記管理者による点検作業終了の入力を検知した場合、前記点検作業の結果を含む点検結果データを前記エレベータ管理装置に送信する制御を行う
請求項9に記載のエレベータ点検システム。
【請求項11】
前記管理制御部は、前記携帯端末から前記点検結果データを受信した場合、前記点検結果データに基づいて前記エレベータの状態の良否の判定を行い、前記判定の結果を前記携帯端末に送信する
請求項10に記載のエレベータ点検システム。
【請求項12】
前記制御装置及び前記携帯端末と通信可能な通信装置をさらに備え、
前記通信装置は、前記エレベータの乗りかご内、及び/又は、前記エレベータの乗り場に設置される
請求項1~11のいずれか一項に記載のエレベータ点検システム。
【請求項13】
エレベータの運転を制御する制御装置から前記エレベータの運転履歴データを取得する通信装置に対して通信可能に接続された携帯端末と、前記携帯端末に対して通信可能に接続されたエレベータ管理装置と、を備えたエレベータ点検システムによるエレベータ点検方法であって、
前記エレベータ管理装置が、
前記携帯端末が前記制御装置から取得した前記運転履歴データを前記携帯端末から受信する手順と、
受信した前記エレベータの運転履歴データに基づいて前記エレベータの点検項目を決定し、前記点検項目から生成した点検項目データを前記携帯端末に送信する手順と、を含む
エレベータ点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ点検システム及びエレベータ点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの所有者には、エレベータの定期的な点検・検査を実施することが義務付けられており、一般的には、エレベータの所有者は、専門業者の保守員に委託することにより点検作業を実施している。現地での保守員による点検作業は、時間を要するものであるため、エレベータを自動で診断運転させることよって点検作業を実施する方式も採られている。
【0003】
特許文献1には、エレベータ制御部を介してエレベータの運転状況を監視する機能、事前にエレベータの所定の項目の点検・検査を自動実施する機能、及び、複数の端末装置に接続されて監視結果の異常発生時に通信手段を介して各端末装置に対して通報を行う機能を有する監視装置を備えた、エレベータ用自動点検システムが開示されている。特許文献1に記載の技術によれば、作業員は、保守端末装置を監視装置の通信部に接続して、監視画面の監視モニタ自動点検ステータス画面や点検結果表示画面、或いは点検記録表画面を参照し、以前に実施できなかった項目や異常終了した項目等を自動点検・検査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の技術では、監視装置は、エレベータを常時監視する管制センタと接続されている。しかしながら、監視装置が管制センタと常時接続する構成とした場合、専用の装置や設備等が必要となったり、管制センタによる保守のサービスの費用が高くなったりしてしまう。
【0006】
本発明は、上記の状況を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、管制センタによるエレベータの常時監視を行わない場合においても、エレベータの点検を適切に実施可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るエレベータ点検システムは、エレベータの運転を制御する制御装置からエレベータの運転履歴データを取得する通信装置に対して通信可能に接続された携帯端末と、携帯端末に対して通信可能に接続されたエレベータ管理装置と、を備えたエレベータ点検システムである。本発明の一態様に係るエレベータ点検システムのエレベータ管理装置は、携帯端末が制御装置から取得した運転履歴データを携帯端末から受信する通信制御部と、通信制御部が受信したエレベータの運転履歴データに基づいてエレベータの点検項目を決定し、点検項目から生成した点検項目データを、通信制御部を介して携帯端末に送信する管理制御部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係るエレベータ点検方法は、エレベータの運転を制御する制御装置からエレベータの運転履歴データを取得する通信装置に対して通信可能に接続された携帯端末と、携帯端末に対して通信可能に接続されたエレベータ管理装置と、を備えたエレベータ点検システムによるエレベータ点検方法である。本発明の一態様に係るエレベータ点検方法は、エレベータ管理装置が、携帯端末が制御装置から取得した運転履歴データを携帯端末から受信する手順と、受信したエレベータの運転履歴データに基づいてエレベータの点検項目を決定し、点検項目から生成した点検項目データを、通信制御部を介して携帯端末に送信する手順と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一態様によれば、管制センタによるエレベータの監視を行わない場合においても、エレベータの点検を適切に実施可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータ点検システムの概略構成例を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエレベータ点検システムを構成するエレベータ制御盤、エレベータ管理装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る携帯端末のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る点検ツールへのログイン時に表示される点検ツール画面の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るエレベータに診断運転を実行させる場合における点検ツール画面の構成例を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る点検結果をエレベータ管理装置に送信するフェーズにおける点検ツール画面の構成例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、エレベータ点検システムの携帯端末によるエレベータ点検方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る、エレベータ点検システムのエレベータ管理装置によるエレベータ点検方法の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」と称する)の例について、添付図面を参照しながら説明する。本発明は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値等は例示である。また、本明細書及び図面において、同一の構成要素又は実質的に同一の機能を有する構成要素には同一の符号を付することとし、重複する説明は省略する。
【0012】
<エレベータ点検システムの概略構成>
まず、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係るエレベータシステムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータ点検システム100の概略構成例を示す図である。
【0013】
図1に示すように、エレベータ点検システム100は、エレベータ1と、エレベータ制御盤(制御装置の一例)2と、エレベータ管理装置3と、を備える。エレベータ管理装置3は、遠隔地にある保守センタ内に設けられ、図中のエレベータ1が設けられた建物を含む、複数の建物内にある各エレベータを統括管理する。
【0014】
[エレベータの構成]
エレベータ1は、昇降路11と、昇降路11内を昇降する乗りかご12と、を備える。昇降路11は、建物内の上下の空間に設けられたエレベータ専用の通り道である。乗りかご12内には、行先階ボタン等を含む操作盤121が設けられる。行先階ボタンは、乗りかご12内に乗車した乗客又はエレベータの管理者により行先階が入力されるボタンである。操作盤121は、ボタンの押下を受け付けると、ボタンに対応する行先階を示す行先階信号を生成して、エレベータ制御盤2に送信する。なお、乗りかご12には、行先階等が表示される表示パネル124や、図示しない各種機器又は装置等も設けられている。
【0015】
操作盤121内には、無線装置122が設けられる。無線装置122(通信装置の一例)は、近距離無線通信等を介して、乗りかご12に乗車中のエレベータ1の管理者Mが所持する携帯端末123と通信を行う。
【0016】
携帯端末123は、携帯電話端末やスマートフォン、タブレット端末などの端末であり、建物(エレベータ1)の管理者Mによって操作される。携帯端末123は制御部1231(端末制御部の一例)を備え、制御部1231は、例えば下記の処理を行う。
・エレベータ1の運転履歴が記録された運転データD1(運転履歴データの一例)を乗りかご12に設置された無線装置122から取得して、エレベータ管理装置3に運転データD1を送信する処理。
・エレベータ管理装置3から受信する点検項目データに記載された点検内容の指示を、操作表示部(後述する
図3を参照)に表示する処理。
・エレベータ制御盤2に診断運転の実行を指示する処理。
・エレベータ1の点検中にカメラによる動画像の撮影を行う処理。
【0017】
無線装置122は、携帯端末123よりエレベータ1の運転データD1の取得依頼を受け付けると、エレベータ制御盤2に対して運転データD1の送信を依頼する。無線装置122は、運転データD1をエレベータ制御盤2から受信すると、受信した運転データD1を携帯端末123に送信する。無線装置122から運転データD1を受信した携帯端末123の制御部1231は、この運転データD1を、通信ネットワークNを介して保守センタのエレベータ管理装置3に送信する。
【0018】
通信ネットワークNは、例えば、携帯端末123の移動通信網で構成される。または、通信ネットワークNは、エレベータ管理装置3及び建物間を接続する有線ネットワークで構成されてもよい。通信ネットワークNが有線ネットワークで構成される場合、携帯端末123及び建物間の通信には、例えば、建物内で提供される無線ネットワーク等を利用することができる。
【0019】
運転データD1は、例えば、エレベータ1の停止階、エレベータ1の運転回数、乗りかご12の乗車重量、エレベータ1が備える各種装置又はモータ類の電流値、運転制御指令等の、エレベータ1の運転に係る信号の履歴情報である。
【0020】
[エレベータ制御盤の構成]
エレベータ制御盤2は、データ格納部21と、運転制御部22と、駆動制御部23と、通信制御部24と、データ制御部25と、を備える。
【0021】
データ格納部21には、運転データD1が格納される。運転制御部22は、エレベータ1の操作盤121から送信された行先階信号、乗り場13に設置された乗り場呼び装置131から送信された呼び信号等に基づいて、エレベータ1の運転指令を生成する。そして、運転制御部22は、生成した運転指令を駆動制御部23に出力する。
【0022】
駆動制御部23は、運転制御部22から入力される運転指令に従って、巻き上げ機26を駆動制御する。巻き上げ機26は、不図示のロープ等により乗りかご12、及び、不図示の釣り合い錘と接続されている。駆動制御部23による駆動制御に基づいて巻き上げ機26が駆動することにより、乗りかご12が昇降路11内を昇降し、行先階信号に示される行先階(階床)へ移動する。
【0023】
通信制御部24は、テールコード125を介して接続された乗りかご12との間で行われる各種信号又はデータ等の送受信動作を制御する。また、通信制御部24は、乗り場呼び装置131との間で行われる各種信号又はデータ等の送受信動作も制御する。
【0024】
データ制御部25は、運転制御部22及びデータ格納部21間、又は、通信制御部24及びデータ格納部21間における各種信号又はデータ等の入出力動作を制御する。
【0025】
[エレベータ管理装置の構成]
保守センタのエレベータ管理装置3は、制御部30と、通信制御部31と、データ格納部32と、データ制御部36と、を備える。制御部30(管理制御部の一例)は、データ比較部33と、点検内容判断部34と、点検項目データ生成部35と、を備える。
【0026】
通信制御部31は、通信ネットワークNに接続され、通信ネットワークNを介して携帯端末123から送信された運転データD1を受信し、受信した運転データD1をデータ制御部36に出力する。また、通信制御部31は、後述する点検項目データ生成部35から送信された点検項目データを、通信ネットワークNを介して携帯端末123に送信する。
【0027】
データ格納部32には、携帯端末123から受信したエレベータ1の運転データD1の他に、基準データD2及び点検データD3が格納される。データ格納部32に格納される運転データD1は、運転データD11と書き換える。基準データD2は、正常運転されたエレベータ1から取得される各種信号の値(正常値)を含む。点検データD3(点検履歴情報の一例)は、携帯端末123から送信された、管理者Mによるエレベータ1の点検結果の履歴情報を含む。
【0028】
データ比較部33は、運転データD11と基準データD2とを比較することにより、エレベータ1における異常発生の有無を判定し、判定結果を点検内容判断部34に出力する。また、データ比較部33は、運転データD11と基準データD2とを比較することにより、エレベータ1の点検を行うにあたって不足している運転データD11がある場合に、それを特定する。
【0029】
例えば、建物が駅舎である場合、ホーム階又は改札階への運行回数と比較して、それ以外の階床への運行回数が少なくなる状況が起こりうる。このような場合、データ比較部33による比較が行われることにより、駅舎に設置されたエレベータの運転データにおいて、ホーム階又は改札階以外の階床への移動の履歴情報が不足していることが分かる。
【0030】
このような場合、制御部30は、乗りかご12の停止回数(移動履歴)が少ない階床への移動を含む診断運転を、携帯端末123を介してエレベータ制御盤2に指示する。エレベータ制御盤2は、乗りかご12をホーム階又は改札階以外の階床にも移動させる制御を行う。そして、エレベータ管理装置3は、携帯端末123を介してエレベータ制御盤2から乗りかご12がホーム階又は改札階以外の階床にも移動したことを示す履歴情報を取得する。このように、エレベータ管理装置3は、エレベータ1の状態を満遍なく適切に取得することが可能となる。
【0031】
点検内容判断部34は、点検データD3と、データ比較部33による判定結果とに基づいて、エレベータ1の点検内容を判断する。つまり、点検の項目を決定する。
【0032】
点検項目データ生成部35は、点検内容判断部34によって判断された点検内容に基づいて、運転制御部22によるエレベータ1の診断運転を実行可能とする診断運転用データを生成し、該診断運転用データを含む点検項目データを、通信制御部31に出力する。なお、点検項目データには、エレベータ1の診断運転実行中に管理者Mが行うべき点検内容の指示の情報も含まれる。
【0033】
点検項目データは、通信制御部31によって、通信ネットワークNを介して携帯端末123に送信される。携帯端末123は、点検項目データに記載の内容に基づく診断運転をエレベータ制御盤2に指示するとともに、点検項目データに含まれる管理者Mが行うべき点検項目の情報を、表示部(図示略)の画面に表示する。なお、診断運転の指示の操作受付や点検項目の表示は、
図4~
図6を参照して後述する、携帯端末123の点検ツール画面Sc1を介して行われる。
【0034】
データ制御部36は、通信制御部31が受信した運転データD1をデータ格納部32に記憶させたり、データ格納部32から読みだした各種データを、データ比較部33又は点検内容判断部34に出力したりする制御を行う。
【0035】
<計算機のハードウェア構成例>
次に、
図1に示したエレベータ点検システム100の制御系の機能を実現するための各装置のハードウェア構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。
【0036】
[エレベータ制御盤、エレベータ管理装置に適用される計算機の構成]
図2は、エレベータ点検システム100を構成するエレベータ制御盤2、エレベータ管理装置3のハードウェア構成例を示すブロック図である。計算機50は、いわゆるコンピュータとして用いられるハードウェアである。
【0037】
計算機50は、バスB1にそれぞれ接続されたCPU(Central Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、表示部504、操作入力部505、不揮発性ストレージ506及びネットワークインターフェース507を備える。
【0038】
CPU501は、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM502から読み出してRAM503に展開して実行する。なお、計算機50は、CPU501の代わりに、MPU(Micro-Processing Unit)等の処理装置を備えてもよい。RAM503には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0039】
表示部504は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成されるモニタであり、計算機50で行われる処理の結果等を表示する。
【0040】
操作入力部505は、ユーザによる操作が入力されるブロックであり、例えば、キーボード、マウス、タッチセンサ等によって構成される。なお、表示部504と操作入力部505とは、タッチパネルとして一体に構成されてもよい。なお、計算機50は、表示部504及び操作入力部505を備えない構成とされてもよい。
【0041】
不揮発性ストレージ506としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。この不揮発性ストレージ506には、OS(Operating System)、各種のパラメータの他に、計算機50を機能させるためのプログラム等が記録される。なお、プログラムは、ROM502に格納されてもよい。
【0042】
プログラムは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU501は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。つまり、ROM502又は不揮発性ストレージ506は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0043】
ネットワークインターフェース507には、例えば、NIC(Network Interface Card)等が用いられ、ネットワーク又は通信線を介して外部装置との間で各種のデータを送受信することが可能である。エレベータ制御盤2の通信制御部24、エレベータ管理装置3の通信制御部31の機能は、ネットワークインターフェース507によって実現される。
【0044】
[携帯端末に適用される計算機の構成]
次に、
図3を参照して、エレベータ点検システム100の携帯端末123のハードウェア構成について説明する。
図3は、携帯端末123のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0045】
図3に示すように、携帯端末123を構成する計算機60は、バスB2にそれぞれ接続されたCPU601、ROM602、RAM603、操作表示部604、不揮発性ストレージ605、ネットワークインターフェース606、近距離通信インタフェース607及びカメラ608を備える。
【0046】
CPU601は、本実施形態に係る各機能を実現するソフトウェアのプログラムコードをROM602から読み出してRAM603に展開して実行する。なお、計算機60は、CPU601の代わりに、MPU等の処理装置を備えてもよい。RAM603には、演算処理の途中に発生した変数やパラメータ等が一時的に書き込まれる。
【0047】
操作表示部604は、例えば、表示部としての表示パネルと、操作入力部としてのタッチセンサとが一体に形成されたタッチパネルである。なお、表示部と操作入力部とがそれぞれ別に構成されてもよい。
【0048】
不揮発性ストレージ605としては、例えば、HDD、SSD、フレキシブルディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード等を用いることができる。この不揮発性ストレージ605には、OS、各種のパラメータの他に、計算機60を機能させるためのプログラムや、エレベータ1の点検を行う際にエレベータ1の管理者が使用する点検ツールを構成するプログラム等が記録される。なお、プログラムは、ROM602に格納されてもよい。
【0049】
プログラムは、コンピュータが読取り可能なプログラムコードの形態で格納され、CPU601は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。つまり、ROM602又は不揮発性ストレージ605は、コンピュータによって実行されるプログラムを格納した、コンピュータ読取可能な非一過性の記録媒体の一例として用いられる。
【0050】
ネットワークインターフェース606は、例えば、移動通信網との通信を行うアンテナ及び各種無線回路等によって構成される。近距離通信インタフェース607は、近距離通信を行うアンテナ及び各種無線回路等によって構成される。カメラ608は、撮像素子及び各種信号処理回路などによって構成される。
【0051】
<点検ツール画面の構成>
次に、
図4~
図6を参照して、携帯端末123で動作する点検ツールの点検ツール画面Sc1の構成について説明する。
【0052】
まず、
図4を参照して、管理者Mが点検ツールにログインする場合に携帯端末123に表示される点検ツール画面Sc1の構成について説明する。
図4は、点検ツールへのログイン時(利用者認証実施時)に表示される点検ツール画面Sc1の構成例を示す図である。
【0053】
図4に示すように、利用者認証フェーズにおける点検ツール画面Sc1は、ステータス表示部101、利用者情報入力部102、エレベータ情報入力部103、説明表示部104及び接続ボタンBn1を有する。
【0054】
ステータス表示部101には、現在のステータスの情報と、全体のステータスにおける現在のステータスの位置(ステップ)の情報とが、五角形の形状により表示される。
図4に示す例では、現在のステータスは“Step.1 利用者認証”であり、全体のステータスにおける最初のステップであることが示されている。このような表示がされることにより、エレベータ1の管理者Mは、自分が現在行っている作業のステータスの情報と、全処理の完了までに行うべきステップの数の情報とを、視覚的に容易に把握することができる。
【0055】
利用者情報入力部102には、ID(Identification)コードの入力欄Fd1、及び、パスワードの入力欄Fd2が設けられている。IDコード(利用者認証情報の一例)は、保守センタを運営する業者等によってエレベータ1の管理者Mに割り当てられた、管理者Mを識別可能なコードである。パスワード(利用者認証情報の一例)は、点検ツールへのログイン時に管理者Mが入力すべきパスワードである。なお、
図4に示す例では、管理者Mを識別可能なコードがIDコードである例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。管理者Mを識別可能な情報であれば、IDコード以外の情報であってもよい。
【0056】
管理者MによるIDコード及びパスワードの入力を受け付けると、携帯端末123の制御部1231(
図1参照)は、利用者の認証を行う。すなわち、入力されたIDコード及びパスワードが、管理者Mと対応付けて予め管理されているIDコード及びパスワードと一致するか否かを判定する。携帯端末123の制御部1231は、利用者認証が行われた場合、無線装置122との無線接続を開始する。一方、利用者認証が行われなかった場合には、携帯端末123の制御部1231は、無線装置122との無線接続を行わない。なお、利用者認証の処理は、携帯端末123ではなく、エレベータ管理装置3において行われてもよい。
【0057】
エレベータ情報入力部103には、製造コードの入力欄Fd3が設けられている。製造コードは、エレベータ1の製造コードである。製造コードの入力欄Fd3は、管理者Mによる手入力を受け付けるテキストボックスで構成される。なお、製造コードの入力欄Fd3は、複数の候補の中から一つを選択可能なリストボックス又はラジオボタン等の形式で構成されてもよい。もしくは、製造コードの入力欄Fd3には、利用者情報入力部102に入力された利用者情報と対応付けて管理されているエレベータ1の製造コードを、予め表示させておいてもよい。また、入力欄Fd3に入力させる情報は、エレベータ1を識別可能な情報であれば、製造コード以外の情報であってもよい。
【0058】
説明表示部104には、利用者情報入力部102やエレベータ情報入力部103に入力すべき内容等の、この画面に対して管理者Mが行うべき操作の説明等が表示される。このような表示が行われることにより、管理者Mは、迷わずに点検ツールを操作することができる。
【0059】
接続ボタンBn1は、携帯端末123とエレベータ1の無線装置122(
図1参照)との接続開始の指示を受け付けるボタンである。管理者Mによる接続ボタンBn1の押下を検知した場合、携帯端末123の制御部1231は、無線装置122との無線接続を開始し、確立した無線通信を介して、無線装置122からエレベータ1の運転データD1を取得する。そして、携帯端末123の制御部1231は、取得した運転データD1を、通信ネットワークN(
図1参照)を介してエレベータ管理装置3に送信する。
【0060】
次に、
図5を参照して、管理者Mがエレベータ1に診断運転を実行させる指示の入力に用いられる点検ツール画面Sc1の構成について説明する。
図5は、エレベータ1に診断運転を実行させる場合における点検ツール画面Sc1の構成例を示す図である。
【0061】
図5に示すように、エレベータ1に診断運転を実行させる場合における点検ツール画面Sc1は、ステータス表示部101、点検項目選択部105、点検内容表示部106、診断運転ボタンBn2及び動画撮影ボタンBn3を有する。
【0062】
ステータス表示部101には、現在のステータスは“Step.3 点検項目・診断運転”であり、全体のステータスにおける3番目のステップであることが示されている。
【0063】
点検項目選択部105は、「項目」、「内容」及び「選択」の各項目を有する。「項目」の項目には、“A点検”、“B点検”、“C点検”等の、エレベータ1の点検項目のそれぞれの項目名が表示される。「内容」の項目には、「項目」に表示された各点検項目の点検内容が表示される。「選択」の項目は、チェックボックスの形式で構成され、管理者Mは、診断運転を行わせたい点検項目を選択することができる。
【0064】
点検内容表示部106には、点検項目選択部105に表示された各点検項目に対応して管理者Mが目視で行うべき点検の内容が、実施順(時系列)に表示される。点検内容には、例えば、振動又は異音等の発生の有無の確認、エレベータ1の動作における異常発生の有無の確認等がある。点検内容表示部106には、点検項目選択部105において選択された点検項目に対応する点検内容が表示される。
【0065】
診断運転ボタンBn2は、点検項目に対応する点検を行うための診断運転の開始の指示を受け付けるボタンである。管理者Mによる診断運転ボタンBn2の押下を検知した場合、携帯端末123の制御部1231は、無線装置122との間で行われる無線通信を介して、無線装置122に対して、点検項目選択部105において選択された点検項目の点検を行うための診断運転の指示を送信する。診断運転の指示は、無線装置122を介してエレベータ制御盤2に送信される。
【0066】
動画撮影ボタンBn3は、カメラ608(
図3参照)による動画像の撮影の指示を受け付けるボタンである。管理者Mによる動画撮影ボタンBn3の押下を検知した場合、携帯端末123の制御部1231は、カメラ608を起動させて、診断運転中のエレベータ1の動作状態等を撮影する。そして、撮影により得られた動画像データを、通信ネットワークN(
図1参照)を介してエレベータ管理装置3に送信する。
【0067】
動画像の撮影の指示は、エレベータ管理装置3から送信される点検項目データに含まれており、点検内容表示部106に表示される。例えば、エレベータ管理装置3が、携帯端末123から送信された運転データD1に基づいて、巻き上げ機26や、乗りかご12の移動等に係る駆動系において、異常の疑い箇所があると判断した場合に、動画撮影の指示が点検内容表示部106に表示される。このとき、エレベータ管理装置3は、エレベータ1の診断運転時に振動、異音、動作状態等を動画像に記録する指示を点検項目に含め、該点検項目を含んだ点検項目データを、携帯端末123に送信する。
【0068】
管理者Mは、携帯端末123の点検ツール画面Sc1において動画撮影ボタンBn3を押下することにより、診断運転中のエレベータ1の状態を撮影することができる。なお、本実施形態では、エレベータ管理装置3より動画像の撮影指示が送信される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。動画像ではなく、静止画像の撮影指示が、点検項目データとしてエレベータ管理装置3から送信されてもよい。
【0069】
次に、
図6を参照して、携帯端末123が点検結果(点検結果データの一例)をエレベータ管理装置3に送信するフェーズで表示される点検ツール画面Sc1の構成について説明する。
図6は、点検結果をエレベータ管理装置3に送信するフェーズにおける点検ツール画面Sc1の構成例を示す図である。
【0070】
図6に示すように、点検ツール画面Sc1は、ステータス表示部101、点検結果表示部107及び結果送信ボタンBn4を有する。
【0071】
ステータス表示部101には、現在のステータスは“Step.4 点検内容確認・送信”であり、全体のステータスにおける最後のステップであることが示されている。
【0072】
点検結果表示部107は、「項目」、「結果」、「点検記入欄」及び「動画」の各項目を有する。「項目」の項目には、“A点検”、“B点検”、“C点検”等の、エレベータ1の点検項目のそれぞれの項目名が表示される。
【0073】
「結果」の項目には、点検項目及び点検内容の実施状況を示す“OK”又は“NG”の文字が表示される。「点検記入欄」の項目には、エレベータ1の点検を行った管理者Mによる点検実施内容に対するコメントが表示される。管理者Mは、「点検記入欄」の項目に自由にコメントを記入することが可能である。
【0074】
「添付」の項目には、点検時に撮影された動画像が添付されていることを示す“添付”の文字が表示される。管理者Mは、“添付”と表記されたボタンを押下することにより、添付された動画像の内容を確認することも可能である。
【0075】
結果送信ボタンBn4は、点検結果のエレベータ管理装置3への送信指示を受け付けるボタンである。管理者Mによる結果送信ボタンBn4の押下を検知した場合、携帯端末123の制御部1231は、通信ネットワークNを介して、エレベータ管理装置3に点検結果を送信する。携帯端末123からエレベータ管理装置3に対しては、エレベータ1の診断運転により得られた情報、管理者Mの目視による点検によって得られた情報、動画像を撮影した場合には動画像が、それぞれ対応づけられて送信される。
【0076】
<エレベータ点検システムによるエレベータ点検方法>
次に、
図7及び
図8を参照して、エレベータ点検システム100によるエレベータ点検方法について説明する。
図7は、エレベータ点検システム100の携帯端末123によるエレベータ点検方法の手順の例を示すフローチャートであり、
図8は、エレベータ点検システム100のエレベータ管理装置3によるエレベータ点検方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0077】
[携帯端末によるエレベータ点検方法]
まず、
図7を参照して、携帯端末123によるエレベータ点検方法の手順について説明する。携帯端末123の制御部1231(
図1参照)は、管理者Mによる点検ツールの起動操作を受け付けると、点検ツールを起動する(ステップS1)。次いで、制御部1231は、管理者Mより、利用者認証情報の入力を受け付ける(ステップS2)。
図4に示した例では、管理者Mによって、利用者認証情報として、IDコード及びパスワードが、点検ツール画面Sc1の利用者情報入力部102に入力される。
【0078】
次いで、制御部1231は、利用者認証情報は正しいか否かを判定する(ステップS3)。ステップS3で、利用者認証情報は間違っていると判定された場合(ステップS4がNO判定の場合)、制御部1231は、利用者認証情報は3回以上入力されたか否かを判定する(ステップS4)。
【0079】
ステップS4で、利用者認証情報は3回以上入力されていないと判定された場合(ステップS4がNO判定の場合)、制御部1231は、ステップS2に戻って処理を続ける。一方、ステップS4で、利用者認証情報は3回以上入力されたと判定された場合(ステップS4がYES判定の場合)、制御部1231は、点検ツールの動作を停止させるとともに、利用者認証情報を初期化させる(ステップS5)。
【0080】
利用者認証情報の入力が3回以上行われた場合、管理者M以外の者による不正利用が想定されるため、制御部1231は、利用者認証情報を初期化する。これにより、管理者M以外の者による不正利用を防ぐことができる。利用者認証情報の初期化の完了後、制御部1231は、管理者Mに対して利用者認証情報の再度の登録を促すメッセージを点検ツール画面Sc1に表示させる。または、制御部1231は、管理者Mのメールアドレス等に利用者認証情報の再度の登録を促すメッセージを送信してもよい。
【0081】
管理者Mの利用者認証情報の再発行は、例えば、管理者Mが、利用者認証情報の登録用ウェブページ(図示略)へのアクセス、又は、電話相談窓口への架電等の方法を用いて、保守センタに依頼することができる。
【0082】
なお、利用者認証情報の入力回数の“3回”は一例であり、本発明はこれに限定されない。携帯端末123によって提供される点検ツールの利便性と、紛失等に対するセキュリティ性との兼ね合いにより、任意の回数が設定されてよい。
【0083】
ステップS3で、利用者認証情報は正しいと判定された場合(ステップS3がYES判定の場合)、制御部1231は、エレベータ1の無線装置122(
図1参照)との通信接続を開始する(ステップS6)。次いで、制御部1231は、無線装置122よりエレベータ1の運転データD1を取得する(ステップS7)。次いで、制御部1231は、取得した運転データD1を、通信ネットワークNを介してエレベータ管理装置3に送信する(ステップS8)。
【0084】
次いで、制御部1231は、エレベータ管理装置3から送信された点検項目データを通信制御部24が受信したか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9で、通信制御部24が点検項目データを受信していないと判定された場合(ステップS9がNO判定の場合)、制御部1231は、ステップS9の判定を繰り返す。
【0085】
一方、ステップS9で、通信制御部24が点検項目データを受信したと判定された場合(ステップS9がYES判定の場合)、制御部1231は、点検項目データに基づく診断運転の指示をエレベータ制御盤2に送信する(ステップS10)。ステップS10の処理は、
図5の点検ツール画面Sc1の診断運転ボタンBn2が管理者Mによって押下された場合に実行される。ステップS10によって、エレベータ1の診断運転が開始された場合、管理者Mは、
図5の点検ツール画面Sc1の点検内容表示部106に表示された点検項目の点検を実施する。
【0086】
次いで、制御部1231は、すべての点検項目の点検は実行されたか否かを判定する(ステップS11)。ステップS11で、すべての点検項目の点検は実行されていないと判定された場合(ステップS11がNO判定の場合)、制御部1231は、診断運転中に重大な異常の発生を検知したか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12で判定される重大な異常とは、例えば、診断運転に支障をきたす程の異常である。
【0087】
診断運転中にエレベータ1に異常が発生した場合、エレベータ制御盤2の運転制御部22はその異常を検知し、無線装置122を介して携帯端末123に異常の発生を通知する。そして、携帯端末123の制御部1231が無線装置122から重大な異常の発生の通知を受けた場合、ステップS12はYES判定となる。
【0088】
ステップS12で、重大な異常の発生を検知していないと判定された場合(ステップS12がNO判定の場合)、制御部1231は、ステップS10に戻って処理を続ける。一方、ステップS12で、重大な異常の発生を検知したと判定された場合(ステップS12がYES判定の場合)、制御部1231は、重大な異常の発生をエレベータ管理装置3に通知し、診断運転の停止の指示をエレベータ制御盤2に送信する(ステップS13)。なお、
図8のフローチャートには記載していないが、点検の実施中に重大でない異常をエレベータ制御盤2が検知した場合にも、携帯端末123からエレベータ管理装置3に対して、異常の発生の検知が通知される。
【0089】
ステップS11で、すべての点検項目の点検は実行されたと判定された場合(ステップS11がYES判定の場合)、制御部1231は、点検結果をエレベータ管理装置3に送信する(ステップS14)。
【0090】
ステップS5の処理後、ステップS13の処理後、又は、ステップS14の処理後、制御部1231は、エレベータ管理装置3より点検結果の判定結果を受信する(ステップS15)。ステップS15の処理後、エレベータ点検システム100の携帯端末123によるエレベータ点検方法は終了する。
【0091】
[エレベータ管理装置によるエレベータ点検方法]
次に、
図8を参照して、エレベータ点検システム100のエレベータ管理装置3によるエレベータ点検方法について説明する。
図8は、エレベータ管理装置3によるエレベータ点検方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0092】
まず、エレベータ管理装置3の制御部30(
図1参照)は、携帯端末123から送信された運転データD1を通信制御部31が受信したか否かを判定する(ステップS21)。ステップS21で、通信制御部31が運転データD1を受信していないと判定された場合(ステップS21がNO判定の場合)、制御部30は、ステップS21の判定を繰り返す。
【0093】
一方、ステップS21で、通信制御部31が運転データD1を受信したと判定された場合(ステップS21がYES判定の場合)、エレベータ管理装置3のデータ制御部36(
図1参照)は、通信制御部31が受信した運転データを、データ格納部32に格納する(ステップS22)。
【0094】
次いで、エレベータ管理装置3のデータ比較部33は、携帯端末123から受信した運転データD1と、データ格納部32から読みだした基準データD2とを比較する(ステップS23)。次いで、エレベータ管理装置3の点検内容判断部34は、ステップS23の比較結果と、データ格納部32から読みだした過去の点検データD3とに基づいて、エレベータ1の点検内容を判断する(ステップS24)。
【0095】
次いで、エレベータ管理装置3の点検項目データ生成部35は、ステップS24の点検内容の判断結果に基づいて、点検項目データを生成する(ステップS25)。次いで、エレベータ管理装置3の通信制御部31は、ステップS25で生成された点検項目データを、通信ネットワークNを介して携帯端末123に送信する(ステップS26)。携帯端末123を操作する管理者Mは、携帯端末123に表示された点検項目に基づいて、エレベータの点検を行う。そして、管理者Mは、点検結果を携帯端末123に入力する。
【0096】
次いで、エレベータ管理装置3の制御部30は、携帯端末123から送信された点検結果を、通信制御部31が受信したか否かを判定する(ステップS27)。ステップS27で、通信制御部31が点検結果を受信していないと判定された場合(ステップS27がNO判定の場合)、制御部30は、ステップS27の判定を繰り返す。
【0097】
一方、ステップS27で、通信制御部31が点検結果を受信したと判定された場合(ステップS27がYES判定の場合)、エレベータ管理装置3の制御部30は、ステップS27で受信した点検結果の判定を行い、判定結果を通信制御部31から携帯端末123に送信させる(ステップS28)。点検結果の判定結果として、制御部30は、エレベータ1の運転状態の良否の判定結果、懸念事項がある場合にはその説明、過去の懸念事項の経過説明、保守員の手配を行った場合にはその対応内容の説明等を送信することができる。ステップS28の処理後、エレベータ管理装置3によるエレベータ点検方法は終了する。
【0098】
上述した実施形態では、エレベータ点検システム100のエレベータ管理装置3の制御部30の点検項目データ生成部35が、通信制御部31が携帯端末123から受信したエレベータの運転データD1に基づいて、エレベータ1の点検項目を決定し、点検項目から生成した点検項目データを、通信制御部31を介して携帯端末123に送信する。したがって、本実施形態では、携帯端末123が受信した点検項目データに基づいて、携帯端末123を操作するエレベータ1の管理者Mが、エレベータ1の点検を適切に実施できる。それゆえ、本実施形態によれば、管制センタによるエレベータの常時監視を行わない場合においても、エレベータの点検を適切に実施可能となる。
【0099】
また、本実施形態によれば、管制センタによる常時監視が不要となるため、常時監視のために必要となる装置や機器などの購入費用、管制センタと常時接続するための通信費用、管制センタとの保守契約の費用等を節減することができる。つまり、本実施形態に係るエレベータ点検システム100の導入費用及び運用費用を低く抑えることができる。
【0100】
さらに、本実施形態では、管制センタによる常時監視用の専用の装置や機器などを使用しないため、エレベータ点検システム100のリニューアル時などに発生する、装置や機器などの置き換え費用も、節減することができる。
【0101】
また、本実施形態では、エレベータ1の運転履歴を示す運転データD1に基づいて点検項目データが生成され、該点検項目データに基づいて点検が実施されるため、エレベータ1の点検の品質も維持できる。
【0102】
また、本実施形態では、点検項目データには、点検項目に基づくエレベータ1の診断運転を実行させる診断運転用データが含まれる。それゆえ、本実施形態によれば、管制センタによる常時監視が行われない場合であっても、エレベータ1の診断運転を容易に実施可能となる。
【0103】
また、本実施形態では、点検項目データには、携帯端末123を操作する建物(エレベータ1)の管理者Mが実施可能な点検内容の指示が含まれる。したがって、本実施形態によれば、エレベータ1の専門知識を持たない管理者Mであっても、自身でエレベータ1の点検を行うことが可能になる。これにより、保守員の出動回数を低減できるため、保守サービスの費用を節減することができる。
【0104】
また、本実施形態では、点検内容の指示に、複数の点検項目が実施順に示される。したがって、専門の知識を持たない管理者Mであっても、点検内容の指示に従って、適切にエレベータ1の点検を実施することが可能となる。
【0105】
また、本実施形態では、エレベータ管理装置3の制御部30の点検内容判断部34は、運転データD1と、正常運転されたエレベータから取得され、比較の基準とされる運転データである基準データD2との比較結果に基づいて、点検項目を決定する。本実施形態によれば、エレベータ1の点検を行うにあたって不足している運転データD1がある場合に、それを特定することができ、不足する運転データD1を得るための診断運転を、エレベータ1に実行させることが可能となる。
【0106】
したがって、本実施形態によれば、エレベータ1が設置されている建物がどのような業務形態(上述した駅舎等)の建物である場合にも、その業務形態によるエレベータ1の運転傾向に合致した点検項目データを生成し、該点検項目データを携帯端末123に送信することができる。
【0107】
また、本実施形態では、エレベータ管理装置3の制御部30の点検内容判断部34は、エレベータ1の運転データD1と、エレベータ1の点検の履歴情報を含む点検データD3とに基づいて、点検項目を決定する。したがって、本実施形態によれば、過去に行われた点検の履歴に基づいて、エレベータ1の現在の状態により即した点検項目が決定される。
【0108】
また、本実施形態では、エレベータ管理装置3の制御部30は、撮影を要すると判断した点検箇所の撮影を指示する点検項目データを生成する。そして、携帯端末123の制御部1231は、点検項目データに基づいて撮影された動画像(又は静止画像)のデータを、エレベータ管理装置3に送信する。したがって、本実施形態によれば、例えば、携帯端末123によって撮影された、点検を要する箇所の動画像データに基づいて、エレベータ管理装置3が、エレベータ1の点検をより詳細に行うことができる。
【0109】
また、本実施形態では、携帯端末123の制御部1231は、管理者Mの認証情報の入力を受け付け、認証情報が予め登録された認証情報と一致した場合に、無線装置122に接続する制御を行う。したがって、本実施形態によれば、管理者M以外の他者による、携帯端末123を利用してエレベータ点検システム100への不正アクセスを防ぐことができる。
【0110】
また、本実施形態では、エレベータ1で発生した異常が無線装置122より通知された場合、携帯端末123の制御部1231は、異常の発生をエレベータ管理装置3に通知する制御を行う。したがって、本実施形態によれば、エレベータ1に異常が発生した場合にも、その情報がエレベータ管理装置3に確実に伝達される。
【0111】
また、本実施形態では、携帯端末123の制御部1231は、管理者Mによる点検作業終了の入力を検知した場合、点検の結果の情報をエレベータ管理装置3に送信する制御を行う。したがって、本実施形態によれば、エレベータ管理装置3は、管理者Mによって行われた点検の内容を漏れなく取得することが可能となる。
【0112】
また、本実施形態では、エレベータ管理装置3の制御部30は、携帯端末123から送信された点検の結果の情報を受信した場合、点検の内容に基づいてエレベータ1の状態の良否の判定を行い、判定の結果を携帯端末123に送信する。したがって、本実施形態によれば、管理者Mは、エレベータ1の点検の結果を把握することができる。
【0113】
例えば、点検の結果として、以前の点検において発見された懸念事項の経過情報の説明が送信された場合、管理者Mは、該懸念事項の今後の経過を注視できるようになり、これにより、異常の発生を未然に防ぐことも可能になる。
【0114】
また、エレベータ管理装置3の制御部30は、点検内容を判定した結果、保守員を建物に派遣した場合には、判定の結果とともに、保守員の派遣の通知や、保守員到着後の対応内容等も、携帯端末123に通知することができる。この場合、管理者Mは、保守員が来ることと、保守員到着時の対応内容とを、適切に把握することができる。
【0115】
なお、本発明は上述した各実施形態例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
【0116】
例えば、上述した実施形態では、エレベータ制御盤2に記憶された運転データD1を、携帯端末123が無線装置122を介して取得する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。例えば、エレベータ制御盤2が通信機能を備える場合、携帯端末123がエレベータ制御盤2と直接通信して運転データD1を取得してもよい。
【0117】
例えば、上述した実施形態では、無線装置122が乗りかご12内に設けられる例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。無線装置122は、エレベータ1の乗り場13におけるいずれかの位置に設置されてもよい。例えば、無線装置122を、エレベータ1の最上階や地上階、建物ごとに設定された基準階などに設置することにより、管理者Mの無線装置122の設置位置へのアクセスを容易にすることができる。
【0118】
また、例えば、無線装置122を乗り場13に設置することにより、乗りかご12に管理者Mが乗車する必要がない、長時間の連続的な診断運転等も、エレベータ1に実行させることが可能となる。また、無線装置122を乗り場13に設置した場合、エレベータ1の異常を検知する安全装置の動作信号を確認するための診断運転等も、管理者Mが乗りかご12に乗車しない状態で安全に実施することが可能となる。
【0119】
なお、無線装置122を乗り場13に設置する場合、建物のどの階床の乗り場に無線装置122が設置されているかを管理者Mが忘れた場合に備えて、無線装置122の位置を、携帯端末123を介して管理者Mに通知する処理を行ってもよい。このような処理は、例えば、携帯端末123の近距離無線通信の接続許容範囲内に無線装置122が存在する場合に、該近距離無線通信を介して、無線装置122の位置を携帯端末123に送信ことにより実現できる。
【0120】
また、例えば、上述した実施形態例は本発明を分かりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0121】
また、
図1において矢印で示した制御線又は情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0122】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0123】
また、上述した本開示の一実施形態にかかるエレベータ点検システムの各構成要素は、それぞれのハードウェアがネットワークを介して互いに情報を送受信できるならば、いずれのハードウェアに実装されてもよい。また、ある処理部により実施される処理が、1つのハードウェアにより実現されてもよいし、複数のハードウェアによる分散処理により実現されてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…エレベータ、2…エレベータ制御盤、3…エレベータ管理装置、21…データ格納部、22…運転制御部、23…駆動制御部、24…通信制御部、25…データ制御部、30…制御部、31…通信制御部、32…データ格納部、33…データ比較部、34…点検内容判断部、35…点検項目データ生成部、36…データ制御部、100…エレベータ点検システム、121…操作盤、122…無線装置、123…携帯端末