(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182244
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】音響装置及び音響制御方法
(51)【国際特許分類】
H04S 5/02 20060101AFI20231219BHJP
【FI】
H04S5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095737
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩二
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA04
5D162BA07
5D162CA01
5D162CB12
5D162EE11
(57)【要約】
【課題】音源信号に応じた適切なサラウンド再生を行うこと。
【解決手段】実施形態の音響装置は制御部を有する。制御部は、音源信号から分離された第1の音源信号と第2の音源信号の差分をサラウンド成分として算出する。制御部は、第1の音源信号のレベルと第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に、サラウンド成分を圧縮する。制御部は、当該圧縮を行った後のサラウンド成分と音源信号に基づく直接音とを合成して出力させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源信号から分離された第1の音源信号と第2の音源信号の差分をサラウンド成分として算出し、
前記第1の音源信号のレベルと前記第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に、前記サラウンド成分を圧縮し、
当該圧縮を行った後のサラウンド成分と前記音源信号に基づく直接音とを合成して出力させる、制御部を備える
音響装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第1の音源信号のレベルを平滑化した第1の値と、前記第2の音源信号のレベルを平滑化した第2の値と、のうち、小さい方の値を基に、前記サラウンド成分を圧縮する、 請求項1に記載の音響装置。
【請求項3】
前記制御部は、
一定の期間における前記第1の音源信号のレベルの平均の絶対値を前記第1の値として算出し、前記期間における各時刻の前記第2の音源信号のレベルの平均の絶対値を前記第2の値として算出する、
請求項2に記載の音響装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の音源信号のレベルと前記第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に算出した圧縮係数を、さらにLPFを用いて平滑化し、当該平滑化した圧縮係数を用いて前記サラウンド成分を圧縮する、
請求項1に記載の音響装置。
【請求項5】
前記音源信号に基づく直接音を出力する第1のスピーカと、
前記圧縮を行った後のサラウンド成分と前記音源信号に基づく直接音とを合成して得られた音声を出力する第2のスピーカと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
【請求項6】
音響装置の制御部が、
音源信号から分離された第1の音源信号と第2の音源信号の差分をサラウンド成分として算出し、
前記第1の音源信号のレベルと前記第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に、圧縮係数を算出し、前記圧縮係数を乗じることにより前記サラウンド成分を圧縮し、
当該圧縮を行った後のサラウンド成分と前記音源信号に基づく直接音とを合成して出力させる、
音響制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響装置及び音響制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば音楽や音声といった各種音源の音源信号を複数のチャンネルから出力する音響装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。従来技術にあっては、音源信号から生成される疑似的な疑似残響音を直接音に積極的に付加し、複数のチャンネルでサラウンド再生するようにしている。
【0003】
また、例えば、左音声信号と右音声信号のいずれかの信号レベルに応じてサラウンド効果を増減させ、信号のクリップを防止する技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5372142号公報
【特許文献2】特開2005-354444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術には、音源信号に応じた適切なサラウンド再生を行うという点で、改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、音源信号に応じた適切なサラウンド再生を行うことができる音響装置及び音響制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明の音響装置は制御部を有する。制御部は、音源信号から分離された第1の音源信号と第2の音源信号の差分をサラウンド成分として算出する。制御部は、第1の音源信号のレベルと第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に、サラウンド成分を圧縮する。制御部は、当該圧縮を行った後のサラウンド成分と音源信号に基づく直接音とを合成して出力させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、音源信号に応じた適切なサラウンド再生を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る音響制御方法の概要を説明する図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る音響装置を備えた音響システムの構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、直接音及びサラウンドの出力方法を説明する図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る音響装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、従来の直接音及びサラウンドの出力方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する音響装置及び音響制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
<第1の実施形態に係る音響装置による音響制御方法の概要>
以下では先ず、第1の実施形態に係る音響装置による音響制御方法の概要について
図1を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る音響制御方法の概要を説明する図である。
【0012】
第1の実施形態に係る音響制御方法は、例えば、
図1に示す音響装置10によって実行される。
図1では、例えば車両の車室等の車内空間において、前方の左右に配置されたスピーカFR及びスピーカFLから直接音が出力される。また、後方の左右に配置されたスピーカRL及びスピーカRRから疑似的な疑似残響音(以下、サラウンド)が出力される。その際、サラウンドが直接音に付加されることで、サラウンド再生が実現される。スピーカFR、スピーカFL、スピーカRL及びスピーカRRは、音響装置10に備えられたものであってもよいし、音響装置10と別の装置として設けられたものであってもよい。
【0013】
ここで、音源信号は、例えば2つのスピーカFR,FLそれぞれから異なる音を出力することで空間的な広がり(音像幅)をもった音源の信号である。つまり、音源信号は、2つのチャンネル(スピーカFR,FL)でステレオ再生されるステレオ信号である。
【0014】
また、音源信号は、例えばクラシック音楽やオペラ等のような複数の楽器音や音声(ボーカル)が混在した音、すなわち、複数の音源が混在する音の信号であるが、これに限定されるものではない。すなわち、音源信号は、音声のみの音の信号であってもよいし、ピアノのみやバイオリンのみといった単一の楽器(音源)の音の信号であってもよい。
【0015】
なお、上記では、直接音等がスピーカFR,FLから出力され、サラウンドがスピーカRL,RRから出力されるとしたが、これに限られない。すなわち、例えば音響装置10は、4つのスピーカFR,FL,RL,RRのうち全部あるいは一部から直接音等を出力し、その大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0016】
同様に、音響装置10は、4つのスピーカFR,FL,RL,RRのうち全部あるいは一部からサラウンドを出力し、その大きさ等を調整するようにしてもよい。
【0017】
従来、音源信号からサラウンドを生成し、生成したサラウンドを直接音に付加してサラウンド再生を実現する方法が知られている。
図5は、従来の直接音及びサラウンドの出力方法を説明する図である。
【0018】
図5に示すように、従来の音響装置は、音源Lの時系列信号sL(t)と、音源Rの時系列信号sR(t)と、の入力を受け付ける。
【0019】
従来の音響装置は、sL(t)とsR(t)と差分(sL(t)-sR(t))のゲインを調整した上で、サラウンドフィルタ(例えば、FIR(Finite Impulse Response)フィルタ又はIIR(Infinite Impulse Response))を適用する。そして、得られたサラウンドをサラウンド出力用スピーカに出力する。
【0020】
ここで、音源によっては、LRの差が極端に大きい場合がある。例えば、Lチャンネルのみに音源がある場合、及びRチャンネルよりLチャンネルの音源のレベルが極端に大きい場合がある。その場合、従来の音響装置では、出力されるサラウンドが過剰に大きくなるという問題がある。
【0021】
これに対し、実施形態では、生成したサラウンドを、音源のLRの差に応じて適宜調整することによって、上記の問題を解決している。
【0022】
<第1の実施形態に係る音響装置を備えた音響システムの構成>
次に、第1の実施形態に係る音響装置10を備えた音響システムの構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、第1の実施形態に係る音響装置10を備えた音響システムの構成例を示すブロック図である。
図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0023】
換言すれば、
図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0024】
図2に示すように、音響システム1は、音響装置10と、音源装置20と、複数のスピーカFL,FR,RL,RRとを備える。なお、本実施形態に係る音響システム1は、車両に搭載されるが、これに限定されるものではない。
【0025】
音源装置20は、音源信号を音響装置10へ出力する。音源信号は、例えばステレオ信号である。音源信号は、音響装置10を介して2つのチャンネルである2つのスピーカFL,FRからそれぞれ異なる信号が出力されることで、空間的な広がりをもった音像となる。
【0026】
複数のスピーカFL,FR,RL,RRは、音響装置10に接続される。これらスピーカFL,FR,RL,RRは、音響装置10から出力される信号を音として出力する。例えば、スピーカFL,FRは、音源信号である直接音を出力し、スピーカRL,RRは、音源信号から生成されたサラウンドを出力するが、これに限られない。
【0027】
音響装置10は、制御部11と、記憶部12とを備える。制御部11は、取得部111と、分離部112と、出力制御部113とを備える。音響装置10は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、入出力ポート等を有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0028】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部11の取得部111、分離部112及び出力制御部113として機能する。
【0029】
また、制御部11の取得部111、分離部112及び出力制御部113の少なくともいずれか一つ又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0030】
また、記憶部12は、RAMやフラッシュメモリに対応する。RAMやフラッシュメモリは、各種プログラムの情報等を記憶することができる。なお、音響装置10は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。
【0031】
取得部111は、各種情報や信号を取得する。例えば、取得部111は、音源装置20から音源信号を取得する。例えば、取得部111は、ステレオ信号である音源信号を取得する。具体的には、取得部111は、2つのチャンネルである2つのスピーカFL,FRそれぞれから出力される音源信号を取得する。取得部111は、取得された音源信号を分離部112及び出力制御部113へ出力する。
【0032】
なお、以下では、ステレオ信号である音源信号のうち、左側のチャンネルであるスピーカFLから出力(再生)される音源信号を「Lch用音源信号」、右側のチャンネルであるスピーカFRから出力される音源信号を「Rch用音源信号」と記載する場合がある。
【0033】
分離部112は、音源信号からL成分音源信号、R成分音源信号を分離し抽出する。分離部112は、音源信号のLch用音源信号及びRch用音源信号をそれぞれL成分音源信号及びR成分音源信号としてそのまま分離して抽出してもよいし、時間領域及び周波数領域のマスク等の処理により各成分を分離して抽出してもよい。
【0034】
L成分音源信号は、2つのチャンネルであるスピーカFL,FRのうち一方のチャンネル(スピーカFL)で再生される音の成分(L成分)を含む音源信号である。R成分音源信号は、他方のチャンネル(スピーカFR)で再生される音の成分(R成分)を含む音源信号である。なお、L成分音源信号は第1音源信号の一例であり、R成分音源信号は第2音源信号の一例である。
【0035】
分離部112は、分離・抽出された、L成分音源信号及びR成分音源信号を出力制御部113へ出力する。
【0036】
出力制御部113は、L成分音源信号及びR成分音源信号に処理を施してスピーカFL,FR,RL,RRから出力する。
【0037】
図3を用いて、出力制御部113の処理を説明する。
図3は、直接音及びサラウンドの出力方法を説明する図である。
【0038】
図3に示すように、まず、出力制御部113は、L成分音源信号sL(t)及びR成分音源信号sR(t)の入力を受け付ける。L成分音源信号sL(t)は、第1の音源信号の一例である。また、R成分音源信号sR(t)は、第2の音源信号の一例である。
【0039】
出力制御部113は、L成分音源信号sL(t)及びR成分音源信号sR(t)を、そのまま直接音出力用スピーカ(例えばFR,FL)に出力する。
【0040】
このように、直接音出力用スピーカは、音源信号に基づく直接音を出力する。直接音出力用スピーカは、第1のスピーカの一例である。
【0041】
一方、出力制御部113は、サラウンド成分として、L成分音源信号sL(t)とR成分音源信号sR(t)との差分sL(t)-sR(t)を算出する(ステップS101)。
【0042】
さらに、出力制御部113は、T個のフレームのL成分音源信号sL(T)とR成分音源信号sR(T)のそれぞれの絶対値の平均|sL(T)|及び|sR(T)|を算出することで平滑化を行う(ステップS102)。例えば、T=8である(ただし、fs=48kHz)。
【0043】
このように、出力制御部113は、一定の期間(例えばT)における第1の音源信号のレベルの平均の絶対値を第1の値として算出し、期間における各時刻の第2の音源信号のレベルの平均の絶対値を第2の値として算出する。これにより、音源信号を平滑化することができる。
【0044】
次に、出力制御部113は、サラウンド成分を圧縮するための圧縮係数を算出する(ステップS103)。ここでは、圧縮係数w(T)は、|sL(T)|と|sR(T)|のうち、小さい方に等しいものとする。
【0045】
圧縮係数が小さいことは、当該圧縮係数が乗じられるサラウンド成分がより小さくなる(強く圧縮される)ことを意味する。
【0046】
続いて、出力制御部113は、圧縮係数w(T)のゲインを調整した上で、LPF(Low Pass Filter)を適用してさらに平滑化する(ステップS104)。
【0047】
例えば、出力制御部113は、ステップS104において、オーダが2、通過帯域エッジ周波数(passband edge frequency)が1HzのFIR又はIIRを用いる。
【0048】
このように、出力制御部113は、第1の音源信号のレベルと第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に算出した圧縮係数を、さらにLPFを用いて平滑化し、当該平滑化した圧縮係数を用いてサラウンド成分を圧縮する。これにより、圧縮係数がより平滑化され、サラウンド成分の圧縮を適切に行うことができる。
【0049】
さらに、出力制御部113は、あらかじめ指定されたリミッタにより圧縮係数w(T)を制限する(ステップS105)。例えば、出力制御部113は、0から1までの範囲のあらかじめ決められた数値(例えば0.8)を、圧縮係数w(T)に乗じることによりリミッタを実現する。
【0050】
その後、出力制御部113は、ステップS101で算出した差分sL(t)-sR(t)に、圧縮係数w(T)を乗じる(ステップS106)。
【0051】
このように、出力制御部113は、第1の音源信号のレベルを平滑化した第1の値と、第2の音源信号のレベルを平滑化した第2の値と、のうち、小さい方の値を基に、サラウンド成分を圧縮する。|sL(T)|と|sR(T)|は、それぞれ第1の値と第2の値の一例である。
【0052】
このように、L成分音源信号とR成分音源信号の小さいほうに基づく圧縮係数でサラウンド成分を圧縮しておくことにより、サラウンドが過剰に大きくなることが抑止される。
【0053】
さらに、出力制御部113は、サラウンド成分をリミッタで制限し(ステップS107)、L成分音源信号sL(t)とR成分音源信号sR(t)と合成する(ステップS108)。
【0054】
そして、出力制御部113は、合成したサラウンド成分にサラウンドフィルタ(例えば、FIRフィルタ又はIIR)を適用し(ステップS109)、サラウンド出力用スピーカ(例えばRR,RL)に出力する。
【0055】
このように、サラウンド出力用スピーカは、圧縮を行った後のサラウンド成分と音源信号に基づく直接音とを合成して得られた音声を出力する。サラウンド出力用スピーカは、第1のスピーカの一例である。
【0056】
平滑化の方法、タイミング、回数は、ここで説明したものに限られない。出力制御部113は、いずれかのタイミングで少なくとも1回の平滑化を行う。
【0057】
また、リミッタの方法、タイミング、回数は、ここで説明したものに限られない。出力制御部113は、リミッタを実施しなくてもよい。
【0058】
なお、出力制御部113は、音声信号のD/A変換及び増幅といった処理を適宜行うことができる。
【0059】
図4は、第1の実施形態に係る音響装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
図4に示すように、音響装置10は、音源信号を取得する(ステップS11)。例えば、音響装置10は、音源装置20から音響信号を取得する。
【0060】
次に、音響装置10は、音源信からL成分音源信号とR成分音源信号を分離する(ステップS12)。
【0061】
続いて、音響装置10は、L成分音源信号とR成分音源信号との差分からサラウンド成分を算出する(ステップS13)。
【0062】
ここで、L成分音源信号とR成分音源信号のうち、レベルが小さい方を平滑化する(ステップS14)。音響装置10は、平滑化した値を基に、サラウンド成分に乗じる圧縮係数を算出することができる。
【0063】
音響装置10は、平滑化した値を基にサラウンド成分を圧縮する(ステップS15)。そして、音響装置10は、直接音成分、及び当該圧縮を行った後のサラウンド成分を出力する(ステップS16)。
【0064】
上述してきたように、第1の実施形態に係る音響装置10は制御部11を有する。制御部11は、音源信号から分離された第1の音源信号と第2の音源信号の差分をサラウンド成分として算出する。制御部11は、第1の音源信号のレベルと第2の音源信号のレベルとのうち、小さい方のレベルを基に、サラウンド成分を圧縮する。制御部11は、当該圧縮を行った後のサラウンド成分と音源信号に基づく直接音とを合成して出力させる。これにより、音源信号に応じた適切なサラウンド再生を行うことができる。
【0065】
ここで、L成分音源信号とR成分音源信号のレベルの大きさごとの効果を説明する。レベルの大きさを大、中、小の3種類で表し、また、圧縮率は小さい方のレベルに比例する。
【0066】
L成分音源信号のレベルが大かつR成分音源信号が小である場合、L成分音源信号のレベルとR成分音源信号のレベルとの差分は大きいため、サラウンド成分のレベルは大きすぎることになる。一方で、この時の圧縮率は小に比例し小さくなる(強く圧縮される)ため、圧縮後のサラウンド成分が小さく抑えられる。
【0067】
L成分音源信号のレベルが中かつR成分音源信号が大である場合、L成分音源信号のレベルとR成分音源信号のレベルとの差分は中程度であるため、サラウンド成分のレベルは適切な大きさになる。また、この時の圧縮率は中に比例し中程度になるため、圧縮後のサラウンド成分は依然として適切な大きさとなる。
【0068】
L成分音源信号のレベルが中かつR成分音源信号が中である場合、L成分音源信号のレベルとR成分音源信号のレベルとの差分は小さくいため、サラウンド成分のレベルは小さくなる。また、この時の圧縮率は中に比例し中程度になるため、圧縮後のサラウンド成分が大きくなりすぎることはない。
【0069】
L成分音源信号のレベルが中かつR成分音源信号が小である場合、L成分音源信号のレベルとR成分音源信号のレベルとの差分は中程度であるため、サラウンド成分のレベルは適切な大きさになる。また、この時の圧縮率は小に比例し小さくなる(強く圧縮される)ため、圧縮後のサラウンド成分が大きくなりすぎることはない。
【0070】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細及び代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 音響システム
10 音響装置
11 制御部
12 記憶部
20 音源装置
111 取得部
112 分離部
113 出力制御部