(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182247
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】臭気処理装置
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20231219BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F23G5/50 N
F23G5/50 M
F23G5/50 J
F23G7/06 101Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095744
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000110251
【氏名又は名称】トピー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】房前 克一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 剛司
(72)【発明者】
【氏名】丸山 大貴
【テーマコード(参考)】
3K062
3K078
【Fターム(参考)】
3K062AA16
3K062AB01
3K062AC19
3K062BA02
3K062CA01
3K062CB08
3K062DA01
3K062DA21
3K062DA23
3K062DB13
3K062DB27
3K062DB30
3K078BA19
3K078BA21
3K078CA04
3K078CA09
3K078CA12
(57)【要約】
【課題】臭気化合物の大気放出が抑制する臭気処理装置を提供する。
【解決手段】臭気化合物を含むガスを排出する予熱室12と、予熱室12に接続された燃焼室20であって、予熱室12から排出された臭気化合物を燃焼する燃焼室20と、燃焼室20に接続された処理部であって、燃焼部から排出されたガスを冷却して大気に放出する処理部と、を備える臭気処理装置であって、処理部において放出前のガスにおける臭気レベルを測定する臭気測定部S3と、臭気測定部S3の測定結果が低いレベルであるほど、燃焼室20が臭気化合物に供給する熱量を低めるように、燃焼室20における酸素バーナーを制御する制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含むガスを排出する排出部と、
前記排出部に接続された燃焼部であって、前記排出部から排出された前記有機物を燃焼する前記燃焼部と、
前記燃焼部に接続された処理部であって、前記燃焼部から排出されたガスを冷却して大気に放出する前記処理部と、
を備える臭気処理装置であって、
前記処理部において放出前のガスにおける臭気レベルを測定する臭気測定部と、
前記臭気測定部の測定結果が低いレベルであるほど、前記燃焼部が前記有機物から生成される臭気化合物に供給する熱量を低めるように、前記燃焼部を制御する制御部と、を備える
臭気処理装置。
【請求項2】
前記燃焼部は、
前記臭気化合物を加熱する複数の酸素バーナーを備え、
前記制御部は、
前記複数の酸素バーナーのなかの少なくとも一部に対する燃料供給を停止し、かつ酸素供給のみを行うことによって、前記熱量を低める
請求項1に記載の臭気処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記酸素供給に切り替わる前記酸素バーナーの数量変更によって前記熱量の変化を変える
請求項2に記載の臭気処理装置。
【請求項4】
相互に異なる複数の前記臭気レベルに別々の駆動パターンを対応づけたモード情報を記憶する記憶部をさらに備え、
前記駆動パターンは、
前記酸素供給のみを行う酸素供給モードと、火炎を吹く酸化燃焼モードとのいずれか1つのモードを各酸素バーナーに対応づけた情報であり、
前記モード情報は、
前記臭気レベルが低いほど、前記酸素供給モードに対応づけられた前記酸素バーナーの数量が多いように、前記臭気レベルに前記駆動パターンを対応づけ、
前記制御部は、
前記臭気測定部の測定結果に該当する前記臭気レベルに対応づけられた前記駆動パターンに従って、前記複数の酸素バーナーを駆動する
請求項2または3に記載の臭気処理装置。
【請求項5】
前記燃焼部から排出されたガスの温度を測定する温度測定部をさらに備え、
前記制御部は、
前記臭気測定部の測定結果が低いレベルであるほど前記燃焼部が前記臭気化合物に供給する熱量を低める第1処理と、
前記温度測定部の測定結果が高いレベルであるほど前記燃焼部が前記臭気化合物に供給する熱量を低める第2処理と、を可逆的に切り替える
請求項1から3のいずれか一項に記載の臭気処理装置。
【請求項6】
前記燃焼部に酸素を供給する酸素供給部と、
前記臭気化合物と共に排出された一酸化炭素量を測定するCO測定部と、をさらに備え、
前記制御部は、
前記CO測定部の測定結果が高いレベルであるほど、前記燃焼部に供給する酸素量を高めるように、前記酸素量を設定する
請求項1から3のいずれか一項に記載の臭気処理装置。
【請求項7】
前記第1処理および前記第2処理が優先制御であり、
前記制御部は、
前記臭気測定部の測定結果が所定レベル以上であるとき前記優先制御を実行可能に構成され、前記臭気測定部の測定結果が所定レベル未満であるとき前記優先制御以外の所定処理を実行する
請求項5に記載の臭気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄スクラップから生じた臭気化合物を処理する臭気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄スクラップの溶解設備は、溶解室の排ガスによって鉄スクラップを予熱し、これによって溶解の消費電力を抑える。また、鉄スクラップに混入した有機物が、予熱によって分解し、臭気化合物を生じるため、臭気化合物の大気放出を抑える技術は、鉄スクラップの予熱機能を有する溶解設備に不可欠である。
【0003】
放出抑制の第1例は、予熱室の側壁から予熱室の内部に酸素を吹き込む。溶解室に吹き込まれた酸素は、溶解室に発生した一酸化炭素の一部を予熱室で燃焼する。一酸化炭素の燃焼は、排気温度の低下を予熱室で抑え、これによって熱分解用バーナーを要せずにプラスチックの分解を促す(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
放出抑制の第2例は、予熱室とダクトとの接合部において、バーナーおよび酸素供給の少なくとも一方を用い、排出ガスの可燃性成分をほぼ完全に燃焼させる。可燃性成分の燃焼は、ダクト後段の異常燃焼を抑え、併せて臭気化合物の放出を抑える(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-255076号公報
【特許文献2】特開2003-253323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、予熱室の酸素供給は、一酸化炭素の燃焼を促して排ガスの温度低下を抑える。接合部の酸素供給は、一酸化炭素の酸化度合いを調整して異常燃焼を抑える。一方、一酸化炭素の燃焼を専ら目的とする酸素供給は、排ガスの温度低下や異常燃焼の抑制こそ可能にするが、一酸化炭素の燃焼とは異なる経路で進行する臭気化合物の放出抑制に関しては、依然として改善の余地を残している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための臭気処理装置は、有機物を含むガスを排出する排出部と、前記排出部に接続された燃焼部であって、前記排出部から排出された前記有機物を燃焼する前記燃焼部と、前記燃焼部に接続された処理部であって、前記燃焼部から排出されたガスを冷却して大気に放出する前記処理部と、を備える臭気処理装置である。そして、前記処理部において放出前のガスにおける臭気レベルを測定する臭気測定部と、前記臭気測定部の測定結果が低いレベルであるほど、前記燃焼部が前記有機物から生成される臭気化合物に供給する熱量を低めるように、前記燃焼部を制御する制御部と、を備える。
【0008】
有機物の燃焼は、有機物の熱分解と、臭気化合物の酸化とを含む。大気放出前の臭気レベルが所定の許容値以下であるとき、有機物の熱分解と、臭気化合物の酸化とは、十分に進行していると推定される。上記構成によれば、大気放出前の臭気レベルが測定され、かつ臭気レベルが低いほど燃焼部の熱量が低められるため、臭気化合物の大気放出が抑制されると共に、臭気処理の余剰熱量が抑制される。
【0009】
上記臭気処理装置において、前記燃焼部は、前記臭気化合物を加熱する複数の酸素バーナーを備えてもよい。そして、前記制御部は、前記複数の酸素バーナーのなかの少なくとも一部に対する燃料供給を停止し、かつ酸素供給のみを行うことによって、前記熱量を低めてもよい。
【0010】
上記構成によれば、燃料供給の停止と酸素供給とが同時に進むため、燃焼部における熱量の応答性を高めることが可能ともなる。これによって、臭気処理の余剰熱量を抑えることの実効性が高まる。
【0011】
上記臭気処理装置は、前記制御部は、前記酸素供給に切り替わる前記酸素バーナーの数量変更によって前記熱量の変化を変えてもよい。また、臭気処理装置は、相互に異なる複数の前記臭気レベルに別々の駆動パターンを対応づけたモード情報を記憶する記憶部をさらに備えてもよい。前記駆動パターンは、前記酸素供給のみを行う酸素供給モードと、火炎を吹く酸化燃焼モードとのいずれか1つのモードを各酸素バーナーに対応づけた情報である。前記モード情報は、前記臭気レベルが低いほど、前記酸素供給モードに対応づけられた前記酸素バーナーの数量が多いように、前記臭気レベルに前記駆動パターンを対応づける。そして、前記制御部は、前記臭気測定部の測定結果に該当する前記臭気レベルに対応づけられた前記駆動パターンに従って、前記複数の酸素バーナーを駆動してもよい。
【0012】
上記構成によれば、臭気レベルが低いほど、酸素供給モードのバーナー数量が多く、かつ当該バーナー数量が臭気レベルに合わせて予め設定されているため、余剰熱量を抑えることの実効性がさらに高まると共に、余剰熱量の抑制範囲の拡大が容易ともなる。
【0013】
上記臭気処理装置は、前記燃焼部から排出されたガスの温度を測定する温度測定部をさらに備えてもよい。そして、前記制御部は、前記臭気測定部の測定結果が低いレベルであるほど前記燃焼部が前記臭気化合物に供給する熱量を低める第1処理と、前記温度測定部の測定結果が高いレベルであるほど前記燃焼部が前記臭気化合物に供給する熱量を低める第2処理と、を可逆的に切り替えてもよい。
【0014】
上述したように、有機物の燃焼は、有機物の熱分解と、臭気化合物の酸化とを含む。燃焼部から排出されたガスの温度が高まるほど、有機物の熱分解が進行していると推定される。上記構成によれば、第1処理が第2処理に切り替わるため、臭気測定部の異常時においても、臭気処理の余剰熱量が抑制される。また、第2処理が第1処理に切り替わるため、温度測定部の異常時においても、臭気処理の余剰熱量が抑制される。
【0015】
上記臭気処理装置は、前記燃焼部に酸素を供給する酸素供給部と、前記臭気化合物と共に排出された一酸化炭素量を測定するCO測定部と、をさらに備えてもよい。そして、前記制御部は、前記CO測定部の測定結果が高いレベルであるほど、前記燃焼部に供給する酸素量を高めるように、前記酸素量を設定してもよい。
【0016】
上記構成によれば、処理部から放出されるガスの臭気が抑制されることの他に、処理部から放出されるガスのなかの一酸化炭素量も抑制される。
上記臭気処理装置において、前記第1処理および前記第2処理が優先制御であり、前記制御部は、前記臭気測定部の測定結果が所定レベル以上であるとき前記優先制御を実行可能に構成され、前記臭気測定部の測定結果が所定レベル未満であるとき前記優先制御以外の所定処理を実行してもよい。
【0017】
上記構成によれば、臭気測定部の測定結果が所定レベル以上であるときに余剰熱量を抑える優先制御が実行されるため、余剰熱量の抑制効果を得ることの実効性が高まる。
【発明の効果】
【0018】
上記構成によれば、臭気化合物の大気放出が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、臭気処理システムの構成を示す構成図である。
【
図2】
図2は、臭気処理装置の構成を示す構成図である。
【
図3】
図3は、制御部の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、制御部による臭気処理の設定を示す画面図である。
【
図5】
図5は、臭気処理方法の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、臭気処理方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、臭気処理装置の一実施形態を示す。まず、臭気処理装置を備えた臭気処理システムを説明し、次に、臭気処理装置を説明し、次に、臭気処理装置が実行する臭気処理方法を説明する。
【0021】
(臭気処理システム)
図1が示すように、臭気処理システムは、製鋼室10、燃焼室20、冷却室32、排気集塵室34、および建屋集塵室43を備える。冷却室32、排気集塵室34、および建屋集塵室43は、処理部の一例である。
【0022】
製鋼室10は、溶解室11を備えた電気炉を収容する。燃焼室20は、燃焼部の一例であり、製鋼室10の室外に配置される。燃焼室20は、吸気ダクト13(
図2を参照)を介して、電気炉の排気口12A(
図2を参照)に接続される。燃焼室20は、電気炉から出る排出ガスを燃焼する。冷却室32は、燃焼室20の室外に配置される。冷却室32は、排気ダクト31を介して、燃焼室20の排気口22(
図2を参照)に接続される。冷却室32は、燃焼室20から出る排出ガスを冷却する。排気集塵室34は、直引集塵ファン33を介して、冷却室32の排気口に接続される。排気集塵室34は、冷却室32から出る排出ガスをバグフィルターによって清浄する。
【0023】
建屋集塵室43は、建屋ダクト41と建屋集塵ファン42とを介して、製鋼室10の排気口に接続される。建屋集塵室43は、建屋集塵ファン42と直引合流ファン35とを介して、排気集塵室34の排気口に接続される。建屋集塵室43は、製鋼室10から出る空気、および排気集塵室34から出る空気をバグフィルターによって清浄する。建屋集塵室43は、清浄された空気を大気に放出する。
【0024】
建屋集塵室43は、臭気測定部S3を備える。臭気測定部S3は、建屋集塵室43から大気に放出される直前の空気を用い、当該空気の臭気レベルを測定する。臭気レベルの一例は、建屋集塵室43から大気に放出される直前の空気における、臭気化合物の濃度である。臭気測定部S3は、制御装置51(
図3を参照)に測定結果である臭気レベルを入力する。
【0025】
(臭気処理装置)
図2が示すように、電気炉は、溶解室11、および予熱室12を備える。
溶解室11は、鉄スクラップにアーク熱を供給し、これによって鉄スクラップから溶湯を生成する。溶解室11は、溶湯に酸素や炭材を加え、これによって炭材の燃焼熱を熱源に利用する。溶解室11は、溶解室11に侵入した空気と、炭材から生成される一酸化炭素と、を排出ガスに含める。溶解室11は、出湯口から溶湯を出湯する。
【0026】
予熱室12は、排出部の一例であり、溶解室11から上方に向けて延在する。予熱室12は、予熱室12の上端部から鉄スクラップを装入される。予熱室12は、溶解室11から出る排出ガスを溶解室11から上方に向けて流し、これによって予熱室12の内部で鉄スクラップを予熱する。予熱室12は、予熱された鉄スクラップを予熱室12の下端部から溶解室11に供給する。溶解室11に供給された鉄スクラップは、溶湯を生成する。予熱室12は、溶解室11で溶解された鉄スクラップを補うように、予熱された鉄スクラップを溶解室11にさらに供給する。予熱室12は、溶解室11に供給された鉄スクラップを補うように、鉄スクラップをさらに装入される。
【0027】
予熱室12の側壁は、排気口12Aを備える。予熱室12の排気口12Aは、予熱室12の下端部から、予熱室12の高さ方向における中央よりも上側まで延びる。予熱室12の排気口12Aは、吸気ダクト13に接続されている。溶解室11で発生した高温の排出ガスは、予熱室12のなかの鉄スクラップの間を通った後に、予熱室12から吸気ダクト13に向けて出る。このように、排出に熱量を要するような有機物が、予熱室12の上端部から下端部まで移動しながら、排出ガスによって加熱を続けられて、これによって排出ガスに含められる。また、排出に大きな熱力を要しない有機物が、予熱室12の上端部で加熱されて、これによって排出ガスに含められる。そして、鉄スクラップに含まれる様々な分子量の有機物が、排出ガスに含められて、予熱室12から吸気ダクト13に入る。
【0028】
吸気ダクト13は、予熱室12と燃焼室20とに接続されている。吸気ダクト13は、CO測定部S1、防爆弁14、および熱分解バーナーC1A,C1Bを備える。
CO測定部S1は、排出ガスの流れる方向における吸気ダクト13の中間よりも予熱室12の側に配置されている。CO測定部S1は、吸気ダクト13のなかの上流部分に配置されている。CO測定部S1は、吸気ダクト13の上流端部に配置されてもよい。CO測定部S1は、予熱室12から出る排出ガスを用い、当該排出ガスのなかの一酸化炭素(CO)の濃度を測定する。CO測定部S1は、制御装置51(
図3を参照)に測定結果である一酸化炭素濃度を入力する。
【0029】
防爆弁14は、作動圧力によって吸気ダクト13を解放し、これによって吸気ダクト13が所定圧力よりも高くなることを抑える。
熱分解バーナーC1A,C1Bは、排出ガスの流れる方向における吸気ダクト13の中間よりも燃焼室20の側に配置されている。熱分解バーナーC1A,C1Bは、吸気ダクト13のなかの下流部分に配置されている。熱分解バーナーC1Aは、熱分解バーナーC1Bよりも予熱室12の側に配置されている。熱分解バーナーC1Bは、熱分解バーナーC1Aよりも燃焼室20の側に配置されている。熱分解バーナーC1A,C1Bは、防爆弁14よりも上流と、防爆弁14よりも下流と、に分配されている。
【0030】
ただし、防爆弁14は熱分解バーナーC1Aよりも上流側に配置されていてもよいし、熱分解バーナーC1Bよりも下流側に配置されていてもよい。
熱分解バーナーC1A,C1Bは、燃料に空気を混合させて燃料を燃焼させる。燃料の一例は、LPG、灯油、重油である。熱分解バーナーC1A,C1Bは、吸気ダクト13に流れる排出ガスを火炎によって昇温させる。熱分解バーナーC1A,C1Bは、例えば、排出ガスを750℃以上まで昇温させる。熱分解バーナーC1A,C1Bは、排出ガスに含まれる有機物を昇温によって高揮発性有機化合物(VVOC)、および揮発性有機化合物(VOC)のような臭気化合物に熱分解する。以下では、高揮発性有機化合物(VVOC)、および揮発性有機化合物(VOC)のような臭気化合物を単にVOCともいう。
【0031】
燃焼室20は、吸気口12B、排気口22、ダスト排出扉21、温度測定部S2、空気燃焼バーナーC1C,C1D、および、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eを備える。
【0032】
燃焼室20の吸気口12Bは、燃焼室20の高さ方向における下端部に配置されている。燃焼室20の排気口22は、燃焼室20の高さ方向における上端部に配置されている。燃焼室20は、吸気口12Bを介して吸気ダクト13に接続されている。燃焼室20は、排気口22を介して排気ダクト31(
図1を参照)に接続されている。燃焼室20は、吸気口12Bから排気口22に向けて、吸気ダクト13から出る排出ガスを流す。
【0033】
ダスト排出扉21は、燃焼室20の下端部に配置されている。ダスト排出扉21は、燃焼室20に堆積したダストの排出に用いられる。温度測定部S2は、空気燃焼バーナーC1C,C1D、および、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eの下流に配置されている。温度測定部S2は、燃焼室20の上端部に配置されてもよいし、燃焼室20における排気口22の直前に配置されてもよい。温度測定部S2は、空気燃焼バーナーC1C,C1D、および、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eによって酸化された直後の排出ガスの温度を測定する。温度測定部S2は、制御装置51(
図3を参照)に測定結果である排出ガスの温度を入力する。
【0034】
空気燃焼バーナーC1C,C1Dは、燃焼室20の吸気口12Bよりも下流であって、吸気口12Bと温度測定部S2との間に配置されている。空気燃焼バーナーC1C,C1Dは、それぞれ燃料に酸素を混合させて燃料を燃焼させる。燃料の一例は、LPG、灯油、重油である。空気燃焼バーナーC1C,C1Dは、燃焼室20に流れる排出ガスを火炎によって昇温させると共に、VOCを酸化する。
【0035】
酸素バーナーE2Aは、燃焼室20の下端部に配置されている。4つの酸素バーナーE2B,E2C,E2D,E2Eは、排出ガスの流れる方向において、吸気口12Bと温度測定部S2との間に配置されている。2つの酸素バーナーE2B,E2Eは、燃焼室20の吸気口12Bよりも下流であって、空気燃焼バーナーC1C,C1Dの間に配置されている。2つの酸素バーナーE2C,E2Dは、空気燃焼バーナーC1C,C1Dよりも下流に配置されている。酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eは、それぞれ燃料に酸素を混合させて燃料を燃焼させる。燃料の一例は、LPG、灯油、重油である。酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eは、燃焼室20に流れる排出ガスを火炎によって昇温させると共に、VOCを酸化する。
【0036】
酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eは、それぞれ酸素のみの供給を実行する酸素供給と、酸素と燃料との燃焼による酸化燃焼とに可逆的に切り替わる。制御装置51(
図3を参照)は、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eの駆動を、それぞれ酸素供給と酸化燃焼とに可逆的に切り替える。酸素供給を実行する酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eは、酸素供給部の一例である。酸化燃焼を実行する酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eは、酸化バーナーの一例である。
【0037】
予熱室12から排出される有機物は、まず、酸素を供給されない吸気ダクト13のなかで、熱分解バーナーC1A,C1Bによって昇温され、酸素供給下の燃焼室20のなかで二酸化炭素や水に変わる。このように、臭気処理装置は、(i)有機物の熱分解と(ii)臭気化合物の酸化とを(i)(ii)の順に進める。
【0038】
(制御装置)
図3が示すように、臭気処理システムは、制御装置51、入力装置52、および出力装置53を備える。制御装置51は、制御部51A、および記憶部51Bを備える。制御装置51は、記憶部51Bに記憶された臭気処理プログラム、および臭気処理に用いられる各種情報を読み出し、臭気処理プログラムに従って臭気処理方法を実行する。
【0039】
制御装置51の制御対象は、全ての酸素バーナーE2である酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eを備える。制御装置51の制御量は、各酸素バーナーE2の燃料量である。各酸素バーナーE2の燃料量は、当該酸素バーナーE2の燃料供給量でもよいし、燃料供給弁の開度でもよい。
【0040】
制御装置51の制御量は、各酸素バーナーE2の酸素量、および各酸素バーナーE2の補正酸素量を備えてもよい。各酸素バーナーE2の酸素量は、酸素バーナーE2の燃焼に用いられる酸素量である。各酸素バーナーE2の補正酸素量は、一酸化炭素濃度を抑えるための酸素量である。各酸素バーナーE2の酸素量、および各酸素バーナーE2の補正酸素量は、当該酸素バーナーE2の酸素供給量でもよいし、当該酸素バーナーE2における酸素供給弁の開度でもよい。
【0041】
臭気処理方法は、臭気処理の出力である臭気測定部S3の測定結果を入力に戻し、かつ当該測定結果に適すると推定される燃料量、および酸素量を、燃料量の目標値、および酸素量の目標値に訂正することを備える。燃料量の目標値、および酸素量の目標値を訂正することは、各酸素バーナーE2において、酸化燃焼と酸素供給とを可逆的に切り替えることを備えてもよい。
【0042】
臭気処理方法は、臭気処理の出力である温度測定部S2の測定結果を入力に戻し、かつ当該測定結果に適すると推定される燃料量、および酸素量を、燃料量の目標値、および酸素量の目標値に訂正することを備えてもよい。臭気処理方法は、臭気処理の出力であるCO測定部S1の測定結果を入力に戻し、かつ当該測定結果に適すると推定される酸素量を、酸素量の目標値に訂正することを備えてもよい。
【0043】
以下、制御装置51の制御量が、各酸素バーナーE2の燃料量、各酸素バーナーE2の酸素量、および各酸素バーナーE2の補正酸素量である例を示す。また、臭気処理方法が、燃料量の目標値、および酸素量の目標値の訂正に、臭気測定部S3の測定結果、および温度測定部S2の測定結果を用い、かつ補正酸素量の目標値の訂正に、CO測定部S1の測定結果を用いる例を示す。
【0044】
入力装置52は、制御装置51に臭気処理用の各種情報を入力する。臭気処理用の情報は、臭気処理に適用するプリセットを備える。プリセットは、手動プリセット、低臭気プリセット、および燃料プリセットを備える。手動プリセットは、手動制御に用いられる。低臭気プリセット、および燃料プリセットは、自動制御に用いられる。
【0045】
記憶部51Bは、各種プリセットを記憶する。
[a]手動プリセットは、各酸素バーナーE2について、固定値である燃料量と、固定値である酸素量と、を備える。制御部51Aは、手動制御に手動プリセットを用いる。手動制御は、各制御量の目標値決定に、各測定部S1,S2,S3の測定結果を用いない。制御部51Aは、各測定部S1,S2,S3の故障時などに、手動制御を実行する。制御部51Aは、手動制御における各制御量の目標値に、手動プリセットの酸素量と燃料量とを定める。
【0046】
[b]低臭気プリセットは、各酸素バーナーE2に駆動モードのいずれか1つを対応づける。駆動モードは、酸素供給のみを行う酸素供給モードと、火炎を噴き出す酸化燃焼モードとである。低臭気プリセットは、酸素供給モードの酸素バーナーE2に、固定値である補正酸素量を対応づける。低臭気プリセットは、酸化燃焼モードの酸素バーナーE2に、固定値である燃料量と、固定値である酸素量とを対応づける。
【0047】
低臭気プリセットは、少なくとも1つの酸素バーナーE2に酸素供給モードを対応づける。低臭気プリセットは、全ての酸素バーナーE2に酸素供給モードを対応づけてもよい。低臭気プリセットは、少なくとも1つの酸素バーナーE2に酸化燃焼モードを対応づけてもよい。低臭気プリセットにおいて、全ての酸素バーナーE2に対応づけられる総燃料量は、臭気レベルが十分に低いような、低稼働時の総燃料量である。
【0048】
[c]燃料プリセットは、各酸素バーナーE2に駆動モードのいずれか1つを対応づける。低臭気プリセットは、酸化燃焼モードの酸素バーナーE2に燃料量を対応づける。
燃料プリセットは、少なくとも1つの酸素バーナーE2に酸化燃焼モードを対応づける。燃料プリセットは、少なくとも1つの酸素バーナーE2に酸素供給モードを対応づけてもよい。燃料プリセットにおいて、全ての酸素バーナーE2に対応づけられる総燃料量は、鉄スクラップが定期的に装入されるような、定常稼働時に臭気レベルを抑えると推定される燃料量である。
【0049】
入力装置52は、臭気処理用の情報に、臭気処理に適用する臭気閾値、および目標空燃比を備える。臭気閾値、および目標空燃比は、自動制御に用いられる。
記憶部51Bは、臭気閾値、および目標空燃比を記憶する。
【0050】
[d]臭気閾値は、所定レベルの一例であり、臭気化合物の濃度値である。臭気閾値である濃度値は、予熱室12に装入されている鉄スクラップから有機物をほとんど発生していない、あるいは予熱室12に鉄スクラップがほどんど装入されていないときに予め得られた、臭気測定部S3の測定結果である。
【0051】
[e]目標空燃比は、酸素バーナーE2における空燃比の目標値である。目標空燃比は、酸化燃焼時における燃料量に対する酸素量の比である。酸素量は、酸素バーナーE2による燃焼を純酸素燃焼にする純酸素量でもよいし、酸素バーナーE2による燃焼を酸素富化燃焼にする酸素濃度を高めた空気量でもよい。目標空燃比は、臭気化合物の酸化を進めると推定される空燃比である。目標空燃比は、鉄スクラップが定期的に装入されるような、定常稼働時に臭気化合物の酸化を安定させると推定される空燃比である。制御部51Aは、自動制御における酸素バーナーE2の燃焼において、酸素量の目標値決定に目標空燃比を参照する。
【0052】
また、入力装置52は、臭気処理用の情報に、臭気処理に適用する補正酸素情報、燃料情報、およびモード情報を備える。補正酸素情報、燃料情報、およびモード情報は、自動制御に用いられる。
【0053】
また、入力装置52は、臭気処理用の情報に、自動制御の指定の有無を備える。また、入力装置52は、臭気処理用の情報に、臭気処理に適用する優先制御の種類を備える。
記憶部51Bは、補正酸素情報、燃料情報、モード情報、自動制御の指定の有無、および優先制御の種類を記憶する。
【0054】
[f]補正酸素情報は、一酸化炭素量68A(
図4を参照)に補正酸素量を対応づける。一酸化炭素量68Aは、一酸化炭素の濃度である。補正酸素量は、当該補正酸素量を対応づけられた一酸化炭素の酸化に要すると推定される酸素量である。補正酸素情報の補正酸素量は、酸素供給モードに対応づけられた全ての酸素バーナーE2に供給される総酸素量である。補正酸素量は、純酸素の供給量でもよいし、酸素濃度を高められた空気の供給量でもよい。排出ガスのなかの酸素が不足している場合、排出ガスのなかの一酸化炭素量68Aが上がる一方、排出ガスのなかの酸素が十分である場合、排出ガスのなかの一酸化炭素量68Aが下がり、二酸化炭素量が上がる。こうした一酸化炭素量68Aと臭気レベル69Bとの相関を鋭意研究するなかで、本発明者らは、一酸化炭素量68Aが0から800ppmの範囲において、一酸化炭素量68Aが高いほど、臭気レベル69Bが高いという線形的な相関を見出した。こうした観点から、補正酸素情報は、一酸化炭素量68Aのレベルが低いほど、当該レベルに対応づけられる補正酸素量が低いように、一酸化炭素量68Aに補正酸素量を対応づける。
【0055】
制御部51Aは、出力であるCO測定部S1の測定結果を入力に戻し、かつ補正酸素情報のなかでCO測定部S1の測定結果に対応づけられる補正酸素量を、補正酸素量の目標値に決定する。
【0056】
[g]燃料情報は、排ガス温度69A(
図4を参照)に燃料量69Cを対応づける。排ガス温度69Aは、排出ガスの温度である。燃料情報の燃料量69Cは、酸化燃焼モードに対応づけられた全ての酸素バーナーE2に供給される総燃料量である。燃料情報は、排ガス温度69Aのレベルが低いほど、当該レベルに対応づけられる燃料量69Cが高いように、排ガス温度69Aに燃料量69Cを対応づける。
【0057】
制御部51Aは、出力である温度測定部S2の測定結果を入力に戻し、燃料情報のなかで温度測定部S2の測定結果に対応づけられる燃料量を、燃料量の目標値に決定する。
また、燃料情報は、臭気レベル69B(
図4を参照)に燃料量を対応づける。臭気レベル69Bは、臭気化合物の濃度である。燃料情報は、臭気レベル69Bが高いほど、当該レベルに対応づけられる燃料量が高いように、臭気レベル69Bに燃料量を対応づける。
【0058】
制御部51Aは、出力である臭気測定部S3の測定結果を入力に戻し、燃料情報において臭気測定部S3の測定結果に対応づけられる燃料量を、燃料量の目標値に決定する。
[h]モード情報は、排ガス温度69Aのレベルに駆動パターンを対応づける。各駆動パターンは、各酸素バーナーE2に駆動モードのいずれか1つを対応づけた、1組の駆動モードである。モード情報は、排出ガスの温度が高いほど、酸素供給モードに対応づけられた酸素バーナーE2の数量が多いように、排出ガスの温度に駆動パターンを対応づける。
【0059】
制御部51Aは、出力である温度測定部S2の測定結果を入力に戻し、モード情報において温度測定部S2の測定結果に対応づけられる駆動パターンを、新たな駆動パターンに決定する。
【0060】
また、モード情報は、臭気レベル68Bに駆動パターンを対応づける。モード情報は、臭気レベルが低いほど、酸素供給モードに対応づけられた酸素バーナーの数量が多いように、臭気レベルに駆動パターンを対応づける。
【0061】
制御部51Aは、出力である臭気測定部S3の測定結果を入力に戻し、モード情報において臭気測定部S3の測定結果に対応づけられる駆動パターンを、新たな駆動パターンに決定する。
【0062】
(自動制御)
制御部51Aは、臭気処理プログラムに従って、燃料量の目標値、酸素量の目標値、および補正酸素量の目標値を決定する。燃料量の目標値、酸素量の目標値、および補正酸素量の目標値は、臭気処理における自動制御の目標値である。
【0063】
制御部51Aは、臭気処理プログラムに従って、各酸素バーナーE2の駆動を、それぞれ酸素供給と酸化燃焼とに可逆的に切り替える。制御部51Aは、酸素供給と酸化燃焼との切り替えに、CO測定部S1、温度測定部S2、および臭気測定部S3の少なくとも1つの測定結果を用いる。
【0064】
なお、制御装置51は、臭気処理プログラムに従って、制御対象外である、各熱分解バーナーC1A,C1B、および各空気燃焼バーナーC1に出力を設定する。すなわち、制御装置51は、臭気処理プログラムに従って、各熱分解バーナーC1A,C1Bに、燃料量と空気量とを設定する。熱分解バーナーC1A,C1Bに設定される燃料量と空気量とは、排出ガスに含まれる有機物が臭気化合物に熱分解されるように、予め設定される。また、制御装置51は、臭気処理プログラムに従って、空気燃焼バーナーC1C,C1Dに、燃料量と空気量とを設定する。空気燃焼バーナーC1C,C1Dに設定される燃料量と空気量とは、臭気化合物の酸化を補助するように、予め設定される。
【0065】
制御部51Aは、各種の処理のうちの少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circut:ASIC)などの専用のハードウェアを備えてもよい。制御部51Aは、ASICなどの1つ以上の専用のハードウェア回路、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、あるいは、これらの組み合わせ、を含む回路としても構成される。なお、以下では、制御部51Aが、可読媒体に記憶された臭気処理プログラムを読み出し、読み出された臭気処理プログラムを実行する例を説明する。
【0066】
制御部51Aは、下記[1]~[5]の自動制御を実行する。自動制御は、測定結果に基づいて各制御量の目標値を変える。制御部51Aは、各測定部S1,S2,S3の使用可否の状況に基づいて、[3]温度優先制御、[4]臭気優先制御のいずれか1つを択一的に実行する。制御部51Aは、[2]固定燃料制御、[5]補正酸素制御を選択的に実行する。
[1]低臭気制御
[2]固定燃料制御
[3]温度優先制御
[4]臭気優先制御
[5]補正酸素制御
【0067】
制御部51Aは、自動制御が指定されていることに基づいて、[1]低臭気制御を実行する。低臭気制御は、各制御量の目標値決定に、各測定部S1,S2,S3の測定結果を用いない。低臭気制御は、臭気測定部S3の測定結果が[d]臭気閾値未満である場合に実行される。低臭気制御は、[b]低臭気プリセットを用いる。低臭気制御において、制御部51Aは、低臭気プリセットの対応づけを参照し、各酸素バーナーE2の駆動モードに、低臭気プリセットの対応づけに準じた駆動モードを定める。制御部51Aは、各制御量の目標値に、低臭気プリセットに準じた値を定める。
【0068】
制御部51Aは、自動制御を指定され、かつ各測定部S2,S3が使用不可であることに基づいて、[2]固定燃料制御を実行する。固定燃料制御は、燃料量の目標値決定に、各測定部S1,S2,S3の測定結果を用いない。固定燃料制御は、各測定部S1,S2,S3の故障時などに実行される。固定燃料制御は、[c]燃料プリセットを用いる。固定燃料制御において、制御部51Aは、燃料プリセットの対応づけを参照し、各酸素バーナーE2の駆動モードに、燃料プリセットの対応づけに準じた駆動モードを定める。制御部51Aは、燃料量の目標値に、燃料プリセットの固定値を決定する。
【0069】
制御部51Aは、優先制御の種類が温度優先制御であることに基づいて、[3]温度優先制御を実行する。温度優先制御は、燃料量の目標値決定に、各測定部S1,S3の測定結果を用いず、温度測定部S2の測定結果を用いる。温度優先制御は、酸素供給と酸化燃焼との切り替えに、各測定部S1,S3の測定結果を用いず、温度測定部S2の測定結果を用いる。
【0070】
温度優先制御は、酸素供給と酸化燃焼との切り替えに、[g]燃料情報、および[h]モード情報を用いる。温度優先制御において、制御部51Aは、燃料情報のなかで温度測定部S2の測定結果に対応づけられた供給量を特定し、当該特定された供給量を、燃料量の目標値に決定する。制御部51Aは、モード情報を参照し、温度測定部S2の測定結果に対応づけられた駆動パターンを特定し、当該特定された駆動パターンを、酸素バーナーE2の駆動パターンに決定する。
【0071】
制御部51Aは、優先制御の種類が臭気優先制御であることに基づいて、[4]臭気優先制御を実行する。臭気優先制御は、燃料量の目標値決定に、各測定部S1,S2の測定結果を用いず、臭気測定部S3の測定結果を用いる。臭気優先制御は、酸素供給と酸化燃焼との切り替えに、各測定部S1,S2の測定結果を用いず、臭気測定部S3の測定結果を用いる。
【0072】
臭気優先制御は、酸素供給と酸化燃焼との切り替えに、[g]燃料情報、および[h]モード情報を用いる。臭気優先制御において、制御部51Aは、燃料情報のなかで臭気測定部S3の測定結果に対応づけられた供給量を特定し、当該特定された供給量を、燃料量の目標値に決定する。制御部51Aは、モード情報を参照し、臭気測定部S3の測定結果に対応づけられた駆動パターンを特定し、当該特定された駆動パターンを、酸素バーナーE2の駆動パターンに決定する。
【0073】
図4が示すように、出力装置53は、処理状況画面60に、臭気処理用の各種情報を表示する。さらに、出力装置53は、処理状況画面60に、制御装置51による臭気処理の状況を表示する。出力装置53は、処理状況画面60に、CO測定部S1、温度測定部S2、および臭気測定部S3の測定結果を表示してもよい。
【0074】
処理状況画面60は、制御モード欄61、測定部状況欄62,63,64、優先モード欄65、臭気閾値欄66、および空燃比欄67を備える。
制御モード欄61は、制御装置51が自動制御を実行しているか、あるいは手動制御を実行しているかを示す。自動制御を実行するか、あるいは手動制御を実行するかは、自動制御が指定されているか否かに基づいて、制御装置51によって判断される。制御モード欄61は、自動制御の実行中に「自動モード」を表示する。また、制御モード欄61は、手動制御の実行中に「手動モード」を表示する。このように、処理状況画面60に制御の種別を示す臭気処理装置は、利用者による自動制御の適否判断を支援する。また、処理状況画面60に制御の種別を示す臭気処理装置は、利用者による自動制御の切り替え時期の適否判断を支援する。
【0075】
測定部状況欄62,63,64は、各測定部S1,S2,S3が使用可能か否かを示す。例えば、臭気測定部状況欄62は、臭気測定部S3の使用可能時に「臭気測定使用」を点灯し、臭気測定部S3のメンテナンス時や故障時などのように、臭気測定部S3の使用不可時に「臭気測定使用」を消灯する。温度測定部状況欄63は、温度測定部S2の使用可能時に「温度測定使用」を点灯し、温度測定部S2のメンテナンス時や故障時などのように、温度測定部S2の使用不可時に「温度測定使用」を消灯する。CO測定部状況欄64は、CO測定部S1の使用可能時に「ガス分析使用」を点灯し、CO測定部S1のメンテナンス時や故障時などのように、CO測定部S1の使用不可時に「ガス分析使用」を消灯する。このように、処理状況画面60に各測定部S1,S2,S3の使用可否を示す臭気処理装置は、各種制御の選択事由について、利用者による把握を支援する。
【0076】
優先モード欄65は、制御装置51が、[3]温度優先制御を実行しているか、あるいは[4]臭気優先制御を実行しているかを示す。例えば、優先モード欄65は、入力装置52に入力された優先制御の種類が温度優先制御であることに基づいて、自動制御の実行中に「温度優先モード」を表示する。優先モード欄65は、入力装置52に入力された優先制御の種類が臭気優先制御であることに基づいて、自動制御の実行中に「臭気優先モード」を表示する。このように、処理状況画面60に優先制御の種類を示す臭気処理装置は、利用者による優先制御の種類の適否判断を支援する。また、処理状況画面60に優先制御の種類を示す臭気処理装置は、利用者による優先制御の切り替え時期の適否判断を支援する。
【0077】
臭気閾値欄66は、記憶部51Bに記憶されている臭気閾値を表示する。空燃比欄67は、記憶部51Bに記憶されている目標空燃比を表示する。
補正酸素リスト68は、記憶部51Bに記憶されている補正酸素情報の対応づけを示す。
図4が示すように、補正酸素情報は、例えば、不使用の一酸化炭素量68Aに、共通補正酸素量Qox0を対応づける。制御部51Aは、補正酸素量の目標値決定にCO測定部S1を用いないとき、一酸化炭素量68Aに不使用を決定する。制御部51Aは、一酸化炭素の濃度にかかわらず補正酸素量を決定するとき、補正酸素情報を参照し、補正酸素量の目標値に共通補正酸素量Qox0を定める。
【0078】
補正酸素情報は、例えば、0.0以上0.5未満の一酸化炭素量68Aに、第2補正酸素量Qox2を対応づける。補正酸素情報は、例えば、0.5以上2.0未満の一酸化炭素量68Aに、第3補正酸素量Qox3を対応づける。
【0079】
制御部51Aは、補正酸素量の目標値決定にCO測定部S1の測定結果を用いるとき、一酸化炭素量68Aが0.0以上0.5未満であれば、補正酸素量の目標値に第2補正酸素量Qox2を定める。一方、制御部51Aは、一酸化炭素量68Aが0.5以上2.0未満であれば、補正酸素量の目標値に第3補正酸素量Qox3を定める。
【0080】
燃料リスト69は、記憶部51Bに記憶されている燃料情報の対応づけを示す。
図4が示すように、燃料情報は、例えば、0℃以上700℃未満の排ガス温度69Aに、最大燃料量Qf0を対応づける。燃料情報は、例えば、700℃以上750℃未満の排ガス温度69Aに、第1燃料量Qf1を対応づける。燃料情報は、例えば、750℃以上800℃未満の排ガス温度69Aに、第2燃料量Qf2を対応づける。
【0081】
制御部51Aは、燃料量の目標値決定に温度測定部S2の測定結果を用いるとき、すなわち[3]温度優先制御を実行するとき、測定結果が0℃以上700℃未満であれば、燃料量の目標値に最大燃料量Qf0を定める。一方、制御部51Aは、測定結果が700℃以上750℃未満であれば、燃料目標量の目標値に第1燃料量Qf1を定める。
【0082】
図4が示すように、燃料情報は、例えば、400以上の臭気レベル69Bに、最大燃料量Qf0を対応づける。燃料情報は、例えば、250以上400未満の臭気レベル69Bに、第1燃料量Qf1を対応づける。燃料情報は、例えば、150以上250未満の臭気レベル69Bに、第2燃料量Qf2を対応づける。
【0083】
制御部51Aは、燃料量の目標値決定に臭気測定部S3の測定結果を用いるとき、すなわち[4]臭気優先制御を実行するとき、測定結果が400以上であれば、燃料量の目標値に最大燃料量Qf0を定める。一方、制御部51Aは、測定結果が250以上400未満であれば、燃料量の目標値に第2燃料量Qf2を定める。
【0084】
処理状況画面60は、モードリスト70を備える。モードリスト70は、記憶部51Bに記憶されているモード情報の対応づけを示す。
モード情報は、例えば、排ガス温度69Aの1つのレベル、および臭気レベル69Bの1つのレベルに、共通する1つの駆動パターン70Aを対応づける。モード情報は、排ガス温度69Aの各レベルに、別々の駆動パターン70Aを対応づけると共に、臭気レベル69Bの各レベルに、別々の駆動パターン70Aを対応づける。各駆動パターン70Aは、酸素供給モードと酸化燃焼モードとのいずれか1つのモード70Bを各酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに対応づける。
【0085】
例えば、モード情報は、0℃以上700℃未満の排ガス温度69A、および400以上の臭気レベル69Bに、1つのパターンP1を対応づける。モード情報は、700℃以上750℃未満の排ガス温度69A、および250以上400未満の臭気レベル69Bに、1つのパターンP2を対応づける。モード情報は、750℃以上800℃未満の排ガス温度69A、および150以上250未満の臭気レベル69Bに、1つのパターンP3を対応づける。モード情報は、800℃以上900℃未満の排ガス温度69A、および100以上150未満の臭気レベル69Bに、1つのパターンP4を対応づける。モード情報は、900℃以上1000℃未満の排ガス温度69A、および50以上100未満の臭気レベル69Bに、1つのパターンP5を対応づける。
【0086】
パターンP1は、全ての酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、酸化燃焼モードを対応づける。パターンP1は、全ての酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、酸素による高温の火炎の噴き出し、および臭気化合物の酸化を担わせる。
【0087】
パターンP1は、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、燃料量の目標値である最大燃料量Qf0の一部を配分する。制御装置51は、各酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、当該バーナーに配分された値に相当する燃料を供給するように、燃料供給を制御する。
【0088】
例えば、パターンP1は、酸素バーナーE2Aに最大燃料量Qf0の15%を配分する。パターンP1は、酸素バーナーE2Bに最大燃料量Qf0の21%を配分する。パターンP1は、酸素バーナーE2C,E2Dにそれぞれ最大燃料量Qf0の22%を配分する。パターンP1は、酸素バーナーE2Eに最大燃料量Qf0の20%を配分する。
【0089】
パターンP2は、全ての酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、酸化燃焼モードを対応づける。パターンP2は、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、燃料量の目標値である第1燃料量Qf1の一部を配分する。パターンP2は、酸素バーナーE2A,E2B,E2C,E2D,E2Eに、パターンP1とは異なる値で、第1燃料量Qf1を配分する。
【0090】
例えば、パターンP2は、酸素バーナーE2Aに最大燃料量Qf0の15%を配分する。パターンP1は、酸素バーナーE2B,E2C,E2Eに最大燃料量Qf0の20%を配分する。パターンP1は、酸素バーナーE2Dに最大燃料量Qf0の25%を配分する。
【0091】
パターンP3は、2つの酸素バーナーE2A,E2Eに、「E」と記載される、酸素供給モードを対応づける。パターンP3は、3つの酸素バーナーE2B,E2C,E2Dに酸化燃焼モードを対応づける。パターンP3は、3つの酸素バーナーE2B,E2C,E2Dに、燃料量の目標値である第2燃料量Qf2の一部を配分する。パターンP3は、例えば、酸素バーナーE2B,E2Dに第2燃料量Qf2の30%を配分する。パターンP3は、酸素バーナーE2Cに第2燃料量Qf2の40%を配分する。
【0092】
パターンP4は、4つの酸素バーナーE2A,E2B,E2D,E2Eに、「E」と記載される、酸素供給モードを対応づける。パターンP4は、1つの酸素バーナーE2Cに酸化燃焼モードを対応づける。パターンP4は、1つの酸素バーナーE2Cに、燃料量の目標値の全てを配分する。
パターンP5は、全ての酸素バーナーE2A,E2B,E2D,E2Eに、「E」と記載される、酸素供給モードを対応づける。
【0093】
(臭気処理方法)
以下、臭気処理装置が実行する臭気処理方法を説明する。臭気処理装置は、臭気処理方法において、燃料量の目標値決定、酸素量の目標値決定、および補正酸素量の目標値決定を所定の周期で繰り返す。
【0094】
[0]手動制御
図5が示すように、制御装置51は、自動制御の指定の有無を参照し、これによって手動制御が決定されているか、あるいは自動制御が指定されているかを判断する。制御装置51は、臭気処理に手動制御が指定されていると判断すると(ステップS11でNO)、各酸素バーナーE2の駆動モードに、[a]手動プリセットの対応づけを適用する。そして、制御装置51は、燃料量の目標値、および酸素量の目標値に、[a]手動プリセットの値を適用し、これによって、各目標値の決定を終了する(ステップS31)。
【0095】
なお、制御装置51は、臭気処理に自動制御が指定されていると判断すると(ステップS11でYES)、臭気測定部S3が使用可能か否かを判断する。制御装置51は、臭気測定部S3が使用不能であると判断すると(ステップS12でNO)、温度測定部S2が使用可能か否かを判断する。制御装置51は、臭気測定部S3、および温度測定部S2が使用不能であると判断すると(ステップS32でNO)、CO測定部S1が使用可能か否かを判断する。制御装置51は、全ての測定部S1,S2,S3が使用不能であると判断すると(ステップS33でNO)、各酸素バーナーE2の駆動モードに、[a]手動プリセットの対応づけを適用する。そして、制御装置51は、燃料量の目標値、および酸素量の目標値に、[a]手動プリセットの値を適用し(ステップS31)、これによって、目標値の決定を終了する。
【0096】
一方、制御装置51は、臭気測定部S3が使用不可、かつ温度測定部S2が使用可能であると判断すると(ステップS32でYES)、[3]温度優先制御に移行する(ステップS18)。
【0097】
[1]低臭気制御
制御装置51は、臭気処理に自動制御が指定され、かつ臭気測定部S3が使用可能であると判断すると(ステップS12でYES)、低臭気制御を実行する(ステップS13~S15)。
【0098】
この際、制御装置51は、[a]低臭気プリセットを参照し、臭気測定部S3の測定結果が[d]臭気閾値以上になるまで、各酸素バーナーE2の駆動モードに、低臭気プリセットの対応づけを適用する。また、制御装置51は、臭気測定部S3の測定結果が[d]臭気閾値以上になるまで、燃料量の目標値、酸素量の目標値、および補正酸素量の目標値に、[b]低臭気プリセットの固定値を適用する(ステップS14)。
【0099】
これによって、制御装置51は、臭気化合物がほどんど発生していない、あるいは予熱室12に鉄スクラップがほとんど装入されていないときに、燃料供給を抑えると共に、余剰熱量の発生を抑える。そして、制御装置51は、臭気測定部S3の測定結果が[d]臭気閾値以上になると、優先制御に移行する(ステップS15)。
【0100】
[2]固定燃料制御
制御装置51は、臭気測定部S3が使用不可、温度測定部S2が使用不可、かつCO測定部S1が使用可能であると判断すると(ステップS33でYES)、[2]固定燃料制御に移行する。
【0101】
この際、制御装置51は、[c]燃料プリセットを参照し、燃料プリセットにおいて酸化燃焼モードを対応づけられた酸素バーナーE2の駆動モードを、酸化燃焼モードに決定する。また、制御装置51は、燃料量の目標値に、燃料プリセットの固定値を適用する(ステップS34)。そして、制御装置51は、酸素量の目標値決定、および補正酸素量の目標値決定に移行する(ステップS22A)。
【0102】
[3]温度優先制御
制御装置51は、優先制御において、温度測定部S2が使用可能か否かを判断する。
制御装置51は、臭気測定部S3が使用可能、かつ温度測定部S2が使用可能であると判断すると(ステップS16でYES)、優先制御の種別が、温度優先制御であるか、あるいは臭気優先制御であるかを判断する。制御装置51は、優先制御の種別が温度優先制御であると判断すると(ステップS17でYES)、モード情報のなかの温度レベルの対応づけを参照し(ステップS18)、温度優先制御に移行する。
【0103】
この際、制御装置51は、モード情報に温度測定部S2の測定結果を適用し、当該測定結果のレベルに対応づけられる駆動パターン70Aを特定する。制御装置51は、特定された駆動パターン70Aを参照し、酸化燃焼モードを対応づけられた酸素バーナーE2の駆動モードを、酸化燃焼モードに決定する(ステップS19)。
【0104】
また、制御装置51は、燃料情報に温度測定部S2の測定結果を適用し、当該測定結果のレベルに対応づけられる燃料量を、燃料量の目標値に決定する。そして、制御装置51は、酸化燃焼モードに決定された酸素バーナーE2に、決定された燃料量の目標値を配分する(ステップS20)。
【0105】
[4]臭気優先制御
一方、制御装置51は、臭気測定部S3が使用可能、かつ温度測定部S2が使用不能であると判断すると(ステップS16でNO)、モード情報のなかの臭気レベルの対応づけを参照し(ステップS21)、臭気優先制御に移行する。
【0106】
また、制御装置51は、臭気測定部S3が使用可能、かつ温度測定部S2が使用可能、かつ優先制御の種別が温度優先制御でないと判断すると(ステップS17でNO)、モード情報のなかの臭気レベルの対応づけを参照して(ステップS21)、臭気優先制御に移行する。
【0107】
この際、制御装置51は、モード情報に臭気測定部S3の測定結果を適用し、当該測定結果のレベルに対応づけられる駆動パターン70Aを抽出する。制御装置51は、抽出された駆動パターン70Aを参照し、酸化燃焼モードを対応づけられた酸素バーナーE2の駆動モードを、酸化燃焼モードに決定する(ステップS22)。
【0108】
また、制御装置51は、燃料情報に臭気測定部S3の測定結果を適用し、当該測定結果のレベルに対応づけられる燃料量を、燃料量の目標値に決定する。そして、制御装置51は、酸化燃焼モードに決定された酸素バーナーE2に、決定された燃料量の目標値を配分する(ステップS20)。
【0109】
[補正酸素制御]
図6が示すように、制御装置51は、燃料量の目標値を決定すると、CO測定部S1が使用可能か否かを判断する。制御装置51は、CO測定部S1が使用可能であると判断すると(ステップS21AでYES)、特定された駆動パターン70Aを参照し、酸素供給モードの有無を判断する。あるいは、制御装置51は、臭気測定部S3が使用不可、温度測定部S2が使用不可、かつCO測定部S1が使用可能であると判断すると(ステップS33でYES)、[c]燃料プリセットを参照し、酸素供給モードの有無を判断する。
【0110】
制御装置51は、酸素供給モードが有ると判断すると(ステップS22AでYES)、酸素供給モードを対応づけられた酸素バーナーE2の駆動モードを、酸素供給モードに決定する(ステップS23)。また、制御装置51は、補正酸素情報にCO測定部S1の測定結果を適用し(ステップS24)、当該測定結果のレベルに対応づけられる補正酸素量を、全ての酸素バーナーE2の補正酸素量の目標値に決定する(ステップS25)。そして、制御装置51は、目標空燃比を参照し(ステップS26)、[c]燃料プリセットを参照しているか否かを判断する(ステップS27)。
【0111】
制御装置51は、燃料プリセットを参照していると判断すると、酸化燃焼モードに決定された酸素バーナーE2について、目標空燃比を満たすように、燃焼プリセットの固定値である燃料量の目標値から、酸素量の目標値を決定する(ステップS27A)。また、制御装置51は、燃料プリセットを参照していると判断すると、酸素供給モードに決定された酸素バーナーE2について、決定された補正酸素量の目標値を等配する(ステップS27C)。
【0112】
制御装置51は、燃料プリセットを参照していないと判断すると、酸化燃焼モードに決定された酸素バーナーE2について、目標空燃比を満たすように、配分された燃料量の目標値から、酸素量の目標値を決定する(ステップS27B)。また、制御装置51は、燃料プリセットを参照していないと判断すると、酸素供給モードに決定された酸素バーナーE2について、決定された補正酸素量の目標値を等配する(ステップS27C)。
【0113】
これに対し、制御装置51は、臭気測定部S3と温度測定部S2との少なくとも一方が使用可能、かつCO測定部S1が使用不能であると判断すると(ステップS21AでNO)、特定された駆動パターン70Aを参照し、駆動モードごとの処理を実行する。
【0114】
この際、制御装置51は、特定された駆動パターン70Aのなかに酸素供給モードが存する場合(ステップS41でYES)、酸素供給モードを対応づけられた酸素バーナーE2の駆動モードを、酸素供給モードに決定する。また、制御装置51は、補正酸素情報を参照し、不使用に対応づけられる共通補正酸素量Qox0を、全ての酸素バーナーE2の補正酸素量の目標値に決定する(ステップS42)。そして、制御装置51は、酸素供給モードに決定された酸素バーナーE2について、決定された補正酸素量の目標値を等配する(ステップS43)。
【0115】
また、制御装置51は、特定された駆動パターン70Aのなかに酸化燃焼モードが存する場合(ステップS22AでNO、ステップS41でNO)、目標空燃比を参照する(ステップS44)。そして、制御装置51は、酸化燃焼モードに決定された酸素バーナーE2について、目標空燃比を満たすように、当該酸素バーナーE2の燃料量の目標値から、酸素量の目標値を決定する(ステップS45)。
【0116】
これによって、制御装置51は、臭気レベルを抑える範囲で、一部の酸素バーナーE2に燃料供給を停止し、他部の酸素バーナーE2に目標空燃比を満たすような酸素を供給する。そして、制御装置51は、温度レベルの上昇に合わせて、燃料供給の停止対象を増やし、かつ目標空燃比を満たすような燃焼による熱を低める。また、制御装置51は、温度レベルの下降に合わせて、燃料供給の停止対象を減らし、かつ目標空燃比を満たすような燃焼による熱を高める。また、制御装置51は、臭気レベルの上昇に合わせて、燃料供給の停止対象を減らし、かつ目標空燃比を満たすような燃焼による熱を高める。また、制御装置51は、臭気レベルの下降に合わせて、燃料供給の停止対象を増やし、かつ目標空燃比を満たすような燃焼による熱を低める。
【0117】
なお、制御装置51が実行する臭気処理方法によれば、燃焼室20に酸素バーナーE2を搭載しない場合と比べて、臭気化合物であるアセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、トルエン、キシレン、ホルムアルデヒド、メタノール、プロピオンアルデヒドに大幅な排出の抑制が認められた。例えば、アセトアルデヒドは、燃焼室20に酸素バーナーE2を搭載しない場合の検知量の0.3%未満に抑えられ、イソブチルアルデヒドは、燃焼室20に酸素バーナーE2を搭載しない場合の検知量の6%未満に抑えられることが認められた。また、トルエンは、燃焼室20に酸素バーナーE2を搭載しない場合の検知量の5%未満に抑えられ、キシレンは、燃焼室20に酸素バーナーE2を搭載しない場合の検知量の28%未満に抑えられることが認められた。
【0118】
上記実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)有機物の熱分解と、臭気化合物の酸化と、がこの順に進められるため、酸素が供給されない吸気ダクト13のなかで、素反応に準じた熱分解が円滑に進む。結果として、有機物が臭気化合物に熱分解されやすい。そして、有機物の熱分解を酸化に先駆けて進める分だけ、臭気化合物の酸化を促し、これによって、臭気放出を抑制する。
【0119】
(2)臭気化合物を酸化するための酸素が仮に予熱室12に供給されるとなれば、鉄スクラップの酸化が助長されて歩留まりの低下やスラグ量の増加を招く。また、臭気化合物を酸化するための酸素が仮に予熱室12に供給されるとなれば、鉄スクラップの過剰溶解を予熱室12のなかで発生させて、予熱室12における鉄スクラップの溶着を招く。この点、臭気化合物を酸化するための酸素が燃焼室20に供給される構成であれば、歩留まりの低下やスラグ量の増加が抑えられる。
【0120】
さらに、臭気化合物を酸化するための酸素が仮に予熱室12に供給されるとなれば、製鋼室10の屋内に酸素の供給設備を設置することを強いられる。製鋼室10の屋内は、電気炉と電気炉を稼働させる設備とを密集させるため、酸素を供給する設備を新たに設置することが通常困難である。この点、製鋼室10の室外に配置される燃焼室20に酸素が供給される構成であれば、酸素の供給設備が設置される空間の確保が容易ともなる。
【0121】
(3)燃焼室20の酸素供給は、予熱室12と吸気ダクト13との接合部への酸素供給と比べて、酸素バーナーE2の設置が容易でもある。臭気化合物の酸化する温度まで排出ガスの温度を高めることになれば、排出ガスの流速を下げて排出ガスの滞留時間を確保することが有効である。予熱室12と吸気ダクト13との接合部にこうした大容積を確保することは通常不可能ではあるが、燃焼室20の酸素供給であれば可能ともなる。また、排出ガスの流速が相対的に高い吸気ダクト13のなかで酸化反応の進行する範囲を特定することもまた通常困難ではあるが、排気ガスの流速を低められる燃焼室20の酸素供給であれば可能ともなる。そして、燃焼室20の酸素供給は、予熱室12と吸気ダクト13との接合部への酸素供給と比べて、酸化反応の進行による排気体積の急激な膨張に対し、酸化反応の進行する範囲を特定しやすい分だけ、構造的および熱的な負荷の耐性を高めやすい。
【0122】
(4)予熱室12と吸気ダクト13との接合部への酸素供給では、仮に、排出ガスの温度が接合部で低くなる場合、排出ガスの燃焼が進まず、排出ガスの温度を下げるのみとなる。この点、燃焼室20の酸素供給は、臭気化合物の燃焼環境に酸素を供給するため、臭気化合物の無臭化の確度が高まる。
【0123】
(5)酸素バーナーE2の駆動が酸素供給であるとき、臭気化合物の酸化が酸素供給によって進む共に、酸素バーナーE2の燃料消費が抑えられる。
(6)酸素バーナーE2の駆動が酸化燃焼であるとき、臭気化合物の酸化が酸化燃焼によって進む。酸素供給と酸化燃焼とに可逆的に切り替わる酸素バーナーE2の制御は、臭気放出を抑える他に、臭気処理における余剰熱量の抑制も可能にする。
【0124】
なお、有機物の熱分解は、300℃以上500℃以下の温度を要する一方、臭気化合物の酸化などの二次燃焼は、750℃以上の温度を要する場合がある。臭気化合物を酸化するための酸素が仮に予熱室12に供給されるとなれば、予熱室12の排ガス温度が低下した場合に、臭気化合物の酸化を進めがたくなる。この点、酸素バーナーE2の酸素供給を通じて燃焼室20に酸素を供給する構成であれば、予熱室12の排ガス温度が低下した場合であっても、臭気化合物の酸化などの二次燃焼を進められる確度も高まる。
【0125】
(7)また、1つの装置である酸素バーナーE2が、酸素供給と酸化燃焼とに切り替わるため、酸化燃焼の停止と酸素供給の開始とが同時に進む。そのため、各測定部S2,S3の測定結果の変化に対する、燃焼室20における熱量の応答性を高めることが可能ともなる。これによって、臭気処理の余剰熱量を抑えることの実効性が高まる。
【0126】
(8)臭気測定部S3の測定結果が低いレベルであるほど、酸素バーナーE2の駆動が酸化燃焼から酸素供給に切り替わる。そして、臭気レベルが低いほど、酸素供給モードのバーナー数量が多く、かつ当該バーナー数量が臭気レベルに合わせて予め設定されているため、余剰熱量を抑えることの実効性がさらに高まる。
【0127】
(9)温度測定部S2の測定結果が高いレベルであるほど、酸素バーナーE2の駆動が酸化燃焼から酸素供給に切り替わる。結果として、臭気放出が抑えられている状況で燃料をさらに消費するようなこと、すなわち、燃料の不要な消費が抑えられる。また、[3]温度優先制御が[4]臭気優先制御に切り替わるため、温度測定部S2の異常時においても、臭気処理の余剰熱量が抑制される。同様に、[4]臭気優先制御が[3]温度優先制御に切り替わるため、臭気測定部S3の異常時においても、臭気処理の余剰熱量が抑制される。
【0128】
(10)CO測定部S1の測定結果が高いレベルであるほど、燃焼室20に供給する酸素量を高めるように、補償酸素量が変更されるため、上記(1)から(6)に準じた効果を得ながらも、一酸化炭素の放出が抑制される。
【0129】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することもできる。
[自動制御]
・制御装置51は、入力装置52から[4]臭気優先制御と[5]補償酸素制御とを順に実行する指示を受け付け、これに従って、[4]臭気優先制御と[5]補償酸素制御とを順に実行してもよい。すなわち、制御装置51は、[1]~[5]の各制御の実行指示を別々に入力装置52から受け付け、これに従って、実行指示に指定された制御を指示の順に実行してもよい。この際、制御装置51は、[1]低臭気制御、あるいは指定されていない制御のように、実行指示に指定されない制御を割愛してもよい。
【0130】
・[4]臭気優先制御は、出力である臭気測定部S3の測定結果を入力に戻し、これによって各制御値の目標値を変えるため、臭気レベルを抑えることのリアルタイム性を高める。[3]温度優先制御もまた、出力である温度測定部S2の測定結果を入力に戻し、これによって各制御値の目標値を変えるため、臭気レベルを抑えることのリアルタイム性を高める。すなわち、これら[3][4]の優先制御は、急峻な臭気レベルの変化、突発的な臭気レベルの変化、あるいは過渡的な臭気レベルの変化について、熱分解と酸化とを円滑に追従させ、これによって、臭気レベルの抑制効果を、さらに顕著なものとする。
【0131】
この際、制御装置51は、臭気測定部S3の測定結果について、変化の度合いを監視してもよい。そして、測定結果の変化の度合いが所定範囲内であるとき、制御装置51は、[1]低臭気制御、あるいは[2]固定燃料制御を実行してもよい。また、測定結果の変化の度合いが所定範囲外であるとき、制御装置51は、[4]臭気優先制御を実行してもよい。
【0132】
同様に、制御装置51は、温度測定部S2の測定結果について、変化の度合いを監視してもよい。そして、測定結果の変化の度合いが所定範囲内であるとき、制御装置51は、[1]低臭気制御、あるいは[2]固定燃料制御を実行してもよい。また、測定結果の変化の度合いが所定範囲外であるとき、制御装置51は、[3]温度優先制御を実行してもよい。
【0133】
・制御装置51は、[4]臭気優先制御と[3]温度優先制御とを交互に繰り返す実行指示を入力装置52から受け、これによって[4]臭気優先制御と[3]温度優先制御とを交互に実行してもよい。また、制御装置51は、CO測定部S1の測定結果を用いる[5]補正酸素制御と、CO測定部S1の測定結果を用いない[5]補正酸素制御とを交互に繰り返す指示を入力装置52から受け、これによって[5]補正酸素制御による処理を交互に変更してもよい。このように、制御装置51は、各測定部S1,S2,S3の測定結果を用いる別々の制御を1つの組として繰り返してもよい。
【0134】
・制御装置51は、[1]~[5]の各制御の実行に際し、1つの制御から他の制御に移行するために、入力装置52から許諾を受けてもよい。この構成によれば、各制御の切り替えによる処理精度の向上が図られる。
【0135】
例えば、制御装置51は、臭気レベルが臭気閾値以上であると判断すると、出力装置53の表示を通じ、[1]低臭気制御から優先制御に移行するための許諾を入力装置52に促してもよい。また、制御装置51は、臭気測定部S3が使用可能に遷移したと判断すると、出力装置53の表示を通じ、[2]固定燃料制御から[4]臭気優先制御に移行するための許諾を入力装置52に促してもよい。あるいは、制御装置51は、臭気測定部S3が使用可能に遷移したと判断すると、出力装置53の表示を通じ、[3]温度優先制御から[4]臭気優先制御に移行するための許諾を入力装置52に促してもよい。
【0136】
・制御装置51は、各測定部S1,S2,S3の測定結果を臭気処理に適用するか否かを、優先制御の種類のみから判断してもよい。例えば、優先制御の種類が臭気優先制御である場合、制御装置51は、優先制御の種類を参照し、温度測定部S2の使用可否判断を割愛してもよい。
【0137】
・制御装置51は、駆動パターン70AとしてパターンP1を特定する優先制御を実行し、当該優先制御の次の制御周期において、駆動パターン70AとしてパターンP2を特定する優先制御を実行してもよく、パターンP3を特定する優先制御を実行してもよい。すなわち、制御装置51は、駆動モードが切り替わる酸素バーナーE2の数量を変えることによって酸素供給の変化を変えてもよい。切り替え対象の酸素バーナーE2の数量が変わる構成であれば、臭気レベルが急峻に高まる場合であれ、温度レベルが急峻に低まる場合であれ、臭気レベルを抑えるように、有機物の生成変化に燃焼室20の燃焼変化を追従させることが容易ともなる。
【0138】
・また、制御装置51は、駆動モードが切り替わる酸素バーナーE2の数量を変えることによって補正酸素供給の変化を変えてもよい。切り替え対象の酸素バーナーE2の数量が変わる構成であれば、一酸化炭素量が急峻に高まる場合であれ、一酸化炭素量が急峻に低まる場合であれ、一酸化炭素量を抑えるように、一酸化炭素量の変化に燃焼室20の燃焼変化を追従させることが容易ともなる。
【0139】
[モード情報]
・モード情報は、酸素バーナーE2のモードごとの配置が相互に異なる、2つ以上のパターンを備えてもよい。例えば、2つのパターンの間で、酸素供給モードに対応づける酸素バーナーE2の数量が等しく、かつ酸化燃焼モードに対応づける酸素バーナーE2の数量が等しく、そして、酸素バーナーE2のモードごとの配置のみが異なってもよい。この構成によれば、熱の供給位置を燃焼室20のなかで詳細に変更できる。
【0140】
・モード情報は、熱分解バーナーC1A,C1Bに燃焼と消化とのいずれか一方を対応づけたパターンを備えてもよい。モード情報は、空気燃焼バーナーC1C,C1Dに燃焼と消化とのいずれか一方を対応づけたパターンを備えてもよい。これらの構成によれば、各測定部S2,S3の測定結果に基づいて、吸気ダクト13を含めた排気系での熱分解と酸化との制御が可能にもなる。
【0141】
[酸素供給部]
・熱分解バーナーC1A,C1Bは、酸素によって燃料を燃焼する酸素バーナーに変更可能である。熱分解バーナーC1A,C1Bは、臭気処理システムから割愛されてもよい。この際、臭気処理システムは、(i)有機物の熱分解と、(ii)臭気化合物の酸化と、を燃焼室20のなかで同時に進める。
【0142】
・酸素バーナーE2は、空気によって燃焼を燃焼する空気燃焼バーナーに変更可能である。この際、制御装置51は、酸素量、および補正酸素量である制御量を、空気燃焼バーナーに供給する空気量、および補正空気量に変更する。
【0143】
・燃焼室20の内部に酸素を供給する酸素供給部は、酸素供給ノズルのように、酸素の供給に特化し、かつ酸化燃焼する酸素バーナーE2とは別体の装置に変更可能である。この際、酸素バーナーE2は、空気燃焼バーナーに変更されてもよい。
【0144】
[臭気処理システム]
・臭気処理システムは、製鋼に限らず、例えば、廃棄物の焼却のように、臭気化合物を燃焼する技術に適用可能である。
【符号の説明】
【0145】
C1A,C1B…熱分解バーナー
C1,C1C,C1D…空気燃焼バーナー
E2,E2A,E2B,E2C,E2D,E2E…酸素バーナー
Qf0…最大燃料量
Qf1…第1燃料量
Qf2…第2燃料量
Qox0…共通補正酸素量
Qox2…第2補正酸素量
Qox3…第3補正酸素量
S1…CO測定部
S2…温度測定部
S3…臭気測定部
10…製鋼室
11…溶解室
12…予熱室
12A,22…排気口
12B…吸気口
13…吸気ダクト
14…防爆弁
20…燃焼室
21…ダスト排出扉
32…冷却室
33…直引集塵ファン
34…排気集塵室
35…直引合流ファン
41…建屋ダクト
42…建屋集塵ファン
43…建屋集塵室
51…制御装置
51A…制御部
51B…記憶部
52…入力装置
53…出力装置
60…処理状況画面
61…制御モード欄
62,63,64…測定部状況欄
65…優先モード欄
66…臭気閾値欄
67…空燃比欄
68A…一酸化炭素量
68B…臭気レベル
69A…排ガス温度
69B…臭気レベル