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2023-182277車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム
<図1>
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図1
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図2
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図3
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図4
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図5
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図6
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図7
  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図8
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  • -車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182277
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/00 20060101AFI20231219BHJP
   B60Q 1/04 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B60Q1/00 C
B60Q1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095781
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】石井 智
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339AA24
3K339AA25
3K339AA32
3K339BA01
3K339BA02
3K339BA05
3K339BA11
3K339BA12
3K339BA22
3K339BA25
3K339BA28
3K339CA01
3K339CA12
3K339CA22
3K339DA01
3K339DA05
3K339GB01
3K339GB21
3K339HA02
3K339HA04
3K339JA02
3K339JA11
3K339JA16
3K339JA21
3K339JA22
3K339KA09
3K339KA18
3K339KA28
3K339KA38
3K339LA06
3K339MA06
3K339MC41
3K339MC70
(57)【要約】
【課題】車両用灯具のコストの上昇を抑制し、車両用灯具に設定された複数の機能(点灯態様)が受ける要求を満たしたうえで、温度ディレーティング制御を支障なく実行する。
【解決手段】複数の点灯態様で点灯する点灯部10と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部30とを備える車両用灯具1の温度ディレーティング制御を実行する車両用灯具1の制御装置29であって、点灯部10の点灯態様毎に、灯室の内部又は周囲の温度と、点灯部10に入力される電力とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶する不揮発性メモリ部23と、点灯部10の点灯態様と、温度検出部30により検出された灯室の内部又は周囲の温度と、不揮発性メモリ部23に記憶された温度ディレーティング情報とに応じて、点灯部10に入力される電力を制御する電力制御部22とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の点灯態様で点灯する点灯部と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部とを備える車両用灯具の温度ディレーティング制御を実行する車両用灯具の制御装置であって、
前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶する記憶部と、
前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する制御部と
を備える車両用灯具の制御装置。
【請求項2】
前記温度検出部により温度が検出される前記灯室の内部又は周囲の領域は、前記点灯部の発熱の影響を受け難い領域である請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項3】
複数の前記点灯態様のうちの少なくとも2つの前記点灯態様は、点灯タイミングが重なる場合がある請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項4】
複数の前記点灯態様のうちの少なくとも1つの前記点灯態様は、前記点灯部に入力される電力又は電流の負荷率が他の前記点灯態様と相違する請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項5】
複数の前記点灯態様のうちの少なくとも1つの前記点灯態様は、前記温度ディレーティング制御の開始温度が他の前記点灯態様と相違する請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項6】
複数の前記点灯態様は、ハイビーム、ロービーム、昼間点灯、及び方向指示を含む請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項7】
前記点灯部は、複数の発光ユニットを備え、
前記発光ユニットは、一又は複数の前記点灯態様に対応する請求項1に記載の車両用灯具の制御装置。
【請求項8】
複数の点灯態様で点灯する点灯部と、
灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部と、
前記点灯部の温度ディレーティング制御を実行する制御装置と
を備える車両用灯具であって、
前記制御装置は、
前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶する記憶部と、
前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する制御部と
を備える車両用灯具。
【請求項9】
複数の点灯態様で点灯する点灯部と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部とを備える車両用灯具の温度ディレーティング制御を、制御装置に実行させるためのプログラムであって、
前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶部に記憶させる手順と、
前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する手順と
を前記制御装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具の制御装置として、発光素子の過熱保護のために温度ディレーティング制御を実行するものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の制御装置では、第1~第4の光源について、第1~第3のサーミスタの出力及び駆動回路の入力電圧に基づいて、温度ディレーティング制御を実行している。また、特許文献2に記載の制御装置では、一つの発光素子について、第1、第2の温度センサの出力に基づいて、温度ディレーティング制御を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-49514号公報
【特許文献2】特開2018-122742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両用灯具が備える複数の発光ユニットには、それぞれ、ハイビーム、ロービーム、昼間点灯(DRL(Daytime Running Lights)/POS(Position Lights))、及び方向指示やハザード(ターンランプ)等の機能が設定されている。各発光ユニットは、受け持つ機能に応じて異なる要求を受ける。例えば、方向指示機能を受け持つ発光ユニットは、相対的に高温の環境であっても視認性を確保した状態で点灯することが要求される。また、昼間点灯を行う発光ユニットは、昼間走行時の環境温度では必ず点灯することが要求される。即ち、各発光ユニットの温度ディレーティング制御は、各発光ユニットに設定された機能に応じて個別に実行される必要がある。
【0005】
加えて、特許文献1,2に記載されているように、一又は複数の発光ユニットについて、複数の温度検出素子の出力に基づいて、温度ディレーティング制御を実行する場合、温度検出素子、結線用配線、制御装置の入力回路、及び制御装置の入力端子の数が増加し、車両用灯具のコストが上昇する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、車両用灯具のコストの上昇を抑制し、車両用灯具に設定された複数の機能(点灯態様)が受ける要求を満たしたうえで、温度ディレーティング制御を支障なく実行することができる車両用灯具の制御装置、車両用灯具、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の点灯態様で点灯する点灯部と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部とを備える車両用灯具の温度ディレーティング制御を実行する車両用灯具の制御装置であって、前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶する記憶部と、前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する制御部とを備える。
【0008】
本発明は、複数の点灯態様で点灯する点灯部と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部と、前記点灯部の温度ディレーティング制御を実行する制御装置とを備える車両用灯具であって、前記制御装置は、前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶する記憶部と、前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する制御部とを備える。
【0009】
本発明は、複数の点灯態様で点灯する点灯部と、灯室の内部又は周囲の温度を検出する一つの温度検出部とを備える車両用灯具の温度ディレーティング制御を、制御装置に実行させるためのプログラムであって、前記点灯部の前記点灯態様毎に、前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記点灯部に入力される電力又は電流とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を記憶部に記憶させる手順と、前記点灯部の前記点灯態様と、前記温度検出部により検出された前記灯室の内部又は周囲の温度と、前記記憶部に記憶された前記温度ディレーティング情報とに応じて、前記点灯部に入力される電力又は電流を制御する手順とを前記制御装置に実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用灯具のコストの上昇を抑制し、車両用灯具に設定された複数の機能(点灯態様)が受ける要求を満たしたうえで、温度ディレーティング制御を支障なく実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具の概略を示す側断面図である。
図2図2は、図1に示す車両用灯具の概略を示す回路図である。
図3図3(A)~(D)は、図2に示す点灯部の機能毎の制御特性を示すグラフである。
図4図4は、図2に示す点灯部の機能毎の制御特性を示す表である。
図5図5は、比較例に係る車両用灯具の概略を示す回路図である。
図6図6は、図5に示す夜用の発光ユニットと昼用の発光ユニットとの制御特性を示すグラフである。
図7図7は、比較例に係る車両用灯具の概略を示す回路図である。
図8図8は、図7に示す夜用の発光ユニットの制御特性を示すグラフである。
図9図9は、比較例に係る車両用灯具の概略を示す回路図である。
図10図10は、本発明の他の実施形態に係る車両用灯具の概略を示す側断面図である。
図11図11は、本発明の他の実施形態に係る車両用灯具の概略を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、構成の図示や説明を省略している箇所が一部あるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る車両用灯具1の概略を示す側断面図である。この図に示す車両用灯具1は、前照灯であり、点灯部10と、点灯回路20と、温度検出部30と、ボディ40と、アウタレンズ50とを備える。点灯部10は、複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dを備える(図2参照)。ボディ40は、車両前方側に開口部が設けられたフレームである。アウタレンズ50は、ボディ40の開口部を塞ぐようにボディ40の車両前方側の端部に取り付けられている。ボディ40とアウタレンズ50とにより灯室2が構成されている。
【0014】
点灯部10、点灯回路20、及び温度検出部30は、灯室2内に配されている。点灯部10は、灯室2内の上側の領域に配されている。点灯部10の複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dは、車幅方向にオフセットして配されている。また、温度検出部30は、灯室2内の下側の領域に配されている。さらに、点灯回路20は、点灯部10と温度検出部30との間の領域に配されている。なお、複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dは、車両用灯具1の意匠に応じて適宜配されていればよく、例えば、上下方向にオフセットして配されてもよい。
【0015】
ここで、点灯部10と温度検出部30とは、点灯回路20を介して上下に離して配されている。点灯部10が配された灯室2内の上側の領域の雰囲気温度は、発光ユニット10A,10B,10C,10Dの発熱の影響を受ける。それに対して、温度検出部30が配された灯室2内の下側の領域の雰囲気温度は、発光ユニット10A,10B,10C,10Dの発熱の影響が及び難く、相対的に安定する。なお、温度検出部30による温度検出領域の雰囲気温度に対して、発光ユニット10A,10B,10C,10Dの発熱の影響が及ぶ場合には、その発熱の影響による当該温度検出領域の上昇温度は、5℃以下が好ましく、3℃以下がより好ましく、2℃以下がさらに好ましい。
【0016】
点灯部10が備える複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dには、それぞれ異なる機能(点灯態様)が設定されている。発光ユニット10Aの機能は、ハイビームであり、発光ユニット10Bの機能は、昼間点灯(DRL/POS)であり、発光ユニット10Cの機能は、ロービームであり、発光ユニット10Dの機能は、方向指示やハザードである。なお、複数の機能を一つの発光ユニットに設定することも可能である。例えば、昼間点灯とロービームとを一つの発光ユニットに設定してもよい。この場合、当該発光ユニットは、ロービームの点灯態様から減光して昼間点灯の点灯態様に移行する。
【0017】
図2は、図1に示す車両用灯具1の概略を示す回路図である。この図に示すように、車両用灯具1では、点灯部10が、複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dを備える。複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dは、それぞれ、複数の発光素子11、及び不図示の光学系等を備える。
【0018】
発光素子11は、LED(Light Emitting Diode)やレーザーダイオード等であり、点灯回路20により調光される。例えば、発光素子11がLEDの場合には、PWM(Pulse Width Modulation)方式により点灯時間が制御されることで調光される。複数の発光素子11は、車幅方向に並べられてLEDアレイを構成してもよく、マトリックス状に並べられてもよい。また、複数の発光素子11は、同じ向きに配されてもよく、異なる向きに配されてもよい。複数の発光素子11が同じ向きに配されている場合には、光学系が備える導光部材により複数の発光素子11から射出された光を同方向に導けばよい。他方で、複数の発光素子11が異なる向きに配されている場合には、光学系が備えるミラーユニットにより、複数の発光素子11から射出された光を同方向に導けばよい。
【0019】
点灯回路20は、コンバータ部21と、電力制御部22と、不揮発性メモリ部23と、電源入力端子24と、GND(グランド)端子25と、点灯指示信号入力端子26と、温度信号入力端子27と、基板28とを備える。電力制御部22と不揮発性メモリ部23とは、MCU(Microcontroller Unit)29に実装されている。このMCU29、コンバータ部21、電源入力端子24、GND端子25、点灯指示信号入力端子26、及び温度信号入力端子27が、基板28に実装されている。また、MCU29には、発光ユニット10A,10B,10C,10Dの点灯制御を実行するためのプログラムが格納されている。
【0020】
コンバータ部21は、複数のコンバータ21A,21B,21C,21Dを備える。コンバータ21Aは、発光ユニット10Aと電源入力端子24とに電力線で接続されたDC/DCコンバータであり、電源入力端子24から供給される電力を変換して発光ユニット10Aに出力する。コンバータ21Bは、発光ユニット10Bと電源入力端子24とに電力線で接続されたDC/DCコンバータであり、電源入力端子24から供給される電力を変換して発光ユニット10Bに出力する。コンバータ21Cは、発光ユニット10Cと電源入力端子24とに電力線で接続されたDC/DCコンバータであり、電源入力端子24から供給される電力を変換して発光ユニット10Cに出力する。コンバータ21Dは、発光ユニット10Dと電源入力端子24とに電力線で接続されたDC/DCコンバータであり、電源入力端子24から供給される電力を変換して発光ユニット10Dに出力する。
【0021】
電力制御部22は、複数のコンバータ21A,21B,21C,21Dと不揮発性メモリ部23と点灯指示信号入力端子26と温度信号入力端子27とに信号線で接続されている。電力制御部22は、車両に搭載された上位のシステムから送信された点灯指示信号を受信する。この点灯指示信号は、ハイビーム、昼間点灯、ロービーム、及び、方向指示やハザード等の機能(点灯態様)毎に上位のシステムから送信される。この点灯指示信号は、発光ユニット10Aに対するハイビームの点灯指示信号、発光ユニット10Bに対する昼間点灯の点灯指示信号、発光ユニット10Cに対するロービームの点灯指示信号、及び、発光ユニット10Dに対する方向指示やハザードの点灯指示信号を含む。
【0022】
ここで、2以上の点灯指示信号の送信タイミングが重なる場合がある。例えば、方向指示やハザードの点灯指示信号は、ハイビーム、昼間点灯、及びロービームの点灯指示信号と送信タイミングが重なる場合がある。
【0023】
不揮発性メモリ部23は、複数の発光ユニット10A,10B,10C,10Dの点灯制御において用いられる制御情報を記憶している。この制御情報は、ハイビームの機能を受け持つ発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御において用いられるマップA、昼間点灯の機能を受け持つ発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御において用いられるマップB、ロービームの機能を受け持つ発光ユニット10Cの温度ディレーティング制御において用いられるマップC、及び、方向指示やハザードの機能を受け持つ発光ユニット10Dの温度ディレーティング制御において用いられるマップDを含む。
【0024】
詳細は後述するが、マップA,B,C,Dは、共通の温度検出部30から受信する温度信号(温度情報)と各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値とをパラメータとして含む。各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値は、温度ディレーティング制御が実行されていない時の定格電力に対する出力電力の割合(出力電力の負荷率)である。即ち、温度ディレーティング制御が実行されていない時の各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値は、100%である。それに対して、温度ディレーティング制御の実行時の各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値は、100%未満(例えば、50~99%)である。なお、各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値の最低値は、30%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましい。
【0025】
電力制御部22は、一又は複数の機能の点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号と、不揮発性メモリ部23に記憶され点灯指示を受けた機能に対応するマップA,B,C,Dとに基づいて、点灯指示を受けた機能に対応するコンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値を求める。具体的には、電力制御部22は、ハイビームの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Aの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップAから読み出す。また、電力制御部22は、昼間点灯の点灯指示信号を受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Bの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップBから読み出す。また、電力制御部22は、ロービームの点灯指示信号を受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップCから読み出す。さらに、電力制御部22は、方向指示やハザードの点灯指示信号を受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Dの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップDから読み出す。そして、電力制御部22は、点灯指示を受けた機能に対応するコンバータ21A,21B,21C,21Dに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号A,B,C,Dを送信する。
【0026】
図3(A)~(D)は、図2に示す点灯部10の機能毎の制御特性を示すグラフである。図3(A)は、ハイビームの点灯制御における制御特性を示すグラフであり、図3(B)は、昼間点灯の点灯制御における制御特性を示すグラフであり、図3(C)は、ロービームの点灯制御における制御特性を示すグラフであり、図3(D)は、方向指示やハザードの点灯制御における制御特性を示すグラフである。
【0027】
これらのグラフに示すように、点灯部10の何れの機能の点灯制御においても、発光素子11の過熱防止を図るために、温度検出部30により検出される温度の上昇に応じて、温度ディレーティング制御が実行される。この温度ディレーティング制御では、温度検出部30により検出される温度が予め定められた値まで上昇すると、各コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値が、予め定められた最低値まで低下する。これにより、各発光ユニット10A,10B,10C,10Dが、発光素子11の温度が上限温度を超える条件(各図右上の薄塗の領域)で駆動されることが回避される。
【0028】
ここで、温度ディレーティング制御の開始温度は、機能毎に設定されている。図3(A)に示すハイビームの点灯制御では、温度ディレーティング制御の開始温度は、T3であり、図3(B)に示す昼間点灯の点灯制御では、温度ディレーティング制御の開始温度は、T2(<T3)である。また、図3(C)に示すロービームの点灯制御では、温度ディレーティング制御の開始温度は、T5(>T3)であり、図3(D)に示す方向指示やハザードの点灯制御では、温度ディレーティング制御の開始温度は、T3である。なお、以上の温度ディレーティング制御の開始温度は、各機能の要求性能や各発光ユニット10A,10B,10C,10Dの放熱性能等に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
温度ディレーティング制御におけるコンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値の最低値は、機能毎に設定されている。図3(A)に示すハイビームの温度ディレーティング制御におけるコンバータ21Aの出力電力の相対値の最低値は、RA1(例えば、50)%である。ハイビームの温度ディレーティング制御が開始されると、コンバータ21Aの出力電力の相対値が、100%からRA2%、RA1%と低下する。また、図3(B)に示す昼間点灯の温度ディレーティング制御におけるコンバータ21Bの出力電力の相対値の最低値は、RB1(例えば、50)%である。昼間点灯の温度ディレーティング制御が開始されると、コンバータ21Bの出力電力の相対値が、100%からRB3%、RB2%、RB1%と低下する。また、図3(C)に示すロービームの温度ディレーティング制御におけるコンバータ21Cの出力電力の相対値の最低値は、RC1(例えば、50)%である。ロービームの温度ディレーティング制御が開始されると、コンバータ21Cの出力電力の相対値が、100%からRC1%まで低下する。さらに、図3(D)に示す方向指示やハザードの温度ディレーティング制御におけるコンバータ21Dの出力電力の相対値の最低値は、RD1(>RA1,RB1,RC1、例えば、75)%である。方向指示やハザードの温度ディレーティング制御が開始されると、コンバータ21Dの出力電力の相対値が、100%からRD2%、RD1%と低下する。なお、以上の各機能の温度ディレーティング制御におけるコンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値の最低値は、各機能の要求性能や各発光ユニット10A,10B,10C,10Dの放熱性能等に応じて適宜設定すればよい。
【0030】
温度ディレーティング制御においてコンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の低下が終了する温度は、機能毎に設定されている。図3(A)に示すハイビームの温度ディレーティング制御においてコンバータ21Aの出力電力の低下が終了する温度は、T5である。また、図3(B)に示す昼間点灯の温度ディレーティング制御においてコンバータ21Bの出力電力の低下が終了する温度は、T5である。また、図3(C)に示すロービームの温度ディレーティング制御においてコンバータ21Cの出力電力の低下が終了する温度は、T6(>T5)である。さらに、図3(D)に示す方向指示やハザードの温度ディレーティング制御においてコンバータ21Dの出力電力の低下が終了する温度は、T5である。なお、以上の各機能の温度ディレーティング制御においてコンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の低下が終了する温度は、各機能の要求性能や各発光ユニット10A,10B,10C,10Dの放熱性能等に応じて適宜設定すればよい。
【0031】
マップAは、図3(A)の温度T0~T7と、温度T0~T7におけるコンバータ21Aの出力電力の相対値とを対応付けた温度ディレーティング情報である。また、マップBは、図3(B)の温度T0~T7と、温度T0~T7におけるコンバータ21Bの出力電力の相対値とを対応付けた温度ディレーティング情報である。また、マップCは、温度T0~T7と、温度T0~T7におけるコンバータ21Cの出力電力の相対値とを対応付けた温度ディレーティング情報である。さらに、マップDは、図3(D)の温度T0~T7と、温度T0~T7におけるコンバータ21Dの出力電力の相対値とを対応付けた温度ディレーティング情報である。
【0032】
図4は、図2に示す点灯部10の機能毎の制御特性を示す表である。この表には、コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値と温度検出部30により検出される温度との関係を示している。この表には、コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値RA1%、RA2%、RB1%、RB2%、RB3%、RC1%、RD1%、RD2%、及び、温度T0~T7の一例を示している。この例では、温度ディレーティング制御の開始温度が最も低いのが、昼間点灯のT2であるのに対して、温度ディレーティング制御の開始温度が最も高いのが、ロービームのT5である。また、この例では、コンバータ21A,21B,21C,21Dの出力電力の相対値の最低値が最も高いのが、方向指示やハザードの75%であるのに対して、当該最低値が最も低いのが、ハイビーム、昼間点灯、及び、ロービームの50%である。さらに、この例では、温度ディレーティング制御において出力電力の低下が終了する温度が最も高いのが、ロービームのT6であるのに対して、温度ディレーティング制御において出力電力の低下が終了する温度が最も低いのが、ハイビーム、昼間点灯、及び、方向指示やハザードのT5である。
【0033】
図5は、比較例に係る車両用灯具101の概略を示す回路図である。なお、上記実施形態に係る車両用灯具1と同様の構成については、同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0034】
比較例に係る車両用灯具101では、温度検出部30が、点灯回路120の基板28に実装されており、点灯回路120の温度を検出する。また、比較例に係る車両用灯具101の点灯部110は、夜用の発光ユニット10Aと昼用の発光ユニット10Bとを備える。即ち、発光ユニット10Aと発光ユニット10Bとの点灯タイミングが重なることはない。
【0035】
さらに、比較例に係る車両用灯具101では、不揮発性メモリ部23が、夜間点灯の温度ディレーティング情報であるマップと、昼間点灯の温度ディレーティング情報であるマップとを記憶している。
【0036】
電力制御部122は、上位のシステムから受信する発光ユニット10A,10Bの点灯指示信号と、温度検出部30から受信する温度信号と、不揮発性メモリ部23から読み出す発光ユニット10A,10Bのマップとに基づいて、コンバータ21A,21Bに電力信号A,Bを送信する。
【0037】
具体的には、電力制御部122は、夜用の発光ユニット10Aの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Aの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶された夜用のマップから読み出す。そして、電力制御部122は、コンバータ21Aに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号Aを送信する。また、電力制御部122は、昼用の発光ユニット10Bの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Bの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶された昼用のマップから読み出す。そして、電力制御部122は、コンバータ21Bに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号Bを送信する。
【0038】
ここで、比較例に係る車両用灯具101では、夜用の発光ユニット10Aと昼用の発光ユニット10Bとの点灯タイミングが重なることはない。このため、温度検出部30による点灯回路120の検出温度は、夜用の発光ユニット10Aの点灯時には夜用の発光ユニット10Aの発熱に応じた温度になり、昼用の発光ユニット10Bの点灯時には昼用の発光ユニット10Bの発熱に応じた温度になる。
【0039】
図6は、図5に示す夜用の発光ユニット10Aと昼用の発光ユニット10Bとの制御特性を示すグラフである。図6のグラフには、夜用の発光ユニット10Aの制御特性を実線で示し、昼用の発光ユニット10Bの制御特性を破線で示している。このグラフに示すように、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御が、発光ユニット10A,10Bの双方の上限温度を超える条件(図中の薄塗の領域A,B)で実行されることが回避される。それに加えて、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御が、想定した温度から開始される。同様に、昼用の発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御が、発光ユニット10Bの上限温度を超える条件(図中の薄塗の領域B)で実行されることが回避される。それに加えて、昼用の発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御は、想定した温度から開始される。
【0040】
即ち、夜用の発光ユニット10Aと昼用の発光ユニット10Bとの点灯タイミングが重なることがない場合には、発光ユニット10A,10Bの温度ディレーディング制御を、点灯回路120の温度に基づいて支障なく実行できる。それに対して、複数の発光ユニットの点灯タイミングが重なる場合には、それらの複数の発光ユニットの温度ディレーティング制御を、点灯回路120の温度に基づいて実行するのでは、想定外の温度から出力電力の抑制が開始される可能性がある。以下、この点について説明する。
【0041】
図7は、比較例に係る車両用灯具201の概略を示す回路図である。なお、上記比較例に係る車両用灯具101と同様の構成については、同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0042】
比較例に係る車両用灯具201の点灯部210は、夜用の発光ユニット10Aと、昼用の発光ユニット10Bと、昼夜共通の発光ユニット10Cとを備える。即ち、発光ユニット10Aと発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なることがある。また、発光ユニット10Bと発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なることがある。
【0043】
さらに、比較例に係る車両用灯具201では、不揮発性メモリ部23が、夜間点灯の温度ディレーティング情報であるマップと、昼間点灯の温度ディレーティング情報であるマップとを記憶している。
【0044】
比較例に係る車両用灯具201では、温度検出部30が、点灯回路220の基板28に実装されており、点灯回路220の温度を検出する。また、点灯回路220のコンバータ部21には、コンバータ21A,21B,21Cが設けられている。
【0045】
ここで、電力制御部222は、上位のシステムから受信する発光ユニット10A,10B,10Cの点灯指示信号と、温度検出部30から受信する温度信号と、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップとに基づいて、コンバータ21A,21B,21Cに電力信号A,B,Cを送信する。
【0046】
具体的には、電力制御部222は、夜用の発光ユニット10Aの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Aの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶された夜用のマップから読み出す。そして、電力制御部222は、コンバータ21Aに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号Aを送信する。また、電力制御部222は、昼用の発光ユニット10Bの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21Bの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶された昼用のマップから読み出す。そして、電力制御部222は、コンバータ21Bに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号Bを送信する。
【0047】
他方で、電力制御部222は、発光ユニット10A,10Cの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21A,21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶された夜用のマップから読み出す。そして、電力制御部222は、コンバータ21A,21Cに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号A,Cを送信する。
【0048】
また、電力制御部222は、発光ユニット10B,10Cの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30から受信する温度信号に対応するコンバータ21B,21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップBから読み出す。そして、電力制御部222は、コンバータ21B,21Cに対して、求めた出力電力の相対値を指示する電力信号B,Cを送信する。
【0049】
ここで、比較例に係る車両用灯具201では、夜用の発光ユニット10Aと昼夜共通の発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なることがある。また、昼用の発光ユニット10Bと昼夜共通の発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なることがある。このため、温度検出部30による点灯回路220の検出温度は、発光ユニット10A,10Cの点灯時には夜用の発光ユニット10Aの発熱に応じた温度にはならず、発光ユニット10A,10Cの発熱に応じた温度になる。即ち、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御には、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時の発熱の影響が及ぶ。
【0050】
同様に、温度検出部30による点灯回路220の検出温度は、発光ユニット10B,10Cの点灯時には昼用の発光ユニット10Bの発熱に応じた温度にはならず、発光ユニット10B,10Cの発熱に応じた温度になる。即ち、昼用の発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御には、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時の発熱の影響が及ぶ。
【0051】
図8は、図7に示す夜用の発光ユニット10Aの制御特性を示すグラフである。図8のグラフには、昼夜共通の発光ユニット10Cが点灯していない時の夜用の発光ユニット10Aの制御特性を実線で示し、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時の夜用の発光ユニット10Aの制御特性を破線で示している。このグラフに示すように、昼夜共通の発光ユニット10Cが点灯していない時には、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御が、夜用の発光ユニット10Aが上限温度を超える条件(図中の薄塗の領域A)で実行されることが回避される。それに加えて、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御は、想定した温度から開始される。
【0052】
それに対して、図中に破線で示すように、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時には、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御が、上限温度を超える条件で実行されることは回避されるものの、想定外に低い温度から開始される。この場合、夜用の発光ユニット10Aの通常の使用温度(上限温度を超えない温度)においてもコンバータ21Aの出力電力が抑制され、夜用の発光ユニット10Aの発光量が抑制されることから、夜間の視界を確保するという夜間点灯機能に要求される性能が損なわれる可能性がある。
【0053】
同様に、昼用の発光ユニット10Bと昼夜共通の発光ユニット10Cとが同時に点灯する場合には、昼用の発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御が、想定外に低い温度から開始されることが考えられる。この場合、昼用の発光ユニット10Bの通常の使用温度(上限温度を超えない温度)においてもコンバータ21Bの出力電力が抑制され、昼用の発光ユニット10Bの発光量が抑制されることから、昼間に自車が走行していることを認知させるという昼間点灯機能に要求される性能が損なわれる可能性がある。
【0054】
図9は、比較例に係る車両用灯具301の概略を示す回路図である。なお、上記比較例に係る車両用灯具201と同様の構成については、同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0055】
比較例に係る車両用灯具301の点灯部310は、夜用の発光ユニット10Aと、昼用の発光ユニット10Bと、昼夜共通の発光ユニット10Cとを備える。また、比較例に係る車両用灯具301は、温度検出部30A,30B,30Cを備える。
【0056】
温度検出部30Aは、夜用の発光ユニット10Aの内部に設けられており,夜用の発光ユニット10Aの内部の温度を検出して温度信号Aを電力制御部322に送信する。また、温度検出部30Bは、昼用の発光ユニット10Bの内部に設けられており、昼用の発光ユニット10Bの内部の温度を検出して温度信号Bを電力制御部322に送信する。さらに、温度検出部30Cは、昼夜共通の発光ユニット10Cの内部に設けられており、発光ユニット10Cの内部の温度を検出して温度信号Cを電力制御部322に送信する。
【0057】
電力制御部322は、上位のシステムから受信する発光ユニット10A,10B,10Cの点灯指示信号と、温度検出部30A,30B,30Cから受信する温度信号A,B,Cと、不揮発性メモリ部23に記憶された発光ユニット10A,10B,10Cの温度ディレーティング情報であるマップA,B,Cとに基づいて、コンバータ21A,21B,21Cに電力信号A,B,Cを送信する。
【0058】
具体的には、電力制御部322は、夜用の発光ユニット10Aの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30Aから受信する温度信号Aに対応するコンバータ21Aの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップAから読み出す。そして、電力制御部322は、コンバータ21Aに対して、求めた出力電力の相対値を示す電力信号Aを送信する。また、電力制御部322は、昼用の発光ユニット10Bの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30Bから受信する温度信号Bに対応するコンバータ21Bの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップBから読み出す。そして、電力制御部322は、コンバータ21Bに対して、求めた出力電力の相対値を示す電力信号Bを送信する。さらに、電力制御部322は、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30Cから受信する温度信号Cに対応するコンバータ21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップCから読み出す。そして、電力制御部322は、コンバータ21Cに対して、求めた出力電力の相対値を示す電力信号Cを送信する。
【0059】
他方で、電力制御部322は、発光ユニット10A,10Cの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30Aから受信する温度信号Aに対応するコンバータ21Aの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップAから読み出す。また、この時、電力制御部322は、温度検出部30Cから受信する温度信号Cに対応するコンバータ21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップCから読み出す。そして、電力制御部322は、コンバータ21A,21Cに対して求めた出力電力の相対値を示す電力信号A,Cを送信する。
【0060】
また、電力制御部322は、発光ユニット10B,10Cの点灯指示信号を上位のシステムから受信している時、温度検出部30Bから受信する温度信号Bに対応するコンバータ21Bの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップBから読み出す。また、この時、電力制御部322は、温度検出部30Cから受信する温度信号Cに対応するコンバータ21Cの出力電力の相対値を、不揮発性メモリ部23に記憶されたマップCから読み出す。そして、電力制御部322は、コンバータ21B,21Cに対して求めた出力電力の相対値を示す電力信号B,Cを送信する。
【0061】
比較例に係る車両用灯具301では、夜用の発光ユニット10Aと昼夜共通の発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なる場合に、温度検出部30Aにより夜用の発光ユニット10Aの内部の温度が検出され、温度検出部30Cにより昼夜共通の発光ユニット10Cの内部の温度が検出される。従って、夜用の発光ユニット10Aの温度ディレーティング制御には、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時の発熱の影響が及ばない。同様に、昼用の発光ユニット10Bと昼夜共通の発光ユニット10Cとの点灯タイミングが重なる場合に、温度検出部30Bにより昼用の発光ユニット10Bの内部の温度が検出され、温度検出部30Cにより昼夜共通の発光ユニット10Cの内部の温度が検出される。従って、昼用の発光ユニット10Bの温度ディレーティング制御には、昼夜共通の発光ユニット10Cの点灯時の発熱の影響が及ばない。
【0062】
しかしながら、比較例に係る車両用灯具301では、温度検出部30A,30B,30Cを構成する温度検出素子、結線用配線、電力制御部322の入力回路、電力制御部322の入力端子、及び点灯回路320の温度信号入力端子27の数が、温度検出部30が一つのみの場合に比して増加する。
【0063】
それに対して、本実施形態に係る車両用灯具1は、一つの温度検出部30により検出される灯室2の内部の温度に基づいて、温度ディレーティング制御を実行する。従って、比較例に係る車両用灯具301に比して、温度検出部30を構成する温度検出素子、結線用配線、電力制御部22の入力回路、電力制御部22の入力端子、及び点灯回路20の温度信号入力端子27の数を低減できる。よって、比較例に係る車両用灯具301に比してコストを抑制できる。
【0064】
また、本実施形態に係る車両用灯具1では、点灯部10の点灯態様毎に、灯室2の内部の雰囲気温度と、点灯部10に入力される電力とにより規定された複数の温度ディレーティング情報が、不揮発性メモリ部23に記憶されている。そして、電力制御部22が、点灯部10の点灯態様と、温度検出部30により検出された灯室2の内部の雰囲気温度と、不揮発性メモリ部23に記憶された温度ディレーティング情報とに応じて、点灯部10に入力される電力を制御する。これにより、点灯部10の点灯態様がハイビームであれば、ハイビームに要求される性能に応じて温度ディレーディング制御を実行する等、点灯部10の点灯態様毎の要求を満たしたうえで温度ディレーディング制御を支障なく実行できる。
【0065】
ここで、本実施形態に係る車両用灯具1では、温度検出部30により雰囲気温度が検出される灯室2の内部の領域は、点灯部10の点灯時の発熱の影響を受け難い領域である。これにより、ハイビームの点灯時に方向指示の点灯が行われる等、複数の点灯態様の点灯タイミングが重なった場合に、一方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの温度ディレーティング制御を、他方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの点灯時の発熱の影響を受けることなく実行できる。さらに、複数の点灯態様の点灯タイミングが重なった場合に、一方の点灯態様を受け持つ発光ユニットと他方の点灯態様を受け持つ発光ユニットとの双方について、要求性能を満たしたうえで温度ディレーディング制御を支障なく実行できる。
【0066】
また、本実施形態に係る車両用灯具1では、点灯部10の複数の点灯態様のうちの方向指示やハザードについては、発光ユニット10Dに入力される電力の負荷率が、ハイビーム等の他の点灯態様より高く設定されている。これにより、方向指示やハザードを受け持つ発光ユニット10Dについては、温度ディレーディング制御による発光量の低下が相対的に抑えられる。従って、温度ディレーディング制御の実行中にも、方向指示やハザードに要求される視認性を確保することが可能になる。
【0067】
ここで、ロービームは、夜間走行中に対向車とすれ違う際における点灯態様である。そのため、ロービームを受け持つ発光ユニット10Cには、温度ディレーティング制御の開始温度を相対的に高くすることが要求される。そこで、本実施形態に係る車両用灯具1では、点灯部10の複数の点灯態様のうちのロービームについては、温度ディレーディング制御の開始温度を、ハイビーム等の他の点灯態様よりも高く設定している。
【0068】
また、昼間点灯は、昼間走行中に自車が走行していることを周囲に認知させるための点灯態様である。そのため、昼間点灯を受け持つ発光ユニット10Bは、走行中に周囲が認知できるように点灯していればよい。ここで、走行中には、温度検出部30による温度検出領域は、走行風により冷却されるため、昼間点灯を受け持つ発光ユニット10Cには、温度ディレーティング制御の開始温度を相対的に高くすることは要求されない。そこで、
点灯部10の複数の点灯態様のうちの昼間点灯については、温度ディレーディング制御の開始温度を、ハイビーム等の他の点灯態様よりも低く設定している。これにより、発光ユニット10Cの放熱性能の要求レベルを低下させることができる。
【0069】
図10は、本発明の他の実施形態に係る車両用灯具1Aの概略を示す側断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1Aでは、温度検出部30が、ボディ40の外面に配されており、灯室2の周囲の温度を検出する。
【0070】
ここで、灯室2の下側の雰囲気温度は、灯室2の上側の雰囲気温度に比して低く、点灯部10の発熱の影響を受け難い。そこで、本実施形態に係る車両用灯具1Aでは、温度検出部30を、ボディ40の底面に配し、温度検出部30により灯室2の下側の雰囲気温度を検出している。これにより、ハイビームの点灯時に方向指示の点灯が行われる等、複数の点灯態様の点灯タイミングが重なった場合に、一方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの温度ディレーティング制御を、他方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの点灯時の発熱の影響を受けることなく実行できる。
【0071】
図11は、本発明の他の実施形態に係る車両用灯具1Bの概略を示す側断面図である。この図に示すように、本実施形態に係る車両用灯具1Bでは、温度検出部30が、点灯部10の下側に配されており、灯室2の内部の温度を検出する。
【0072】
ここで、本実施形態に係る車両用灯具1Bは、点灯部10の下側の領域に熱流が向かわないように設計されており、点灯部10の下側の雰囲気温度は、点灯部10の上側の雰囲気温度に比して低く、点灯部10の点灯時の発熱の影響を受け難い。そこで、本実施形態に係る車両用灯具1Bでは、温度検出部30を、点灯部10の下側に配し、温度検出部30により点灯部10の下側の雰囲気温度を検出している。これにより、ハイビームの点灯時に方向指示の点灯が行われる等、複数の点灯態様の点灯タイミングが重なった場合に、一方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの温度ディレーティング制御を、他方の点灯態様を受け持つ発光ユニットの点灯時の発熱の影響を受けることなく実行できる。
【0073】
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、実施形態同士の技術や公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0074】
例えば、上記実施形態では、灯室2の内部又は周囲の温度と、点灯部10に入力される電力の相対値とにより規定された複数の温度ディレーティング情報を不揮発性メモリ部23に記憶させた。そして、上記実施形態では、点灯部10の点灯態様と、温度検出部30により検出された灯室2の内部又は周囲の温度と、不揮発性メモリ部23に記憶された温度ディレーティング情報とに応じて、点灯部10に入力される電力の相対値を制御する。しかしながら、電力の相対値を電力の絶対値に代えてもよく、電力を電流に代えてもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、電力制御部22と不揮発性メモリ部23とを、車両用灯具1,1A,1Bが備える点灯回路20に設けた。しかしながら、電力制御部22と不揮発性メモリ部23との少なくとも一方を、車両側のシステムに設けてもよい。
【0076】
さらに、上記実施形態では、複数の温度ディレーティング情報については、点灯部10の各点灯態様の要求性能と、各発光ユニット10A,10B,10C,10Dの放熱性能とを考慮して生成されて不揮発性メモリ部23に記憶され、その後の更新は実施されない。しかしながら、複数の温度ディレーティング情報については、車両側のシステムを通じて、更新可能としてもよい。この場合、車両側のシステムを通じて、MCU29に最新のプログラムをインストールすればよい。さらに、最新の複数の温度ディレーティング情報を不揮発性メモリ部23に記憶させる手順と、更新された複数の温度ディレーティング情報に基づいてコンバータ部21の出力電力を制御する手順とを、更新されたプログラムによりMCU29に実行させればよい。
【符号の説明】
【0077】
1 :車両用灯具
1A :車両用灯具
1B :車両用灯具
2 :灯室
10 :点灯部
10A :発光ユニット
10B :発光ユニット
10C :発光ユニット
10D :発光ユニット
11 :発光素子
21A :コンバータ
21B :コンバータ
21C :コンバータ
21D :コンバータ
22 :電力制御部(制御部)
23 :不揮発性メモリ部(記憶部)
29 :MCU(制御装置)
30 :温度検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11