(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182278
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 27/00 20060101AFI20231219BHJP
F04C 18/16 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
F04C27/00 331
F04C18/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095782
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】米田 広
(72)【発明者】
【氏名】関谷 禎夫
(72)【発明者】
【氏名】川村 浩伸
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AA17
3H129AB05
3H129BB42
3H129BB43
3H129CC20
(57)【要約】
【課題】圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐと共に、圧縮性能を高めることができるスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】スクリュー圧縮機は、雄ロータ1の歯部3との間で圧縮室を形成するケーシング2と、雄ロータ1の歯部3の軸方向一方側に連結された吸入側軸部4を回転可能に支持する吸入側軸受6と、雄ロータ1の歯部3の軸方向反対側に連結された吐出側軸部5を回転可能に支持する吐出側軸受7と、圧縮室と吸入側軸受6の間に位置するように吸入側軸部4の周囲に設けられた吸入側シール14A,14Bと、圧縮室と吐出側軸受7の間に位置するように吐出側軸部5の周囲に設けられた吐出側シール19A,19Bとを備える。スクリュー圧縮機は、吸入側シールが介在しないで圧縮室に隣接するように吸入側軸部4の周囲に形成された吸入側隙間15に対して開口し、吸入側隙間15に水を供給する吸入側給水孔16を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューロータと、前記スクリューロータを収納して前記スクリューロータの歯部との間で圧縮室を形成するケーシングと、前記スクリューロータの前記歯部の軸方向一方側に連結された吸入側軸部を回転可能に支持する吸入側軸受と、前記スクリューロータの前記歯部の軸方向反対側に連結された吐出側軸部を回転可能に支持する吐出側軸受と、前記圧縮室と前記吸入側軸受の間に位置するように前記吸入側軸部の周囲に設けられた複数の吸入側シールと、前記圧縮室と前記吐出側軸受の間に位置するように前記吐出側軸部の周囲に設けられた複数の吐出側シールとを備えたスクリュー圧縮機において、
前記吸入側シールが介在しないで前記圧縮室に隣接するように前記吸入側軸部の周囲に形成された吸入側隙間に対して開口し、前記吸入側隙間に水を供給する吸入側給水孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記複数の吸入側シールは、前記吸入側隙間に対して前記吸入側軸受よりに隣接する第1の吸入側シールと、前記第1の吸入側シールに対して前記吸入側軸受よりに離間する第2の吸入側シールとを含んでおり、
前記第1の吸入側シールと前記第2の吸入側シールの間に形成された第1の吸入側軸封室に対して開口し、前記吸入側隙間から前記第1の吸入側シールを介し前記第1の吸入側軸封室に漏れた水を排出する吸入側水抜き孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記複数の吸入側シールは、前記第2の吸入側シールに対して前記吸入側軸受よりに離間する第3の吸入側シールを含んでおり、
前記第2の吸入側シールと前記第3の吸入側シールの間に形成された第2の吸入側軸封室に対して開口し、前記吸入側軸受から前記第3の吸入側シールを介し前記第2の吸入側軸封室に漏れた潤滑油を排出する吸入側油抜き孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記吸入側水抜き孔は、前記第1の吸入側軸封室に対して上側に配置されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記吸入側水抜き孔から排出された水を前記吸入側給水孔に供給する給水ラインを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記圧縮室から吐出された圧縮蒸気とこれに含まれた水を分離する気液分離器と、
前記気液分離器で分離された水を前記吸入側給水孔に供給する給水ラインとを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項3に記載のスクリュー圧縮機において、
前記吸入側油抜き孔から排出された油を前記吸入側軸受に供給する給油ラインを有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記吐出側シールが介在しないで前記圧縮室に隣接するように前記吐出側軸部の周囲に形成された吐出側隙間に対して開口し、前記吐出側隙間に水を供給する吐出側給水孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項9】
請求項8に記載のスクリュー圧縮機において、
前記複数の吐出側シールは、前記吐出側隙間に対して前記吐出側軸受よりに隣接する第1の吐出側シールと、前記第1の吐出側シールに対して前記吐出側軸受よりに離間する第2の吐出側シールとを含んでおり、
前記第1の吐出側シールと前記第2の吐出側シールの間に形成された第1の吐出側軸封室に対して開口し、前記吐出側隙間から前記第1の吐出側シールを介し前記第1の吐出側軸封室に漏れた水を排出する吐出側水抜き孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項10】
請求項9に記載のスクリュー圧縮機において、
前記複数の吐出側シールは、前記第2の吐出側シールに対して前記吐出側軸受よりに離間する第3の吐出側シールを含んでおり、
前記第2の吐出側シールと前記第3の吐出側シールの間に形成された第2の吐出側軸封室に対して開口し、前記吐出側軸受から前記第3の吐出側シールを介し前記第2の吐出側軸封室に漏れた潤滑油を排出する吐出側油抜き孔を有することを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項11】
請求項9に記載のスクリュー圧縮機において、
前記吐出側水抜き孔は、前記第1の吐出側軸封室に対して上側に配置されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を圧縮するスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、蒸気を圧縮するスクリュー圧縮機を開示する。このスクリュー圧縮機は、スクリューロータと、スクリューロータを収納してスクリューロータの歯部との間で圧縮室を形成するケーシングと、スクリューロータの歯部の軸方向一方側に連結された吸入側軸部を回転可能に支持する吸入側軸受と、スクリューロータの歯部の軸方向反対側に連結された吐出側軸部を回転可能に支持する吐出側軸受と、圧縮室と吸入側軸受の間に位置するように吸入側軸部の周囲に設けられた複数の吸入側シールと、圧縮室と吐出側軸受の間に位置するように吐出側軸部の周囲に設けられた複数の吐出側シールとを備える。
【0003】
複数の吸入側シールの間には、空気などが存在し、ほぼ大気圧である。そのため、スクリュー圧縮機が大気圧より低圧である蒸気を吸入する場合に、吸入側シールを介し圧縮室に空気などが流入する恐れがある。
【0004】
上述した課題を解決するため、特許文献1のスクリュー圧縮機は、圧縮室に一番目に近い吸入側シールと二番目に近い吸入側シールとの間に形成された吸入側軸封室に対して開口し、大気圧より高圧である蒸気を吸入側軸封室に供給する供給孔を有する。これにより、蒸気が供給孔を介し吸入側軸封室に供給され、吸入側シールを介し圧縮室に流入する。そのため、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、上述した通り、蒸気が吸入側シールを介し圧縮室に流入する。また、吸入側シールの存在により、蒸気が圧縮室に流入するのを抑制する。しかし、蒸気に代えて、水が圧縮室に流入すれば、例えば圧縮室の冷却性、シール性、及び潤滑性が向上し、圧縮性能を高めることが可能である。この場合、水が圧縮室に流入するのを抑制しないほうが好ましい。
【0007】
本発明の目的は、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐと共に、圧縮性能を高めることができるスクリュー圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、スクリューロータと、前記スクリューロータを収納して前記スクリューロータの歯部との間で圧縮室を形成するケーシングと、前記スクリューロータの前記歯部の軸方向一方側に連結された吸入側軸部を回転可能に支持する吸入側軸受と、前記スクリューロータの前記歯部の軸方向反対側に連結された吐出側軸部を回転可能に支持する吐出側軸受と、前記圧縮室と前記吸入側軸受の間に位置するように前記吸入側軸部の周囲に設けられた複数の吸入側シールと、前記圧縮室と前記吐出側軸受の間に位置するように前記吐出側軸部の周囲に設けられた複数の吐出側シールとを備えたスクリュー圧縮機において、前記吸入側シールが介在しないで前記圧縮室に隣接するように前記吸入側軸部の周囲に形成された吸入側隙間に対して開口し、前記吸入側隙間に水を供給する吸入側給水孔を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐと共に、圧縮性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態におけるスクリュー圧縮機の断面構造及び関連部品を表す図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態におけるスクリュー圧縮機の断面構造及び関連部品を表す図である。
【
図3】本発明の第1の変形例におけるスクリュー圧縮機の断面構造及び関連部品を表す図である。
【
図4】本発明の第2の変形例におけるスクリュー圧縮機の断面構造及び関連部品を表す図である。
【
図5】本発明の第3の変形例におけるスクリュー圧縮機の断面構造及び関連部品を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の実施形態を、
図1を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態におけるスクリュー圧縮機の断面構造を関連機器と共に表す図である。
【0012】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、スクリューロータである雄ロータ1及び雌ロータ(図示せず)と、雄ロータ1及び雌ロータを収納するケーシング2とを備える。なお、本実施形態では、雄ロータ1及び雌ロータの軸方向(
図1の左右方向)は、水平方向である。
【0013】
雄ロータ1は、複数の螺旋状の歯を有する歯部3と、歯部3の軸方向一方側(
図1の左側)に連結された吸入側軸部4と、歯部3の軸方向反対側(
図1の右側)に連結された吐出側軸部5とを有する。雄ロータ1の吸入側軸部4は、吸入側軸受6で回転可能に支持され、雄ロータ1の吐出側軸部5は、吐出側軸受7で回転可能に支持されている。吸入側軸受6は、ケーシング2の吸入側軸受室8に配置され、吸入側軸受室8に溜められた油で潤滑される。吐出側軸受7は、ケーシング2の吐出側軸受室9に配置され、吐出側軸受室9に溜められた油で潤滑される。
【0014】
雌ロータは、雄ロータ1と同様、歯部、吸入側軸部、及び吐出側軸部を有する。雌ロータの歯部は、雄ロータの歯部と接触して若しくは非接触で噛み合うようになっている。雌ロータの吸入側軸部は、吸入側軸受(図示せず)で回転可能に支持され、雌ロータの吐出側軸部は、吐出側軸受(図示せず)で回転可能に支持されている。前述した吸入側軸受は、ケーシング2の吸入側軸受室(図示せず)に配置され、この吸入側軸受室に溜められた油で潤滑される。前述した吐出側軸受は、ケーシング2の吐出側軸受室(図示せず)に配置され、この吐出側軸受室に溜められた油で潤滑される。
【0015】
図示のように、電動機10と雄ロータ1の吸入側軸部4が直接連結されるか、またはギヤ若しくはベルト等を介し連結されることにより、電動機10の回転力が雄ロータ1に伝達される。これにより、雄ロータ1が回転する。図示しないものの、雄ロータ1の歯部3と雌ロータの歯部が接触して噛み合うか、若しくは、雄ロータ1の吐出側軸部5に設けられたギヤと雌ロータの吐出側軸部に設けられたギヤが噛み合うことにより、雄ロータ1の回転力が雌ロータに伝達される。これにより、雌ロータも回転する。
【0016】
雄ロータ1の歯部3とケーシング2の間で複数の雄ロータ側の圧縮室が形成され、雌ロータの歯部とケーシング2の間で複数の雌ロータ側の圧縮室が形成されている。各圧縮室は、雄ロータ1及び雌ロータの回転に伴い、軸方向の一方側(
図1の左側)から反対側(
図1の右側)に移動しつつ、容積が変化する。これにより、ケーシング2の吸入流路11から蒸気を吸入して圧縮し、ケーシング2の吐出流路12へ圧縮蒸気を吐出する。吐出流路12の下流側には気液分離器13が設けられている。
【0017】
ところで、本実施形態のスクリュー圧縮機は、大気圧より低圧である蒸気を吸入するものであり、後述の吸入側シールを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入する恐れがある。また、本実施形態のスクリュー圧縮機は、大気圧より低圧である圧縮蒸気を吐出する場合もあり、後述の吐出側シールを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入する恐れがある。前述した課題を解決するための本実施形態のスクリュー圧縮機の特徴として、雄ロータ1の吸入側軸部4及び吐出側軸部5の周囲の構造などを説明する。
【0018】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、雄ロータ側の圧縮室と吸入側軸受6の間に位置するように、雄ロータ1の吸入側軸部4の周囲に設けられた吸入側シール14A,14Bと、雄ロータ1の吸入側軸部4の周囲に形成され、吸入側シールが介在しないで雄ロータ側の圧縮室に隣接する吸入側隙間15と、ケーシング2に形成され、吸入側隙間15に対して開口する吸入側給水孔16と、吸入側シール14Aと吸入側シール14Bの間に形成された吸入側軸封室17と、ケーシング2に形成され、吸入側軸封室17に対して開口する吸入側水抜き孔18とを有する。
【0019】
吸入側シール14Aは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吸入側隙間15に対して吸入側軸受6より(
図1の左側)に隣接する。吸入側シール14Bは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吸入側シール14Aに対して吸入側軸受6よりに離間する。
【0020】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、雄ロータ側の圧縮室と吐出側軸受7の間に位置するように、雄ロータ1の吐出側軸部5の周囲に設けられた吐出側シール19A,19Bと、雄ロータ1の吐出側軸部5の周囲に形成され、吐出側シールが介在しないで雄ロータ側の圧縮室に隣接する吐出側隙間20と、ケーシング2に形成され、吐出側隙間20に対して開口する吐出側給水孔21と、吐出側シール19Aと吐出側シール19Bの間に形成された吐出側軸封室22と、ケーシング2に形成され、吐出側軸封室22に対して開口する吐出側水抜き孔23とを有する。
【0021】
吐出側シール19Aは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吐出側隙間20に対して吐出側軸受7より(
図1の右側)に隣接する。吐出側シール19Bは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吐出側シール19Aに対して吐出側軸受7よりに離間する。
【0022】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、ケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に接続された給水ライン24を備える。給水ライン24は、水ポンプ25の加圧によって、水源(図示せず)からの水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給する。
【0023】
吸入側給水孔16は、給水ライン24からの水を吸入側隙間15に供給する。これにより、吸入側隙間15に供給された水が雄ロータ側の圧縮室に流入する。また、吸入側隙間15に供給された水が吸入側シール14Aを介し吸入側軸封室17に漏れる。吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17に漏れた水を排出する。なお、本実施形態の吸入側水抜き孔18は、吸入側軸受6から吸入側シール14Bを介し吸入側軸封室17に漏れた潤滑油も排出する。
【0024】
本実施形態では、上述したように吸入側隙間15に供給された水が圧縮室に流入するので、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐことができる。また、圧縮室に水が流入することにより、例えば圧縮室の冷却性、シール性、及び潤滑性が向上し、圧縮性能を高めることができる。また、吸入側隙間15と圧縮室の間に吸入側シールが介在しないので、圧縮室に水が流入するのを抑制しない。この観点からも、圧縮性能を高めることができる。
【0025】
吐出側給水孔21は、給水ライン24からの水を吐出側隙間20に供給する。これにより、吐出側隙間20に供給された水が雄ロータ側の圧縮室に流入する。また、吐出側隙間20に供給された水が吐出側シール19Aを介し吐出側軸封室22に漏れる。吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22に漏れた水を排出する。なお、本実施形態の吐出側水抜き孔23は、吐出側軸受7から吐出側シール19Bを介し吐出側軸封室22に漏れた潤滑油も排出する。
【0026】
本実施形態では、上述したように吐出側隙間20に供給された水が圧縮室に流入するので、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐことができる。また、圧縮室に水が流入することにより、例えば圧縮室の冷却性、シール性、及び潤滑性が向上し、圧縮性能を高めることができる。また、吐出側隙間20と圧縮室の間に吐出側シールが介在しないので、圧縮室に水が流入するのを抑制しない。この観点からも、圧縮性能を高めることができる。
【0027】
雌ロータの吸入側軸部及び吐出側軸部の周囲の構造は、上述した雄ロータ1の吸入側軸部4及び吐出側軸部5の周囲の構造と同様である。そのため、説明を省略するが、同じ特徴により、同じ効果を得ることができる。
【0028】
なお、第1の実施形態において、
図1で示すように、吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17に対して下側に配置され、吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22に対して下側に配置された場合を例にとって説明したが、これに限られない。吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17に対して上側に配置され、吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22に対して上側に配置されてもよい(後述の
図3参照)。これにより、吸入側軸封室17を水で満たし、吸入側シール14Aを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入するのを抑制してもよい。また、吐出側軸封室22を水で満たし、吐出側シール19Aを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入するのを抑制してもよい。
【0029】
また、第1の実施形態において、給水ライン24は、水ポンプ25の加圧によって、水源からの水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給するように構成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。給水ライン24は、気液分離器13の圧力によって、気液分離器13で分離された水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給するように構成されてもよい(後述の
図4参照)。これにより、水の消費量の低減や動力の低減を図ってもよい。
【0030】
本発明の第2の実施形態を、
図2を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態におけるスクリュー圧縮機の断面構造を関連機器と共に表す図である。なお、本実施形態において、第1の実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0031】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、雄ロータ側の圧縮室と吸入側軸受6の間に位置するように、雄ロータ1の吸入側軸部4の周囲に設けられた吸入側シール14A,14B,14Cを有する。追加された吸入側シール14Cは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吸入側シール14Bに対して吸入側軸受6より(
図2の左側)に離間する。また、本実施形態のスクリュー圧縮機は、吸入側シール14Aと吸入側シール14Bの間に形成された吸入側軸封室17Aと、吸入側シール14Bと吸入側シール14Cの間に形成された吸入側軸封室17Bと、ケーシング2に形成され、吸入側軸封室17Bに対して開口する吸入側油抜き孔26とを有する。吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17Aに対して開口する。
【0032】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、雄ロータ側の圧縮室と吐出側軸受7の間に位置するように、雄ロータ1の吐出側軸部5の周囲に設けられた吐出側シール19A,19B,19Cを有する。追加された吐出側シール19Cは、例えばリップシール若しくはメカニカルシール等の環状シールであって、吐出側シール19Bに対して吐出側軸受7より(
図2の右側)に離間する。また、本実施形態のスクリュー圧縮機は、吐出側シール19Aと吐出側シール19Bの間に形成された吐出側軸封室22Aと、吐出側シール19Bと吐出側シール19Cの間に形成された吐出側軸封室22Bと、ケーシング2に形成され、吐出側軸封室22Bに対して開口する吐出側油抜き孔27とを有する。吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22Aに対して開口する。
【0033】
給水ライン24は、ケーシング2の吸入側水抜き孔18及び吐出側水抜き孔23から排出された水を貯留する水受け28を有し、水ポンプ25の加圧によって、水受け28で貯留された水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給する。
【0034】
吸入側給水孔16は、給水ライン24からの水を吸入側隙間15に供給する。これにより、吸入側隙間15に供給された水が雄ロータ側の圧縮室に流入する。また、吸入側隙間15に供給された水が吸入側シール14Aを介し吸入側軸封室17Aに漏れる。吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17Aに漏れた水を排出する。吸入側油抜き孔26は、吸入側軸受6から吸入側シール14Cを介し吸入側軸封室17Bに漏れた潤滑油を排出する。
【0035】
本実施形態では、第1の実施形態と同様、吸入側隙間15に供給された水が圧縮室に流入するので、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐことができる。また、圧縮室に水が流入することにより、例えば圧縮室の冷却性、シール性、及び潤滑性が向上し、圧縮性能を高めることができる。また、吸入側隙間15と圧縮室の間に吸入側シールが介在しないので、圧縮室に水が流入するのを抑制しない。この観点からも、圧縮性能を高めることができる。
【0036】
吐出側給水孔21は、給水ライン24からの水を吐出側隙間20に供給する。これにより、吐出側隙間20に供給された水が雄ロータ側の圧縮室に流入する。また、吐出側隙間20に供給された水が吐出側シール19Aを介し吐出側軸封室22Aに漏れる。吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22Aに漏れた水を排出する。吐出側油抜き孔27は、吐出側軸受7から吐出側シール19Cを介し吐出側軸封室22Bに漏れた潤滑油を排出する。
【0037】
本実施形態では、第1の実施形態と同様、吐出側隙間20に供給された水が圧縮室に流入するので、圧縮室内の蒸気に空気などが混入するのを防ぐことができる。また、圧縮室に水が流入することにより、例えば圧縮室の冷却性、シール性、及び潤滑性が向上し、圧縮性能を高めることができる。また、吐出側隙間20と圧縮室の間に吐出側シールが介在しないので、圧縮室に水が流入するのを抑制しない。この観点からも、圧縮性能を高めることができる。
【0038】
雌ロータの吸入側軸部及び吐出側軸部の周囲の構造は、上述した雄ロータ1の吸入側軸部4及び吐出側軸部5の周囲の構造と同様である。そのため、説明を省略するが、同じ特徴により、同じ効果を得ることができる。
【0039】
なお、第2の実施形態において、
図2で示すように、吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17Aに対して下側に配置され、吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22Aに対して下側に配置された場合を例にとって説明したが、これに限られない。
図3で示す変形例のように、吸入側水抜き孔18は、吸入側軸封室17Aに対して上側に配置され、吐出側水抜き孔23は、吐出側軸封室22Aに対して上側に配置されてもよい。これにより、吸入側軸封室17Aを水で満たし、吸入側シール14Aを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入するのを抑制してもよい。また、吐出側軸封室22Aを水で満たし、吐出側シール19Aを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入するのを抑制してもよい。
【0040】
また、第1の実施形態において、給水ライン24は、水ポンプ25の加圧によって、ケーシング2の吸入側水抜き孔18及び吐出側水抜き孔23から排出された水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給するように構成された場合を例にとって説明したが、これに限られない。
図4で示す変形例のように、給水ライン24は、気液分離器13の圧力によって、気液分離器13で分離された水をケーシング2の吸入側給水孔16及び吐出側給水孔21に供給するように構成されてもよい。これにより、水の消費量の低減や動力の低減を図ってもよい。
【0041】
また、第2の実施形態において、特に説明しなかったが、
図5で示す変形例のように、スクリュー圧縮機は、ケーシング2の吸入側油抜き孔26及び吐出側油抜き孔27から排出された油を吸入側軸受6及び吐出側軸受7に供給する給油ライン29を備えてもよい。給油ライン29は、ケーシング2の吸入側油抜き孔26及び吐出側油抜き孔27から排出された油を貯留する油受け30を有し、油ポンプ31の加圧によって、油受け30で貯留された油をケーシング2の吸入側軸受室8及び吐出側軸受室9に供給する。これにより、油の消費量の低減を図ってもよい。
【0042】
また、第1及び第2の実施形態並びに変形例のスクリュー圧縮機は、大気圧より低圧である圧縮蒸気を吐出する場合もあり、吐出側シールを介し圧縮室に空気若しくは油などが流入する恐れがあるという課題を解決するため、吐出側給水孔21及び吐出側水抜き孔23を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。スクリュー圧縮機が大気圧より高圧である圧縮蒸気を吐出するものであれば、吐出側給水孔21及び吐出側水抜き孔23を有しなくてもよい。
【0043】
なお、以上において、2つのスクリューロータを備えたスクリュー圧縮機に本発明を適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。1つ又は3つ以上のスクリューロータを備えたスクリュー圧縮機に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 雄ロータ(スクリューロータ)
2 ケーシング
3 歯部
4 吸入側軸部
5 吐出側軸部
6 吸入側軸受
7 吐出側軸受
13 気液分離器
14A,14B,14C 吸入側シール
15 吸入側隙間
16 吸入側給水孔
17,17A,17B 吸入側軸封室
18 吸入側水抜き孔
19A,19B,19C 吐出側シール
20 吐出側隙間
21 吐出側給水孔
22,22A,22B 吐出側軸封室
23 吐出側水抜き孔
24 給水ライン
26 吸入側油抜き孔
27 吐出側油抜き孔
29 給油ライン