(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182290
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】流体フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 27/08 20060101AFI20231219BHJP
B01D 46/24 20060101ALI20231219BHJP
F02M 37/42 20190101ALI20231219BHJP
【FI】
B01D27/08
B01D46/24 B
F02M37/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095813
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000252252
【氏名又は名称】和興フィルタテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 芳穂
【テーマコード(参考)】
4D058
4D116
【Fターム(参考)】
4D058JA02
4D058KC22
4D058KC34
4D058KC37
4D116AA08
4D116BB01
4D116BC23
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC46
4D116BC47
4D116BC77
4D116DD05
4D116KK04
4D116QA14C
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA14F
4D116QA16C
4D116QA16E
4D116QA16F
4D116QB03
4D116QB14
4D116QB17
4D116QB18
4D116QB22
4D116QB25
4D116QB43
4D116QB49
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116VV02
4D116VV03
4D116VV04
4D116VV07
(57)【要約】
【課題】フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる流体フィルタを提供する。
【解決手段】流体の流入口および流出口を有するフィルタヘッドと、上端部が開口した内部空間を有する有底の筒状に形成され、上端部をフィルタヘッドに結合させて着脱自在に取り付けられるフィルタケース20と、フィルタケース20の内部空間内に着脱自在に収納され、流体を通過させて濾過を行う中空円筒状のフィルタエレメント30と、を備え、フィルタエレメント30をフィルタケース20の内部空間に収納した状態で、フィルタエレメント30をフィルタケース20に係脱可能に係止保持する係合凸部333を備え、フィルタエレメント30をフィルタケース20内に収納して係合凸部333により係止保持した状態で、フィルタケース20をフィルタヘッドに取り付けるように構成している。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入口および流出口を有するフィルタヘッドと、
上端部が開口した内部空間を有する有底の筒状に形成され、前記上端部を前記フィルタヘッドに結合させて着脱自在に取り付けられるフィルタケースと、
前記フィルタケースの前記内部空間内に着脱自在に収納され、流体を通過させて濾過を行う中空円筒状のフィルタエレメントと、を備え、
前記フィルタエレメントを前記フィルタケースの内部空間に収納した状態で、前記フィルタエレメントを前記フィルタケースに係脱可能に係止保持する係止手段を備え、
前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に収納して前記係止手段により係止保持した状態で、前記フィルタケースを前記フィルタヘッドに取り付けるように構成されたことを特徴とする流体フィルタ。
【請求項2】
前記係止手段が、
前記フィルタケースの内部の上部に形成された係合凹部と、
前記フィルタエレメントの上部に取り付けられ、前記係合凹部と係合する係合凸部が先端に形成された可撓性を有する固定部材とから構成され、
前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に収納し、前記固定部材の先端を外方に撓ませて前記係合凹部に前記係合凸部を係合させて前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持し、前記固定部材の先端を内方に撓ませて前記係合凸部と前記係合凹部との係合を解除することを特徴とする請求項1に記載の流体フィルタ。
【請求項3】
前記フィルタエレメントは、中空円柱形の濾材と、前記濾材の外周を覆う流体通過可能な円筒形のプロテクタと、前記濾材の下端に固定されたロアプレートと、前記濾材の上端に固定されたアッパープレートとを備え、
前記アッパープレートに前記濾材の中空部内の流体を通過させる流体通過孔が形成され、前記固定部材が設けられており、
前記フィルタヘッドは、前記流入口もしくは前記流出口に連通する嵌合口を備え、
前記フィルタエレメントを収納して前記係止手段により係止保持した前記フィルタケースを前記フィルタヘッドに取り付けたときに、前記流体連通孔が前記嵌合口と嵌合し、前記流入口もしくは前記流出口と前記濾材の中空部とを連通させることを特徴とする請求項1に記載の流体フィルタ。
【請求項4】
前記フィルタケースの前記内部空間内に底面から上方に延びて設けられ、前記内部空間内に収納される前記フィルタエレメントの中空部に挿入され、前記フィルタエレメントを支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記フィルタケースの底面に固定されて上方に延びる中空円筒状の内側支持部材と、前記内側支持部材を上下相対移動可能に嵌入させて前記内側支持部材に取り付けられる中空円筒状の外側支持部材と、前記内側支持部材に対して前記外側支持部材を上方に付勢する付勢手段と、を備えて構成され、
前記外側支持部材が前記フィルタエレメントの中空部に嵌入して、前記支持部材により前記フィルタエレメントを上下移動可能に支持するように構成されており、
前記外側支持部材を前記フィルタエレメントの中空部に嵌入させて前記フィルタエレメントを前記フィルタケースの内部空間に収納し、前記フィルタエレメントを前記付勢部材の付勢に抗して下方に移動させた状態で、前記係止手段により前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の流体フィルタ。
【請求項5】
前記係止手段により前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持した状態から前記係止手段による係止保持を解放することにより、前記付勢部材により前記内側
支持部材に対して前記外側支持部材を上方に移動させ、前記外側支持部材が嵌入した前記フィルタエレメントを上方に移動させてその上端部を前記フィルタケースの上端開口より上方に突出させるように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の流体フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油等の流体を濾過する流体フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、広範囲の産業分野において水、燃料、オイル、空気等の流体を濾過する流体フィルタが用いられている。この種の流体フィルタには、内部に円筒状のフィルタエレメントを収容するフィルタケースをフィルタヘッドの開口部に取り付け、フィルタヘッドの流入路から流入した燃料をフィルタエレメントの外側から内側へ通過させることによって濾過し、濾過した燃料をフィルタエレメントの内側からフィルタヘッドの流出路へ流出させるものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した流体フィルタにおけるフィルタエレメントの交換は、まずフィルタヘッドからフィルタケースおよびフィルタエレメントを取り外し、次いでフィルタケース内の古いフィルタエレメントを取り出し、新たなフィルタエレメントをフィルタケース内にセットしてから(または、新たなフィルタエレメントをフィルタヘッドの流出路に取り付けてから)、フィルタケースをフィルタヘッドに取り付ける。
【0005】
ここで、例えば特許文献1に記載されたフィルタのように、フィルタケースの上側にフィルタヘッドが位置する向きでフィルタが配置されている場合、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外す際にフィルタエレメントがフィルタケースに収容された状態で(すなわちフィルタケースとフィルタエレメントが一緒に)取り外されることがある。この場合のフィルタエレメントの交換作業は、まず、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外し、次いでフィルタケース内のフィルタエレメントを新しいフィルタエレメントに入れ換えて、その後、新しいフィルタエレメントを収容したフィルタケースをフィルタヘッドに取り付けるという手順になる。
【0006】
これに対して、例えば特許文献1に記載されたフィルタとは逆に、フィルタケースの下側にフィルタヘッドが位置する向き(換言すると、フィルタヘッドの上側にフィルタケースが位置する向き)でフィルタが配置されている場合、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外したときに、フィルタケースだけが取り外され、フィルタエレメントはフィルタヘッドに取り付けられたままの状態になることがある。この場合のフィルタエレメントの交換作業は、まず、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外し、次いでフィルタヘッドに取り付けられているフィルタフィルタエレメントを新しいフィルタエレメントに付け換えて、その後、フィルタケースをフィルタヘッドに取り付けるという手順になる。
【0007】
このように、従来はフィルタが配置された向きによってフィルタエレメントの交換手順が異なる場合があるため、フィルタエレメントの交換作業が複雑になる虞があった。また、フィルタエレメントの交換作業において、例えば、まずフィルタヘッドからフィルターケースを取り外し、次いでフィルタヘッドの流出路からフィルタエレメントを取り外す場合、フィルタエレメントを取り外す際に、濾過の対象となる流体によって作業者の手が滑ってしまい、フィルタヘッドからフィルタエレメントを取り外すのが困難になる虞があっ
た。さらに、フィルタヘッドからフィルタエレメントを取り外す際に、例えばフィルタエレメントから滴下する流体を先に取り外したフィルタケースで受けつつフィルタヘッドからフィルタエレメントを取り外す場合、作業者は片手でフィルタエレメントを取り外すことになるため、フィルタエレメントの交換作業の作業がし難くなる虞があった。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる流体フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明に係る流体フィルタは、流体の流入口および流出口を有するフィルタヘッドと、上端部が開口した内部空間を有する有底の筒状に形成され、前記上端部を前記フィルタヘッドに結合させて着脱自在に取り付けられるフィルタケースと、前記フィルタケースの前記内部空間内に着脱自在に収納され、流体を通過させて濾過を行う中空円筒状のフィルタエレメントと、を備え、前記フィルタエレメントを前記フィルタケースの内部空間に収納した状態で、前記フィルタエレメントを前記フィルタケースに係脱可能に係止保持する係止手段を備え、前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に収納して前記係止手段により係止保持した状態で、前記フィルタケースを前記フィルタヘッドに取り付けるように構成されている。
【0010】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記係止手段が、前記フィルタケースの内部の上部に形成された係合凹部と、前記フィルタエレメントの上部に取り付けられ、前記係合凹部と係合する係合凸部が先端に形成された可撓性を有する固定部材とから構成され、前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に収納し、前記固定部材の先端を外方に撓ませて前記係合凹部に前記係合凸部を係合させて前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持し、前記固定部材の先端を内方に撓ませて前記係合凸部と前記係合凹部との係合を解除するように構成することが好ましい。
【0011】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記フィルタエレメントは、中空円柱形の濾材と、前記濾材の外周を覆う流体通過可能な円筒形のプロテクタと、前記濾材の下端に固定されたロアプレートと、前記濾材の上端に固定されたアッパープレートとを備え、前記アッパープレートに前記濾材の中空部内の流体を通過させる流体通過孔が形成され、前記固定部材が設けられており、前記フィルタヘッドは、前記流入口もしくは前記流出口に連通する嵌合口を備え、前記フィルタエレメントを収納して前記係止手段により係止保持した前記フィルタケースを前記フィルタヘッドに取り付けたときに、前記流体連通孔が前記嵌合口と嵌合し、前記流入口もしくは前記流出口と前記濾材の中空部とを連通させるように構成することが好ましい。
【0012】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記フィルタケースの前記内部空間内に底面から上方に延びて設けられ、前記内部空間内に収納される前記フィルタエレメントの中空部に挿入され、前記フィルタエレメントを支持する支持部材を備え、前記支持部材は、前記フィルタケースの底面に固定されて上方に延びる中空円筒状の内側支持部材と、前記内側支持部材を上下相対移動可能に嵌入させて前記内側支持部材に取り付けられる中空円筒状の外側支持部材と、前記内側支持部材に対して前記外側支持部材を上方に付勢する付勢手段と、を備えて構成され、前記外側支持部材が前記フィルタエレメントの中空部に嵌入して、前記支持部材により前記フィルタエレメントを上下移動可能に支持するように構成されており、前記外側支持部材を前記フィルタエレメントの中空部に嵌入させて前記フィルタエレメントを前記フィルタケースの内部空間に収納し、前記フィルタエレメントを前記付勢部材の付勢に抗して下方に移動させた状態で、前記係止手段により前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持するように構成することが好ましい。
【0013】
また、上記構成の流体フィルタにおいて、前記係止手段により前記フィルタエレメントを前記フィルタケース内に係止保持した状態から前記係止手段による係止保持を解放することにより、前記付勢部材により前記内側支持部材に対して前記外側支持部材を上方に移動させ、前記外側支持部材が嵌入した前記フィルタエレメントを上方に移動させてその上端部を前記フィルタケースの上端開口より上方に突出させるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る流体フィルタによれば、流体の流入口および流出口を有するフィルタヘッドと、上端部をフィルタヘッドに結合させて着脱自在に取り付けられるフィルタケースと、フィルタケースの内部空間内に着脱自在に収納され、流体を通過させて濾過を行う中空円筒状のフィルタエレメントと、を備え、係止手段によりフィルタエレメントをフィルタケース内に収納して係止保持した状態で、フィルタケースをフィルタヘッドに取り付けるように構成されているので、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外すときに、フィルタエレメントが係止手段によってフィルタケース内に係止保持された状態で、フィルタケースとフィルタエレメントが一緒にフィルタヘッドから取り外される。これにより、フィルタヘッドからフィルタケースを取り外す際に、常にフィルタエレメントがフィルタケース内に収容された状態になり、流体フィルタが配置されている向きによってフィルタエレメントの交換手順が変化することがないので、フィルタエレメントの交換作業が複雑になるのを防ぐことができる。また、フィルタヘッドからフィルタケースとフィルタエレメントを個別に取り外す必要がないため、フィルタエレメントの交換作業を容易に行うことができる。
【0015】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、フィルタエレメントをフィルタケース内に収納して、フィルタエレメントの上部に取り付けられた固定部材の先端を外方に撓ませると、固定部材の先端に形成された係合凸部がフィルタケース内の上部に形成された係合凹部に係合してフィルタエレメントがフィルタケース内に係止保持され、固定部材の先端を内方に撓ませると係合凸部と係合凹部との係合が解除されるように構成する。このように構成することで、固定部材を撓ませる方向に応じてフィルタケースに対するフィルタエレメントの係脱を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、フィルタエレメントを構成する濾材の上端に固定されたアッパープレートに、濾材の中空部内の流体を通過させる流体通過孔を形成するとともに上記の固定部材を設け、フィルタヘッドは流入口もしくは流出口に連通する嵌合口を備え、フィルタエレメントを収納して上記係止手段により係止保持したフィルタケースをフィルタヘッドに取り付けたときに、アッパープレートに形成された流体連通孔がフィルタヘッドに設けられた嵌合口と嵌合して、流入口もしくは流出口と濾材の中空部とを連通するように構成する。このように構成することで、フィルタエレメントをフィルタヘッドに取り付けることによって、アッパープレートに形成された流体連通孔をフィルタヘッドに設けられた嵌合口に嵌合させることができる。
【0017】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、フィルタエレメントの中空部に挿入されてフィルタエレメントを支持する支持部材を、中空円筒状の内側支持部材と、内側支持部材を上下相対移動可能に嵌入させて内側支持部材に取り付けられる中空円筒状の外側支持部材と、内側支持部材に対して外側支持部材を上方に付勢する付勢手段と、を備えて構成し、外側支持部材をフィルタエレメントの中空部に嵌入させてフィルタエレメントをフィルタケースの内部空間に収納し、フィルタエレメントを付勢部材の付勢に抗して下方に移動させた状態で、係止手段によりフィルタエレメントをフィルタケース内に係止保持するように構成する。このように構成することで、係止手段によるフィルタエレメントのフィルタケース内の係止保持を解除したときに、付勢手段の付勢によってフィルタ
エレメントをフィルタケース内から突出させることができるため、フィルタケース内からフィルタエレメントを取り出し易くすることができる。
【0018】
また、上記の構成の流体フィルタにおいて、好ましくは、フィルタエレメントがフィルタケース内に係止保持されている状態を解放すると、外側支持部材が付勢部材によって内側支持部材に対してを上方に移動し、外側支持部材に嵌入したフィルタエレメントを上方に移動させることでその上端部がフィルタケースの上端開口よりも上方に突出するように構成する。このように構成することで、フィルタエレメントを交換する際に、フィルタエレメントの上端部をつかみ易くなり、交換作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る流体フィルタの外観を示す斜視図である。
【
図2】上記流体フィルタの上下方向における断面を示す断面図である。
【
図3】上記流体フィルタの主な構成を示す分解斜視図である。
【
図4】上記流体フィルタのフィルタエレメントを構成する部材の外観を示す斜視図であり、
図4(a)はアッパープレートの外観を示す斜視図、
図4(b)はロアプレートの外観を示す斜視図である。
【
図5】上記流体フィルタの支持部材の構成を示す斜視図であり、
図5(a)は外側支持部材の外観を示す斜視図、
図5(b)は内側支持部材の外観を示す斜視図である。
【
図6】上記流体フィルタの支持部材をフィルタケース内に取り付ける際の各部の状態を示す断面図である。
【
図7】上記流体フィルタのフィルタヘッドから取り外したフィルタケースの開口部を上方から見下ろしたときの様子を示す斜視図である。
【
図8】上記フィルタケース内にフィルタエレメントを取り付ける際の各部の動きを示す断面図である。
【
図9】上記フィルタケース内にフィルタエレメントを取り付ける際に、フィルタケース内のリテーナに対する、フィルタエレメントのロアプレートの動きを示す斜視図である。
【
図10】上記フィルタエレメントを収容したフィルタケースをフィルタヘッドに取り付ける際の各部の動きを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
図1は本実施形態の流体フィルタ1の外観を示す斜視図である。
図2は
図1に示したA-A’線の位置における縦断面図である。
図3は流体フィルタ1の主な構成を示す分解斜視図である。なお、本実施形態の流体フィルタ1の上下方向について言及する場合は、
図1に示す矢印の向きに従う。
【0021】
図1に示す流体フィルタ1は、フィルタヘッド10に形成された流入口101から流入した作動油をフィルタケース20内に収容されているフィルタエレメント30(
図2および
図3参照)によって濾過し、フィルタヘッド10に形成された流出口102から流出させる。
図2に示すように、フィルタヘッド10の流入口101の内部にはリリーフバルブ11が設けられており、流入口101から流入した作動油の圧力が流出口102から流出される作動油の圧力に対して所定値を超えて大きくなると、リリーフバルブ11が開放して流入口101から流入した作動油をそのまま流出口102へ流出させる。
【0022】
図2に示すように、フィルタヘッド10の下方には、フィルタケース20の上端部が取り付けられるように開口部が形成されており、この開口部の内周面に、フィルタケース20の上部外周に形成された雄ネジ201(
図3も参照)と螺合するヘッド側雌ネジ103(より詳しくは
図10(a)参照)が形成されている。また、フィルタヘッド10の開口
部の中心位置には、フィルタエレメント30のアッパープレート33の中央に形成されている流体連通口337(
図3も参照)が嵌合する嵌合口104が設けられている。この嵌合口104はフィルタヘッド10の流出口102に連通している。
【0023】
フィルタケース20の形状は、上端部が開口した内部空間を有する有底の筒状になっており(
図3参照)、フィルタケース20の内側底部の中央には、内側支持部材42の先端部が取り付けられる取付穴203が形成されている。この取付穴203の内周面にはケース側雌ネジ204が形成されており(より詳しくは
図7(a)参照)、ケース側雌ネジ204は内側支持部材42の先端部に形成された支持部材側雄ネジ421(
図3参照)と螺合する。また、支持部材側雄ネジ421とケース側雌ネジ204とが螺合することで、内側支持部材42とフィルタケース20の内側底部との間にリテーナ21および圧縮コイルバネ22が固定される。リテーナ21の内周面には、
図3に示すように、各々がフィルタケース20の軸方向に延びる線条凸形状を有する2つの係合凸部211が対向する位置に形成されている。これら係合凸部211は、後述するロアプレート34に形成された係合溝部344と係合する(詳しくは後述する)。
【0024】
図2に示すように、フィルタエレメント30は、濾材31と、濾材31を収容するプロテクタ32と、濾材31およびプロテクタ32の上端部に固定されたアッパープレート33と、濾材31およびプロテクタ32の下端部に固定されたロアプレート34によって構成されている。濾材31は、蛇腹状に折り畳んだ濾材の両側端部を接合することで、断面が菊花状となる略中空円柱状になるように形成されている。プロテクタ32は、円筒形状を有し、その内部に濾材31を収容している。また、
図3に示すようにプロテクタ32の表面には多数の小孔321が設けられており、これら小孔321を通過した作動油は、濾材31によって濾過される。濾材31およびプロテクタ32の上端面はアッパープレート33に固定され、濾材31およびプロテクタ32の下端面はロアプレート34に固定される。濾材31およびプロテクタ32と、アッパープレート33およびロアプレート34との固定は、接着剤を用いた接着の他、従来の方法により固定することができる。
【0025】
図4にアッパープレート33およびロアプレート34の外観形状を示す。
図4において(a)はアッパープレート33を斜め下方から見上げたときの外観形状を示す斜視図(換言すると、アッパープレート33の裏面側の斜視図)であり、(b)はロアプレート34を斜め下方から見上げたときの外観形状を示す斜視図である。
図4(a)に示すように、アッパープレート33の裏面には、その外周縁に下方へ向かって延びる周縁部331が形成されている。この周縁部331において、対向する2ヵ所から可撓性を有する固定部材332が斜め上方に向かって延出しており、その先端には係合凸部333が形成されている。この係合凸部333は、フィルタケース20の内側上部に形成された係合凹部202(
図3参照)に係合する。さらに係合凸部333には固定部材332を撓ませるレバー部材334が形成されており、
図2に示すように係合凸部333が係合凹部202に係合している状態で、たとえば後に参照する
図8(c)の矢印で示すように、レバー部材334の先端を内側に撓ませると、固定部材332が撓んで係合凸部333と係合凹部202との係合を解除することができる。
【0026】
図4(a)に戻り、アッパープレート33の裏面中央部からは内筒部335が下方に向かって突出形成されている。この内筒部335の内周面には、後述する外側支持部材41の上端部に形成された係合突起412と係合する2つの係合溝336が対向する位置に形成されている。また、
図2、
図3および
図6に示すように、アッパープレート33の上面中央部には、濾材31によって濾過された作動油をフィルタヘッド10へ流出させるための流体連通口337が上方に向かって突出成形されている。なお、
図4(a)に示すようにアッパープレート33の裏面側において、内筒部335の外側から前述した周縁部331の内側までの平面は、濾材31およびプロテクタ32が固定される固定面338となる
。
【0027】
図4(b)に示すように、ロアプレート34の中央部には外側支持部材41が挿通される支持部材挿通口341が設けられている。この支持部材挿通口341の下側周縁部には、外側支持部材41の下部に形成されたフランジ部411(
図5(b)参照)の上面と当接するフランジ当接面342が形成されている。ロアプレート34の下方外周面には、係合溝部344およびガイド部345からなる係合凹部343が、ロアプレート34の周方向において等間隔に6つ設けられている。係合溝部344は、ロアプレート34の上面から下方に延びる長辺垂直面346と、ロアプレート34の上面から下方に延びる長辺垂直面346よりも短い短辺垂直面347とに挟まれて形成されている。そして、長辺垂直面346の下端から、
図4(b)において右隣りの係合溝部344を形成する短辺垂直面347の下端に至る傾斜面が、ガイド部345になっている。見方を変えれば、短辺垂直面347の下端から、
図4(b)において左隣りの係合溝部344を形成する長辺垂直面346の下端に至る傾斜面が、ガイド部345になっているともいえる。
【0028】
支持部材40は、
図2に示すように上述したフィルタエレメント30の濾材31の中空部に挿入され、濾材31の外側に付与される作動油の圧力に対して濾材31の内側から濾材31を支持する。支持部材40は、
図5に示す外側支持部材41および内側支持部材42によって構成されている。
図5は、外側支持部材41および内側支持部材42の外観形状を示す斜視図であり、(a)は外側支持部材41の斜視図、(b)は内側支持部材42の斜視図である。
【0029】
図5(a)に示すように、外側支持部材41は円筒形状を有しており、その上端面には上方へ延びる2本の係合突起412が対向する位置に形成されている。外側支持部材41の下部外周面には、
図4(b)に示したフランジ当接面342と当接するフランジ411が形成されており、このフランジ411によってフィルタエレメント30の下端部が支持される。外側支持部材41の内周面下部には、内側支持部材当接面413(
図5(a)においてハッチングで示される個所)が形成されている。内側支持部材42の外側支持部材当接面422(
図5(b)参照)と当接する。この内側支持部材当接面413には、上方へ延びる線条の係合凸部414が対向する位置に形成されている。また、外側支持部材41の表面(中空円筒壁)には周方向に延びる長円形の外側連通孔415が複数設けられている。
【0030】
次に、内側支持部材42は、
図5(b)に示すように円筒形状を有しており、その外径寸法は、外側支持部材41の内径寸法よりも小さくなっている。これにより、外側支持部材41の内部に内側支持部材42を挿入することが可能となる。内側支持部材42の下方先端部には支持部材側雄ネジ421が形成されている。支持部材側雄ネジ421は、フィルタケース20の底部に設けられた取付穴203の内周面に形成されているケース側雌ネジ204(
図6(a)参照)と螺合するようになっている。内側支持部材42の表面(中空円筒壁)下部には
図5(a)に示した内側支持部材当接面413に当接する外側支持部材当接面422が形成されている。この外側支持部材当接面422には、
図5(a)に示した係合凸部414と係合する係合凹部423が設けられている。また、内側支持部材42の表面には、周方向に延びる長円形の内側連通孔424が、
図5(a)に示した外側連通孔415に対応する位置に複数設けられている。
【0031】
上述した外側支持部材41および内側支持部材42をフィルタケース20に取り付けるときは、まず外側支持部材41の上部開口から内側支持部材42の下方先端部を挿入する。そして、内側支持部材42の係合凹部423の位置を外側支持部材41の係合凸部414の位置に合わせて、内側支持部材当接面413に外側支持部材当接面422を当接させる。これにより、係合凸部414と係合凹部423とが係合し、係合している状態では、
外側支持部材41は内側支持部材42に対して下方へ移動可能であり、内側支持部材42は外側支持部材41に対して上方へ移動可能であるが、外側支持部材41および内側支持部材42の周方向への回転は規制される。したがって、外側連通孔415と内側連通孔424の周方向における位置がずれるのを防ぐことができる。
【0032】
支持部材40をフィルタケース20内に組み付ける場合は、フィルタケース20の底面にリテーナ21および圧縮コイルバネ22を載置した状態で、フィルタケース20の底部に設けられた取付穴203に形成されたケース側雌ネジ204に内側支持部材42の先端部に形成された支持部材側雄ネジ201を螺合させる。この螺合が進むにつれて、外側支持部材42の下部に形成されたフランジ部411により圧縮コイルバネ22が圧縮されていき、リテーナ21および圧縮コイルバネ22はフィルタケース20の底面に固定されていく。このとき、外側支持部材41の内側支持部材当接面413(
図5(a)参照)と、内側支持部材42の外側支持部材当接面422(
図5(b)参照)とは当接しており、この状態での外側連通孔415の位置と内側連通孔424の位置とは完全にずれている。したがって、支外側持部材41の外側と内側支持部材42の内側とが遮断された状態になっている。
【0033】
そして、
図6(b)に示すように、支持部材側雄ネジ421を完全に螺合させると、内側支持部材42によってリテーナ21がフィルタケース20の底面に固定される。このとき、内側支持部材当接面413と、外側支持部材当接面422とは依然として当接しているため、外側支持部材41の外側と内側支持部材42の内側とが遮断された状態になっている。また、圧縮コイルバネ22はさらに縮む余地を残しているため、外側支持部材41はさらに下方へ移動することができる状態になっている。
【0034】
次に上述した構成の流体フィルタ1によって濾過される作動油の流れについて、
図2および
図7を参照して説明する。ここで、
図7はフィルタヘッド10からフィルタケース20を取り外し、フィルタケース20の開口部を上方から臨んだ様子を示す斜視図である。
図2の矢印で示すように、フィルタヘッド10の流入口101から流入した作動油はアッパープレート33の上面に達する。ここで
図7に示すように、フィルタケース20の開口とアッパープレート33との間には隙間Gが設けられており、アッパープレート33の上面に達した作動油は、この隙間Gへ流入する。隙間Gへ流入した作動油はプロテクタ32の小孔321(
図3参照)を通過して、
図2に示すように濾材31によって濾過された後、外側支持部材41の外側連通孔415および内側支持部材42の内側連通孔424を通って内側支持部材42の内側に流入する。そして作動油は内側支持部材42の内側からアッパープレート33の流体連通孔338を経て、フィルタヘッド10内に流入し、流出口102から外部へ流出する。
【0035】
次に
図8~
図10を参照して、フィルタケース20内のフィルタエレメント30を交換するときの各部の動きについて説明する。
図8は、フィルタケース20からフィルタエレメント30を取り外して新たなフィルタエレメント30をフィルタケース20に取り付けるまでの過程を示した断面図である。
図9は、フィルタエレメント30をフィルタケース20に取り付ける際に、ロアプレート32の係合溝部344がリテーナ21の係合凸部211に係合するまでの過程を示す斜視図である。
図10は、フィルタエレメント30が取り付けられたフィルタケース20をフィルタヘッド10に取り付けるまでの過程を示した断面図である。
【0036】
まず、
図8(a)に示すように、フィルタケース20からフィルタエレメント30を取り外す、または、フィルタエレメント30をフィルタケース20内に挿入する場合、
図6(b)に示した状態と同様、内側支持部材当接面413と外側支持部材当接面422とが当接しているため、外側支持部材41の外側と内側支持部材42の内側との間が遮断され
た状態になっている。したがって、例えばフィルタケース20内に作動油が残っていたとしても、濾過される前の作動油と濾過された後の作動油とが混ざることがないため、フィルタエレメント30を交換した後の流体フィルタ1から清浄度が低下した作動油を外部へ流出させてしまう虞が少ない。
【0037】
なお、本実施形態では、
図8(b)に示すように、アッパープレート33の係合凸部333がフィルタケース20の係合凹部202に係合していない状態では外側連通孔415と内側連通孔424との位置が完全に不一致となり、外側支持部材41の外側と内側支持部材42の内側との間が遮断されているが、フィルタケース20からフィルタエレメント30を取り出したときに、外側連通孔415と内側連通孔424との位置がずれた状態(外側支持部材41の外側から内側支持部材42の内側へ連通する穴の面積が減少した状態)であれば、清浄度の低下した作動油が内側支持部材42の内側へ流入する量が低減することが期待できる。
【0038】
次に、新たなフィルタエレメント30をフィルタケース20内に挿入させて行き、外側支持部材41の上端部に形成された係合突起412が、
図4(a)に示したアッパープレート33の係合溝336に入るように、フィルタエレメント30を周方向に回転させる。係合突起412が係合溝336に入り、さらにフィルタエレメント30をフィルタケース20内に挿入させると、
図8(b)に示すように、やがてロアプレート34のガイド部345(
図4(b)参照)が、リテーナ21の係合凸部211に当接することになる。このとき、
図4(b)に示したロアプレート34の係合溝部344がリテーナ21の係合凸部211と係合しなかった場合は、
図7に示すアッパープレート33を時計回りに回転させる。すると外側支持部材41の係合突起412が
図4(b)に示す係合溝336の段差面stに当たり、これによりアッパープレート33の回転に伴って、濾材31、プロテクタ32およびロアプレート34も回転することとなる。
【0039】
これにより、アッパープレート33を時計回りに回転させると、
図9(a)に示すようにロアプレート34も時計回りに回転し、ガイド部345がリテーナ21の係合凸部211に当接しつつ時計回りに移動していくことで、
図9(b)に示すようにガイド部345の傾斜に合わせてフィルタエレメント30が少しずつ下方へ下がっていくとともに、係合溝部344が係合凸部211に接近していく。そして、
図9(c)に示すように最終的にロアプレート34の長辺垂直面346がリテーナ21の係合凸部211に突き当たることで、ロアプレート34のさらなる回転が規制されるとともに、係合溝部344が係合凸部211の位置まで導かれたことになる。これにより、ロアプレート34(ひいてはフィルタエレメント30)が係合凸部211に沿って下方向へ移動可能となる。
【0040】
このように、ロアプレート34の下部にガイド部345を形成することにより、フィルタエレメント30を時計回りに回すだけで、容易にロアプレート34の下部に形成された係合溝部344をリテーナ21の係合凸部211に係合させることができる。また、各々が係合溝部344とガイド部345とにより構成されている6つの係合凹部343を、ロアプレート34の下部において周方向に均等な間隔で設けているため、ロアプレート34の係合溝部344がリテーナ21の係合凸部211に係合するまでに、フィルタエレメント30を時計回りに回さなければならない角度を小さくすることができる。
【0041】
そして、
図9(c)の状態でさらにフィルタエレメント30を降下させると、それに伴って、
図8(b)に示すようにアッパープレート33の固定部材332が図中矢印の方向に撓んでいき、次いで
図8(c)に示すように、
図4(a)に示した係合凸部333がフィルタケース20の係合凹部202の中に入ると、固定部材332の撓みが元に戻って係合凸部333と係合凹部202とが係合し、アッパープレート33がフィルタケース20に係止されることになる。また、フィルタエレメント30をさらに降下させたことによっ
て、ロアプレート34のフランジ当接面342(
図4(b)参照)により外側支持部材41のフランジ部411(
図5(a)参照)が押し下げられる。これにより、内側支持部材当接面413と外側支持部材当接面422とが離間して、内側支持部材42に対して外側支持部材41が下方へ移動することで、内側連通孔424に外側連通孔415の一部が重複し、外側支持部材41の外側と内側支持部材41の内側とが連通することになる。
【0042】
なお、
図8(c)の状態においてフィルタケース20からフィルタエレメント30を取り出す場合は、アッパープレート33のレバー部材334を内側に撓ませる(
図8(c)中矢印の方向に撓ませる)と固定部材332がフィルタケース20の内側に撓み、これにより係合凹部202に対する係合凸部333の係合を解除することができる。このとき、圧縮コイルバネ22の付勢力によって外側支持部材41が押し上げられることでフィルタエレメント30が上方へ移動し、
図8(b)に示すようにアッパープレート33がフィルタケース20の開口よりも高い位置に突出することになる。これにより、フィルタエレメント30が掴み易くなり、フィルタエレメント30をフィルタケース20から取り出し易くすることができる。
【0043】
次に
図10を参照してフィルタエレメント30を収容したフィルタケース20(
図8(c)参照)をフィルタヘッド10に取り付けるときの各部の動きについて説明する。なお、
図10(b)においては、破線で囲んだ領域m1の拡大図も併せて図示している。また、
図10(c)においては、破線で囲んだ領域m2の拡大図も併せて図示している。
【0044】
まず、
図10(a)に示すように、フィルタエレメント30を収容したフィルタケース20のケース側雄ネジ201を、フィルタヘッド10のヘッド側雌ネジ103と螺合させる。この螺合が進むに連れてフィルタケース20は徐々に上方へ移動していき、やがてアッパープレート33の流体連通口337がフィルタヘッド10の嵌合口104と嵌合する。さらに螺合を進めると、
図10(b)に示すように、嵌合口104の開口端面がアッパープレート33に当接する。この状態では領域m1の拡大図に示すように、フィルタヘッド10のケース当接面105とフィルタケース20の開口端面205との間には未だ間隔が空いており、かつ、フィルタケース20の係合凹部202(
図8(c)参照)の内部においてアッパープレート33に形成された係合凸部333が下方へ移動する余地があるため、フィルタケース20の螺合が進むと、フィルタケース20は螺合に伴って上昇していくが、アッパープレート33(ひいてはフィルタエレメント30)は嵌合口104の開口端面によって上昇が阻止される。
【0045】
したがってフィルタケース20の内部では、外側支持部材41は動ないまま内側支持部材42のみがフィルタケース20の螺合に伴って上昇していくため、外側連通孔415の位置に内側連通孔424の位置が近づいていく。そして、
図10(c)および領域m2の拡大図に示すように、フィルタケース20の開口端面205がフィルタヘッド10のケース当接面105に当接すると、螺合によるフィルタケース20の上昇は停止し、このとき外側連通孔415の位置と内側連通孔424の位置とが一致する。以上でフィルタヘッド10に対するフィルタケース20の取り付けが完了するが、フィルタヘッド10からフィルタケース20を取り外す場合は、上述した順序と逆の順序の動きとなる。
【0046】
ここで、フィルタヘッド10にフィルタケース20が取り付けられた状態(
図10(c)参照)から、フィルタケース20をフィルタヘッド10から取り外す場合(
図10(a)参照)、アッパープレート33の係合凸部333がフィルタケース20の係合凹部202と係合しているため、フィルタヘッド10からフィルタケース20を取り外す際に、アッパープレート33の流体連通孔337がフィルタヘッド10の嵌合口104から引き抜かれることになる。したがって、フィルタエレメント30を交換する場合は、取り外したフィルタケース20の内部に収容されているフィルタエレメント30を新しいものに入れ
換えて、その後、新しいフィルタエレメント30を収容したフィルタケース20をフィルタヘッド10に取り付けるという手順になる。
【0047】
仮にアッパープレート33の係合凸部333およびフィルタケース20の係合凹部202が形成されていなかった場合、流体フィルタ1が配置される向きによってはフィルタエレメント30の交換手順が異なってくる可能性が生じる。例えば、
図10(c)に図示されているようにフィルタケース20の上側にフィルタヘッド10が位置する向きとは逆に、フィルタヘッド10がフィルタケース20の下側に位置する向き(換言すると、フィルタヘッド10の上側にフィルタケース20が位置する向き)で流体フィルタ1が配置されていたとする。この場合、フィルタヘッド10からフィルタケース20を取り外したときに、アッパープレート33の流体連通孔337がフィルタヘッド10の嵌合口104と嵌合したままフィルタケース20だけが取り外される可能性がある。
【0048】
このような場合のフィルタエレメントの交換作業は、まず、フィルタヘッド10からフィルタケース20を取り外し、次いでフィルタヘッド10の嵌合口104からフィルタエレメント30の流体連通孔337を引き抜いて、新しいフィルタエレメント30の流体連通孔337を嵌合口104に嵌合させ、その後、フィルタケース20をフィルタヘッド10に取り付けるという手順になる。したがって、流体フィルタ1が配置されている向きによってフィルタエレメント30の交換手順が異なる可能性があるため、フィルタエレメント30の交換作業が複雑になる虞がある。
【0049】
これに対して、本実施形態の流体フィルタ1では、アッパープレート33の係合凸部333がフィルタケース20の係合凹部202と係合しているため、流体フィルタ1の向きに関わらず、常にフィルタケース20はフィルタエレメント30を収容した状態でフィルタヘッド10から取り外されることになり、流体フィルタ1が配置されている向きに営業を受けることなく、フィルタエレメント30の交換手順が一定になるという利点がある。
【0050】
なお、本発明に係る流体フィルタは、例えば、タンク内の作動油を油圧ポンプによって油圧作動装置に供給し、この油圧作動装置から戻ってきた作動油を濾過するリターンフィルタとして利用することができるし、上記のタンクから油圧ポンプへ供給される作動油を濾過するサクションフィルタとして利用することもできる。また濾過の対象としては、作動油に限らず燃料等の他の流体の濾過を行うフィルタに適用しても同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
1 流体フィルタ
10 フィルタヘッド
20 フィルタケース
30 フィルタエレメント
31 濾材
32 プロテクタ
33 アッパープレート
24 ロアプレート
40 支持部材
41 外側支持部材
42 内側支持部材