(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182292
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】牛妊娠関連糖タンパク質測定キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20231219BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/53 V
G01N33/543 541Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095817
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 達哉
(57)【要約】
【課題】 本発明は、酪農の飼育現場において、乳牛の血液中または乳汁中のbPAG濃度を迅速、簡便に測定可能なイムノクロマト測定キットを提供する。
【解決手段】 本発明は、生体試料中のbPAGを定量するためのイムノクロマト測定キットであって、前記生体試料を希釈するための検体希釈液、およびイムノクロマトストリップを含む、測定キットである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料中のbPAGを定量するためのイムノクロマト測定キットであって、前記生体試料を希釈するための検体希釈液、およびイムノクロマトストリップを含むことを特徴とする測定キット。
【請求項2】
前記イムノクロマトストリップは、試料添加部材、含浸部材、膜担体、および吸収部材が順に連接配置されており、
前記含浸部材には、標識物質にbPAGに対する抗体を結合した標識体が含浸されており、
前記膜担体は、抗bPAG抗体が固定化されたテストライン、および前記標識体に結合された抗体と特異的に結合する抗体が固定化されたコントロールラインを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の測定キット。
【請求項3】
前記標識物質は、金コロイドおよび/または着色セルロース微粒子であることを特徴とする請求項2に記載の測定キット。
【請求項4】
前記着色セルロース微粒子は、青色セルロース微粒子であることを特徴とする請求項3に記載の測定キット。
【請求項5】
前記抗bPAG抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の測定キット。
【請求項6】
前記標識体に結合された抗体と特異的に結合する抗体は、抗IgG抗体であることを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の測定キット。
【請求項7】
前記生体試料は、全血、血漿、血清または乳汁であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の測定キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牛から得られる生体試料中の牛妊娠関連糖タンパク質(bPAG)を測定するためのイムノクロマト測定キットに関する。より詳しくは、生体試料(検体)を希釈するための検体希釈液およびイムノクロマトストリップからなる、生体試料中のbPAGを測定するための測定キットに関する。
【背景技術】
【0002】
酪農経営にとって乳牛が妊娠することは、牛乳を搾る上での必要条件である。乳牛が妊娠し、分娩して初めて牛乳の生産が開始される。より多くの妊娠牛を確保することは、酪農の経営安定化には最も重要である。受精後、不受胎になった場合には、経済的損失を抑えるためになるべく早期に再交配を行うなどの対処が必要となる。従って、授精後に妊娠診断を行い、妊娠の成否をなるべく早期に知ることは極めて重要である。乳牛の妊娠検査は、直腸検査法、携帯型超音波画像診断装置を用いた診断、70日ノンリターン法(授精後70日を経て発情がなければ妊娠したと判定する方法)などの方法により、従来から実施されてきている。近年、新たな妊娠検査法として、血中や乳汁中のbPAGを測定する方法の有用性が報告されている。測定対象が乳汁である場合には、牛に対する侵襲性がほとんど無く、また、乳汁の採取も容易であることから利用が広がりつつある。
【0003】
血中や乳汁中のbPAGの測定には、ELISA法が一般に用いられている。しかし、現場で乳汁や血液を採取し、検査機関にサンプルを送付し測定を依頼するケースがほとんどで、検査結果が出るのは翌日~数日後であり、万一、非妊娠である場合には対処が遅れる可能性があるという欠点がある。このため、血中や乳汁中のbPAG濃度の測定結果を即時に得ることが出来る、迅速、簡便な測定方法の開発が望まれている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ELISA測定によるbPAGの検出法などに関する記載がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、乳牛の飼育現場において生体試料中のbPAG濃度を迅速、簡便、安価に測定することができるイムノクロマト測定キットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下に示す手段により前記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1) 生体試料中のbPAGを定量するためのイムノクロマト測定キットであって、前記生体試料を希釈するための検体希釈液、およびイムノクロマトストリップを含むことを特徴とする測定キット。
(2) 前記イムノクロマトストリップは、試料添加部材、含浸部材、膜担体、および吸収部材が順に連接配置されており、
前記含浸部材には、標識物質にbPAGに対する抗体を結合した標識体が含浸されており、
前記膜担体は、抗bPAG抗体が固定化されたテストライン、および前記標識体に結合された抗体と特異的に結合する抗体が固定化されたコントロールラインを有する、
ことを特徴とする(1)に記載の測定キット。
(3) 前記標識物質は、金コロイドおよび/または着色セルロース微粒子であることを特徴とする(2)に記載の測定キット。
(4) 前記着色セルロース微粒子は、青色セルロース微粒子であることを特徴とする(3)に記載の測定キット。
(5) 前記抗bPAG抗体は、モノクローナル抗体であることを特徴とする(2)~(4)のいずれかに記載の測定キット。
(6) 前記標識体に結合された抗体と特異的に結合する抗体は、抗IgG抗体であることを特徴とする(2)~(4)のいずれかに記載の測定キット。
(7) 前記生体試料は、全血、血漿、血清または乳汁であることを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の測定キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、乳牛の飼育現場において生体試料中のbPAG濃度を迅速、簡便に測定することが可能なbPAG測定用イムノクロマトキットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】イムノクロマトストリップの一例を示す模式図(上面図)である。
【
図2】イムノクロマトストリップの一例を示す模式図(側面図)である。
【
図3】ハウジングケースに収容したイムノクロマトストリップの一例を示す模式図である。
【
図4】本発明のイムノクロマト測定キットを用いて得られたbPAGの測定値の一例を示すグラフである。
【
図5】本発明のイムノクロマト測定キットおよびELISA法による測定値の関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明は、生体試料中のbPAGを定量するためのイムノクロマト測定キットであって、前記生体試料を希釈するための検体希釈液、およびイムノクロマトストリップを含む、測定キットである。
【0013】
(生体試料)
本発明において、係る対象となる生体試料としては、特に限定されるものではないが、血清、血漿、乳汁等が適しているが特に限定されない。動物種も、ウシの他、ヒト、ウマ、イヌ、ネコなどを測定対象とすることが出来る。
【0014】
(bPAG)
bPAG(牛妊娠関連糖タンパク質)は、妊娠時にのみ胎盤から分泌される糖タンパク質であり、アスパルティックプロテアーゼファミリーに属する。胎盤で産生されたbPAGは血液中に分泌される。末梢血中のbPAGは妊娠20日前後に約1ng/mLの濃度で検出され、妊娠の経過とともに増加し、分娩の約20日前から急増して、分娩日には1~2μg/mLの濃度にまで達する。bPAGには、bPAG-1、bPAG-2などの他、全部で20種以上のアイソフォームが存在し、それぞれが異なるアミノ酸配列であることが明らかとなっている。bPAGは血清、血漿、唾液、乳、尿に含まれているが、乳汁中のbPAGは血液中の濃度と関係が深く、血中PAGと同様に妊娠時に上昇し、分娩後に減少していく。本発明において、bPAGは、PAG-1の他、いずれのアイソフォームでも構わない。
【0015】
(検体希釈液)
本発明において、検体希釈液は、所定のpH範囲において充分な緩衝能力を有していれば、いかなる種類の緩衝剤を用いてもよく、例えば、トリス、リン酸、フタル酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、シュウ酸、ホウ酸、酒石酸、酢酸、炭酸、グッドバッファー(MES、ADA、PIPES、ACES、コラミン塩酸、BES、TES、HEPES、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン)等が挙げられる。
【0016】
本発明において、検体希釈液は、生体試料を展開させるための展開液として使用することができる。検体希釈液は、イムノクロマトストリップ上での生体試料の展開性を向上させ、かつ免疫反応に影響しない非イオン性界面活性剤を含むことが好ましい。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(Triton(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(Brij(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(Tween(登録商標)系界面活性剤等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。また、前記界面活性剤は単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、検体希釈液中の界面活性剤の濃度は、生体試料の希釈倍率にもよるが0.01質量%以上0.2質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.15質量%以下がさらに好ましい。濃度が低すぎると、生体試料希釈液が展開しにくくなることがあり、濃度が高すぎると、テストラインのシグナルが低くなることがある。
【0017】
また、検体希釈液は、競合反応の効率化、促進、特異性向上のために、ポリエチレングリコールおよび/または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。検体希釈液へのポリエチレングリコールおよび塩化ナトリウムの添加濃度は、生体試料希釈液中の終濃度がそれぞれ、1質量%以上4質量%以下、1質量%以上3質量%以下となるように添加するのが好ましい。なお、使用するポリエチレングリコールの数平均分子量は、好ましくは2000以上16000以下であり、より好ましくは5000以上10000以下である。数平均分子量が小さい場合、本発明に適した充分な抗原抗体反応の促進作用が得られないことがある。また、数平均分子量が大きい場合、同様に、抗原抗体反応の促進作用が得られないとか、生体試料希釈液の粘性が高くなり、イムノクロマトストリップ上の展開性が低下することがある。
【0018】
本発明ではまた、前記検体希釈液を用いて検体を希釈する際の希釈倍率は、2倍~500倍程度が好ましく、5倍~100倍がより好ましい。この希釈倍率においては、検体中の夾雑物の影響を回避し、且つ、より正確にbPAGの測定が可能となる。
【0019】
(標識体)
本発明において、標識体は、bPAGに対する抗体に標識物質を結合させて得ることが出来る。抗体は、bPAGに対する抗体であればよく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点からモノクローナル抗体であることが好ましい。
【0020】
(標識物質)
標識物質は特に制限はなく、例えば、呈色(蛍光を含む)標識物質、酵素標識物質などが挙げられるが、迅速に検査結果が得られることから呈色標識物質であることが好ましい。呈色標識物質としては、コロイド金属、着色ラテックス粒子、着色セルロース微粒子などが挙げられる。コロイド金属の代表例としては、白金コロイド、金コロイド、銀コロイド、パラジウムコロイド、金ナノロッド、金ナノプレート、銀ナノプレートなどが挙げられる。コロイド金属の粒子の大きさは通常、直径3nm以上100nm以下程度とされる。着色ラテックス粒子の代表例としては、赤色および青色などのそれぞれの顔料で着色されたポリスチレンラテックス、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸重合体などが挙げられる。着色ラテックス粒子の粒径としては特に制限されないが、粒径25nm以上500nm以下のものが好ましい。この他に、市販されている着色セルロース微粒子なども使用出来る。着色セルロース微粒子の粒径としては特に制限されないが、粒径100nm以上500nm以下のものが好ましい。蛍光標識物質としてはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルトルエン、シリカなどの材質からなるものを例示することができ、蛍光色素としてはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、シアニンおよびその誘導体などを例示することができる。
【0021】
前記着色セルロース微粒子の色は、特に限定されないが、例えば赤色、青色、黄色、緑色、黒色、白色、蛍光色が挙げられる。これらの中でも、バックグラウンドにヘモグロビン由来の赤色がある場合、その影響を受けにくい青色、黒色が好ましく、青色がより好ましい。このような着色セルロース微粒子としては、旭化成社製の着色セルロースナノビーズ(NanoAct(登録商標))が挙げられるが、この中でもNavy(BL1)、Dark Navy(BL2)、Black(KR1)が好ましく、Navy(BL1)、Dark Navy(BL2)がより好ましい。
【0022】
本発明において、標識物質表面への非特異結合を抑えるために予めブロッキング剤を用いて処理しておいてもよい。ブロッキング剤は、ポリエチレングリコールやタンパク質を用いるのが好ましい。タンパク質としてはBlocking Peptide Fragment(BPF、東洋紡社製)、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼインなどが好ましい。これらのブロッキング剤は市販されているものがあればそれを用いても良いし、別途公知の方法で製造しても良い。分子サイズも特に制限されないが、平均分子量で100kDa以下が好ましい。一般的にブロッキング剤の分子サイズが小さいほど検出粒子1粒子に対するタンパク質の結合量が増加し感度などの性能が高くなる。
【0023】
(イムノクロマトストリップ)
イムノクロマトストリップの具体例としては、
図1、2に示すようなイムノクロマトストリップ8が挙げられる。
図1、2において、1は粘着シート、2は含浸部材、3は膜担体、4はテストライン、5はコントロールライン、6は試料添加部材、7は吸収部材を示している。膜担体3は、幅5mm、長さ25mmの細長い帯状のニトロセルロース製メンブレンからなり、同じく幅5mmの粘着シート1の中ほどに貼り付けられている。膜担体3には、クロマト展開の始点側、すなわち
図1、2の左側(上流側)の末端から右側(下流側)に向かって3mm以上15mm以下の位置に、生体試料(希釈液)中のbPAGを捕捉するためのテストライン4が形成(抗bPAG抗体が線状に固定化)されている。さらに、膜担体3の上流側の末端から下流側に向かって8mm以上25mm以下の位置にコントロールライン5が形成(標識体中の化合物を特異的に結合する抗体が固定化)されている。なお、テストラインはコントロールラインよりも上流側に配置され、テストラインとコントロールラインとの距離は3mm以上10mm未満とするのが好ましい。コントロールライン5は、分析対象物質であるbPAGの存否に係わらずイムノクロマト展開が行われたことを確認するためのものである。例えば、標識体に結合している抗体(IgG)に対する抗体をコントロールライン5に固定化することによって形成することができる。
【0024】
(試料添加部材)
本発明において、試料添加部材6は、例えば、多孔質ポリエチレンおよび多孔質ポリプロピレンなどのような多孔質合成樹脂のシートまたはフィルム、あるいは濾紙、綿布などのようなセルロース製の紙または不織布などを用いることができる。
【0025】
(含浸部材)
本発明において、含浸部材2は、5mm×15mmの帯状のガラス繊維を用いるが、これに限定されるものではなく、例えば、濾紙、ニトロセルロース膜、ポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔質プラスチック不織布なども使用できる。含浸部材2は、前記標識体を含む懸濁液を前記ガラス繊維等の部材に含浸せしめ、これを乾燥することなどによって作製できる。
【0026】
(膜担体)
本発明において、膜担体3は、ニトロセルロース製メンブレンフィルターを用いるが、生体試料中に含まれるbPAGをクロマト展開可能で、かつテストライン4を形成する抗体等の物質を固定可能なものであれば、いかなるものであってもよく、他のセルロース類膜、ナイロン膜、ガラス繊維膜なども使用できる。
【0027】
(テストライン)
本発明において、テストラインに固定化する抗体は、bPAGに特異的に結合することが出来る抗bPAG抗体であればよく、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよいが、反応特異性の観点から、モノクローナル抗体であることが好ましい。また、テストラインに固定化する抗体は、1種類であっても良いし、複数種を混合して用いても良い。
【0028】
(抗bPAG抗体)
本発明において、抗bPAG抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよく、ポリクローナル抗体は、ウサギやマウスなどに免疫して得られた抗血清からIgGを精製して得ることが出来る。モノクローナル抗体の産生細胞は、例えば、精製したbPAGを適当なアジュバントとともにマウスのような動物に免疫したのち、免疫された動物の脾細胞とミエローマ細胞とを融合し、融合細胞のみが増殖出来る選択培地で培養し、増殖した細胞を前記bPAGなどを使用して、たとえば酵素標識免疫法などにより選別することにより取得することができる。
【0029】
(コントロールライン)
本発明において、コントロールライン5には、標識体中の化合物を特異的に結合する抗体が固定化されているのが好ましい。例えば、抗ウサギIgG抗体や抗マウスIgG抗体などを膜担体に固定化することによって形成することができる。コントロールラインを用いることにより、標識体が膜担体の最下流部まで移動したこと、即ち、イムノクロマト反応が(正常に)行われたことを確認することができる。
【0030】
(吸収部材)
本発明において、吸収部材7は、液体をすみやかに吸収、保持できる材質のものであればよく、綿布、濾紙、およびポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質プラスチック不織布等を挙げることができるが、特に濾紙が最適である。
【0031】
イムノクロマトストリップは、これを保護するため、また、取り扱いがし易いように、プラスチック製のハウジングケース9などに収容されるのが好ましい(
図3)。このケースは、例えば、イムノクロマトストリップの試料添加部材6およびテストライン4およびコントロールライン5の上部に試料滴下部10と判定部(判定窓)11が開口されていることが好ましい。
【0032】
本発明において、イムノクロマトストリップ8は、
図1に示されるように、膜担体3を粘着シート1の中ほどに貼着し、膜担体3の上流側の末端の上に、含浸部材2の下流側の末端を一部重ね合わせて連接するとともに、この含浸部材2の上流側部分を粘着シート1に貼着して作成することができる。さらに、含浸部材2の上面に試料添加部材6の下流側部分を載置するとともに、該試料添加部材6の上流側部分を粘着シート1に貼着し、また、膜担体3の下流側部分の上面に吸収部材7の上流側の末端を一部重ね合わせて連接するとともに、該吸収部材7の下流側部分を粘着シート1に貼着せしめてイムノクロマトストリップ8を構成している。
【0033】
(イムノクロマト展開)
生体試料と検体希釈液とを混合して調製した生体試料希釈液を試料添加部材6の試料滴下部10に滴下した時、膜担体3の上流側の端部に連接した含浸部材2に予め含浸させた標識体が、該生体試料希釈液と混合して膜担体3へとクロマト展開されるように配置しておくことが好ましい。あるいは、標識体を、イムノクロマトストリップ8とは別の適当な容器内で、生体試料及び検体希釈液と混合して混合液とした後、この生体試料希釈液をイムノクロマトストリップ8の試料添加部材6に滴下して膜担体3にクロマト展開させても構わない。
【0034】
(イムノクロマト測定キット)
本発明のイムノクロマト測定キットは、上記のイムノクロマトストリップに加えて、生体試料を希釈するための検体希釈液を少なくとも含み、更に必要に応じて、検量線を作成するための標準液や、希釈するための容器などを含む。また、イムノクロマト結果を測定するための測定装置も含む場合がある。
【実施例0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各特性値の測定は、以下の方法に従った。
【0036】
(検体希釈液の調製)
PBS(pH7.4)に0.1質量%のTritonX100を添加し、更に、ポリエチレングリコール#6000(ナカライテスク、Code:10200-25)を2質量%、塩化ナトリウムを1質量%となるように添加し調製した。
【0037】
(抗bPAG抗体の作製)
bPAG-1(WUHAN HUAMEI BIOTECH Co.,Ltd、CSB-EP644917BO)をウサギに免疫して得られた血清から、アフィニティクロマトグラフィーによりIgGを精製して得られたものを、抗bPAG抗体とした。
【0038】
(抗bPAG抗体結合着色セルロース微粒子の調製)
標識物質として着色セルロース微粒子液(旭化成、BL1、1質量%)をpH7.0の10mM Tris Bufferに懸濁させ、これに前記抗bPAG抗体を加えて混合し、37℃で120分間静置して、抗体を着色セルロース微粒子表面に結合させた。更に、着色セルロース微粒子表面への非特異結合を抑えるために、1質量%カゼインを添加し、37℃で60分間静置してブロッキング処理を行った。この後、洗浄操作を行った後、1質量%スクロース含有PBS(pH7.4)に懸濁して、抗bPAG抗体結合着色セルロース微粒子液を調製した。
【0039】
(抗bPAG抗体結合セルロース粒子含浸部材の作製)
8mm×150mmの帯状のガラス繊維不織布に、前記の抗bPAG抗体結合着色セルロース微粒子液を0.5mL含浸させた。室温で乾燥させた後に、8mm×5mmの大きさに切断し、含浸部材とした。
【0040】
(テストラインおよびコントロールラインの作製)
前記作製した抗bPAG抗体を1mg/mLの濃度に調製した後、これを25mm×300mmのニトロセルロース製メンブレンフィルターに1.0μL/cmの量で線状に塗布してテストラインを調製した。
次に、抗ウサギIgG抗体(MyBiosource.Inc.、MBS539780)を1mg/mLの濃度に調製した後、上記ニトロセルロース製メンブレンフィルターに1.0μL/cmの量で線状に塗布してコントロールラインを調製した。
テストラインおよびコントロールラインを調製後、50℃で30分間乾燥させ、25mm×5mmの大きさに切断し、膜担体とした。
【0041】
(イムノクロマトストリップの作製)
図1に示すように、粘着シート1の上に、前記得られた膜担体3、前記得られた含浸部材2、および吸収用部材7を配置し、イムノクロマトストリップを作製した。
【0042】
(bPAG標準液の調製)
PBS(pH7.4)に、bPAG-1(WUHAN HUAMEI BIOTECH Co.,Ltd、CSB-EP644917BO)を溶解し、bPAG標準液を調製した。
【0043】
(測定キットを用いた測定)
前記標準液を、前記調製した検体希釈液を用いて希釈し、各濃度のbPAG液を調製した。そして、前記得られたイムノクロマトストリップの試料添加用部材6の試料滴下部10にマイクロピペットで100μL滴下し、10分後、テストラインにおける吸光度をイムノクロマトリーダ(浜松ホトニクス、C10066-10)にて測定した。その結果を表1に示した。また、測定の結果得られたグラフを
図4に示した。
【0044】
【0045】
(ELISA法測定との比較実験)
12頭の乳牛から採血して得た血清中のbPAG濃度を、ELISA法および本発明のイムノクロマト測定キットを用いて測定した。ELISA法の測定には、Bovine PAG1/Pregnancy Associated Glycoprotein ELISA Kit(MyBioSource.Inc.、MBS2890050)を使用した。イムノクロマト法では、各濃度の標準液を測定して得られた標準曲線(
図4)より、各血清のbPAG濃度を算出し測定結果を表2および
図5に示した。イムノクロマト法の測定値とELISA法による測定値の相関係数は0.96であり、良好な相関関係を示した。本発明の測定キットを用いることにより、精度よくbPAGを定量できることが確認された。
【0046】
本発明により、酪農の生産現場において乳牛の血液中や乳汁中のbPAG濃度を迅速、簡便に測定することができるため、乳牛の妊娠/非妊娠を判断する上で極めて有用である。