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  • 特開-衛生処理箇所の決定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182295
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】衛生処理箇所の決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20231219BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20231219BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20231219BHJP
   C07K 2/00 20060101ALN20231219BHJP
   C12N 9/66 20060101ALN20231219BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/50 P
C12Q1/68
G01N33/68
C07K2/00
C12N9/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095822
(22)【出願日】2022-06-14
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】細川 賢人
【テーマコード(参考)】
2G045
4B050
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB04
2G045DA13
2G045DA30
2G045DA36
2G045DA44
4B050CC07
4B050DD01
4B050DD11
4B050LL03
4B063QA01
4B063QA18
4B063QQ17
4B063QQ20
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QS10
4H045AA50
4H045EA50
(57)【要約】
【課題】洗浄、消毒、殺ウイルス、殺菌などの衛生処理を効果的に実施できる箇所や条件を簡易に且つ確実に決定できる、衛生処理についての決定方法を提供する。
【解決手段】環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所を決定する、衛生処理箇所の決定方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物(以下、指標高分子という)の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所を決定する、衛生処理箇所の決定方法。
【請求項2】
環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理の条件を決定する、衛生処理条件の決定方法。
【請求項3】
環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所及び衛生処理の条件を決定する、衛生処理方法の決定方法。
【請求項4】
衛生処理が、洗浄、殺菌及び殺ウイルスから選ばれる少なくとも何れかのための衛生処理剤を用いる処理である、請求項1~3の何れか1項に記載の決定方法。
【請求項5】
指標高分子が、たんぱく質、糖たんぱく質、核酸及び多糖から選ばれる少なくとも一つである、請求項1~4の何れか1項に記載の決定方法。
【請求項6】
指標高分子が、エラスターゼ及びムチンから選ばれる少なくとも一つである、請求項1~5の何れか1項に記載の決定方法。
【請求項7】
環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定する、推定方法。
【請求項8】
環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定し、感染経路を推定する、推定方法。
【請求項9】
環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物(以下、指標高分子という)の検出を行う手段と、該手段により取得された指標高分子の検出結果により決定された衛生処理箇所の処理に用いる薬剤と、を含む、衛生処理キット。
【請求項10】
衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法であって、
(a)環境内の一又は複数の箇所を特定するステップであって、下記(i)~(iii)のステップを含むステップと、
(i)定義された領域内の前記一又は複数の箇所を特定するために実在物の設置箇所を特定できる位置データを生成するステップ、
(ii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データを記録するステップ、及び
(iii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データとリンクしている実在物を位置及び部位に分別して記録するステップ、
(b)前記環境内の一又は複数の箇所から検出された、糞便に含まれる人体由来の高分子化合物の検出結果を記録するステップと、
(c)生成された検出結果を前記(a)の(iii)で記録した実在物の分別した位置及び部位別に記録するステップと
(d)(c)の記録を前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データと併せて表示するステップと、
を備える、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法。
【請求項11】
請求項10の表示方法で表示された衛生処理の候補箇所における汚染状況に基づいて衛生処理箇所を決定し、衛生処理箇所として表示する、衛生処理箇所の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生処理箇所の決定方法、衛生処理条件の決定方法、衛生処理方法の決定方法、推定方法、衛生処理キット、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法及び衛生処理箇所の表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我々を取り巻く生活環境には様々な設備、施設、装置などが含まれ、それぞれの用途などを考慮して種々の処理が施される。例えば、商業施設、宿泊施設などでは、衛生的な状態を保つために、洗浄、殺菌などの処理が行われる。その際、汚れなどの程度を判定すること、汚れなどの程度に応じて処理条件などを決定することが提案されている。
【0003】
特許文献1には、ウイルスなどの被検物質を検出する所定の検出方法と、前記検出方法の検出結果に応じて、対象空間から前記被検物質を除去する清浄工程と、を備える清浄方法が開示されている(請求項19)。
【0004】
特許文献2には、生活環境の衛生状態の評価方法であって、当該生活環境におけるMethylobacterium属細菌の存在の有無を検出する工程を含む方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、特定のトイレ汚れ検出シート又は特定のトイレ汚れ検出シート積層体をトイレの被清掃領域の複数箇所に配置する設置行程と、設置されたシートの変色状態から前記複数個所の汚れの程度を判別する判別行程と、判別された汚れの程度によってトイレの清掃時期を決定する時期決定行程と、から構成されたトイレの清掃時期決定方法、並びにトイレの清掃範囲決定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-206671号公報
【特許文献2】特開2012-5455号公報
【特許文献3】特開2013-36189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境において、洗浄、漂白、消臭、殺ウイルス、殺菌といった処理を行う際には、その処理に応じた薬剤が用いられることが多いが、各種施設、とりわけ商業施設、宿泊施設、製造設備のような施設では、薬剤を全ての箇所に適用することは非効率である。すなわち、こうした大規模な施設では、清掃などの処理を施す箇所、時期などを効率よく決定できれば、労力や費用を大幅に低減できる。とりわけ、ウイルスや細菌による感染を防御するのは、不特定多数の人が利用する施設では重要であるため、確実に且つ効率よく処理を施すために有効な方法が望まれている。
【0008】
本発明は、洗浄、消毒、殺ウイルス、殺菌などの衛生処理を効果的に実施できる箇所や条件を簡易に且つ確実に決定できる、衛生処理についての決定方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、環境における糞便に含まれる人体由来の高分子化合物(以下、指標高分子という)の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所を決定する、衛生処理箇所の決定方法に関する。
【0010】
また、本発明は、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理の条件を決定する、衛生処理条件の決定方法に関する。
【0011】
また、本発明は、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所及び衛生処理の条件を決定する、衛生処理方法の決定方法に関する。
【0012】
また、本発明は、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定する、推定方法に関する。
【0013】
また、本発明は、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定し、感染経路を推定する、推定方法に関する。
【0014】
また、本発明は、環境における指標高分子の検出を行う手段と、該手段により取得された指標高分子の検出結果により決定された衛生処理箇所の処理に用いる薬剤と、を含む、衛生処理キットに関する。
【0015】
また、本発明は、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法であって、
(a)環境内の一又は複数の箇所を特定するステップであって、下記(i)~(iii)のステップを含むステップと、
(i)定義された領域内の前記一又は複数の箇所を特定するために実在物の設置箇所を特定できる位置データを生成するステップ、
(ii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データを記録するステップ、及び
(iii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データとリンクしている実在物を位置及び部位に分別して記録するステップ、
(b)前記環境内の一又は複数の箇所から検出された、糞便に含まれる人体由来の高分子化合物の検出結果を記録するステップと、
(c)生成された検出結果を前記(a)の(iii)で記録した実在物の分別した位置及び部位別に記録するステップと
(d)(c)の記録を前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データと併せて表示するステップと、
を備える、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法に関する。
【0016】
また、本発明は、前記本発明の表示方法で表示された衛生処理の候補箇所における汚染状況に基づいて衛生処理箇所を決定し、衛生処理箇所として表示する、衛生処理箇所の表示方法に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗浄、消毒、殺ウイルス、殺菌などの衛生処理を効果的に実施できる箇所を簡易に且つ確実に決定できる、衛生処理箇所、衛生処理条件又は衛生処理方法の決定方法が提供される。また、本発明により、危害ウイルス及び/又は危害菌(以下、危害ウイルス及び/又は危害菌、と称する)の存在箇所や感染経路を簡易且つ確実に推定できる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の汚染状況の表示方法を実施する処理手順のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の指標高分子は糞便に含まれる人体由来の高分子化合物である。本発明は、生活環境の表面に付着した指標高分子の検出程度が、指標高分子を含む成分による汚染の可能性と相関することを見いだし、指標高分子の検出程度が高い箇所を汚染の可能性が高い箇所であると判定し、その箇所を、洗浄、消毒、殺ウイルス、殺菌などの衛生処理を行う箇所として決定することで、ウイルス及び/又は細菌による汚染を効率よく防御、除去できることを見いだしたものである。更に、本発明は、指標高分子の検出程度に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性や感染経路を確度よく推定できることを見いだしたものである。本発明で選定した指標高分子の検出程度に基づいて、汚染の可能性を判定し、衛生処理を施す箇所を決定することや、危害ウイルス及び/又は危害菌の存在可能性、更に感染経路を推定することは従来行われていない。
【0020】
本発明の指標高分子は、例えば、分子量が10000以上、更に15000以上、更に20000以上であってよい。この分子量は、重量平均分子量であり、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー等の方法で測定される。
【0021】
本発明の指標高分子としては、例えば、口腔、食道、胃、小腸、大腸、肛門等の消化管及びそれに付随する消化腺(口腔腺、肝臓、膵臓等)や付属物(歯、舌、唾液腺等)に由来する高分子化合物が挙げられる。
本発明の指標高分子としては、例えば、たんぱく質、糖たんぱく質、多糖、核酸などが例示できる。
【0022】
たんぱく質としては、酵素が挙げられる。
酵素としては、エラスターゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、アミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、カルボキシペプチダーゼ等のプロテアーゼ、ホスホリパーゼ、トリアシルグリセリドリパーゼ等のリパーゼ等が例示できる。他のたんぱく質としては、カルプロテクチン等が例示できる。酵素の分子量は、例えば、10000以上、更に15000以上、更に20000以上、更に25000以上であってよい。
糖たんぱく質としては、ムチン、カドヘリン、プロテオグリカン等が例示できる。糖たんぱく質の分子量は、例えば、10000以上、更に10万以上、更に30万以上、更に100万以上、更に200万以上であってよい。
多糖としては、グリコーゲン等が例示できる。多糖の分子量は、例えば、10000以上、更に10万以上、更に100万以上、であってよい。
核酸としては、DNA、mRNA等が挙げられる。核酸の分子量は、例えば、10000以上、更に30000以上、更に50000以上であってよい。
【0023】
指標高分子としては、たんぱく質、糖たんぱく質、核酸及び多糖から選ばれる1種以上が好ましく、たんぱく質及び糖たんぱく質から選ばれる1種以上がより好ましく、たんぱく質から選ばれる1種以上が更に好ましく、酵素から選ばれる1種以上がより更に好ましい。酵素は、プロテアーゼ及びリパーゼから選ばれる酵素が好ましい。
指標高分子としては、体外に排出される経路における糞便の選択性の高さ及び糞便による汚染を推定する指標としての精度の観点から、エラスターゼ及びムチンから選ばれる1種以上が好ましく、エラスターゼがより好ましい。エラスターゼは、膵エラスターゼが好ましい。
【0024】
本発明では、環境における指標高分子の検出を行う。環境は、生活環境、自然環境などであってよい。環境、とりわけ生活環境は、建造物、公共交通機関を含んでよい。また、建造物、公共交通機関は、それぞれ、それらに付随する備品を含んでよい。建造物の規模、用途などは限定されない。
【0025】
建造物としては、商業施設、宿泊施設、教育施設、医療施設、介護施設、業務施設及び飲食施設から選ばれる建造物が挙げられ、これらの複合施設であってよい。商業施設は、例えば、ショッピングセンター、スーパーマーケット、シネマコンプレックス、アミューズメントパークなどが挙げられる。宿泊施設は、例えば、ホテル、旅館、民泊施設などが挙げられる。教育施設は、例えば、各種学校、カルチャーセンターなどが挙げられる。医療施設は、例えば、病院が挙げられる。介護施設は、例えば、高齢者向けケアハウスなどが挙げられる。業務施設は、例えば、オフィスビル、工場などが挙げられる。飲食施設は、例えば、レストラン、喫茶店、ファーストフード店などが挙げられる。
【0026】
公共交通機関としては、鉄道車両、道路車両、船舶及び航空機から選ばれる公共交通機関が挙げられる。鉄道車両は、電車、ディーゼル車などが挙げられる。道路車両は、バスなどが挙げられる。船舶は、旅客船などが挙げられる。航空機は、旅客機などが挙げられる。
【0027】
本発明では、環境が、物品を含み、該物品の表面における指標高分子の検出を行うことができる。物品は、例えば、建造物、建造物の備品、公共交通機関及び公共交通機関の備品から選ばれる物品を含むものであってよい。本発明では、例えば、室内に配置された物品の表面における指標高分子の検出を行うことができる。物品は、固定された物品、固定されていない物品、いずれでもよい。物品の材料も限定されない。物品は、例えば、家具、電化製品、水回りの物品、建材、建具、衣類、寝具などが挙げられ、より具体的には、例えば、テーブル、椅子、流し台、便座、ドアノブ、水道蛇口、スイッチ、遠隔操作機器(各種機器用のリモートコントローラーなど)、コンピューター用入力装置(キーボード、マウスなど)、壁紙、クロスの天井、カーテン類、絨毯から選ばれる物品が挙げられる。また、物品として、例えば、建築物に設置されたエレベータのスイッチ、建築物に設置されたエスカレーターの手すり、交通機関の券売機、車両の吊革、商業施設で頻繁に用いられる買い物かごやカートなどの物品を挙げることができる。本発明では、これらの物品の表面における指標高分子の検出を行うことができる。
【0028】
本発明の対象とする環境は、トイレであってよく、具体的には、トイレに配置されている物品であってよい。トイレに配置されている物品としては、例えば、トイレのドアノブや扉、電灯用スイッチ、水栓用ボタン、便器内(奥、側面、縁等)、便座(上面、裏面)、便座カバー、水栓レバー、リモートコントローラーのボタン、リモートコントローラ本体、個室用扉のドアノブ、個室用扉の鍵、個室用扉内面、トイレットペーパー(ストックを含む)、トイレットペーパー用ホルダー、洗面台、鏡、タオル、手拭き用ペーパー、手拭き用ぺーパーホルダー、自動乾燥機、床、壁、天井、照明器具、照明器具のスイッチ、フロアシート、トイレ用スリッパ、芳香剤容器、換気扇スイッチ、換気扇、換気用窓、換気用窓の開閉レバー、空気清浄機スイッチ、空気清浄機内部フィルター、空気清浄機本体、視覚障害者用点字板、高齢者用手すり、手指洗浄剤や消毒剤の容器等が例示できる。
【0029】
本発明において、環境は、衛生処理の対象となる領域(以下、対象領域ともいう)であってよい。以下、対象領域という語は、環境の意味であってよい。対象領域は、例えば、前記した商業施設、宿泊施設、業務施設などの建造物や交通公共機関などから選択されてよい。それらの対象領域から指標高分子を検出する箇所を選択する。指標高分子を検出する箇所は、対象領域の用途、規模などを考慮して適宜選択できる。本発明では、環境中の衛生処理の対象となる領域を定め、その対象領域で指標高分子を検出することができる。
【0030】
本発明では、対象領域における異なる箇所について指標高分子の検出を行い、検出を行った箇所において相対的に指標高分子の検出が多い箇所を衛生処理を行う箇所とすることができる。
【0031】
本発明では、対象領域における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理の条件、例えば、処理の種類、処理に用いる薬剤の種類や使用量、処理を行う回数、などを決定する。条件は、各処理について当業者が通常行う条件を、そのままあるいは修正して、採用できる。
【0032】
指標高分子の検出量が多い箇所は、指標高分子ないし指標高分子を含む成分、例えば糞便が、様々な形態で付着しやすい箇所であると想定される。そのような箇所は、いったん清掃を行った後も、例えば、糞便や糞便中に取り込まれたウイルス及び/又は細菌などによる汚染が生じやすい箇所であると想定される。指標高分子の検出結果に基づいて衛生処理の箇所や条件を決定する際には、これを考慮して行ってよい。本発明では、指標高分子の検出結果に基づいて、ウイルス及び/又は細菌による汚染の可能性を判定し、判定結果から衛生処理を行う箇所を決定することができる。
【0033】
本発明では、対象領域における異なる箇所について指標高分子の検出を行い、指標高分子の検出頻度と指標高分子の検出量とから、衛生処理の条件を決定することができる。
【0034】
本発明で、対象領域における異なる箇所について指標高分子の検出を行う場合は、例えば、1mあたり1箇所以上、更に2箇所以上、更に3箇所以上、そして、16箇所以下、更に9箇所以下、更に6箇所以下の割合で選定した複数の箇所について測定を行うことができる。
【0035】
本発明では、指標高分子の検出を、抗原抗体反応及び/又は酵素反応を利用した方法により行うことができる。対象領域における指標高分子の検出は、例えば、物品の表面で直接行ってもよいし、物品の表面から採取したサンプルに対して行ってもよい。本発明では、指標高分子の検出を、抗原抗体反応を利用した方法により行うことが好ましい。本発明では、例えば、エラスターゼなどの指標高分子を特異的に検出可能な抗原抗体反応を利用した方法により行うことが好ましい。抗原抗体反応を利用した方法は、イムノクロマト法、酵素免疫測定法(EIA法、ELISA法)、免疫沈降法、イムノブロッティングなどが挙げられる。抗原抗体反応を利用して指標高分子量を測定する、市販の製品を用いてもよい。
【0036】
本発明では、衛生処理は、対象領域の衛生状態を向上させる処理、対象領域の衛生状態を維持する処理などを含んでいてよい。
一般に、生活環境の衛生状態は、清浄に保つことで向上及び/又は維持される。本発明では、例えば、衛生処理は、浄化、細菌の付着防止処理及びウイルスの付着防止処理から選ばれる一種以上の処理を含むものであってよい。より具体的には、衛生処理は、例えば、洗浄、漂白、消毒、殺菌、除菌、抗菌、殺ウイルス、抗ウイルス及びウイルス除去から選ばれる一種以上の処理を含むものであってよい。それぞれの処理は、公知の方法で行うことができる。
【0037】
本発明では、衛生処理が、ウイルス及び/又は細菌によってもたらされる不利益を低減する処理であってよい。すなわち、本発明の対象とするウイルス及び/又は細菌は、危害ウイルス及び/又は危害菌であってよい。危害は、人に対する危害を少なくとも含む。危害ウイルスは、ノンエンベロープ型又はエンベロープ型ウイルスであってもよく、特にノンエンベロープ型ウイルスであってもよい。また、危害菌としては、例えば、大腸菌が挙げられる。ウイルス及び/又は細菌によってもたらされる不利益を低減する処理は、具体的には前記した処理から選択できる。ウイルス及び/又は細菌によってもたらされる不利益は、典型的には、感染症である。
【0038】
本発明では、衛生処理は、洗浄、殺菌及び殺ウイルスから選ばれる少なくとも何れかのための衛生処理剤(以下、衛生処理剤という)を用いる処理であってよい。
衛生処理剤は、例えば、(a)界面活性剤、(b)酸化性漂白剤及び(c)殺菌剤から選ばれる1種以上を含有することができる。衛生処理剤は、水を含有することができる。衛生処理剤は、液体、固体の何れでもよいが、液体が好ましく、水を含有する液体がより好ましい。
【0039】
(a)界面活性剤は、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤及び両性界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。
(a)界面活性剤としては、例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、アルキル硫酸エステル及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びその塩、脂肪酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリコシド、アルキルアミンオキシド、4級アンモニウム塩、並びにアルキルアミンエチレンオキシド付加物から選ばれる1種以上が挙げられる。
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸の直鎖アルキル基の炭素数は8以上20以下であってよい。
アルキル硫酸エステルのアルキル基の炭素数は8以上20以下であってよい。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸はエチレンオキシドの平均付加モル数が1以上30以下であってよく、アルキル基の炭素数が8以上20以下であってよい。
脂肪酸の炭素数は8以上20以下であってよい。
陰イオン界面活性剤の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテルはエチレンオキシドの平均付加モル数が1以上30以下であってよく、アルキル基の炭素数が8以上20以下であってよい。
アルキルグリコシドはアルキル基の炭素数が8以上20以下であってよい。
アルキルアミンオキシドはアルキル基の炭素数が8以上20以下であってよい。
4級アンモニウム塩は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキル(炭素数8以上20以下)ジメチルアンモニウムなどが挙げられる。
アルキルアミンエチレンオキシド付加物は、アルキル基の炭素数が8以上20以下であってよく、エチレンオキシドの平均付加モル数が1以上30以下であってよく、アミンは1級、2級、3級の何れであってよい。アルキルアミンエチレンオキシド付加物は、例えば、ラウリルアミンエチレンオキシド付加物が挙げられる。
衛生処理の種類にもよるが、衛生処理剤は、(a)界面活性剤を、例えば、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%、更に0.1質量%そして、20質量%以下、更に10質量%以下、更に5質量%以下含有することができる。
【0040】
(b)酸化性漂白剤としては、次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過酢酸が挙げられ、次亜塩素酸塩が好ましい。塩はナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。衛生処理の種類にもよるが、衛生処理剤は、(b)酸化性漂白剤を、例えば、0.0001質量%以上、更に0.001質量%以上、更に0.01質量%、更に0.1質量%、更に1質量%、そして、10質量%以下、更に7.5質量%以下、更に5質量%以下含有することができる。
【0041】
(c)殺菌剤としては、殺菌性アルコール及び殺菌性有機酸から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0042】
殺菌性アルコールとしては、エタノール及びプロパノールから選ばれる1種以上が挙げられる。衛生処理の種類にもよるが、衛生処理剤は、殺菌性アルコールを、例えば、0.1質量%以上、更に1質量%以上、更に10質量%、更に40質量%、そして、95質量%以下、更に90質量%以下、更に85質量%以下含有することができる。
【0043】
殺菌性有機酸としては、乳酸又はその塩が挙げられる。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩が挙げられる。衛生処理の種類にもよるが、衛生処理剤は、殺菌性有機酸を、例えば、0.01質量%以上、更に0.1質量%以上、更に0.4質量%、そして、7質量%以下、更に5質量%以下、更に3質量%以下含有することができる。
【0044】
(c)殺菌剤は、エタノール、プロパノール、乳酸及び乳酸の塩から選ばれる1種以上であってよい。
【0045】
衛生処理剤は、(a)界面活性剤、(b)酸化性漂白剤及び(c)殺菌剤から選ばれる2種以上を含有することが好ましい。
【0046】
本発明では、衛生処理は、衛生処理剤の処理箇所への接触と、前記衛生処理剤を接触させた処理箇所の可撓性吸液材料による清拭とを含んでいてよい。本発明では、衛生処理剤の処理箇所への接触を、前記衛生処理剤を含浸させた可撓性吸液材料の処理箇所への接触及び前記衛生処理剤の処理箇所への噴霧、の少なくとも一方により行うことができる。例えば、衛生処理剤を含浸させた可撓性吸液材料で処理箇所を清拭すると、衛生処理剤を処理箇所に接触させながら処理箇所の清拭を行うことができる。噴霧は、例えば、トリガー式ポンプなどを用いて行うことができる。可撓性吸液材料としては、不織布、織布、スポンジなどが挙げられる。
【0047】
本発明により、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて衛生処理を行う箇所及び衛生処理の条件を決定する、衛生処理方法の決定方法が提供される。
この方法で、衛生処理を行う箇所を決定する方法は、本発明の衛生処理箇所の決定方法であってよい。
また、この方法で、衛生処理の条件を決定する方法は、本発明の衛生処理条件の決定方法の決定方法であってよい。
このようにして決定された衛生処理を行う箇所と衛生処理条件とにより、衛生処理方法が決定される。
【0048】
本発明では、指標高分子の検出は衛生処理を行う箇所及び/又は衛生処理条件を決定するために実施される。本発明では、指標高分子の検出は衛生処理を行う毎に実施してもよいが、毎回行う必要はない。また、例えば、本発明によって決定された箇所及び/又は条件の情報をもとに、場所ごとの衛生処理の種類、程度、頻度などの処理方法をマニュアル化しておけば、以後は、その場所の用途などが大きく変動しない限り、必ずしも指標高分子の検出を行わなくても、高度に衛生的な処理を持続して実施することができる。また、衛生処理を行う箇所及び/又は衛生処理条件を一度決定すれば、指標高分子の検出は定期的、あるいは非定期的に実施し、決定された衛生処理方法の品質、効果を確認する程度でも差し支えない。
【0049】
本発明の決定方法を利用して、例えば、前記した建造物、公共交通期間及びこれらの備品などを対象として、衛生処理の支援を行うことができる。すなわち、衛生処理の実行者に対して、本発明で決定された衛生処理方法の情報を提供して、所定の衛生処理を確実に且つ効率的に実行させることができる。
【0050】
本発明のより具体的な態様として、対象領域における指標高分子の検出を行い、指標高分子が検出された箇所をウイルス及び/又は細菌による汚染の可能性がある箇所として決定し、指標高分子の検出結果に基づいて、決定された前記箇所に施す衛生処理の条件を決定する、衛生処理方法の決定方法が挙げられる。この方法には、前記した本発明の各決定方法で述べた事項を適宜適用することができる。
本発明のより具体的な他の態様として、建造物、例えば、屋内及び/又は屋外における指標高分子の検出を行い、指標高分子が検出された箇所を、ウイルス及び/又は細菌による汚染の可能性がある箇所として決定し、指標高分子の検出結果に基づいて、決定された前記箇所に施す衛生処理の条件を決定する、衛生処理方法の決定方法が挙げられる。この方法には、前記した本発明の各決定方法で述べた事項を適宜適用することができる。
【0051】
本発明により、前記本発明の決定方法で衛生処理を行う箇所及び衛生処理の条件の少なくとも何れかを決定し、当該決定に基づいて衛生処理を行う、衛生処理方法が提供される。
すなわち、本発明の衛生処理方法は、
(1)本発明の決定方法により、衛生処理を行う箇所を決定し、決定された箇所の衛生処理を行う、
(2)本発明の決定方法により、衛生処理の条件を決定し、決定された条件で衛生処理を行う、又は
(3)本発明の決定方法により、衛生処理を行う箇所及び衛生処理の条件を決定し、決定された箇所の衛生処理を決定された条件で行う、
衛生処理方法である。
本発明の衛生処理方法には、本発明の決定方法で述べた事項を適宜適用することができる。本発明の衛生処理方法もまた衛生処理は衛生処理剤を用いて行うことが好ましい。衛生処理及び衛生処理剤の具体例や好適例なども、本発明の決定方法で述べたものを適用することができる。例えば、本発明の衛生処理方法では、指標高分子が、たんぱく質、糖たんぱく質、核酸及び多糖から選ばれる少なくとも一つであってよい。また、本発明の衛生処理方法では、指標高分子が、エラスターゼ及びムチンから選ばれる少なくとも一つであってよい。
【0052】
本発明により、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定する、推定方法が提供される。
また、本発明により、環境における指標高分子の検出を行い、検出結果に基づいて、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所を推定し、感染経路、すなわち当該危害ウイルス及び/又は危害菌による感染経路を推定する、推定方法が提供される。
ここでの感染経路は、人への感染経路であってよい。また、感染経路は、既に発生した感染についての経路、これから予想される感染についての経路のいずれであってもよい。
なお、本発明でいう推定方法は、初めての環境においても、過去データの集積に伴って、経験的な知見或いはAIなどを介して、危害ウイルス及び/又は危害菌が存在する可能性の高い箇所ないし感染経路を推定することも含む。また推定した上で指標高分子の検出を行ってもよい。
これらの方法には、前記した本発明の各決定方法で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、これらの方法では、指標高分子が、たんぱく質、糖たんぱく質、核酸及び多糖から選ばれる少なくとも一つであってよい。また、これらの方法では、指標高分子が、エラスターゼ及びムチンから選ばれる少なくとも一つであってよい。
更に、これらの方法でも、危害ウイルスがノンエンベロープ型又はエンベロープ型ウイルスであってもよく、特にノンエンベロープ型ウイルスであってもよい。また、これらの方法でも、危害菌が大腸菌であってもよい。
【0053】
本発明により、対象領域における指標高分子の検出を行う手段と、該手段により取得された指標高分子の検出結果により決定された衛生処理箇所の処理に用いる薬剤と、を含む、衛生処理キットが提供される。前記指標高分子の量を測定する手段は、例えば、イムノクロマト法、酵素免疫測定法(EIA法、ELISA法)、免疫沈降法、イムノブロッティング、酵素活性測定などが挙げられる。また、前記薬剤は、例えば、洗浄剤、漂白剤、消毒剤、殺ウイルス剤、抗ウイルス剤、殺菌剤、抗菌剤などが挙げられる。このキットには、前記した本発明の各方法で述べた事項を適宜適用することができる。例えば、このキットでは、指標高分子が、たんぱく質、糖たんぱく質、核酸及び多糖から選ばれる少なくとも一つであってよい。また、このキットでは、指標高分子が、エラスターゼ及びムチンから選ばれる少なくとも一つであってよい。
【0054】
本発明により、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法であって、
(a)環境内の一又は複数の箇所を特定するステップであって、下記(i)~(iii)のステップを含むステップと、
(i)定義された領域内の前記一又は複数の箇所を特定するために実在物の設置箇所を特定できる位置データを生成するステップ、
(ii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データを記録するステップ、及び
(iii)前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データとリンクしている実在物を位置及び部位に分別して記録するステップ、
(b)前記環境内の一又は複数の箇所から検出された、糞便に含まれる人体由来の高分子化合物(以下、指標高分子という)の検出結果を記録するステップと、
(c)生成された検出結果を前記(a)の(iii)で記録した実在物の分別した位置及び部位別に記録するステップと
(d)(c)の記録を前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データと併せて表示するステップと、
を備える、衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法が提供される。
本発明の汚染状況の表示方法は、情報処理装置(PC、スマートフォンなど)で行うことが好ましい。すなわち、各ステップにおける各データの記録は、情報処理装置で行うことが好ましい。本発明の衛生処理の候補箇所における汚染状況の表示方法の手順の概略を図1に示した。図1中、STはステップの略である。図1中、ST(a)-(i)、ST(a)-(ii)、及びST(a)-(iii)により、図示しないステップ(a)が実行される。
【0055】
ステップ(a)は、環境内の一又は複数の箇所を特定するステップであり、環境における衛生処理の候補となる箇所を適宜選定する。例えば、前記箇所として、室内の物品、更にトイレ内の物品を選択できる。
ステップ(i)〔図1中、ST(a)-(i)〕は、定義された領域内の前記一又は複数の箇所を特定するために実在物の設置箇所を特定できる位置データを生成するステップである。前記領域は、例えば、室内の所定領域であってよい。前記実在物は、例えば、室内の物品、更にトイレ内の物品が挙げられる。位置データは、例えば、それらの物品の室内の位置を示すデータである。
ステップ(ii)〔図1中、ST(a)-(ii)〕は、前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データを記録するステップである。
ステップ(iii)〔図1中、ST(a)-(iii)〕は、前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データとリンクしている実在物を位置及び部位に分別して記録するステップである。例えば、室内で同じ属性の物品が複数存在する場合、それを分別して個々に情報を作成して記録する。具体的には、室内に椅子が2脚あるような場合に、椅子A、椅子Bのように振り分けてそれぞれの位置データを記録する。更に、それぞれの椅子が2つの肘掛けを有する場合は、肘掛けA1、肘掛けA2のように細分化して位置データを作成することもできる。もちろん、この処理方法は、他の実在物(物品など)に適用することができる。
【0056】
ステップ(b)〔図1中、ST(b)〕は、前記環境内の一又は複数の箇所から検出された指標高分子の検出結果を記録するステップである。指標高分子の検出は、ステップ(a)のステップ(iii)で分別した実在物の位置及び部位において行う。検出結果は、例えば、本発明の衛生処理箇所の決定方法で採用する検出方法により取得することができる。
【0057】
ステップ(c)〔図1中、ST(c)〕は、生成された検出結果を、ステップ(a)のステップ(iii)で記録した実在物の分別した位置及び部位別とリンクさせて記録するステップである。このステップ(c)により、所定位置の実在物における検出結果、及び所定位置の実在物の所定部位における検出結果が記録され、実在物の位置及び部位と、検出結果とが連係する。
【0058】
ステップ(d)〔図1中、ST(d)〕は、ステップ(c)の記録を、前記環境内の前記一又は複数の箇所の位置データと併せて表示するステップである。表示は、例えば、パソコン用外部モニターやスマートフォン画面などの情報表示端末で行われる。
【0059】
例えば、図1では、ST(a)-(i)~ST(d)を1つの単位として、予め定めた所定の回数となるまでST(a)-(i)~ST(d)を繰り返し行い、所定の回数に達した後に終了とすることもできる。
また、例えば、図1では、ST(a)-(i)~ST(d)を1つの単位として、予め定めた所定の間隔でST(a)-(i)~ST(d)を繰り返し行い、所定の時間に達した後に終了とすることもできる。
【0060】
本発明により、前記本発明の表示方法で表示された衛生処理の候補箇所に基づいて衛生処理箇所を決定し、衛生処理箇所として表示する、衛生処理箇所の表示方法が提供される。本発明の衛生処理箇所の表示方法は、情報処理装置(PC、スマートフォンなど)で行うことが好ましい。本発明の衛生処理箇所の表示方法では、前記ステップ(a)で特定された環境内の一又は複数の箇所について、測定時期を変えて取得した複数の衛生処理の候補箇所のデータに基づいて衛生処理箇所を決定することができる。
【0061】
本発明の衛生処理の候補箇所の表示方法及び/又は衛生処理箇所の表示方法は、本発明の衛生処理箇所の決定方法、衛生処理条件の決定方法、衛生処理方法の決定方法及び推定方法に組み込んで実施することができる。
なお、本発明により表示された結果は、必要に応じて紙媒体などに印刷して出力することができる。また、表示された結果の電子データを、適当な記憶媒体に保存することができる。また、表示された結果の電子データを、情報通信網(インターネット)を用いて、二次的に利用する、例えば、衛生処理の実施方案の作成、前記実施方案に基づく衛生処理の手順指導などのサービスに利用することができる。
【実施例0062】
企業のオフィスを対象とし、糞便に含まれる人体由来の高分子化合物であるエラスターゼとカルプロテクチンの検出を行った。検出箇所は、表1の通りとした。各検査箇所で25cmの領域を、0.005%Tween80(非イオン界面活性剤)溶液を含浸させた清潔な綿棒でふき取とった。次いで、拭き取った綿棒を0.5mLの0.005%Tween80溶液中に浸し、よく揉み出して汚れを抽出した。CLOUD-CLONE CORP.製、ELISA Kit for Pancreatic Elastase 1 (ELA1)(品番:SEB483Hu)を用い、添付の説明書に従って抽出液からエラスターゼを検出した。また、Hycult Biotech製、Calprotectin,Human,ELISA kit(品番:HK379)を用い、添付の説明書に従って抽出液からカルプロテクチンを検出した。エラスターゼ、カルプロテクチン抽出用のサンプルは異なるトイレで採取した。それぞれの検出量から、以下の基準でノロウイルスによる汚染リスクを判定した。結果を表1に示す。
<指標高分子がエラスターゼの場合>
エラスターゼ検出量9.55pg以上:リスク高
エラスターゼ検出量9.55pg未満:リスク中
エラスターゼ不検出:リスク低
<指標高分子がカルプロテクチンの場合>
カルプロテクチン検出量0.311pg以上:リスク高
カルプロテクチン検出量0.311pg未満:リスク中
カルプロテクチン不検出:リスク低
【0063】
【表1】
【0064】
例えばノロウイルスは糞便1g中に10億個のウイルスが含まれ、10~100個で感染が成立すると知られている(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000105093.pdf;『10億個(109/g)のノロウイルスの量とは』厚生労働省ホームページより)。つまり、10~100ngの糞便により感染が成立すると算出される。一方、便中のエラスターゼは平均955μg/gとの情報(竹田ら「便中エラスターゼ-1測定の臨床的意義」、検査と技術、株式会社医学書院、2001年9月、29巻10号、pp.1153-1159)より、10~100ngの糞便には平均9.55~95.5pgのエラスターゼが含まれていることが算出される。したがって、指標高分子がエラスターゼの場合は、リスクの判定基準は前記の通りに設定し、エラスターゼ量が9.55pg以上検出された箇所は特に重点的に衛生処理が必要な箇所と判断できた。
【0065】
カルプロテクチンは健常者の糞便中平均濃度が31.1μg/gであったとの報告(Nakamuraet al. (2018) Usefulness of fecal calprotectin by monoclonal antibody testingin adult Japanese with inflammatory bowel diseases: a prospective multicenterstudy)を基に、前記エラスターゼの例と同様に計算し、リスクの判定基準を前記の通りに設定した。
【0066】
ここで、例えば特許第4469762号公報などによると、カルプロテクチンは角層からも検出されることから、表1において肌の接触が多いと考えられる便座上面、温水洗浄便座の操作ボタン、ドアの鍵、トイレットペーパーホルダー、ハンドソープのポンプでは肌由来のカルプロテクチンが付着していた可能性も存在する。したがって糞便由来の成分による汚染リスクをより精度よく判定する場合は、指標高分子はエラスターゼが好ましい。すなわち、エラスターゼの検出により、意図的に触れる可能性の低いトイレの個室の壁や、オフィス内に設置されたアルコール消毒剤のポンプといったトイレ外であっても糞便による汚染の可能性をより精度よく判定できる。
【0067】
<配合例>
表2~4に、本発明にかかわる衛生処理に使用できる衛生処理剤の配合例を示す。これらの衛生処理剤を用いて、本発明の衛生処理方法を行うことができる。ただし、衛生処理剤はこれらに限定されない。
表2は、主に不織布などのシート材料に含浸して用いられる処理剤であり、これを用いてシート状の衛生処理剤製品を得ることができる。シート状の衛生処理剤製品は、処理箇所への衛生処理剤の接触と清拭を行うのに適している。
表3は、主にスプレーなどで噴霧して用いられる処理剤であり、これを用いてスプレー式の衛生処理剤製品を得ることができる。スプレー式の衛生処理剤製品は、処理箇所に衛生処理剤を効率的に接触(噴霧)させるのに適している。スプレー式の衛生処理剤製品で衛生処理剤を接触させた後は、必要に応じて不織布、スポンジなどの可撓性材料で、処理箇所の清拭を行ってもよい。
表4は、主に洗浄と殺菌を目的として用いられる処理剤であり、製品の形態は種々取り得る。例えば、前記のようなシート状の衛生処理剤製品やスプレー式の衛生処理剤製品に用いることができる。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
【表4】
【0071】
表2~4で用いた成分(一部)は以下のものである。
・アンヒトール20N::花王株式会社製、ラウリルジメチルアミンオキサイド
・アンヒトール20AB::花王株式会社製、ラウリン酸アミドプロピルベタイン
・ネオペレックスGS:花王株式会社製、アルキルベンゼンスルホン酸
・エマール20CS:花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
・2級アルコールEO3モル:2級アルコール(炭素数12~14)にエチレンオキシドが平均3モル付加した非イオン界面活性剤、ソフタノール30、株式会社日本触媒製
・アルキルグリコシド:AG-124、花王(株)製、非イオン界面活性剤
・レオドールTW-L120:花王株式会社製、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート
・ラウリルアミンEO付加物(2モル):ラウリルアミンにエチレンオキシドが平均で2モル付加した非イオン界面活性剤
・ペネトールGE-EH:花王株式会社製、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル
・サニゾールB-50:花王株式会社製、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド
・BDG:ブチルジグリコール(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)日本乳化剤株式会社製、溶剤
・MFG:プロピレングリコールモノメチルエーテル、日本乳化剤株式会社製、溶剤
・ベタインポリマー:特開2018-199770号の実施例、製造例1の方法で製造された共重合体
・カーボポールETD2020 PLYMER:Lubrizol Advanced Materials社製、カルボキシビニルポリマー
・防腐剤:ケーソンCG、デュポン社製
図1