(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182298
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】鉄筋籠の建て込み方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20231219BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20231219BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
E02D5/30 Z
E04G21/12 105B
E04C5/18 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095826
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 慎一
【テーマコード(参考)】
2D041
2E164
【Fターム(参考)】
2D041AA01
2D041DA03
2D041EB10
2E164CA01
2E164CA03
2E164CA11
2E164CA37
(57)【要約】
【課題】空頭制限があっても好適に適用でき、孔壁の土砂の削り落としも抑制できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供する
【解決手段】鉄筋籠1は、帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体2を有する伸縮式のものであり、籠体2には、籠体2の周方向に沿った補強リング4aが、籠体2の軸方向に間隔を空けて3段以上に設けられる。この鉄筋籠1を掘削孔100に建て込む際は、籠体2の軸方向に隣り合う補強リング4a同士が連結材5で連結され、且つ籠体2が収縮した状態の鉄筋籠1を掘削孔100の上方に配置した後、最も下に位置する連結材5を取り外し、鉄筋籠1を最上段の補強リング4aから吊り上げ、当該連結材5で連結されていた補強リング4aの間の区間の籠体2を上方に伸展させる工程と、鉄筋籠1を吊り降ろし、伸展させた区間の籠体2を掘削孔100に挿入する工程と、を繰り返す。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体を有する伸縮式の鉄筋籠の掘削孔への建て込み方法であって、
前記籠体には、前記籠体の周方向に沿った補強リングが、前記籠体の軸方向に間隔を空けて3段以上に設けられ、
前記籠体の軸方向に隣り合う前記補強リング同士が連結材で連結され、前記籠体が収縮した状態の鉄筋籠を、前記籠体の軸方向が鉛直方向となるように最上段の前記補強リングから吊って掘削孔の上方に配置する工程(a)と、
最も下に位置する前記連結材を取り外し、前記鉄筋籠を最上段の前記補強リングから吊り上げ、当該連結材で連結されていた前記補強リングの間の区間の籠体を上方に伸展させる工程(b)と、
前記鉄筋籠を吊り降ろし、前記伸展させた区間の籠体を前記掘削孔に挿入する工程(c)と、
を有し、
前記工程(b)、(c)を繰り返すことで、前記鉄筋籠を前記掘削孔内に建て込むことを特徴とする鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項2】
前記工程(c)で前記伸展させた区間の籠体を前記掘削孔に挿入した後、当該区間の上側の前記補強リングが平面において回転しないように固定した状態で、前記工程(b)を実施することにより、当該区間の上の区間の籠体を上方に伸展させることを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項3】
前記工程(b)で前記連結材を取り外す際に、当該連結材を取り付けている下側の前記補強リングを吊り支持することを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【請求項4】
前記補強リングは、前記籠体の外側に設けられていることを特徴とする請求項1記載の鉄筋籠の建て込み方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮式の鉄筋籠の建て込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低空頭の施工条件で場所打ちコンクリート杭を施工する場合の工法として、伸縮式の鉄筋籠を用いるものがある。特許文献1~3には伸縮式の鉄筋籠の例が記載されており、籠体を構成する軸方向鋼材に、通常の異形鉄筋に代わって可撓性を有するPC鋼より線(以下、ストランドという)を用い、ストランドと帯鉄筋を、その交差角が可変となるように結合部材により結合し、籠体を捩じることで籠体の伸縮を可能としている。
【0003】
籠体には、籠体の形状を保持するための補強リングが、籠体の両端部を含め、籠体の軸方向に間隔を空けて複数設けられる。補強リングは、平鋼(フラットバー)や形鋼(アングル材や溝形鋼)をリング状に加工したものであり、籠体の周方向に沿って配置される。
【0004】
伸縮式の鉄筋籠を用いた場所打ちコンクリート杭の施工時は、まず、工場において籠体が完全に伸展した状態の鉄筋籠を水平に組み立て、籠体を収縮し固縛した状態でトラックなどの陸送手段により荷卸し地点まで運搬する。そして、鉄筋籠を建て起こし、籠体が伸展した状態で掘削孔内に建て込む。その後、掘削孔にコンクリートを打設することで、場所打ちコンクリート杭が構築される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-048519号公報
【特許文献2】特開2006-132190号公報
【特許文献3】特開2008-214990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
鉄筋籠の建て込み方法として最も単純なものは、鉄筋籠を掘削孔の近傍に建てた状態で静置し、最上段の補強リングをクレーンで吊り上げて籠体を完全に伸展させた後、掘削孔内に吊り降ろす方法である。
【0007】
掘削孔の近傍に空頭制限がなければ上記の方法で建て込みを行うことができるが、空頭制限があると上記の方法で建て込みを行うことが難しい場合もある。その場合は、鉄筋籠の上端部を孔口に仮固定し、最下段の補強リングに玉掛けしたワイヤを巻き下げ、籠体を掘削孔内で下方へと伸展させる。ただしこの方法では、掘削孔内で籠体が回転しながら伸展し、孔壁と接触して土砂を削り落とす可能性がある。
【0008】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、空頭制限があっても好適に適用でき、孔壁の土砂の削り落としも抑制できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した課題を解決するための本発明は、帯筋と、可撓性を有するストランドとを、交差角が可変となるように結合した籠体を有する伸縮式の鉄筋籠の掘削孔への建て込み方法であって、前記籠体には、前記籠体の周方向に沿った補強リングが、前記籠体の軸方向に間隔を空けて3段以上に設けられ、前記籠体の軸方向に隣り合う前記補強リング同士が連結材で連結され、前記籠体が収縮した状態の鉄筋籠を、前記籠体の軸方向が鉛直方向となるように最上段の前記補強リングから吊って掘削孔の上方に配置する工程(a)と、最も下に位置する前記連結材を取り外し、前記鉄筋籠を最上段の前記補強リングから吊り上げ、当該連結材で連結されていた前記補強リングの間の区間の籠体を上方に伸展させる工程(b)と、前記鉄筋籠を吊り降ろし、前記伸展させた区間の籠体を前記掘削孔に挿入する工程(c)と、を有し、前記工程(b)、(c)を繰り返すことで、前記鉄筋籠を前記掘削孔内に建て込むことを特徴とする鉄筋籠の建て込み方法である。
【0010】
本発明によれば、籠体が収縮した状態で、上下の補強リング同士を連結材で連結しておくことで、補強リング同士の相対回転すなわち籠体の伸展が抑制され、連結材を取り外した区間の籠体のみを部分的に伸展させることができる。そのため、上記の建て込み方法により、籠体の部分的な伸展と、伸展した区間の籠体の掘削孔への挿入を繰り返すことで、前記したように籠体を上方へと完全に伸展した後で掘削孔内に挿入する場合と比較して、空頭が低くて済み、空頭制限のある低空頭の施工条件でも適用可能である。また本発明では、伸展した区間の籠体が、鉄筋籠を単に吊り降ろすことで掘削孔に挿入され、その際に籠体が回転することが無く、孔壁の土砂を削り落とすこともない。そのため、鉄筋籠に設けるスペーサの形状を、土砂の削り落としを防止するための複雑な形状にしないで済み、簡易な構成とできるという利点もある。
【0011】
前記工程(c)で前記伸展させた区間の籠体を前記掘削孔に挿入した後、当該区間の上側の前記補強リングが平面において回転しないように固定した状態で、前記工程(b)を実施することにより、当該区間の上の区間の籠体を上方に伸展させることが望ましい。
これにより、伸展させた区間の籠体を掘削孔に挿入した後、その上の区間の籠体を上方に伸展させる場合に、掘削孔内に挿入されている籠体の回転を抑制でき、孔壁の土砂を削り落とすのを防止することができる。
【0012】
前記工程(b)で前記連結材を取り外す際に、当該連結材を取り付けている下側の前記補強リングを吊り支持することが望ましい。前記補強リングは、例えば前記籠体の外側に設けられている。
連結材を取り付けている下側の補強リングを吊り支持することで、当該連結材が負担している荷重を仮受けさせ、当該連結材を容易に取り外すことができる。また籠体の外側の補強リング同士を連結材で連結することにより、連結材の取り外しを鉄筋籠の外側から容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、空頭制限があっても好適に適用でき、孔壁の土砂の削り落としも抑制できる鉄筋籠の建て込み方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】補強リング4(4a、4b)の配置を示す図。
【
図4】連結材5による補強リング4aの連結について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0016】
(1.鉄筋籠1)
図1(a)は、本発明の実施形態に係る伸縮式の鉄筋籠1を示す図である。
図1(a)に示すように、鉄筋籠1は、可撓性を有する軸方向鋼材であるストランド21と、帯筋22とによる籠体2に、補強リング4を取り付けたものである。
【0017】
籠体2では、ストランド21と帯筋22の鉛直面内の交差角が可変となるように、ストランド21と帯筋22とがその交差箇所で結合部材により結合されており、矢印Aに示すように籠体2を捩じることで、
図1(b)、(c)に示すように籠体2が収縮する。一方、
図1(c)の矢印Bで示すように、矢印Aと逆方向に籠体2を回転させると籠体2は伸展する。上記の結合部材については特許文献1~3に記載されており、ここでは説明を省略する。
【0018】
図2(a)は補強リング4(4a、4b)の配置を示す図であり、籠体2の内部を見たものである。
図2(a)に示すように、補強リング4(4a、4b)は、籠体2の軸方向の両端部および両端部の間の中間部において、籠体2の軸方向に間隔を空けて3段以上に設けられる。籠体2の上端部を
図1の矢印A、Bに示すように回転させると、籠体2の伸縮に伴って隣り合う補強リング4a同士が相対回転する。
【0019】
図2(b)は、籠体2の外側の補強リング4aを示す図である。補強リング4aは、鉛直部分41と水平部分42とでL字状に形成された断面を有するリング状の鋼材である。補強リング4aは、例えばアングル材をリング状に加工して形成できる。
【0020】
籠体2の外側の補強リング4aは、鉛直部分41を内側(籠体2側)として籠体2の周方向に沿って配置され、当該鉛直部分41には孔411が形成される。孔411は、補強リング4aとストランド21とを鉛直面内で回転可能に結合する回転結合部材(不図示)を取り付けるために用いられる。鉛直部分41には、ストランド21の本数に応じた数の孔411が周方向に等間隔で設けられる。
【0021】
回転結合部材の一例については特許文献3に記載されているが、簡単に説明すると、ストランド21が挿通されるスリーブの外面に、スタッドボルトなどの軸部材を設けたものであり、当該軸部材を上記の孔411に通し、その先端にナットを締め付けることで、回転結合部材を補強リング4aに取り付けることができる。
【0022】
一方、補強リング4aの水平部分42には、周方向に等間隔で孔421が形成される。この孔421は、後述する連結材を取り付けるために用いられる。
【0023】
孔421は、補強リング4aの水平部分42に、周方向に間隔を空けて複数設けられる。水平部分42には、複数個(本実施形態では12個)の孔421が等間隔で設けられる。各孔421の周方向の位置は、鉛直部分41の孔411の周方向の位置と異ならせることが、孔411、421による断面欠損位置が集中しない点で好ましい。
【0024】
なお、籠体2の内側の補強リング4bは、籠体2の外側の補強リング4aの鉛直部分41と水平部分42の内外を入れ替えた構成を有し、鉛直部分が外側(籠体2側)に配置される。また水平部分には孔が形成されない。その他の構成は外側の補強リング4aと同様である。
【0025】
(2.鉄筋籠1の建て込み方法)
本実施形態では、工場等で製作した鉄筋籠1をトラック等の陸送手段で施工現場あるいはその近辺の荷卸し地点まで搬送し、その後、鉄筋籠1をクレーンで吊った状態で、場所打ちコンクリート杭を構築する掘削孔まで搬送し、掘削孔への建て込みを行う。
【0026】
工場等では、
図3(a)に鉄筋籠1の外面を示すように、籠体2を伸展した(且つ水平に寝かせた)状態で鉄筋籠1を製作した後、籠体2を捩じって
図3(b)に示すように収縮させる。その後、
図3(c)に示すように、籠体2の軸方向に隣り合う補強リング4a同士を連結材5によって連結し、収縮状態の籠体2をバンド等の図示しない固縛材により固縛する。連結材5には、ネジ節鉄筋やねじ棒、PC鋼棒等を利用できるが、加工性を考慮すると、任意の長さに切断して利用できるネジ節鉄筋が好適である。
【0027】
図4(a)は、連結材5の補強リング4aへの取付部を示す図である。連結材5の端部は、補強リング4aの水平部分42の孔421に通され、孔421から突出する連結材5の端部に、ナット51が締め込まれる。孔421の径は連結材5の端部の径より大きいが、ナット51の外径が孔421の径より大きいことにより、連結材5の端部が、ナット51によって補強リング4aの水平部分42に係止される。連結材5の両端部を、隣り合う補強リング4aのそれぞれに上記のようにして取り付けることで、隣り合う補強リング4aが連結材5によって連結される。
【0028】
図4(b)は、連結材5による補強リング4aの連結状態を示す図である。
図4(b)に示すように、籠体2の収縮時において、補強リング4aの水平部分42の孔421の周方向の位置は、隣り合う補強リング4aの間で異なっており、連結材5は、籠体2の軸方向に対して斜めに配置されている。
【0029】
孔421の周方向の位置は、理想的には、隣り合う補強リング4aの間で同じとすることが望ましいが、前記したように、鉄筋籠1の籠体2は、伸展した状態で製作した後、収縮させるため、その際の籠体2の捩じれに伴って補強リング4aも回転する。その回転量を正確に予測することは困難であるため、本実施形態では、補強リング4aの周方向に間隔を空けて複数の孔421を設けておき、連結材5が籠体2の軸方向に対し斜めになることを許容しつつ、後述するように籠体2が伸展するときには連結材5が籠体2の軸方向に沿って配置された状態に推移するように、隣り合う補強リング4aのそれぞれについて、周方向の位置が互いに近い、適切な孔421を選択して連結材5の取り付けを行う。
【0030】
連結材5は、例えば籠体2の断面(籠体2の軸方向と直交する断面)において3~6本設けるものとし、本実施形態では4本としている。ただし、連結材5の本数は、連結材5に使用する鋼材、鉄筋籠1の重量、補強リング4aの孔開けによる断面欠損等を考慮して適宜定めることができる。補強リング4aの孔421の数は、籠体2の断面における連結材5の本数よりも多い数とする。
【0031】
鉄筋籠1は、荷卸し地点において籠体2の軸方向が鉛直方向となるように建て起こした後、
図5に示すように、クレーンから垂下したワイヤなどの吊材L1を最上段の補強リング4aに玉掛けして吊り上げ、最上段の補強リング4aから鉄筋籠1を吊った状態で搬送する。この時、収縮状態の籠体2は、固縛はされているものの若干伸展し、籠体2と補強リング4aが捩じれを解消する方向に回転することで、連結材5は、籠体2の軸方向に沿って配置された状態へと推移する。
【0032】
本実施形態では、上下の補強リング4a同士が連結材5で連結されているため、最上段の補強リング4aから2段目(上から数えた場合の段数をいう。以下同様)の補強リング4aまでの区間H1の鉄筋籠1の重量は、当該区間H1内の連結材5と2段目の補強リング4aによって支持される。
【0033】
同様に、2段目の補強リング4aから3段目の補強リング4aまでの区間H2の鉄筋籠1の重量は、当該区間H2内の連結材5と3段目の補強リング4aによって支持され、3段目の補強リング4aから最下段の補強リング4aまでの区間H3の鉄筋籠1の重量は、当該区間H3内の連結材5と最下段の補強リング4aによって支持される。結果、本実施形態では、鉄筋籠1の全重量が籠体2の下端部に作用することがなく、籠体2の下端部において、ストランド21と帯筋22の結合部材等が損傷することがなくなる。
【0034】
クレーンで搬送された鉄筋籠1は、
図6(a)に示すように、籠体2の軸方向が鉛直方向となった状態で掘削孔100の上方に配置され、さらに、前記のクレーンによって吊り支持された吊り天秤7から垂下したワイヤなどの吊材L2が、最下段の補強リング4aに玉掛けされる。
【0035】
この吊材L2を、吊材L2が緊張するまで巻き上げると、最下段の補強リング4aが吊材L2によって吊り支持されることで、区間H3の連結材5(最も下に位置する連結材5)の負担荷重が吊材L2で仮受けされるので、この状態で、
図6(b)に示すように区間H3の連結材5を取り外す。
【0036】
このように、区間H3の連結材5を取り付けている下側の補強リング4a(最下段の補強リング4a)を、吊材L2によって吊り支持することで、区間H3の連結材5の取り外しを容易に行うことができる。
【0037】
次に、
図6(c)に示すように、最上段の補強リング4aに玉掛けした吊材L1を巻き上げ、鉄筋籠1を最上段の補強リング4aから吊り上げることで、連結材5を取り外した区間H3の籠体2を上方に伸展させる。この時、当該連結材5で連結されていた最下段の補強リング4aと3段目の補強リング4aは、籠体2の伸展に伴って相対回転する。
【0038】
一方、区間H3の上方の区間H1、H2については、上下の補強リング4a同士の相対回転すなわち籠体2の伸展が、上下の補強リング4a間の連結材5によって防止される。
【0039】
そのため、最下段の補強リング4aを平面において回転しないように固定しておくと、区間H1、H2の籠体2は、3段目の補強リング4aの回転に伴って、収縮した状態のまま一体に回転しながら上昇する。最下段の補強リング4aの固定は、例えば掘削孔100の孔口に架け渡したかんざし(不図示)に補強リング4aをボルト等で仮接合することで行うことができるが、補強リング4aの固定手段はこれに限らない。またかんざし等の固定手段は、区間H3の籠体2を完全に伸展させた後、撤去する。
【0040】
区間H3の籠体2が完全に伸展すると、鉄筋籠1の全重量は、最上段の補強リング4aから連結材5を介して吊り支持され、吊材L2は緩む。その後、最下段の補強リング4aから緩んだ吊材L2を玉外しし、
図7(a)に示すように、最上段の補強リング4aを吊っている吊材L1を巻き下げ、鉄筋籠1を吊り降ろし、伸展した区間H3の籠体2を掘削孔100内に挿入する。本実施形態では鉄筋籠1を単に吊り降ろすことで区間H3の籠体2が掘削孔100内に挿入されるので、籠体2が回転して孔壁を削り落とすことがない。
【0041】
その後、
図7(b)に示すように、3段目の補強リング4aに吊材L2を玉掛けし、当該吊材L2を緊張するまで巻き上げ、3段目の補強リング4aを吊材L2によって吊り支持した状態で、当該補強リング4aと2段目の補強リング4aの間の区間H2の連結材5(この時点で、最も下に位置する連結材5)を取り外す。
【0042】
その後、
図7(c)に示すように、吊材L1を巻き上げて鉄筋籠1を最上段の補強リング4aから吊り上げ、連結材5を取り外した区間H2の籠体2を伸展させる。
図6(c)と同様、連結材5で連結されていた3段目の補強リング4aと2段目の補強リング4aは、籠体2の伸展に伴って相対回転するが、区間H2の上方の区間H1については、上下の補強リング4a同士の相対回転すなわち籠体2の伸展が、上下の補強リング4a間の連結材5によって防止される。
【0043】
そのため、3段目の補強リング4a(区間H3の上側の補強リング4a)を、前記と同様、かんざし等の固定手段により平面において回転しないように固定しておくと、区間H1の籠体2は、2段目の補強リング4aの回転に伴って、収縮した状態のまま回転しながら上昇する。その一方で、掘削孔100内に位置する区間H3の籠体2は回転せず、孔壁を削り落とすことはない。
【0044】
こうして区間H2の籠体2が完全に伸展すると、鉄筋籠1の全重量は、最上段の補強リング4aから連結材5を介して吊り支持され、吊材L2が緩む。3段目の補強リング4aから緩んだ吊材L2を玉外しし、
図7(d)に示すように、最上段の補強リング4aを吊っている吊材L1を巻き下げ、鉄筋籠1を吊り降ろし、伸展した区間H2の籠体2を掘削孔100内に挿入する。
【0045】
以下、
図7(a)~
図7(d)の手順を繰り返し、籠体2の伸展した区間を順次、掘削孔100内に建て込んでいくことで、伸展状態の籠体2全体が掘削孔100内に建て込まれる。その後、掘削孔100にコンクリートを打設することで、場所打ちコンクリート杭を構築することが可能である。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、籠体2が収縮した状態で、上下の補強リング4a同士を連結材5で連結しておくことで、補強リング4a同士の相対回転すなわち籠体2の伸展が抑制され、連結材5を取り外した区間の籠体2のみを部分的に伸展させることができる。そのため、本実施形態の建て込み方法により、籠体2の部分的な伸展と、伸展した区間の籠体2の掘削孔100への挿入を繰り返すことで、前記したように籠体2を上方へと完全に伸展した後で掘削孔100内に挿入する場合と比較して、空頭が低くて済み、空頭制限のある低空頭の施工条件でも適用可能である。また本実施形態では、伸展した区間の籠体2が、鉄筋籠1を単に吊り降ろすことで掘削孔100に挿入され、その際に籠体2が回転することが無く、孔壁の土砂を削り落とすこともない。また鉄筋籠1には、孔壁との離隔を確保するためのスペーサ(不図示)も設けられるが、本実施形態では、スペーサの形状を、土砂の削り落としを防止するための複雑な形状(例えば、特開2006-274726号公報の
図4など参照)にしないで済み、簡易な構成とできるという利点もある。
【0047】
また本実施形態では、伸展させた区間H3の籠体2を
図7(a)に示すように掘削孔100に挿入した後、当該区間H3の上側の補強リング4a(3段目の補強リング4a)を回転しないように固定することで、
図7(c)に示す工程において、当該区間H3の上の区間H2の籠体2を上方に伸展させる場合に、掘削孔100内に挿入されている籠体2の回転を抑制でき、孔壁の土砂を削り落とすのを防止することができる。
【0048】
また本実施形態では、
図6(b)や
図7(b)に示す工程において連結材5を取り外す際に、当該連結材5を取り付けている下側の補強リング4aを吊材L2によって吊り支持することで、当該連結材5が負担している荷重を仮受けさせ、連結材5を容易に取り外すことができる。また籠体2の外側の補強リング4a同士を連結材5で連結することにより、連結材5の取り外しを鉄筋籠1の外側から容易に行うことができる。
【0049】
しかしながら、本発明は上記の実施形態に限らない。例えば本実施形態では、最下段の補強リング4a等を吊り天秤7から吊材L2で吊っているが、この吊材L2は最初の状態が一番長く、鉄筋籠1の建て込み作業が進行するごとに短くて済むようになっている。また、1度に吊材L2を巻き上げる量も、
図6(b)や
図7(b)に示す工程において連結材5を取り外す際に、吊材L2を緊張状態とするために巻き上げるだけで十分である。
【0050】
そのため、クレーンでなくとも、
図8に示すように、掘削孔100の周囲に簡易なフレーム8を組み立て、フレーム8の天端から垂下したレバーホイストなどの吊材L2によって最下段の補強リング4a等を吊ることも可能であり、この場合も、前記と同様の手順で籠体2を伸展させて建て込むことができる。
【0051】
あるいは、フレーム8の天端から吊り天秤7をレバーホイスト等で吊り、吊り天秤7から垂下した吊材L2によって最下段の補強リング4a等を吊ることもできる。その他、フレーム8の天端に設けた巻上機(不図示)から吊材L1によって最上段の補強リング4aを吊ることも可能であり、吊材L1の巻き上げにより籠体2を伸展させることもできる。
【0052】
また本実施形態では籠体2の外側の補強リング4a間を連結材5で連結したが、籠体2の軸方向に隣り合う籠体2の内側の補強リング4b同士を本実施形態と同様の方法で連結材5により連結することも可能である。ただし、籠体2の内側の連結材5を取り外すのは、籠体2の外側の連結材5を取り外す場合と比較して手間がかかる。
【0053】
また本実施形態では鉄筋籠1をクレーンで吊りながら掘削孔100まで搬送するが、施工現場によっては、ヘリコプターや移動式の搬送用フレームで掘削孔100の近辺まで搬送することも可能である。
【0054】
また本実施形態では鉄筋籠1を場所打ちコンクリート杭の構築に用いるものとしているが、これに限ることはなく、掘削孔100に鉄筋籠1を建て込むような工事全般に適用することが可能であり、例えば深礎等の施工に用いることもできる。
【0055】
以上、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0056】
1:鉄筋籠
2:籠体
4、4a、4b:補強リング
5:連結材
21:ストランド
22:帯筋
100:掘削孔