(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182299
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】聴取装置および聴取装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20231219BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G10K11/178 100
H04R3/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095827
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】松本 光一
(72)【発明者】
【氏名】西島 宏和
(72)【発明者】
【氏名】坂入 裕美
(72)【発明者】
【氏名】谷藤 修士
【テーマコード(参考)】
5D061
5D220
【Fターム(参考)】
5D061FF02
5D220AA50
(57)【要約】
【課題】ノイズキャンセル状態で環境音の変化があった場合、ユーザが環境音を把握できる聴取装置および聴取装置の制御方法を提供すること。
【解決手段】本開示の聴取装置100は、検出した環境音に対応する環境信号を生成する環境音検出部101と、環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成する環境音抑制信号生成部103と、音源信号に環境音抑制信号を重畳した再生信号を出力する再生信号出力部105と、環境信号に基づいて環境音の大きさを監視する監視部102と、を備える。環境音抑制信号生成部103は、監視部102によって環境音の大きさが所定の閾値以上かつ環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、環境音抑制信号の代わりに環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成する。再生信号出力部105は、音源信号に環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出した環境音に対応する環境信号を生成する環境音検出部と、
前記環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成する環境音抑制信号生成部と、
音源信号に前記環境音抑制信号を重畳した再生信号を出力する再生信号出力部と、
前記環境信号に基づいて前記環境音の大きさを監視する監視部と、を備え、
前記環境音抑制信号生成部は、
前記監視部によって前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音抑制信号の代わりに前記環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、
前記再生信号出力部は、
前記音源信号に前記環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する
聴取装置。
【請求項2】
前記環境音抑制信号生成部は、
前記監視部によって前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音抑制信号の振幅を経時的に低下させた後、前記環境音増幅信号の振幅を経時的に増加させる
請求項1に記載の聴取装置。
【請求項3】
前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量に基づいて、前記環境音抑制信号の経時的な低下量と前記環境音増幅信号の経時的な増加量との少なくとも1つを決定する
請求項2に記載の聴取装置。
【請求項4】
前記環境音抑制信号生成部は、
前記監視部によって前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音増幅信号を生成せずに前記環境音抑制信号を停止する
請求項1に記載の聴取装置。
【請求項5】
検出した環境音に対応する環境信号を生成し、
前記環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成し、
音源信号に前記環境音抑制信号を重畳した再生信号を出力し、
前記環境信号に基づいて前記環境音の大きさを監視し、
前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音抑制信号の代わりに前記環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、前記音源信号に前記環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する
聴取装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴取装置および聴取装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズキャンセル型の例えばヘッドフォンやイヤホンなどの聴取装置を装着して歩行する場合、そのノイズキャンセル効果により周囲の状況を認知することが困難である。例えば、特許文献1では、ヘッドセットが、音声出力部と、集音部と、判定部と、報知部と、を備え、集音部は周囲音を集音し、判定部は周囲音に含まれる特定音の音圧変化率が閾値を越えるか否かを判定する。報知部は、判定部の判定結果に基づいて、ユーザに対して所定の報知を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術では、ノイズキャンセル状態でも、危険時に、ガイダンス、警告音声、特定音などの音を用いてユーザに周囲の状況を報知する。しかしながら、特許文献1に係る技術では、ユーザは周囲の音、すなわち環境音を把握できないという課題があった。例えば、環境音はどのような音であるのかユーザが把握できれば、ユーザの危険時の対処の選択肢が増える。
【0005】
本開示は、そのような課題を鑑みることによって、ノイズキャンセル状態で環境音の変化があった場合、ユーザが環境音を把握できる聴取装置および聴取装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の聴取装置は、
検出した環境音に対応する環境信号を生成する環境音検出部と、
前記環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成する環境音抑制信号生成部と、
音源信号に前記環境音抑制信号を重畳した再生信号を出力する再生信号出力部と、
前記環境信号に基づいて前記環境音の大きさを監視する監視部と、を備え、
前記環境音抑制信号生成部は、
前記監視部によって前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音抑制信号の代わりに前記環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、
前記再生信号出力部は、
前記音源信号に前記環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する。
【0007】
本開示の聴取装置の制御方法は、
検出した環境音に対応する環境信号を生成し、
前記環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成し、
音源信号に前記環境音抑制信号を重畳した再生信号を出力し、
前記環境信号に基づいて前記環境音の大きさを監視し、
前記環境音の大きさが所定の閾値以上かつ前記環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、前記環境音抑制信号の代わりに前記環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、前記音源信号に前記環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、ノイズキャンセル状態で環境音の変化があった場合、ユーザが環境音を把握できる聴取装置および聴取装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1および第2の実施形態に係る聴取装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る聴取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図3】第1の実施形態に係る聴取装置において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果の一例を示す図である。
【
図4】第2の実施形態に係る聴取装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】第3の実施形態に係る聴取装置の動作の他の一例を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る聴取装置において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果一例を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る聴取装置において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果の一例を示す図である。
【
図8】第1および第2の実施形態に係るコンピュータの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係る聴取装置100の構成を説明する。
図1は、第1の実施形態に係る聴取装置100の構成の一例を示すブロック図である。聴取装置100は、例えばノイズキャンセル型のイヤホンやヘッドセットである。聴取装置100は、環境音検出部101、監視部102、環境音抑制信号生成部103、音源信号入力部104および再生信号出力部105を備える。
【0012】
環境音検出部101は、マイクなどであり、聴取装置100を装着するユーザの周囲の環境音を検出し、検出した環境音に対応する環境信号を生成する。環境音は、車両の音や人の会話音等である。
監視部102は、環境信号に基づいて環境音の大きさを監視する。具体的には、監視部102は、環境音の大きさが所定の閾値以上であるか否かを判定する。また、監視部102は、環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であるか否かを判定する。
【0013】
環境音抑制信号生成部103は、ユーザが聴く環境音を抑制するための信号、つまり環境信号に対し逆位相となる環境音抑制信号を生成する。ここで、環境音抑制信号生成部103は、監視部102によって環境音の大きさが所定の閾値以上かつ環境音の所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合に次の処理を行う。環境音抑制信号生成部103は、環境音抑制信号の代わりに、ユーザが聴く環境音を増幅させるための信号、つまり環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成する。そして、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号の生成から所定時間経過した後、環境音の大きさが所定の閾値超えを継続していない場合、環境音増幅信号の代わりに環境音抑制信号を生成する。
【0014】
なお、環境音抑制信号生成部103は、監視部102によって環境音の大きさが所定の閾値以上かつ環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、環境音増幅信号を生成せずに環境音抑制信号を停止してもよい。
【0015】
音源信号入力部104は、音楽プレイヤなどの音源から聴取装置100で再生する音源音の信号(以下、音源信号)を入力する。
再生信号出力部105は、スピーカなどであり、音源信号に環境音抑制信号または環境音増幅信号を重畳した再生信号を再生音に変換して出力する。
【0016】
続いて、
図2を用いて、第1の実施形態に係る聴取装置100の動作を説明する。
図2は、第1の実施形態に係る聴取装置100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0017】
図2に示すように、まず、聴取装置100の環境音検出部101は、聴取装置100を装着するユーザの周囲の環境音を検出する(ステップS101)。そして、環境音検出部101は、検出した環境音に対応する環境信号を生成する。
【0018】
次に、環境音抑制信号生成部103は、環境信号の位相を反転し、環境信号と逆位相の環境音抑制信号を生成する(ステップS102)。再生信号出力部105は、音源信号に環境音抑制信号を重畳した再生信号を再生音に変換して出力する。そうすることによって、聴取装置100は、ユーザが聴く再生音内の環境音を打ち消す処理を行う。
【0019】
次に、監視部102は、環境音の大きさが閾値A1以上であるか否かを判定する(ステップS103)。閾値A1は、ユーザの危険を検出するための値が設定される。
【0020】
環境音の大きさが閾値A1以上ではないと判定された場合(ステップS103のNO)、聴取装置100は、ステップS101の処理に戻る。一方、環境音の大きさが閾値A1以上であると判定された場合(ステップS103のYES)、監視部102は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量を検出する(ステップS104)。所定時間Sは例えば500msである。
【0021】
次に、監視部102は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であるか否かを判定する(ステップS105)。所定値A2は、閾値A1と同様に、ユーザの危険を検出するための値が設定される。
【0022】
環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上でないと判定された場合(ステップS105のNO)、聴取装置100は、ステップS101の処理に戻る。一方、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であると判定された場合(ステップS105のYES)、環境音抑制信号生成部103は、環境音抑制信号の代わりに環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成する(ステップS106)。環境音増幅信号の振幅は、ユーザが聴く環境音をどれだけ増幅したいかに応じて各々設定できる。この際、再生信号出力部105は、音源信号に環境音増幅信号を重畳した再生信号を出力する。そうすることによって、聴取装置100は、ユーザが聴く再生音内の環境音を増幅する処理を行う。
【0023】
なお、ステップS106において、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号を生成せずに環境音抑制信号を停止してもよい。
【0024】
次に、監視部102は、ステップS106の処理から所定時間Z経過したか否か判定する(ステップS107)。監視部102は、所定時間Z経過していないと判定した場合(ステップS107のNO)、ステップS107の処理に戻る。一方、監視部102は、所定時間Z経過したと判定した場合(ステップS107のYES)、環境音の大きさが閾値A1以上か否かを判定する(ステップS108)。環境音の大きさが閾値A1以上と判定された場合(ステップS108のYES)、聴取装置100は、ステップS108の処理に戻る。一方、環境音の大きさが閾値A1以上でないと判定された場合(ステップS108のNO)、聴取装置100は、ステップS101の処理に戻る。
【0025】
続いて、
図3を用いて、第1の実施形態に係る聴取装置100において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果を説明する。
図3(a)~
図3(d)は、第1の実施形態に係る聴取装置100において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果を示す図である。
図3(a)は、単位時間当たりの環境音の大きさを示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境音の大きさ(dB)を示す。
図3(b)は、環境信号の波形を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境信号の振幅(dB)を示す。また、
図3(c)は、環境音抑制信号または環境音増幅信号の波形を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境信号の振幅(dB)を示す。
図3(d)は、ノイズキャンセリング効果を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸はノイズキャンセリング効果(dB)を示す。ノイズキャンセリング効果は、値が小さいほどユーザが聴く再生音声内のノイズ、すなわち環境音が小さいことを示す。
【0026】
図3(a)に示すように、時刻P1で、聴取装置100の監視部102によって環境音の大きさが閾値A1以上であると判定される。時刻P2で、監視部102によって環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であると判定される。
【0027】
図3(b)および
図3(c)に示すように、時刻P2までは、環境音抑制信号生成部103によって環境信号と逆位相の環境音抑制信号が生成される。そして、時刻P2のタイミングで、環境音抑制信号生成部103によって環境信号と同位相の環境音増幅信号が生成される。したがって、
図3(d)に示すように、時刻P2までは、ユーザが聴く環境音がキャンセルされる。時刻P2からは、ユーザは環境音を聴くことができる。
【0028】
上述したように、第1の実施形態に係る聴取装置100は、閾値A1および所定値A2を用いてユーザに危険が迫ったと判定した場合、環境音抑制信号の代わりに、ユーザが聴く環境音を増幅させるための信号、つまり環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成する。したがって、聴取装置100では、ノイズキャンセル状態でも、危険時にユーザが環境音を把握できる。そうすることで、ユーザは、危険に応じて様々な行動を行うことができる。
【0029】
また、特許文献1に係る技術では、あらかじめ特定音とした環境音を検出した場合でしかユーザに対して報知を行うことができなかった。しかしながら、聴取装置100では、ユーザの危険時に検出する環境音は特定音に限られない。
【0030】
(第2の実施形態)
続いて、第2の実施形態に係る聴取装置200の構成を説明する。
第2の実施形態に係る聴取装置200は、第1の実施形態に係る聴取装置100の環境音検出部101、監視部102、環境音抑制信号生成部103、音源信号入力部104および再生信号出力部105を備える。
【0031】
第2の実施形態に係る聴取装置200は、以下の機能を第1の実施形態に係る聴取装置100に追加したものである。
第1の実施形態に係る聴取装置100では、環境音抑制信号生成部103は、ユーザが聴く環境音を抑制するための信号、つまり環境音に対応する環境信号と逆位相の環境音抑制信号を生成する。また、環境音抑制信号生成部103は、監視部102によって環境音の大きさが所定の閾値以上かつ環境音の所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、環境音抑制信号の代わりに、ユーザが聴く環境音を増幅させるための信号、つまり環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成する。
【0032】
一方、第2の実施形態に係る聴取装置200では、環境音抑制信号生成部103は、監視部102によって環境音の大きさが所定の閾値以上かつ環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が所定値以上であると判定された場合、環境音抑制信号の振幅を経時的に低下させた後、環境音抑制信号の代わりに環境音増幅信号を生成し、環境音増幅信号の振幅を経時的に増加させる。さらに、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間当たりの変化量に基づいて、前記環境音抑制信号の経時的な低下量と前記環境音増幅信号の経時的な増加量との少なくとも1つを決定する。
【0033】
また、第1の実施形態に係る聴取装置100では、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号の生成から所定時間経過した後、環境音の大きさが所定の閾値以上でない場合、環境音増幅信号の代わりに環境音抑制信号を生成する。
一方、第2の実施形態に係る聴取装置200では、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号の生成から所定時間経過した後、環境音の大きさが所定の閾値以上でない場合、環境音増幅信号の振幅を経時的に低下させる。その後、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号の代わりに環境音抑制信号を生成し、環境音抑制信号の振幅を経時的に増加させる。
【0034】
続いて、
図4および
図5を用いて、第2の実施形態に係る聴取装置200の動作を説明する。
図4は、第2の実施形態に係る聴取装置200の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、聴取装置200の環境音検出部101は、聴取装置200を装着するユーザの周囲の環境音を検出する(ステップS201)。そして、環境音検出部101は、検出した環境音に対応する環境信号を生成する。
【0035】
次に、環境音抑制信号生成部103は、環境信号の位相を反転し、環境信号と逆位相の環境音抑制信号を生成する(ステップS202)。再生信号出力部105は、音源信号に環境音抑制信号を重畳した再生信号を再生音に変換しユーザに対して出力する。そうすることによって、聴取装置200は、ユーザが聴く再生音内の環境音を打ち消す処理を行う。
【0036】
次に、監視部102は、環境音の大きさが閾値A1以上であるか否かを判定する(ステップS203)。閾値A1は、ユーザの危険を検出するための値が設定される。
【0037】
環境音の大きさが閾値A1以上ではないと判定された場合(ステップS203のNO)、聴取装置100は、ステップS101の処理に戻る。一方、環境音の大きさが閾値A1以上であると判定された場合(ステップS203のYES)、監視部102は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量を検出する(ステップS204)。所定時間Sは例えば500msである。
【0038】
次に、監視部102は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であるか否かを判定する(ステップS205)。所定値A2は、閾値A1と同様に、ユーザの危険を検出するための値が設定される。
【0039】
環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上でないと判定された場合(ステップS205のNO)、聴取装置200は、ステップS201の処理に戻る。一方、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であると判定された場合(ステップS205のYES)、聴取装置200の環境音抑制信号生成部103は、生成されている環境音抑制信号の振幅を経時的にゼロまで低下させる(ステップS206)。環境音抑制信号生成部103によって最終的に低下される環境音抑制信号の振幅は、ゼロに限られず、各々設定できる。環境音抑制信号の振幅を低下させる時間は、例えば所定時間Sと同程度の時間である。
【0040】
次に、環境音抑制信号生成部103は、環境音抑制信号の代わりに環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、環境音増幅信号の振幅をゼロから経時的に所定値まで増加させる(ステップS207)。環境音抑制信号生成部103によって最初に生成される環境音増幅信号の振幅は、ゼロに限られず、各々設定できる。当該所定値は、環境音をどれだけ増幅したいかによって各々設定できる。環境音抑制信号の振幅を増加させる時間は、例えば所定時間Sと同程度の時間である。
【0041】
なお、ステップS207において、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号を生成せずに環境音抑制信号を停止してもよい。
【0042】
次に、監視部102は、ステップS206の処理から所定時間Z経過したか否か判定する(ステップS208)。監視部102は、所定時間Z経過していないと判定した場合(ステップS208のNO)、ステップS208の処理に戻る。一方、監視部102は、所定時間Z経過したと判定した場合(ステップS208のYES)、環境音の大きさが閾値A1以上か否かを判定する(ステップS209)。環境音の大きさが閾値A1以上と判定された場合(ステップS209のYES)、聴取装置200は、ステップS209の処理に戻る。一方、環境音の大きさが以上でないと判定された場合(ステップS209のNO)、聴取装置200は、ステップS201の処理に戻る。
【0043】
その後、ステップS202では、環境音抑制信号生成部103は、環境音増幅信号の代わりに環境音抑制信号を生成する際、環境音増幅信号の振幅を経時的にゼロまで低下させ、生成された環境音抑制信号の振幅をゼロから経時的に所定値まで増加させてもよい。
【0044】
図5は、第2の実施形態に係る聴取装置200の動作の他の一例を示すフローチャートである。
図5に示す一例では、聴取装置200は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に基づいて、環境音抑制信号の振幅を経時的に低下させる量と環境音増幅信号の振幅を経時的に増加させる量との少なくとも1つを決定する動作をさらに行う。
【0045】
まず、聴取装置200は、ステップS301の処理~ステップS305の処理を実行する。聴取装置200が実行するステップS301の処理~ステップS305の処理は、上述したステップS201の処理~ステップS205の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0046】
次に、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であると判定された場合(ステップS305のYES)、聴取装置200の環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて、環境音抑制信号の振幅を経時的にゼロまで低下させる(ステップS306)。具体的には、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて、環境音抑制信号の振幅を低下させる単位時間当たりの低下量を決定する。ここで、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が大きい程、単位時間当たりの低下量を大きくする。一方、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が小さい程、単位時間当たりの低下量を小さくする。そして、環境音抑制信号生成部103は、決定された単位時間当たりの低下量で環境音抑制信号の振幅をゼロまで低下させる。
【0047】
次に、環境音抑制信号生成部103は、環境音抑制信号の代わりに環境信号と同位相の環境音増幅信号を生成し、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて、環境音増幅信号の振幅を経時的にゼロから所定値まで増加させる(ステップS307)。具体的には、環境音抑制信号生成部103は、環境音抑制信号の代わりに環境音増幅信号を生成する。そして、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて、環境音増幅信号の振幅を増加させる単位時間当たりの増加量を決定する。ここで、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が大きい程、単位時間当たりの増加量を大きくする。一方、環境音抑制信号生成部103は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が小さい程、単位時間当たりの増加量を小さくする。さらに、環境音抑制信号生成部103は、決定された単位時間当たりの増加量で環境音増幅信号の振幅をゼロから所定値まで増加させる。
【0048】
次に、聴取装置200は、ステップS308の処理~ステップS309の処理を実行する。聴取装置200が実行するステップS308の処理~ステップS309の処理は、上述したステップS208の処理~ステップS209の処理と同様の処理であるため、説明を省略する。
【0049】
続いて、
図6-
図7を用いて、第2の実施形態に係る聴取装置200において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果を説明する。
図6(a)~
図6(d)および
図7(a)~
図7(d)は、第2の実施形態に係る聴取装置200において環境音から生成される環境音抑制信号または環境音増幅信号とそれらによるノイズキャンセル効果を示す図である。
図6(a)および
図7(a)は、単位時間当たりの環境音の大きさを示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境音の大きさ(dB)を示す。
図6(b)および
図7(b)は、環境信号の波形を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境信号の振幅(dB)を示す。また、
図6(c)および
図7(c)は、環境音抑制信号または環境音増幅信号の波形を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸は環境信号の振幅(dB)を示す。
図6(d)および
図7(d)は、ノイズキャンセリング効果を示すグラフである。横軸は時間(ms)、縦軸はノイズキャンセリング効果(dB)を示す。ノイズキャンセリング効果は、値が小さいほどユーザが聴く再生音声内のノイズ、すなわち環境音が小さいことを示す。
【0050】
図6(a)に示すように、時刻P1で、聴取装置200の監視部102によって環境音の大きさが閾値A1以上であると判定される。時刻P2で、監視部102によって環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量が所定値A2以上であると判定される。
【0051】
図6(b)および
図6(c)に示すように、時刻P2までは、環境音抑制信号生成部103によって環境信号と逆位相の環境音抑制信号が生成される。時刻P2のタイミングからは、環境音抑制信号生成部103によって環境音抑制信号の振幅は経時的にゼロまで低下される。ここで、環境音抑制信号の振幅の単位時間当たりの低下量R1は、環境音抑制信号生成部103によって環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて決定されてもよい。その後、環境音抑制信号生成部103によって環境音抑制信号の代わりに環境信号と同位相の環境音増幅信号が生成され、環境音増幅信号の振幅はゼロから経時的に所定値まで増加される。ここで、環境音増幅信号の単位時間当たりの増加量R2は、環境音抑制信号生成部103によって環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に応じて決定されてもよい。したがって、
図6(d)に示すように、時刻P2までは、ユーザの聴く環境音がキャンセルされる。時刻P2からは、ユーザは環境音を聴くことができる。ここで、ユーザは時刻P2から時間経過と共に徐々に環境音を聴くことができる。
【0052】
続いて、
図7(a)に示すように、時刻P3では、聴取装置200の監視部102によって環境音増幅信号の生成から所定時間Z経過した後、環境音の大きさが閾値A1以上ではないと判定される。
図7(b)および
図7(c)に示すように、時刻P3の後、環境音抑制信号生成部103によって環境音増幅信号の振幅が経時的に低下される。その後、環境音抑制信号生成部103によって環境音増幅信号の代わりに環境音抑制信号が生成され、環境音抑制信号の振幅が経時的に増加される。したがって、
図7(d)に示すように、時刻P3から時間経過と共に、ユーザは環境音を徐々に聴くことができなくなる。
【0053】
上述したように、第2の実施形態に係る聴取装置200は、環境音抑制信号の振幅を経時的に低下させた後、環境音抑制信号の代わりに環境音増幅信号を生成し、環境音増幅信号の振幅を経時的に増加させる。したがって、聴取装置200では、ユーザが急に環境音を聴き、再生音に違和感を覚える可能性を低減することができる。
【0054】
加えて、聴取装置200は、環境音の大きさの所定時間S当たりの変化量に基づいて、環境音抑制信号の振幅を経時的に低下させる量と環境音増幅信号の振幅を経時的に増加させる量との少なくとも1つを決定する。例えば車両が急にユーザに迫るなどユーザに急に危険が迫る場合、環境音の大きさの所定時間当たりの変化量が大きくなる。聴取装置200では、ユーザは、急な危険がユーザに迫った際に迅速に環境音を聴くことができる。
【0055】
続いて、
図8を用いて、第1の実施形態に係る聴取装置100、第2の実施形態に係る聴取装置200のコンピュータ500のハードウェア構成の一例を説明する。
図8は、コンピュータ500のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8に示すように、コンピュータ500は、プロセッサ501と、メモリ502とを有している。プロセッサ501は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ501は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ502は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ502は、プロセッサ501から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ501は、図示されていないI/Oインターフェイスを介してメモリ502にアクセスしてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における各構成の機能(処理)を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ502に実施形態における方法を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ502に格納されたプログラムをプロセッサ501で実行することにより実現してもよい。
【0057】
これらのプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0058】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
100、200 聴取装置
101 環境音検出部
102 監視部
103 環境音抑制信号生成部
104 音源信号入力部
105 再生信号出力部
500 コンピュータ
501 プロセッサ
502 メモリ