(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182303
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】クレーン稼働計及びそのクレーン稼働計の機能を用いたクレーンの保守サービス方法
(51)【国際特許分類】
B66C 13/16 20060101AFI20231219BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
B66C13/16 F
B66C13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095832
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
(57)【要約】 (修正有)
【課題】吊り上げた荷重値に対する稼働回数、稼働時間と移動距離の積算値を管理し、クレーンの各構成部品の交換周期と次回の交換時期を把握するためのクレーン稼働計及びクレーンの保守サービス方法を提供すること。
【解決手段】クレーンの吊荷の荷重値を検出する荷重計測装置部を有し、クレーンの0tから定格荷重までの間をある間隔の荷重範囲WPに分割区分し、クレーンが巻上げ方向に動作する度に荷重計測を行い、計測された荷重値から最大荷重値を一時記憶し、吊荷を下ろした時に、前記の計測された最大荷重値が属する荷重範囲の分割区分に吊り上げ積算回数を1回積算加算するとともに最大荷重値をリセットし再計測を行う吊り上げ積算回数計を有し、更に巻上げ方向及び巻下げ方向に動作中に測定した荷重値が属する荷重範囲区分の積算時間計と積算距離計に、その時に測定した動作時間と移動距離を積算加算する機能を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンの吊荷の荷重値を検出する荷重計測装置部を有し、
クレーンの0tから定格荷重までの間をある間隔の荷重範囲に分割区分し、
クレーンが巻上げ方向に動作する度に荷重計測を行い、計測された荷重値から最大荷重値を一時記憶し、吊荷を下ろした時に、前記の計測された最大荷重値が属する荷重範囲の分割区分に吊り上げ積算回数を1回積算加算するとともに最大荷重値をリセットし再計測を行う吊り上げ積算回数計を有し、
更に巻上げ方向及び巻下げ方向に動作中に測定した荷重値が属する前記の荷重範囲の区分の積算時間計と積算距離計に、その時に測定した動作時間と移動距離を積算加算する機能を有する稼働計であって、
該稼働計の計測値を、一定期間毎に、その期間の日付を付加して記憶していく記憶装置部を有し、その記憶装置部に記憶された値を記憶された荷重状況を日付と共に表示する表示部を有することを特徴とするクレーン稼働計。
【請求項2】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向への動作時に、定められた荷重計測回転数まで加速すると一旦加速を停止し、一定速度で荷重値を計測し、その荷重値の計測結果が、既に一時保存されている荷重値データの数値より大きい場合には、既に一時保存されている荷重値データに新たに測定した荷重値の測定結果を上書きし、その後も巻上げ方向への動作の停止と再巻上げ動作を繰り返され、荷重計測回転数に到達する度に荷重計測を行い、その荷重計測値が既に記憶されている一時保存の荷重値のデータの数値より大きければ新たに計測した荷重値を一時保存の荷重値データに上書きし、その後、巻下げ動作或いは、吊荷の釈放動作が行われると、その時点の一時保存の荷重データが、請求項1に記載の荷重範囲の該当する荷重範囲区分の積算回数に1回加算し、積算回数への1回加算が行われることを受けて、一時保存の荷重値データにゼロを書き込むことで荷重範囲毎の吊り上げ回数を積算計測することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項3】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向或いは巻下げ方向に動作を開始すると同時に時間と距離の計測を開始し、その巻上げ動作或いは巻下げ動作が停止した時、その時間と距離の計測を終了し、その終了と同時に、その巻上げ動作中或いは巻下げ動作中に計測されていた荷重値が属する請求項1に記載の荷重範囲の積算動作時間計と積算距離計に、その時の時間計測と距離計測の結果を加算し、巻上げ時間或いは巻下げ時間が短くて荷重計測ができなかった場合の動作時間は、その前に測定されている荷重測定値を採用し、前記の同じ荷重範囲の積算動作時間計と積算距離計にその時間計測と距離計測の結果を加算し、次の荷重計測が行われるまでは、その荷重値を更新しないことを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項4】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、クレーンが巻上げ方向への動作を停止した時に荷重値を計測し、その荷重値の計測結果が、既に一時保存されている荷重値データの数値より大きい場合には、既に一時保存されている荷重値データに新たに計測した荷重値の計測結果を上書きし、その後も巻上げ方向への動作の停止と再巻上げ動作を繰り返され、巻上げ方向への動作を行い停止をする度に荷重計測を行い、その荷重計測値が既に記憶されている一時保存の荷重値のデータの数値より大きければ新たに計測した荷重値を一時保存の荷重値データに上書きし、その後、ロードセルがゼロ荷重或いは風袋荷重付近の荷重を測定した時に、その時点の一時保存の荷重データが、請求項1に記載の荷重範囲に該当する荷重範囲の積算回数に1回加算し、積算回数への1回加算が行われることを受けて、一時保存の荷重値データにゼロを書き込むことで荷重範囲毎の吊り上げ回数を積算計測することを特徴とする請求項
1に記載のクレーン稼働計。
【請求項5】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、クレーンが巻上げ方向及び巻下げ方向に動作中に、ロードセル荷重計から演算装置に常時入力している荷重値を定められたクロック周期毎に荷重値を読み込み、その荷重値が属する請求項1に記載の荷重範囲の積算時間計と積算距離計にクロック周期時間とその時間に速度を掛け合わせた距離を、それぞれ積算時間計と積算距離計に加算することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項6】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向或いは巻下げ方向への動作中に荷重計測を行い、最新の荷重測定値を保持し、横行或いは走行或いは旋回等のそれぞれの水平動作が停止した時の最新の荷重測定値が属する荷重範囲のそれぞれの水平動作の動作回数に1回加算する横行或いは走行或いは旋回等の水平動作それぞれの積算回数計と、その水平動作を開始してから停止するまでの時間と距離を、それぞれの水平動作が停止した時の最新の荷重測定値が属するそれぞれの水平動作の積算時間計と積算距離計にそれぞれの水平動作が動作開始時から停止するまでの時間と距離の計測値を、それらの水平動作が停止した時に加算することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項7】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、横行或いは走行或いは旋回等の水平動作を起動時に測定された荷重値が属する荷重範囲のそれぞれの水平動作の積算回数計に1回加算する積算回数計と、その水平動作が停止するまでの時間と距離の計測結果を、その水平動作が起動した時に測定された荷重値が属する荷重範囲のそれぞれの水平動作の積算時間計と積算距離計に、それぞれの水平動作が停止した時に加算することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項8】
記憶エリアからある日付の各荷重範囲の積算回数計の記憶値を引き出し、その記憶エリアの荷重範囲内のある荷重値と移動体風袋重量の加算値を、定格荷重値と移動体風袋重量の加算値で除算した値をn乗し、その値にその荷重範囲での記憶されたその日付での積算回数計の値を掛け合わせ、そのn乗した各荷重範囲毎の計算結果の数値について、そのn数での全ての荷重範囲の計算結果の総和を取り、その数値をそのn数における繰り返し応力による疲労の劣化係数とし、各n数毎に前記の計算を実施し、それらの計算結果を、引き出した記憶エリアの日付と共に表示することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項9】
記憶エリアからある日付の各荷重範囲の移動距離の記憶値を引き出し、その記憶エリアの荷重範囲内のある荷重値と移動体風袋重量の加算値を、定格荷重値と移動体風袋重量の加算値で除算した値をn乗し、その値にその荷重範囲での記憶されたその日付での移動距離の値を掛け合わせ、そのn乗した各荷重範囲毎の計算結果の数値について、そのn数での全ての荷重範囲の計算結果の総和を取り、その数値をそのn数における摩耗に対する劣化係数とし、各n数毎に前記の計算を実施し、それらの計算結果を、引き出した記憶エリアの日付と共に表示することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項10】
イコライザシーブの揺動回数を、その時に吊り上げている荷重値と共に記録し、荷重率とイコライザシーブの揺動回数を元に算出した値をワイヤロープの劣化係数として表示することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項11】
巻上下げ、横行及び走行のクレーン可動部と主電源の全て或いは何れかの起動回数と通電時間の積算値を計測し、ある日付毎に記憶し、表示することを特徴とする請求項1に記載のクレーン稼働計。
【請求項12】
クレーンの吊荷の荷重値を検出する荷重計測装置部を有し、
クレーンの0tから定格荷重までの間をある間隔の荷重範囲に分割区分し、
クレーンが巻上げ方向に動作する度に荷重計測を行い、計測された荷重値から最大荷重値を一時記憶し、吊荷を下ろした時に、前記の計測された最大荷重値が属する荷重範囲の分割区分に吊り上げ積算回数を1回積算加算するとともに最大荷重値をリセットし再計測を行う吊り上げ積算回数計を有し、
更に巻上げ方向及び巻下げ方向に動作中に測定した荷重値が属する前記の荷重範囲の区分の積算時間計と積算距離計に、その時に測定した動作時間と移動距離を積算加算する機能を有する稼働計であって、
該稼働計の計測値を、一定期間毎に、その期間の日付を付加して記憶していく記憶装置部を有し、その記憶装置部に記憶された値を記憶された荷重状況を日付と共に表示する表示部を、データ通信ユニットを介した遠隔地で表示する機能を有することを特徴とするクレーン稼働計。
【請求項13】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12に記載のクレーン稼働計の機能を用いて、クレーンの部品交換の過去の履歴より、その部品の劣化の係数を特定し、該部品の次の交換時期の情報を提供することを特徴とするクレーンの保守サービス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの劣化傾向を管理するに当たり、クレーンの劣化の大きな要素である荷重値に対する回数、時間、移動量を積算管理することでクレーンの予防保全に役立てるクレーン稼働計及びそのクレーン稼働計の機能を用いたクレーンの保守サービス方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレーンは、定格荷重に対して常に定格荷重の荷を取り扱うクレーンもあれば、普段は軽い荷重を取り扱い、稀にしか重い荷重を吊らないクレーンもある。
クレーンの劣化は、荷重率に大きく左右されるので、クレーン製造に当たっての規格では、そのクレーンが主に吊る荷重値と寿命時間と寿命回数を設定して設計するようにされている。
しかしながら、天井クレーンなどでは、荷重計を装備するのは稀で、製造時に設定された主に吊る荷重値と寿命時間と寿命回数に対してどのように使用されているかは管理されていないのが現状である。
そして、クレーンには、様々な構成部品が装備されており、それぞれに劣化に与える要素や、劣化の傾向が異なることから、それら全ての構成部品の状況を把握し、故障を未然に防ぎ、クレーン停止を未然に防止し、生産ラインの安定操業を確保するためには高度な熟練技術者の能力が必要で、クレーンの保守を行う技術者を手助けする機器が求められている。
【0003】
ところで、クレーンの構成部品の中で、寿命予測としてワイヤロープが一般的で、その寿命算定式が様々な機関から様々な計算方式が提案されている。しかしながら、それらの寿命算定式は、同じ諸元を代入して計算しても、それぞれの計算結果に2倍以上のバラツキがあったり、実使用の結果と計算結果と比較しても大きな差異がある。
【0004】
一方、同一構造品を量産するエレベータやホイスト等においては、例えば、特許文献1~2に開示されているように、試験データを元に寿命算定を行う技術が提案されている。
しかしながら、クラブ式の単品生産のクレーンにおいては、寿命を予測するためのデータを同一構造品で事前に取ることが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003―252541号公報
【特許文献2】特開2020―40801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、クレーンは様々な部品で構成されており、吊った荷重に影響されるものやされないもの、或いは起動回数で劣化するもの、吊り回数で劣化するものや移動量で劣化するものなど様々で、各部品の劣化要素や劣化速度が様々なため、クレーンの構成部品の劣化の傾向管理は、保守技術者の豊富な経験が必要とされているのが現状で、保守技術者の負担軽減が望まれている。
【0007】
ところで、クレーンを構成する各部の部品の劣化傾向を管理するためには、部品交換の度に、その交換部品の寿命カウントをリセットする必要があり、このリセット作業を怠る
と、クレーンの構成部品の傾向管理が形骸化してしまう課題があった。
【0008】
また、クレーンの劣化速度に大きな変動要素を与える荷を吊り上げた時の荷重値を管理するためには、大規模なコンピュータシステムや高額な計量システムを組み込む必要性があり、一般のクレーンに普及させるのが難しい状況にあった。
【0009】
ところで、特許文献2ではモータ電流値で荷重値を検出する方法とロードセルで荷重値を検出する方法について紹介されているが、モータ電流値で荷重値を検出する方法は、モータ停止時は荷重検出をできないことから、測定された荷重値をそのまま使用すると誤った劣化判定をしてしまう課題があった。
また、ロードセルで検出する荷重値は、クレーンの動作状況がロードセルの検出値を逐次変動させるために、どのタイミングでの荷重値を採用するかで、劣化判定に大きな変動をさせてしまう課題があった。
【0010】
本発明は、上記従来のクレーンの有する問題点に鑑み、クレーンの劣化に大きな影響を及ぼす吊り上げた荷重値に重点を置き、吊り上げた荷重値に対する稼働回数、稼働時間と移動距離の積算値を時系列的に管理することにより、クレーンの各構成部品の交換周期と次回の交換時期を把握するためのクレーン稼働計及びそのクレーン稼働計の機能を用いたクレーンの保守サービス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明のクレーン稼働計は、劣化判定計算式に基づく計算結果を記録するのではなく、劣化判定計算を行う時の変数である荷重値と、その時の回数及び移動距離の積算値を記録し、表示をする時に劣化計算式に記録値を代入し計算をする。これにより、劣化判定計算が実劣化状態と異なることが後に分かっても、後で劣化計算式の変更を行うことで再計算ができるものとした。
そして、荷重値の記録に当たっては、吊り上げる度の荷重値を記録するのではなく、0tから定格荷重までの範囲を、ある荷重範囲毎に区切り、その荷重範囲毎に吊り上げた回数と動作時間と移動距離の積算値を計測することで、記録する記憶量を大幅に軽減した。
これにより、クレーン制御用に装備しているシーケンサでも記憶できる記憶量としたことで、荷重記録用コンピュータを別途設ける必要が無くなり、汎用のクレーンにも広く活用できるようにした。
また、前記の荷重範囲毎の稼働状態の積算値の記録を、例えば月単位毎等のある期間毎の積算値を記憶装置部に記憶し、その記憶装置部に記憶された値を記憶された荷重状況を日付と共に表示部に表示することにより、点検簿や部品交換記録などの保守記録に記載された日付と、その日付に相当する該クレーン稼働計の記録とを突き合わせることで、その部品の交換間隔の稼働記録から、その部品のその後の寿命式を算出することができる。
これにより、クレーン毎にクレーンの特徴やクレーン下の設備の状況が異なり、一律の劣化判定式を用いることが困難であったクレーンの寿命判定を、そのクレーンの実使用の結果により劣化判定式を導き出し、次の交換時期を予測できるようにした。
【0012】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向への動作時に、定められた荷重計測回転数まで巻上げモータを加速すると一旦加速を停止し、一定速度で荷重値を計測し、その荷重値の計測結果が、既に一時保存されている荷重値データの数値より大きい場合には、既に一時保存されている荷重値データに新たに測定した荷重値の測定結果を上書きし、その後も巻上げ方向への動作の停止と再巻上げ動作を繰り返されると、荷重計測回転数に到達する度に荷重計測を行い、その荷重計測値が既に記憶されている一時保存の荷重値のデータの数値より大きければ新たに計測した荷重値を一時保存の荷重値データに上書きし、その後、巻下げ動作或いは、荷の釈放動作が行われると、その時点の一時保存の荷重データが
、ある荷重範囲毎に区切られた前記の荷重範囲に該当する荷重範囲区分で記録されている積算回数に1回加算し、積算回数への1回加算が行われたことを受けて、一時保存の荷重値データにゼロを書き込み、次の計測を行う。
これにより、モータの回転中のある点でしか荷重測定ができない荷重計測方式でも、クレーンに荷重が掛かった荷重と回数を計測できるようにし、吊り上げ荷重によるクレーンの疲労判定に用いるクレーン稼働計を一般のクレーンにも広く装備できるようにした。
【0013】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向或いは巻下げ方向に動作を開始すると同時に時間と距離の計測を開始し、その巻上げ動作或いは巻下げ動作が停止した時、その時間と距離の計測を終了し、その終了と同時に、その巻上げ動作中或いは巻下げ動作中に計測されていた荷重値が属する前記に記載の荷重範囲の積算動作時間計と積算距離計に、その時の時間計測と距離計測の結果を加算し、巻上げ時間或いは巻下げ時間が短くて荷重計測ができなかった場合の動作時間は、その前に測定されている荷重測定値を採用し、前記の同じ荷重範囲の積算動作時間計と積算距離計にその時間計測と距離計測の結果を加算し、次の荷重計測が行われるまでは、その荷重値を更新しないようにすることで、高価なロードセルを装備しなくとも、モータの回転中にしか測定できない荷重計測方式で、前記荷重範囲毎に巻上下げの積算動作時間と積算移動距離を計測できるようにし、一般のクレーンにも広く装備できるようにした。
【0014】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、クレーンが巻上げ方向への動作を停止した後に荷重値を計測し、その荷重値の計測結果が、既に一時保存されている荷重値データの数値より大きい場合には、既に一時保存されている荷重値データに新たに計測した荷重値の計測結果を上書きし、その後も巻上げ方向への動作の停止と再巻上げ動作を繰り返され、巻上げ方向への動作を行い停止をする度に荷重計測を行い、その荷重計測値が既に記憶されている一時保存の荷重値のデータの数値より大きければ新たに計測した荷重値を一時保存の荷重値データに上書きし、その後、ロードセルがゼロ荷重或いは風袋荷重付近の荷重を測定した時に、その時点の一時保存の荷重データが、前記荷重範囲に該当する荷重範囲の積算回数に1回加算し、積算回数への1回加算が行われることを受けて、一時保存の荷重値データにゼロを書き込むことで逐次変動するロードセルからの荷重測定状況において、クレーンに荷重が掛かった回数を前記の荷重範囲毎に計測できるようにした。
【0015】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、クレーンが巻上げ方向及び巻下げ方向に動作中に、ロードセル荷重計から演算装置に常時入力している荷重値を定められたクロック周期毎に荷重値を読み込み、その荷重値が属する前記に記載の荷重範囲の積算時間計と積算距離計にクロック周期時間とその時間に速度を掛け合わせた距離を、それぞれ積算時間計と積算距離計に加算することで、逐次変動するロードセルからの荷重測定状況において、荷重範囲毎の巻上下げの積算稼働時間と積算移動距離を計測できるようにした。
【0016】
クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式であって、クレーンが巻上げ方向或いは巻下げ方向への動作中に荷重計測を行い、最新の荷重測定値を保持し、横行或いは走行或いは旋回等のそれぞれの水平動作が停止した時の最新の荷重測定値が属する前記荷重範囲のそれぞれの水平動作の動作回数に1回加算する横行或いは走行或いは旋回等の水平動作それぞれの積算回数計と、その水平動作を開始してから停止するまでの時間と距離を、それぞれの水平動作が停止した時の最新の荷重測定値が属するそれぞれの水平動作の積算時間計と積算距離計にそれぞれの水平動作が動作開始時から停止するまでの時間と距離の計測値を、それらの水平動作が停止した時に加算することで、モータの回転中にしか測定できない荷重計測方式で、前記荷重範
囲毎に横行或いは走行或いは旋回等の各々の水平動作の積算動作回数と積算動作時間と積算移動距離を計測できるようにし、高価なロードセルを装備しない一般のクレーンにも広く装備できるようにした。
【0017】
クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式であって、横行或いは走行或いは旋回等の水平動作を起動時に測定された荷重値が属する荷重範囲のそれぞれの水平動作の積算回数計に1回加算する積算回数計と、その水平動作が停止するまでの時間と距離の計測結果を、その水平動作が起動した時に測定された荷重値が属する荷重範囲のそれぞれの水平動作の積算時間計と積算距離計に、それぞれの水平動作が停止した時に加算することで、逐次変動するロードセルからの荷重測定状況において、荷重範囲毎に横行或いは走行或いは旋回等の各々の水平動作の積算動作回数と積算動作時間と積算移動距離を計測できるようにした。
【0018】
記憶エリアからある日付の各荷重範囲の積算回数計の記憶値を引き出し、その各荷重範囲の例えば荷重範囲の中心値のある荷重値と移動体風袋重量の加算値を、定格荷重値と移動体風袋重量の合算値で除算した値をn乗し、その値にその荷重範囲での記憶されたその日付での積算回数計の値を掛け合わせ、そのn乗した各荷重範囲毎の計算結果の数値について、そのn乗での全ての荷重範囲の計算結果の総和を取り、その数値をそのn数毎における繰り返し応力による疲労の劣化係数とし、各n数毎に前記の計算を実施し、それらの計算結果を、その日付と共に表示する。
これにより、クレーンの構成部品で繰り返し応力による疲労で劣化する部品に対して交換間隔を該劣化係数で定量的に把握し、次の劣化交換時期を定量的に把握することができる。
この時、荷重範囲と定格荷重と風袋荷重は固定値なので、前記の荷重値の加算、除算、n乗算の計算結果も固定値になり、その計算結果の固定値をコンピュータに記憶することにより、制御用に搭載されているシーケンサでも容易に計算することが可能で、大規模なコンピュータを搭載することなく、広く一般のクレーンに採用することができる。
【0019】
記憶エリアからある日付の各荷重範囲の移動距離の記憶値を引き出し、その記憶エリアの荷重範囲内のある荷重値と移動体風袋重量の合算値を、定格荷重値と移動体風袋重量の合算値で除算した値をn乗し、その値にその荷重範囲での記憶されたその日付での移動距離の値を掛け合わせ、そのn乗した各荷重範囲毎の計算結果の数値について、そのn数での全ての荷重範囲の計算結果の総和を取り、その数値をそのn数における摩耗に対する劣化係数とし、各n数毎に前記の計算を実施し、それらの計算結果を、引き出した記憶エリアの日付と共に表示する。
これにより、クレーンの構成部品で摩耗により劣化する部品に対して交換間隔を該劣化係数で定量的に把握し、次の劣化交換時期を定量的に把握することができる。
この荷重値のn乗計算の結果は、前項の数値と共通使用ができるので、制御用に搭載されているシーケンサでも容易に計算することが可能で、広く一般のクレーンに採用することができる。
【0020】
イコライザシーブの揺動回数を、吊り上げている荷重値と共に記録し、荷重率とイコライザシーブの揺動回数を元に算出した値をワイヤロープの劣化係数として表示することで、ワイヤロープの劣化寿命を的確に捉えることができる。
【0021】
巻上下げ、横行、走行等のクレーン可動部と主電源の全て或いは何れかの起動回数と通電時間の積算値を計測し、ある日付毎に記憶し、表示することで、吊った荷重に関係せず、単に動いた回数により劣化する部品の交換間隔の定量的な把握と、次の劣化交換時期を定量的に把握することができる。
【0022】
記憶装置部に記憶された値を記憶された荷重状況を日付と共に表示部に表示することに加えて、或いはそれに代えて、シーケンサに無線方式等のデータ通信ユニットを接続し、遠隔に設置されたコンピュータからシーケンサ内部のクレーン稼働計の記憶データを読み出すことにより遠隔からのクレーン劣化状況の把握が可能になる。
この時、クレーン稼働計は、計測、記憶、演算をクレーン内部で完結しているので、遠隔からの通信が途絶えることがあってもクレーン内部側は正常に動作し、通信が復帰した時に遠隔側も正常にモニタを継続できる。
【0023】
また、本発明のクレーン稼働計を装備したクレーンに対して、そのクレーンの部品交換履歴を把握することにより、その部品の劣化の指数が、どの指数に当たるかの見立てを行い、その部品の次の交換時期が劣化指数が幾らになった時かを情報提供し、その部品の交換時期が近付くと、部品交換のアナウンスを行うサービスを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のクレーン稼働計及びそのクレーン稼働計の機能を用いたクレーンの保守サービス方法によれば、吊り上げる荷重値が構成部品の劣化に大きな変動要素を与えるクレーンの特性において、停止状態で測定ができないモータトルク等を用いて荷重測定を行う場合、又は逐次測定値が変動するロードセルを用いて、その時の荷重値における、稼働回数、稼働時間と移動距離の積算値を時系列に管理することが可能で、クレーン制御用のシーケンサの処理能力で、クレーンの構成部品の交換周期毎の劣化指標と、次の該部品の劣化時期を適切に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のクレーン稼働計を搭載するクレーンの単線図の一例である。
【
図2】本発明のクレーン稼働計の吊り上げ稼働記録計の表示画面の一例である。
【
図3】本発明のクレーン稼働計の巻上げ劣化指数の表示画面の一例である。
【
図4】本発明のクレーン稼働計の計測タイミングを説明するタイムチャートである。
【
図6】本発明のクレーン稼働計の運転稼働記録計の表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のクレーン稼働計の実施の形態について、図面を用いてその実施例に基づいて説明する。
【0027】
図1に本発明のクレーン稼働計を搭載するクレーンの単線図の一例を示す。
近年、モータIMに交流かご型誘導モータを用い、制御装置INVにインバータを用いてクレーンを駆動する場合が多くなっている。
本実施例のクレーンは、シーケンサPCにより制御され、制御装置INVとの間で運転信号CCにより制御装置INVの運転停止が行われ、モータIMを駆動するようにしている。
巻上げMHの回路においては、制御装置INVが発するトルクモニタTMをシーケンサPCがモニタし、軽負荷時には定格速度を超えて運転するなどの制御に活用されている。
インバータのトルク検出は、モータ電流をベクトル演算し、トルク電流値をトルクに換算したり、モータの速度センサでモータの滑りをトルクに換算する方法が用いられている。クレーンの巻上げ装置は、吊荷の荷重値と巻上げのモータトルク値が比例関係にあることから、巻上げのモータトルク値でクレーンの吊り上げている荷重値を推定することができる。
また、商用電源運転などでトルク検出が装備されていない場合でも、電力計により巻上げモータの消費電力値を測定し、荷重値に変換する方法もある。
ところで、モータトルクやモータ電力を用いて荷重値を計測する方法では、モータに通電して回転させないと検出できない。また、モータが低速回転の状態では精度が悪いため、荷重計測のために定格速度等の定められた高速回転まで加速を行い、そこで一旦加速を停止し、安定的に一定速度で回転している時に荷重計測をする必要がある。
この時、巻上げ方向と巻下げ方向とで、個別に校正することで、巻上げ時でも巻下げ時でも荷重計測を行える。
このモータトルクやモータ電力を用いて荷重値を検出する方法は、安価にシステムを構成できるが、モータが定格速度等の高速運転に達した瞬間でしか荷重値を把握できないため、どの時の測定値をどのように取り扱うかが重要になる。
【0028】
ところで、クレーンの設計では荷重率の3乗平均で吊り上げる回数に対して構造分を、時間に対して機械部分の寿命を定め、それによって安全率が定めることで寿命を考慮した設計をするように法規にも定められている。
ところが、吊った荷重率の履歴や、その荷重率での吊った回数や時間を記録するシステムを装備するクレーンは一般的には普及しておらず、どのようなクレーンにも簡単に取り付けられる荷重率と稼働の履歴を管理するシステムが望まれていた。
【0029】
クレーンを構成する部品では、クレーンの吊り上げた荷重の影響を受けて、繰り返し荷重による疲労で劣化する部位は、式(1)に示すように、その部品寿命L1は、荷重率Wのn乗と吊り上げた積算回数ANに比例し、n数は、その部材により1であったり3であったり5であったり7であったりするが、n数は3である場合が一般的である。この時、定数K1は、そのクレーンの個体や、各構成部品の個体により異なる。
L1=K1×Wn×AN ・・・(1)
式(2)は、吊り上げた荷重に影響して摩耗する構成部品に対する部品寿命L2の関係式で、荷重率Wのn乗と積算距離ADに比例し、この場合もn数はその部材により1であったり3であったり5であったり7であったりするが、n数は3である場合が一般的である。そして、定数K2は、そのクレーンの個体や、各構成部品の個体により異なる。
L2=K2×Wn×AD ・・・(2)
ところで、単品生産されるクレーンにおいては、クレーン毎、部品毎の個体差のある定数K1やK2を事前の実験式などで確定しておくことは困難で、本発明のクレーン稼働計では、変数である荷重率Wと吊り上げた積算回数ANと積算距離ADを時系列的にカウントし、変数部分を式(3)と式(4)により計算した結果を疲労指数C1及び摩耗指数C2として時系列的に表示することにより、各構成部品の定数K1及び定数K2を容易に見つけやすくし、次の交換時期を容易に判断できるようにしている。
C1=Wn×AN ・・・(3)
C2=Wn×AD ・・・(4)
ここで、式(3)や式(4)で用いる荷重率Wの計算は、式(5)に示すように、実荷重WAと風袋荷重WHの加算値をクレーンの定格荷重WBと風袋荷重WHの加算値で除算することで求められる。
W=(WA+WH)/(WB+WH) ・・・(5)
天井クレーンの場合、この時の風袋荷重WHは、巻上げの場合は吊具の重量で、横行の場合は吊具重量とクラブトロリの重量の加算値で、走行の場合は、横行の風袋荷重にクレーンガーダの荷重値を加算した値になる。
【0030】
寿命予測を行うのに当たり式(1)や式(2)の計算を行った結果を記録する方式を取ると、定数K1や定数K2が誤っていると、それまでの計測が無駄になってしまう。
例えば、ワイヤロープの寿命算定式は各所が異なった計算式を出しているが、それぞれの計算結果に2倍以上のバラツキが出てしまったり、実使用の結果とも合致しない状態で、そのまま用いることができない状況である。
このため、本発明のクレーン稼働計では、寿命算定結果を記録するのではなく、変数で
ある吊り上げた時の荷重率Wに対する積算回数ANと積算距離ADをシーケンサPCに記録し、表示器PGに表示する時に、式(3)や式(4)の計算をするようにしている。
これにより、寿命算定式は稼働状態での結果に基づき、いつでも修正を加えることができる。
【0031】
ところで、荷重率Wを記録するのに当たり、吊り上げる度の荷重率を記録していると、大規模なコンピュータを必要とし、システムを安価なクレーンまで展開することができない。
本発明のクレーン稼働計では、
図2の吊り上げ稼働記録計の表示画面に示すように0tから定格荷重までの範囲を、ある間隔で荷重範囲WP毎に区切り、吊り上げ動作をした時に計測した荷重値が属する荷重範囲WPの積算回数ANと積算時間ATと積算距離ADを積算加算するようにすることで、クレーンに装備されているシーケンス制御用のシーケンサPCのメモリ数でも記録を容易にしている。
また、荷重範囲WPで区切ったことにより、式(3)や式(4)の荷重率のn乗計算を行う際、例えば
図2の荷重範囲WPが100~90%の場合の3乗計算は、その範囲内の中心値である0.95を3乗計算した0.86を荷重範囲WPの100~90%のW
3の値として、シーケンサPCに記憶することにより、n乗計算を行わずに式(3)や式(4)の演算ができ、シーケンス制御用のシーケンサPCでも容易に演算ができる。
具体的には、疲労指数C1の算出を行う場合、各荷重範囲における例えばn値が3乗計算の場合の荷重率の3乗であるW
nの計算結果の記憶数値を呼び出し、各荷重範囲WP毎に積算回数ANの記憶値との乗算を行い、全ての荷重範囲での疲労指数C1の値の総和を取り、3乗計算での疲労係数として表示する。
【0032】
クレーンを構成する部品のそれぞれの寿命を自動発報をしようとすると、部品交換時に、その部品のカウントをリセットする必要があり、リセット操作を忘れたり、寿命算定式が誤っているとシステム全体が形骸化してしまう。
保守管理の実態として、システムのカウントリセット操作を怠ったとしても、クレーンの構成部品を交換した時には、作業記録や点検簿や現品などに交換部品と交換日の記録は残されている。
本発明のクレーン稼働計は、稼働計を設置してからの積算記録を月変わり時や年変わり時の時点で記録保存し、60カ月分の月変わり時の記録と、30年分の年変わり時の記録のメモリ保存枠を設けている。
これにより、保守記録に記載の部品交換周期と、本発明のクレーン稼働計で劣化係数の毎月の推移とを突合することで、その部品の寿命となる劣化係数値を容易に割り出し、次に劣化係数が幾らになった時に交換時期になるかを容易に判断できる。
月単位集計の記録期間は24カ月毎のクレーン性能検査期間の2.5回分、年単位集計の記録期間は本発明のクレーン稼働計の機器の寿命を考慮して定めており、その期間を超えたものは古い記録から消えていく。
この時、30年を超えて本発明の稼働計を使用し続けたとしても、30年を超えた年変わり時点の集計が消えるだけで、機器を設置してからの現在までの積算計測値や、最新の30年間の年変わり時点の記録が消えるわけではないので運用上の問題はない。
【0033】
60カ月分データ記録の具体的な方法は、60カ月分のデータエリアの先頭エリアに書き込みエリアを設け、年月のデータと共にクレーン稼働計を設置してからのトータルの各積算記録を上書きしていく。その書き込みエリアに書き込まれている年月とシーケンサPCが保有するカレンダーデータの値とに差異が生じると、60カ月分のデータエリア全体を書き込みエリアのデータ枠だけシフトし、シフト完了で書き込みエリアの年月データにカレンダーデータの値を上書きする。
これにより、シーケンサPC内にスタックポインタを形成し、書き込みエリア枠を1カ月分のデータ枠として、順次1カ月毎に古いデータが並んで最新60カ月分のその時点で
の積算データが年月データと共に記録される。
年単位データについても、同様の処理で30年分の年替わりの時点での積算データを記録している。
【0034】
ところで、
図2の表示画面で、四角の枠で囲われた数字は、前記のデータエリアの記録値が表示されており、
図2の画面を表示すると、記憶エリアの書き込みエリアのデータが最初に呼び出されて、現在までの積算回数ANと積算時間ATと積算距離ADの荷重範囲WP毎のデータが日付と共に表示される。そして、日付選択スイッチDSを操作することで、記憶エリアのスタックポインタの1ピッチ毎に読み出しエリアがシフトし、過去のデータを確認できる。
ここで、記録されているデータをそのまま表示すると、その月までの積算データが表示されるが、その積算データから更にもう一つ古い月の積算データを減算して表示することで、その月の稼働状態を表示することもできる。
【0035】
図3の巻上げ劣化係数の画面を表示すると、日付選択スイッチDSで選択された日付の記憶エリアからその年月での積算回数ANと積算時間ATと積算距離ADの記憶値を呼び出し、例えば3乗指数3Sの疲労指数ECは、その呼び出したデータの各荷重範囲WPでの積算回数ANに該当の荷重範囲WPのW
3の計算結果の定数を乗算し、全ての荷重範囲WPのW
3と積算回数ANの乗算値の総和を取り、その年月での3乗指数3Sの疲労指数C1として表示する。
同様に、比例指数PS、5乗指数5S、7乗指数7SもW
nの定数データを入れ替えて、積算回数ANとの乗算と総和を取ることで各乗数での疲労指数C1として表示している。
また、摩耗指数C2は、その年月の積算距離ADに各荷重範囲WPでのW
nの定数データを乗算し、各n数毎に総和を取って、表示している。
時間指数C3についても同様に積算時間ATの呼び出したデータにW
nの定数データを乗算し、各n数毎に総和を取って、表示している。
クレーン構成部品のある部品の交換日と、その前の交換日が分かると、その部品の交換理由が摩耗進行によるものであれば、交換年月と交換年月の間の摩耗指数の差を取り、最後の部品交換日の摩耗指数に交換年月間の摩耗指数の差を加算し、次の交換年月の予定を立案する。
【0036】
図4のタイムチャートを用いて、本発明のクレーン稼働計の計測タイミングについて説明する。
図4(1)の縦軸に巻上げ装置の速度SPを、横軸に時間Tを取り、クレーンの荷役運転操作の一例を行った時の巻上げ装置の一連の動作を示している。その時のクレーンへの実荷重WAの掛かり方の一例を
図4(2)に示す。
荷下ろし作業WDで吊荷が床に着床TDする前に巻下げDWの速度SPを減速し、低速で着床TDした時にクレーンに掛かる吊荷の実荷重WAが無くなる。
吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式の場合、クレーンの巻上げ装置の速度SPが、定められた高速、例えば定格速度に達して加速が停止した時、荷重計測MEを行う。玉掛け外し作業SOや玉掛け作業SCでは、荷重計測MEの速度に達して荷重計測MEを行う場合もあれば、そうでない場合もある。玉掛けロープ張り作業STで、巻上げを微動すると、その巻上げ長さがワイヤロープの伸びやクレーンの撓みとなり、それらの復元力でワイヤロープが緊張し、クレーンには荷重が掛かる。そして、地切り作業GCで地切りGOすると、一気に吊荷の荷重値が全てクレーンに掛かる。その後、吊り上げ作業WUで吊荷を巻上げる。この時、荷重計測MEの速度SPにほとんどの場合は到達する。その後クレーンは水平移動を行い、荷下ろし作業WD地点で荷下ろしを行い、着床TDでクレーンへの実荷重WAが無くなり、玉掛け外し作業SOが行われる流れになる。
【0037】
ところで、吊り上げた荷重が繰り返しの回数でクレーンの疲労に与える影響は、荷重が掛からない状態から、荷重が掛かった状態になったその時の最大値までの幅と、その後荷重が除かれてから、再び荷重が掛かった状態になる繰り返しの回数が疲労となる。
ここで、荷重を吊り上げる過程で数回巻上げ方向のみ操作を繰り返すことを行われた場合、その時にクレーには同じ重さの荷重が掛かった状態を継続しているので、巻上げ操作を繰り返しても、次に荷を下ろされるまでを1回と数える。この時、巻上げ操作を繰り返すことで荷重計測MEを複数回行われた場合は、それらの最大計測値を積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCに書き込む。これにより、地切りCOを行う前の過程で計測される中間荷重は、荷重が掛かるまでの幅の途中経過と捉え、その数値は消去される。
また、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式では、ゼロ荷重になったことを検出することができない場合がある。吊荷の荷重が除かれたことが検出できなかった場合、次の荷重のカウントができないことから、吊荷の荷重がクレーンに掛からなくなる状態を確実に判断する要素として、本発明のクレーン稼働計では、巻下げ操作或いは、開き操作或いは、釈放操作を行ったことを判断要素としている。それは、クレーンの一般的な操作では、吊荷を吊って巻上げた吊荷を一旦巻下げて着床せずに再度巻上げる操作は一般的でないため、巻下げを行うのは、荷下ろし作業WDを行い着床TDを行うものと判断する。それに合わせ、空中で吊荷を落とすバケットや、リフティングマグネットを装備したクレーンに対応するため、バケットの開き操作やリフティングマグネットの釈放操作を一定時間以上行った場合も同様に吊荷の荷重が無くなったと判断する。
吊荷を吊り上げる前であれば、玉掛けのやり直し等で巻上げや巻下げを繰り返す操作を行う場合があり、積算回数のカウントを余分に増やしてしまうこともあるが、この時の荷重が掛からない状態での回数は、荷重が掛かることによる繰り返しの回数によるクレーンの疲労に対して、実際のクレーンの疲労も、式(3)の計算上も影響がほとんどないので、吊荷を吊り上げる前の積算方法による積算回数のカウント誤差は、特に考慮に入れる必要はない。
【0038】
図4(3)の積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値は巻上げ方向の操作中の荷重計測MEの値が既に保存されている値より大きい場合はデータ更新を行い、巻下げ操作が行われた時に、積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値を元に、その荷重値が属する荷重範囲WPの属する積算回数計を積算加算CUし、積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCにゼロ荷重を書き込むことで、次の計測が行われる。
ここで、巻上げ方向に数回の巻上げが行われ、荷重計測MEが数回行われた場合、既に記憶されている積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値よりその時の荷重計測MEの値が大きい場合に積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値に荷重計測MEの値を上書きするのは、玉掛け作業SC等の地切りCOする前の軽い荷重値の荷重計測MEが行われても、地切りGOが行われた後の荷重計測MEの値の値を採用するためであるのと、バケットクレーン等で、巻上げた後に掴み過ぎなので少し開いて荷を少し落とす場合は、掴み過ぎた重い荷重値が既にクレーンに疲労を加えているので、これを記録に残すためである。
また、巻下げ動作後の積算加算CUの処理の待ち要素RTを設けているのは、操作ミス等で一瞬巻下げ操作を入れてしまうことがあり、それを検出しないようにしている。この待ち要素RTは、5秒程度の時間でもよいし、巻上げられた距離に相応する巻下げ距離でもよい。
【0039】
続いて、クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式である場合の積算時間ATと積算距離ADの計測方法について
図4(4)を用いて説明する。
ここで、積算時間ATと積算距離ADは摩耗に関する要因であるが、摩耗劣化は式(4)に示すとおり荷重率Wと積算距離ADにより決定され、積算時間ATは積算距離ADを
包含しているが、クレーンの法規で積算時間ATで寿命を規定しているので、積算時間ATの計測も行っている。
吊荷の繰り返し応力による疲労では、吊り上げた最大荷重値のみが必要であるのに対し、摩耗劣化に関しては、移動した距離とその時の荷重値が重要なので、荷重計測MEができるタイミングで逐次、積算距離計測用一時記憶メモリWTの値の更新を行う。
巻上げUP或いは巻下げDWの動作が開始すると、既定時間でON/OFFするクロック周期タイマのON回数のカウントを開始し、その時、荷重計測MEが行われた場合は積算距離計測用一時記憶メモリWTの更新を行い、巻上げUP或いは巻下げDWの動作が停止した時に、積算距離計測用一時記憶メモリWTの値が属する荷重範囲WPの積算時間ATに前記のカウント値を加算し、その後、そのカウント値をゼロリセットする。
同様に積算距離ADの測定は巻上げUP或いは巻下げDWの動作の開始と共にクロック周期タイマがONする毎に積算距離計測用一時記憶メモリにクロック周期タイマ時間当たりの速度を加算し、巻上げUP或いは巻下げDWの動作が停止した時、クロック周期タイマ時間当たりの速度の加算を止め、その時の積算距離計測用一時記憶メモリWTの値が属する荷重範囲WPの積算距離ADに積算距離計測用一時記憶メモリの値を加算し、加算後に積算距離計測用一時記憶メモリをゼロリセットする。
この時のクロック周期タイマ時間当たりの速度は、制御装置INVより発出される速度モニタ値を換算したものである。
ところで、クロック周期タイマ時間は、機器の劣化測定用の用途からすると、1秒周期タイマで十分であるが、0.1秒周期にするとクレーンの運動性能に対して、十分に高精度な測定結果が得られる。
この時、巻上げUPの時間或いは巻下げDWの時間が短すぎた場合、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する荷重計測方式の特性上、荷重計測ができないので、積算距離計測用一時記憶メモリWTの更新を行わず、その前に測定されている荷重測定値を採用するようにしている。この場合、積算距離計測用一時記憶メモリWTの記憶された時の荷重から、実際の吊っている荷重が変わっている可能性があるが、クレーンの一般的な運転方法から、荷重が変わっていない可能性の方が高いことと、もし荷重が変わっていたとしても、荷重計測ができない程度の短い時間の計測値なので、劣化の算定に使う積算時間ATや積算距離ADの値からすると誤差としては小さいので大きな問題にはならない。
【0040】
ところで、吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式の場合には、常時荷重測定が可能であるが、加減速時の慣性力が荷重値を変化させたり、横行走行時の荷振れが荷重値を変化させるため、最も安定した時点の荷重値を採用する必要がある。
クレーンに荷重が掛かった回数を計測するためのロードセルによる荷重測定は、クレーンの巻上げ方向に動作を行い停止した時点が、吊荷が確実に宙吊り状態である確率が最も高いことと、最も荷重値が安定していることから、本発明のクレーン稼働計では、巻上げ方向の動作が停止した時の荷重計測値を荷重計測値として採用し、積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCに書き込み、計測値がゼロ荷重を超えた場合には計測フラグを立ち上げる。
その後、巻上げ方向への起動停止動作が繰り返されると、巻上げが停止する度に荷重計測を行い、既に書き込まれている積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値より大きい場合は、積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値を更新する。
ロードセルによる検出においては、逐次荷重の変化状態を検出しているが、最大荷重値を記憶することで玉掛け時や地切り前に計測される吊荷の荷重の一部が掛かる経過状態の荷重値を記憶しないようにしている。
そして、ロードセルにより検出する方式では、ゼロ荷重を確実に検出することが可能なので、ゼロ荷重の検出をクレーンへの荷重が除かれた状態として判断している。具体的には、計測フラグが立ち上がっている状態で、ゼロ荷重を検出すると、その時の積算回数カ
ウント用荷重一時記憶メモリWCの値が属する荷重範囲WPの積算回数ANに1回加算し、積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCの値にゼロを書き込み、計測フラグを立ち下げて、次の回数カウントを可能としている。
これにより、荷を繰り返し吊ることによるクレーンの疲労度合いを計測することができる。
【0041】
続いて、吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式で積算時間ATと積算距離ADの計測する場合は、巻上げUP或いは巻下げDWの動作中にリアルタイムに計測される荷重値が属する荷重範囲WPの積算時間ATと積算距離ADの値を直接積算する。
具体的には、巻上げUP或いは巻下げDWの動作中に、クロック周期タイマがオンする度にその時の荷重計の値が属する積算時間ATの値にクロック周期タイマ時間を直接加算し、その荷重範囲WPの積算距離ADの値にはクロック周期タイマ時間当たりの速度を直接加算する。
荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式での積算時間ATと積算距離ADの計測は、ふらつく荷重値をリアルタイムに取り込んでおけば、結果としては真値を中心に振れる荷重値が平均化され、真値に近い計測ができるとの考え方である。
【0042】
続いて、横行或いは走行或いは旋回等の水平移動を行う部分に吊荷の荷重値が与える影響について計測するのに当たり、水平移動用のモータの負荷は、加速を行う時に大きな負荷が発生し、加速後は小さい負荷しか掛からない、そして荷振れが生じると水平移動用モータの負荷が大きく乱れ、水平移動用モータでは、荷重の大きさを測ることは困難である。
そのため、横行或いは走行或いは旋回等の水平移動を行う部分に吊荷の荷重値が与える影響を計測するために、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算した値を使用するか、巻上げ装置に取り付けられたロードセルにより計測された値を使用する。
横行或いは走行或いは旋回等の水平移動部分が操作している時には、巻上げが動いているとは限らないため、水平移動中に荷重計測ができるとは限らない。
しかしながら、クレーンが水平動作を行うためには、クレーンの吊具或いは吊荷が宙吊り状態である必要があり、水平移動をする前に、巻上げによる荷重測定が行われている筈である。
【0043】
具体的には、クレーンの吊荷の荷重値計測方式が、巻上げモータのトルク値又は電力値等を荷重値に換算する方式の場合に、例えば横行を動作させた時、その横行動作中に積算回数カウント用荷重一時記憶メモリWCに記憶されている数値の最大値を荷重値の一時記憶メモリを設けそこに記憶する。
そして、横行の起動と同時に、クロック周波数タイマがONする度にクロック周波数タイマ時間を横行積算時間計測用の一時記憶メモリに加算し、クロック周波数タイマ時間当たりの横行速度を横行積算距離計測用の一時記憶メモリに加算し、横行が停止した時に、荷重値の一時記憶メモリの値が属する横行稼働記録用に設けた荷重範囲WPの積算回数ANに1回加算し、積算時間ATに横行動作時間計測用の一時記憶メモリの値を加算し、横行の積算距離ADの値に横行積算距離計測用の一時記憶メモリの値を加算し、その後、前記の各一時記憶メモリの値にゼロを書き込む。
この横行の稼働記録の表示画面は、
図2に示す吊り上げ稼働記録計の表示画面と同様の画面構成になる。
その他の走行や旋回等の水平移動を行う部位についても横行と同様の処理になる。
ここで、各水平動作が停止時にデータの書き込み処理を行うのは、その水平動作を行っている間に掛かった荷重値の最大値を記録するためで、その最大値がクレーンの疲労に大きく影響を与える数値であるからである。
この方式では、稀に実際の吊り荷重値と異なる荷重データで記録されてしまうことも想定されるが、測定値の使用目的がクレーン劣化の判断用であるため、多少の誤差は大きな問題にならない。
【0044】
続いて、クレーンの吊荷の荷重値測定方式が、巻上げ装置に取り付けたロードセルにより検出する方式の場合に、横行或いは走行或いは旋回等の水平動作を行う部分に吊荷の荷重値が与える影響について計測するのに当たり、ロードセルにより検出する方式については水平移動により生じる荷振れの影響により荷重計測値が大きくふらついてしまう。
横行或いは走行或いは旋回等の水平動作中や停止後暫くは、荷振れが発生しやすいため、該方式においては、水平動作の停止中に荷振れが収まっている確率が高い水平動作の起動の瞬間に繰り返し疲労回数計測用の荷重値の計測を行うようにしている。
具体的には、例えば横行起動操作が行われると、その時の荷重値が属する荷重範囲の横行用の吊り上げ回数に1回加算すると同時に、その荷重値を一時メモリに記憶する。
また、動作時間と移動距離計測用の一時メモリで動作時間と移動距離の積算計測を行い、横行が停止と同時に、一時メモリに記憶されている荷重値が属する荷重範囲WPの動作時間と移動距離の値に一時メモリに積算計測した値を加算する。
そして、一時記憶メモリに記憶されている荷重値と動作時間と移動距離の計測値にゼロを書き込む。
この時、水平動作の起動の瞬間の荷重は、起動時の衝撃の影響が荷重値に出ることは通常は少ないが、小型のクレーン等で水平動作の起動の衝撃が荷重値に出てしまう場合には、少し複雑になるが、起動の少し前の荷重値を採用することで、その問題は解消する。
ところで、バケットクレーンやリフティングマグネット付きのクレーンでは、吊荷を落としながら水平動作を行うクレーンがある。このようなクレーンの場合は、水平動作中にクロック周期タイマがONする度に逐次荷重計測を行い、その荷重が属する荷重範囲の動作時間と積算距離の数値にクロック周期毎に逐次積算加算を行う方式を取ることもできる。
【0045】
続いて、荷重率がワイヤロープWRの劣化に与える影響について、本発明のクレーン稼働計で対応する方法について
図5を用いて説明する。
ほとんどの多くのクレーンの構造は、ワイヤロープの両端が一体のドラムに固定され、ワイヤドラムDRから2本のワイヤロープWRが同じ速度で巻取り或いは巻出し動作が行われている。
この構造のクレーンには、フックシーブHSとヘッドシーブUSの折り返しのワイヤロープWRの中央部分に、回転しないとされるイコライザシーブESが必ず存在する。
このイコライザシーブESは、回転しないとされているので、安全率も低くできるようにクレーンの法令には記載されている。
しかしながら、実稼働の実態は、クレーンがワイヤドラムDRの長手方向(例えば走行TL)に水平移動をすると吊具HKが吊荷と共に振れSWが発生し、振れSWに伴い、イコライザシーブESから片方のワイヤロープWRの端末までの長さと、その反対側の端末までの長さに差異が生じ、その差異を吸収するためにイコライザシーブESが僅かに揺動ROをする。そして、本来動作しない筈のイコライザシーブに掛けられているワイヤロープWRも僅かに揺動ROし、イコライザシーブES部分からワイヤロープWRの両端末までの長さの調節が行われている。
この荷の振れSWによる僅かな揺動ROは、ワイヤロープWRの中央付近の同じ部分を荷の振れSWと共に常に屈曲を繰り返しており、ワイヤロープWRの寿命が最も厳しくなる部分である。
本発明のクレーン稼働計では、クレーン稼働中に適時更新されている積算距離計測用一時記憶メモリWTの荷重値が属する荷重範囲WP毎のイコライザシーブESの揺動ROの揺動回数RCを積算計測し、荷重率W毎の積算回数の記録を巻上げ等の記録と共に記録し、月替わり、或いは年替わりの時点の記録と表示を可能とし、式(6)で各荷重範囲WP
毎のワイヤロープの劣化係数C4を求め、各々荷重範囲WPのワイヤロープの劣化係数C4の総和を取って、ワイヤロープの劣化係数として表示する。
C4=W
n×RC ・・・(6)
ところで、ワイヤロープWRの劣化係数の算出に最も近似するn数は3で、荷重率の3乗とイコライザシーブESの揺動回数RCの乗算結果に、ワイヤロープWRの寿命の傾向が近似している。当該クレーンの安全性を維持する上で最も重要なワイヤロープWRの管理を本方式で行うことができる。
【0046】
ところで、イコライザシーブESの揺動回数を検出する方式は、イコライザシーブESに近接スイッチや光電管を取り付けて直接検出する方式や、イコライザシーブESに掛かる部分のワイヤロープWRの部分は、揺動ROの分だけ微動するだけなので、この部分のワイヤロープWRにクランプでスイッチを固定し、揺動ROの回数を直接検出する方法もある。
また、振れ止め制御付きクレーンの振れ角検出器の振れ回数を数えたり、振れ止め制御が理想的に制御されているクレーンについては、ワイヤドラムDRの長手方向(例えば走行TL)の加減速の回数が揺動の回数と理想的には同じになるので、ワイヤドラムDRの長手方向(例えば走行TL)の加減速の回数を数えて、イコライザシーブESの揺動回数RCとすることができる。
しかし、振れ止め制御が装備されていないクレーンにおけるイコライザシーブESの揺動ROの回数は、クレーン運転士の運転技量に大きく影響するので、不特定多数のクレーン運転士が操作するクレーンは、直接的に揺動回数を数えることで、ワイヤロープWRの劣化判断の確実性を確保することができる。
【0047】
本発明のクレーン稼働計を用いることで、例えば巻上げの疲労指数C1の時系列的に傾向を見ることで、ガーダやクラブフレームや巻上げ装置の軸等の疲労の傾向が判断できる。
摩耗指数C2の時系列的な傾向を見ると、ワイヤドラムDRや巻上げ減速機の摩耗の傾向が判断できる。
横行や走行や旋回等の水平移動部分の疲労指数C1の時系列的に傾向を見ることで、各水平移動部分の各装置のフレームや駆動軸の疲労の傾向が判断できる。
横行や走行や旋回等の水平移動部分の摩耗指数C2の時系列的な傾向を見ると、各装置の車輪やレールの摩耗や、減速機の摩耗の傾向が判断できる。
その他、ブレーキや電磁接触器や集電装置など、吊り上げた荷重に関係せずに単純に動作した積算回数ACや積算時間ATや積算距離ADで劣化傾向を判断できるクレーンの構成部品もあり、これらも、
図6の画面に示すように月単位や年単位で記録した積算回数を表示し確認することで劣化の傾向管理を行うことができる。
【0048】
本発明のクレーン稼働計は、計測、記憶、演算をクレーン内部で完結しているのが特徴であるが、シーケンサPCにデータ通信ユニット(図示省略)を接続することで、遠隔に設置された遠隔コンピュータ(図示省略)からシーケンサPC内部のクレーン稼働計の記憶データを読み出し、遠隔からクレーン劣化状況の把握することもできる。
ところで、クレーンは独立した移動体なので、有線の通信ケーブルを接続することが困難で、無線等によるデータ通信方式が必要になるが、無線方式は混信などの電波障害で通信が途絶えることがある。
しかしながら、本発明のクレーン稼働計は、クレーン内部で完結しているので、遠隔との通信が途絶えることがあっても通信障害中もクレーン内部側は正常に動作し、通信が復帰した時に遠隔側も正常にモニタを再開できる。
【0049】
本発明のクレーン稼働計を設置し、クレーンが稼働した後は、そのクレーンの部品交換履歴を把握することにより、その部品の劣化の指数が、どの指数に当たるかの見立てを行
い、その部品の次の交換時期が劣化指数が幾らになった時かを情報提供し、その部品の交換時期が近付くと、部品交換のアナウンスを行うサービスを提供することができる。
【0050】
以上、本発明のクレーン稼働計について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のクレーン稼働計及びそのクレーン稼働計の機能を用いたクレーンの保守サービス方法によれば、大きな計算機システムや高価なロードセルを用いなくても、既に搭載されているクレーン制御用のシーケンサや、インバータ等の速度制御装置から出力されるモータトルク値を用いることで、広く一般のクレーンにクレーンの劣化状況の指標となるクレーン稼働状態を表示することが可能となる。また、ロードセル荷重計を装備するクレーンについては、逐次変動する荷重値の計測タイミングを適切化することにより、ロードセル荷重計の測定値を劣化指数の判断材料に有効に活用できるものにした。これらの特徴の、本発明のクレーン稼働計により、今までの経験豊富なクレーン保守技術者の負担を軽減し、保守技術者に有効に活用できるようになり。クレーンの故障率低減、生産設備の安定稼働に寄与し、産業上有効に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
MC 主電源接触器
INV 制御装置
IM モータ
BR ブレーキ
PC シーケンサ
PG 表示器
BC ブレーキ用接触器
MH 巻上げ
TS 横行
TL 走行
SL 旋回
CC 運転信号
TM トルクモニタ
WP 荷重範囲
TO 合計
AN 積算回数
AT 積算時間
AD 積算距離
DA 日付
DS 日付選択スイッチ
PS 比例指数
3S 3乗指数
5S 5乗指数
7S 7乗指数
C1 疲労指数
C2 摩耗指数
C3 時間指数
SP 速度
T 時間
UP 巻上げ
DW 巻下げ
WD 荷下ろし作業
TD 着床
ME 荷重計測
SO 玉掛け外し作業
SC 玉掛け作業
ST 玉掛けロープ張り作業
GC 地切り作業
CO 地切り
WU 吊り上げ作業
WA 実荷重
WC 積算回数カウント用荷重一時記憶メモリ
CU 積算加算
RT 待ち要素
WT 積算距離計測用一時記憶メモリ
DR ワイヤドラム
WR ワイヤロープ
HS フックシーブ
HK 吊具
US ヘッドシーブ
ES イコライザシーブ
RO 揺動
SW 振れ
PO 部位