(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023182306
(43)【公開日】2023-12-26
(54)【発明の名称】車両検査システム、車両検査方法、および車両検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/007 20060101AFI20231219BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20231219BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20231219BHJP
【FI】
G01M17/007 H
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095837
(22)【出願日】2022-06-14
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】江崎 雄也
(72)【発明者】
【氏名】堀内 謙二
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳
(72)【発明者】
【氏名】池原 照
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC02
2G064CC41
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】車両を正確に診断できる車両検査システムを得ること。
【解決手段】車両検査システム10Aが、駆動機器によって駆動される車両1Aの走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する走行情報記憶装置11と、車両が線路を通過する際の駆動機器に起因する振動を収集する音収集装置4と、振動の情報である振動情報を記憶する音記憶装置3と、車両の軸位単位で、走行情報および振動情報に基づいて、駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する車両検査装置2と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する走行情報記憶装置と、
前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動を収集する振動収集装置と、
前記振動の情報である振動情報を記憶する振動記憶装置と、
前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する車両検査装置と、
を備える車両検査システム。
【請求項2】
前記車両検査装置は、前記振動情報に含まれる前記振動の経年変化に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項3】
前記車両検査装置は、前記振動情報から前記振動の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項4】
前記走行情報には、前記車両が走行してきた路線の情報、前記車両が走行した距離の情報、前記車両が走行した際の速度の情報、前記車両が走行した際のノッチの情報、および前記車両の車軸を駆動するモータへのモータ電流の情報の少なくとも1つが含まれている、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項5】
前記駆動機器の情報である駆動機器情報を記憶する機器情報記憶装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記駆動機器情報に基づいて、前記振動情報を分析する際に用いるデータを決定し、決定した前記データを用いて前記振動情報を分析する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項6】
前記振動情報を分析する際に用いるデータには、前記振動情報を分析する際に用いる分析パラメータ、および前記振動の特徴量と比較される閾値である劣化検知閾値の少なくとも1つが含まれている、
請求項5に記載の車両検査システム。
【請求項7】
前記車両の車輪が前記線路を通過したことを検出する車輪通過検出装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記走行情報および前記車両が通過したタイミングで収集された振動情報に基づいて、前記車両の軸位単位で、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項8】
前記駆動機器の振動を計測する振動計測装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記振動計測装置によって計測された振動に基づいた第1の分析を実行し、前記振動情報に基づいた第2の分析を実行し、前記第1の分析の分析結果と前記第2の分析の分析結果とが一致するように、前記第2の分析の分析方法を修正する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項9】
前記車両検査装置は、前記第2の分析の分析方法として、前記振動情報を分析する際に用いる、分析パラメータ、閾値、ノイズの除去方法の少なくとも1つを修正する、
請求項8に記載の車両検査システム。
【請求項10】
複数の前記車両検査装置から前記車両の検査のデータを収集して分析するサーバをさらに備える、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項11】
前記車両の検査のデータは、前記振動情報から算出された前記振動の特徴量、または前記特徴量に基づいて判定された前記駆動機器に異常が発生しているか否かの判定結果である、
請求項10に記載の車両検査システム。
【請求項12】
前記振動収集装置は、複数からなり、
前記車両検査装置は、複数の前記振動収集装置で収集された前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項13】
前記駆動機器に異常が発生しているか否かの判定結果を学習する学習装置をさらに備え、
前記学習装置は、前記振動情報、前記車両の走行条件、前記走行情報、および前記車両の検査履歴の少なくとも1つを含むデータである車両データと、前記車両データに対応付けされた前記判定結果とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記車両データから前記判定結果を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備える、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項14】
前記判定結果を推論する推論装置をさらに備え、
前記推論装置は、
前記車両データを取得する第2のデータ取得部と、
前記学習済モデルを用いて、前記第2のデータ取得部で取得した前記車両データから前記判定結果を推論する推論部と、
を備える、
請求項13に記載の車両検査システム。
【請求項15】
前記振動は、前記駆動機器が発生させる音、または前記駆動機器から線路を経由して伝搬される振動である、
請求項1に記載の車両検査システム。
【請求項16】
前記走行情報記憶装置は、前記車両に配置され、
前記振動収集装置は、地上に配置されている、
請求項1から15の何れか1つに記載の車両検査システム。
【請求項17】
走行情報記憶装置が、駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する第1の記憶ステップと、
振動収集装置が、前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動を収集する収集ステップと、
振動記憶装置が、前記振動の情報である振動情報を記憶する第2の記憶ステップと、
車両検査装置が、前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、
を含む車両検査方法。
【請求項18】
駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を受信する受信ステップと、
前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動の情報である振動情報を分析する分析ステップと、
前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、
をコンピュータに実行させる車両検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両を検査する車両検査システム、車両検査方法、および車両検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の車両は、正常な状態で走行することが望まれる。このため、車両が正常であるか否かを判定する車両検査装置の開発が進められている。車両検査装置の1つに、車両の走行音に基づいて、異常の有無を判定する装置がある。
【0003】
特許文献1に記載の異常検知装置は、線路脇に設置されたマイクが収音した音の音響スコアを、正常音モデルを用いて算出し、音響スコアおよび閾値に基づいて異常の有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、異常の有無を判定する際に列車の編成情報しか考慮されておらず、車両の走行履歴を考慮していないので、車両を正確に診断できないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、車両を正確に診断できる車両検査システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の車両検査システムは、駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する走行情報記憶装置を備える。また、本開示の車両検査システムは、車両が線路を通過する際の駆動機器に起因する振動を収集する振動収集装置を備える。また、本開示の車両検査システムは、振動の情報である振動情報を記憶する振動記憶装置と、車両の軸位単位で、走行情報および振動情報に基づいて、駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する車両検査装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる車両検査システムは、車両を正確に診断できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる車両検査システムの構成を示す図
【
図2】実施の形態1にかかる車両検査システムが検査する車両の構成を説明するための図
【
図3】実施の形態1にかかる車両検査システムが検査する車両の台車の構成を説明するための図
【
図4】実施の形態1にかかる車両検査装置が取得する音情報の例を示す図
【
図5】実施の形態1にかかる車両検査装置が算出する特徴量を説明するための図
【
図6】実施の形態1にかかる車両検査装置が記憶しておく特徴量を説明するための図
【
図7】実施の形態1にかかる車両検査装置が算出した特徴量の推移を説明するための図
【
図8】実施の形態1にかかる車両検査システムで実行される処理の処理手順を示すフローチャート
【
図9】実施の形態2にかかる車両検査システムの構成を示す図
【
図10】実施の形態3にかかる車両検査システムの構成を示す図
【
図11】実施の形態4にかかる車両検査システムの構成を示す図
【
図12】実施の形態4にかかる車両検査システムで実行される処理の処理手順を示すフローチャート
【
図13】実施の形態4にかかる車両検査装置が実行する分析方法の修正処理を説明するための図
【
図14】実施の形態5にかかる車両検査システムの構成を示す図
【
図15】実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第1の配置例を示す図
【
図16】実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第2の配置例を示す図
【
図17】実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第3の配置例を示す図
【
図18】実施の形態7にかかる車両検査システムが備える学習装置の構成を示す図
【
図19】実施の形態7にかかる学習装置が用いるニューラルネットワークを説明するための図
【
図20】実施の形態7にかかる学習装置が実行する学習処理の処理手順を示すフローチャート
【
図21】実施の形態7にかかる推論装置の構成を示す図
【
図22】実施の形態7にかかる推論装置が実行する推論処理の処理手順を示すフローチャート
【
図23】実施の形態1から7にかかる車両検査装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
【
図24】実施の形態1から7にかかる車両検査装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる車両検査システム、車両検査方法、および車両検査プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる車両検査システムの構成を示す図である。車両検査システム10Aは、車両1Aの駆動機器を診断し、異常の有無を判定するシステムである。車両検査システム10Aは、走行情報記憶装置11と、通信装置12と、音収集装置4と、音記憶装置3と、車両検査装置2とを備えている。
【0012】
走行情報記憶装置11および通信装置12は、例えば、駆動機器によって駆動される車両1Aに配置され、音収集装置4、音記憶装置3、および車両検査装置2は、車両1Aが通過する線路9の近傍に配置される。なお、車両検査システム10Aが、複数の車両1Aを検査する場合、車両1A毎に走行情報記憶装置11および通信装置12が配置される。また、音記憶装置3および車両検査装置2は、何れの位置に配置されてもよい。また、走行情報記憶装置11および通信装置12の少なくとも一方は、車両1A以外の車両(号車)に配置されてもよい。例えば、検査対象である車両1Aが2号車である場合に、走行情報記憶装置11および通信装置12の少なくとも一方は、先頭車(1号車)など他の号車に配置されてもよい。このように、走行情報記憶装置11および通信装置12の少なくとも一方は、車両1Aが連結されている列車の何れの位置に配置されてもよい。また、走行情報記憶装置11が通信機能を有していてもよい。この場合、車両1Aには、通信装置12が配置されなくてもよい。
【0013】
走行情報記憶装置11は、走行情報記憶装置11が配置されている車両1Aの走行履歴を含む情報(以下、走行情報という)を記憶する。すなわち、車両検査システム10Aでは、走行情報記憶装置11が車両1A毎の走行情報を記憶する。
【0014】
走行情報記憶装置11が記憶する走行情報の項目(以下、走行履歴項目という場合がある)には、車両1Aが走行してきた路線の情報、車両1Aが走行した距離の情報、車両1Aが走行した際の速度の情報、車両1Aが走行した際のノッチの情報、および車軸を駆動するモータへのモータ電流の情報の少なくとも1つが含まれている。車両1Aが走行した際のモータ電流は、車両1Aを駆動するモータの電流である。走行情報記憶装置11は、走行情報を通信装置12に送る。
【0015】
通信装置12は、走行情報記憶装置11から送られてきた走行情報を車両検査装置2に送る。すなわち、通信装置12は、走行情報を地上へ伝送する。
【0016】
振動収集装置の一例である音収集装置4は、車両1Aが音収集装置4の近傍を通過した際の駆動機器に起因する音を収集する。すなわち、音収集装置4は、車両1Aを駆動する駆動機器(例えば、モータ)の通過音を取得する集音装置である。音収集装置4は、線路9の近傍に配置される。
【0017】
振動収集装置は、音収集装置4のように音(空気の振動)を収集する装置であってもよいし、音以外の振動(線路9などを介して伝搬する振動)を収集する装置であってもよい。
【0018】
振動収集装置が音を収集する音収集装置4である場合、振動収集装置はマイクなどを有している。また、振動収集装置が線路9などの振動を収集する装置である場合、振動収集装置は加速度センサ(振動センサ)などを有している。
【0019】
以下では、振動収集装置が音収集装置4である場合について説明するが、車両検査システム10Aでは、振動収集装置が音収集装置4以外の装置であってもよい。すなわち、以下では、収集される振動が音である場合について説明するが、収集される振動は音以外であってもよい。
【0020】
音収集装置4は、収集した音の情報(以下、音情報という)を音記憶装置3に送る。音記憶装置3は、音情報を記憶する。車両検査装置2は、音記憶装置3から音情報を読み出し、通信装置12から走行情報を受信する。
【0021】
車両検査装置2は、音情報および走行情報に基づいて、車両1Aの駆動機器を検査するコンピュータである。車両検査装置2は、車両1Aの車上から走行情報を受信するとともに、音情報を分析する分析装置である。
【0022】
車両検査装置2は、軸位単位(車両1Aの車軸単位)で、走行情報と音情報とを対応付けて分析し、音の経年変化に基づいて車両1Aが有する駆動機器の異常を検知する。なお、実施の形態1における駆動機器は、モータに限らない。実施の形態1における駆動機器は、歯車、継手などであってもよい。また、実施の形態1における駆動機器は、台車、車輪、インバータなどの床下に配置され、車両1Aの走行に用いられる機器であってもよい。すなわち、車両1Aの駆動に起因して音を発生する機器であれば、何れの駆動機器が異常の有無の判定対象になってもよい。
【0023】
車両検査装置2は、通信部21と、入力部22と、分析部23と、出力部24とを有している。通信部21は、通信装置12との間で通信を実行する。通信部21は、通信装置12に走行情報の要求を送信し、通信装置12から走行情報を受信する。通信部21は、受信した走行情報を分析部23に送る。入力部22は、音記憶装置3から音情報を読み出して分析部23に送る。
【0024】
分析部23は、音情報の変化(経年変化)および走行情報に基づいて、車両1Aの駆動機器を分析し、駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する。出力部24は、分析部23による分析結果を外部装置に出力する。出力部24は、分析結果をサーバなどの遠隔に配置された装置に送信してもよいし、表示装置などに送信してもよい。表示装置は、分析結果を受け付けた場合には、分析結果を表示する。
【0025】
ここで、検査対象となる車両1Aの例について説明する。
図2は、実施の形態1にかかる車両検査システムが検査する車両の構成を説明するための図である。車両1Aは、車体31と、台車32とを有している。車体31は、例えば、2つの台車32上に配置される。台車32は、複数の車輪を備えており、各車輪が線路9上を走行する。
【0026】
図3は、実施の形態1にかかる車両検査システムが検査する車両の台車の構成を説明するための図である。
図3では、台車32の上面図を示している。台車32は、車軸AX,BXと、車輪36A,36B,37A,37Bと、モータ33A,33Bと、駆動装置35A,35Bと、継手34A,34Bと、複数の軸受38と、複数の歯車39とを有している。なお、
図3では、軸受38が配置されている箇所には共通のハッチングを付している。また、歯車39が配置されている箇所には共通のハッチングを付している。
【0027】
車軸AXと車軸BXとは、互いに平行になるように配置されている。台車32では、車軸AX,BXの延設方向が台車32の進行方向に垂直になるように車軸AX,BXが配置されている。
【0028】
車輪36A,36Bは、2本の線路9のうちの一方の線路9上で回転し、車輪37A,37Bは、2本の線路9のうちの他方の線路9上で回転する。例えば、台車32において車輪36A,37Aが進行方向の前側の車輪である場合、車輪36B,37Bが進行方向の後ろ側の車輪となる。
【0029】
車輪36A,37Aは、車軸AXに接続され、車輪36B,37Bは、車軸BXに接続されている。モータ33Aは、継手34Aを介して駆動装置35Aに接続されており、モータ33Bは、継手34Bを介して駆動装置35Bに接続されている。
図3では、モータ33A,33Bに、それぞれ2つの軸受38が配置され、継手34A,34Bに、それぞれ2つの歯車39が配置されている場合を示している。また、
図3では、駆動装置35A,35Bに、それぞれ2つの歯車39と4つの軸受38が配置されている場合を示している。なお、台車32に配置される軸受38および歯車39の個数は、
図3で説明した個数に限らない。
【0030】
台車32では、車輪36A,37A、モータ33A、駆動装置35A、および継手34Aが車軸AX側の駆動機器である。車軸AX側の駆動機器には、車軸AXの軸受(図示せず)、モータ33A、駆動装置35A、または継手34A内に配置されている歯車39および軸受38が含まれている。
【0031】
また、台車32では、車輪36B,37B、モータ33B、駆動装置35B、および継手34Bが車軸BX側の駆動機器である。車軸BX側の駆動機器には、車軸BXの軸受(図示せず)、モータ33B、駆動装置35B、または継手34B内に配置されている歯車39および軸受38が含まれている。
【0032】
車両検査システム10Aは、台車32から発生する音に基づいて、車両1Aの駆動機器を検査する。例えば、車両1Aの経年劣化により、歯車39または軸受38などから異音が発生する場合がある。車両検査装置2は、歯車39または軸受38などから発生する音と、車両1Aの走行履歴を含んだ走行情報とに基づいて、車両1Aの駆動機器を検査する。
【0033】
台車32では、台車32の進行方向に沿って、車軸AXと車軸BXとが、特定の間隔を空けて配置されている。したがって、車軸AXに接続されている車輪36A,37Aが、線路9上の特定位置を通過するタイミングと、車軸BXに接続されている車輪36B,37Bが、この特定位置を通過するタイミングとは異なる。車両検査装置2は、このタイミングのずれを利用して、車軸毎に車両1Aの駆動機器を検査する。
【0034】
また、台車32に配置される各駆動機器は、それぞれ種類、型番等が異なるので、駆動機器毎に異常時の音の周波数が異なる。このため車両検査装置2は、音の周波数に基づいて、何れの駆動機器で異常が発生しているかを特定することができる。
【0035】
つぎに、車両検査装置2による検査処理の詳細について説明する。
図4は、実施の形態1にかかる車両検査装置が取得する音情報の例を示す図である。音情報40には、車輪36B,37Bが種々の回転速度(回転数)で回転している場合の音の波形が含まれている。
図4では、音情報40に音情報41~44が含まれている場合を示している。
【0036】
音情報41~44は、それぞれ、横軸が時間であり、縦軸が音の圧力(パスカル)である。音情報41は、車輪36B,37Bの回転速度が120rpm(rotations per minute、回転毎分)の場合の音の波形を示し、音情報42は、車輪36B,37Bの回転速度が360rpmの場合の音の波形を示している。また、音情報43は、車輪36B,37Bの回転速度が600rpmの場合の音の波形を示し、音情報44は、車輪36B,37Bの回転速度が1200rpmの場合の音の波形を示している。
【0037】
例えば、
図4では、音情報42において、軸受38に傷が発生した場合の衝撃音F1,F2が含まれている場合を示している。また、
図4では、音情報43において、軸受38に傷が発生した場合の衝撃音F3~F6が含まれている場合を示している。
【0038】
車両検査装置2は、音情報40から音の特徴量を算出し、音の特徴量に基づいて車両1Aが異常状態であるか否かを判定する。特徴量の例は、周期的に表れる突発的に高い音圧のピーク値(以下、音圧ピーク値という場合がある)である。特徴量が現れる周期は、モータ33A,33Bのモータ回転軸の1回転分の時間である。
【0039】
図5は、実施の形態1にかかる車両検査装置が算出する特徴量を説明するための図である。ここでは、車両検査装置2の分析部23が特徴量を抽出する処理の一例を説明する。なお、分析部23による特徴量の抽出処理は、
図5で説明する処理に限らない。分析部23は、何れの処理によって特徴量を抽出してもよい。分析部23は、音記憶装置3から音情報51を読み出す。音情報51は、例えば、音情報41~44の何れかである。
【0040】
図5に示す1段目~4段目のグラフの横軸は時間であり、縦軸は音の圧力である。また、
図5に示す5段目のグラフの横軸は周波数であり、縦軸は音の圧力である。
【0041】
分析部23は、音情報51に対してBPF(Band Pass Filter)を用いることで、音情報51の周波数から特定の範囲の周波数を抽出した音情報52を生成する。分析部23は、音情報52の周波数の絶対値(ABS:ABSolute value)を計算することで、音情報52から音情報53を生成する。
【0042】
分析部23は、音情報53の波形をエンベロープ(ENV:ENVelope)処理することで、音情報54を生成する。分析部23は、音情報54に含まれるENV波形を高速フーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform)解析)することで、音情報55を生成する。すなわち、分析部23は、音情報54に含まれるENV波形を周波数分析することで、音情報54から音情報55を生成する。
【0043】
分析部23は、音情報55に含まれる音圧成分のうち特徴的な周波数(例えば、特定値よりも大きな周波数)における音圧ピーク値を特徴量として抽出する。
図5では、分析部23が、音情報55から特徴量P1を抽出した場合を示している。
【0044】
車両検査システム10Aでは、音収集装置4が配置されている箇所を車両1Aが通過するたびに、音収集装置4が音情報51を収集する。そして、車両検査装置2の分析部23は、収集された各音情報51に対して特徴量を抽出する。この特徴量は、車両1Aが備える駆動機器の劣化とともに推移する。したがって、分析部23は、抽出した特徴量の推移に基づいて、車両1Aの駆動機器を検査する。
【0045】
図6は、実施の形態1にかかる車両検査装置が記憶しておく特徴量を説明するための図である。
図6では、分析部23が記憶していく特徴量の情報である特徴量情報60の構成を示している。特徴量情報60では、音情報51が収集された日時と、この日時における特徴量とが車軸毎に対応付けされている。分析部23は、音情報51が収集された日時毎に抽出した特徴量を、車軸毎に記憶しておく。
【0046】
図6では、分析部23が、車軸61A~66A,61B~66Bの特徴量を算出して特徴量情報60に格納する場合を示している。車軸61A~66Aが、車軸AXに対応し、車軸61B~66Bが、車軸BXに対応している。
【0047】
例えば、2021年5月1日の車軸62Aの特徴量は、20である。
図6では、分析部23が、音情報55から特徴量P1として「49」を抽出し、抽出した「49」を、2021年12月1日の車軸62Aの特徴量として登録した場合を示している。
【0048】
分析部23は、例えば、特徴量が閾値(以下、劣化検知閾値という)を超えた車軸を異常な状態の車軸である可能性が特定値よりも高いと判定する。すなわち、分析部23は、音情報51に含まれる特徴量が劣化検知閾値を超えた車軸を、特定期間内に故障する可能性が特定値以上の車軸であると仮判定する。
【0049】
図7は、実施の形態1にかかる車両検査装置が算出した特徴量の推移を説明するための図である。
図7では、特定の車軸に対して抽出された音の特徴量の推移を示している。
図7に示すグラフの横軸は音情報51が収集された年月(日時)であり、縦軸は音の特徴量である。
【0050】
音の特徴量である音圧ピーク値は、車両1Aの走行距離が増えるほど大きくなる。分析部23は、音の特徴量が劣化検知閾値を超えた車軸を、特定期間内に故障する可能性が特定値以上の車軸であると仮判定する。
【0051】
この場合、分析部23は、車両1Aの走行情報と、音情報51(音の特徴量)とに基づいて、車軸が異常な状態であるか否かを判定する。車軸が異常な状態は、車軸が、特定期間内に故障する可能性が特定値以上となっている状態である。
【0052】
例えば、前述したように、走行情報の走行履歴項目には、車両1Aが走行してきた路線の情報が含まれる場合がある。車両1Aが走行する路線には、走行の負担が大きい路線と小さい路線とがある。すなわち、路線が車両1Aに与えるダメージは、路線毎に異なる。車両1Aに与えるダメージが小さい路線は、例えば、新しい線路9が配置されている路線、修理されてからの期間が短い路線、車両の走行回数が少ない路線等である。
【0053】
また、走行履歴項目には、車両1Aが走行した距離が含まれる場合がある。車両1Aが走行した距離が短いほど、車軸が正常である可能性が高い。また、走行履歴項目には、車両1Aが走行した際の速度の履歴が含まれる場合がある。車両1Aが走行した際の速度が遅いほど、車軸が正常である可能性が高い。また、走行履歴項目には、車両1Aが走行した際のノッチの履歴が含まれる場合がある。車両1Aに対して急激なノッチ変化が行われている頻度が少ないほど、車軸が正常である可能性が高い。また、走行履歴項目には、車軸を駆動するモータへのモータ電流の履歴が含まれる場合がある。モータ電流は、小さいほど、車軸が正常である可能性が高い。
【0054】
例えば、車両1Aの走行距離が特定値よりも短い状態で、音の特徴量が劣化検知閾値を超えた場合、外乱によって音の特徴量が劣化検知閾値を超えた可能性が高い。このため、分析部23は、走行履歴項目が車軸への異常を起こしにくいと判定した場合には、音の特徴量が劣化検知閾値を超えた場合であっても、車軸が正常であると判定する。分析部23は、例えば、走行履歴項目と、この走行履歴項目の閾値とを、走行履歴項目毎に比較する。分析部23は、例えば、走行履歴項目のうちの何れか1つでも閾値を超えている場合に、音の特徴量が劣化検知閾値を超えると、車軸が異常であると判定する。
【0055】
音の特徴量は、突発的に上昇しない場合が多い。このため、分析部23は、突発的に音の特徴量が劣化検知閾値を超えた場合には、車軸は正常であると判定してもよい。すなわち、分析部23は、例えば、音の特徴量が突発的に特定の割合以上で上昇または下降した結果、劣化検知閾値を超えた場合には、車軸は正常であると判定してもよい。換言すると、分析部23は、音の特徴量の上昇率または下降率が特定値を超えた状態で劣化検知閾値を超えた場合には車軸が正常であると判定してもよい。
【0056】
また、分析部23は、各走行履歴項目に対して重みづけをしたうえで走行履歴項目の全体に点数を付けてもよい。この点数は、走行履歴項目が車軸への異常を起こしやすい状態ほど高くなる。点数は、例えば、走行距離が長いほど高くなる。分析部23は、点数が、点数の閾値を超えた場合に、音の特徴量が閾値を超えると、車軸が異常であると判定する。
【0057】
また、分析部23は、各走行履歴項目および音の特徴量に対して重みづけをしたうえで走行履歴項目および音の特徴量の全体に点数を付けてもよい。この点数は、車軸が異常となっている場合ほど高くなる。点数は、例えば、音の特徴量が大きいほど高くなる。分析部23は、点数が、点数の閾値を超えた場合に、車軸が異常であると判定する。
【0058】
つぎに、車両検査システム10Aで実行される処理の処理手順について説明する。
図8は、実施の形態1にかかる車両検査システムで実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0059】
車両検査システム10Aでは、走行情報記憶装置11が車両1Aの走行情報の記憶を開始する(ステップS10)。走行情報記憶装置11は、例えば、走行距離、走行速度などの走行履歴項目を検出する検出装置から走行情報を取得して走行情報を記憶する。走行情報記憶装置11は、走行情報を通信装置12に送信する。通信装置12は、走行情報記憶装置11から送られてきた走行情報を車両検査装置2に送信する(ステップS20)。
【0060】
音収集装置4は、車両1Aが音収集装置4の近傍を通過した際の車両1Aの音を収集する(ステップS30)。音収集装置4は、音情報51を音記憶装置3に送信する。音記憶装置3は、音情報51を記憶する(ステップS40)。
【0061】
車両検査装置2は、音記憶装置3から音情報51を読み出し、通信装置12から走行情報を受信する(ステップS50)。車両検査装置2は、音情報51および走行情報に基づいて、車両1Aが異常であるか否かを判定する(ステップS60)。車両検査装置2は、車両1Aが異常であるか否かの判定結果を出力する。
【0062】
なお、ステップS10,S20の処理と、ステップS30,S40の処理とは、何れが先に実行されてもよい。また、ステップS50では、車両検査装置2は、音記憶装置3から音情報51を読み出す処理と、通信装置12から走行情報を受信する処理との何れを先に実行してもよい。また、車両検査装置2は、ステップS10,S20の処理の前に、音記憶装置3から音情報51を読み出してもよい。また、車両検査装置2は、ステップS30,S40の処理の前に、通信装置12から走行情報を受信してもよい。
【0063】
車両検査システム10Aは、状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)によって車両1Aが備える駆動機器を検査する。状態基準保全では、駆動機器の状態に応じて検査タイミングが決定される。状態基準保全は、時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)よりも効率良く駆動機器を検査することができる。
【0064】
このように、車両検査システム10Aでは、駆動機器にセンサを搭載することなく、駆動機器を検査できるので、低コストで駆動機器を検査することが可能になる。また、車両検査装置2は、走行情報および音情報51に基づいて、車両1Aの駆動機器を検査するので、駆動機器の異常検知精度が向上する。
【0065】
このように実施の形態1では、地上に配置された音収集装置(振動収集装置)4が、車両1Aが通過する際の駆動機器に起因する振動情報を収集している。また、車両検査装置2が、車両1Aの軸位単位で、車両1Aの走行履歴を含む走行情報および振動情報に基づいて、駆動機器に異常が発生しているか否かを判定している。これにより、車両検査システム10Aは、車両1Aを正確に診断することが可能となる。したがって、ユーザは、車両1Aが故障する前に、車両1Aの駆動機器を修理または交換することが可能となる。
【0066】
実施の形態2.
つぎに、
図9を用いて実施の形態2について説明する。実施の形態2の車両検査装置2は、駆動機器の諸情報(以下、駆動機器情報という)に応じて、音情報51を分析する際に用いる分析パラメータおよび劣化検知閾値の少なくとも1つを決定する。
【0067】
図9は、実施の形態2にかかる車両検査システムの構成を示す図である。
図9の各構成要素のうち
図1に示す実施の形態1の車両検査システム10Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0068】
実施の形態2の車両検査システム10Bは、実施の形態1の車両検査システム10Aと比較して、車両1Aの代わりに車両1Bを備えている。車両1Bは、車両1Aが備える構成要素に加えて、機器情報記憶装置13を備えている。機器情報記憶装置13は、走行情報記憶装置11および通信装置12とともに、車両1Bに配置されている。なお、機器情報記憶装置13は、車両1B以外の車両(号車)に配置されてもよい。また、機器情報記憶装置13は、車両1Bが連結されている列車とは異なる位置(例えば、サーバ)に配置されてもよい。また、走行情報記憶装置11および機器情報記憶装置13が、それぞれ通信機能を有していてもよい。この場合、車両1Bには、通信装置12が配置されなくてもよい。
【0069】
機器情報記憶装置13は、車両1Bに搭載された駆動機器の駆動機器情報を記憶する。駆動機器の諸元である駆動機器情報には、モータ33A,33Bの型番、軸受の型番、駆動機器の特性(例えば、ギア比)等が含まれている。機器情報記憶装置13の駆動機器情報は、通信装置12によって読み出される。車両1Bの通信装置12は、駆動機器情報および走行情報を、車両検査装置2に送る。なお、通信装置12は、駆動機器情報および走行情報を、別々のタイミングで送信してもよい。
【0070】
実施の形態2の車両検査装置2は、通信装置12から駆動機器情報および走行情報を受信する。車両検査装置2の分析部23は、予め複数の分析パラメータと、複数の劣化検知閾値とを記憶しておく。
【0071】
分析部23は、検査する駆動機器の駆動機器情報に応じて、音情報51の分析パラメータおよび劣化検知閾値を個別に決定する。すなわち、分析部23は、複数の分析パラメータの中から駆動機器に対応する分析パラメータを設定し、複数の劣化検知閾値の中から駆動機器に対応する劣化検知閾値を設定する。
【0072】
分析パラメータは、駆動機器の分析の過程で用いられる信号処理のパラメータである。例えば、軸受に傷が発生した場合には、特定の周波数の音が発生する。この音の発生周波数は、軸受の直径、転動体の数によって変化する。すなわち、軸受に傷が付いた場合に発生する音の周波数は、駆動機器毎に異なる。分析部23が設定する分析パラメータは、音の発生周波数そのものであってもよいし、この発生周波数に対して音のレベルを算出する過程で用いる信号処理のパラメータ(例えばハイパスフィルタのカットオフ周波数など)であってもよい。
【0073】
分析部23が設定する劣化検知閾値の例は、発生周波数の音のレベルを異常と認定するか否かの閾値である。なお、分析部23は、何れの方法によって駆動機器の異常を分析してもよい。
【0074】
車両検査装置2の分析部23は、軸位単位で、走行情報と音情報51とを対応付けて分析する。この場合において、分析部23は、設定した分析パラメータおよび劣化検知閾値を用いて車両1Bが備える駆動機器を検査する。これにより、分析部23は、音の経年変化に基づいて、車両1Bが有する駆動機器の異常を検知する。
【0075】
このように分析部23は、駆動機器情報に対応する分析パラメータおよび劣化検知閾値を設定して、駆動機器を検査する。すなわち、分析部23は、駆動機器情報に応じて、音の分析手法を変更する。
【0076】
このように実施の形態2によれば、車両検査システム10Bは、駆動機器情報に対応する分析パラメータおよび劣化検知閾値を設定して、駆動機器を検査するので、異常検知精度を向上させることが可能となる。
【0077】
実施の形態3.
つぎに、
図10を用いて実施の形態3について説明する。実施の形態3の車両検査システムは、車両が通過したことを検知し、車両が通過したタイミングで収集した音情報(後述する通過音情報)と、走行情報とを対応付けして車両が備える駆動機器を検査する。
【0078】
図10は、実施の形態3にかかる車両検査システムの構成を示す図である。
図10の各構成要素のうち
図1に示す実施の形態1の車両検査システム10Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0079】
実施の形態3の車両検査システム10Cは、実施の形態1の車両検査システム10Aが備える構成要素に加えて、車輪通過検出装置5を備えている。車輪通過検出装置5は、線路9の近傍で音収集装置4の近傍に配置されている。車輪通過検出装置5が配置される位置と、音収集装置4が配置される位置とは、特定の距離内となるように配置される。
【0080】
車輪通過検出装置5は、音収集装置4の近傍を車輪36B,37Bが通過したことを検知する。車輪通過検出装置5は、車輪36B,37Bが通過したタイミングを示す情報を生成し、車輪通過情報として車両検査装置2に送信する。
【0081】
実施の形態3では、車両検査装置2の分析部23が、車輪通過情報に基づいて、音情報51から車輪36B,37Bが通過した時点の音情報である通過音情報を切り出す。すなわち、分析部23は、車輪36B,37Bが通過したタイミングの通過音情報を音情報51から抽出する。分析部23は、抽出した通過音情報と、走行情報とを対応付けして、駆動機器を検査する。
【0082】
このように、分析部23は、軸位単位で、車輪36B,37Bが音収集装置4上を通過したタイミングで収集された通過音情報と、走行情報とを対応付けて分析し、音の経年変化から駆動機器の異常を検知する。分析部23は、分析する通過音情報を車輪36B,37Bが通過したタイミングと一致させることで、ノイズ(例えば、他の軸位の駆動機器で発生している音)を減らして駆動機器を分析することができる。すなわち、分析部23は、隣接する軸位の駆動機器で発生している音を除外したうえで、各軸位の駆動機器で発生している音を分析することができる。なお、車輪通過検出装置5を用いた実施の形態3の検査方法を、実施の形態2の車両検査システム10Bに適用してもよい。
【0083】
このように、実施の形態3によれば、車両検査システム10Cは、分析する通過音情報を車輪36B,37Bが通過したタイミングと一致させるので、他の軸位の駆動機器で発生している音を除外して各軸位の駆動機器で発生している音を分析することができる。したがって、車両検査システム10Cは、異常検知精度を向上させることが可能となる。
【0084】
実施の形態4.
つぎに、
図11~
図13を用いて実施の形態4について説明する。実施の形態4の車両検査システムは、駆動機器の近傍に配置された振動計測装置によって駆動機器の振動を計測し、振動の計測結果に基づいた分析の分析結果と、音情報51に基づいた分析の分析結果とが一致するように、音情報51に基づいた分析方法を修正する。
【0085】
図11は、実施の形態4にかかる車両検査システムの構成を示す図である。
図11の各構成要素のうち
図1に示す実施の形態1の車両検査システム10Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0086】
実施の形態4の車両検査システム10Dは、実施の形態1の車両検査システム10Aと比較して、車両1Aの代わりに車両1Dを備えている。車両1Dは、車両1Aが備える構成要素に加えて、振動計測装置14を備えている。振動計測装置14は、走行情報記憶装置11および通信装置12とともに、車両1Dに配置されている。振動計測装置14は、車両1D上で駆動機器の近傍に配置されている。
【0087】
車両検査システム10Dでは、車両1Dが複数の台車32を有している場合であっても、1つの台車32に対して振動計測装置14が配置されればよい。なお、車両1Dが複数の台車32を有している場合に各台車32に振動計測装置14が配置されてもよい。
【0088】
振動計測装置14は、振動センサまたは加速度センサを備えており、振動センサまたは加速度センサを用いて駆動機器の振動を計測する。振動計測装置14は、振動の計測結果を走行情報記憶装置11に送る。なお、振動計測装置14が、通信機能を有していてもよい。この場合、振動計測装置14が、振動の計測結果を車両検査装置2に送信してもよい。
【0089】
走行情報記憶装置11は、振動の計測結果を記憶しておく。振動計測装置14が計測する振動は、音(空気の振動)を収集する装置であってもよいし、音以外の振動を収集する装置であってもよい。実施の形態4では、振動計測装置14が駆動機器に接続された部材を介して伝搬する振動を計測する場合について説明する。
【0090】
通信装置12は、振動の計測結果および走行情報を、車両検査装置2に送る。なお、通信装置12は、振動の計測結果および走行情報を、別々のタイミングで送信してもよい。
【0091】
駆動機器が発する音は、駆動機器自体の振動が主要因であるので、振動と音との相関は非常に高く、軸受等の異常を音の分析のみで検知することは原理的には可能である。ただし、音の計測の際に、駆動機器以外から発せられた音が含まれる場合、正確な検査が困難になる。
【0092】
そこで、実施の形態4では、車両1Dに配置された振動計測装置14が、駆動機器の振動を計測し、車両検査装置2が、この計測結果を用いて駆動機器を検査する。振動計測装置14が、駆動機器の近傍に配置された場合、駆動機器以外の装置から発せられた振動が振動の計測結果に対して支配的となることは少ないので、振動に基づいた故障の判定精度は高い。振動計測装置14の設置コストを抑制するため、実施の形態4では、車両検査システム10D内の一部の駆動機器のみに振動計測装置14が配置される。車両検査システム10Dでは、例えば、列車に含まれる複数台の車両のうちの1つの車両である車両1Dに振動計測装置14が配置される。
【0093】
車両検査装置2の分析部23は、振動の計測結果を用いて、振動の分析を行う。すなわち、分析部23は、振動の計測結果に基づいて、駆動機器に異常が発生しているか否かの分析を行う。
【0094】
また、実施の形態1で説明したように、分析部23は、音収集装置4によって収集された音情報51に基づいて、駆動機器に異常が発生しているか否かの分析を行う。分析部23は、振動の計測結果に基づいた分析と、音情報51に基づいた分析とを比較する。以下、実施の形態4では、振動計測装置14によって測定された振動の計測結果を車上計測振動といい、音収集装置4によって収集された振動の計測結果(音情報51)を地上計測振動という場合がある。
【0095】
分析部23は、車上計測振動が地上計測振動に対応する値となるように、音情報51に基づいた分析方法を修正する。すなわち、分析部23は、車上計測振動に基づいて算出した振動の特徴量と、地上計測振動に基づいて算出した振動の特徴量とが対応した値となるように、地上計測振動に基づいた分析方法を修正する。分析部23は、例えば、音情報51に基づいた分析を実行する際の分析パラメータ、閾値(劣化検知閾値など)、およびノイズの除去方法の少なくとも1つを修正する。
【0096】
分析部23は、修正した分析方法を用いて、車両1D、および車両1Dとは異なる別の車両に対して異常の有無を判定する。これにより、分析部23は、振動計測装置14が配置されていない軸位の駆動機器に対しても、正確な異常判定を実行することが可能となる。なお、分析部23は、修正した分析方法を、車両1Dが含まれる列車以外の列車に対して適用してもよい。
【0097】
つぎに、車両検査システム10Dで実行される処理の処理手順について説明する。
図12は、実施の形態4にかかる車両検査システムで実行される処理の処理手順を示すフローチャートである。なお、実施の形態1の
図8で説明した処理と同様の処理については、その説明を省略する。
【0098】
車両検査システム10Dで実行される処理には、振動の計測対象となっている駆動機器に対して実行される処理ST1が含まれる。また、車両検査システム10Dで実行される処理には、計測対象とは異なる駆動機器を含む全ての駆動機器に対して実行される処理ST2が含まれる。
【0099】
処理ST1には、ステップS110~S150の処理が含まれ、処理ST2には、ステップS170,S180の処理が含まれている。以下では、振動の計測対象となっている駆動機器を対象駆動機器といい、振動の計測対象となっていない他の駆動機器を別駆動機器という場合がある。なお、処理ST1の実行後に実行される処理ST2は、別駆動機器と、対象駆動機器との両方に対して実行されるが、以下では、別駆動機器に対して処理ST2が実行される場合について説明する。
【0100】
車両検査システム10Dでは、振動計測装置14が、車上で振動を計測する(ステップS110)。すなわち、駆動機器の近傍に配置された振動計測装置14が、車両1D上で対象駆動機器に起因する振動を計測する。振動計測装置14が計測した車上計測振動は、走行情報記憶装置11および通信装置12を介して、車両検査装置2に送られる。
【0101】
車両検査装置2の分析部23は、車上計測振動に基づいて、振動を分析する(ステップS120)。分析部23は、例えば、
図5で説明した処理と同様の処理によって振動を分析する。この場合、分析部23は、車上計測振動に基づいて、振動の特徴量を算出する。分析部23は、振動の特徴量に基づいて対象駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する。
【0102】
また、音収集装置4は、地上で音を計測する(ステップS130)。すなわち、音収集装置4は、地上で対象駆動機器に起因する音を計測する。具体的には、音収集装置4は、車両1Dが音収集装置4の近傍を通過した際の車両1Dの音を収集する。音収集装置4が計測した地上計測振動である音情報51は、音記憶装置3を介して、車両検査装置2に送られる。
【0103】
車両検査装置2の分析部23は、対象駆動機器に対する地上計測振動に基づいて、音を分析する(ステップS140)。すなわち、分析部23は、対象駆動機器に対する音情報51を分析する。分析部23は、例えば、
図5で説明した処理と同様の処理によって音を分析する。この場合、分析部23は、地上計測振動に基づいて、音の特徴量を算出する。分析部23は、音の特徴量と、車両1Dの走行履歴を含む走行情報とに基づいて対象駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する。
【0104】
分析部23は、対象駆動機器に異常が発生していると判定した場合に、車上計測振動に基づいた分析(第1の分析)の分析結果と、地上計測振動に基づいた分析(第2の分析)の分析結果とが一致しているか否かを判定する(ステップS150)。ここでの分析結果は、振動の特徴量および音の特徴量である。すなわち、分析部23は、車上計測振動に基づいて算出した振動の特徴量が、地上計測振動に基づいて算出した音の特徴量に対応しているか否かを判定する。なお、分析部23は、地上計測振動に基づいた分析の分析結果に対して対象駆動機器が正常と判断した場合であっても、車上計測振動に基づいて算出した振動の特徴量が、地上計測振動に基づいて算出した音の特徴量に対応しているか否かを判定してもよい。
【0105】
分析部23は、車上計測振動に基づいた分析の分析結果と、地上計測振動に基づいた分析の分析結果とが一致していないと判定した場合(ステップS150、No)、音の分析方法を修正する(ステップS160)。すなわち、分析部23は、振動の特徴量の値が、音の特徴量の値に対応していない場合、振動の特徴量の値が、音の特徴量の値に対応するように音の分析方法を修正する。
【0106】
この後、車両検査システム10Dでは、別駆動機器に対して音の分析が行われる。この場合において、音収集装置4は、地上で音を計測する(ステップS170)。すなわち、音収集装置4は、地上で別駆動機器に起因する音を計測する。具体的には、音収集装置4は、車両1Dとは異なる車両(以下、別車両という)が音収集装置4の近傍を通過した際の別車両の音を収集する。音収集装置4が計測した地上計測振動である音情報51は、音記憶装置3を介して、車両検査装置2に送られる。
【0107】
分析部23は、車上計測振動に基づいた分析の分析結果と、地上計測振動に基づいた分析の分析結果とが一致していると判定した場合(ステップS150、Yes)、ステップS160の処理を実行することなく、ステップS170の処理を実行する。
【0108】
車両検査装置2の分析部23は、別駆動機器に対する地上計測振動に基づいて、音を分析する(ステップS180)。すなわち、分析部23は、別駆動機器の音情報51を分析する。分析部23は、例えば、
図5で説明した処理と同様の処理によって音を分析する。この場合において、分析部23は、修正後の分析方法によって音を分析する。分析部23は、地上計測振動に基づいて、音の特徴量を算出する。分析部23は、音の特徴量と、別車両の走行履歴を含む走行情報とに基づいて対象駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する。
【0109】
なお、分析部23は、音の分析方法を修正した後、車両1Dに対しても修正後の分析方法で音を分析してもよい。分析部23は、修正後の分析方法で分析した分析結果を表示装置などの外部装置に出力する。
【0110】
なお、ステップS110,S120の処理と、ステップS130,S140の処理とは、何れが先に実行されてもよい。また、車両検査装置2は、ステップS110,S120の処理の前に、ステップS170の処理を実行してもよい。
【0111】
車両検査システム10Dでは、ステップS170,S180の処理が複数回実行される。また、車両検査システム10Dでは、ステップS110~S160の処理が複数回実行されてもよい。すなわち、音の分析方法は、複数回に渡って修正されてもよい。
【0112】
また、車両検査システム10Dでは、音の分析方法が、特定回数に渡って修正された後、振動計測装置14は、車両1Dから取り外されてもよい。この取り外された振動計測装置14は、他の車両に配置されてもよい。この場合、振動計測装置14が配置された他の車両に対してステップS110~S180の処理が実行されてもよい。このように、振動計測装置14は使いまわすことが可能である。
【0113】
図13は、実施の形態4にかかる車両検査装置が実行する分析方法の修正処理を説明するための図である。分析部23は、車上計測振動に基づいて算出した振動の特徴量が、地上計測振動に基づいて算出した特徴量に対応した値となっていない場合、車上計測振動と地上計測振動との分析結果が不一致であると判定する(s1)。
【0114】
この場合、分析部23は、音の分析方法を調整する(s2)。分析部23は、例えば、分析対象とする周波数の範囲を変更することで、音の分析条件を調整する。また、分析部23は、例えば、駆動機器が異常であるか否かを判定する際の劣化検知閾値を変更(修正)することで分析条件を調整してもよい。
【0115】
分析部23は、調整後の分析条件で、車両1Dが連結されている列車の各号車を検査する。
図13では、分析部23が、1号車~N(Nは自然数)号車を検査する際に用いる音の周波数の範囲を変更する場合を示している。
【0116】
このように、車両検査装置2は、振動データの取得対象である対象駆動機器の異常の有無を、振動のデータのみで判定した結果と、走行履歴および音のデータから判定した結果とを比較している。そして、車両検査装置2は、振動の分析結果と、音の分析結果との間に乖離がある場合には、音の分析方法を修正(分析条件を調整)している。これにより、駆動機器の異常検知精度が向上する。すなわち、車両検査装置2は、振動分析によって補正した音の分析方法を、他の軸位の音の分析に適用することで、駆動機器における異常の有無の判定精度を向上させることができる。
【0117】
なお、振動計測装置14を用いた実施の形態4の検査方法を、実施の形態2,3の車両検査システム10B,10Cに適用してもよい。
【0118】
このように、実施の形態4によれば、車両検査システム10Dは、振動の計測結果に基づいた分析の分析結果と、音情報51に基づいた分析の分析結果とが一致するように、音情報51に基づいた分析方法を修正するので、簡易な構成で異常検知精度を向上させることが可能となる。
【0119】
実施の形態5.
つぎに、
図14を用いて実施の形態5について説明する。実施の形態5では、サーバが、複数の車両検査装置から分析結果を収集し、分析結果を集約する。
【0120】
図14は、実施の形態5にかかる車両検査システムの構成を示す図である。
図14の各構成要素のうち
図1に示す実施の形態1の車両検査システム10Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0121】
実施の形態5の車両検査システム10Eは、複数の車両検査システムと、サーバ8とを有している。
図14では、車両検査システム10Eが、車両検査システム10A
1~10A
n(nは2以上の自然数)と、サーバ8とを有している場合を示している。車両検査システム10A
1~10A
nは、実施の形態1で説明した車両検査システム10Aと同様のシステムである。なお、車両検査システム10Eは、実施の形態2~4で説明した車両検査システム10B~10Dを有していてもよい。
【0122】
車両検査システム10A1~10Anの各車両検査装置2は、走行情報および音情報51に基づいた、車軸毎の異常の有無の判定結果をサーバ8に送信する。これにより、サーバ8は、車両検査システム10A1~10Anから送られてくる異常の有無の判定結果を集約することができる。
【0123】
サーバ8は、車両1Aに対する複数の判定結果に基づいて、車軸毎の異常の有無を判定することが可能となる。例えば、1つの車両検査システムで特定の車軸に対して異常と判断された場合であっても、他の複数の車両検査システムでこの車軸に対して正常と判断された場合、サーバ8は、この車軸は正常であると判定する。
【0124】
なお、車両検査システム10A1~10Anの各車両検査装置2は、走行情報および音情報51に基づいて車軸毎の音の特徴量を算出し、算出した特徴量をサーバ8に送信してもよい。この場合、サーバ8は、各車両検査装置2から送られてくる音の特徴量と、劣化検知閾値とに基づいて、車軸毎に駆動機器の異常判定を実行する。
【0125】
異なる検車区に入退場を繰り返す車両は、同一の音収集装置4を通過する回数が少なく、音の特徴量を算出できる回数も少なくなる。実施の形態5では、サーバ8が、車両検査システム10A1~10Anから取得した多数の音の特徴量に基づいて、異常判定を行うことができるので、異常判定の精度を向上させることができる。すなわち、車両検査システム10Eは、車両検査システム10A1~10Anといった複数の車両検査システムで特徴量が算出されることにより、駆動機器の異常判定の精度を向上させることができる。
【0126】
また、車両検査システム10Eは、例えば、車両1Aが、特定期間毎に異なる基地に入庫する場合であっても、サーバ8で検査結果を共有することで特徴量を早期に収集できるので早期の異常検知が可能となる。
【0127】
また、車両検査システム10A1~10Anは、車軸毎の音情報51および走行情報をサーバ8に送信してもよい。この場合、サーバ8が、音情報51および走行情報に基づいて、車軸毎に駆動機器の異常判定を実行する。また、この場合、車両検査システム10A1~10Anは、車両検査装置2を備えていなくてもよい。
【0128】
また、車両検査システム10Eは、複数の車両検査装置2を有していればよく、車両1Aは1つであってもよい。また、サーバ8は、実施の形態2で説明した駆動機器情報を記憶しておいてもよい。この場合、車両検査装置2は、音情報51を分析する際にサーバ8から駆動機器情報を読み出す。
【0129】
このように、車両検査システム10Eでは、サーバ8が、軸位単位で、音情報51と、走行履歴を含む走行情報とを対応付けて分析し、音の経年変化から駆動機器の異常を検知する。また、車両検査システム10Eは、異常判定結果をサーバ8上に集約することで、各車両検査装置2が、他の車両検査装置2での分析結果を共有することができる。サーバ8は、取得した特徴量のトレンド監視などを行い、総合的に駆動機器が正常であるか異常であるかを判別する。
【0130】
車両検査システム10A1~10Anは、サーバ8に特徴量を送信する場合、サーバ8に音情報51および走行情報を送信する場合よりも送信データのデータ量を減らすことが可能となる。
【0131】
このように実施の形態5によれば、サーバ8で検査結果を共有することで特徴量を短期間で収集できるので、車両1Aの早期の異常検知が可能となる。
【0132】
実施の形態6.
つぎに、
図15~
図17を用いて実施の形態6について説明する。実施の形態6では、車両の通過位置に複数の音収集装置を配置し、複数の音収集装置で音を収集する。実施の形態6では、車両検査システム10Aに複数の音収集装置4が配置される場合について説明するが、車両検査システム10B~10Eに複数の音収集装置4が配置されてもよい。
【0133】
図15は、実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第1の配置例を示す図である。実施の形態6では、1つの収音箇所に複数の音収集装置4が配置される。
図15では、複数の音収集装置4が、枕木7の延設方向に平行な方向に並べられている場合を示している。すなわち、複数の音収集装置4は、線路9に直交する方向に直線状に配置されている。なお、直線状に配置された音収集装置4は、枕木7の延設方向に複数本が配置されてもよい。
【0134】
図16は、実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第2の配置例を示す図である。
図16では、複数の音収集装置4が、枕木7の延設方向に直交する方向に並べられている場合を示している。すなわち、複数の音収集装置4は、線路9に平行な方向(車両1Aの進行方向)に配置されている。
図16に示す第2の配置例では、複数の音収集装置4は、2本の線路9に挟まれた領域に直線状に配置されている。なお、線路9に平行な方向に直線状に配置された音収集装置4は、2本の線路9に挟まれた領域に複数本が配置されてもよい。
【0135】
図17は、実施の形態6にかかる車両検査システムに配置される音収集装置の第3の配置例を示す図である。
図17では、複数の音収集装置4が、枕木7の延設方向に直交する方向に並べられている場合を示している。すなわち、複数の音収集装置4は、線路9に平行な方向に配置されている。
図17に示す第3の配置例では、複数の音収集装置4は、2本の線路9の外側領域に2本の直線状に配置されている。なお、線路9に平行な方向に直線状に配置された音収集装置4は、2本の線路9の外側領域に3本以上が配置されてもよい。
【0136】
なお、
図15~
図17に示した配置が組み合わされてもよい。例えば、
図15~
図17に示した配置位置の全てに音収集装置4が配置されてもよい。車両検査システム10Aに配置される音収集装置4は、2つ以上であればいくつでもよい。
【0137】
このように実施の形態6によれば、複数の音収集装置4が配置されることにより、車両検査装置2は、1つの音収集装置4がノイズを収集した場合であっても、他の音収集装置4が収集した音情報51を用いて車両1Aを検査できるので、検査精度を向上させることができる。
【0138】
また、複数の音収集装置4が収集した音情報51を用いて車両1Aを検査できるので、車両検査装置2は、車軸と駆動機器との配置関係に基づいて、何れの駆動機器が異常状態であるかを容易に特定することが可能となる。したがって、車両検査装置2は、駆動機器に対する異常の同定精度を向上させることができる。
【0139】
実施の形態7.
つぎに、
図18~
図22を用いて実施の形態7について説明する。実施の形態7では、車両検査システムが、異常の有無の判定を学習し、学習結果に基づいて、異常の有無の判定結果を推論する。実施の形態7では、車両検査システム10Aに学習装置および推論装置が適用される場合について説明するが、車両検査システム10B~10Eに学習装置および推論装置が適用されてもよい。
【0140】
図18は、実施の形態7にかかる車両検査システムが備える学習装置の構成を示す図である。学習装置70は、何れの位置に配置されてもよい。学習装置70は、車両検査装置2またはサーバ8内に配置されてもよいし、車両検査装置2またはサーバ8に接続されてもよい。
【0141】
学習装置70は、第1のデータ取得部であるデータ取得部71と、モデル生成部72とを有している。データ取得部71は、学習装置70の外部から車両データDA1および検査結果DA2を取得する。車両データDA1には、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴の少なくとも1つが含まれている。以下では、車両データDA1に、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの全てが含まれている場合について説明する。また、検査結果DA2は、車両1Aの駆動機器が異常であるか正常であるかを示す判定結果のデータである。
【0142】
走行条件は、車両1Aが走行した際の、線路9の勾配、線路9の劣化具合などである。検査履歴には、定期検査における異常の有無(検査結果)と、異常時または正常時の振動のデータとが含まれている。
【0143】
データ取得部71は、通信装置12、音収集装置4、音記憶装置3、車両検査装置2、またはサーバ8から、走行条件、走行履歴などを取得する。また、データ取得部71は、音収集装置4、音記憶装置3、車両検査装置2、またはサーバ8から、振動のデータなどを取得する。また、データ取得部71は、車両1Aの検査を実行した検査装置などから検査履歴を取得する。また、データ取得部71は、車両検査装置2またはサーバ8から、検査結果DA2を取得する。データ取得部71は、取得した車両データDA1および検査結果DA2をモデル生成部72に送る。
【0144】
モデル生成部72は、データ取得部71から送られてくる車両データDA1および検査結果DA2の組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、車両データDA1に対応する検査結果DA2を学習する。換言すると、モデル生成部72は、車両データDA1および検査結果DA2の組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、車両1Aの状態が車両データDA1である場合の検査結果DA2を学習する。すなわち、モデル生成部72は、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴などの車両1Aの状態から検査結果DA2を推論する学習済モデル73を生成する。ここで、学習用データは、車両データDA1および検査結果DA2が互いに関連付けられたデータである。モデル生成部72は、生成した学習済モデル73を出力する。学習済モデル記憶部75は、モデル生成部72から出力された学習済モデル73を記憶する。
【0145】
モデル生成部72は、学習アルゴリズムとして、教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の公知のアルゴリズムを用いることができる。一例として、モデル生成部72が用いる学習アルゴリズムにニューラルネットワークを適用した場合について説明をする。
【0146】
モデル生成部72は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、車両データDA1に対応する検査結果DA2を学習する。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)とのデータの組(学習用データ)を学習装置70に与えることで、これらの学習用データに含まれる特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0147】
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる中間層(隠れ層)、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層であってもよいし2層以上であってもよい。
【0148】
図19は、実施の形態7にかかる学習装置が用いるニューラルネットワークを説明するための図である。例えば、
図19に示すような3層のニューラルネットワークであれば、複数の入力データが入力層(X1~X3)に入力されると、その値に重みW1(w11~w16)が掛けられて中間層(Y1~Y2)に入力される。そして、その結果にさらに重みW2(w21~w26)が掛けられて出力層(Z1~Z3)から出力される。この出力結果は、重みW1および重みW2の値によって変わる。
【0149】
図18の学習装置70が用いるニューラルネットワークは、データ取得部71によって取得される車両データDA1と、検査結果DA2との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、車両データDA1に対応する検査結果DA2を学習する。換言すると、学習装置70が用いるニューラルネットワークは、データ取得部71によって取得される第1の入力と第2の入力(正解)との組合せに基づいて作成される車両データDA1および検査結果DA2に従って、いわゆる教師あり学習により、車両データDA1に対応する検査結果DA2を学習する。
【0150】
すなわち、ニューラルネットワークは、第1の入力である車両データDA1を入力して出力層から出力された結果が、第2の入力(正解)に近づくように重みW1および重みW2を調整することで学習する。
【0151】
このように、ニューラルネットワークは、入力層に、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を入力して出力層から出力された結果が、検査結果DA2に近づくように重みW1および重みW2を調整することで学習する。ニューラルネットワークは、車両データDA1と検査結果DA2との対応関係を学習することで、車両データDA1が入力された場合に適切な検査結果DA2を出力することができる学習済モデル73を生成する。このように、学習装置70は、車両データDA1を入力とした場合に正解である検査結果DA2を出力することができる学習済モデル73を学習する。
【0152】
モデル生成部72は、以上のような学習を実行することで学習済モデル73を生成し、出力する。モデル生成部72から出力された学習済モデル73は、学習済モデル記憶部75で記憶される。
【0153】
次に、
図20を用いて、学習装置70が学習済モデル73を学習する処理の処理手順について説明する。
図20は、実施の形態7にかかる学習装置が実行する学習処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0154】
データ取得部71は、学習に用いる学習用データを取得する(ステップS210)。具体的には、データ取得部71は、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含んだ車両データDA1と、検査結果DA2とを取得する。
【0155】
なお、データ取得部71は、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を同時に取得してもよいし、異なるタイミングで取得してもよい。データ取得部71へは、検査結果DA2、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴等が関連づけされて入力されればよい。データ取得部71は、車両データDA1および検査結果DA2をモデル生成部72に送る。
【0156】
モデル生成部72は、車両データDA1および検査結果DA2を用いて学習処理を実行する(ステップS220)。具体的には、モデル生成部72は、データ取得部71によって取得された、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴などを含んだ車両データDA1と、検査結果DA2との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、車両データDA1に対応する検査結果DA2を学習し、学習済モデル73を生成する。
【0157】
モデル生成部72は、学習済モデル73を生成した後、学習済モデル記憶部75に学習済モデル73を出力する(ステップS230)。学習済モデル記憶部75は、モデル生成部72が生成した学習済モデル73を記憶する。
【0158】
図21は、実施の形態7にかかる推論装置の構成を示す図である。推論装置80は、何れの位置に配置されてもよい。推論装置80は、車両検査装置2またはサーバ8内に配置されてもよいし、車両検査装置2またはサーバ8に接続されてもよい。推論装置80は、第2のデータ取得部であるデータ取得部81と、推論部82とを有している。
【0159】
データ取得部81は、推論装置80の外部から車両データDB1を取得する。車両データDB1は、車両データDA1と同様の情報である。すなわち、車両データDB1は、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含んでいる。車両データDA1が学習時に用いられるデータであり、車両データDB1が推論時に用いられるデータである。車両データDA1,DB1は、何れも車両1Aの情報である。このように、実施の形態7の車両検査システム10Aは、車両1Aの情報である車両データDA1に基づいて学習済モデル73を学習し、その後、車両1Aの情報である車両データDB1を学習済モデル73に適用することで検査結果(後述する検査結果DB2)を推論する。これにより、実施の形態7の車両検査システム10Aは、学習済モデル73を学習した後は、学習済モデル73を用いて検査結果DB2を推論することが可能となる。
【0160】
データ取得部81は、データ取得部71と同様の方法によって車両データDB1を取得する。データ取得部81は、取得した車両データDB1を推論部82に送る。
【0161】
推論部82は、データ取得部81から送られてくる車両データDB1を受付ける。また、推論部82は、学習済モデル記憶部75から学習済モデル73を読み出す。推論部82は、学習済モデル73を用いて、車両データDB1に対応する検査結果DB2を推論する。すなわち、推論部82は、学習済モデル73にデータ取得部81が取得した、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含んだ車両データDB1を入力することで、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含む車両データDB1から推論される適切な検査結果DB2を出力することができる。
【0162】
また、実施の形態7では、推論装置80が、学習装置70のモデル生成部72が学習した学習済モデル73を用いて適切な検査結果DB2を出力する場合について説明したが、推論装置80は、他の学習装置から学習済モデル73を取得してもよい。この場合、推論装置80は、他の学習装置等から取得した学習済モデル73に基づいて適切な検査結果DB2を出力する。
【0163】
次に、
図22を用いて、推論装置80が学習済モデル73を用いて検査結果DB2を推論する処理の処理手順について説明する。
図22は、実施の形態7にかかる推論装置が実行する推論処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0164】
データ取得部81は、検査結果DB2の推論に用いる推論用データを取得する(ステップS310)。具体的には、データ取得部81は、車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含む車両データDB1を取得する。データ取得部81は、車両データDB1を推論部82に送る。推論部82は、データ取得部81から車両データDB1を取得し、学習済モデル記憶部75から学習済モデル73を取得する。
【0165】
推論部82は、学習済モデル73に車両1Aの音情報51、車両1Aの走行条件、車両1Aの走行履歴、および車両1Aの検査履歴を含む車両データDB1を入力し(ステップS320)、適切な検査結果DB2を得る。
【0166】
推論部82は、学習済モデル73および車両データDB1を用いて推論したデータを出力する(ステップS330)。具体的には、推論部82は、学習済モデル73により得られた適切な検査結果DB2を、表示装置などの外部装置に出力する。
【0167】
表示装置は、車両データDB1に対応する検査結果DB2を表示する。これにより、ユーザは、車両データDB1に対応する検査結果DB2を参照することが可能となる。
【0168】
なお、実施の形態7では、学習アルゴリズムとしてモデル生成部72が教師あり学習アルゴリズムを用いる例を説明したが、モデル生成部72が用いる学習アルゴリズムは、教師あり学習アルゴリズムに限られるものではない。モデル生成部72は、教師あり学習アルゴリズム以外にも、強化学習アルゴリズム、教師なし学習アルゴリズム、半教師あり学習アルゴリズム等を適用することも可能である。
【0169】
また、モデル生成部72は、複数の車両検査システム10Aで作成された学習用データに従って、車両データDA1に対応する適切な検査結果DA2を学習するようにしてもよい。また、モデル生成部72は、同一のエリアで使用される複数の車両検査システム10Aから取得された学習用データを用いて学習を実行してもよいし、異なるエリアで独立して動作する複数の車両検査システム10Aから取得された学習用データを用いて学習を実行してもよい。
【0170】
また、学習用データを収集する車両検査システム10Aが途中で対象に追加されてもよいし、対象から除去されてもよい。さらに、ある車両検査システム10Aに関して車両データDA1に対応する適切な検査結果DA2を学習した学習装置70を、これとは別の車両検査システム10Aに適用し、当該別の車両検査システム10Aに関して車両データDA1に対応する適切な検査結果DA2を再学習して更新するようにしてもよい。
【0171】
また、モデル生成部72の学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもできる。また、モデル生成部72は、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシン等に従って機械学習を実行してもよい。
【0172】
なお、学習装置70は、車両データDA1に対応する劣化検知閾値を学習してもよい。この場合、学習装置70へは、車両データDA1および劣化検知閾値が入力される。学習装置70は、車両データDA1および劣化検知閾値の組合せに基づいて作成される学習用データに基づいて、車両データDA1に対応する劣化検知閾値を学習する。また、推論装置80は、学習済モデル73を用いて、車両データDB1に対応する劣化検知閾値を推論する。
【0173】
また、上述した学習装置70、推論装置80、および学習済モデル記憶部75は、車両検査システム10B~10Eに適用されてもよい。
【0174】
このように実施の形態7では、学習装置70が学習済モデル73を生成し、推論装置80が、学習済モデル73を用いて、車両データDB1から検査結果DB2を推論している。これにより、車両検査システム10Aは、車両データDB1に対応する検査結果DB2を容易にユーザに提供することが可能となる。
【0175】
ここで、車両検査装置2のハードウェア構成について説明する。車両検査装置2は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。
【0176】
図23は、実施の形態1から7にかかる車両検査装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。
図23に示す処理回路90は、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアは車両検査プログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶された車両検査プログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、車両検査装置2の処理が結果的に実行されることになる車両検査プログラムを格納するためのメモリ92を備える。この車両検査プログラムは、処理回路90により実現される各機能を車両検査装置2に実行させるためのプログラムであるともいえる。この車両検査プログラムは、車両検査プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0177】
上記車両検査プログラムは、
図8のステップS50,S60の処理を車両検査装置2に実行させるプログラムであるとも言える。すなわち、上記車両検査プログラムは、音情報51を読み出し、走行情報を受信するステップと、音情報51および走行情報に基づいて、車両1Aが異常であるか否かを判定するステップとを車両検査装置2に実行させるプログラムであるとも言える。
【0178】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0179】
図24は、実施の形態1から7にかかる車両検査装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。
図6に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0180】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0181】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0182】
(付記1)
駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する走行情報記憶装置と、
前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動を収集する振動収集装置と、
前記振動の情報である振動情報を記憶する振動記憶装置と、
前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する車両検査装置と、
を備える車両検査システム。
(付記2)
前記車両検査装置は、前記振動情報に含まれる前記振動の経年変化に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
付記1に記載の車両検査システム。
(付記3)
前記車両検査装置は、前記振動情報から前記振動の特徴量を算出し、前記特徴量に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
付記1または2に記載の車両検査システム。
(付記4)
前記走行情報には、前記車両が走行してきた路線の情報、前記車両が走行した距離の情報、前記車両が走行した際の速度の情報、前記車両が走行した際のノッチの情報、および前記車両の車軸を駆動するモータへのモータ電流の情報の少なくとも1つが含まれている、
付記1から3の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記5)
前記駆動機器の情報である駆動機器情報を記憶する機器情報記憶装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記駆動機器情報に基づいて、前記振動情報を分析する際に用いるデータを決定し、決定した前記データを用いて前記振動情報を分析する、
付記1から4の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記6)
前記振動情報を分析する際に用いるデータには、前記振動情報を分析する際に用いる分析パラメータ、および前記振動の特徴量と比較される閾値である劣化検知閾値の少なくとも1つが含まれている、
付記5に記載の車両検査システム。
(付記7)
前記車両の車輪が前記線路を通過したことを検出する車輪通過検出装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記走行情報および前記車両が通過したタイミングで収集された振動情報に基づいて、前記車両の軸位単位で、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
付記1から6の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記8)
前記駆動機器の振動を計測する振動計測装置をさらに備え、
前記車両検査装置は、前記振動計測装置によって計測された振動に基づいた第1の分析を実行し、前記振動情報に基づいた第2の分析を実行し、前記第1の分析の分析結果と前記第2の分析の分析結果とが一致するように、前記第2の分析の分析方法を修正する、
付記1から7の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記9)
前記車両検査装置は、前記第2の分析の分析方法として、前記振動情報を分析する際に用いる、分析パラメータ、閾値、ノイズの除去方法の少なくとも1つを修正する、
付記8に記載の車両検査システム。
(付記10)
複数の前記車両検査装置から前記車両の検査のデータを収集して分析するサーバをさらに備える、
付記1から9の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記11)
前記車両の検査のデータは、前記振動情報から算出された前記振動の特徴量、または前記特徴量に基づいて判定された前記駆動機器に異常が発生しているか否かの判定結果である、
付記10に記載の車両検査システム。
(付記12)
前記振動収集装置は、複数からなり、
前記車両検査装置は、複数の前記振動収集装置で収集された前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する、
付記1から11の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記13)
前記駆動機器に異常が発生しているか否かの判定結果を学習する学習装置をさらに備え、
前記学習装置は、前記振動情報、前記車両の走行条件、前記走行情報、および前記車両の検査履歴の少なくとも1つを含むデータである車両データと、前記車両データに対応付けされた前記判定結果とを含む学習用データを取得する第1のデータ取得部と、
前記学習用データを用いて、前記車両データから前記判定結果を推論するための学習済モデルを生成するモデル生成部と、
を備える、
付記1から12の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記14)
前記判定結果を推論する推論装置をさらに備え、
前記推論装置は、
前記車両データを取得する第2のデータ取得部と、
前記学習済モデルを用いて、前記第2のデータ取得部で取得した前記車両データから前記判定結果を推論する推論部と、
を備える、
付記13に記載の車両検査システム。
(付記15)
前記振動は、前記駆動機器が発生させる音、または前記駆動機器から線路を経由して伝搬される振動である、
付記1から14の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記16)
前記走行情報記憶装置は、前記車両に配置され、
前記振動収集装置は、地上に配置されている、
付記1から15の何れか1つに記載の車両検査システム。
(付記17)
走行情報記憶装置が、駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を記憶する第1の記憶ステップと、
振動収集装置が、前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動を収集する収集ステップと、
振動記憶装置が、前記振動の情報である振動情報を記憶する第2の記憶ステップと、
車両検査装置が、前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、
を含む車両検査方法。
(付記18)
駆動機器によって駆動される車両の走行履歴を含む情報である走行情報を受信する受信ステップと、
前記車両が線路を通過する際の前記駆動機器に起因する振動の情報である振動情報を分析する分析ステップと、
前記車両の軸位単位で、前記走行情報および前記振動情報に基づいて、前記駆動機器に異常が発生しているか否かを判定する判定ステップと、
をコンピュータに実行させる車両検査プログラム。
【符号の説明】
【0183】
1A,1B,1D 車両、2 車両検査装置、3 音記憶装置、4 音収集装置、5 車輪通過検出装置、7 枕木、8 サーバ、9 線路、10A,10A1~10An,10B~10E 車両検査システム、11 走行情報記憶装置、12 通信装置、13 機器情報記憶装置、14 振動計測装置、21 通信部、22 入力部、23 分析部、24 出力部、31 車体、32 台車、33A,33B モータ、34A,34B 継手、35A,35B 駆動装置、36A,36B,37A,37B 車輪、38 軸受、39 歯車、40~44,51~55 音情報、60 特徴量情報、61A~66A,61B~66B,AX,BX 車軸、70 学習装置、71,81 データ取得部、72 モデル生成部、73 学習済モデル、75 学習済モデル記憶部、80 推論装置、82 推論部、90 処理回路、91 プロセッサ、92 メモリ、93 処理回路、DA1,DB1 車両データ、DA2,DB2 検査結果、P1 特徴量。